特許第6336866号(P6336866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

特許6336866半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム
<>
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000002
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000003
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000004
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000005
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000006
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000007
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000008
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000009
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000010
  • 特許6336866-半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336866
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20180528BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 27/10 20060101ALI20180528BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H01L21/285 C
   H01L29/78 371
   H01L27/10
   C23C16/455
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-191264(P2014-191264)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-109419(P2015-109419A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-220378(P2013-220378)
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
(72)【発明者】
【氏名】清野 篤郎
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0031786(US,A1)
【文献】 特開2004−273764(JP,A)
【文献】 特開2002−038271(JP,A)
【文献】 特開2013−213274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/285
C23C 16/455
H01L 21/336
H01L 27/10
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理面に金属含有膜が形成され、裏面および側面には金属含有膜が形成されていない基板に対して、金属含有ガスと第1の還元ガスとを時分割して所定回数供給して、前記基板上に圧縮応力を有する第1の非晶質金属層を形成する工程と、
前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に引っ張り応力を有する第2の非晶質金属層を形成する工程と、
を、前記基板を第1の温度に維持した状態で、時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する工程と、
前記非晶質金属膜が形成された基板を第1の温度より高い第2の温度で加熱する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記基板を前記第2の温度で加熱する工程では、前記非晶質金属膜が形成された基板を加熱することにより、前記非晶質金属層の少なくとも一部を結晶化させる請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の温度は100℃〜250℃の範囲内の温度であり、前記第2の温度は500〜1200℃の範囲内の温度である請求項1もしくは請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内の基板に対して金属含有ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1の還元ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2の還元ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内に収容された、処理面に金属含有膜が形成され、裏面および側面には金属含有膜が形成されていない基板に対して、前記金属含有ガスと前記第1の還元ガスとを時分割して所定回数供給して、前記基板上に圧縮応力を有する第1の非晶質金属層を形成する処理と、前記第1の非晶質金属層が形成された前記基板に対して、前記金属含有ガスと前記第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に引っ張り応力を有する第2の非晶質金属層を形成する処理と、を、前記基板を第1の温度に維持した状態で、時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する処理と、前記非晶質金属膜が形成された前記基板を第1の温度より高い第2の温度で加熱する処理と、を行わせるように、前記ヒータ、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、および前記第3ガス供給系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置の処理室に収容された、処理面に金属含有膜が形成され、裏面および側面には金属含有膜が形成されていない基板に対して、金属含有ガスと第1の還元ガスとを時分割して所定回数供給して、前記基板上に圧縮応力を有する第1の非晶質金属層を形成する手順と、
前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に引っ張り応力を有する第2の非晶質金属層を形成する手順と、
を、前記基板を第1の温度に維持した状態で、時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する手順と、
前記非晶質金属膜が形成された基板を第1の温度より高い第2の温度で加熱する手順と、
をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に薄膜を形成する半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路の高集積化および高性能化に伴い、従来よりも開口部が狭い極細溝への金属膜の成膜が求められている。金属膜としては、例えばフラッシュメモリやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリに用いられる電極や、電極間の配線等が考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
金属膜の開口部への埋め込みの際、結晶化した膜を用いると、結晶粒が粗大となったり、膜表面が粗くなり表面ラフネスが大きくなって空孔が生じてしまう場合がある。さらに空孔が凝集してボイドが発生して溝内に空隙が形成されてしまうことがあるが、空隙が形成されると膜の電気抵抗が上昇してしまうことがある。そのため低抵抗が求められる電極や配線に用いられる場合、ボイドの発生を抑制することが望ましい。しかし、表面ラフネス(単にラフネスともいう)を小さくするために非晶質(アモルファス)の膜を用いる場合、非晶質の膜を形成する際の処理温度を高くする必要があり、得られた金属膜の抵抗率が高くなってしまうという問題があった。
【0004】
本発明の主な目的は、上記問題を解決し、成膜過程でボイドの発生を抑制し、ラフネスが小さく、かつ抵抗率が低い良好な膜を形成する半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい一態様によれば、
基板に対して、金属含有ガスと第1の還元ガスとを時分割して所定回数供給して、前記基板上に第1の非晶質金属層を形成する工程と、
前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に第2の非晶質金属層を形成する工程と、
を、前記基板を第1の温度に維持した状態で、時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する工程と、
前記非晶質金属膜が形成された基板を第1の温度より高い第2の温度で加熱する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、成膜過程でボイドの発生を抑制し、ラフネスが小さく、かつ抵抗率が低い良好な膜を形成する半導体デバイスの製造方法、基板処理装置およびプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1に示す基板処理装置が有するコントローラの構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態における成膜シーケンスのタイムチャートを示す図である。
図5】本発明の一実施形態における成膜シーケンスを説明する図である。(図5(A):搬入されたウエハの状態を説明した図、図5(B):図5(A)の状態のウエハに対して本発明の第1の成膜工程を実施した状態の図、図5(C):図5(B)の状態のウエハに対して、本発明の第2の成膜工程を実施した状態の図、図5(D):図5(C)の状態のウエハに対して本発明の第1の成膜工程を実施した状態の図、図5(E):図5(D)の状態のウエハに対して本発明の第2の成膜工程を実施した状態の図、図5(F):第1の成膜工程および第2の成膜工程を繰り返すことで形成されるW膜を説明した図)
図6】本発明の一実施形態において形成した膜の膜質を説明する図である。(図6(a):非晶質層の評価結果を示す図、図6(b):図6(a)の非晶質層を600℃で加熱した層の評価結果を示す図)
図7】本発明の一実施形態において形成した膜の膜質を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態において形成した膜の膜質を説明する図である。
図9】本発明の他の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図10】本発明の他の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
フラッシュメモリやDRAM等のメモリに用いられる電極や、電極間の配線等に使用される金属膜としては、例えばタングステン(W)膜が用いられる。W膜の形成方法としては、基板に対して複数の処理ガスを同時に供給(連続供給)して気相中もしくは基板表面における複数の処理ガスの反応を利用することにより基板上に膜を形成する方法や、基板に対して複数の処理ガスを時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)供給することにより基板上に膜を形成する方法等がある。開口部が狭いプラグ等の極細溝へ金属膜を埋め込む場合は、より良好な膜厚均一性を得ることができる後者の複数の処理ガスを時分割して供給する方法が有効である。しかし、その場合、得られた金属膜の抵抗率が高くなってしまうため、通常、W膜の形成には前者の複数の処理ガスを同時に供給する方法を用いることが多い。
【0009】
また、極細溝へ金属膜を埋め込む場合は、ラフネスが大きいと好適に埋め込みができず空孔が生じ、その空孔が凝集してボイドが生じてしまうことがあるため、埋め込み時点の金属膜は非晶質状態であることが望ましい。しかし、W膜の結晶化温度は低く、複数の処理ガスを同時に供給する方法を用いる場合には200℃程度の温度で結晶化してしまう。
【0010】
発明者らは、鋭意研究を行い、200℃程度の温度で基板に対して複数の処理ガスを同時に供給して膜を形成した場合であっても一定の膜厚(a)までは非晶質のW層(A)を形成できることを見出した。さらに、基板に対してW含有ガスおよび不純物を含む還元ガスを時分割して供給して膜を形成することにより、200℃以下の低温でラフネスが小さい非晶質のW層(B)を形成できることを見出した。そして、非晶質のW層(A)の上に、非晶質のW層(B)を形成し、さらに非晶質のW層(A)を重ねて形成することにより、一定の膜厚(a)より厚い膜厚を有する非晶質のW膜を形成することができることを見出した。すなわち、非晶質のW層(A)の間に、非晶質のW層(A)が結晶化する最低膜厚より薄い膜厚を有する非晶質のW層(B)を挟む(非晶質のW層(A)と非晶質のW層(B)をラミネート(積層)する)ことにより、所望の膜厚を有する非晶質のW膜を形成することができることを見出した。さらに、非晶質のW膜をアニール処理(加熱処理)することにより、非晶質のW膜を結晶化することができ、基板上に結晶化したW膜を形成することができることを見出した。アニール処理時は基板を600℃程度に加熱するとよい。
【0011】
したがって、非晶質のW層(A)と非晶質のW層(B)を組み合わせて所望の膜厚を有する非晶質のW膜を形成し、その非晶質のW膜をアニールすることにより、ラフネスが小さく、かつ抵抗率が低く結晶化したW膜を、極細溝へ形成することができる。
【0012】
さらに、シリコン基板(シリコン酸化膜(SiO膜)が形成されている基板を含む)の上面に例えばチタン窒化膜(TiN膜)が形成され、裏面や側面等の面にはTiN膜等が形成されておらずシリコン基板が表面に晒されているような基板に対して、W層を形成する場合、TiN膜等が形成されていない部分では膜剥がれが起きやすい。発明者らは、上述のように非晶質のW層(A)と非晶質のW層(B)を組み合わせて所望の膜厚を有する非晶質のW膜を形成することにより、TiN膜等が形成されてない裏面や側面においても膜剥がれを抑制できることを見出した。その理由は以下の通りである。基板に対して複数の処理ガスを同時に供給して膜を形成して形成される非晶質のW層(A)は引っ張り応力を有するのに対して、基板に対してW含有ガスおよび不純物を含む還元ガスを時分割して供給して形成される非晶質のW層(B)は圧縮応力を有する。圧縮応力を有する非晶質のW層(A)を先に形成した後、引っ張り応力を有する非晶質のW層(B)を形成し、これを交互に繰り返すため、膜剥がれを抑制することができると考えられる。詳細は以下に説明する。
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態について図1および図2を用いて説明する。基板処理装置10は、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程である基板処理工程において使用される装置の一例として構成されている。
【0014】
(1)処理炉の構成
処理炉202には加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は上方が閉塞された円筒形状に形成されている。
【0015】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は耐熱性材料等(例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC))からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
【0016】
反応管203の下端には、ステンレス等の金属材料からなるマニホールド209が取り付けられている。マニホールド209は筒状に形成され、その下端開口は、ステンレス等の金属材料からなる蓋体としてのシールキャップ219により気密に閉塞される。反応管203とマニホールド209との間、および、マニホールド209とシールキャップ219との間には、それぞれシール部材としてのOリング220が設けられている。主に、反応管203、マニホールド209およびシールキャップ219により処理容器が構成され、この処理容器の内部に処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能なように構成されている。
【0017】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0018】
基板保持具としてのボート217は、複数、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、耐熱性材料等(例えば石英やSiC)からなる。ボート217の下部には、耐熱性材料等(例えば石英やSiC)からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。ヒータ207は処理室201内に収容されたウエハ200を所定の温度に加熱することができる。
【0019】
処理室201内には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。このように、処理炉202には3本のノズル410,420,430と、3本のガス供給管310,320,330とが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは3種類のガス(処理ガス、原料)をそれぞれ専用ラインで供給することができるように構成されている。
【0020】
ガス供給管310,320,330には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322,332,および開閉弁であるバルブ314,324,334がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430がそれぞれ連結(接続)されている。ノズル410,420,430は、L字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、反応管203の内壁とウエハ200との間に形成される円環状の空間に、反応管203の内壁に沿って上方(ウエハ200の積載方向上方)に向かって立ち上がるように(つまりウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように)設けられている。すなわち、ノズル410,420,430は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。
【0021】
ノズル410,420,430の側面にはガスを供給する(噴出させる)ガス供給孔410a,420a,430aがそれぞれ設けられている。ガス供給孔410a,420a,430aは反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口している。このガス供給孔410a,420a,430aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。
【0022】
このように、本実施形態におけるガス供給の方法は、反応管203の内壁と、積載された複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送し、ノズル410,420,430にそれぞれ開口されたガス供給孔410a,420a,430aからウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させており、反応管203内におけるガスの主たる流れをウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚を均一にできる効果がある。なお、各ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後に残留するガス(残ガス)は、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れるが、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0023】
また、ガス供給管310,320,330にはキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給管510,520,530がそれぞれ接続されている。キャリアガス供給管510,520,530にはMFC512,522,532およびバルブ514,524,534がそれぞれ設けられている。
【0024】
上記構成における一例として、ガス供給管310からは、処理ガスとして、金属元素を含む原料ガス(金属含有原料、金属含有ガス、金属化合物)が、MFC312,バルブ314,ノズル410を介して処理室201内に供給される。原料ガスとしては、例えば金属元素としてのタングステン(W)を含むW含有原料であって、ハロゲン化合物(ハロゲン系原料)である六フッ化タングステン(WF)が用いられる。WFガスは、後述する基板処理工程において、Wソースとして作用する。
【0025】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、原料ガスを還元する作用を有する第1の還元ガスが、MFC322,バルブ324,ノズル420を介して処理室201内に供給される。第1の還元ガスとしては、ホウ素(B)を含むB含有ガス(ボラン系ガス)であって、例えばジボラン(B)が用いられる。Bガスは、後述する基板処理工程において、Bソースとして作用する。
【0026】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、原料ガスを還元する作用を有する第2の還元ガスが、MFC332,バルブ334,ノズル430を介して処理室201内に供給される。第2の還元ガスとしては、水素(H)を含み他元素非含有のH含有ガスであって、例えば水素(H)が用いられる。Hガスは、後述する基板処理工程において、Hソースとして作用する。
【0027】
キャリアガス供給管510,520,530からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N)ガスが、それぞれMFC512,522,532,バルブ514,524,534,ノズル410,420,430を介して処理室201内に供給される。
【0028】
ここで、本明細書において、処理ガス、原料ガス、還元ガスとは、気体状態の原料や還元剤、例えば、常温常圧下で液体状態もしくは固体状態である原料や還元剤を気化もしくは昇華することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料や還元剤等のことである。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」、「固体状態である固体原料」、「気体状態である原料ガス」、または、その複合を意味する場合がある。本明細書において「還元剤」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体還元剤」、「固体状態である固体還元剤」、「気体状態である還元ガス」、または、その複合を意味する場合がある。常温常圧下で液体状態である液体原料等や常温常圧下で固体状態である固体原料等を用いる場合は、液体原料等や固体原料等を気化器、バブラもしくは昇華器等のシステムにより気化もしくは昇華して、原料ガスや還元ガスとして供給することとなる。
【0029】
ガス供給管310,320,330から上述のような処理ガスを流す場合、主に、ガス供給管310,320,330,MFC312,322,332,バルブ314,324,334により処理ガス供給系が構成される。ノズル410,420,430を処理ガス供給系に含めて考えてもよい。処理ガス供給系を、単にガス供給系と称することもできる。
【0030】
ガス供給管310から上述のような原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管310,MFC312,バルブ314により原料ガス供給系が構成される。ノズル410を原料ガス供給系に含めて考えてもよい。原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。
【0031】
ガス供給管310から原料ガスとしてW含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310,MFC312,バルブ314によりW含有ガス供給系が構成される。ノズル410をW含有ガス供給系に含めて考えてもよい。W含有ガス供給系をW含有原料供給系と称することもでき、単にW原料供給系と称することもできる。ガス供給管310からWFガスを流す場合、Ti含有ガス供給系をWFガス供給系と称することもできる。WFガス供給系をWF供給系と称することもできる。
【0032】
ガス供給管320,330から上述のような還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管320,330,MFC322,332,バルブ324,334により還元ガス供給系が構成される。ノズル420,430を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。還元ガス供給系を還元剤供給系と称することもできる。
【0033】
ガス供給管320から還元ガスとしてB含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324によりB含有ガス供給系が構成される。ノズル420をB含有ガス供給系に含めて考えてもよい。B含有ガス供給系をB含有還元ガス供給系と称することもでき、B含有還元剤供給系と称することもできる。ガス供給管320からBガスを流す場合、B含有ガス供給系をBガス供給系と称することもできる。Bガス供給系をB供給系と称することもできる。
【0034】
ガス供給管330から還元ガスとしてH含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管330,MFC332,バルブ334によりH含有ガス供給系が構成される。ノズル430をH含有ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管330からHガスを流す場合、H含有ガス供給系をHガス供給系と称することもできる。Hガス供給系をH供給系と称することもできる。
【0035】
また、主に、キャリアガス供給管510,520,530,MFC512,522,532,バルブ514,524,534によりキャリアガス供給系が構成される。キャリアガスとして不活性ガスを流す場合、キャリアガス供給系を不活性ガス供給系と称することもできる。この不活性ガスは、パージガスとしても作用することから不活性ガス供給系をパージガス供給系と称することもできる。
【0036】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231は、ノズル410,420,430と同様に、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。排気管231は、図2に示すように、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル410,420,430と対向する位置に設けられている。この構成により、ガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行な方向に向かって流れた後、下方に向かって流れ、排気管231より排気されることとなる。処理室201内におけるガスの主たる流れが水平方向へ向かう流れとなるのは上述の通りである。
【0037】
排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,処理室201内の圧力を制御する圧力制御器(圧力制御部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。APCバルブ243は、排気系の排気流路の一部を構成しており、圧力調整部として機能するだけではなく、排気系の排気流路を閉塞したり、さらには、密閉したりすることが可能な排気流路開閉部、すなわち、排気バルブとしても機能する。また、排気管231には、排気ガス中の反応副生成物や未反応の原料ガス等を捕捉するトラップ装置や排気ガス中に含まれる腐食性成分や有毒成分等を除害する除害装置が接続されている場合がある。主に、排気管231,APCバルブ243,圧力センサ245により、排気系すなわち排気ラインが構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。さらには、トラップ装置や除害装置を排気系に含めて考えてもよい。
【0038】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420,430と同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0039】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、タッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0040】
記憶装置121cは、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0041】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,332,512,522,532,バルブ314,324,334,514,524,534,APCバルブ243,圧力センサ245,真空ポンプ246,ヒータ207,温度センサ263,回転機構267,ボートエレベータ115等に接続されている。
【0042】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピにしたがって、MFC312,322,332,512,522,532による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,334,514,524,534の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作およびAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0043】
コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、この外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態のコントローラ121を構成することができる。ただし、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0044】
(2)基板処理工程
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に、例えばゲート電極を構成する金属膜を形成する工程の一例について図4を用いて説明する。金属膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0045】
本実施形態の好適なシーケンスでは、
ウエハ200に対して、金属含有ガス(例えばWFガス)と第1の還元ガス(例えばBガス)とを時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数供給して、基板上に第1の非晶質金属層(例えばW層)を形成する工程と、
第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、金属含有ガスと第2の還元ガス(例えばHガス)とを同時に供給して、第1の非晶質金属層の上に第2の非晶質金属層(例えばW層)を形成する工程と、
を時分割して所定回数行うことによりウエハ200上に非晶質金属膜(例えばW膜)を形成する工程と、
非晶質金属膜が形成されたウエハ200に対して、金属含有ガスと第1の還元ガスとを同時に供給して、ウエハ200上に形成された非晶質金属膜の上に結晶化した金属層(例えばW層)を形成する工程と、
を行う。
【0046】
具体的には図4に示すシーケンスのように、
ウエハ200に対して、WFガスとBガスとを時分割して所定回数(n回)供給して、第1の非晶質W層(アモルファスW層、α−W層とも称する)を形成するステップ(第1の成膜工程)と、
第1のα−W層が形成された基板に対して、WFガスとHガスとを同時に供給して、第1のα−W層の上に第2のα−W層を形成するステップ(第2の成膜工程)と、
を時分割して時分割して所定回数(n回)行うことによりウエハ200上に非晶質W膜(アモルファスW膜、α−W膜とも称する)を形成するステップと、
ウエハ200上に形成された非晶質W膜(アモルファスW膜、α−W膜とも称する)を加熱するステップ(加熱工程、アニール工程)と、
を行い、ウエハ200上に結晶化したW膜を形成する。
【0047】
本明細書において、「処理(もしくは工程、サイクル、ステップ等と称する)を所定回数行う」とは、この処理等を1回もしくは複数回行うことを意味する。すなわち、処理を1回以上行うことを意味する。図5は、各処理(サイクル)をnサイクル、nサイクルずつ交互に繰り返す例を示している。nの値は、適宜選択される。特に、次に形成される第1のα−W層が結晶化しないために必要とされる第2のα−W層の膜厚に応じて適宜選択される。nの値は、最終的に形成されるα−W膜において必要とされる膜厚に応じて適宜選択される。
【0048】
なお、本明細書において「時分割」とは時間的に分割(セパレート)されていることを意味している。例えば、本明細書において、各処理を時分割して行うとは、各処理を非同期、すなわち同期させることなく行うことを意味している。言い換えると、各処理を間欠的(パルス的)かつ交互に行うことを意味している。つまり、各処理で供給される処理ガスは、互いに混合しないように供給されることを意味している。各処理を複数回行う場合は、各処理で供給される処理ガスは、互いに混合しないよう交互に供給される。
【0049】
また、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0050】
したがって、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(又は膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(又は膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(又は膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0051】
なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0052】
また、本明細書において「金属膜(メタル膜)」という用語は、金属原子を含む導電性の物質で構成される膜(単に導体膜とも称する)を意味し、これには、主に金属原子のみで構成される金属単体膜、導電性の金属窒化膜(メタルナイトライド膜)、導電性の金属酸化膜(メタルオキサイド膜)、導電性の金属酸窒化膜(メタルオキシナイトライド膜)、導電性の金属酸炭化膜(メタルオキシカーバイド膜)、導電性の金属複合膜、導電性の金属合金膜、導電性の金属シリサイド膜(メタルシリサイド膜)、導電性の金属炭化膜(メタルカーバイド膜)、導電性の金属炭窒化膜(メタルカーボナイトライド膜)等が含まれる。なお、W膜は導電性の金属膜であって、金属単体膜である。
【0053】
また、本明細書において「非晶質(アモルファス)の膜(もしくは層)」という用語は、対応する膜(層)を構成する主たる成分が結晶化していないことを意味しており、「結晶化した膜(もしくは層)」という用語は、対応する膜(層)を構成する主たる成分が結晶化している(結晶質である)ことを意味する。したがって、「非晶質の膜(もしくは層)」という場合には、主たる成分とならない程度に結晶化した成分が含まれている場合があり、「結晶化した膜(もしくは層)」という場合には、主たる成分とならない程度に非晶質の成分が含まれている場合がある。また、膜種名等にαもしくはaを付けることにより非晶質であることを示す。
【0054】
本実施形態では、金属膜として結晶化したW膜を基板上に形成する方法について説明する。まずα−W層を基板上にそれぞれ異なる成膜方法で形成するよう2つの工程に分ける。まず第1の成膜工程として複数のガスを交互に供給することで基板上に第1のα−W層を形成する。次に、第2の成膜工程として混合雰囲気となるよう複数のガスを同時に供給することで基板上に形成された第1のα−W層の上に第2のα−W層を形成する。
【0055】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してマニホールド209の下端開口を閉塞した状態となる。
【0056】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。なお、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。続いて、回転機構267によりボート217およびウエハ200の回転を開始する。なお、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0057】
搬入されたウエハ200には極細溝が形成されており、本発明ではその極細溝にW膜を形成する。W膜は、例えばフラッシュメモリのフローティングゲート電極として用いられ、低抵抗化や膜の緻密さが求められている。
【0058】
極細溝には、予め電荷蓄積層としてのシリコン酸化(SiO)層が形成されており、さらにその上にはバリアメタル層としてのTiN膜が形成されている。なお、バリアメタル層としては、TiN膜の替わりにタンタル窒化(TaN)膜が形成されていていてもよい。バリアメタル層を用いることで、本発明で形成するW層とSiO層との密着性を高めることが可能となる。
【0059】
(非晶質W膜形成工程)
非晶質のW膜(α−W膜)を形成する工程(ステップ)を実行する。非晶質W膜形成工程は、第1の成膜工程および第2の成膜工程を含む。
【0060】
(1)第1の成膜工程
第1のα−W層を形成する工程(ステップ)を実行する。第1の成膜工程は、以下に説明する第1の還元ガス供給工程、残留ガス除去工程、金属含有ガス供給工程、残留ガス除去工程を含む。
【0061】
(第1の還元ガス供給工程)
バルブ334を開き、ガス供給管330内にBガスを流す。ガス供給管330内を流れたBガスは、MFC332により流量調整されてノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してBガスが供給されることとなる。すなわちウエハ200の表面はBガスに暴露されることとなる。このとき同時にバルブ534を開き、キャリアガス供給管530内にNガスを流す。キャリアガス供給管530内を流れたNガスは、MFC532により流量調整されてBガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410,420内へのBガスの侵入を防止するために、バルブ514,524を開き、キャリアガス供給管510,520内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管310,320,ノズル410,420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0062】
このときAPCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば50〜1000Paの範囲内の圧力であって、例えば60Paとする。MFC332で制御するBガスの供給流量は、例えば1〜10sccmの範囲内の流量とする。Bガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば10〜30秒の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば100℃〜250℃の範囲内の温度であって、好ましくは150〜200℃の範囲内の温度であって、例えば200℃に設定する。その理由は、100℃未満では第2の成膜工程で用いる手法では膜が形成されないためであり、Bガスはおよそ250℃以上の雰囲気では自己分解してしまうが、分解されたBがウエハ200の表面に吸着すると成膜の阻害要因となる可能性が高いためである。なお、コールドウォール炉のように処理室内の雰囲気が加熱されずBガスが雰囲気中で自己分解せずに吸着する場合は成膜の阻害要因となる可能性は低い。処理室201内に流しているガスはBガスとNガスのみであり、Bガスの供給により、ウエハ200の表面が還元される。さらに、2サイクル目以降(2ndサイクル以降)では、後述する金属含有ガス供給工程でウエハ200の上に形成されたα−W含有層を還元して第2のα−W層が形成される。すなわち、BガスのHが、金属含有ガス供給工程で形成されたα−W含有層に含まれるFと反応しフッ化水素(HF)となる。このとき、Bガスの残留成分であるホウ素(B)の少なくとも一部は、残留物として第1のα−W層の中に残留する。したがって、第1のα−W層の少なくとも一部は、α−W(B)層、すなわちBを含むα−W層となる。なお、WFガスより先にBガスを流す理由は基板を構成する成分にWFガスが触れるとFによりエッチングされてしまうことがあるからである。
【0063】
(残留ガス除去工程)
続いて、バルブ334を閉じ、Bガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するBガスもしくは還元反応に寄与した後のBガスを処理室201内から排除する。ウエハ200が存在する空間に残留する未反応もしくは還元反応に寄与した後のBガスを除去する。このときバルブ514,524,534は開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくは還元反応に寄与した後のBガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。このとき、第1の還元ガス供給工程により処理室201内に副生成物が生じていた場合、この副生成物も処理室201内から排除される。
【0064】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。その後に行われる工程において悪影響が生じることはない程度であれば、微量のガスが処理室201内に残留していたとしてもよい。また、処理室201内へ供給するNガスの流量を大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量のNガスを供給することで、その後の工程において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、Nガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0065】
(金属含有ガス供給工程)
バルブ314を開き、ガス供給管310内にWFガスを流す。ガス供給管310内を流れたWFガスは、MFC312により流量調整されてノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してWFガスが供給されることとなる。すなわちウエハ200の表面はWFガスに暴露されることとなる。このとき同時にバルブ514を開き、キャリアガス供給管510内にNガスを流す。キャリアガス供給管510内を流れたNガスは、MFC512により流量調整されてWFガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル420,430内へのWFガスの侵入を防止するために、バルブ524,534を開き、キャリアガス供給管520,530内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管320,330,ノズル420,430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0066】
このときAPCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば20〜50Paの範囲内の圧力であって、例えば30Paとする。MFC312で制御するWFガスの供給量は、例えば1.0g/min〜2.0g/minの範囲内の供給量である。WFガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば3〜10秒の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、第1の還元ガス供給工程と実質的に同じ温度に設定する。処理室201内に流しているガスはWFガスとNガスのみであり、WFガスの供給により、還元されたウエハ200の上に、例えば、1原子層未満から数原子層程度の厚さのα−W含有層が形成される。
【0067】
α−W含有層は理想的にはα−W層であることが望ましいが、α−W(F)層が主たる要素となる場合がある。なお、α−W層はα−Wにより構成される連続的な層の他、不連続な層も含む。すなわち、α−W層はα−Wにより構成される1原子層未満から数原子層程度の厚さのW堆積層を含む。α−W(F)層はFを含むW含有層であって、Fを含むα−W層であってもよいし、WFの吸着層であってもよい。なお、主たる要素がα−W(F)層となる場合に、特に、還元ガス供給工程による還元反応が有効となる。
【0068】
Fを含むW層とは、Wにより構成されFを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるFを含むW薄膜をも含む総称である。Wにより構成されFを含む連続的な層を、Fを含むW薄膜という場合もある。Fを含むW層を構成するWは、Fとの結合が完全に切れていないものの他、Fとの結合が完全に切れているものも含む。
【0069】
WFの吸着層は、WF分子で構成される連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、WFの吸着層は、WF分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。WFの吸着層を構成するWF分子は、WとFとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、WFの吸着層は、WFの物理吸着層であってもよいし、WFの化学吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
【0070】
ここで、1原子層未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは連続的に形成される原子層のことを意味している。1分子層未満の厚さの層とは不連続に形成される分子層のことを意味しており、1分子層の厚さの層とは連続的に形成される分子層のことを意味している。α−W含有層は、Fを含むW層とWFの吸着層との両方を含み得る。但し、上述の通り、α−W含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いて表すこととする。
【0071】
WFガスが自己分解(熱分解)する条件下、すなわち、WFガスの熱分解反応が生じる条件下では、ウエハ200上にWが堆積することでFを含むW層が形成される。WFガスが自己分解(熱分解)しない条件下、すなわち、WFガスの熱分解反応が生じない条件下では、ウエハ200上にWFが吸着することでWFの吸着層が形成される。ウエハ200上にWFの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にFを含むW層を形成する方が、成膜レートを高くすることができる点では、好ましい。
【0072】
W含有層の厚さが数原子層を超えると、次のサイクルで行う第1の還元ガス供給工程の還元の作用がα−W含有層の全体に届かなくなる。また、α−W含有層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、第1の層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。α−W含有層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、第1の還元ガス供給工程での還元反応の作用を相対的に高めることができ、第1の還元ガス供給工程での還元反応に要する時間を短縮することができる。金属含有ガス供給工程でのα−W含有層の形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、α−W含有層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることも可能となる。
【0073】
(残留ガス除去工程)
所定膜厚のα−W含有層が形成された後、バルブ314を閉じ、WFガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはα−W含有層の形成に寄与した後のWFガスを処理室201内から排除する。すなわち、α−W含有層が形成されたウエハ200が存在する空間に残留する未反応もしくはα−W含有層の形成に寄与した後のWFガスを除去する。このときバルブ514,524,534は開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくはα−W含有層の形成に寄与した後のWFガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0074】
このとき、第1の還元ガス供給工程後の残留ガス除去工程と同様に、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。
【0075】
(所定回数実施)
上述した第1の還元ガス供給工程、残留ガス除去工程、金属含有ガス供給工程、残留ガス除去工程を順に時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、すなわち、第1の還元ガス供給工程、残留ガス除去工程、金属含有ガス供給工程、残留ガス除去工程を1サイクルとして、これらの処理をnサイクル(nは1以上の整数)だけ実行することにより、ウエハ200上に、所定の厚さの第1のα−W層を形成する。所定の厚さは、第1層目の第1のα−W層については、シード層として必要とされる膜厚を考慮して決定する。第2層目以降の第1のα−W層については、次に第2の成膜工程を行う際に、第1のα−W層の上に形成するW層が結晶化せずに非晶質であるW層(第2のα−W層)として形成可能となるために必要な膜厚を考慮して決定する。例えば、第2層目以降では、サイクル数を制御して、膜厚を1Åから2Å程度に調整するとよい。このときに形成される第1のα−W層は、表面が滑らか(スムーズ)であって、かつ緻密な連続膜となる。上述の工程は、複数回繰り返すのが好ましい。
【0076】
(2)第2の成膜工程
第2のα−W層(非晶質のW層)を形成する工程(ステップ)を実行する。第2の成膜工程は、以下に説明する金属含有ガスおよび第2の還元ガス供給工程、残留ガス除去工程を含む。
【0077】
(金属含有ガスおよび第2の還元ガス供給工程)
バルブ314,324を開き、ガス供給管310,320内にそれぞれWFガス、Hガスを流す。ガス供給管310内を流れたWFガスおよびガス供給管320内を流れたHガスは、MFC312,322によりそれぞれ流量調整されてノズル410,420のガス供給孔410a,420aからそれぞれ処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してWFガスおよびHガスが供給されることとなる。すなわちウエハ200の表面はWFガスおよびHガスに暴露されることとなる。このとき同時にバルブ514,524を開き、キャリアガス供給管510,520内にそれぞれNガスを流す。キャリアガス供給管510,520内を流れたNガスは、MFC512,522によりそれぞれ流量調整されてWFガスもしくはHガスと一緒にそれぞれ処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル430内へのWFガスおよびHガスの侵入を防止するために、バルブ534を開き、キャリアガス供給管530内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管330,ノズル430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0078】
このときAPCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば10〜30Paの範囲内の圧力であって、例えば20Paとする。MFC312で制御するWFガスの供給量は、例えば0.1g/min〜1.0g/minの範囲内の供給量とし、MFC322で制御するHガスの供給流量は、例えば0.1〜0.5sccmの範囲内の流量とするが、所望の膜厚に応じて決定してもよい。WFガスおよびHガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、所望の膜厚に応じて決定する。このときヒータ207の温度は、第1の成膜工程と実質的に同じ温度に設定する。このように実質的に同じ温度としてインサイチュで処理を行うことにより、処理時間の短縮を図り、半導体装置の生産性を高める効果がある。
【0079】
処理室201内に流しているWFガスおよびHガスは、気相中で反応(気相反応)もしくは基板表面で反応し、ウエハ200に形成された第1のα−W層の上に、第2のα−W層が形成される。ここで、α−W層とは、α−Wにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる非晶質のW層であり、α−W層にはWF分子に含まれるFが含まれる場合もある。WFガスおよびHガスの供給流量、供給時間等のプロセス条件を制御(調整、コントロール)することにより、所望の膜厚までα−W層を成長させることができる。
【0080】
前述したように、第2の成膜工程のような気相反応の場合、結晶化によって微細溝に対してボイド又はシーム、あるいはボイドとシームの両方が発生することが考えられるが、その原因は膜の結晶化であると考えられる。発明者らは、前述のように、膜の結晶化は膜の厚みに依存することを見出した。そこで、本実施形態においては、第2の成膜工程ではW膜の結晶化が起きる膜厚となる前に、ガスの供給を停止する。なお、結晶化が起きない膜厚として、0nmよりも大きく、4nm以下が望ましく、ここでは3nmから4nmの範囲の厚みとする。
【0081】
(残留ガス除去工程)
所定膜厚の第2のα−W層が形成された後、バルブ314,324を閉じ、WFガスおよびHガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第2のα−W層の形成に寄与した後のWFガスおよびHガスを処理室201内から排除する。すなわち、第2のα−W層が形成されたウエハ200が存在する空間に残留する未反応もしくは第2のα−W層の形成に寄与した後のWFガスおよびHガスを除去する。このときバルブ514,524,534は開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくは第2のα−W層の形成に寄与した後のWFガスおよびHガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。このとき、第2の成膜工程により処理室201内に副生成物が生じていた場合、この副生成物も処理室201内から排除される。
【0082】
このとき、第1の成膜工程における第1の還元ガス供給工程、金属含有ガス供給工程後の残留ガス除去工程と同様に、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。
【0083】
(所定回数実施)
上述した第1の成膜工程、第2の成膜工程を、時分割してn回(nは1以上の整数)だけ実行することにより、ウエハ200上に、第1のα−W層と第2のα−W層とがナノレベルで交互に積層されてなる積層膜として構成される所定の厚さのα−W膜を形成する。上述のステップは複数回繰り返すのが好ましい。
【0084】
(アニール工程)
成膜後、形成されたα−W膜に対して、窒素(N)雰囲気でアニール処理(加熱処理)を行うことが望ましい。アニール処理は、第2の成膜工程に引き続き、処理室201内で実施しても、他のアニール装置にウエハ200を移動してアニール処理してもよい。ここでは、α−W膜を形成した後、引き続き処理室201内でアニールする方法について説明する。
【0085】
バルブ514,524,534は開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持して処理室201内をN雰囲気とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば500℃〜1200℃の範囲内の温度であって、例えば600℃に設定する。この理由は、500℃未満では
α−W膜が結晶化されないためであり、1200℃より高くなるとウエハ200が溶解し始めてしまうためである。アニール処理することにより、ウエハ200上に形成されたα−W膜を結晶化させて結晶化W膜とすることができる。
【0086】
(パージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上に形成されたα−W膜を結晶化させて結晶化W膜とした後、バルブ514,524,534を開いたままで、ガス供給管510,520,530のそれぞれからNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0087】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から処理室201の外部に搬出(ボートアンロード)される。処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0088】
続いて、本実施形態に係る第1の成膜工程、第2の成膜工程と、形成される膜との関係について、図5を用いて説明する。
【0089】
図5(A)は、搬入されたウエハの状態を説明した図であり、極細溝を構成する溝周囲の柱等は省略し、形成済みの膜のみ記載している。搬入されたウエハ801には、既に電荷蓄積層としてのシリコン酸化(SiO)層802がウエハ801上に形成されており、さらにその上にはバリアメタル層としてのチタン窒化(TiN)層803が形成されている。なお、バリアメタル層としては、TiN層の替わりにタンタル窒化(TaN)層を用いてもよい。バリアメタル層を用いることで、本発明で形成するW層とSiO層802との密着性を高めることが可能となる。
【0090】
図5(B)は、図5(A)の状態のウエハに対して本発明の第1の成膜工程を実施した状態の図であり、第1の成膜工程にてシード層804として第1のα−W層を形成した状態である。第1の成膜工程によりシード層804を形成しているので、シード層804の表面は滑らかな状態となる。したがって、シード層804上に形成される膜のラフネスを良好とすることが可能となる。
【0091】
図5(C)は、図5(B)の状態のウエハに対して、本発明の第2の成膜工程を実施した状態の図である。シード層804上に、第2のα−W膜である非晶質層805(1)を形成している。非晶質層であり、結晶化されない状態で膜を形成するので、微細溝においてもボイド又はシームおよび両方が発生することなく、膜を形成することができる。
【0092】
また、前述したように電極や配線等の金属膜では低抵抗の膜が求められている。形成される非晶質層805(1)は、交互供給時に発生する残留物を含まないため、後述する薄膜層806よりも電気抵抗が低い性質を有する。したがって、形成する金属膜全体の抵抗率を下げるためには、形成する金属膜に対して非晶質層805(1)の割合を多くする。その際は、非晶質層805における結晶化しない膜厚の範囲のうち、最大の膜厚で膜を形成する。このようにすることで、第1の成膜工程のような交互供給のみによる成膜処理よりも、速い成膜速度でかつ低抵抗の膜を形成することができる。
【0093】
図5(D)は、図5(C)の状態のウエハに対して本発明の第1の成膜工程を実施した状態の図であり、非晶質層805(1)上に、第1のα−W層である薄膜層806(1)を形成する。このとき、膜中に取り込まれるBが下方の非晶質層805(1)に移動し、非晶質層805(1)の結晶化を抑制する。さらには、薄膜層806(1)は、この直後に行われる第2の成膜工程によって薄膜層806(1)上に形成される非晶質層805(2)と非晶質層805(1)との間に存在するので、非晶質層805(2)を形成する際の非晶質層805(1)の結晶化を抑制することができる。
【0094】
図5(E)は、図5(D)の状態のウエハに対して本発明の第2の成膜工程を実施した状態の図であり、薄膜層806(1)上に第2のα−W層である非晶質層805(2)を形成する。
【0095】
図5(F)は、第1の成膜工程および第2の成膜工程を繰り返すことで形成されるα−W膜を説明した図である。シード層804上には、第2の成膜工程で形成される非晶質層805(n)と第1の成膜工程で形成される薄膜層806(n2−1)が交互に形成されている。シード層804の形成工程を含め、第1の成膜工程および第2の成膜工程をn回繰り返すことで所望の膜厚のα−W膜を形成する。
【0096】
なお、α−W膜の最上層は所望の膜厚を形成するために、非晶質層805であることが望ましい。薄膜層806は、前述のように複数のガスを交互に供給して形成する膜であり、膜厚は最大で2Å程度である。それに対し、気相反応を用いて形成される非晶質層805は、後述するように3nmから4nm程度である。したがって、十数nmの膜厚に制御する際は、第1の成膜工程を用いて薄膜層を形成すると非常に時間がかかるため、膜厚を調整する場合、第2の成膜工程と組み合わせて非晶質膜を形成する。このようにすることで、所望の厚さの非晶質膜を効率よく形成することが可能となる。
【0097】
図6は、形成した膜の結晶構造をX線解析手法にて評価した結果である。図6(a)は、第2の成膜工程で形成した非晶質層の評価結果であり、図6(b)は図6(a)の非晶質層を600℃で加熱した層の評価結果である。横軸は測定時の角度を示し、縦軸は強度を示している。さらには、2nm〜10nmは、膜厚を示している。この評価結果においては、αのように急峻な角度の場合は結合強度が強いため結晶化された状態であり、βのようになだらかな角度の場合は非晶質である状態を示す。
【0098】
図6(a)の場合、4nm以下の膜厚では結晶化されていないことがわかる。したがって、第2の成膜工程で非晶質層を形成する際は、0mよりも大きく4nmよりも薄い膜厚とすることが望ましい。
図6(b)の場合、600℃に加熱することで、非晶質層の下方まで結晶化されていることがわかる。したがって、W膜を形成した後にアニール処理を行うことで、W膜が結晶化され、結合度の強い膜に改質できることがわかる。
【0099】
なお、4nm以下の膜厚では結晶化されない理由は、次のように考えることができる。膜が結晶化する際には原子の移動が伴うが、このとき界面に近接する位置に存在する原子の場合、3次元的な構造をとるような移動が必要となるが、そのような移動には大きなエネルギーが必要である。しかし、結晶化して安定化しようとする原子の個数に対して、界面に束縛されている原子の個数の比率は大きい。したがって、熱エネルギー等の外部エネルギーによるアシストが無ければ膜が結晶化することは困難であると考えられる。しかし、膜が厚くなるにつれ、界面の束縛から自由になる膜内部の原子が多くなり、安定配列をとろうとする働きにより結晶化しやすくなる。したがって、大幅に移動(凝集)しなくても原子3次元構造をとりやすくなる。このようなメカニズムにより、ある一定の膜厚までは結晶化せず、一定の膜厚を超えると結晶化が進むと考えられる。なお、膜中の不純物等も膜の結晶化に影響を及ぼすと考えられる。
【0100】
図7は膜厚と抵抗率との関係を示す図である。◆は非晶質膜(第2のα−W膜)のデータであり、■はアニール処理後のデータである。図7からもわかるように、非晶質層の厚みが5nm未満で抵抗率が高くなり5nm以上で抵抗率が下がることがわかる。また、アニール処理を行った場合、5nm以上に限らず5nm未満の厚みでも抵抗率が低くなることがわかる。非晶質層が厚いと、結晶間の隙間(空隙)の量が増え、それによって抵抗が上がるためと考えられる。
【0101】
図7から、非晶質層のみの場合は抵抗率を低くするためには5nm以上が望ましいことがわかる。ただし、前述したように、5nm以上では結晶化が起きてボイドやシームが発生する可能性が高い。そこで、ボイドやシームを発生させない5nm未満の膜厚で非晶質層を形成する場合、上述のようにアニール処理を行うことで、抵抗率を低くすることができる。
【0102】
アニール処理によって非晶質層805が結晶化され、W膜が密な状態となる。例えば、アニール処理を600℃で行った場合、図6のように非晶質層が結晶化されることがわかる。
【0103】
図8は非晶質層とラフネスの関係を説明するデータを表した図である。図8のプロットは本実施形態で形成した非晶質膜(α−W膜)のラフネスを表したものであり、点線は第2の成膜工程で用いた手法を用いて形成した一般的な膜のラフネスを表したものである。本実施形態で形成した非晶質膜のラフネスは一般的な膜のラフネスよりも低くなっていることがわかる。すなわち、一般的な手法を用いて形成した膜よりも平坦且つ緻密な膜を形成することができたといえる。
【0104】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、異なる手法を用いて形成した2種の非晶質のW層を組み合わせて所望の膜厚を有する非晶質のW膜を形成し、その非晶質のW膜をアニールすることにより、ラフネスが小さく、かつ抵抗率が低く結晶化したW膜を、開口部が狭い極細溝へ形成することができる。
【0105】
<他の実施形態>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0106】
上述の実施形態では、非晶質の膜および結晶化した膜としてW膜を形成する例について説明した。本発明は上述の態様に限定されず、200℃以下の低温領域において、複数の処理ガスを同時に供給して膜を形成した場合に、ある一定以上の膜厚では結晶化してしまい、複数のガスを時分割して供給して膜を形成した場合には結晶化しない(非晶質である)ような性質を有する膜を形成する際に有効である。例えば、W,チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、亜鉛(Zn)等の金属元素を含む金属窒化膜(金属窒化物)や金属炭化膜(金属炭化物)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)等の金属膜、およびこれらを組み合わせた膜を形成する場合にも好適に適用可能である。
【0107】
例えば、適用可能な金属窒化膜や金属炭化膜としては、WN膜、TiN膜、TaN膜、MoN膜、ZnN膜、WC膜、TiC膜、TaC膜、MoC膜、ZnC膜、WCN膜、TiCN膜、TaCN膜、MoCN膜、ZnCN膜等のメタルナイトライド系の膜やメタルカーバイド系の膜、Cu膜、Ru膜、Al膜等のメタル膜、およびこれらを組み合わせた膜が挙げられる。
【0108】
また、上述の金属窒化膜や金属炭化膜を形成する場合には、WFの他にも、六塩化タングステン(WCl)、四フッ化チタン(TiF)、四塩化チタン(TiCl)、五フッ化タンタル(TaF)、五塩化タンタル(TaCl)、五フッ化モリブデン(MoF)、五塩化モリブデン(MoCl)、二塩化亜鉛(ZnCl)、二フッ化亜鉛(ZnF)等のハロゲン化合物を用いることも可能である。
【0109】
第1の還元ガスとしては、B含有ガスであるBガス以外にも、シリコン含有ガス(シラン系ガス)であるSiガスまたはSiHガス等を用いることも可能である。
【0110】
第2の還元ガスとしては、Hガスの他にも、他元素非含有のH含有ガスである重水素(D)ガス等を用いることも可能である。
【0111】
なお、本実施形態では、第2の成膜工程で還元ガスとしてHガスを用いる例について説明したが、これに限らず、例えば第2の成膜工程で還元ガスとしてBガス、Siガス、SiHガス等を用いてもよい。
【0112】
不活性ガスとしては、Nガスの他にも、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0113】
上述の実施形態や各変形例や各応用例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様の処理条件とすることができる。
【0114】
これらの各種薄膜の形成に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(形成する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0115】
上述のプロセスレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更したりすることも可能である。
【0116】
上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置であって、1つの反応管内に処理ガスを供給するノズルが立設され、反応管の下部に排気口が設けられた構造を有する処理炉を用いて成膜する例について説明したが、他の構造を有する処理炉を用いて成膜する場合にも本発明を適用可能である。例えば、同心円状の断面を有する2つの反応管(外側の反応管をアウタチューブ、内側の反応管をインナチューブと称する)を有し、インナチューブ内に立設されたノズルから、アウタチューブの側壁であって基板を挟んでノズルと対向する位置(線対称の位置)に開口する排気口へ処理ガスが流れる構造を有する処理炉を用いて成膜する場合にも本発明を適用可能である。また、処理ガスはインナチューブ内に立設されたノズルから供給されるのではなく、インナチューブの側壁に開口するガス供給口から供給されるようにしてもよい。このとき、アウタチューブに開口する排気口は、処理室内に積層して収容された複数枚の基板が存在する高さに応じて開口していてもよい。また、排気口の形状は穴形状であってもよいし、スリット形状であってもよい。
【0117】
上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を成膜する場合にも、好適に適用できる。これらの場合においても、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0118】
例えば、図11に示す処理炉302を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉302は、処理室301を形成する処理容器303と、処理室301内にガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド303sと、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台317と、支持台317を下方から支持する回転軸355と、支持台317に設けられたヒータ307と、を備えている。シャワーヘッド303sのインレット(ガス導入口)には、上述の原料ガスを供給するガス供給ポート332aと、上述の反応ガスを供給するガス供給ポート332bと、が接続されている。ガス供給ポート332aには、上述の実施形態の原料ガス供給系と同様の原料ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332bには、上述の実施形態の反応ガス供給系と同様の反応ガス供給系が接続されている。シャワーヘッド303sのアウトレット(ガス排出口)には、処理室301内にガスをシャワー状に供給するガス分散板が設けられている。処理容器303には、処理室301内を排気する排気ポート331が設けられている。排気ポート331には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0119】
また例えば、図12に示す処理炉402を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台417と、支持台417を下方から支持する回転軸455と、処理容器403のウエハ200に向けて光照射を行うランプヒータ407と、ランプヒータ407の光を透過させる石英窓403wと、を備えている。処理容器403には、上述の原料ガスを供給するガス供給ポート432aと、上述の反応ガスを供給するガス供給ポート432bと、が接続されている。ガス供給ポート432aには、上述の実施形態の原料ガス供給系と同様の原料ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432bには、上述の実施形態の反応ガス供給系と同様の反応ガス供給系が接続されている。処理容器403には、処理室401内を排気する排気ポート431が設けられている。排気ポート431には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0120】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができる。
【0121】
以下、本発明の望ましい形態について付記する。
【0122】
〔付記1〕
本発明の一態様によれば、
基板に対して、金属含有ガスと第1の還元ガスとを時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数供給して、前記基板上に第1の非晶質金属層を形成する工程と、
前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に第2の非晶質金属層を形成する工程と、
を、前記基板を第1の温度に維持した状態で、時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する工程と、
前記非晶質金属膜が形成された基板を第1の温度より高い第2の温度で加熱する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または基板処理方法が提供される。
【0123】
〔付記2〕
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の温度は100℃〜250℃の範囲内の温度であって、好ましくは150℃〜200℃の範囲内の温度であって、より好ましくは200℃であり、前記第2の温度は500〜1200℃の範囲内の温度であって、好ましくは500〜800℃の範囲内の温度であって、より好ましくは600℃である。
【0124】
〔付記3〕
付記1もしくは付記2のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の非晶質金属層を形成する工程、前記第2の非晶質金属層を形成する工程、および結晶化した金属層を形成する工程は、それぞれ同じ処理室内で行う。
【0125】
〔付記4〕
付記1〜3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記非晶質金属膜を形成する基板は、シリコン基板の処理面に金属含有膜が形成され、基板の裏面及び側面には金属含有膜が形成されていない。
【0126】
〔付記5〕
付記4に記載の方法であって、好ましくは、
前記金属含有膜はチタン窒化膜である。
【0127】
〔付記6〕
付記1〜5のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の還元ガスはボラン系ガスまたはシラン系ガスであって、第2の還元ガスは他元素非含有の水素含有ガスである。
【0128】
〔付記7〕
付記6に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の還元ガスはジボラン(B)ガスであって、前記第2の還元ガスは水素(H)ガスである。
【0129】
〔付記8〕
付記1〜7のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記金属含有ガスはタングステン含有ガスであって、前記第1の非晶質金属層、前記第2の非晶質金属層は非晶質のタングステン層であり、前記非晶質金属膜は非晶質のタングステン膜である。
【0130】
〔付記9〕
付記8に記載の方法であって、好ましくは、
前記タングステン含有ガスは、タングステンを含むハロゲン化合物であって、六フッ化タングステン(WF)である。
【0131】
〔付記10〕
付記1〜9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板を第2の温度で加熱する工程では、前記非晶質金属膜が形成された基板を加熱することにより、前記非晶質金属層の少なくとも一部を結晶化させる。
【0132】
〔付記11〕
付記1〜10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板はシリコン製の基板であり、前記基板の表面の少なくとも一部には金属含有膜が形成されており、前記非晶質金属膜を形成する工程では、前記基板の表面に形成された金属含有膜および前記基板を構成するシリコンに接する第1層目として前記第1の非晶質金属層を形成し、最終層として前記第2の非晶質金属層を形成する。
【0133】
〔付記12〕
本発明の他の態様によれば、
処理面に金属含有膜が形成され、裏面及び側面には金属含有膜が形成されていないシリコン製の基板に対して、金属含有ガスと第1の還元ガスとを時分割して所定回数供給して、前記基板上に第1の非晶質金属層を形成する工程と、
前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に第2の非晶質金属層を形成する工程と、
を時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法、または基板処理方法が提供される。
【0134】
〔付記13〕
付記12に記載の方法であって、好ましくは、
前記非晶質金属膜を形成する工程は、前記基板を第1の温度に維持した状態で行い、その後、
前記非晶質金属膜が形成された基板を第1の温度より高い第2の温度で加熱する加熱工程を行う。
【0135】
〔付記14〕
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内の基板に対して金属含有ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1の還元ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2の還元ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して、前記金属含有ガスと前記第1の還元ガスとを時分割して所定回数供給して、前記基板上に第1の非晶質金属層を形成する処理と、前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと前記第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に第2の非晶質金属層を形成する処理と、を、前記基板を第1の温度に維持した状態で、時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する処理と、前記非晶質金属膜が形成された基板を第1の温度より高い第2の温度で加熱する処理と、を行わせるように、前記ヒータ、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、および前記第3ガス供給系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0136】
〔付記15〕
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内の基板に対して金属含有ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1の還元ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2の還元ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内に載置された基板であって、処理面に金属含有膜が形成され、裏面及び側面には金属含有膜が形成されていないシリコン製の基板に対して、前記金属含有ガスと前記第1の還元ガスとを時分割して所定回数供給して、前記基板上に第1の非晶質金属層を形成する処理と、
前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと前記第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に第2の非晶質金属層を形成する処理と、
を時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する処理を行わせるように、前記ヒータ、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、および前記第3ガス供給系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0137】
〔付記16〕
本発明のさらに他の態様によれば、
基板に対して、金属含有ガスと第1の還元ガスとを時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数供給して、前記基板上に第1の非晶質金属層を形成する手順と、
前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に第2の非晶質金属層を形成する手順と、
を、前記基板を第1の温度に維持した状態で、時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する手順と、
前記非晶質金属膜が形成された基板を第1の温度より高い第2の温度で加熱する手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム、および該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0138】
〔付記17〕
本発明のさらに他の態様によれば、
処理面に金属含有膜が形成され、裏面及び側面には金属含有膜が形成されていないシリコン製の基板に対して、金属含有ガスと第1の還元ガスとを時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数供給して、前記基板上に第1の非晶質金属層を形成する手順と、
前記第1の非晶質金属層が形成された基板に対して、前記金属含有ガスと第2の還元ガスとを同時に供給して、前記第1の非晶質金属層の上に第2の非晶質金属層を形成する手順と、
を時分割して所定回数行うことにより前記基板上に非晶質金属膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム、または該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0139】
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
121 コントローラ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10