(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336882
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】建物用パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 7/00 20060101AFI20180528BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20180528BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20180528BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
B05D7/00 L
B05D3/04 Z
B05D3/12 D
E04C2/30 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-214617(P2014-214617)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-78004(P2016-78004A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】駒坂 昇一
【審査官】
清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−241384(JP,A)
【文献】
特開平10−337527(JP,A)
【文献】
特開平11−210148(JP,A)
【文献】
特開2002−282751(JP,A)
【文献】
特開2010−155221(JP,A)
【文献】
特開2004−302218(JP,A)
【文献】
特開平11−276981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B05C 7/00−21/00
E04C 2/00−2/54
B28B 11/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定尺版から寸法の異なる複数枚の建物用パネルを製造する方法であって、
切削具により、定尺版における後に建物用パネルの端辺となる部分の表面に所定形状の溝を形成する工程と、
前記溝が形成された前記定尺版を塗装する工程と、
切断具により前記定尺版を切断して複数枚の建物用パネルに分割する工程と、を有し、
前記溝を形成する工程は、前記切削具により、前記定尺版の縁部でない位置において、少なくとも一つの前記後に建物用パネルの端辺となる部分の延長部分に溝の余長部を形成する工程を有し、
前記定尺版を塗装する工程は、空気を吹き付けることにより、余分な塗料を除去するとともに、前記溝の余長部に余分な塗料を集める工程を有し、
前記定尺版を切断する工程は、前記余長部を除去する工程を有する、建物用パネルの製造方法。
【請求項2】
前記切削具より小さい半径を有する他の切削具により前記余長部を加工する工程をさらに有する、請求項1に記載の建物用パネルの製造方法。
【請求項3】
前記定尺版を切断する工程は、前記切断具が、前記余長部の溝の直角方向から前記余長部を通り、当該余長部を除去しながら前記定尺版を切断する、請求項1又は2に記載の建物用パネルの製造方法。
【請求項4】
前記切断具が、回転刃であり、
前記余長部は、前記回転刃の厚みよりも短くなるように形成される、請求項3に記載の建物用パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁、床、屋根などに用いられるALCパネルなどの建物用パネルは、工場において、建物用パネルよりも大きい規定の寸法を有する定尺版を切断して製造される。この種の建物用パネルの製造方法として、定尺版にシーリング部となる溝を形成し、その後塗装し、その後定尺版をシーリング部に沿って切断して、建物用パネルを形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、切断前に塗装が行われるので、塗装が1回で済むというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−241384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の方法は、定尺版から同じ寸法(形)の建物用パネルを切り出すものであり、溝を、必ず定尺版の一の縁部から他の縁部まで形成している(溝の端部が定尺版の縁部にある)ため、定尺版から異なる寸法の建物用パネルを切り出すには適していない。よって、例えば特定の寸法の建物用パネルが1枚だけ必要な場合には、定尺版の他の部分が無駄になる。
【0005】
そこで、出願人らは、1枚の定尺版から大きさの異なる複数の建物用パネルを製造して、端材(無駄となる部分)を減らすことを考えている。
【0006】
しかし、1枚の定尺版から大きさの異なる複数の建物用パネルを製造する場合、定尺版の縁部でない位置で、後に建物用パネルの端辺となる位置に溝を形成する必要があり、その際、溝の周辺に塗料の液だまりができてしまい、建物用パネルがきれいに仕上げられない恐れがある。
【0007】
本出願は、かかる点に鑑みてなされたものであり、1枚の定尺版から寸法の異なる複数の建物用パネルを製造して無駄を減らしつつ、建物用パネルをきれいに製造することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、定尺版から寸法の異なる複数枚の建物用パネルを製造する方法であって、切削具により、定尺版における後に建物用パネルの端辺となる部分の表面に所定形状の溝を形成する工程と、前記溝が形成された前記定尺版を塗装する工程と、切断具により前記定尺版を切断して複数枚の建物用パネルに分割する工程と、を有し、前記溝を形成する工程は、前記切削具により、前記定尺版の縁部でない位置において、少なくとも一つの前記後に建物用パネルの端辺となる部分の延長部分に溝の余長部を形成する工程を有し、前記定尺版を塗装する工程は、空気を吹き付けることにより、余分な塗料を除去するとともに、前記溝の余長部に余分な塗料を集める工程を有し、前記定尺版を切断する工程は、前記余長部を除去する工程を有する、建物用パネルの製造方法を含む。
【0009】
本発明によれば、切削具により、定尺版の縁部でない位置に溝を形成して、定尺版から様々な寸法の建物用パネルを切り出すことができるので、定尺版から寸法の異なる複数の建物用パネルを製造するのに適している。また、定尺版を塗装する工程において、余分な塗料を除去するとともに、溝の余長部に余分な塗料を集め、定尺版を切断する工程においてその余長部を除去するので、建物用パネルの表面がきれいに仕上げられる。よって、1枚の定尺版から寸法の異なる複数の建物用パネルを製造して無駄を減らしつつ、建物用パネルをきれいに製造できる。
【0010】
前記建物用パネルの製造方法は、前記切削具より小さい半径を有する他の切削具により前記余長部を加工する工程をさらに有していてもよい。
【0011】
前記定尺版を切断する工程は、前記切断具が、前記余長部の溝の直角方向から前記余長部を通り、当該余長部を除去しながら前記定尺版を切断するものであってもよい。
【0012】
前記切断具が、回転刃であり、前記余長部は、前記回転刃の厚みよりも短くなるように形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1枚の定尺版から寸法の異なる複数の建物用パネルを製造し無駄を減らしつつ、建物用パネルをきれいに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】定尺版の建物用パネルの配置を示す説明図である。
【
図2】建物用パネルのシーリング部を示す断面図である。
【
図3】定尺版に縦溝を形成した状態を示す説明図である。
【
図4】切削具により縦溝を形成する状態を示す断面図である。
【
図6】定尺版に横溝と縁溝をさらに形成した状態を示す説明図である。
【
図8】回転刃で定尺版を切断する状態を示す説明図である。
【
図9】回転刃で余長部を除去する様子を示す説明図である。
【
図11】他の切削具で余長部を加工する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態の一例について説明する。なお、図面の上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0016】
図1は、建物用パネルを製造するための定尺版1を示す。定尺版1は、例えばALCからなる厚みのある長方形のパネルであり、例えば300mm〜610mm×1500mm〜3000mm程度の寸法を有している。この定尺版1から、大きさの異なる複数枚の建物用パネルを形成できる。本実施の形態では、例えば定尺版1から6枚の建物用パネルA〜Fを形成する。
【0017】
定尺版1から製造される建物用パネルA〜Fは、建物の外壁、屋根、床等に使用され、使用部位により寸法が異なる。建物用パネルA〜Fは、建物に使用される際に、例えば
図2に示すように建物用パネルA同士で隣接させて使用され、それらの間には、雨水等が建物内に侵入するのを防止するシーリング材10が充填される。このため、建物用パネルA〜Fの端辺には、所定形状の溝20、21、22が形成される。後述する縦溝20には、例えばシーリング材10より上で露出する傾斜部30と、シーリング材10で埋没する垂直部31、湾曲部32、底部33等が形成される。
【0018】
以下、定尺版1から建物用パネルA〜Fを製造する方法について説明する。
【0019】
先ず、切削加工機の切削具により、定尺版1における後に建物用パネルA〜Fの端辺となる部分の表面に所定形状の溝を形成する。先ず、
図3に示すように定尺版1の縁部でない位置において、定尺版1の長手方向Xの、後に建物用パネルA〜Fの端辺となる部分40、41、42に縦溝20を形成する。このとき、
図4及び
図5に示すようにエンドミルなどの切削具50を縦軸回転させながら、定尺版1の長手方向Xに動かして縦溝20を形成する。そして、切削具50を、定尺版1の長手方向Xにおいて、建物用パネルA〜Fの端辺となる部分40〜42を超えた位置まで移動させて、当該端辺となる部分の延長部分に縦溝20の余長部20aを形成する。なお、余長部20aの長さLは、3mm〜15mm程度、さらに5mm程度が好ましい。
【0020】
次に、切削具50により、
図6に示すように定尺版1の短辺方向Yの建物用パネルA〜Fの端辺となる部分60、61、62、63に縦溝20より浅い横溝21を形成し、定尺版1の縁部にある建物用パネルA〜Fの端辺となる部分70に縁溝22を形成する。
【0021】
次に、塗装機により、
図7に示すように定尺版1の全体を塗装する。これにより、傾斜部30等のある縦溝20内も塗装される。この定尺版1を塗装する工程では、空気を噴出する空気ノズルにより、定尺版1に空気を吹き付けることにより、余分な塗料を除去するとともに、溝20の余長部20aに余分な塗料を集める。
【0022】
次に
図8及び
図9に示すように切断機の所定厚みの切断具としての回転刃80により、定尺版1を横溝21に沿って切断する。このとき、回転刃80を横軸回転させながら、定尺版1の短辺方向Yの溝21に沿って、縦溝20の余長部20aを通るように移動させ、当該余長部20aを除去しながら定尺版1を切断する。このとき、余長部20aと共に余分は塗料も除去される。なお、回転刃80には、余長部20aの長さLよりも厚いものを用いるのが好ましい。その後、定尺版1の長手方向Xの縦溝20に沿って定尺版1を切断する。この結果、
図10に示すように定尺版1が寸法の異なる複数枚の建物用パネルA〜Fに分割される。横溝21や、定尺版1の短辺方向の縁溝22は、パネルA〜Fの面取り部として形成してもよく、またこれら定尺版の短辺方向の溝の形成を省略してもよい。溝の形成を省略する場合、建物用パネルA〜Fの端辺となる部分に沿って切断すればよい。
【0023】
本実施の形態によれば、切削具50により、定尺版1の縁部でない位置に溝20を形成して、定尺版1から様々な寸法の建物用パネルA〜Fを切り出すことができるので、定尺版1から寸法の異なる複数の建物用パネルを製造するのに適している。また、溝20〜22を形成する工程において縦溝20の余長部20aを形成し、定尺版1を塗装する工程において、余分な塗料を除去するとともに、溝の余長部20aに余分な塗料を集め、定尺版1を切断する工程においてその余長部20aを除去するので、建物用パネルA〜Fの表面がきれいに仕上げられる。よって、1枚の定尺版1から寸法の異なる複数の建物用パネルA〜Fを製造して無駄を減らしつつ、建物用パネルA〜Fをきれいに製造できる。
【0024】
上記実施の形態において、例えば
図11に示すように、切削具50より小さい半径を有する切削具90により、余長部20aを加工するようにしてもよい。かかる場合、縦溝20の余長部20aの端にできる円弧の径を小さくすることができ、これによって余長部20aの長さLを短くできる。この結果、定尺版1の無駄を低減できる。また、回転刃80の厚みより切削具90の半径を小さくすることにより、回転刃80により余長部20aを一回で除去することができ、余長部20aの除去を簡単に行うことができる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0026】
例えば、定尺版1から建物用パネルA〜Fを製造していたが、その枚数や寸法は任意に選択できる。また、溝20〜22の形状も任意に選択できる。余長部を縦溝20に形成する例を説明したが、横溝21に余長部を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、定尺版から寸法の異なる複数の建物用パネルを製造して無駄を減らしつつ、建物用パネルをきれいに製造する際に有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 定尺版
20 縦溝
20a 余長部
50 切削具
80 回転刃
A〜F 建物用パネル