特許第6336871号(P6336871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336871
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】点灯回路およびそれを用いた車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20180528BHJP
   H05B 37/02 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B60Q1/04 E
   H05B37/02 J
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-198899(P2014-198899)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-68707(P2016-68707A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】市川 知幸
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−032470(JP,A)
【文献】 特開2012−169180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02 − 39/10
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の点灯回路であって、
前記光源の点灯開始が指示されると、時間とともに増大する制御電圧を生成する制御電圧生成部と、
前記制御電圧に応じたランプ電流を前記光源に供給する駆動回路と、
を備え、
前記制御電圧生成部は、
一端の電位が固定され、その両端間の電圧が前記制御電圧であるキャパシタと、
前記キャパシタに可変の充電電流を供給する充電回路であって、前記制御電圧が所定の電圧値に達するまでは、前記制御電圧が大きくなるほど前記充電電流を増大させる充電回路と、
を備えることを特徴とする点灯回路。
【請求項2】
前記充電回路は、
出力側が前記キャパシタと接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の入力側に接続され、前記制御電圧が大きくなるほどインピーダンスが低下する可変インピーダンス回路と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の点灯回路。
【請求項3】
前記充電回路は、
出力側が前記キャパシタと接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の入力側に接続され、前記制御電圧が大きくなるほど電流量が増大する可変電流源と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の点灯回路。
【請求項4】
前記充電回路は、
出力側が前記キャパシタと接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の入力側に接続された第1抵抗と、
前記第1抵抗と並列な経路に直列に設けられた第1トランジスタおよび第2抵抗と、
を含み、前記第1トランジスタの制御端子に、前記制御電圧に応じた信号が入力されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の点灯回路。
【請求項5】
前記充電回路は、
電源ラインと前記第1トランジスタの前記制御端子の間に設けられた第3抵抗と、
前記第1トランジスタの前記制御端子と接地ラインの間に設けられ、その制御端子に前記制御電圧が入力され、前記第1トランジスタと相補的な極性を有する第2トランジスタと、
をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の点灯回路。
【請求項6】
前記充電回路は、
前記キャパシタと接続され、前記キャパシタに第1電流をソースする第1電流源と、
前記キャパシタと接続され、前記キャパシタから第2電流をシンクする第2電流源であって、前記制御電圧が大きくなるほど前記第2電流を減少させる第2電流源と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の点灯回路。
【請求項7】
前記充電回路は、
出力側が前記キャパシタの一端と接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の入力側に接続された第1抵抗と、
前記キャパシタの一端と接地ラインの間に直列に設けられた第1トランジスタおよび第2抵抗と、
前記第1トランジスタの制御端子と前記接地ラインの間に設けられた第3抵抗と、
一端が電源ラインと接続された第4抵抗と、
前記第4抵抗と前記第3抵抗の間に設けられ、制御端子に前記制御電圧が入力された第2トランジスタと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の点灯回路。
【請求項8】
前記キャパシタと並列な放電経路を形成するように、直列に接続される放電用抵抗と放電用トランジスタをさらに備え、
前記放電用トランジスタおよび前記充電回路は、外部からの点灯指示信号に応じてオン、オフが切りかえ可能に構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の点灯回路。
【請求項9】
前記制御電圧に応じた電圧を所定のしきい値電圧と比較する比較回路をさらに備え、比較結果を示すランプ電流強制停止信号を出力可能に構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の点灯回路。
【請求項10】
光源と、
前記光源を駆動する請求項1から9のいずれかに記載の点灯回路と、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに用いられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具、特に前照灯の光源としては、ハロゲンランプやHID(High Intensity Discharge)ランプが主流であったが、近年それらに代えて、LED(発光ダイオード)やレーザダイオード(半導体レーザともいう)などの半導体光源を用いた車両用灯具の開発が進められている。
【0003】
人間の眼は、周囲の明るさに対して対数の特性を有しており、したがって周囲が暗いときほど明るさの変化に敏感となる。ランプの輝度を緩やかに増加させる場合(徐変点灯)、ランプの光量が小さいときは光量の変化の度合いを小さく、ランプの光量が大きくなるにしたがい光量の変化の度合いを大きくすると、人間の眼に対して自然な点灯が可能となる。図1(a)は、点灯・消灯時の光量の望ましい波形(理想波形という)を示す。同様に、ランプの輝度を緩やかに低下させる場合(徐変消灯)、ランプの光量が大きいときは光量の変化の度合いを大きく、ランプの光量が小さくなるにしたがい光量の変化の度合いを小さくすることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−241142号公報
【特許文献2】特開平10−335074号公報
【特許文献3】特開2013−69448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1(a)の理想波形にしたがって光量を変化させるためには、図1(a)の理想波形を有する制御電圧VCNTを生成し、この制御電圧VCNTに応じた電流を、半導体光源に供給する必要がある。ところが図1(a)に示す理想波形を有する制御電圧VCNTは、マイコンなどを用いれば生成することが可能であるが、マイコンやD/Aコンバータなどが必要となり、回路のコストが増加する。
【0006】
一方でアナログ回路で、時間とともに増加あるいは減少する電圧波形を生成したい場合には、定電流源を用いてキャパシタを充電し、キャパシタの両端間の電圧を取り出す方法や、抵抗を用いてキャパシタを充電し、キャパシタの両端間の電圧を取り出す方法が広く用いられる。しかしながら、定電流源とキャパシタの組み合わせを用いた場合、キャパシタに生ずる制御電圧VCNTの傾きは、図1(b)に示すように一定となり、図1(a)の理想波形を得ることはできない。また抵抗とキャパシタの組み合わせを用いた場合には、キャパシタに生ずる制御電圧VCNT図1(c)に示すようにCRの時定数にしたがって指数関数で変化するため、やはり図1(a)の理想波形を得ることはできない。
【0007】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、低コストで好ましい徐変点灯が可能な点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、光源の点灯回路に関する。点灯回路は、光源の点灯開始が指示されると、時間とともに増大する制御電圧を生成する制御電圧生成部と、制御電圧に応じたランプ電流を光源に供給する駆動回路と、を備える。制御電圧生成部は、一端の電位が固定され、その両端間の電圧が制御電圧であるキャパシタと、キャパシタに可変の充電電流を供給する充電回路であって、制御電圧が所定の電圧値に達するまでは、制御電圧が大きくなるほど充電電流を増加させる充電回路と、を備える。
【0009】
この態様によると、制御電圧が所定の電圧値に達するまでの期間、つまり所定の光量に達するまでの期間は、制御電圧が大きくなるほど、つまり光量が大きくなるほど、充電電流が大きくなり、したがって制御電圧の上昇速度つまり光量の増加速度が速くなり、好ましい徐変点灯が可能となる。
【0010】
充電回路は、出力側がキャパシタと接続されたカレントミラー回路と、カレントミラー回路の入力側に接続され、制御電圧が大きくなるほどインピーダンスが低下する可変インピーダンス回路と、を含んでもよい。
【0011】
充電回路は、出力側がキャパシタと接続されたカレントミラー回路と、カレントミラー回路の入力側に接続され、制御電圧が大きくなるほど電流量が増大する可変電流源と、を含んでもよい。
【0012】
充電回路は、出力側がキャパシタと接続されたカレントミラー回路と、カレントミラー回路の入力側に接続された第1抵抗と、第1抵抗と並列な経路に直列に設けられた第1トランジスタおよび第2抵抗と、を含み、第1トランジスタの制御端子に、制御電圧に応じた信号が入力されてもよい。
この場合、カレントミラー回路に加えて、1個のトランジスタと2個の抵抗素子という簡易な構成かつ小さな回路面積で、徐変点灯が可能となり、オペアンプが不要であるため低コスト化も実現できる。
【0013】
充電回路は、電源ラインと第1トランジスタの制御端子の間に設けられた第3抵抗と、第1トランジスタの制御端子と接地ラインの間に設けられ、その制御端子に制御電圧が入力され、第1トランジスタと相補的な極性を有する第2トランジスタと、をさらに含んでもよい。
この場合、第3抵抗と第2トランジスタを追加することにより、第1トランジスタと第2トランジスタのベースエミッタ間(ゲートソース間)の電圧が相殺されるため、制御電圧が低い領域においても、好ましい波形を得ることができる。
【0014】
充電回路は、キャパシタと接続され、キャパシタに第1電流をソースする第1電流源と、キャパシタと接続され、キャパシタから第2電流をシンクする第2電流源であって、制御電圧が大きくなるほど第2電流を減少させる第2電流源と、を含んでもよい。
キャパシタは、第1電流と第2電流の差分電流で充電され、したがって制御電圧が増大するにしたがい、差分電流は増大することとなり、徐変点灯が可能となる。
【0015】
充電回路は、出力側がキャパシタの一端と接続されたカレントミラー回路と、カレントミラー回路の入力側に接続された第1抵抗と、キャパシタの一端と接地ラインの間に直列に設けられた第1トランジスタおよび第2抵抗と、第1トランジスタの制御端子と接地ラインの間に設けられた第3抵抗と、一端が電源ラインと接続された第4抵抗と、第4抵抗と第3抵抗の間に設けられ、制御端子に制御電圧が入力された第2トランジスタと、を含んでもよい。
【0016】
点灯回路は、キャパシタと並列な放電経路を形成するように、直列に接続される放電用抵抗と放電用トランジスタをさらに備えてもよい。放電用トランジスタおよび充電回路は、外部からの点灯指示信号に応じてオン、オフが切りかえ可能に構成されてもよい。
消灯時に、充電回路をオフし、放電用トランジスタをオンすることにより、制御電圧を緩やかに好ましい波形で低下させることができ、徐変消灯が可能となる。
【0017】
点灯回路は、制御電圧に応じた電圧を所定のしきい値電圧と比較する比較回路をさらに備え、比較結果を示すランプ電流強制停止信号を出力可能に構成されてもよい。
比較回路により、レーザダイオードを駆動する際に、制御電圧がレーザダイオードの発振しきい値電流に対応するしきい値より小さいことを検出できる。そして電流強制停止信号を参照することにより、非発振状態でレーザダイオードに無駄な電流が流れるのを防止できる。
【0018】
本発明の別の態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、光源と、光源を駆動する上述のいずれかの点灯回路と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のある態様によれば、低コストで好ましい徐変点灯が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)〜(c)は、点灯・消灯時の光量の波形を示す図である。
図2】実施の形態に係る車両用灯具の基本構成を示す回路図である。
図3図3(a)、(b)は、制御電圧生成部の具体的な構成例を示す回路図である。
図4図4(a)、(b)は、制御電圧生成部の具体的な構成例である。
図5図5(a)、(b)は、それぞれ図4(a)、(b)の制御電圧生成部の動作波形図である。
図6図6(a)、(b)は、制御電圧生成部の別の構成を示す回路図である。
図7図7(a)〜(c)は、制御電圧生成部と組み合わせ可能な調光方式を説明する図である。
図8】徐変点灯に加えて徐変消灯をサポートする制御電圧生成部の回路図である。
図9】レーザダイオードの電流特性を示す図である。
図10】変形例に係る制御電圧生成部の回路図である。
図11】実施の形態に係る車両用灯具を備えるランプユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0024】
図2は、実施の形態に係る車両用灯具1の基本構成を示す回路図である。車両用灯具1は、点灯回路10および光源2を備える。光源2は、LEDあるいはレーザダイオードなどの半導体光源である。点灯回路10は、光源2に目標輝度に応じたランプ電流を供給し、光源2を発光させる。
【0025】
点灯回路10は、制御電圧生成部30および駆動回路20を備え、光源2の消灯状態から点灯状態に遷移するときに、その輝度を緩やかに増大させる徐変点灯を行なう。駆動回路20は、バッテリ4からスイッチ6を介して電池電圧VBATを受け、制御電圧VCNTに応じたランプ電流ILDを光源2に供給する。駆動回路20の構成は特に限定されないが、たとえば電池からの電圧VBATを昇圧あるいは降圧するDC/DCコンバータで構成される。また駆動回路20による調光方式は特に限定されず、電流量を制御するアナログ調光を行なってもよいし、電流量(振幅)を一定としつつ、オン、オフの時間比率を変化させるPWM調光を行なってもよい。
【0026】
制御電圧生成部30は、制御電圧VCNTを生成し、駆動回路20に供給する。制御電圧生成部30は、光源2の点灯開始が指示されると、制御電圧VCNTを時間とともに増大させる。制御電圧生成部30は、キャパシタC11および充電回路32を備える。たとえば消灯状態では、電源ラインの電源電圧VCCはゼロであり、点灯が指示され、スイッチ6がターンオンすると電源電圧VCCが所定レベル(たとえば3.5Vや5V)に向かって増大する。
【0027】
キャパシタC11の一端は接地され、その電位が固定される。キャパシタC11の両端間の電圧が制御電圧VCNTである。充電回路32は、キャパシタC11に可変の充電電流Icを供給する。充電回路32は、制御電圧VCNTが所定の電圧値VMAXに到達するまで、制御電圧VCNTが大きくなるほど充電電流Icを増大させる。充電回路32は、制御電圧VCNTをそれに応じた電流Icに変換するV/I変換回路(トランスコンダクタンス回路)と把握することができる。
【0028】
以上が点灯回路10の基本構成である。この点灯回路10によれば、制御電圧VCNTが所定の電圧値VMAXに達するまでの期間、つまり所定の光量に達するまでの期間は、制御電圧VCNTが大きくなるほど、つまり光量が大きくなるほど、充電電流Icが大きくなり、したがって制御電圧VCNTの上昇速度つまり光量の増加速度が速くなり、図1(a)に示したような好ましい徐変点灯が可能となる。本発明は、図2のブロック図として把握されるさまざまな回路に及ぶが、以下ではその具体的な構成例をいくつか説明する。
【0029】
図3(a)、(b)は、制御電圧生成部30の具体的な構成例を示す回路図である。図3(a)の充電回路32は、カレントミラー回路34および可変電流源36を備える。カレントミラー回路34の出力側は、キャパシタC11と接続される。可変電流源36は、カレントミラー回路34の入力側に接続され、制御電圧VCNTが大きくなるほど電流量Iaが増大するよう構成される。キャパシタC11の充電電流Icは、カレントミラー回路34のミラー比(電流増幅率)Kを用いて、Ic=K×Iaで与えられる。
【0030】
カレントミラー回路34の構成は特に限定されないが、たとえばベースが共通に接続された1対のPNP型バイポーラトランジスタで構成される。この構成において、制御電圧VCNTは、所定の電圧値VMAX≒VCC−VBEを上限として変動し、この電圧値VMAXに到達した以降は、この所定の電圧値VMAXが維持される。VBEは、バイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧(≒0.6V)である。エミッタ抵抗R21、R22は、カレントミラー回路の精度、安定性を高めるために挿入されるが、省略してもよい。またバイポーラトランジスタに代えてPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いてもよい。
【0031】
制御電圧生成部30は、図3(b)のように把握することもできる。カレントミラー回路34の入力側には、可変インピーダンス回路38が接続される。可変インピーダンス回路38は、制御電圧VCNTが大きくなるほどインピーダンスが低下するように構成される。電流Iaは、トランジスタQ21のベースエミッタ間電圧VBE、可変インピーダンス回路38のインピーダンスRvを用いると、以下の式で与えられる。
CC=Ia×(R21+Rv)+VBE
したがって、電流Iaは以下の式で与えられ、インピーダンスRvが低下するほど、電流Iaは増加する。
Ia=(VCC−VBE)/(R21+Rv)
R21≪Rvであるとき、以下の近似式が成り立つ。
Ia≒(VCC−VBE)/Rv
【0032】
図4(a)、(b)は、制御電圧生成部30の具体的な構成例である。図4(a)の可変電流源36は、第1抵抗R11、第2抵抗R12、第1トランジスタQ11を含む。第1抵抗R11は、カレントミラー回路34の入力側に接続される。第1トランジスタQ11および第2抵抗R12は、第1抵抗R11と並列な経路に直列に設けられる。第1トランジスタQ11は、NPN型バイポーラトランジスタであり、その制御端子(ベース)には、制御電圧VCNTに応じた信号が入力される。第1トランジスタQ11は、NチャンネルMOSFETを用いてもよい。
【0033】
第1トランジスタQ11のベースエミッタ間電圧をVBEとすると、第2抵抗R12の両端間の電圧VR12は、VCNT−VBEとなる。したがって、第1トランジスタQ11および第2抵抗R12に流れる電流IQ11は、以下の式で与えられ、したがって電流IQ11は制御電圧VCNTに対して実質的にリニアに増大する。
Q11=(VCNT−VBE)/R12
【0034】
カレントミラー回路34の入力電流Iaは、第1抵抗R11に流れる電流IR11と第1トランジスタQ11の電流IQ11の合計である。抵抗R21の抵抗値が無視できるとすれば、IR11=(VCC−VBE)/R11となり、以下の式を得る。
Ia=(VCC−VBE)/R11+(VCNT−VBE)/R12
右辺第1項は定数とみなせるから、電流Iaは、制御電圧VCNTに対して実質的に線形に変化することとなる。
【0035】
図5(a)は、図4(a)の制御電圧生成部30の動作波形図である。VBE<0.6Vの状態では第1トランジスタQ11はオフであるから、点灯開始直後(t≒0)では、Ia=IR11となり、制御電圧VCNTはほぼ一定の傾きで増大する。時刻t1にVCNT>0.6Vとなると、第1トランジスタQ11のコレクタ・エミッタ間に電流が流れはじめ、電流Iaが制御電圧VCNTに対して線形に増大し始める。これにより制御電圧VCNTが高くなるほど、つまり光量が増大するほど、変化速度が速くなり、図1(a)の好ましい徐変点灯が可能となる。そして制御電圧VCNTが所定の電圧値VMAXに到達すると、光量は電圧値VMAXに応じた所定量に維持される。
【0036】
図4(a)の制御電圧生成部30によれば、カレントミラー回路34に加えて、2個の抵抗と1個のトランジスタを用いて、オペアンプを用いることなく低コスト、小面積で好ましい制御電圧VCNTの波形を生成できる。
【0037】
なお第1抵抗R11、第2抵抗R12、第1トランジスタQ11は、図4(b)の可変インピーダンス回路38に対応するものとも理解できる。
【0038】
図4(b)の可変電流源36は、図4(a)のそれに加えて、第2トランジスタQ12、第3抵抗R13をさらに備える。第3抵抗R13は、電源ラインVCCと第1トランジスタQ11の制御端子(ベース)の間に設けられる。第2トランジスタQ12は、PNP型、つまり第1トランジスタQ11と相補的な極性を有し、第1トランジスタQ11の制御端子と接地ラインの間に設けられる。第2トランジスタQ12のベースに、制御電圧VCNTが入力される。
【0039】
図5(b)は、図4(b)の制御電圧生成部30の動作波形図である。図4(b)では、第2抵抗R12の両端間の電圧VR12は、VCNT+VBE−VBE=VCNTとなり、トランジスタQ11の電流IQ11は、IQ11=VCNT/R12となる。したがって、点灯開始直後から電流Iaが増加し始めるため、図5(a)の構成に比べて光量が小さな領域(VCNT≒0)における波形を改善できる。
【0040】
図6(a)は、制御電圧生成部30の別の構成を示す回路図である。充電回路32は、第1電流源CS1、第2電流源CS2を含む。第1電流源CS1は、キャパシタC11に第1電流ICS1をソースする。第2電流源CS2は、キャパシタC11から第2電流ICS2をシンクする。言い換えれば第2電流源CS2は、第1電流源CS1からのキャパシタC11への充電電流(第1電流)ICS1の一部あるいは全部を別経路に引き込む。第2電流源CS2は、制御電圧VCNTが大きくなるほど第2電流ICS2を減少させるよう構成される。
【0041】
この場合、キャパシタC11は、第1電流ICS1と第2電流ICS2の差分電流Ic(=ICS1−ICS2)で充電され、したがって制御電圧VCNTが増大するにしたがい、差分電流Icは増大することとなり、図1(a)に示すような徐変点灯が可能となる。
【0042】
図6(b)は、図6(a)の制御電圧生成部30の具体的な回路図である。第1電流源CS1は、カレントミラー回路34と、第1抵抗R31を含む。R21の電圧降下を無視すれば、第1電流ICS1は実質的に一定とみなすことができる。
CS1≒(VCC−VBE)/R31
【0043】
第2電流源CS2は、第1トランジスタQ31、第2トランジスタQ32、第2抵抗R32、第3抵抗R33、第4抵抗R34を含む。第1トランジスタQ31および第2抵抗R32は、キャパシタC11の一端と接地ラインの間に直列に設けられる。第3抵抗R33は、第1トランジスタQ31の制御端子(ベース)と接地ラインの間に設けられる。第4抵抗R34一端は電源ラインと接続される。第2トランジスタQ32は、第4抵抗R34と第3抵抗R33の間に設けられ、その制御端子(ベース)には制御電圧VCNTが入力される。
【0044】
第4抵抗R34の両端間の電圧(電圧降下)VR34およびその電流IR34は以下の式で与えられる。
R34=VCC−(VCNT+VBE
R34=VR34/R34={VCC−(VCNT+VBE)}/R34
【0045】
トランジスタQ31のベース電圧(第3抵抗R33の電圧降下)は、VR33=IR34×R33であり、第2抵抗R32の電圧降下VR32は、VR32=VR33−VBEである。
したがって第1トランジスタQ31および第2抵抗R32に流れる電流ICS2は、以下の式で与えられる。
CS2=(VR33−VBE)/R32=(IR34×R33−VBE)/R32
={(VCC−VCNT−VBE)/R34×R33−VBE}/R32
【0046】
したがって、制御電圧VCNTが増大するほど、電流ICS2は減少し、充電電流Iは増大することとなる。
【0047】
以上、制御電圧生成部30の構成例について説明した。続いて制御電圧生成部30が生成する制御電圧VCNTにもとづく調光制御を説明する。図7(a)〜(c)は、制御電圧生成部30と組み合わせ可能な調光方式を説明する図である。図7(a)には、駆動回路20が示される。駆動回路20は、降圧型のDC/DCコンバータ22、電流センサ24、パルス変調器26を備える。この駆動回路20は、アナログ調光により光源2の光量を制御する。電流センサ24は、ランプ電流ILDの経路上に設けられた検出抵抗Rsと、検出抵抗Rsの電圧降下を増幅し、電流検出信号Iを生成するアンプAMPを含む。パルス変調器26は、電流検出信号Iが制御電圧VCNTと一致するように、DC/DCコンバータ22をスイッチングする。
【0048】
パルス変調器26の構成は特に限定されず、公知技術を用いればよい。たとえばパルス変調器26は、エラーアンプ50、PWMコンパレータ52、オシレータ54、ドライバ56を含む。エラーアンプ50は、電流検出信号Iと制御電圧VCNTの誤差を増幅する。PWMコンパレータ52は、誤差信号VERRと、オシレータ54が生成する三角波あるいはのこぎり波の周期信号VOSC1を比較し、誤差信号VERRに応じたデューティ比を有するパルス信号SPWMに変換する。ドライバ56は、パルス信号SPWMに応じてDC/DCコンバータ22のスイッチング素子M11をスイッチングする。
【0049】
この駆動回路20によれば、制御電圧VCNTに比例したランプ電流ILDを生成することができる。そして制御電圧VCNT図1(a)に示す波形にしたがって変化させることにより、好ましい徐変点灯が実現できる。
【0050】
図7(b)の駆動回路20は、図7(a)と同様にアナログ調光を行なう。駆動回路20は、光源2と直列に設けられた電流源60およびDC/DCコンバータ22を含む。光源2のアノードにはDC/DCコンバータ22が生成する駆動電圧が供給される。電流源60はV/I変換回路であり、制御電圧VCNTをそれに応じたランプ電流ILDに変換する。たとえば電流源60は、トランジスタQ41と抵抗R41を含む。トランジスタQ41の制御端子(ベース)に制御電圧VCNTが入力される。この電流源60が生成するランプ電流ILDは、ILD=(VCNT−VBE)/R41となる。
【0051】
図7(c)の駆動回路20は、PWM調光(バースト調光ともいう)により光源2の光量を制御する。駆動回路20は、電流源60、バースト信号発生器62、調光スイッチ64を含む。バースト信号発生器62は、制御電圧VCNTを受け、それに比例したデューティ比を有する調光パルスS1を生成する。バースト信号発生器62は、たとえばオシレータ66、コンパレータ68を含む。オシレータ66は、数十Hz〜数百Hz程度の周波数を有するのこぎり波あるいは三角波の周期信号VOSC2を生成する。コンパレータ68は、周期信号VOSCと制御電圧VCNTを比較し、制御電圧VCNTに応じたデューティ比を有する調光パルスS1を生成する。電流源60は、一定量のランプ電流ILDを生成する。調光スイッチ64は、調光パルス信号S1に応じてオン、オフが切りかえられ、これによりPWM調光が実現される。なお調光スイッチ64は必ずしもランプ電流ILDの経路上に設ける必要はなく、電流源60に内蔵して、電流源60のオン、オフを切りかえ可能としてもよい。
【0052】
ここまでは徐変点灯について説明したが、以下では徐変消灯を説明する。図8は、徐変点灯に加えて徐変消灯をサポートする制御電圧生成部30aの回路図である。制御電圧生成部30aは、点灯指示信号S30に応じて制御電圧VCNTを変化させる。点灯指示信号S30は、ローレベルが点灯、ハイレベルが消灯に対応する。点灯指示信号S30は、上位のマイクロコントローラ等から与えられる。
【0053】
制御電圧生成部30aは、図3(a)あるいは(b)の制御電圧生成部30に加えて、放電用トランジスタQ51、放電用抵抗R51、充電停止用トランジスタQ52、消灯制御回路70を備える。
【0054】
放電用トランジスタQ51および放電用抵抗R51は直列に接続され、キャパシタC11から接地への放電経路を形成する。放電用トランジスタQ51は、点灯指示信号S30が点灯を指示するときにオフであり、消灯を指示するときにオンする。たとえば放電用トランジスタQ51のベースには、抵抗r60、r61により分圧された点灯指示信号S30が入力される。
【0055】
充電停止用トランジスタQ52は、点灯指示信号S30が点灯を指示するときに充電回路32を動作させ、消灯を指示するときに充電回路32を停止させるために設けられる。具体的には充電停止用トランジスタQ52は、トランジスタQ21、Q22のベースと電源ラインVCCの間に設けられ、点灯指示信号S30が消灯を指示するとき(ハイレベル)にオンとなり、カレントミラー回路34を停止させる。
【0056】
消灯制御回路70は、点灯指示信号S30に応じて充電停止用トランジスタQ52のオン、オフを切りかえる。たとえば消灯制御回路70は、抵抗r62、r63、r64、r65およびトランジスタq53を含むが、その構成は特に限定されない。
【0057】
続いて制御電圧生成部30aの動作を説明する。
点灯指示信号S30がハイレベルの間、充電停止用トランジスタQ52、放電用トランジスタQ51は両方オンであり、制御電圧VCNTは0Vとなっている。点灯指示信号S30がローレベルとなると、トランジスタQ52、Q51が両方オフとなる。このときの動作は、図3の制御電圧生成部30と同様であり、制御電圧VCNT図5(a)あるいは(b)の波形にしたがって増大し、徐変点灯が行なわれる。
【0058】
その後、ランプを消灯するために、点灯指示信号S30がハイレベルに切りかえられると、トランジスタQ52、Q51が両方オンとなる。これにより充電回路32が停止し、充電電流Icはゼロとなり、キャパシタC11は、抵抗R51およびトランジスタQ51を介して放電される。このときの放電速度は、CR時定数τ(=C11×R51)で与えられ、好ましい徐変消灯が実現できる。
【0059】
続いて、レーザダイオード3を光源とした場合の変形例を説明する。図9は、レーザダイオード3の電流特性を示す図である。レーザダイオード3はランプ電流ILDがしきい値電流ITHより低い領域では発振しない。つまり、レーザダイオード3にしきい値電流ITHより小さなランプ電流ILDを供給することは、無駄な電力を消費することとなる。
【0060】
図10は、変形例に係る制御電圧生成部30bの回路図である。制御電圧生成部30bは、制御電圧VCNTがしきい値電流ITHに対応するしきい値電圧VTHより低くなると、それを外部に通知する信号(ランプ電流強制停止信号)S31を出力可能に構成される。CR時定数にしたがった放電により制御電圧VCNTを低下させる徐変消灯では、完全に消灯となるタイミングを規定しにくい。そこで制御電圧生成部30bを付加することで完全に消灯となるタイミングを正確に規定し、外部に通知できるという効果を得られる。
【0061】
制御電圧生成部30bは、キャパシタC11の制御電圧VCNTに応じた検出信号を所定のしきい値と比較する比較回路72を含む。図10には、図4(b)の制御電圧生成部30に比較回路72を追加した構成が示される。具体的には比較回路72は、トランジスタQ11のベース電圧VBQ11(=VCNT+VBE)を、所定のしきい値電圧VTH1と比較する。たとえば比較回路72は、トランジスタq71、抵抗r71、r72、r73を含む。この場合、トランジスタq71のベース電圧(VCNT+VBE)×r72/(r71+r72)がしきい値を下回ると、トランジスタq71がオフし、ランプ電流強制停止信号S31がハイレベルとなる。図示しない上位のコントローラは、ランプ電流強制停止信号S31がハイレベルに遷移すると、ランプ電流ILDを強制的にゼロとする。あるいは図2の駆動回路20は、ランプ電流強制停止信号S31がハイレベルに遷移すると、ランプ電流ILDを強制的にゼロとする。この変形例によれば、無駄な消費電力を低減できる。当然ながら図10の制御電圧生成部30のに、図8の放電用トランジスタQ51、放電用抵抗R51、充電停止用トランジスタQ52、消灯制御回路70を追加してもよい。比較回路72は、オペアンプを用いた電圧コンパレータで構成してもよい。
【0062】
最後に、車両用灯具1の用途を説明する。図11は、実施の形態に係る車両用灯具1を備えるランプユニット(ランプアッシー)500の斜視図である。ランプユニット500は、透明のカバー502、ハイビームユニット504、ロービームユニット506、筐体508を備える。上述の車両用灯具1は、たとえばハイビームユニット504に用いることができる。車両用灯具1は、ひとつ、あるいは複数の光源2を備える。ハイビームユニット504に代えて、あるいはそれに加えて、ロービームユニット506に車両用灯具1を用いてもよい。
【0063】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0064】
1…車両用灯具、2…光源、3…レーザダイオード、4…バッテリ、6…スイッチ、10…点灯回路、20…駆動回路、22…DC/DCコンバータ、24…電流センサ、26…パルス変調器、30…制御電圧生成部、C11…キャパシタ、32…充電回路、34…カレントミラー回路、36…可変電流源、38…可変インピーダンス回路、50…エラーアンプ、52…PWMコンパレータ、54…オシレータ、56…ドライバ、60…電流源、62…バースト信号発生器、64…調光スイッチ、70…消灯制御回路、72…比較回路、R11…第1抵抗、R12…第2抵抗、R13…第3抵抗、Q11…第1トランジスタ、Q12…第2トランジスタ、CS1…第1電流源、CS2…第2電流源、R31…第1抵抗、R32…第2抵抗、R33…第3抵抗、R34…第4抵抗、Q31…第1トランジスタ、Q32…第2トランジスタ、Q51…放電用トランジスタ、R51…放電用抵抗、Q52…充電停止用トランジスタ、70…消灯制御回路、500…ランプユニット、502…カバー、504…ハイビームユニット、506…ロービームユニット、508…筐体。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11