(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
計測対象となる計測ポイント(P)を通り互いに直交する三つの軸をX軸,Y軸,Z軸とし、前記計測ポイントを通り前記X軸と直交する平面をYZ平面とし、前記計測ポイントを通り前記Y軸と直交する平面をXZ平面とし、前記計測ポイントを通り前記Z軸と直交する平面をXY平面とし、前記YZ平面上において前記計測ポイントを挟んで前記Y軸上で対向する2位置及び前記Z軸上で対向する2位置のそれぞれに、前記X軸の磁界を検出する磁界センサであるX軸用ループコイル(111,112,113,114)を配置するX軸用磁界プローブ(11)、
前記XZ平面上において前記計測ポイントを挟んで前記Z軸上で対向する2位置及び前記X軸上で対向する2位置のそれぞれに、前記Y軸の磁界を検出する磁界センサであるY軸用ループコイル(121,122,123,124)を配置するY軸用磁界プローブ(12)及び、
前記XY平面上において前記計測ポイントを挟んで前記X軸上で対向する2位置及び前記Y軸上で対向する2位置のそれぞれに、前記Z軸の磁界を検出する磁界センサであるZ軸用ループコイル(131,132,133,134)を配置するZ軸用磁界プローブ(13)を有する磁界検出部(1)と、
前記計測ポイントにおける各軸方向の磁界成分について、前記X軸用ループコイルの検出結果からX軸方向の成分を、前記Y軸用ループコイルの検出結果からY軸方向の成分を、前記Z軸用ループコイルの検出結果からZ軸方向の成分を求める磁界成分算出手段(2,54)と、
前記計測ポイントにおける各軸方向の電界成分について、前記Y軸用ループコイル及び前記Z軸用ループコイルの検出結果からX軸方向の成分を、前記Z軸用ループコイル及び前記X軸用ループコイルの検出結果からY軸方向の成分を、前記X軸用ループコイル及び前記Y軸用ループコイルの検出結果からZ軸方向の成分を、マクスウェル方程式から導出される磁界と電界の関係を利用して求める電界成分算出手段(2,54)と、
を備え、前記X軸用ループコイル、前記Y軸用ループコイル及び前記Z軸用ループコイルは、前記計測ポイントから前記各ループコイルの中心までの距離が等しく、同位置の異なる2軸用の前記ループコイルが干渉を回避するように配置されており、
前記X軸用ループコイル、前記Y軸用ループコイル及び前記Z軸用ループコイルは、
コイル面積が同一の楕円形状に形成されていることを特徴とする電界計測装置(101,102)。
前記磁界検出部を移動可能に保持し、前記磁界検出部の3次元空間内での位置を制御する位置制御手段(51)を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の電界計測装置(102)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のポインティングベクトル計測装置では、簡易な構成でポインティングベクトルを精度良く計測することができるとの記載があるものの、磁界計測用プローブの具体的かつ現実的な形状については何ら言及されていない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、簡易な構成で、電界の3次元空間分布を算出することができる電界計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電界計測装置は、計測対象となる計測ポイントを通り互いに直交する三つの軸をX軸,Y軸,Z軸として、計測ポイントにおける各軸方向の磁界成分を検出する磁界検出部と、磁界成分算出手段と、電界成分算出手段とを備える。
【0009】
磁界検出部は、X軸用磁界プローブと、Y軸用磁界プローブと、Z軸用磁界プローブとを有して構成されている。X軸用磁界プローブには、計測ポイントを挟んでY軸上で対向する2位置及びZ軸上で対向する2位置のそれぞれに、X軸の磁界を検出する磁界センサであるX軸用ループコイルが配置される。
【0010】
Y軸用磁界プローブには、計測ポイントを挟んでZ軸上で対向する2位置及びX軸上で対向する2位置のそれぞれに、Y軸の磁界を検出する磁界センサであるY軸用ループコイルが配置される。Z軸用磁界プローブには、計測ポイントを挟んでX軸上で対向する2位置及びY軸上で対向する2位置のそれぞれに、Z軸の磁界を検出する磁界センサであるZ軸用ループコイルが配置される。
【0011】
磁界成分算出手段は、計測ポイントにおける各軸方向の磁界成分について、X軸用ループコイルの検出結果からX軸方向の成分を、Y軸用ループコイルの検出結果からY軸方向の成分を、Z軸用ループコイルの検出結果からZ軸方向の成分を求める。
【0012】
電界成分算出手段は、計測ポイントにおける各軸方向の電界成分について、Y軸用ループコイル及びZ軸用ループコイルの検出結果からX軸方向の成分を、Z軸用ループコイル及びX軸用ループコイルの検出結果からY軸方向の成分を、X軸用ループコイル及びY軸用ループコイルの検出結果からZ軸方向の成分を、マクスウェル方程式から導出される磁界と電界の関係を利用して求める。
【0013】
さらに、X軸用ループコイル、Y軸用ループコイル、Z軸用ループコイルは、計測ポイントから各ループコイルの中心までの距離が等しく、同位置の異なる2軸用のループコイルが干渉を回避するように配置されている。
【0014】
好ましくは、X軸用ループコイル、Y軸用ループコイル及びZ軸用ループコイルは、コイル面積が同一の楕円形状に形成されている。ここで、「中心までの距離が等しい」、「同一の楕円形状」とは、厳密な意味での「等しい」又は「同一」に限らず、当該技術分野の技術常識に照らして、通常、「等しい」又は「同一」と判断される範囲の同一性を有していれば、「等しい」又は「同一」であると解釈する。
【0015】
本発明の構成によれば、異なる2軸用のループコイルが互いに干渉することなく、計測ポイントPからの距離が等しい位置に配置される。電界センサや電位センサを使用することなく、磁界センサによる計測結果だけを使用して電界成分を算出する装置を、簡易な構成により容易に実現することができる。
【0016】
また、簡易な構成とすることで小型化が可能となり、装置自体が電界の空間分布に与える影響を極力少なくすることができる。したがって、電界の3次元空間分布を精度良く算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〈第1実施形態〉
[構成]
本発明の第1実施形態の構成について、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の電界計測装置101は、複数の磁界センサによって構成された磁界検出部1と、磁界検出部1での検出結果を取り込み計算処理する計算処理部2とを備えている。磁界検出部1と計算処理部2とは複数の配線により接続されており、磁界検出部1の検出結果が計算処理部2へ出力されるようになっている。計算処理部2は、「磁界成分算出手段」及び「電界成分算出手段」に相当する。
【0019】
磁界検出部1の構成について、
図2〜
図5を参照して説明する。以下では、磁界検出部1の中心を、電界計測の計測ポイントPとし、計測ポイントPを通り、かつ、それぞれが互いに直交する3軸をX軸、Y軸、Z軸と呼ぶものとする。そして、
図2に各軸の先端に矢印で示す方向を各軸の正方向として説明する。
図2に示すように、磁界検出部1は、X軸用磁界プローブ11と、Y軸用磁界プローブ12と、Z軸用磁界プローブ13とで構成されている。
図2〜
図5における磁界検出部1、各軸用磁界プローブ11,12,13の形状は、実際の形状を示している。
【0020】
X軸用磁界プローブ11は、
図3に示すように、YZ平面上に配置され、全体として計測ポイントPを中心とした略十字形状に形成されている。X軸用磁界プローブ11は、基板20と、基板20上に配置された磁界センサとしてのX軸用ループコイル111,112,113,114とを有している。基板20は、例えば樹脂製の薄板状部材から形成される。
【0021】
基板20は、第1L字部21と、第2L字部22と、第1L字部21と第2L字部22とを連結する連結部23とを有する。第1L字部21は、Y軸位置成分及びZ軸位置成分が正となる位置に形成されて、計測ポイントPを角として略L字形状をなす。第2L字部22は、Y軸位置成分及びZ軸位置成分が負となる位置に形成されて、計測ポイントPを角として略L字形状をなす。連結部23は、Y軸位置成分が負でありZ軸位置成分が正となる位置に形成されて、一角が円弧形状に切り欠かれた略正方形状をなしている。
【0022】
第1L字部21のY軸正方向の先端寄りには、略正方形状をなす突出部24が、Y軸(Z=0)からZ軸負方向側へ出っ張るように形成されている。突出部24の突出量は、第1L字部21の幅と略同じであって、Y軸方向長さは後述するX軸用ループコイル112の短径よりも長くなるように形成されている。
【0023】
第1L字部21のZ軸正方向の先端には、長方形状をなす突出部25が、Z軸(Y=0)からY軸負方向へ出っ張るように形成されている。突出部25の突出量は、第1L字部21の幅と略同じであって、Z軸方向長さは後述するX軸用ループコイル111の長径よりも長くなるように形成されている。
【0024】
第2L字部22のY軸負方向の先端寄りには、略正方形状をなす突出部26が、Y軸(Z=0)からZ軸正方向側へ出っ張るように形成されている。突出部26の突出量は、第2L字部22の幅と略同じであって、Y軸方向長さは後述するX軸用ループコイル114の短径よりも長くなるように形成されている。
【0025】
第2L字部22のZ軸負方向の先端には、長方形状をなす突出部27が、Z軸(Y=0)からY軸正方向へ出っ張るように形成されている。突出部27の突出量は、第2L字部22の幅と略同じであって、Z軸方向長さは後述するX軸用ループコイル113の長径よりも長くなるように形成されている。
【0026】
第1L字部21と各突出部24,25とで構成される部位と、第2L字部22と各突出部26,27とで構成される部位とは、計測ポイントPを中心に点対称となっている。さらに、計測ポイントPとなる基板20の中心部には、計測ポイントPを中心に4分の3円弧形状をなす円弧状スリット部28が形成されている。円弧状スリット部28は、第1L字部21と連結部23と第2L字部22のそれぞれにおける計測ポイントP側の1角を、4分の1円弧形状に切り欠いた形状に形成されている。これにより、基板20の中心部は、Y軸位置成分が正かつZ軸位置成分が負である円弧部分が切り欠かれて開放した形状となっている。
【0027】
そして、基板20には、計測ポイントPを挟んでZ軸上で対向し、かつ、計測ポイントPからの距離が同一となる位置に、X軸用ループコイル111,113が設けられており、計測ポイントPを挟んでY軸上で対向し、かつ、計測ポイントPからの距離が同一となる位置に、X軸用ループコイル112,114が設けられている。
【0028】
各X軸用ループコイル111,112,113,114は、例えばシールデッドループコイルであって、楕円形状をなしている。なお、上述した「計測ポイントPからの距離」とは、計測ポイントPから各X軸用ループコイル111,112,113,114の楕円中心までの距離のことを言う。そして、各X軸用ループコイル111,112,113,114は、その長径方向がZ軸方向と一致し、短径方向がY軸方向と一致するように基板20上に取り付けられている。各X軸用ループコイル111,112,113,114の内側は基板20の肉が取られて孔空きになっている。
【0029】
Y軸用磁界プローブ12は、XZ平面上に配置されており、その形状についてはX軸用磁界プローブ11と同一であるため、詳細については一部説明を省略する。Y軸用磁界プローブ12は、
図4に示すように、基板30と、基板30上に配置された磁界センサとしてのY軸用ループコイル121,122,123,124とを有している。
【0030】
X軸用磁界プローブ11と同様に、基板30は、第1L字部31と、第2L字部32と、連結部33とを有する。第1L字部31は、X軸位置成分が負でありZ軸位置成分が正となる位置に形成されており、第2L字部32は、X軸位置成分が正でありZ軸位置成分が負となる位置に形成されている。連結部33は、X軸位置成分及びZ軸位置成分が負となる位置に形成されている。
【0031】
第1L字部31のZ軸正方向の先端寄りには、略正方形状をなす突出部34が、Z軸(X=0)からX軸正方向側へ出っ張るように形成されている。第1L字部31のX軸負方向の先端には、長方形状をなす突出部35が、X軸(Z=0)からZ軸負方向へ出っ張るように形成されている。
【0032】
第2L字部32のZ軸負方向の先端寄りには、略正方形状をなす突出部36が、Z軸(X=0)からX軸負方向側へ出っ張るように形成されている。第2L字部32のX軸正方向の先端には、長方形状をなす突出部37が、X軸(Z=0)からZ軸正方向へ出っ張るように形成されている。さらに、計測ポイントPとなる基板30の中心部には、円弧状スリット部38が形成されている。
【0033】
そして、基板30には、計測ポイントPを挟んでZ軸上で対向し、かつ、計測ポイントPからの距離が同一となる位置に、Y軸用ループコイル121,123が設けられており、計測ポイントPを挟んでX軸上で対向し、かつ、計測ポイントPからの距離が同一となる位置に、Y軸用ループコイル122,124が設けられている。そして、各Y軸用ループコイル121,122,123,124は、その長径方向がX軸方向と一致し、短径方向がZ軸方向と一致するように基板30上に取り付けられている。
【0034】
Z軸用磁界プローブ13は、XY平面上に配置されており、その形状についてはX軸用磁界プローブ11及びY軸用磁界プローブ12と同一であるため、詳細については一部説明を省略する。Z軸用磁界プローブ13は、
図5に示すように、基板40と、基板40上に配置された磁界センサとしてのZ軸用ループコイル131,132,133,134とを有している。
【0035】
基板40は、第1L字部41と、第2L字部42と、連結部43とを有する。第1L字部41は、X軸位置成分が負でありY軸位置成分が正となる位置に形成されており、第2L字部42は、X軸位置成分が正でありY軸位置成分が負となる位置に形成されている。連結部43は、X軸位置成分及びY軸位置成分が正となる位置に形成されている。
【0036】
第1L字部41のX軸負方向の先端寄りには、略正方形状をなす突出部44が、X軸(Y=0)からY軸負方向側へ出っ張るように形成されている。第1L字部41のY軸正方向の先端には、長方形状をなす突出部45が、Y軸(X=0)からX軸正方向へ出っ張るように形成されている。
【0037】
第2L字部42のX軸正方向の先端寄りには、略正方形状をなす突出部46が、X軸(Y=0)からY軸正方向側へ出っ張るように形成されている。第2L字部42のY軸負方向の先端には、長方形状をなす突出部47が、Y軸(X=0)からX軸負方向へ出っ張るように形成されている。さらに、計測ポイントPとなる基板40の中心部には、円弧状スリット部48が形成されている。
【0038】
そして、基板40には、計測ポイントPを挟んでY軸上で対向し、かつ、計測ポイントPからの距離が同一となる位置に、Z軸用ループコイル131,133が設けられており、計測ポイントPを挟んでX軸上で対向し、かつ、計測ポイントPからの距離が同一となる位置に、Z軸用ループコイル132,134が設けられている。そして、各Z軸用ループコイル131,132,133,134は、その長径方向がY軸方向と一致し、短径方向がX軸方向と一致するように基板40上に取り付けられている。
【0039】
本実施形態では、各ループコイル111,112,113,114,121,122,123,124,131,132,133,134は全て同一楕円形状であり、かつ、各軸用磁界プローブ11,12,13についても互いに同一形状であることを特徴とする。ここで、「同一」であるとは、当該技術分野の技術常識に照らして、通常、「同一」と判断される範囲の同一性を有していれば、「同一」であると解釈する。
【0040】
以上、詳述した各軸用磁界プローブ11,12,13は、
図2に示すように、計測ポイントPとなる中心位置を一致させた状態で一体に組み付けられる。このとき、各軸用磁界プローブ11,12,13の円弧状スリット部28,38,48において円弧部分が切り欠かれて開放されている部位から、各軸用磁界プローブ11,12,13の各軸を一致させるように組み付ける。組み合わせられた際、組み合わせの中心部、すなわち各円弧状スリット部28,38,48の内側部位が計測ポイントPとなる。
【0041】
そして、X軸用ループコイル111の内側に、Y軸用磁界プローブ12の突出部34がX軸負方向側から挿通し、X軸用ループコイル113の内側に、Y軸用磁界プローブ12の突出部36がX軸正方向側から挿通するように組み付けされる。また、Y軸用ループコイル122の内側に、Z軸用磁界プローブ13の突出部46がY軸負方向側から挿通し、Y軸用ループコイル124の内側に、Z軸用磁界プローブ13の突出部44がY軸正方向側から挿通する。
【0042】
さらに、Z軸用ループコイル131の内側に、X軸用磁界プローブ11の突出部24がZ軸正方向側から挿通し、Z軸用ループコイル133の内側に、X軸用磁界プローブ11の突出部26がZ軸負方向側から挿通する。
【0043】
上述のように各軸用磁界プローブ11,12,13が一体に組み付けられると、
図2に示すように、X軸用ループコイル111とY軸用ループコイル121、X軸用ループコイル113とY軸用ループコイル123、Y軸用ループコイル122とZ軸用ループコイル132、Y軸用ループコイル124とZ軸用ループコイル134、Z軸用ループコイル131とX軸用ループコイル112、Z軸用ループコイル133とX軸用ループコイル114とが、楕円中心のXYZ座標を共通とする同位置に配置される。
【0044】
[電界計測処理]
次に、本実施形態の電界計測装置101を用いた電界計測処理、すなわち計測ポイントPにおける電界ベクトルEの算出方法について説明する。まず、3次元空間内において、計測ポイントPが磁界検出部1の原点と一致するように磁界検出部1を配置する。
【0045】
次に、計測ポイントPの磁界ベクトルHを算出する。各軸方向の磁界成分について、X軸用ループコイル111,112,113,114の検出結果からその平均値を算出することにより、X軸方向の磁界成分Hxを求める。同様に、Y軸用ループコイル121,122,123,124の検出結果からY軸方向の磁界成分Hyを、Z軸用ループコイル131,132,133,134の検出結果からZ軸方向の磁界成分Hzを求める。
【0046】
一方、電界ベクトルEの算出は、計測ポイントPにおける各軸方向の電界成分として、Y軸用ループコイル121,122,123,124とZ軸用ループコイル131,132,133,134の検出結果からX軸方向の電界成分Exを、Z軸用ループコイル131,132,133,134とX軸用ループコイル111,112,113,114の検出結果からY軸方向の電界成分Eyを、X軸用ループコイル111,112,113,114とY軸用ループコイル121,122,123,124の検出結果からZ軸方向の電界成分Ezを求める。
【0047】
ここで、各軸の電界成分は、マクスウェル方程式から導出される磁界と電界の関係を利用して求める。マクスウェル方程式によれば、電界と磁界は式(1)に示すように関係付けられる。
【数1】
【0048】
式(1)より、計測ポイントP(i,j,k)におけるX軸方向の電界成分Exについては式(2)、Y軸方向の電界成分Eyについては式(3)、Z軸方向の電界成分Ezについては式(4)の関係が得られる。
【数2】
【0049】
式(2)〜式(4)により、各軸方向の電界成分Ex、Ey,Ezを算出する。なお、磁界成分及び電界成分の算出は計算処理部2によって実行される。
【0050】
[効果]
本実施形態では、各ループコイル111,112,113,114、121,122,123,124,131,132,133,134を同一の楕円形状とすることで、異なる2軸用のループコイル、例えばX軸用ループコイル111とY軸用ループコイル121、X軸用ループコイル112とZ軸用ループコイル131等を互いに干渉させることなく楕円中心を同座標位置に配置することができる。すなわち、各ループコイルの中心から計測ポイントPまでの距離が等しく、かつコイル面積が同一である磁界検出部1の装置構成を容易に実現することができる。
【0051】
さらに、全てのループコイル111,112,113,114、121,122,123,124,131,132,133,134は、コイル面積が同一であり計測ポイントPからの距離が等しいため、各磁界成分を求める際には単純平均値を用いれば良く、距離やコイル面積に応じて重み付けした加重平均値をわざわざ用いる必要もなく、簡易な処理で磁界成分を検出し、ひいては電界成分を算出することができる。すなわち、電界計測装置101の処置負荷を軽減することができる。
【0052】
本実施形態では、各軸用磁界プローブ11,12,13のそれぞれに円弧状スリット部28,38,48を形成しており、円弧部分が切り欠かれて開放されている部位から各軸用磁界プローブ11,12,13を組み付けることが可能である。つまり、円弧状スリット部28,38,48が各軸用磁界プローブ11,12,13を組み合わせる際の逃げとして機能するため、各軸用磁界プローブ11,12,13の基板20,30,40を互いに干渉させることなく容易に3つの各軸用磁界プローブ11,12,13を組み合わせることができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、3つの各軸用磁界プローブ11,12,13がすべて同一形状であるため、製造が容易であり、装置構成を簡易化することができる。さらには、装置全体の小型化を図ることができ、装置によって被測定電磁界が攪乱されることを抑制し、精度の良い計測結果を得ることができる。
【0054】
〈第2実施形態〉
[構成]
次に、本発明の第2実施形態の電界計測装置102について、
図6を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0055】
本実施形態の電界計測装置102は、第1実施形態と同様の構成である磁界検出部1と、磁界検出部1を移動させるステージ51と、磁界検出部1の各軸用磁界プローブ11,12,13を切り替えるスイッチ52と、各軸用磁界プローブ11,12,13の信号を増幅するアンプ53と、磁界検出部1の検出結果から磁界成分及び電界成分を算出する計算処理部54とを備えている。
【0056】
ステージ51は、磁界検出部1を移動可能に保持し、磁界検出部1の3次元空間内での位置を制御する。ステージ51は、特許請求の範囲に記載の「位置制御手段」に相当する。スイッチ52は、検出信号の取得対象となる磁界センサを切り替える。アンプ53は、スイッチ52を介して取得した検出信号を増幅する。計算処理部54は、スイッチによって選択された磁界センサから出力される検出信号を順次周波数解析する周知のスペクトルアナライザからなる。
【0057】
なお、ステージ51、スイッチ52、計算処理部54は、CPU、ROM、RAMを中心に構成される周知のマイクロコンピュータにより制御される。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏し、さらに、ステージ51によって磁界検出部1を自動的に所望の計測位置に移動させることができ、より高度な電界計測を行うことができる。
【0058】
〈他の実施形態〉
上記各実施形態では、全てのループコイル111,112,113,114、121,122,123,124,131,132,133,134を同一の楕円形状としたが、本発明では、例えば同座標位置に配置されるループコイルのうち、一方のループコイルのみ楕円形状とし他方のループコイルを正円形状に形成しても良い。この場合でも、同座標位置に異なる2軸用のループコイルを配置することができる。また、楕円形状をなすループコイルと正円形状をなすループコイルのコイル面積を同じくすれば、上記各実施形態と同様に、各軸方向の磁界成分を求める際には加重平均をとることなく簡易な処理で磁界及び電界を算出することができる。
【0059】
その他、本発明のループコイルの形状は、円及び楕円形状に限らず、多角形状等であっても良い。ループコイルのコイル面積が異なる場合に各軸方向の磁界成分を求める際には、コイル面積に応じて重み付けした加重平均値を用いれば良い。
【0060】
上記各実施形態における円弧状スリット部28,38,48は円弧形状に形成したが、3軸の各軸用磁界プローブ11,12,13が組み付けられる際に基板20,30,40が干渉しないように逃げ部として機能することができれば、その他の形状でも良い。
【0061】
上記各実施形態では、各軸用磁界プローブ11,12,13をすべて同一形状としたが、多少の形状の相違がある構成でも良い。
上記実施形態において、さらにポインティングベクトルSを求める構成としても良い。ポインティングベクトルSは、電界ベクトルEと磁界ベクトルHの外積として求められ、この算出は計算処理部2,54が実行する。
【0062】
上記各実施形態において、計測結果としての電界ベクトルEの出力を、例えば図示しない表示装置にて表示するようにしても良い。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。