(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
付勢体は、延長整地体が展開作業状態から折畳非作業状態へと閉方向に回動する場合において、支点越えする前では前記延長整地体を開方向に付勢し、支点越えした後では前記延長整地体を閉方向に付勢する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の農作業機。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施の形態について
図1ないし
図6を参照して説明する。
【0018】
図1において、11は農作業機で、この農作業機11は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、このトラクタの前進走行により圃場を前方(進行方向)に移動しながら耕耘整地作業等をするものである。
【0019】
農作業機11は、
図1に示されるように、トラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降支持装置)に脱着可能に連結される機体12を備えている。
【0020】
機体12は、前後方向の入力軸13が前方に向かって回転可能に突設されたミッションケース部14を左右方向中央部に有している。なお、入力軸13は、トラクタのPTO軸にジョイント等の動力伝達手段を介して接続され、そのPTO軸の回転時に回転してトラクタ側からの動力を農作業機11側へ入力する。
【0021】
ミッションケース部14の左右両側には、左右方向長手状で円筒状をなす主フレーム部であるフレームパイプ部15の内端部が取り付けられている。これら左右1対のフレームパイプ部15のうちの左側のフレームパイプ部15の外端部である左端部には伝動ケース部であるチェーンケース部16の上部が取り付けられ、右側のフレームパイプ部15の外端部である右端部には板状のブラケット部(図示せず)の上部が取り付けられている。
【0022】
そして、互いに左右に離間対向するチェーンケース部16の下部およびブラケット部の下部間には、所定方向に回転しながら耕耘作業をするロータリ式の耕耘体18が回転可能に架設されている。つまり、機体12には、耕耘作業をする耕耘体18が回転可能に設けられている。
【0023】
耕耘体18は、入力軸13側からの動力で所定方向に回転する左右方向の耕耘軸19と、この耕耘軸19に脱着可能に取り付けられ耕耘作業をする複数の耕耘爪20とを有している。耕耘軸19は、その左端部がチェーンケース部16の下部にて回転可能に支持され、かつ、その右端部がブラケット部の下部にて回転可能に支持されている。
【0024】
また、耕耘体18の上方には、この耕耘体18の上方部を覆う板状の耕耘カバー体21が配設されている。耕耘カバー体21は、例えば上方に向かって凸の湾曲板状に形成され、機体12に対して固定されている。
【0025】
そして、耕耘カバー体21の後端部には、耕耘体18の後方で所望の作業角度をもって整地作業する板状の整地体(均平板)23が蝶番24を介して上下方向に回動可能に設けられている。この整地体23の接地圧は、機体12と整地体23との間に架設された接地圧調整手段26によって調整可能となっている。
【0026】
また、整地体23の左右方向両端部には、一方向である開方向への回動(回動角度は例えば略180度)により整地体23から外側方に向かって突出状に位置して整地作業をする展開作業状態となり、他方向である閉方向への回動(回動角度は例えば略180度)により整地体23上に位置する折畳非作業状態となる板状の延長整地体(延長均平板)31が回動支点Pを中心として回動可能に設けられている。
【0027】
つまり、整地体23の左右の各側端部には、作業者が手動で展開作業状態および折畳非作業状態に選択的に切り換え可能な延長整地体31が前後方向の回動中心軸線(回動支点Pを通る線)Xを中心として上下方向に回動可能に設けられている(
図2参照)。
【0028】
さらに、これら整地体23と延長整地体31との間には、延長整地体31をこの延長整地体31が展開作業状態および折畳非作業状態となるように付勢する弾性変形可能な円筒コイル状の付勢体である引張ばね32が設けられている。
【0029】
引張ばね32は、その一端部であるC字状の整地体側取付部33が整地体23の孔部(取付孔部)36に移動可能に挿入されて取り付けられ、かつ、その他端部であるC字状の延長整地体側取付部34が延長整地体31の円形孔部37に挿入されて取り付けられている。
【0030】
そして、引張ばね32の整地体側取付部33は、回動支点Pを中心とする延長整地体31の整地体23に対する回動に応じて、回動支点Pを基準とする外側方位置および内側方位置間で移動するように、整地体23の孔部36内で移動可能となっている。
【0031】
このため、引張ばね32の整地体側取付部33は、延長整地体31の展開作業状態時には回動支点Pよりも外側方に位置し(
図3参照)、延長整地体31の折畳非作業状態時には回動支点Pよりも内側方に位置する(
図5参照)。
【0032】
また、引張ばね32が支点越えする際における水平方向に対する傾斜角度βは、90度以上で、例えば略105度である(
図4参照)。つまり、この引張ばね32は、少なくとも延長整地体31が展開作業状態から起立姿勢の状態(βが90度の状態)になるまでの間の範囲で、支点越えしないようになっている。
【0033】
さらに、
図4中の支点越え線Aは、整地体側取付部33の点と延長整地体側取付部34の点とを結んだラインが回動支点P上にある線である。そして、引張ばね32は、支点越え線Aに位置する支点越え時に最も伸びた状態(最長状態)となり、支点越えによって付勢の向きが異なる。つまり、引張ばね32は、支点越えに基づいて、延長整地体31を展開作業状態に保持するように付勢する状態と延長整地体31を折畳非作業状態に保持するように付勢する状態とに切り換わる。
【0034】
ここで、整地体23は、
図1ないし
図6に示されるように、整地作業をする左右方向長手状で略矩形状をなす整地本体板41を有している。整地本体板41の左右方向両端部には、整地側板42がそれぞれ立設されている。
【0035】
各整地側板42の後部内側面には、前板部43および後板部44を有する略コ字状の取付部材45が取付具(例えばボルトおよびナット)46によって取り付けられている。取付部材45の前後方向中央部には、ばね取付板47が内側方に向かって突出するように固設されている。
【0036】
ばね取付板(ばね掛け板)47は、多角孔形状、すなわち例えば三角孔形状に形成された孔部36を有し、この孔部36に引張ばね32の基端部である整地体側取付部33が挿入されて引っ掛けられている。
【0037】
孔部36は、ばね取付板47の前後面に貫通した孔空間部分51と、この孔空間部分51の周囲に位置する孔周囲部分52とにて構成されている。この孔周囲部分52は、
図3(b)に示すように、それぞれ円弧状に形成された第1角部53、第2角部54および第3角部55を有している。
【0038】
また、第1角部53および第2角部54間に急勾配の傾斜状の第1辺部56が位置し、第2角部54および第3角部55間に第2角部54側から第3角部55側に向かって僅かに下り傾斜した傾斜状の上辺部である第2辺部57が位置し、第1角部53および第3角部55間に緩勾配の傾斜状の第3辺部58が位置している。なお、上辺部である第2辺部57が水平状であってもよい。
【0039】
そして、第1角部53が背面視で回動支点Pよりも外側方に位置する外側方側角部であり、第3角部55が背面視で回動支点Pよりも内側方に位置する内側方側角部である。また、第2角部54が背面視で回動支点Pと一致(略一致を含む)する中間角部である。
【0040】
一方、延長整地体31は、この延長整地体31の展開作業状態時に整地作業をする湾曲板状の延長整地本体板61を有している。延長整地本体板61の上面には、取付部材62が溶接等によって固設されている。
【0041】
取付部材62は、互いに離間対向する前板部63および後板部64を有し、これら前板部63と後板部64とが連結板部65にて互いに連結されている。なお、前板部63は、延長整地体31の折畳非作業状態時に整地体23の上面の被当接部67に当接して延長整地体31の閉方向への回動を規制する当接面66を有している。
【0042】
そして、延長整地体31の取付部材62の前板部63が整地体23の取付部材45の前板部43に頭付きピン68を介して回動可能に取り付けられ、かつ、延長整地体31の取付部材62の後板部64が整地体23の取付部材45の後板部44に頭付きピン69を介して回動可能に取り付けられている。こうして、延長整地体31が整地体23の側端部に頭付きピン(回動支点P)68,69を中心として回動可能に取り付けられている。
【0043】
また、連結板部65の上面における前後方向中央部には、ばね取付板71が上方に向かって突出するように固設されている。ばね取付板(ばね受け板)71は、丸孔形状に形成された円形孔部37を有し、この円形孔部37に引張ばね32の先端部である延長整地体側取付部34が挿入されて引っ掛けられている。なお、円形孔部37は、ばね取付板71の前後面に貫通した孔空間部分37aと、この孔空間部分37aの周囲に位置する孔周囲部分37bとにて構成されている。
【0044】
さらに、前板部63の前面には、展開作業状態の延長整地体31の外端下限位置を調整するための調整板72が取付具(例えばボルトおよびナット)73によって回動調整可能に取り付けられている。調整板72は、四角板状をなすもので、4つの各辺の中央には、前板部63に前方に向かって突設した位置決め用のピン74と係脱可能に係合する凹部75が形成されている。
【0045】
そして、調整板72は、延長整地体31の展開作業状態時に整地体23の整地側板42の外側面の被当接部76に当接し、この当接により延長整地体31の開方向への回動が規制される。
【0046】
また、調整板72を回動調整してピン74が係合する凹部75を変更すると、展開作業状態の延長整地体31の外端下限位置が変わる(
図6参照)。つまり、前板部63に対する調整板72の回動調整により、展開作業状態の延長整地体31の外端下限位置が複数段階、例えば4段階に調整可能となっている。
【0047】
次に、上記農作業機11の作用等を説明する。
【0048】
例えばプラウ耕等による荒耕し後に、農作業機11を用いて耕耘整地作業をする場合、農作業機11をトラクタの後部に連結し、そのトラクタの走行により農作業機11を前方に移動させる。
【0049】
すると、耕耘体18が耕耘作業をし、その後方で整地体23が整地作業をする。また、整地体23の左右の両側方では、展開作業状態の延長整地体31が整地作業をする。
【0050】
このとき、展開作業状態の延長整地体31が、圃場の未整地部の比較的大きな土塊に当たって、引張ばね32の付勢力に抗して回動支点Pを中心に閉方向へ回動したとしても、引張ばね32は、整地体側取付部33の位置(ばね掛け位置)がずれ、支点越え線Aまで到達せず、回動支点Pに対して支点越えをしない。
【0051】
その結果、延長整地体31は、引張ばね32の付勢力に基づいて、回動支点Pを中心に開方向へ回動して、もとの所望の展開作業状態に戻る。
【0052】
このように、この農作業機11では、整地作業時において、展開作業状態の延長整地体31が圃場の土塊に押し戻されて折畳非作業状態に戻ってしまうことがない。
【0053】
またここで、例えば作業終了後、作業者が延長整地体31を展開作業状態から折畳非作業状態に戻す場合について説明する。
【0054】
図3(a)には、展開作業状態の延長整地体31が示されている。このとき、延長整地体31を展開作業状態に保持する引張ばね32の整地体側取付部33は、整地体23のばね取付板47の孔部36の第1角部53と係合し、背面視で回動支点Pよりも外側方に位置している。
【0055】
そして、作業者がその延長整地体31を引張ばね32の付勢力に抗して持ち上げ、
図4に示す支点越えの状態になるまで回動支点Pを中心に閉方向へ回動させる。
【0056】
この
図4に示す状態(引張ばね32の支点越え状態)では、引張ばね32の整地体側取付部33は、整地体23のばね取付板47の孔部36の第2角部54との係合位置から若干移動した位置で第2辺部57と係合し、背面視で回動支点Pと一致(略一致を含む)している。つまり、整地体側取付部33は、延長整地体31の回動に連動して第1辺部56に沿って上方へスライドすることによって、第1角部53の位置から第2角部54の位置まで移動(位置ずれ)し、その後、第2辺部57側に若干移動して
図4に示す状態となっている。なお、整地体側取付部33が第2角部54と係合した際に、引張ばね32が支点越えするようにしてもよい。
【0057】
そして、延長整地体31が
図4に示す状態となり、引張ばね32が支点越え線Aに達して支点越えをすると、延長整地体31は、引張ばね32の付勢力に基づいて、回動支点Pを中心に閉方向へ回動して
図5に示す折畳非作業状態となる。
【0058】
この
図5に示す状態では、引張ばね32の整地体側取付部33は、整地体23のばね取付板47の孔部36の第3角部55と係合し、背面視で回動支点Pよりも内側方に位置している。つまり、整地体側取付部33は、延長整地体31の回動に連動して第2辺部57に沿って内側方へスライドすることによって、第2角部54の位置から第3角部55の位置まで移動(位置ずれ)する。
【0059】
また、この
図5に示す状態での引張ばね32の軸方向長さ寸法(自然長からの伸び量)は、
図3に示す状態での引張ばね32の軸方向長さ寸法(自然長からの伸び量)よりも小さい。このため、引張ばね32が延長整地体31を折畳非作業状態に保持しようとする保持力は、引張ばね32が延長整地体31を展開作業状態に保持しようとする保持力よりも弱く、作業者は折畳非作業状態の延長整地体31を上方側へ軽く操作することが可能である。
【0060】
換言すると、引張ばね32の整地体側取付部33が孔部36内で回動支点Pよりも外側方の位置から回動支点Pよりも内側方の位置まで移動するため、延長整地体31の折畳非作業状態時に引張ばね32が伸びすぎず、許容伸び量(許容変形量)を超えることがない。
【0061】
なお、延長整地体31を折畳非作業状態から展開作業状態にするには、延長整地体31を引張ばね32の付勢力に抗して回動支点Pを中心に開方向へ回動させ、引張ばね32を支点越えさせればよい。
【0062】
そして、このような農作業機11によれば、例えば作業時において展開作業状態の延長整地体31が圃場の比較的大きな土塊に当たっても、引張ばね32が支点越えをしないため、作業時に延長整地体31が折畳非作業状態に戻ってしまうのを防止できる。
【0063】
しかも、延長整地体31がどの状態であっても、引張ばね32が許容伸び量を超えることがなく、引張ばね32による張力がかからなくなることもない。
【0064】
また、引張ばね32の整地体側取付部33が、整地体23の三角孔形状の孔部36内に、回動支点Pを基準とする外側方位置および内側方位置間で移動するように移動可能に挿入されているため、作業時に延長整地体31が折畳非作業状態に戻ってしまうのを適切に防止できる。
【0065】
さらに、整地体23の作業角度に応じて調整板72を回動調節して展開作業状態の延長整地体31の外端下限位置を調整できるため、種々の作業深さに適切に対応できる。
【0066】
なお、上記第1の実施の形態では、整地体23のばね取付板47が取付部材45に固設された構成について説明したが、例えば
図7ないし
図9に示す第2の実施の形態のように、整地体23のばね取付板81が取付部材45の取付板部82に前後方向の軸83を中心として左右方向に回動可能に設けられた構成でもよい。
【0067】
取付部材45の取付板部82には、引張ばね32が支点越えする際にばね取付板81が当接してこのばね取付板81の回動を規制する回動規制部84が突設されている。
【0068】
また、ばね取付板81は、真っ直ぐな直線状(なお図示しないが、湾曲した曲線状でもよい)の長孔形状に形成された孔部86を有し、この孔部86に引張ばね32の整地体側取付部33が移動可能に挿入されて引っ掛けられている。
【0069】
そして、この引張ばね32の整地体側取付部33は、延長整地体31の展開作業状態時には回動支点Pよりも外側方に位置し(
図7参照)、延長整地体31の折畳非作業状態時には回動支点Pよりも内側方に位置する(
図9参照)。
【0070】
また、その引張ばね32が支点越えする際における水平方向に対する傾斜角度γは、90度以上で、例えば略105度である(
図8参照)。つまり、この引張ばね32は、少なくとも延長整地体31が展開作業状態から起立姿勢の状態(γが90度の状態)になるまでの間の範囲で、支点越えしないようになっている。
【0071】
そして、このような構成の第2の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
また、例えば
図10に示す第3の実施の形態のように、整地体23の取付部材45に固設されたばね取付板47に、左右方向に長手方向を有する長孔形状の孔部91が形成されており、この孔部91に引張ばね32の整地体側取付部33が移動可能に挿入された構成であっても、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
なお、いずれの実施の形態においても、例えば延長整地体31が起立姿勢の状態になった際に引張ばね32が支点越えするようにしてもよい。
【0074】
また、例えば整地体23のばね取付板47が整地側板42或いは整地本体板41に直接固着された構成でもよい。
【0075】
さらに、整地体23の多角孔形状の孔部36は、上部に傾斜状の上辺部を有した三角孔形状が好ましいが、この形状には限定されず、例えば他の三角孔形状や、四角孔形状等でもよい。
【0076】
なお、本発明のいくつかの実施の形態およびその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施の形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。