(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような試料作製装置では、観察領域の中心がイオンビームの照射位置(中心位置)となるため観察像においてイオンビームの照射位置を把握することは容易であるが、イオンビームの照射範囲(照射径)を把握することは容易でない。SEMを用いて高倍率で試料を観察する場合には、観察領域の全面にイオンビームが照射される状態となるためイオンビームの照射範囲を把握する必要性は低いものの、SEMや光学顕微鏡を用いて低倍率で試料を観察する場合には、観察領域中心の一部の領域にイオンビームが照射される状態となるためイオンビームの照射範囲を把握することは重要である。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、観察像においてイオンビームの照射範囲を把握し易くすることが可能な試料作製装置及び試料作製方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る試料作製装置は、試料を撮像して前記試料の観察像を出力する撮像部と、前記試料に照射されるイオンビームを発生するイオンビーム発生部と、前記観察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示すマーカーを合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部に出力する画像処理部とを含む。
【0007】
また、本発明に係る試料作製方法は、撮像部によって試料を撮像して前記試料の観察像を出力する撮像工程と、前記観察像に対して、前記試料に照射されるイオンビームの照射範囲を示すマーカーを合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部に出力する画像処理工程と、前記イオンビームを発生するイオンビーム発生工程とを含む。
【0008】
本発明によれば、試料の観察像に対してイオンビームの照射範囲を示すマーカーを合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部に出力することで、特に低倍率で試料を観察する場合に観察像においてイオンビームの照射範囲を把握し易くすることができ、加工位置合わせの精度を向上することができる。
【0009】
(2)本発明に係る試料作製装置では、前記画像処理部は、前記試料の表面観察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示す円状のマーカーを合成し、前記試料の断面観察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示す帯状のマーカーを合成してもよい。
【0010】
また、本発明に係る試料作製方法では、前記画像処理工程において、前記試料の表面観
察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示す円状のマーカーを合成し、前記試料の断面観察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示す帯状のマーカーを合成してもよい。
【0011】
本発明によれば、試料の表面観察像に対してイオンビームの照射範囲を示す円状のマーカーを合成することで、試料表面を観察する場合にイオンビームの照射範囲を把握し易くすることができる。また、前記試料の断面観察像に対してイオンビームの照射範囲を示す帯状のマーカーを合成することで、試料断面を観察する場合にイオンビームの照射範囲を把握し易くすることができる。
【0012】
(3)本発明に係る試料作製装置では、前記撮像部によって撮像された前記試料の観察像を記憶する記憶部を更に含み、前記画像処理部は、前記撮像部からリアルタイムに出力された前記観察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示す第1マーカーを合成して第1合成画像を生成し、前記記憶部に記憶された前記観察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示す第2マーカーを合成して第2合成画像を生成し、前記第1合成画像と前記第2合成画像とを前記表示部に出力してもよい。
【0013】
また、本発明に係る試料作製方法では、前記撮像部によって撮像された前記試料の観察像を記憶部に記憶させる記憶工程を更に含み、前記画像処理工程において、前記撮像部からリアルタイムに出力された前記観察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示す第1マーカーを合成して第1合成画像を生成し、前記記憶部に記憶された前記観察像に対して前記イオンビームの照射範囲を示す第2マーカーを合成して第2合成画像を生成し、前記第1合成画像と前記第2合成画像とを前記表示部に出力してもよい。
【0014】
本発明によれば、例えば、リアルタイムに出力された観察像(例えば、表面観察像)に第1のマーカー(例えば、円状のマーカ)を合成して合成画像を表示部に出力するとともに、記憶部に記憶された観察像(例えば、断面観察像)に第2のマーカー(例えば、帯状のマーカー)を合成して合成画像を表示部に出力することで、2つの観察像それぞれにおけるイオンビームの照射範囲を示すことができ、イオンビームの照射範囲をより把握し易くすることができる。
【0015】
(4)本発明に係る試料作製装置では、前記画像処理部は、前記試料を保持する試料ホルダの移動に応じて、前記第2合成画像における前記第2マーカーの位置を変更してもよい。
【0016】
また、本発明に係る試料作製方法では、前記画像処理工程において、前記試料を保持する試料ホルダの移動に応じて、前記第2合成画像における前記第2マーカーの位置を変更してもよい。
【0017】
本発明によれば、試料の移動に応じて第2合成画像における第2マーカーの位置を変更することで、試料を移動した場合であっても、記憶部に記憶された観察像におけるイオンビームの照射範囲を正確に示すことができる。
【0018】
(5)本発明に係る試料作製装置では、前記画像処理部は、前記撮像部の観察倍率の変更に応じて、前記観察像に対して合成する前記マーカーの大きさを変更してもよい。
【0019】
また、本発明に係る試料作製方法では、前記画像処理工程において、前記撮像部の観察倍率の変更に応じて、前記観察像に対して合成する前記マーカーの大きさを変更してもよい。
【0020】
本発明によれば、撮像部の観察倍率の変更に応じてマーカーの大きさを変更することで
、観察倍率を変更した場合であっても、観察像におけるイオンビームの照射範囲を正確に示すことができる。
【0021】
(6)本発明に係る試料作製装置では、前記画像処理部は、操作部からの操作入力に基づいて、前記観察像に対して合成する前記マーカーの透過度を変更してもよい。
【0022】
また、本発明に係る試料作製方法では、前記画像処理工程において、操作部からの操作入力に基づいて、前記観察像に対して合成する前記マーカーの透過度を変更してもよい。
【0023】
本発明によれば、操作部からの操作入力に基づきマーカーの透過度を変更することで、合成画像においてユーザが所望する透過度でマーカーを表示させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0026】
1.構成
図1は、本実施形態に係る試料作製装置の構成の一例を示す図である。なお本実施形態の試料作製装置は
図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0027】
図1に示すように、試料作製装置1は、試料作製装置本体2、処理部60、操作部70、表示部72、記憶部74を含む。
【0028】
試料作製装置本体2は、走査型電子顕微鏡10(撮像部の一例)、光学顕微鏡20(撮像部の一例)、イオン銃30(イオンビーム発生部)、ステージ40、試料位置調整機構42、試料ホルダ44、遮蔽材50、遮蔽材位置調整機構52、遮蔽材保持機構54を含む。走査型電子顕微鏡10、光学顕微鏡20及びイオン銃30は、真空チャンバ3に取り付けられている。
【0029】
走査型電子顕微鏡10(SEM)は、電子銃11、コンデンサレンズ12(集束レンズ)、走査コイル13、対物レンズ14、検出器15を含む。電子銃11は、電子銃制御装置(図示省略)により制御され、電子を加速し電子ビームを真空チャンバ3内に放出する。コンデンサレンズ12(集束レンズ)は、試料Sに到達する電子ビームの照射電流量及び開き角を制御するものであり、コンデンサレンズ制御装置(図示省略)により制御される。対物レンズ14は、電子ビームを試料Sの表面で集束させるためのものであり、対物レンズ制御装置(図示省略)により制御される。走査コイル13(走査偏向器)は、対物レンズ14によって集束された電子ビームの試料S上での走査を行うための電磁コイルであり、走査コイル制御装置(図示省略)により制御される。検出器15は、集束された電子ビームの走査に基づいて試料S等から放出される二次電子や反射電子を検出する。検出器15によって検出された検出信号は、増幅器によって増幅された後、走査コイル制御装置に供給される電子ビームの走査信号と同期して画像化され、電子顕微鏡像(観察像)の画像データとして処理部60に供給される。
【0030】
光学顕微鏡20は、CCD/CMOSイメージセンサを備え、試料Sを撮像して光学顕微鏡像(観察像)の画像データを処理部60に出力する。イオン銃30は、真空チャンバ3内にイオンビームを放出する。
【0031】
真空チャンバ3内には、ステージ40が配置されている。ステージ40は図中左右方向(矢印Dで示す方向)に移動可能に構成され、試料S及び遮蔽材50の位置調整を行う際には走査型電子顕微鏡10又は光学顕微鏡20の下方に位置し、試料Sの加工を行う際にはイオン銃30の下方に位置する。なお、
図1は、ステージ40が走査型電子顕微鏡10の下方に位置している状態を示している。
【0032】
ステージ40には、試料Sの位置を調整する試料位置調整機構42が配置されている。試料位置調整機構42は、図中左右方向及び奥行き方向に移動可能に構成されている。試料位置調整機構42には、試料Sを保持する試料ホルダ44が取り付けられている。また、試料作製装置本体2には、試料S(試料ホルダ44)を傾斜させる傾斜機構(図示省略)が更に設けられ、試料Sを傾斜させることで、試料Sの表面観察像と断面観察像の両方を取得できるように構成されている。
【0033】
また、ステージ40には、遮蔽材50の位置を調整する遮蔽材位置調整機構52が配置されている。遮蔽材位置調整機構52は、図中左右方向に移動可能に構成されている。遮蔽材位置調整機構52には、遮蔽材50を保持する遮蔽材保持機構54が取り付けられている。遮蔽材50は、試料Sの一部を覆うように配置され、試料Sの当該部分をイオンビームから遮蔽するための部材である。遮蔽材50は、直線状の端面(エッジ部)を有しており、この端面は図中奥行き方向に平行である。
【0034】
操作部70は、ユーザが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部60に出力する。ユーザは、操作部70を操作して、ステージ40を移動させたり、試料Sの位置調整を行ったり、遮蔽材50の位置調整を行ったりすることができる。操作部70の機能は、キーボード、マウス、タッチパネルなどのハードウェアにより実現することができる。
【0035】
表示部72は、処理部60によって生成された画像(合成画像)を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。
【0036】
記憶部74は、処理部60の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶するとともに、処理部60のワーク領域として機能し、その機能はハードディスク、RAMなどにより実現できる。
【0037】
処理部60は、試料作製装置本体2を制御する処理や、撮像部(走査型電子顕微鏡10、光学顕微鏡20)で撮像された画像の画像処理などの処理を行う。処理部60の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部60は、制御部62、画像処理部64を含む。
【0038】
制御部62は、操作部70からの操作情報に基づき制御信号を生成し、生成した制御信号を試料位置調整機構42や遮蔽材位置調整機構52、傾斜機構、ステージ40の駆動機構等に出力して、試料位置調整機構42や遮蔽材位置調整機構52、傾斜機構、ステージ40の動作(移動)を制御する。また、制御部62は、上述したコンデンサレンズ制御装置、走査コイル制御装置、対物レンズ制御装置を制御する処理を行う。
【0039】
画像処理部64は、撮像部(走査型電子顕微鏡10又は光学顕微鏡20)から出力された観察像(電子顕微鏡像又は光学顕微鏡像)に対してイオンビームの照射範囲を示すマーカーを合成して合成画像を生成する。合成画像は、例えば、2つの画像(観察像とマーカー)を係数(α値)により半透明合成するアルファブレンド等の手法を用いて生成することができる。画像処理部64で生成された合成画像は表示部72に出力される。ユーザは、表示部72に出力される合成画像を確認しながら、操作部70を操作することで試料S(試料ホルダ44)及び遮蔽材50を移動させて、試料S及び遮蔽材50の位置調整を行うことができる。
【0040】
また、画像処理部64は、試料Sの表面観察像に対してイオンビームの照射範囲を示す円状のマーカーを合成して合成画像を生成してもよい。また、画像処理部64は、試料Sの断面観察像に対してイオンビームの照射範囲を示す帯状のマーカーを合成して合成画像を生成してもよい。ここで、操作部70からの操作入力(操作情報)に基づいて、観察像に対して合成するマーカーの形状を決定(円状のマーカーを合成するか、帯状のマーカーを合成するかをユーザが設定)してもよい。また、試料S(試料ホルダ44)の傾斜角を検出し、検出した傾斜角に基づいて、観察像に対して合成するマーカーの形状を決定してもよい。この場合、試料Sの傾斜角が0°付近(試料表面が水平に近い状態)である場合には、観察像(表面観察像)に円状のマーカーを合成し、試料Sの傾斜角が90°付近(試料表面が垂直に近い状態)である場合には、観察像(断面観察像)に帯状のマーカーを合成する。
【0041】
また、画像処理部64は、走査型電子顕微鏡10又は光学顕微鏡20からリアルタイムに出力された観察像に対してイオンビームの照射範囲を示す第1マーカーを合成して第1合成画像を生成し、記憶部74に記憶された観察像(走査型電子顕微鏡10又は光学顕微鏡20によって予め撮像された観察像)に対してイオンビームの照射範囲を示す第2マーカーを合成して第2合成画像を生成し、第1合成画像と第2合成画像とを表示部72に出力してもよい。例えば、リアルタイムに出力された表面観察像に対して円状のマーカーを合成して第1合成画像を生成するとともに、記憶部74に記憶された断面観察像に対して帯状のマーカーを合成して第2合成画像を生成してもよい。また、リアルタイムに出力された断面観察像に対して帯状のマーカーを合成して第1合成画像を生成するとともに、記憶部74に記憶された表面観察像に対して円状のマーカーを合成して第2合成画像を生成してもよい。また、画像処理部64は、第1合成画像及び第2合成画像を生成する場合、試料Sを保持する試料ホルダ44の移動に応じて、第2合成画像における第2マーカーの位置(記憶部74に記憶された観察像に対して第2マーカーを合成する位置)を変更する。この場合、試料ホルダ44の移動方向と反対の方向に第2マーカーの位置を移動させる。
【0042】
また、画像処理部64は、撮像部(走査型電子顕微鏡10又は光学顕微鏡20)の観察倍率の変更に応じて、観察像に合成するマーカー(第1マーカー)の大きさを変更してもよい。この場合、観察倍率が高くなるほど、観察像に合成するマーカーを大きくする。また、画像処理部64は、操作部70からの操作入力に基づいて、観察像に合成するマーカーの透過度(例えば、半透明合成する際の係数)を変更してもよい。
【0043】
2.本実施形態の手法
次に本実施形態の手法について図面を用いて説明する。
【0044】
図2は、従来の試料作製装置において、試料及び遮蔽材の位置調整(加工位置合わせ)を行う際に表示部に表示される画像(試料の観察像)を示す図である。
【0045】
加工位置合わせを行う場合、試料を観察像OI(ここでは、走査電子顕微鏡像)によって観察し(
図2(A)参照)、試料(試料ホルダ)を移動させて試料の位置調整を行う(
図2(B)参照)。ここで、観察像OIの中心位置がイオンビームの照射位置(イオンビーム中心)となる。次に、
図2(C)に示すように、遮蔽材を移動させて遮蔽材の位置調整を行う。
図2(C)に示す観察像OIでは、遮蔽材は遮蔽材の像CIとして観察される。
【0046】
従来の試料作製装置で表示される観察像OIでは、イオンビームの照射位置(イオンビーム中心)については把握できるものの、イオンビームの照射範囲(イオンビーム径)については把握することができず、特に、低倍率で試料を観察する場合に問題となる。このような問題を解決するために、本実施形態の試料作製装置では、試料の加工位置合わせ時に、試料の観察像に対してイオンビームの照射範囲を示すマーカーを合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部72に出力する。
【0047】
図3は、本実施形態の試料作製装置において、加工位置合わせを行う際に表示部72に表示される画像の一例を示す図である。ここでは、走査型電子顕微鏡10によって試料を観察する場合について説明する。
【0048】
図3に示す例では、走査型電子顕微鏡10からリアルタイムで出力される観察像OI
1に対してイオンビームの照射範囲を示すマーカーMK
1(第1マーカー)を半透明合成して第1合成画像SI
1を生成し、生成した第1合成画像SI
1を表示部72の表示画面の上部に表示している。ここでは、観察像OI
1が試料Sの表面観察像であるため、マーカーMK
1の形状は円状(イオンビームの断面形状)となっており、円状のマーカーMK
1の径はイオンビームの径を示している。また、マーカーMK
1は、マーカーMK
1の中心と観察像OI
1の中心が一致するように合成される。観察像OI
1とマーカーMK
1との合成は、画像処理の処理単位時間(例えば、1/60秒)ごとに行われる。
【0049】
また、
図3に示す例では、予め走査型電子顕微鏡10によって観察像OI
1と等倍率で撮像した観察像OI
2(記憶部74に記憶された観察像)に対してイオンビームの照射範囲を示すマーカーMK
2(第2マーカー)を半透明合成して第2合成画像SI
2を生成し、生成した第2合成画像SI
2を表示部72の表示画面の下部に表示している。ここでは、観察像OI
2が試料Sの断面観察像であるため、マーカーMK
1の形状は上下方向に延びる帯状となっており、帯状のマーカーMK
2の左右方向の長さはイオンビームの径を示している。観察像OI
2は観察像OI
1と等倍率で撮像したものであるから、帯状のマーカーMK
2の左右方向の長さは、円状のマーカーMK
1の径と一致している。また、マーカーMK
2は、マーカーMK
2の左右方向の中心と観察像OI
1の中心が一致するように、且つ、マーカーMK
2の上端部が観察像OI
2の上端部に接し、マーカーMK
2の下端部が、観察像OI
2の下端部に接するように合成される。
【0050】
なお、
図3に示す例では、リアルタイムで出力される表面観察像に円状のマーカーを合成して第1合成画像SI
1を生成し、記憶部74に記憶された断面観察像に帯状のマーカーを合成して第2合成画像SI
2を生成しているが、リアルタイムで出力される断面観察像に帯状のマーカーを合成して第1合成画像を生成し、記憶部74に記憶された表面観察像に円状のマーカーを合成して第2合成画像を生成してもよい。また、第2合成画像の生成を行わずに、表面観察像に円状のマーカーを合成した合成画像又は断面観察像に帯状のマーカーを合成した合成画像のみを表示部72に出力してもよい。また、
図3に示す例では、表面観察像に合成するマーカーの形状を円形とし、断面観察像に合成するマーカーの形状を帯状としているが、マーカーの態様(形状、色等)は、観察像におけるイオンビームの照射範囲を示すものであれば、任意の態様とすることができる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、試料の観察像に対してイオンビームの照射範囲を示すマーカーを合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部に出力することで、特に低倍率で試料を観察する場合に、観察像においてイオンビームの照射位置のみならず照射範囲を把握し易くすることができ、加工位置合わせの精度を向上することができる。
【0052】
また、リアルタイムに出力された表面観察像(或いは、断面観察像)にマーカーを合成した第1合成画像と、予め撮像された断面観察像(或いは、表面観察像)にマーカーを合成した第2合成画像とを表示部に出力することで、異なる向きで撮像した2つの観察像それぞれにおけるイオンビームの照射範囲を把握することができるようになり、加工位置合わせの精度を更に向上することができる。
【0053】
図4(A)に示すように、試料位置調整機構42により試料S(試料ホルダ44)を移動した場合でも、観察像OI
1の中心がイオンビームの照射位置となるため、第1合成画像SI
1におけるマーカーMK
1の位置は固定である。一方、観察像OI
2は予め撮像されたもの(静止画)であるから、第2合成画像SI
2におけるマーカーMK
2の位置は試料Sの移動に応じて変化し、第2合成画像SI
2におけるマーカーMK
2は、観察像OI
1での試料Sの移動方向と反対の方向に、観察像OI
1での試料Sの移動距離と同じ距離だけ移動する。
図4(A)に示す例では、観察像OI
1において試料Sが右方向に移動しているため、第2合成画像SI
2におけるマーカーMK
2は左方向に移動している。このように、試料Sの移動に応じて第2合成画像SI
2におけるマーカーMK
2の位置を変更することで、試料Sを移動した場合であっても、予め撮像された観察像OI
2におけるイオンビームの照射範囲を正確に示すことができる。なお、試料Sの移動によって、第2合成画像SI
2におけるマーカーMK
2が表示範囲外まで移動した場合には、
図4(B)に示すように、観察像OI
2に対してマーカーMK
2を合成せずに、イオンビームの照射範囲が存在する方向(
図4(B)の例では、左方向)を示すマーカーMK
eを観察像OI
2に合成して第2合成画像SI
2を生成する。
【0054】
また、走査型電子顕微鏡10の観察倍率を変更した場合には、第1合成画像SI
1におけるマーカーMK
1の大きさを観察倍率に応じて変化させ、観察倍率が高くなるほど、第1合成画像SI
1における円状のマーカーMK
1の径(或いは、帯状のマーカーMK
1の幅)を大きくする。このようにすると、観察倍率を変更した場合であっても、リアルタイムに出力される観察像OI
1におけるイオンビームの照射範囲を正確に示すことができる。なお、高倍率時に観察領域の全面にイオンビームが照射される状態となった場合には、
図5に示すように、観察像OI
1に対してマーカーMK
1を合成せずに、イオンビームの照射範囲が観察領域を超えたことを示す枠状のマーカーMK
fを観察像OI
1に合成して第1合成画像SI
1を生成する。
【0055】
ユーザは、操作部70を用いて所定の操作を行うことで、マーカーMK
1、MK
2の色、透過度(観察像に合成する際の係数)、及びマーカーMK
1、MK
2の表示・非表示(観察像に合成するか否か)を任意に設定することができる。
【0056】
また、ユーザは、以下の手順に従って、マーカーMK
1、MK
2の径を設定し、設定したマーカー径を記憶部74に保存しておくことができる。まず、ビーム痕を形成するための適当な試料を試料ホルダ44にセットする。このとき、試料を水平状態としておく。次
に、ステージ40をイオン銃30の下方に移動させ、試料にイオンビームを30〜60秒程度照射して試料にビーム痕を形成する。次に、ステージ40を走査型電子顕微鏡10(或いは、光学顕微鏡20)の下方に移動させ、観察像(電子顕微鏡像)で試料上のビーム痕を観察する。次に、操作部70を操作して、
図6(A)に示すように、観察像OIの中心とビーム痕BKの中心が一致するように試料を移動させる。次に、操作部70を操作して、
図6(B)に示すように、初期値の径を有するマーカーMKを観察像OIに重畳して表示させ、マーカーMKとビーム痕BKが一致するようにマーカーMKの大きさ(径)を調整して、マーカー径を設定する(
図6(B)参照)。次に、操作部70を操作して、設定したマーカー径の情報を記憶部74に記憶させる。観察時には、記憶部74に記憶されたマーカー径の情報が、観察像OI
1、OI
2に合成されるマーカーMK
1、MK
2の径(又は、幅)として適用される。
【0057】
3.処理
次に、本実施形態の試料作製装置の処理の一例について
図7のフローチャートを用いて説明する。ここでは、走査型電子顕微鏡10によって試料を観察する場合を例にとり説明する。
【0058】
まず、制御部62は、ステージ40の駆動機構を制御して、ステージ40を走査型電子顕微鏡10の下方に移動させる制御を行う(ステップS10)。
【0059】
次に、制御部62は、傾斜機構を制御して、試料Sを略垂直状態に傾斜させる制御を行う(ステップS12)。次に、画像処理部64は、走査型電子顕微鏡10から出力された断面観察像を記憶部74に記憶させる処理を行う(ステップS14)。次に、制御部62は、傾斜機構を制御して、試料Sを水平状態に戻す制御を行う(ステップS16)。
【0060】
次に、制御部62は、操作部70からの操作情報に基づき試料位置調整機構42を制御して、試料Sを移動させる(試料Sの位置を調整する)制御を行う(ステップS18)。
【0061】
次に、画像処理部64は、走査型電子顕微鏡10からリアルタイムに出力された表面観察像に対してイオンビームの照射範囲を示す円状のマーカー(第1マーカー)を合成して第1合成画像を生成し(ステップS20)、記憶部74に記憶された断面観察像に対してイオンビームの照射範囲を示す帯状のマーカー(第2マーカー)を合成して第2合成画像を生成する処理を行う(ステップS22)。ここで、画像処理部64は、試料Sが移動した場合には、第2合成画像における第2マーカーの位置を変更し、観察倍率が変更された場合には、第1合成画像における第1マーカーの大きさを変更する。生成された第1合成画像及び第2合成画像は表示部72に出力される。
【0062】
次に、処理部60は、試料Sの位置調整が完了したか否かを判断する(ステップS24)。ここで、試料Sの位置調整が完了したか否かの判断は、操作部70からの操作情報に基づき行ってもよい。試料Sの位置調整が完了していない場合(ステップS24のN)には、ステップS18に移行し、試料Sの位置調整が完了するまで、ステップS18〜S22の処理を繰り返す。
【0063】
試料Sの位置調整が完了した場合(ステップS24のY)、制御部62は、操作部70からの操作情報に基づき遮蔽材位置調整機構52を制御して、遮蔽材50を移動させる(遮蔽材50の位置を調整する)制御を行う(ステップS26)。次に、制御部62は、ステージ40の駆動機構を制御して、ステージ40をイオン銃30の下方に移動させる制御を行う(ステップS28)。ここで、制御部62は、試料Sの位置調整が完了した時の表面観察像(走査型電子顕微鏡10での観察領域)の中心に対応する試料S上の位置にイオンビームが照射されるように、ステージ40を移動させる。次に、制御部62は、イオン
銃30を制御して、位置調整が行われた遮蔽材50と試料Sに対してイオンビームを照射させる制御を行う。これにより、位置決めされた遮蔽材50の端面を境界とした加工位置にイオンビームが照射されて試料Sが切削され、所望の断面を有する試料が作製される。
【0064】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。