特許第6336853号(P6336853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6336853-ドレン回収装置 図000002
  • 特許6336853-ドレン回収装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336853
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ドレン回収装置
(51)【国際特許分類】
   F22D 11/00 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   F22D11/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-162914(P2014-162914)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-38176(P2016-38176A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(72)【発明者】
【氏名】隈元 匡章
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−116206(JP,A)
【文献】 特開平04−151100(JP,A)
【文献】 特開2001−324295(JP,A)
【文献】 米国特許第5611673(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を凝縮させる蒸気使用機器に接続され、該蒸気使用機器で蒸気の凝縮により発生したドレンが回収される回収管と、該回収管の途中に設けられ、上下流の圧力差によってドレンを下流側へ排出するスチームトラップと、上記回収管に接続され、吸引作用により上記スチームトラップの下流側を減圧する吸引機構とを備えたドレン回収装置であって、
上記スチームトラップにおいて蒸気が下流側へ洩れる異常状態を検出する洩れ検出器と、
上記回収管における上記スチームトラップの下流側の圧力が第1閾値以上になると、上記吸引機構を駆動させる一方、上記回収管における上記スチームトラップの下流側の圧力が上記第1閾値以上になっても、上記洩れ検出器が上記異常状態を検出しているときは、上記吸引機構の駆動を阻止する制御部とを備えていることを特徴とするドレン回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドレン回収装置において、
上記制御部は、上記吸引機構を駆動させた後、上記回収管における上記スチームトラップの下流側の圧力が上記第1閾値よりも低い第2閾値まで低下すると、上記吸引機構を停止させることを特徴とするドレン回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気使用機器で発生したドレンを吸引作用によって回収するドレン回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、蒸気使用機器において蒸気が凝縮して発生したドレン(復水)を回収するドレン回収装置(復水回収装置)が知られている。このドレン回収装置は、蒸気使用機器に配管を介して接続される吸引機構(復水回収ポンプ)を備えており、上記配管の途中にはスチームトラップが設けられている。このドレン回収装置では、蒸気使用機器で発生したドレンがスチームトラップに流入する。また、吸引機構の吸引作用によってスチームトラップの下流側の圧力が減圧され、スチームトラップにおの上流側と下流側とで圧力差が生じる。スチームトラップに流入したドレンは、上下流の圧力差によって下流側へ排出される。こうして、蒸気使用機器で発生したドレンが回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−356305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなドレン回収装置では、一般に、スチームトラップの下流側の圧力が所定値以上になると、吸引機構が駆動される。即ち、スチームトラップの下流側の圧力が所定値以上になると、スチームトラップにおいてドレンを排出させるための必要な圧力差を得られないため、吸引機構によってスチームトラップの下流側の圧力を減圧させる。
【0005】
しかしながら、上述した吸引機構の駆動制御では、消費エネルギーが無駄に嵩んでしまう場合があった。即ち、上記の駆動制御によれば、スチームトラップにおいて蒸気が下流側へ洩れるという異常状態が発生しているときであっても、スチームトラップの下流側の圧力が所定値以上になると吸引機構が駆動される。スチームトラップにおいて蒸気が下流側へ洩れているときは、排出口が閉じられていないという異常状態ではあるものの、スチームトラップからドレンを排出させるという機能は満たされているため、スチームトラップの下流側の圧力を減圧させる必要はない。そのため、このような場合に吸引機構を駆動させることは、吸引機構を無駄に駆動させることとなり、吸引機構の消費エネルギーが無駄に嵩んでしまう。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸引機構の消費エネルギーが無駄に嵩むのを防止することができるドレン回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蒸気を凝縮させる蒸気使用機器に接続され、該蒸気使用機器で蒸気の凝縮により発生したドレンが回収される回収管と、該回収管の途中に設けられ、上下流の圧力差によってドレンを下流側へ排出するスチームトラップと、上記回収管に接続され、吸引作用により上記スチームトラップの下流側を減圧する吸引機構とを備えたドレン回収装置を前提としている。そして、本発明のドレン回収装置は、上記スチームトラップにおいて蒸気が下流側へ洩れる異常状態を検出する洩れ検出器と、上記回収管における上記スチームトラップの下流側の圧力が第1閾値以上になると、上記吸引機構を駆動させる一方、上記回収管における上記スチームトラップの下流側の圧力が上記第1閾値以上になっても、上記洩れ検出器が上記異常状態を検出しているときは、上記吸引機構の駆動を阻止する制御部とを備えているものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のドレン回収装置によれば、スチームトラップの下流側の圧力が第1閾値以上になっても、スチームトラップにおいて蒸気が洩れるという異常状態が発生しているときは、吸引機構を駆動させないようにした。そのため、吸引機構の消費エネルギーが無駄に嵩むのを防止することができる。言い換えれば、スチームトラップからドレンを排出させるという機能を満たしつつも、吸引機構の消費エネルギーを低減することができる。その結果、ドレン回収装置の省エネルギー化を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る冷却装置の概略構成を示す配管系統図である。
図2図2は、制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の蒸気システム1は、蒸気使用系統2とドレン回収系統10を備えている。ドレン回収系統10は、本発明に係るドレン回収装置を構成している。
【0012】
蒸気使用系統2は、蒸気使用機器4を備えており、その蒸気使用機器4に蒸気の供給菅3が接続されている。供給菅3は、例えばボイラー(図示省略)に接続されており、ボイラーで生成された蒸気が蒸気使用機器4に供給される。供給菅3には、蒸気の流量を調整する供給弁5が設けられている。蒸気使用機器4は、例えば熱交換器であり、供給菅3から供給された蒸気が対象物に放熱して凝縮し、対象物が加熱される。蒸気は、凝縮することによってドレン(復水)になる。つまり、蒸気使用機器4では蒸気の凝縮潜熱によって対象物が加熱(潜熱加熱)される。
【0013】
ドレン回収系統10は、回収管11と、スチームトラップ12と、真空発生ユニット15とを備えており、蒸気使用機器4で蒸気の凝縮により発生したドレンを回収するものである。なお、図示しないが、ドレン回収系統10によって回収されたドレンは例えばボイラーの給水タンクに供給される(戻される)。
【0014】
回収管11は、一端(流入端)が蒸気使用機器4に接続され、他端(流出端)が真空発生ユニット15に接続されている。回収管11は、蒸気使用機器4で発生したドレン(復水)が回収される。スチームトラップ12は、回収管11の途中に設けられ、蒸気使用機器4で発生したドレンが回収管11を介して流入する。スチームトラップ12は、その上下流の圧力差(上流側の圧力と下流側の圧力との差)によって、流入したドレンのみを下流側へ自動的に排出するものである。なお、実際、スチームトラップ12には蒸気混じりのドレンが流入する。また、回収管11には、スチームトラップ12よりも下流側に逆止弁13が設けられている。逆止弁13は、図1に矢印で示すとおり、スチームトラップ12側から真空発生ユニット15側へ向かうドレンの流れのみを許容する。
【0015】
真空発生ユニット15は、ドレンタンク16と、循環配管17と、ポンプ18と、エゼクタ19とを有しており、本発明に係る吸引機構を構成している。ドレンタンク16は、回収管11を介して回収されたドレンが貯留されるものである。循環配管17は、ドレンタンク16に接続されている。つまり、循環配管17は、一端(流入端)がドレンタンク16の下部に接続され、他端(流出端)がドレンタンク16の上部に接続されている。循環配管17には、上流側(流入端側)から順に、ポンプ18およびエゼクタ19が設けられている。また、真空発生ユニット15では、回収管11がエゼクタ19の吸引口に接続されている。
【0016】
真空発生ユニット15では、ポンプ18によってドレンタンク16のドレン(水)が循環配管17を通って循環する。真空発生ユニット15は、ポンプ18によってドレンタンク16の水が、エゼクタ19の流入口に供給され、エゼクタ19の流出口から排出されることにより、エゼクタ19の吸引口において吸引作用が生じるように構成されている。真空発生ユニット15は、エゼクタ19の吸引作用によって、回収管11におけるスチームトラップ12の下流側の圧力(以下、下流側圧力とも言う。)を減圧すると共に、スチームトラップ12から排出されたドレンを回収するものである。つまり、真空発生ユニット15は、スチームトラップ12においてドレンを排出させるための必要な圧力差を生じさせるために、スチームトラップ12の下流側を所定の真空減圧状態にする。なお、真空発生ユニット15には、回収したドレン(水)をボイラーの給水タンクに供給するための供給菅25が接続されている。供給菅25は、循環配管17におけるポンプ18とエゼクタ19との間に接続され、供給流量を調整するための供給弁26が設けられている。
【0017】
さらに、ドレン回収系統10は、洩れ検出器21と、圧力スイッチ22と、制御部30とを備えている。洩れ検出器21は、スチームトラップ12に設けられており、スチームトラップ12において蒸気が下流側へ洩れるという異常状態を検出し、その検出信号を制御部30に出力するものである。圧力スイッチ22は、回収管11におけるスチームトラップ12と逆止弁13との間に設けられている。圧力スイッチ22は、回収管11におけるスチームトラップ12の下流側圧力が所定の閾値になったことを検出し、その検出信号を制御部30に出力するものである。所定の閾値は、第1閾値(例えば、−20kPaG)と、その第1閾値よりも低い第2閾値(例えば、−40kPaG)の2つである。制御部30は、圧力スイッチ22の検出信号と洩れ検出器21の検出信号に基づいて、真空発生ユニット15の駆動制御(即ち、ポンプ18の駆動制御)を行うものである。制御部30の詳細な制御動作については後述する。
【0018】
〈運転動作〉
蒸気システム1の運転動作について説明する。蒸気システム1では、蒸気使用系統2による加熱動作と、ドレン回収系統10による回収動作とが行われる。蒸気使用系統2では、供給弁5が所定の開度に設定された状態で、所定温度の蒸気が供給菅3から蒸気使用機器4に供給され、その蒸気が対象物と熱交換して凝縮し、対象物を所定温度で加熱する。一方、ドレン回収系統10では、蒸気使用機器4で発生したドレンが回収管11を介してスチームトラップ12に流入する。そして、真空発生ユニット15(ポンプ18)が駆動されることにより、スチームトラップ12の上流側圧力と下流側圧力との間に所定の圧力差が生じて、スチームトラップ12からドレンが下流側へ排出される。この排出されたドレンは、真空発生ユニット15に吸引されてドレンタンク16に貯留される。
【0019】
〈制御部の動作〉
制御部30は、スチームトラップ12の下流側圧力(以下、単に下流側圧力Pと言う。)が第1閾値以上になると、ポンプ18(真空発生ユニット15)を駆動させる一方、下流側圧力Pが第1閾値以上になっても、洩れ検出器21が異常状態を検出しているときは、ポンプ18(真空発生ユニット15)の駆動を阻止するように構成されている。また、制御部30は、ポンプ18(真空発生ユニット15)を駆動させた後、下流側圧力Pが第2閾値まで低下すると、ポンプ18(真空発生ユニット15)を停止させるように構成されている。
【0020】
具体的に、制御部30の制御動作について図2を参照しながら説明する。先ず、制御部30では、下流側圧力Pが第1閾値以上であるか否かが判断される(ステップST1)。つまり、圧力スイッチ22から第1閾値に関する検出信号(以下、第1閾値の検出信号と言う。)が出力されたか否かが判断される。下流側圧力Pが第1閾値未満であると、即ち圧力スイッチ22から第1閾値の検出信号が出力されていないと、ポンプ18が停止される(ステップST5)。つまり、ポンプ18の駆動が阻止される。下流側圧力Pが第1閾値以上であると、即ち圧力スイッチ22から第1閾値の検出信号が出力されていると、ステップST2に移行する。
【0021】
ステップST2では、制御部30によって、洩れ検出器21が異常状態を検出しているか否かが判断される。つまり、洩れ検出器21から検出信号が出力されているか否かが判断される。洩れ検出器21が異常状態を検出していないと、即ち洩れ検出器21から検出信号が出力されていないと、ポンプ18が駆動される(ステップST3)。下流側圧力Pが第1閾値以上になると、スチームトラップ12において必要な圧力差を得ることができず、スチームトラップ12からドレンを排出させることが困難となる。そこで、ポンプ18が駆動されることにより、下流側圧力Pが減圧されて、スチームトラップ12において必要な圧力差を生じさせることができる。これにより、スチームトラップ12からドレンを排出させることができ、そのドレンをドレンタンク16に回収することができる。
【0022】
ステップST3でポンプ18を駆動させた後、制御部30では、下流側圧力Pが第2閾値以下になったか否かが判断される(ステップST4)。つまり、圧力スイッチ22から第2閾値に関する検出信号(以下、第2閾値の検出信号と言う。)が出力されたか否かが判断される。下流側圧力Pが第2閾値よりも高いと、即ち圧力スイッチ22から第2閾値の検出信号が出力されていないと、ポンプ18は継続して駆動し続ける。下流側圧力Pが第2閾値以下に低下すると、即ち圧力スイッチ22から第2閾値の検出信号が出力されると、ポンプ18が停止される(ステップST5)。これにより、下流側圧力Pが必要以上に低くなる、即ち下流側圧力Pが過剰な真空減圧状態になるのを未然に防止することができる。
【0023】
また、ステップST2において、洩れ検出器21が異常状態を検出していると判断されると、即ち洩れ検出器21から検出信号が出力されていると判断されると、ポンプ18が停止される(ステップST5)。つまり、下流側圧力Pが第1閾値以上であっても、スチームトラップ12において蒸気が下流側へ洩れるという異常状態が発生している場合は、ポンプ18の駆動が阻止される。ここでは、ポンプ18(真空発生ユニット15)を駆動させなくても、即ち下流側圧力Pを減圧しなくても、スチームトラップ12からドレンを排出させることができる。
【0024】
以上のように、上記実施形態のドレン回収系統10によれば、スチームトラップ12の下流側圧力が第1閾値以上になっても、スチームトラップ12において蒸気が洩れるという異常状態が発生しているときは、ポンプ18(真空発生ユニット15)を駆動させないようにした。そのため、ポンプ18(真空発生ユニット15)の消費エネルギーが無駄に嵩むのを防止することができる。つまり、スチームトラップ12からドレンを排出させるという機能を満たしつつも、ポンプ18(真空発生ユニット15)の消費エネルギーを低減することができる。その結果、ドレン回収系統10の省エネルギー化、引いては蒸気システム1の省エネルギー化を向上させることができる。
【0025】
また、上記実施形態のドレン回収系統10によれば、ポンプ18(真空発生ユニット15)を駆動させた後、スチームトラップ12の下流側圧力が第2閾値まで低下すると、ポンプ18(真空発生ユニット15)を停止させるようにした。そのため、スチームトラップ12の下流側圧力が過剰な真空減圧状態になるのを未然に防止することができる。これにより、回収管11が潰れる等の過剰な真空減圧状態による影響を防止することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、蒸気使用機器で発生したドレンをスチームトラップを介して吸引するドレン回収装置について有用である。
【符号の説明】
【0027】
1 蒸気システム
4 蒸気使用機器
10 ドレン回収系統(ドレン回収装置)
11 回収管
12 スチームトラップ
15 真空発生ユニット(吸引機構)
21 洩れ検出器
30 制御部
図1
図2