(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態に従った、第1の状態において第1の本体から第2の本体に熱エネルギーを伝達するための構造体を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1の実施形態に従った、第2の状態において第1の本体から第2の本体に熱エネルギーを伝達するための構造体を示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に従った、多層の電気熱量構造体を示す切り取り側面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に従った、不動態化された構造を示す多層の電気熱量構造体を示す切り取り側面図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の別の実施形態に従った、第1の状態において第1の本体から第2の本体に熱エネルギーを伝達するための構造体を示す概略側面図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示の別の実施形態に従った、第2の状態において第1の本体から第2の本体に熱エネルギーを伝達するための構造体を示す概略側面図である。
【
図5C】
図5Cは、本開示の別の実施形態に従った、第3の状態において第1の本体から第2の本体に熱エネルギーを伝達するための構造体を示す概略側面図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の実施形態に従った、第1の状態における、電気活性層を含む多層の電気熱量構造体を示す切り取り側面図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の実施形態に従った、第2の状態における、電気活性層を含む多層の電気熱量構造体を示す切り取り側面図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示の実施形態に従った、第1の状態における、多層電気熱量構造体を含む電気熱量の熱エネルギー伝達装置の一実施形態を示す切り取り側面図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示の実施形態に従った、第2の状態における、多層電気熱量構造体を含む電気熱量の熱エネルギー伝達装置の一実施形態を示す切り取り側面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に従った、別の懸架要素を有する、第1の本体から第2の本体に熱エネルギーを伝達するための構造体を示す概略側面図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に従った、さらに別の懸架要素を有する、第1の本体から第2の本体に熱エネルギーを伝達するための構造体を示す概略側面図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に従った、そしてさらに別の懸架要素を有する、第1の本体から第2の本体に熱エネルギーを伝達するための構造体を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の詳細を不必要に分かりにくくしないよう、周知の開始材料、加工技術、構成部品、設備、およびその他の周知な詳細の説明は、単に要約しただけである、あるいは省略されていることを最初に申し上げておく。したがって、詳細が周知でない場合には、その詳細を本開示の出願に残して、これらの詳細に関する選択を提案する、あるいは指示する。
【0013】
本明細書では、対象物の冷却処理または加熱処理の一部として、電気熱量キャパシタを熱源とヒートシンクに交互に接続させる種々の技術および装置を開示する。ある実施形態では、電気熱量キャパシタの温度を修正するために用いられるものと同一または同様の電界および/または電圧で熱源/ヒートシンクとの接続も制御される。
【0014】
ある熱力学サイクルに従って、好適な電気熱量材料を冷却される対象物と物理的接触するよう配置する(あるいは、一般に電気熱量材料を1枚以上のその他の層と接触させ、これらの層を冷却される対象物への熱経路として機能することも可能であるが、本明細書では説明を簡単にするために、電気熱量材料と冷却される対象物が直接接触するものとする。そして、変形例も本明細書の範囲に含まれることは理解されよう)。まず、冷却される対象物の温度Tcは、電気熱量材料の温度Tbよりも高く、このことを本明細書ではTb<Tcで示す。経時的に、冷却される対象物からのいくらかの熱エネルギー量ΔQが、電気熱量材料に伝達され、そして冷却される対象物は冷却され、電気熱量材料の温度はTb+ΔTまで上昇する。
【0015】
次いで、電気熱量材料が冷却される対象物との物理的接触位置から離れ、ヒートシンクと物理的に接触するように、冷却される対象物に対する電気熱量材料およびヒートシンクの位置を変更する(あるいは、一般に電気熱量材料を、その他の1枚以上の層と接触させ、これらの層をヒートシンクへの熱経路として機能させることも可能であるが、本明細書では、説明を簡単にするために、電気熱量材料とヒートシンクは直接接触するものとする。そして変形例も本明細書の範囲に含まれることは理解されよう)。ある実施形態では、ヒートシンクの温度Thは、「Tb+ΔT」よりも高い。したがって、電気熱量材料から効率的に熱を伝達させるために、電気熱量材料全体に渡って電界を印加して、その温度をThより高くする。これにより、熱エネルギーが電気熱量材料からヒートシンクへ伝達され、そして、その熱エネルギーは冷却される対象物からヒートシンクに往復する。電気熱量材料の温度がほぼTbに戻ったら、この電界は電気熱量材料から取り除くことができる。そして、この電気熱量材料は、冷却される対象物との物理的接触位置に戻ることができ、この処理が繰り返される。上記の例により、所望の対象物を冷却することができるが、本明細書でさらに議論する通り、所望の対象物を加熱することも同様に実現可能であることは理解されよう。
【0016】
図示する通り、下記の特定の実施形態では、電圧源により2枚の層、2本の電極、2つの端子などの間に電圧がかけられる。このような、2枚の層、2本の電極、2つの端子などは、電気熱量材料の両側に配置される。それらの層、電極、端子などにかけられる電圧により、電気熱量材料の温度が制御される。さらに、このような層、電極、端子などの一方を、ヒートシンクまたは熱源上に、あるいはヒートシンクまたは熱源に隣接させて配置する。これらの層、電極、端子等と、それに対応する層、電極、端子等(上記の電気熱量構造体上に配置された)との間にかけられる電圧により、この電気熱量構造体の動作は制御される。ある実施形態では、単一の電圧が電気熱量構造体の温度と位置の両方を制御する制御信号として機能することができる。この意味で、電圧を温度制御信号および動作制御信号と呼ぶことができる。別の言い方をすれば、単一の供給源で温度制御信号および動作制御信号を同時に供給することができる。
【0017】
図1および
図2を参照して、本開示に従った、熱伝達システムの第1の実施形態10を説明する。冷却される対象物12の温度は、初期温度T1である。懸架装置16により運ばれる電気熱量構造体14は、対象物12と物理的に接触して配置されている。この接触により、例えば、懸架装置によりバイアスをかけることができ、この懸架装置はスプリングなどでよい(変形例を本明細書でさらに議論する)。
【0018】
いくつかの実施形態に従うと、電気熱量構造体14は、上面と底面に配置されたオーミック層20および22を有する電気熱量本体18(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン)共重合体、フッ素系共重合体P(VDF−TrFE)などの重合体および共重合体、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)などのセラミック材料)を含む。これらのオーミック層20および22は、例えば、切り替え可能電圧源Vと電気的に接続する。この切り替え可能電圧源Vが、電圧の形態で信号を供給して、電気熱量材料18内で電界を選択的に生成する。電界が生成されてない場合、あるいは電界が第1の状態(V↓により示される)とすると、電気熱量構造体14の温度がT2となり、「T2<T1」の関係が成り立つ。電気熱量構造体14の温度が「ΔT1」の量分だけ変化して、この電気熱量構造体14の温度が、新しく温度「T2+ΔT1」となる。
【0019】
第1の状態「V↓」のときヒートシンク構造体24が、電気熱量構造体14に近接するが、実際には離れて配置されている。ヒートシンク構造体24は、電圧源と電気的に接続する(実際に、特定の実施形態では、電圧源Vと接続する)不動態化されたオーミック層26、または同様の構造体を含むことができる。この接続では、オーミック層22とオーミック層26の間に電圧がかけられて電界が生成されたとき、あるいはこの電界を第2の状態(「V↑」により示される)とすると、オーミック層22とオーミック層26が互いに引きつけられる。これにより、電気熱量構造体14は移動し、対象物12との物理的接触位置からは離れ、シンク24と物理的に接触する(不動態化されたオーミック層26を介して)。
【0020】
この電界(V↑)は、オーミック層20とオーミック層22の間にかけられる電圧を通して、電気熱量材料18にもかけられる。これにより、電気熱量効果を通じて、電気熱量材料18の温度が上り、新しい温度T3となり、「T3>T2+ΔT1」の関係が成り立つようになる。
【0021】
ヒートシンク24は、最初に「T3>T4」となるよう温度T4が設定される。次いで、いくらかの熱エネルギー量「ΔQ2」を、電気熱量構造体14からヒートシンク24に伝達することができる。それにより、熱エネルギーが、対象物12からシンク24に往復する。次いで、この電圧源の電圧を設定閾値より下の値に切り替えて電界を弱める、あるいはこの電圧を取り除く、これにより電気熱量材料18は温度T2に冷却され、電気熱量構造体14は、スプリング力Fを通して対象物12との物理的接触位置まで戻される。上記の処理を繰り返すことができる。単一の電圧源Vを用いて、電気熱量構造体14の動作と電気熱量材18内の温度変化の両方のための電界を生成する場合、これらの目的のために自己同期した電界を生成することができる。
【0022】
尚、上述した説明は、少なくともシステムがほぼ安定した状態で動作しているときに当てはまる。このようなシステムの動作は、冷却される対象物の温度が徐々に下がり安定状態の温度に達するまで(あるいは、電気熱量構造体14の動作の各段階において、温度サイクルが発生するような安定状態に近づくまでの)の立ち上り時間から始まる。さらに、ヒートシンクの温度、または冷却される対象物の熱出力、あるいは同様のパラメータを変更した場合、このシステムは安定状態で動作しなくなる。一般に、安定状態を記載することにより、動作中のシステムの一例が提供され、異なる動作条件のもとでは、これらのシステムは異なった動作を行うことは当業者なら理解されよう。
【0023】
あるいは、動作制御信号および温度制御信号に関して同じ電圧をかけることで、オーミック層18とオーミック層22の間、およびオーミック層22とオーミック層26の間の電圧低下のタイミングと波形を制御して、電気熱量材料14とヒートシンク24の間の熱エネルギー伝達を最適化することが可能となる。例えば、センサ28により、電気熱量材料18の温度とヒートシンク24の温度が互いの設定閾値内であると感知されたとき、例えば、電気熱量材料18からの熱の抽出(および、したがって、装置および処理の熱効率)を最大にするために、この電圧を下げることができる。さらに、対象物12とヒートシンク24の間の電気熱量構造体14の動作が瞬時でないことを考慮すると、電圧の下降パターンまたは波形を用いて、例えば、電気熱量材料18の温度とヒートシンク24の温度が互いに接近したときに、電圧を下げることができ、そしてさらに、これらの2つの温度が設定弁別閾に達したときに、電気熱量構造体14がヒートシンク24から引き離されるように、スプリング16により(力Fにより)、電気熱量構造体14の動作を開始させることができる。このシステムのその他の構成要素の温度(および周囲温度)を、タイミング制御、電圧レベルおよび電圧波形などに関して用いることができ、ここで開示されるものは限定を意図するものではない。
【0024】
上記の電気熱量構造体14の静電駆動では、理想的には、高い電界が原因でオーミック層22とオーミック層26の間の隙間に渡ってアーク放電しないようシステムを設計しなければならない。これを実現させる一つの手段として、少なくとも真空に近い状態(例えば、10−3トルから10−4トル)でこの処理が行われ、電気熱量構造体16の移動距離(すなわち、対象物12とシンク24の間の間隔)を比較的に小さくする(例えば、約数マイクロメートル以下)。これらの条件を緩和するために、電気熱量構造体16の駆動に関して他の実施形態が用いられる。例えば、電気熱量構造体16を静電駆動させる(および、そのためのオーミック層などの構成要素)代わりに、磁気駆動の構成も検討されている。この実施形態では、1枚以上の上述のオーミック層が電磁石コイルの構造体と交換され、この電磁石コイルの構造体は、元来の形態で形成される、あるいは1つ以上の電気熱量構造体14および/またはヒートシンク24の表面に適用して形成されている。対応する磁気(鉄の)層を電気熱量構造体14上に、および/またはヒートシンク24上に形成して、これにより、電圧をかけることにより、磁場を形成して電気熱量構造体14を引きつけて対象物12との物理的接触から分離させ、ヒートシンク24と物理的に接触させるようにすることができる。起磁場(motive magnetic field)を生成するために用いられる電圧と同じ電圧を用いて、電気熱量材料内の電界も生成することができる、あるいは、上記の通り、この電圧と電界を生成するために用いられる電圧を同期させることができ、再度記載するが、電界生成を自己同期させることもできる。
【0025】
もちろん、本開示を考慮して、多くの変更形態、およびその他の実施形態が提示される可能性はある。例えば、オーミック層を離散電極構造体、全面層等として形成することもできる。さらに、接触する層および材料の数を変更することもできる。電気熱量構造体と、冷却される対象物および/またはヒートシンクとの間の熱伝達は、電極を介して行うことができる、あるいは、電気熱量層を形成する電気熱量材料と、冷却される対象物および/または容器との間で直接物理的に接触するよう、この構造体を設定することができる。熱伝導材料、放熱グリス、液体膜、液体の小滴、炭素ナノチューブ「ターフ」などの1枚以上の表面層を電気熱量構造体、冷却される対象物、および/またはヒートシンクのうちの1つ以上に配置して、熱的接触を向上させることが可能であることは言うまでもない。コイルスプリング、二重片持ちスプリング、磁気バイアスなどにより、この積層体を懸架する方法を変更することも可能である。これらの変形例はそれぞれ、冷却される対象物とヒートシンクの間の切り替え可能な熱経路の機能を提供することが可能であり、このヒートシンクは、システムを含む材料の電気熱量効果を用いる。
【0026】
ある実施形態では、上記のタイプの電気熱量構造体は、
図3に示した構造体などの多層積層構造体でよい。この構造体30は、オーミック材料32(例えば、金属)と電気熱量材料34(例えば、P(VDF−TrFE)、PZT)とが交互に配置された交互層からなる。このシステムの構成要素の材料とサイズの相関関係は、ある実施形態では、層32が約20nmから10μmで、層35が約100nmから50μmでよい。層32aおよび層32b、層32bおよび層32cなどの連続金属層は、電圧源Vと電気的に接続して、例えば、その中に入る電気熱量の層34aおよび34b内で電界がそれぞれ生成されるようにすることができる。このような構成により、所与の電気熱量材料の体積に対して、制限された電圧以内で、高い電界を供給することが可能となる。
【0027】
図1および
図2に示された実施形態に従うと、ヒートシンク24の上のオーミック層26を不動態化してオーミック層22とオーミック層26の間の短絡を防止しなければならない。
図4に示す通り、例えば、オーミック層26の上に誘電層36を塗布することによりこれを実現可能である。あるいは、オーミック層22がその上に塗布される不活性層を備えてもよい、またはオーミック層22とオーミック層26の両方を不動態化してもよい。
【0028】
図5A〜
図5Cには、各動作の3つの異なる状態における、本開示の別の実施形態50が示されている。上記の実施形態と同様に、実施形態50には、冷却される対象物54とヒートシンク56の間に配置された電気熱量構造体52が含まれる。電界バイアスが全くかからないように、電気熱量構造体52は、1つ以上のスプリング66または同様の懸架機構により懸架されている。電気熱量構造体52は、実質的に冷却される対象物54とヒートシンク56の間で懸架されるが、必ずしもこれらとは接触していない(あるいは、前に記載した通り、電界が完全にかからない状態で、電気熱量構造体52は、冷却される対象物54とヒートシンク56のどちらかと、部分的にまたは完全に接触してもよい)。本実施形態では、電気熱量構造体52には第1のオーミック層58および第2のオーミック層60が設けられ、そして対象物54にはオーミック層62が設けられ、さらにヒートシンク56にはオーミック層64が設けられている。所望の電圧極性を印加することができるように、各オーミック層は電圧供給と接続する。あるいは、再度記載するが、静電駆動のためのオーミック層に代わりに、電磁駆動のためのコイルおよびそれに対応する磁気層、またはその他の構造を用いることも可能である。
【0029】
本実施形態の動作では、種々のオーミック層に電圧がかけられていないとき、電気熱量構造体52は、対象物54とヒートシンク56の両方の間で、かつ、それらから離れて配置されている。これを
図5Aに示す。層62が第1の極性を有し層58、60、および64がこれと反対の第2の極性を有するよう電圧をかけると、静電引力により電気熱量構造体52と対象物54が物理的に接触する。これを
図5Bに示す。層58および層60に印加される極性が同じであるため、電気熱量構造体には電界は生成されない。次いで、電気熱量構造体52は、対象物54から熱エネルギーを受け取ることができる。層58、62、および64が第2の極性を有し、層60が第1の極性(反対の極性)を有するよう電圧をかけると、静電引力により電気熱量構造体52は対象物54との物理的接触位置から離れ、ヒートシンク56と物理的に接触する。これを
図5Cに示す。層58および層60に印加された電圧は互いに反対の極性を有する。したがって、これにより、電気熱量効果のため電気熱量構造体52の温度が上昇する。次いで、ヒートシンク56は、電気熱量構造体52から熱エネルギーを受け取ることができる。
【0030】
図6Aおよび
図6Bには、本開示の実施形態70がさらに示されている。この実施形態70には、電気熱量材料を含む第1の層74、および電気活性重合体を含む第2の層76から形成される積層構造体72が含まれる。電気活性重合体では非対称な歪が発生し、したがって、電界にさらされると屈曲する。第1の電極78は電気熱量材料層74上に配置され、第2の電極80は電気活性重合体層76上に配置される。コモン電極79を電極78と電極80の間に、必要に応じて誘電層を介して、配置することができる。これらの電極78および80は、それぞれ電圧源V1およびV2と電気的に接続し、これらの電圧源V1およびV2は、層74および76の各層内に所望の強さの電界を生成するための十分な電圧を電極78と電極79の間、および電極79と電極80の間にかけることが可能である。これらの電界により、電気熱量効果および電気活性重合体の屈曲を通して、電気熱量材料の温度が変化可能となる。
【0031】
この積層構造体72は、冷却される対象物82とヒートシンク84の間に配置される。最初に、電極78と電極79の間、および電極79と電極80の間に電圧がかけられていないとき(または、少なくとも、電気活性重合体層76を屈曲させるためには不十分な電界しか生成されていないとき)、積層構造体72は、対象物82と接触して(あるいは、このような対象物につながる低い熱抵抗率の経路と接触して)配置される。これを
図6Aに示す。この位置で、積層構造体72は対象物82からいくらかの熱エネルギーを受け取り、効率的に対象物82を冷却する。電気活性材料層76の上で電気熱量材料層74を片持ち支持することなどにより、またはその他の同様な構成で、電気熱量材料層74が、対象物82(および、この構造体の状態によっては、シンク84)と直接物理的に(すなわち、熱的に)接触できるよう、電気熱量材料層74および電気活性層76を随意的に設定することができる。
【0032】
上述した通り、本実施形態に従うと、電圧源V1および電圧源V2により、層74および層76の各層の中にそれぞれ独立した電界が生成される。温度変化と積層構造体72の動作が自己同期するよう、これらの電圧の生成は協働して制御される。あるいは単一の電圧源(図示せず)が、電極78と電極80の間で単一の電界を生成して、電気熱量材料74内の温度を変化させ、かつ電気活性重合体76を物理的に屈曲させることができるように、層74および層76(および場合によっては電極など)の材料および寸法を選択可能である。
【0033】
次いで、層構造体72が対象物82との接触位置から離れてヒートシンク84と接触するように、電極79と電極80の間に(電圧源V2により供給された)電圧をかけ十分に高い電界を生成して、電気活性重合体層76を屈曲させることが可能である(すなわち、ヒートシンクにつながる低い熱抵抗率の経路)。これを
図6Bに示す。電圧源V1から供給される、電極78と電極79の間の第2の電圧により、電気熱量材料74の温度も上昇する。層構造体72の正味温度がヒートシンク84の温度を超えると、層構造体72からヒートシンク84に熱エネルギーが伝達される。次いで、電極78と電極79の間の電圧、および電極79と電極80の間の電圧を下げる、あるいは取り除いて、層構造体72の温度を下げ、対象物82との接触位置に戻すことが可能であり、この処理を繰り返す。このように、電気熱量材料74および電気活性重合体76は、自己同期して作動する。電圧を周期的に変動させることにより、この構造体を用いて(冷たい)対象物82から熱を繰り返し抽出し、その熱をヒートシンク84に戻すことができる。
【0034】
電極78と電極80の間の電圧を低下させるタイミングと波形を制御して、層構造体72とヒートシンク84の間の熱エネルギーの伝達を最適化することができる。例えば、層構造体72からの熱の抽出および、したがって、装置および処理の熱効率を最大にするために、例えば、センサ86により、層構造体の温度およびヒートシンク84の温度が互いの設定閾値内であると感知されたとき、この電圧を下げることが可能である。さらに、電圧の印加を止めた後、すぐに電気活性重合体76の弛緩が行われないことを考慮すると、2つの温度が設定弁別閾に達したときに層構造体72がヒートシンク84から引き離されるように、電圧の下降パターンまたは波形を用いて、例えば、積層構造体の温度とヒートシンク84の温度が互いに接近したときに、電圧を下げることができる。
【0035】
このように、上記の例は、ずっと熱エネルギー源とシンクの間に配置された個々の電気熱量構造体に限定されてきたが、本明細書で開示された実施形態の変形例に従うと、電気熱量構造体および中間構造体のアレイを、熱エネルギー源とシンクの間に配置することができる。例えば、
図7Aおよび
図7Bを参照すると、実施形態90が示されている。この実施形態90には、冷却される対象物92、ヒートシンク94、および複数の電気熱量構造体96aおよび96bなどが含まれる。上記で議論した通り、種々の電気熱量構造体96aおよび96bなどは、固定したオーミック層(図示せず)を含むことができ、次に、これらのオーミック層が不動態化されて、静電駆動の実施形態内の短絡を防ぐことができる。
【0036】
図7Aには、第1の電気熱量構造体96aが冷却される対象物92と熱的に接触し、第2の電気熱量構造体96bからは物理的に分離した、装置の一構成が示されている。構造体96cが、次に、構造体96bと熱的に接触するが、構造体96dからは物理的に分離する。このように、これらの電気熱量構造体は一対で熱的接触をしている。最後の電気熱量構造体96eは、ヒートシンク94から物理的に分離している(本明細書では、5つの電気熱量構造体のパターンに限定されず、任意の数だけ繰り返すことができるが)。
【0037】
図7Aに示される第1の構成は、スプリングなどの物理的バイアスにより、あるいは冷却される対象物92と第1の電気熱量構造体96aとの間にかけられる第1の電圧、および第2の電気熱量構造体96bと第3の電気熱量構造体96cとの間にかけられる第2の電圧などにより、あるいは、上記に記載した通り、別の機構により生成される静電力により作動することができる。
【0038】
図7Aに示す構成では、電気熱量構造体96bおよび96d全体に渡って比較的高い電圧がかけられ、電気熱量構造体96a、96c、および96e全体に渡って電圧をかけない、あるいは比較的低い電圧がかけられて、電気熱量構造体96aの温度が冷却される対象物92の温度より低く、かつ電気熱量構造体96cの温度が電気熱量構造体96bの温度より低く、かつ電気熱量構造体96eの温度が電気熱量構造体96dの温度より低くなるようにする。このように、対象物92から構造体96aに、かつ構造体96bから構造体96cに、かつ構造体96dから構造体96eに熱が伝達される。
【0039】
いくつかの実施形態では、構造体96bおよび構造体96dの全体に渡る比較的高い電圧が、熱的に接続する種々の構成要素間で静電引力を生成する電圧と同じでよい。このように、上記に記載した通り、この装置は「自己同期」する。
【0040】
上記に記載した通り、温度ベースの制御システムにより、あるいは、他の何らかの機構により決定された、固定した一定時間、熱が伝達された後、システムの構成は、
図7Bに示される第2の構成に変更される。実施形態によっては、構造体96aと構造体96bの間、構造体96cと構造体96dの間、および構造体96eとヒートシンク94の間に電圧をかけることによりこれを実行するものもある。いくつかの実施形態では、対象物92と構造体96aの間の静電電圧、構造体96bと構造体96cの間の静電電圧、構造体96dと構造体96eの間の静電電圧は低下する。その他の実施形態では、磁力、電気活性重合体、または上記に記載したその他の手段により、構成間の熱伝達を実行する。
【0041】
第2の構成では、電気熱量構造体96a、96c、および96eの全体に渡って比較的高い電圧をかけて、それらの温度を上げるようにし、電気熱量構造体96bおよび96dの全体に渡って電圧をかけないで、あるいは比較的低い電圧をかけて、構造体96bの温度が構造体96aの温度より低く、かつ構造体96dの温度が構造体96cの温度より低く、かつヒートシンク94の温度が構造体96eの温度より低くなるようにする。このように、構造体96aから構造体96bに、構造体96cから構造体96dに、および構造体96eからヒートシンク94に熱は伝達される。
【0042】
種々の実施形態では、構造体96a、96c、および96eの全体に渡る比較的高い電圧は、熱的に接続する種々の構成要素間で静電引力を生成する電圧と同じでよく、この電圧により電気活性重合体が起動される、あるいは磁気手段またはその他の起動手段が付勢される。
【0043】
再度記載するが、
図7Aおよび
図7Bには、5つの電気熱量構造体96a、96b、96c、96d、および96eが示されているが、これは単に本開示の一般的な趣旨を説明するための一実施形態に過ぎず、これより多いまたは少ない電気熱量構造体を有するシステムを使用することも可能である。
【0044】
上記の種々の実施形態に関連して図示し説明した通り、電気熱量構造体は片持ち支持タイプのスプリングにより一方から懸架可能である。この構成は理解を容易にするために示さており、多くの潜在的な懸架の実施形態のうちの一例に過ぎない。懸架する方法には、コイルスプリング、複数の片持ち支持スプリング、磁気バイアスなどにより変更することが可能である。例えば、
図8に示す実施形態100では、第1のスプリング108aおよび第2のスプリング108b(または、
図8の平面に延在する付加的なスプリング、あるいは別のスプリング(図示せず))により、電気熱量構造体102を熱エネルギー源104とシンク106との間で複数の側面から同等に懸架することが可能である。別の例として
図9に示す通り、実施形態110に従うと、電気熱量構造体112の下に配置されたスプリング118により、電気熱量構造体112を熱エネルギー源114とシンク116の間で懸架することが可能である。これらの実施形態では、スプリングおよび表面の導電性および不能動化は、静電式、磁気式、電気活性式などの上記のどの駆動方法も可能となるよう決定される。
図10には、さらに別の実施形態120が示されており、この実施形態120に従うと、電気熱量構造体122が熱エネルギー源124とシンク126の間に第1のスプリング128aおよび第2のスプリング128bにより上辺と底辺から懸架されている。明示的に示されていない、これらの懸架の構成およびその他の懸架の構成の組み合わせも、本明細書では検討される。これらの種々の実施形態により、様々な懸架の構成が検討されることが示され、これらの実施形態自体は、本開示の特許請求の範囲を制限するものではない。
【0045】
上記では冷却機能を説明してきたが、その他に、本明細書で開示されたシステムおよび方法では、加熱機能も提供可能であることは言うまでもない。例えば、冷却される対象物の代わりに、熱源を供給することができる。電気熱量装置の温度を制御する電界を印加した状態で、熱源と加熱される対象物の間の電気熱量装置の動作を同期させて再度制御することにより、この電気熱量装置は熱源から加熱される対象物に熱を往復させることができる。電気熱量装置が、熱源との熱的接触位置にあるとき電界は存在することができず、電気熱量装置は最初に熱源よりも冷却されている。この電気熱量装置は、熱源から熱を受け取り、次いで、上記の方法および構造体よって、加熱される対象物との熱的接触位置まで移動することができる。この電気熱量装置に電界を印加して、その温度を加熱される対象物の温度より高くし、それにより、電気熱量装置から、加熱される対象物への熱の伝達が可能になる。電気熱量装置の温度を制御する電界(複数可)と、電気熱量装置の動作を制御する電界(複数可)とは、同じ電圧から生成された同じ電界、あるいは別々の電圧供給の共同制御などにより、同期された電界でもよく、そのようなシステムが「自己同期」システムである。この電気熱量装置を熱源との熱的接触位置に戻すことができ、再度記載するが、上記の通り、この処理を繰り返す。
【0046】
第1の層が第2の層または基板の「上」または「上方」に配置されると言うとき、第1の層が第2の層または基板に直接接触している、あるいは、第1の層と第2の層または基板の間に、層また数枚の層を介していてもよいということは言うまでもない。さらに、第1の層が第2の層または基板の「上」または「上方」に配置されると言うとき、第1の層は、第2の層または基板全体、あるいは第2の層または基板の一部を覆い得る。例えば、熱伝導材料、放熱グリス、液体金属の小滴のアレイ、または別の同様の処理を上記の選択した層または構造体の上下に加えることにより、電気熱量材料と熱源/ヒートシンクとの間の熱伝達を容易にすることが可能である。
【0047】
現代の電気装置における物理学およびそれらの生産方法は絶対的なものではなく、むしろ所望の装置および/または所望の結果を導くための統計的な努力である。たとえ処理の再現性に最大限の注意が払われたとしても、製造施設の清浄性、開始材料および加工材料の純度などにより、結果はばらついたり不完全になったりする。したがって、本開示の明細書または請求項における制限は、絶対として読み取ることはできない、あるいは、読み取らないものとする。これらの請求項の制限とは、それらの制限までの、あるいは、それらの制限を含む本開示の境界を規定することを意図する。これをさらに強調すると、「実質的に」という用語は、本明細書では請求項の制限と関連して時折使用され得る(ばらつき、および不完全品に関する考慮は、この用語と共に使用される制限のみには限定されないが)。本開示自体の制限として正確に規定することは難しいが、この用語は「大体において」、「ほぼ実施可能な」、「技術的制限内で」などと解釈されることを意図される。
【0048】
前述の説明では、例および変形例が提示されてきたが、膨大な数の変形例が存在し、これらの例は単なるそれらの代表であり、本開示の範囲、適用性、または構成を多少なりとも制限することを意図していないということは理解されよう。上記に開示された種々のおよびその他の特徴および機能、あるいはその代替手段は、望ましくは、様々なシステムまたは適用例に組合せることが可能である。現在予期していない、または予見していない種々の代替形態、修正形態、変更形態、あるいは、その中の、またはその上の改良形態が、今後当業者により行われる可能性があるが、それらも下記の請求項に包含されることを意図するものとする。
【0049】
したがって、前述の説明が当業者に本開示を実施するための有益な指針を提供し、説明された例の機能および構成に対する種々の変更は、その請求項により規定される本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく実行可能であることは考慮されるものとする。