(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンテナコイル形成用巻線治具(20)と、給線ノズル(13)と、前記給線ノズル(13)を三軸方向に移動させる移動手段(52)と、前記給線ノズル(13)から供給される線材(18)に張力を付与するテンション装置(53)とを備えたアンテナコイル形成用巻線装置において、
前記アンテナコイル形成用巻線治具(20)は方形状を成す台板(21)と前記台板(21)の少なくとも4隅に立設され突出端に複数の凹溝(22b,22c,22d,22e)を有する線材ガイド(22)を備え、
前記移動手段(52)は前記給線ノズル(13)を前記台板(21)に直交させた状態で前記台板(21)に平行に移動可能に構成された
ことを特徴とするアンテナコイル形成用巻線装置
アンテナコイル形成用巻線治具(20)に、給線ノズル(13)から繰り出される線材(18)の巻初め端部(18a)を保持する巻初め線材保持溝(23c)と、巻終わり端部(18b)を保持する巻終わり線材保持溝(23d)が形成され、
巻終わり線材保持溝(23d)から前記給線ノズル(13)に延びる線材(18)を切断可能に構成された切断装置(59)を更に備えた請求項1記載のアンテナコイル形成用巻線装置。
線材(18)の外径が0.3〜1.0mmであり、給線ノズル(13)の内径が前記線材(18)の外径の1.1〜1.5倍であるように構成された請求項1又は2記載のアンテナコイル形成用巻線装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、非接触給電装置に用いられるアンテナコイルは、その給電容量の大きさから、比較的太い線材から成るものを用いる必要がある。このような太い線材から成るアンテナコイルを従来と同様に、外径と突き出し高さがそれぞれ異なる円柱または円筒状の複数のガイドピンに線材を巻き付けて、アンテナコイルを形成すると、比較的太い線材に付与される張力が比較的大きなものとなるために、そのような線材が引き回されるガイドピンの強度が不足するおそれがある。
【0010】
この点を解消するために、ガイドピンの直径を拡大させてその強度を向上させると、そこに巻き付けられる線材の曲率半径が拡大して、比較的小さな曲率半径で折れ曲がるコーナー部を有する所望の形状のアンテナコイルを得ることができないことになる。
【0011】
また、従来のアンテナコイルの製造方法では、外径と突き出し高さがそれぞれ異なる複数のガイドピンに線材を螺旋状に巻きつけた後に、その螺旋状の線材を同一平面内に成形して平板状のアンテナコイルを得るとしている。けれども、線材が太いと、その弾性力も高まり、螺旋状に巻回された線材を同一平面内になるように成形しても、弾性により螺旋状に復元してしまうこともあり得る。すると、同一平面内におけるアンテナコイルの形成が困難になることも考えられる。
【0012】
本発明の目的は、例え線材が太くても、所望の形状のアンテナコイルを得るアンテナコイル形成用巻線装置及びそれを用いたアンテナコイル形成方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、同一平面内に存在する線材から成るアンテナコイルを安定して得るアンテナコイル形成用巻線装置及びそれを用いたアンテナコイル形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、アンテナコイル形成用巻線治具と、給線ノズルと、給線ノズルを三軸方向に移動させる移動手段と、給線ノズルから供給される線材に張力を付与するテンション装置とを備えたアンテナコイル形成用巻線装置の改良である。
【0015】
その特徴ある構成は、アンテナコイル形成用巻線治具は方形状を成す台板と台板の少なくとも4隅に立設され突出端に複数の凹溝を有する配線ガイドを備え、移動手段は給線ノズルを台板に
直交させた状態で台板に平行に移動可能に構成されたところにある。
【0016】
このアンテナコイル形成用巻線装置では、アンテナコイル形成用巻線治具に、給線ノズルから繰り出される線材の巻初め端部を保持する巻初め線材保持溝と、巻終わり端部を保持する巻終わり線材保持溝が形成され、巻終わり線材保持溝から給線ノズルに延びる線材を切断可能に構成された切断装置を更に備えることもできる。
【0017】
そして、線材の外径が0.3〜1.0mmであり、給線ノズルの内径が線材の外径の1.1〜1.5倍であるように構成されたことが好ましい。
【0018】
一方、本発明のアンテナコイル形成方法は、上述したアンテナコイル形成用巻線装置を用いるものであって、給線ノズルを台板に
直交させた状態で台板に平行に台板の4隅に設けられた配線ガイドに順次移動させ、給線ノズルから台板に
直交する方向に繰り出された後に台板に平行になるように所定の曲率で折れ曲がる線材の湾曲部を線材ガイドの突出端に形成された凹溝に順次進入させて、台板の4隅に設けられた配線ガイドの凹溝に4隅が進入する方形状のアンテナコイルを得ることを特徴とする。
【0019】
この場合、凹溝の深さを線材の断面半径を超えて直径未満に形成し、台板の4隅に設けられた配線ガイドの凹溝に4隅が進入する方形状のアンテナコイルに基板を重合させて、凹溝から突出する線材を基板に接着させる基板接着工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアンテナコイル形成用巻線装置及びそれを用いたアンテナコイル形成方法では、アンテナコイル形成用巻線治具における台板の4隅に立設された線材ガイドの突出端に凹溝を形成し、その凹溝に線材を進入させて、その配線ガイドの凹溝に4隅が進入する方形状のアンテナコイルを得るので、線材ガイドの強度を高めて巻線による変形を防止することにより、例え線材が太くても、所望の形状のアンテナコイルを得ることができる。
【0021】
また、配線ガイドに凹溝を形成し、その凹溝に進入させた線材がコーナー部となるアンテナコイルを得るので、所望の曲率半径を描くような凹溝とすることにより、コーナー部が拡大するようなことは回避され、所望の曲率半径で折れ曲がるコーナー部を有する所望の形状のアンテナコイルを得ることができる。
【0022】
更に、配線ガイドに凹溝を形成するので、それらの凹溝が同一平面になるように形成することにより、それらの凹溝に線材を進入させることにより得られたアンテナコイルは同一平面内に存在する線材から成るものと成り、同一平面内に存在する線材から成るアンテナコイルを安定して得ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明のアンテナコイル形成用巻線装置10を
図1に示す。この巻線装置10は、アンテナコイル形成用巻線治具20を備える。ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明のアンテナコイル形成用巻線装置10について説明する。
【0026】
図2に示すように、アンテナコイル形成用巻線治具20は、方形状を成す台板21と、その台板21の少なくとも4隅に立設された線材ガイド22を備える。この実施の形態におけるアンテナコイル形成用巻線治具20は、4本の線材ガイド22とともに、端部ガイド23と一対の端部案内ガイド24,25が台板21に立設されたものを示す。
【0027】
図2における台板21は比較的厚肉の上面視で長方形状を成す板材であって、
図1に示すように、この台板21は、基台11に設けられた取り付け具12に水平状態で取り外し可能に取付けられるものである。
【0028】
そして、アンテナコイル形成用巻線治具20を構成する台板21は、取り付け具12に取り付けられた状態で短辺をX軸方向に向けて取り付けられるものとし、端部ガイド23はその台板21の上面における略中央部分に立設される。
【0029】
図2に戻って、端部ガイド23の突出端には、X軸方向に並んで一対の突起23a,23bが形成され、その一対の突起23a,23bの間には、後述する給線ノズル13が通過可能な隙間が形成される。そして、一方の突起23aには、その給線ノズル13(
図1)から繰り出される線材18の巻初め端部18aを保持する巻初め線材保持溝23cがX軸方向に延びて形成される。
【0030】
また、端部ガイド23の突出端に形成された他方の突起23bには、
図3に示すように、巻終わり端部18bを保持する巻終わり線材保持溝23dがX軸方向に延びて形成される。
【0031】
図2に示すように、台板21の4隅に立設された線材ガイド22は円柱状を成し、その突出端の台板21の隅部に対応する位置に上面視で扇状を成す扇状突起22aが形成され、この扇状突起22aに円弧状の凹溝22b,22c,22d,22eが複数形成される。この円弧状の凹溝22b,22c,22d,22eの形成手段の一例を
図7に示す。
【0032】
この
図7に示すように、円柱状の線材ガイド22の先端に、先ず複数の凹溝22b,22c,22d,22e、この実施の形態では4本の凹溝22b,22c,22d,22eを同心状に形成する。その後、斜線で示す部分を切削して削除する。これにより、円弧状の凹溝22b,22c,22d,22eが複数形成された扇状突起22aを線材ガイド22の先端に残存させることができる。
【0033】
そして、線材ガイド22の先端に残存させる扇状突起22aは、台板21の隅部に対応する位置に残存させる。このため、上面視において扇状突起22aの一対の半径線22f,22gは、それに隣接する線材ガイド22に臨むものとなり、台板21は上面視で方形を成すので、その一対の半径線22f,22gが成す扇状突起22aの中心角は直角となるものである。
【0034】
また、この扇状突起22aに残存する凹溝22b,22c,22d,22eは線材ガイド22の軸心を中心とする円弧状を成すものとなり、線材ガイド22の半径方向に所定の間隔を開けて複数本、この実施の形態では4本形成されることになる。
【0035】
これらの凹溝22b,22c,22d,22eは線材18を収容可能な幅に形成され、これらの凹溝22b,22c,22d,22eに収容された線材18は、その端縁である扇状突起22aの半径線22f,22gから突出するとX軸又はY軸に沿って真っ直ぐに延びて、隣接する線材ガイド22にまで達するように形成される(
図3)。
【0036】
図2に戻って、一対の端部案内ガイド24,25は円柱状を成し、長方形を成す台板21の短辺の両側に形成された線材ガイド22の略中央部分に立設される。
【0037】
一方の端部案内ガイド24は、巻初め線材保持溝23cに端部が保持されてその保持溝23cからこの一方の端部案内ガイド24に延びる線材18を所定の曲げ率でその一方の端部案内ガイド24に隣接する一方の線材ガイド22に向かわせるものである。
【0038】
このため、この一方の端部案内ガイド24の突出端には、上面視で扇状を成す突起24aが形成され、この扇状突起24aに円弧状の凹溝24bが形成される。この突起24aの形成手順は上述した線材ガイド22における扇状突起22aと同一であり、その突起24aに残存して形成される凹溝24bは、一方の端部案内ガイド24の軸心を中心とする円弧状を成して形成される。
【0039】
そして、この凹溝24bは、巻初め線材保持溝23cに端部が保持された線材18を進入させることにより、その線材18を隣接する線材ガイド22に形成された最も外側の凹溝22bに向かわせるように形成される。
【0040】
他方の端部案内ガイド25は、その他方の端部案内ガイド25に隣接する他方の線材ガイド22から延びる線材18を巻終わり線材保持溝23dが形成された突起23bに所定の曲げ率でに向かわせるものである。
【0041】
このため、この他方の端部案内ガイド25の突出端には、上面視で扇状を成す突起25aが形成され、この突起25aに円弧状の凹溝25bが形成される。この突起25aの形成手順にあっても上述した線材ガイド22における扇状突起22aと同一であり、凹溝25bは他方の端部案内ガイド25の軸心を中心とする円弧状を成して形成される。
【0042】
そして、この凹溝25bは、隣接する線材ガイド22の最も内側の凹溝22eから来る線材18が進入することにより、その線材18を所定の曲げ率で折り曲げて、巻終わり線材保持溝23dが形成された突起23bに向かわせるように形成される。
【0043】
ここで、
図4及び
図5に示すように、台板21に立設された4本の線材ガイド22と、端部ガイド23と他方の端部案内ガイド25における先端に設けられた扇状突起22aの先端縁から台板21まで距離L1はそれぞれ等しく形成される。
【0044】
そして、それらの扇状突起22a,25aに形成された単一の又は複数の凹溝22b,22c,22d,22e,23c,23d,25bの深さはそれぞれ等しく形成され、この実施の形態では、線材18の断面直径の1.1〜2.0倍、望ましくは1.5倍の深さに形成されるものとする。従って、線材ガイド22と、端部ガイド23と他方の端部案内ガイド25に形成された凹溝22b,22c,22d,22e,23c,23d,25bは、台板21に平行な同一平面内において形成されるものとする。
【0045】
一方、
図5に示すように、一方の端部案内ガイド24における先端に設けられた突起24aの先端縁から台板21まで距離L2は、線材ガイド22等における距離L1よりも、線材18の直径分だけ短く形成される。
【0046】
そして、一方の端部案内ガイド24における突起24aに形成された単一の凹溝24bの深さは、線材ガイド22等に設けられた凹溝22b,22c,22d,22e等の深さと同じく形成される。
【0047】
従って、一方の端部案内ガイド24における突起24aに形成された単一の凹溝24bは、他の線材ガイド22等に形成された凹溝22b,22c,22d,22eを含む平面に対して、線径分だけずれて形成されるものとする。
【0048】
図1に戻って、本発明のアンテナコイル形成用巻線装置10は、このようなアンテナコイル形成用巻線治具20とともに、給線ノズル13と、給線ノズル13を三軸方向に移動させる移動手段52と、給線ノズル13から供給される線材18に張力を付与するテンション装置53とを備える。そして、上述したアンテナコイル形成用巻線治具20は、基台11に設けられた取り付け具12に取り外し可能に取付けられる。
【0049】
この実施の形態における線材18は、絶縁被覆導線であって、Cuよりなる導線と、その導線の外周面を被覆するように形成された絶縁被覆とを有するものであり、その外径が0.3〜1.0mmのように、比較的太い線材18が用いられる場合を示す。
【0050】
給線ノズル13はそのような比較的太い線材18が貫通する真っ直ぐな中空のパイプ状物であって、その線材18を挿通させる内径が線材18の外径の1.1〜1.5倍に成るようなものが用いられる。このような給線ノズル13は、基台11に対して
直交するようにZ軸方向に延びて支持板54に固定され、ノズル移動手段52はこの支持板54をその基台11に対して3軸方向に移動可能に構成される。
【0051】
この実施の形態におけるノズル移動手段52は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ56〜58の組み合わせにより構成される。このノズル移動手段52を構成する各伸縮アクチュエータ56〜58は、細長い箱形ハウジング56d〜58dと、そのハウジング56d〜58d内部に長手方向に伸びて設けられサーボモータ56a〜58aによって回動駆動されるボールネジ56b〜58bと、このボールネジ56b〜58bに螺合して平行移動する従動子56c〜58c等によって構成される。
【0052】
そして、これらの各伸縮アクチュエータ56〜58は、サーボモータ56a〜58aが駆動してボールネジ56b〜58bが回転すると、このボールネジ56b〜58bに螺合する従動子56c〜58cがハウジング56d〜58dの長手方向に沿って移動可能に構成される。
【0053】
この実施の形態では、給線ノズル13が設けられる支持板54をX軸方向に移動可能にX軸方向伸縮アクチュエータ56のハウジング56dに取付け、そのX軸方向伸縮アクチュエータ56とともにその支持板54をZ軸方向に移動可能に、X軸方向伸縮アクチュエータ56の従動子56cがZ軸方向伸縮アクチュエータ57の従動子57cに取付けられる。
【0054】
また、そのX軸及びY軸方向伸縮アクチュエータ56,57とともにその支持板54をY軸方向に移動可能に、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ57のハウジング57dがY軸方向伸縮アクチュエータ58の従動子58cに取付けられる。
【0055】
そして、Y軸方向伸縮アクチュエータ58のハウジング58dがY軸方向に伸びて基台11に固定される。それらの各伸縮アクチュエータ56〜58における各サーボモータ56a〜58aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。
【0056】
図1に示すように、X軸方向伸縮アクチュエータ56のハウジング56dには、支持板54とともに鉛直方向に延びる取付板55が取付けられる。
【0057】
そして、この取付板55には、給線ノズル13を通過した線材18をエア圧により切断する切断装置59(特許出願番号;特願2010−87668)が設けられる。
【0058】
切断装置59は、図示しないコントローラからの指令により駆動するエアシリンダ60を介して取付板55に取付けられる。このエアシリンダ60により切断装置59は、下降してそのカッタ歯59bが線材18を切断する切断位置と、上昇してその線材18から離間する待機位置との間を移動可能に構成される。
【0059】
これにより、この切断装置59は給線ノズル13とともに移動し、図示しないコントローラにより制御可能に構成される。
【0060】
一方、テンション装置53は、繰出される線材18に張力を与えるとともにその線材18を引き戻し可能なものである。この実施の形態におけるテンション装置53は、基台11に設けられたケーシング61と、そのケーシング61のY軸方向における側面に設けられたドラム62及びテンションバー63とを備える。
【0061】
線材18はドラム62に巻き付けられ、そのドラム62を回転させて線材18を繰出す繰出し制御モータ64がケーシング61の内部に設けられ、ドラム62から繰出された線材18はテンションバー63の先端における転向プーリ63aに導かれる。転向プーリ63aに導かれた線材18はその転向プーリ63aから給線ノズル13を貫通するように配線される。
【0062】
ここで、符号54aは、転向プーリ63aから給線ノズル13に向かう線材18を更に転向させて、転向させた線材18を給線ノズル13に真っ直ぐに挿通させる補助プーリであり、この補助プーリ54aは、給線ノズル13とともに移動するX軸方向伸縮アクチュエータ56のハウジング56dに枢支される。
【0063】
テンションバー63は、基端の回動軸63bを支点としてX軸方向に回動可能となっている。この回動軸63bの回動角度は、ケーシング61内に収容され回動軸63bに取付けられた回動角度検出手段としてのポテンショメータ65により検出される。ポテンショメータ65の検出出力は図示しないコントローラに入力され、コントローラからの制御出力が繰出し制御モータ64に接続される。
【0064】
また、テンションバー63の回動軸63bと転向プーリ63aとの間の所定位置には、テンションバー63の回動方向に付勢力を与える付勢手段としての弾性部材であるスプリング66の一端が取付けブラケット63cを介して取付けられる。
【0065】
テンションバー63は、弾性部材であるスプリング66によって回動角度に応じた弾性力が及ぼされる。このスプリング66の他端は、移動部材67に固定される。
【0066】
この移動部材67はテンション調節ネジ68の雄ネジ68aに螺合しており、この雄ネジ68aの回転に従って移動調整が可能に構成される。このように、スプリング66の他端の固定位置は変更可能に構成され、テンションバー63によって付与される線材18の張力を調節可能に構成される。
【0067】
そして、外径が0.3〜1.0mmの比較的太い線材18を用いるこの実施の形態において、このテンション装置53は、少なくとも、その線材18に単位断面積当たり一定範囲の張力を付与しうるようにスプリング66が選択される。
【0068】
図示しないコントローラは、回動角度検出手段であるポテンショメータ65により検出された回動角度が所定の角度となるように繰出し制御モータ64を制御するように構成される。従って、このテンション装置53では、スプリング66によりテンションバー63を介して線材18に張力を与えて、そのテンションバー63が所定の角度になるようにドラム62が回転して所定量の線材18が繰出される。よって、線材18の張力は所定の値に維持されるようになっている。
【0069】
次に、このような巻線装置を用いた本発明のアンテナコイル形成方法を説明する。
【0070】
本発明のアンテナコイル形成方法は、上述したアンテナコイル形成用巻線装置10を用いるものであって、給線ノズル13を台板21に
直交させた状態で台板21に平行に台板21の4隅に設けられた線材ガイド22に順次移動させ、給線ノズル13から台板21に
直交する方向に繰り出された後に台板21に平行になるように所定の曲率で折れ曲がる線材18の湾曲部18cを線材ガイド22の突出端に形成された凹溝22b,22c,22d,22eに順次進入させて、台板21の4隅に設けられた線材ガイド22の凹溝22b,22c,22d,22eに4隅が進入する方形状のアンテナコイル16(
図3)を得る方法である。
【0071】
以下に順序立てて説明すると、本発明の方法は、上述したアンテナコイル形成用巻線装置10を用いるので、先ず、ドラム62をケーシング61の側面に設け、そのドラム62に巻き付けられた線材18を引き出してテンションバー63の先端における転向プーリ63aに導き、その転向プーリ63aにおいて転向させた後に給線ノズル13にまで案内して、その給線ノズル13に貫通させるように配線する。
【0072】
この実施の形態において準備される線材18は、その外径が0.3〜1.0mmの比較的太い線材18とする。そして、準備される給線ノズル13は、その内径が線材18の外径の1.1〜1.5倍のものとする。給線ノズル13には線材18が上方から下方に挿通されるものとし、給線ノズル13の下端から下方に突出した線材18を水平方向、この実施の形態では切断装置59が設けられたX軸方向に折り曲げて、テンション装置53により付与される張力により、その線材18が給線ノズル13から抜け出すことを防止しておく。
【0073】
一方、アンテナコイル形成用巻線治具20は、その台板21を基台11に設けられた取り付け具12に、台板21の短辺をX軸方向に向けて取り付けておく。
【0074】
この状態から、給線ノズル13を台板21に
直交させた状態で移動させる。この給線ノズル13の移動はノズル移動手段52(
図1)により行われ、この給線ノズル13の移動にあっては、エアシリンダ60により切断装置59を上昇させて待機位置とし、切断装置59が給線ノズル13を移動させる際の障害になるようなことを防止する。
【0075】
給線ノズル13の移動は、先ず、
図2に示すように、台板21の上面における略中央部分に立設された端部ガイド23にまで案内し、端部ガイド23の突出端にX軸方向に並んで形成された一対の突起23a,23bの間の隙間に給線ノズル13を上方から進入させる。そして、給線ノズル13の下端から下方に突出してX軸方向に折り曲げられた線材18を巻初め端部18aとして、巻初め線材保持溝23cに挿入させる。
【0076】
次に、
図2の一点鎖線で示すように、一対の突起23a,23bの間の隙間にある給線ノズル13を一方の端部案内ガイド24に向けてY軸方向に移動させる。巻初め線材保持溝23cには巻初め端部18aがX軸方向に延びて挿入されているので、給線ノズル13をY軸方向に移動させても、その巻初め端部18aは巻初め線材保持溝23cに挿入された状態で残存する。従って、給線ノズル13からは、新たに線材18が繰り出されることになる。
【0077】
そして、給線ノズル13を移動させることにより、一方の端部案内ガイド24に向けてY軸方向に移動する給線ノズル13から繰り出される線材18を、その後、この一方の端部案内ガイド24の突出端に形成された円弧状の凹溝24bに進入させる。このように給線ノズル13を移動させることにより、巻初め線材保持溝23cに端部が保持されてその保持溝23cからこの一方の端部案内ガイド24に延びる線材18を折り曲げて一方の端部案内ガイド24に隣接する一方の線材ガイド22に向かうようにする。
【0078】
その後、給線ノズル13を台板21に平行に、台板21の4隅に設けられた線材ガイド22に順次移動させ、給線ノズル13から台板21に
直交する方向に繰り出された線材18を、線材ガイド22の突出端に形成された円弧状の凹溝22b,22c,22d,22eに順次進入させて、
図3に示すように、それらの凹溝22b,22c,22d,22eに4隅が進入する方形状のアンテナコイル16を形成する。
【0079】
ここで、線材18は、線材ガイド22の突出端に形成された円弧状の凹溝22b,22c,22d,22eに外側から順次進入させてアンテナコイル16を形成する。この場合の線材18の凹溝22b,22c,22d,22eへの具体的な進入方法は、
図6に示すように、給線ノズル13の下端を線材ガイド22の上縁近傍において台板21に平行に水平方向に移動させ、給線ノズル13から台板21に
直交する方向に繰り出された後に台板21に平行になるように所定の曲率で折れ曲がる線材18の湾曲部18cを線材ガイド22の凹溝22b,22c,22d,22eに順次進入させる。
【0080】
線材18は、その外径が0.3〜1.0mmである比較的太いものであり、給線ノズル13は、その内径dが線材18の外径の1.1〜1.5倍のものであるので、給線ノズル13から台板21に
直交するZ軸方向下方に方向に繰り出された線材18には、繰り出された後に台板21に平行になるまでの間に、所定の曲率で折れ曲がる湾曲部18cが必ず形成されることになる。
【0081】
ここで、外径が0.3mm未満の線材18は形成される湾曲部18cの曲率半径が小さくなって、凹溝22b,22c,22d,22eに進入する深さが不足するおそれがあり、外径が1.0mmを超える線材18では、その剛性が高まって給線ノズル13を用いた線材18の引き回しが困難になる不具合がある。
【0082】
また、給線ノズル13の内径dが線材18の外径の1.1倍未満であると、給線ノズル13と線材18との間の摩擦が増加して、給線ノズル13を用いた線材18の引き回しが困難になる不具合がある。
【0083】
また、給線ノズル13の内径dが線材18の外径の1.5倍を超えるものであると、給線ノズル13の内部において線材18が湾曲し、給線ノズル13から台板21に
直交するZ軸方向下方に線材18を繰り出すことが困難となる。すると、給線ノズル13の下端と、繰り出された後に台板21に平行になった線材18までの間の鉛直方向における隙間rが小さくなって、凹溝22b,22c,22d,22eに進入する深さが不足するおそれがある。
【0084】
給線ノズル13を台板21に平行に移動させ、線材18を凹溝22b,22c,22d,22eに順次進入させる際に、テンション装置53にあっては、給線ノズル13から繰り出される線材18に単位断面積当たり一定範囲の張力を付与するように調節する。
【0085】
ここで、線材18に付与される張力が小さ過ぎると、給線ノズル13から台板21に
直交するZ軸方向下方に方向に繰り出された線材18に形成される湾曲部18cが必要以上に大きくなって、その湾曲部18cを凹溝22b,22c,22d,22eに進入させることが困難となり、線材18に付与される張力が大き過ぎると、繰り出された線材18に形成される湾曲部18cの曲率半径が小さくなって、凹溝22b,22c,22d,22eに進入する深さが不足するおそれがある。
【0086】
給線ノズル13を台板21の4隅に設けられた線材ガイド22に順次移動させ、線材18を線材ガイド22の突出端に形成された円弧状の凹溝22b,22c,22d,22eに外側から順次進入させて、
図3に示すように、それらの凹溝22b,22c,22d,22eに4隅が進入する方形状のアンテナコイル16を形成すると、巻初め線材保持溝23cから一方の端部案内ガイド24に延びる線材18と、一方の端部案内ガイド24を挟む両側の線材ガイド22間に掛け渡される線材18とが交差することになる。
【0087】
けれども、
図5に示すように、一方の端部案内ガイド24における突起24aに形成された単一の凹溝24bは、他の線材ガイド22等に形成された凹溝22b,22c,22d,22eを含む平面に対して、線径分だけずれて形成されているので、一方の端部案内ガイド24を挟む両側の線材ガイド22間に掛け渡される線材18に対して、巻初め線材保持溝23cから一方の端部案内ガイド24に延びる線材18がずれることになる。このため、一方の端部案内ガイド24を挟む両側の線材ガイド22間に掛け渡される線材18が、巻初め線材保持溝23cから一方の端部案内ガイド24に延びる線材18に接触して湾曲するようなことはない。
【0088】
よって、台板21の4隅に設けられた線材ガイド22の突出端に形成された円弧状の凹溝22b,22c,22d,22eに4隅が進入する
図3に示す方形状のアンテナコイル16は単一の平面内に存在するものとなる。
【0089】
そして、このようなアンテナコイル16が形成された後には、そのアンテナコイル16の巻終わりの線材18である巻終わり端部18bを巻終わり線材保持溝23dに保持させる。
【0090】
具体的には、
図3に示すように、線材ガイド22から他方の端部案内ガイド25にまで給線ノズル13を移動させ、その他方の端部案内ガイド25に形成された凹溝25bに線材18を進入させ、その凹溝25bに沿って視平面内において線材18の進行方向を転向させる。そして、その他方の線材ガイド22から巻終わり線材保持溝23dが形成された突起23bにその線材18を向かわせる。
【0091】
その後、その給線ノズル13を一対の突起23a,23bの間の隙間に位置させた後に、X軸方向に移動させ、端部ガイド23の突起23bに形成された巻終わり線材保持溝23dに、その給線ノズル13から下方に繰り出される線材18を進入させ、その巻終わり線材保持溝23dに進入して保持された線材を巻終わり端部18bとする。
【0092】
その後、エアシリンダ60(
図1)を介して切断装置59を下降させて切断位置とし、そのカッタ歯59bにより、巻終わり線材保持溝23dから給線ノズル13に延びる線材18を切断する。これにより、台板21の4隅に設けられた線材ガイド22の凹溝22b,22c,22d,22eに4隅が進入する方形状のアンテナコイル16を独立させる。
【0093】
線材18を切断すると、
図1に示す様に、給線ノズル13の下端から下方に突出した線材18は、切断装置59が設けられたX軸方向に折り曲げられた状態で切断されることになるので、テンション装置53により張力が付与されていても、その線材18が給線ノズル13から抜け出すようなことはない。このため、直ちに次の巻線を開始することが可能になる。
【0094】
また、台板21の4隅に設けられた線材ガイド22の凹溝22b,22c,22d,22eに4隅が進入するアンテナコイル16は、その後巻線治具20とともに取り付け具12から取り外され、このアンテナコイル16に基板を接着する別の工程に搬送される。その取り付け具12には、別の巻線治具20が取り付けられ、新たな巻線が直ちに開始されることになる。
【0095】
このように、本発明のアンテナコイル形成用巻線装置10及びそれを用いたアンテナコイル形成方法では、アンテナコイル形成用巻線治具20における台板21の4隅に立設された線材ガイド22の突出端に凹溝22b,22c,22d,22eを形成し、それらの凹溝22b,22c,22d,22eに線材18を進入させて、それらの凹溝22b,22c,22d,22eに4隅が進入する方形状のアンテナコイル16を得るので、線材ガイド22の強度を高めて巻線による変形を防止することにより、例え線材18が太くても、所望の形状のアンテナコイル16を得ることができる。
【0096】
また、配線ガイド22に凹溝22b,22c,22d,22eを形成し、その凹溝22b,22c,22d,22eに進入させた線材18がコーナー部となるアンテナコイル16を得るので、所望の曲率半径を描くような凹溝22b,22c,22d,22eとすることにより、コーナー部の拡大は回避され、所望の曲率半径で折れ曲がるコーナー部を有する所望の形状のアンテナコイル16を得ることができる。
【0097】
更に、配線ガイド22に凹溝22b,22c,22d,22eを形成するので、それらの凹溝22b,22c,22d,22eが同一平面になるように形成することにより、それらの凹溝22b,22c,22d,22eに線材18を進入させることにより得られたアンテナコイル16は同一平面内に存在する線材18から成るものと成り、同一平面内に存在する線材18から成るアンテナコイル16を安定して得ることが可能になる。
【0098】
なお、上述した実施の形態では、アンテナコイル16を巻線治具20とともに基台11から取り外して別工程に搬送し、アンテナコイル16に基板を接着する基板接着工程をその別工程において行う場合を説明した。けれども、巻線治具20を基台11から取り外すことなく、この基板接着工程を行うようにしても良い。
【0099】
また、上述した実施の形態では、単一の又は複数の凹溝22b,22c,22d,22e,23c,23d,25bの深さが線材18の断面直径の1.1〜2.0倍、望ましくは1.5倍に形成される場合を説明した。けれども、
図8に示すように、4本の線材ガイド22の扇状突起22aに形成された複数の凹溝22b,22c,22d,22eの深さhを、線材18の断面半径を超えて直径未満に形成するようにしても良い。すると、それらの凹溝22b,22c,22d,22eに進入した線材18は、その上縁が凹溝22b,22c,22d,22eから突出することになる。
【0100】
このため、台板21の4隅に設けられた線材ガイド22の端縁に形成された凹溝22b,22c,22d,22eに4隅が進入する方形状のアンテナコイル16に、接着層17aが片面に形成された基板17を重合させることにより、凹溝22b,22c,22d,22eから突出する線材18はその基板17に接着される。よって、凹溝22b,22c,22d,22eの深さhを、線材18の断面半径を超えて直径未満に形成することにより、基板17にアンテナコイル16を接着する基板接着工程を比較的容易にすることが可能になる。