【0015】
(本発明の実施形態)
本発明の無電解白金めっき浴は、テトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩を含み、緩衝剤、安定化剤、還元剤およびpH調整剤を含んでいる。
テトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩は、クラスター形成を抑制されており、動的光散乱法での粒子径が0.7nm以下であることが望ましい。
また、緩衝剤として、テトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩の1倍〜3倍モルのクエン酸および/またはクエン酸アンモニウムを加えることが望ましい。
また、安定化剤として、テトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩の0.1倍〜15倍モルのアンモニアを加えることが望ましい。
また、還元剤として、テトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩の2倍〜5倍モルのヒドラジン塩または、テトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩の2倍〜5倍モルのテトラヒドロほう酸ナトリウムを用いることが望ましい。
また、pH調整剤として、たとえば水酸化ナトリウムを加え、pHを12から14とすることが望ましい。
また、本発明の無電解白金めっき浴は、テトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩、緩衝剤および安定化剤を混合したA液と、還元剤とpH調整剤を混合したB液をめっき時に混合することで構成される。
【0018】
(緩衝剤)
本発明では緩衝剤として、白金錯体を構成する陰イオンであるクエン酸または/およびクエン酸アンモニウムを、白金錯体の1〜3倍モル添加してめっき浴を供するものである。クエン酸または/およびクエン酸アンモニウムを添加することで、めっき反応の速度を調整し、めっき膜厚のバラツキを抑制し、めっき浴が分解してしまうのを防ぐことができる。
この原理としては、めっき時に白金錯体が還元される際にめっき浴中に生成するクエン酸がすでにめっき浴中に存在することで、還元反応を化学的に抑制することによると考えられる。
所望のめっき条件にあわせ、クエン酸とクエン酸アンモニウムあるいはその組み合わせを選択できる。
白金錯体と緩衝剤からなる水溶液はテトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩をクエン酸水溶液に加えて得ることもできるし、テトラアンミン白金(II)炭酸水素塩に代表されるような、クエン酸より弱い酸をカウンターアニオンとするテトラアンミン白金(II)の塩(以降、テトラアンミン白金(II)弱酸塩と称す)をクエン酸水溶液に反応させて得ることもできる。
このようにクエン酸を過剰に使用することにより、水溶液中に残存する未反応の弱い酸の濃度を低減することができる。未反応の弱い酸はクエン酸に対し不純物として存在するため、バラツキの少ないめっき膜を得るうえで、この濃度を低減することは重要である。
さらに、未反応の弱い酸が炭酸水素イオンである場合、水溶液中でテトラアンミン白金(II)イオンと水に溶けにくい塩を形成する。テトラアンミン白金(II)炭酸水素塩を含む水溶液では、テトラアンミン白金(II)炭酸水素塩がイオンに解離せず、一定の大きさをもってまとまってクラスターを形成し存在するため、液中粒子径が大きくなりやすい。
クエン酸を過剰に含むテトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩水溶液は、以上の原理により、液中粒子径が小さいと考えられる。
液中粒子径が小さいことにより、白金錯体が還元される際の、白金析出量がバラツキづらくなると考えられ、めっき膜厚のバラツキを抑えるうえで効果がある。
クエン酸の使用量は白金に対し1〜3倍モルが適するが、2倍モルが最適である。1倍モルより少なくなると未反応の弱い酸の濃度を低減する効果が弱くなり、3倍より濃くなると、テトラアンミン白金(II)クエン酸塩の溶解度が大きく低下し、適さない。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
好適な実施例の一つとして、アルミナセラミック基板に本発明に基づいて無電解白金めっきを施す例を示す。
【0024】
まず、アルミナセラミック基板に活性化処理を施す。活性化処理はアルミナセラミック基板に無電解白金めっきによって白金を析出させるために必要な前処理工程である。
たとえば、活性化処理は以下の工程を含んでいる。すなわち、15%フッ化水素酸にアルミナセラミック基板を30分間以上含浸後乾燥させる工程、それに続いてアルミナセラミック基板白金濃度15 g/Lのヘキサクロロ白金酸水溶液を塗布、乾燥させる工程、それに続いてこのアルミナセラミック基板を1%のテトラヒドロほう酸ナトリウムを含む水溶液に含浸後乾燥させる工程である。
【0025】
無電解白金めっきに使用するA液は以下のようにして調製した。
白金5gを含むテトラアンミン白金(II)炭酸水素塩を14.8gのクエン酸を含む水溶液に溶かし入れ、テトラアンミン白金(II)クエン酸水素塩のクエン酸2倍モル水溶液を約150 mL得た。この溶液に白金の13倍モルに相当する25%アンモニア水62.5 mLを加えた後、全体を250 mLに調整し、A液とした。
【0026】
また、無電解白金めっきに使用するB液は以下のようにして調製した。
イソニコチン酸ヒドラジドを33.3 gと水酸化ナトリウム167 gをとり、水に溶かし、1,000 mLとしてB液を得た。
【0027】
上述のA液とB液および活性化処理されたアルミナセラミック基板を用いて以下のようにして無電解白金めっきを施した。
A液を415 μL、B液を625 μLとり、水と混ぜ合わせて76 mLのめっき浴とした。続いてこの浴をウォーターバスを用いて40℃に調節した後、被めっき面として6.45 cm
2を有するアルミナセラミック基板を含浸しめっきを行った。めっき時の様子を
図1に示す。8時間後アルミナセラミック基板をめっき浴から引き上げると、銀色の光沢を有しており、白金が析出していることが確認できた。
【0028】
このアルミナセラミック基板に析出した白金膜の膜厚を蛍光X線膜厚計を用いて測定したところ、表1のような結果が得られ、極めて均一性の高いめっき膜が得られたことが分かった。また、めっき後のめっき浴をICP発光分析装置で分析したところ、白金が検出されなかった。アルミナセラミック基板以外の箇所に白金が析出した様子が見られず、めっき浴中に白金錯体の還元物が浮遊している様子も見られないことから、めっき浴中の白金錯体は全てアルミナセラミック基板上に析出した、すなわち完全析出したと考えられる。
【0029】
(実施例2)
アルミナセラミック基板に活性化処理を施す工程及び、A液とB液の調製方法は実施例1と同様であるため省略する。
【0030】
上述のA液とB液および活性化処理されたアルミナセラミック基板を用いて以下のようにして無電解白金めっきを施した。
A液を415 μL、B液を625 μLとり、1.04 mLのめっき浴とした。続いてこの浴をウォーターバスを用いて30℃に調節した後、被めっき面として1.47 cm
2を有するアルミナセラミック基板を含浸しめっきを行った。
【0031】
4時間後アルミナセラミック基板をめっき浴から引き上げると、実施例1同様の光沢を有しており、白金が完全析出していたのを確認した。このアルミナセラミック基板に析出した白金膜の膜厚を表1に示す。実施例1同様に均一な膜が得られた。
【0032】
(比較例1)
アルミナセラミック基板に活性化処理を施す工程は実施例1、2と同様であるため省略する。
【0033】
めっき浴は以下のようにして調製した。
白金濃度12.5 g/Lのテトラアンミン白金(II)を1.22 mL、0.5g/Lヒドラジン水溶液0.3 mL、1.5 g/L塩化アンモニウム水溶液1mLを水と共に混ぜ合わせめっき浴76 mLとした。
【0034】
実施例1、2同様の方法でめっきし、8時間後アルミナセラミック基板をめっき浴から引き上げると、黒色のざらついた外観を有しており、白金が十分析出していないことが確認できた。このアルミナセラミック基板に析出した白金膜の膜厚を蛍光X線膜厚計を用いて測定したところ、表1のような結果が得られ、膜厚バラツキが大きいことが分かった。また、めっき後のめっき浴を分析したところ、白金が25%ほど消費されずに残留していることが分かった。アルミナセラミック基板以外の箇所に白金が析出しており、さらに、めっき浴中に白金錯体の還元物が浮遊していたことから、めっき浴は分解したのであり、めっき浴中の白金錯体は一部を除いてアルミナセラミック基板上に析出しなかったと考えられる。
【0035】
(比較例2)
比較例1のめっき浴に塩化アンモニウムを添加しない点以外は比較例1と同様であるため、活性化処理工程とめっき浴の調製法、めっき方法について省略する。
【0036】
めっき8時間後アルミナセラミック基板をめっき浴から引き上げると、黒色のざらついた外観を有しており、白金が十分析出していないことが確認できた。このアルミナセラミック基板に析出した白金膜の膜厚は、表1に示す。実施例1同様バラツキの大きいめっき膜が得られた。また、めっき後のめっき浴を分析したところ、白金が12%ほど消費されずに残留していることが分かった。比較例1同様めっき浴は分解し、めっき浴中の白金錯体は一部を除いてアルミナセラミック基板上に析出しなかったと考えられる。
【0037】
(実施例1、2と比較例1、2の対比)
実施例1、2では比較例1、2に対しめっき浴の安定性が良く、めっき途中に分解することはなく、めっき浴中の白金を使いきることができた。又、同じめっき時間に対して、めっき浴に白金が残留せず完全に消費されていることから、実施例のめっき浴はめっき速度が速いといえる。さらに、膜厚バラツキが小さかったため、実施例のめっき浴はめっき膜厚のバラツキを抑制できることが分かる。
【0038】
(比較例3)
実施例1に対し、A液調製時に使用するクエン酸を4.9gに変更した点以外は実施例1と同様である方法にて活性化処理、A液とB液およびめっき浴の調製、めっきを行った。
【0039】
実施例1と比較してめっき速度に違いはなく、8時間で白金が完全析出した。アルミナセラミック基板以外の箇所への析出は無かった。めっき膜のバラツキは表1に示す。
【0040】
(比較例4)
実施例1に対し、A液調製時にアンモニアを使用しなかった点以外は実施例1と同様である方法にて活性化処理、A液とB液およびめっき浴の調製、めっきを行った。
【0041】
実施例1と比較して、アルミナセラミック基板以外の箇所への析出が見られ、めっき浴の分解も見られた。
【0042】
(実施例1、2と比較例3、4の対比)
実施例1、2は比較例3に対しクエン酸を過剰に含む条件でめっきすることで、めっき膜厚のバラツキを抑制できるという本発明の効果を示している。
【0043】
実施例1、2は比較例4に対しアンモニアを添加した条件でめっきすることで、めっき浴の安定性を増し、完全析出させるという効果があるという本発明の効果を示している。
【0044】
【表1】