特許第6336977号(P6336977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336977
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】無線通信装置及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/18 20150101AFI20180528BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20180528BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H04B17/18
   H04B17/29 300
   H01Q21/06
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-525070(P2015-525070)
(86)(22)【出願日】2014年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2014059243
(87)【国際公開番号】WO2015001824
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2015年12月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-138990(P2013-138990)
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】加島 謙一
(72)【発明者】
【氏名】長谷 英一
【審査官】 宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−015282(JP,A)
【文献】 特開2003−032164(JP,A)
【文献】 特開2012−112812(JP,A)
【文献】 特開平08−248118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/18
H04B 17/29
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信出力を複数のアンテナ素子に分散して送出するパッチアレイアンテナを有する無線通信装置であって、
接する複数のアンテナ素子からの出力を結合し信号を検波する検波器を備え、
前記検波器は、前記パッチアレイアンテナの表面に前記隣接する複数のアンテナ素子を覆うように固定して取り付けられ、前記隣接する複数のアンテナ素子の開口部を覆う開口部を有していることを特徴とする、無線通信装置。
【請求項2】
前記検波器は、前記隣接する複数のアンテナ素子からの出力を受信する受信用アンテナと、
当該受信用アンテナで受信した電力に基づいて信号を検波する検波回路と、を備えていることを特徴とする、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記検波器は、前記パッチアレイアンテナの電力供給部から所定距離以上離れた位置に取り付けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記隣接する複数のアンテナ素子は、前記パッチアレイアンテナの全アンテナ素子のうちの約5%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記検波器は、前記パッチアレイアンテナの電力供給部から最も離れたアンテナ素子からの出力、又はそれを含めて検波することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記検波器による検波結果に基づいて異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部が異常を検出するとアラームを出力するアラーム出力部と、を備えたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記異常検出部は、前記検波器が検波した信号の電圧値と、予め保持している基準電圧値とを比較し、電圧異常を検出すると、アラームを出力することを特徴とする、請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記異常検出部は、送信信号を保持し、前記検波器が検波した信号の信号内容と、前記送信信号とを比較し、送信異常を検出すると、アラームを出力することを特徴とする、請求項6または請求項7記載の無線通信装置。
【請求項9】
送信出力を複数のアンテナ素子に分散して送出するパッチアレイアンテナを有する無線通信装置と、前記無線通信装置の送信状態を表示する表示部を有する管理装置とを備えた無線通信システムであって、
前記無線通信装置は、
隣接する複数のアンテナ素子からの出力を結合し信号を検波する検波器と、
前記検波器による検波結果に基づいて異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部が異常を検出するとアラームを出力するアラーム出力部と、を備え、
前記検波器は、前記パッチアレイアンテナの表面に前記隣接する複数のアンテナ素子を覆うように固定して取り付けられ、前記隣接する複数のアンテナ素子の開口部を覆う開口部を有し、
前記管理装置は、前記アラーム出力部から前記アラームを受信すると、前記表示部の表示を変更することを特徴とする、無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを無線送信する無線通信装置に係り、特に、送信アンテナから輻射される電波を検波する検波ユニットを備えた無線通信装置及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
データを無線送信する無線通信装置を備えるシステムとして、例えば、地上側の監視カメラで撮像した映像データを列車やバス等の移動体の中で確認して監視を行う映像監視システムが知られている。具体例として、列車に適用したシステムでは、駅のホーム或いはその近辺に監視カメラを設置しておき、その監視カメラ映像を無線機により列車側に無線送信して列車上のモニタに表示させることで、列車の内部にいる運転士等が外部の様子を監視できるようにしている。
【0003】
特許文献1には、監視用のテレビカメラを用い、ホームを視野として撮像した映像データを当該ホームに進入してくる列車に無線伝送し、当該列車の運転席などにある画像モニタに表示させ、ホームの安全確認が列車の車両側で行えるようにした車上モニタシステムが開示されており、安全性の維持と人員削減によるコスト低減に寄与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−86754号公報([0015]、[図1]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車上モニタシステムでは、特許文献1の図1に示されているように、ホームの所望の場所に設置したテレビカメラを用い、ホームを視野にした映像を撮像し、映像信号を地上側にある送信装置の送信アンテナからマイクロ波に乗せて車両側に送信する。この時、車両側には、マイクロ波受信用の受信アンテナを備えた受信装置が設けてあり、送信装置から受信した画像データを車両の運転席などにある画像モニタに表示させるよう構成されている。
【0006】
しかし、上記した従来の車上モニタシステムにおいては、地上側の送信装置から車両側の受信装置に対して、常に適正な映像送信が行われていることが前提であり、送信装置から映像が送信できないような異常事態が発生することは想定していない。
例えば、何らかの原因によって、地上側の送信装置から車両側の受信装置への映像送信が突然途切れてしまった場合には、車両側の乗務員または運転士がホームの安全確認を直接目視で行うか、または、車両側の乗務員または運転士が地上側(駅)の駅員に連絡を取り、至急ホームの安全確認を行うよう要請するといった緊急事態となってしまう。また、原因が送信装置側にあるのか受信装置側にあるのかわからず、復旧するまでに時間が掛かってしまうという問題があった。
【0007】
また、地上側の送信装置の送信アンテナから適正な映像送信が行われているかどうかを確認するには、送信アンテナの輻射電力を測定する方法がある。図9は、送信アンテナ(例えば、パッチアレイアンテナ)の輻射電力を測定する際の一般的な測定方法について説明するための図である。図9に示すように、送信アンテナ320の電力輻射面(図の手前側)前方に測定器300のプローブ310を固定して送信アンテナ320からの輻射電力を測定するのが一般的な方法である。
しかし、プローブ310を使って送信アンテナ320の輻射電力を測定する場合、プローブ310を固定する位置(図のX、Y、Z方向)によって、測定する電力値が変動してしまう。また、温度変化によるプローブ310自身の物理的変動により、測定結果の再現性を得る事が困難であった。また、上記した地上側の送信装置内に図9のような測定手段を設けることは、装置の大型化に繋がり、費用面や使い勝手の面でデメリットとなってしまう。
【0008】
また、送信アンテナ320からの電波が波長の短いマイクロ波(特に、数mmのミリ波)では、プローブ310の大きさが送信アンテナ320のビームパターンに影響してしまい、伝送距離やビーム範囲といった地上側の送信装置の性能自体を劣化させてしまうという問題がある。また、図9のように、プローブ310から測定器300までの間を線材で接続すると、ミリ波成分の場合には、線材の大きな伝送損失特性により、数cmの距離でも電力が激減する為、微小レベルの測定となる。そのため、正確性や安定性を確保した測定は困難となってしまう。
【0009】
また、例えば、送信アンテナがホーンアンテナの場合には、アンテナエレメントが一つであるため、位相の乱れが直接特性の劣化につながる。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みなされたものであり、送信アンテナの出力をアンテナ特性に影響を与えることなく正確かつ安定に検波することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の無線通信装置は、送信出力を複数のアンテナ素子に分散して送出するアレイアンテナを有するものであって、1又は互いに隣接する1以上の複数のアンテナ素子に対して当該アンテナ素子からの出力を結合し信号を検波する検波器を備え、前記検波器が前記アレイアンテナの表面に取り付けられていることを特徴としている。
【0012】
なお、前記検波器は、前記アンテナ素子からの出力を受信する受信用アンテナと、当該受信用アンテナで受信した電力に基づいて信号を検波する検波回路と、を備えていることが好ましい。
また、前記アレイアンテナがパッチアレイアンテナであり、前記検波器は、当該検波器の検波対象である前記1又は互いに隣接する1以上の複数のアンテナ素子を覆うように、前記パッチアレイアンテナ表面に取り付けられていることが好ましい。
【0013】
さらに、前記検波器は、前記パッチアレイアンテナの端部のアンテナ素子を検波対象とし、検波対象である前記1又は互いに隣接する1以上の複数のアンテナ素子の開口部のみを覆うように取り付けられていることが好ましい。
なお、前記検波器が前記複数のアンテナ素子への給電部から最も離れたアンテナ素子からの出力、又はそれを含めて検波することが好ましい。
【0014】
また、前記検波器による検波結果に基づいて異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部が異常を検出するとアラームを出力するアラーム出力部と、をさらに備えることが好ましい。
なお、前記異常検出部は、前記検波器が検波した信号の電圧値と、予め保持している基準電圧値とを比較し、電圧異常を検出すると、アラームを出力することが好ましい。
【0015】
また、前記異常検出部は、送信信号を保持し、前記検波器が検波した信号の信号内容と、前記送信信号とを比較し、送信異常を検出すると、アラームを出力することが好ましい。
【0016】
また、上記目的を達成するための本発明の無線通信装置は、送信出力を複数のアンテナ素子に分散して送出するアレイアンテナを有する無線通信装置であって、1又は互いに隣接する1以上の複数のアンテナ素子に対して当該アンテナ素子からの出力を結合し信号を検波する検波器と、前記検波器による検波結果に基づいて異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部が異常を検出するとアラームを出力するアラーム出力部と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、送信アンテナの出力をアンテナ特性に影響を与えることなく正確に且つ安定して検波することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る検波ユニット10の構成を示すブロック図である。
図3】検波ユニット10の外観を示す斜視図である。
図4】検波ユニット10の検波部12での処理を説明するための信号波形図である。
図5】本発明の実施形態1に係る無線通信装置(1)20の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態1に係る無線通信装置(1)20の送信アンテナ21の外観を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態1に係る無線通信装置(1)20の送信アンテナ21への検波ユニット10の取り付け方を説明するための説明図である。
図8】本発明の実施形態1に係る管理装置40の構成を示すブロック図である。
図9】送信アンテナの輻射電力を測定する際の一般的な測定方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1> 以下に、本発明の実施形態1に係る無線通信システムについて、映像監視システムを例にあげて図面を参照して説明する。
本発明の実施形態1に係る映像監視システムは、ホームを視野として撮像した映像をホームに停車中の列車に無線伝送し、当該映像を列車の運転席等に設置されたモニタに表示させ、列車の車両内でホームの安全確認を行う従来の映像監視システムに対して、ホーム側から映像を無線送信する無線通信装置の送信アンテナの出力を検波し、当該検波結果に基づいて、駅舎内の管理装置に対してアラームを送出することにより、駅員がホームの安全確認に素早く対応できるようにするものである。
【0020】
〔映像監視システムの制御構成〕
本発明の実施形態1に係る映像監視システムの制御構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る映像監視システムの構成の一例を示すブロック図である。
本発明の実施形態1に係る映像監視システムは、図1に示すように、ホーム500の所望の場所に設置され、ホーム500を視野にした映像を撮像する監視カメラ50と、監視カメラ50で撮像した映像をエンコーダでエンコードし、エンコードした映像信号をA/D(アナログ/デジタル)変換する管理装置40と、管理装置40から入力された映像信号を例えば60GHzの電波に変調し送信する無線通信装置(1)20と、無線通信装置(1)20の送信アンテナ21の輻射面側に取り付けられ、アンテナ21の輻射電力を検波する検波ユニット(検波器)10と、列車200の車両201内に設置され、無線通信装置(1)20の送信アンテナ21から無線送信された映像信号を受信アンテナ211で受信して復調処理する無線通信装置(2)210と、無線通信装置(2)210から入力された映像信号をデコードし、アナログの映像信号を出力するデコーダ220と、デコーダ220から入力された映像信号を表示するモニタ220とから構成される。
次に、本発明の実施形態1に係る映像監視システムにおいて、従来の構成と異なる検波ユニット10、無線通信装置(1)20、並びに管理装置40の制御構成及び動作について、図を参照して詳細に説明する。
【0021】
〔検波ユニット10の制御構成及び動作〕
本発明の実施形態1に係る検波ユニット10の制御構成及び動作について、図2図3を参照して詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態1に係る検波ユニット10の構成を示すブロック図である。また、図3は、検波ユニット10の外観を示す斜視図であり、(a)は表面を、(b)は背面を示す。
検波ユニット10は、図2及び図3に示すように、部品を実装するための基板11と、検波を行う検波部12と、信号出力用の同軸コネクタ18と、検波部12に駆動電源を給電する多極コネクタ19とで構成されている。また、基板11の背面には開口部11aが設けてあり、表面に実装した検波部12のアンテナ部12aが背面から目視できる構造となっている。なお、アンテナ部12aは送信アンテナ21からの送信電波を受信できるものであればどのような構成のものでもよく、例えばパッチアレイアンテナでもよいし、導線を備えたものでもよい。
また、基板11の四隅には、検波ユニット10を無線通信装置(1)20の受信アンテナ21にネジ止めするための貫通穴11bが設けてある。なお、図3の110は検波部12部分をシールドするためのシールド板であり、図2では省略している。
【0022】
次に、検波部12の具体的な回路構成と検波ユニット10の動作について説明する。
図2に示すように、検波ユニット10では、基板11の開口部11aより入力された送信アンテナ21からの電波をアンテナ部12aが受信する。検波ユニット10では、電波を例えばパッチアレイアンテナで形成したアンテナ部12aで受信した後、増幅器12bで所定の値まで増幅する。増幅した電力は、抵抗15とダイオード14とキャパシタ16で構成した検波回路部13で直流成分として抽出される。抽出された直流成分は、抵抗17により、同軸コネクタ18と整合され、同軸コネクタ18より信号出力として後述する無線通信装置(1)20のベースバンド処理部26に出力される。この時、増幅器12bは、多極コネクタ19より電源が給電されることで動作する。
【0023】
なお、検波部12では、後述する無線通信装置(1)20の送信アンテナ21(パッチアレイアンテナ)からの出力の一部をアンテナ部12aで受信して結合した信号を検波している。そこで、無線通信装置(1)20の送信アンテナ21の任意のアンテナ素子に検波部12を直接接続することも考えられるが、送信アンテナ21はアレーアンテナであり、複数のアンテナ素子が互いに接続されて構成されているために、検波部12を直接接続した場合には、接続されるアンテナ素子にインピーダンスの変動(負荷変動)が生じて、本来各アンテナ素子から送出されるべき出力のバランスが崩れるので、結合されるアンテナ素子の負荷変動があまり生じないように空間的な結合とすることがより最良である。
そこで、本実施例では、送信アンテナ21の任意のアンテナ素子の出力をアンテナ部12aで受信することを結合の一実施例として説明する。
【0024】
次に、検波ユニット10内での検波処理について、図4を参照して説明する。
図4は、検波ユニット10の検波部12での処理を説明するための信号波形図である。
アンテナ部12aで受信する電波が搬送波の場合には、検波回路部13通過時に高周波成分がキャパシタで除去され、図4(a)に示すような包絡線成分のみが検波電圧として同軸コネクタ18から出力される。
また、アンテナ部12aで受信する電波が振幅変調(ASK変調)波の場合には、検波回路部13通過時に高周波成分がキャパシタで除去され、図4(b)に示すような包絡線成分が同軸コネクタ18に出力される。
【0025】
〔無線通信装置(1)20の制御構成及び動作〕
次に、無線通信装置(1)20の制御構成について、図5及び図6を参照して詳細に説明する。
図5は、本発明の実施形態1に係る無線通信装置(1)20の構成を示すブロック図である。また、図6は、本発明の実施形態1に係る無線通信装置(1)20の送信アンテナ21の外観を示す斜視図であり、電力輻射面である表面を示す。
無線通信装置(1)20は、図5に示すように、データ入出力のインタフェース部28と、CPU24、メモリ25、増幅部27、及び信号変換手段26a,信号比較手段26bを有するベースバンド処理部26からなる制御部23と、送信アンテナ21と、逓倍器、変調器(MOD)、増幅器及びフィルタを有する送信部22と、受信アンテナ31と、逓倍器、ミキサ、低雑音増幅器及びフィルタを有する受信部30と、IF帯検波部29とを含んで構成され、送信と受信を同時に行う。
【0026】
また、本実施例の送信アンテナ21は、図6に示すように、複数のアンテナ素子から構成され、送信出力を複数のアンテナ素子に分散して送出するパッチアレイアンテナである。図6は送信アンテナ21の外観を示すものであるが、図中の横9行、縦16列に配列された小さな長方形の開口部それぞれに一つずつアンテナ素子が配置されている。つまり、本例では送信アンテナ21は144個のアンテナ素子を備えている。また、送信アンテナ21は、例えば約100mm×約100mmの大きさであり、周囲に検波ユニット10を取り付けるための複数のネジ穴21aを有している。
なお、送信アンテナ21は、パッチアレイアンテナに限らず、複数個の放射素子を直線状、平面状、或いは曲面状などに配列したスロットアレイアンテナ、スリットアレイアンテナ、ホーンアレイアンテナ、またはレンズアレイアンテナ等のアレイアンテナでも良い。これらのアンテナの場合も検波ユニット10はアンテナ表面に検波対象の複数のアンテナ素子を覆うように取り付けられる。
【0027】
次に、無線通信装置(1)20の動作について、詳細に説明する。
管理装置40からインタフェース部28に入力されたデジタルの映像信号は、制御部23のベースバンド処理部26にてベースバンド信号に変換され、送信部22の変調器に入力される。一方、送信部22は、図示しない発振器から発振する基準信号を逓倍し、フィルタによりスプリアスを減衰させた後、搬送波信号として変調器に入力され、このとき変調器で搬送波信号はベースバンド信号により変調されたRF信号として送信アンテナ21より送信される。また、無線通信装置(2)210より受信したRF帯の受信信号は受信アンテナ31を介して受信部30に入力され、図示しない発振器から受信部30に入力された後に逓倍されフィルタによりスプリアスが除去された搬送波信号とミキサにより混合した後、IF信号としてIF検波部29へ入力される。IF検波部29へ入力されたIF信号からベースバンド信号を抽出し増幅した後、ベースバンド処理部26へ入力され、インタフェース部28へ出力される。
なお、ベースバンド処理部26では、上記一連の動作中に、受信部30からベースバンド処理部26を通過したベースバンド信号の履歴をメモリ25に記録し保持する。保持した受信履歴データは、管理装置40より、インタフェース部28経由でCPU24にアクセスがあり、メモリ25に保持したデータの送信要求があった場合に、ベースバンド処理部26からインタフェース部28経由で、管理装置40にデータを送出する。
【0028】
また、無線通信装置(1)20では、電波が送信アンテナ21から輻射されたとき、送信アンテナ21の輻射面側に取り付けられた検波ユニット10が送信電力の一部を受信し、RF帯の検波部12によって検波信号を抽出する。抽出した検波信号は電圧としてベースバンド処理部26に入力された後、CPU24は、かかる電圧に基づいて、送信アンテナ21からの送信異常があるか否かを判断する。例えば、CPU24は、入力された電圧値の所定時間における平均値を算出し、予め設定された電圧レベルと比較することで異常を検出する。CPU24は、電圧の上限値と下限値を保持している場合、かかる平均値が上限値と下限値の範囲内か否かを判断し、範囲内であれば正常と判断する一方、範囲外であれば異常と判断する。なお、CPU24は、上限値あるいは下限値のいずれか一方のみを予め保持しており、その値以上か、あるいは、以下かに基づいて異常を検出してもよい。
そして、CPU24は、異常と判断すると、インタフェース部28経由で、管理装置40にアラーム信号を送出する。このように、無線通信装置(1)20は、電圧値に基づいて送信アンテナ21の送信異常を検波ユニット10への入力電波の種類に係わらず確実に検出することができ、アラームを出力できる。
【0029】
また、上記一連の動作中に、CPU24はベースバンド部から出力した送信ベースバンド信号と、検波ユニット10からの検波信号とを比較することで、信号内容(0、1の内容)に基づいて異常を判断してもよい。つまり、CPU24はベースバンド処理部26を通過した送信ベースバンド信号をメモリ等に格納しておき、検波ユニット10からの検波信号をベースバンド処理部26に戻し、一致するか否か比較処理する事で、送信データを送信回路上で誤って送信しているか否かを判断する。このとき、送信ベースバンド信号がベースバンド処理部26を通過した時間と、その後増幅部27、送信部22、アンテナ21、アンテナ12a、検波ユニット10を介して再びベースバンド処理部26にまで戻ってくるまでの時間差(遅延時間)は、予め算出、あるいは、実験等にて確認しておくことで、CPU24は遅延時間を考慮して2つの信号(送信ベースバンド信号と検波信号)を比較する。そして、CPU24は信号内容が異常と判断すると、インタフェース部28経由で、管理装置40にアラーム信号を送出する。このように、無線通信装置(1)20は、検波ユニット10への入力電波が振幅変調波の場合には、信号内容に基づいて異常を検出するので、送信アンテナ21からの送信電力に異常が無い場合であっても送信内容に異常があれば送信異常として検出することができ、より確実に送信異常を検出することができる。
なお、本発明において、上述したCPU24の電圧に基づく異常検出処理と、信号内容に基づく異常検出処理は、いずれか一方のみを実施してもよく、CPU24は検波ユニット10による検波結果に基づいて異常を検出する異常検出部、異常検出に基づいてアラームを出力するアラーム出力部として機能する。
【0030】
ここで、無線通信装置(1)20の送信アンテナ21への検波ユニット10の取り付け方について、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の実施形態1に係る無線通信装置(1)20の送信アンテナ21への検波ユニット10の取り付け方を説明するための説明図であり、(a)は電力輻射面である表面を、(b)は電力給電面である背面を示す。
無線通信装置(1)20の送信アンテナ21に検波ユニット10を取り付ける場合、検波ユニット10における測定が安定にかつ正確に実施できるよう、送信アンテナ21表面に固定とする。なお、表面に固定することで、アンテナ素子とアンテナ部12aとの距離が固定されるので、常に安定した測定が可能になる。
そして、送信アンテナ21が、図6のようなパッチアレイアンテナで、256のアンテナ素子で30dBiの利得を持ち、大きさが縦約100mm×横約100mmmm程度のアンテナの場合、図7に示すように、送信アンテナ21の電力給電部21bから所定距離以上離れた位置、好ましくは最も離れた位置にネジ601で検波ユニット10を取り付けるようにする(図では3箇所ネジ止め)。また、後述するが、送信アンテナ21に検波ユニット10を取り付けると、検波ユニット10の背面に設けた基板11の開口部11aが送信アンテナ21の4素子分のアンテナ素子の開口部を覆うこととなる。また、検波ユニット10を取り付ける場所は、電力給電部21bから所定距離以上離れた位置、好ましくは最も離れた位置であれば、送信アンテナ21の左上、右上、または左下に取り付けるようにしても構わない。なお、送信アンテナ21の左上または右上に取り付ける場合は、検波ユニット10の上下方向を逆にして取り付ける。
ここで、所定距離とは、送信アンテナ21のビーム特性や利得特性が要求されている性能を下回らない範囲の距離である。これにより、効率の良い検波が可能になる。つまり、パッチアレイアンテナは、給電点を起点にすべてのアンテナ素子が連結されて構成されている。そのため、給電点から離れた位置の方がアンテナのビーム特性や利得特性への影響を少なくすることができる。さらに、複数のアンテナ素子の結合が途中で切断してしまい送信異常が起こることが想定されるが、給電点からより離れた位置で検出する程、より高確率で結合異常による送信異常を検出することができる。
【0031】
また、送信アンテナ21の輻射方向、つまり、送信アンテナ21前面を検波ユニット10で覆う場合、全アンテナ素子のうち、検波ユニット10が覆うアンテナ素子数は、全アンテナ素子のうちの約3〜5%以下であることが好ましい。つまり、検波ユニット10が覆うアンテナ素子数(好ましくは、検波ユニット10が検波対象とする、1又は互い隣接する複数のアンテナ素子の数)は、送信アンテナ21のビーム特性や利得特性が所望の性能を満たす範囲、つまり、送信アンテナ21の送信範囲、送信方向、送信出力に影響を与えない範囲の数としている。これにより、ビーム特性や利得特性に影響を及ぼすことなく、確実に検波することができる。本実施例では、4素子分を検波ユニット10で覆うようにしている。この時、送信アンテナ21から出力された電力のうち4/256相当の電力が検波ユニット10に入力される。これは送信アンテナ21の利得が約20dB低下した値であり、送信アンテナ21への給電が10dBmとすれば、10dBiの利得で輻射された電力が、数mmの空間で20dB程度減衰して検波ユニット10に−10dBm相当の電力が入力されることになる。この時の検波出力を、検波ユニット10内で増幅し、数ボルトの電圧として検知し、無線通信装置(1)20単体の動作状態や、システムでの稼働状況のモニタに役立てることができる。
さらに、検波ユニット10は、送信アンテナ21表面の端部に取り付けられることが好ましく、より好ましくは4隅のうちの給電点から最も遠い位置に取り付けられていることが好ましい。検波ユニット10を端部に取り付けることにより、送信アンテナ21のビーム特性及び利得特性への影響を低減できる。
【0032】
なお、本実施例では、図7(a)に示すように、検波ユニット10で送信アンテナ21の検波対象である4素子分のアンテナ素子の開口部を覆っているが、それ以外のアンテナ素子の開口部には掛からないようにしている。これにより、送信アンテナ21のビーム特性や利得特性への影響を低減することができる。
また、図2及び図3で説明したように、検波ユニット10の背面には基板11の開口部11aがあり、図7(a)では、この開口部11aが送信アンテナ21の4素子の開口部と対向し、かつ、開口部11aが送信アンテナ21の4素子の開口部を包含する関係にある。つまり、検波ユニット10のアンテナ部12aが送信アンテナ21の4素子分の開口部と対向する位置関係にある。このように、検波ユニット10の開口部11aは、検波対象の1又は互いに隣接する複数のアンテナ素子が収まるように構成され、より好ましくは検波対象のアンテナ素子のみが収まるように構成されている。そのため、送信アンテナ21のビーム特性や利得特性への影響を抑えつつ正確且つ安定な検波を実現できる。
以上説明した検波ユニット10の送信アンテナ21への取り付けは、本実施例では送信アンテナ21の端部にネジ穴を設け、検波ユニット10をネジ止めすることにより実現しているが、ネジ止め以外の方法でも良い。
【0033】
〔管理装置40の制御構成及び動作〕
次に、管理装置40の構成について、図8を参照して説明する。
図8は、本発明の実施形態1に係る管理装置40の構成を示すブロック図である。
管理装置40は、データ入出力のインタフェース部45と、各部の制御を行う制御部41と、監視カメラ50から伝送された映像をエンコードするエンコーダ42と、無線通信装置(1)20の送信状態を表示する表示部43とを含んで構成される。
【0034】
次に、管理装置40の動作について、詳細に説明する。
管理装置40は、無線通信装置(1)20に対して、定期的に機器の状態を問い合わせ、問い合わせに対する応答結果に基づき、無線通信装置(1)20からの映像送信が正常である場合は表示部43のランプを緑に点灯させ、また、無線通信装置(1)20からの映像送信に異常がある場合は赤く表示させる。
【0035】
〔映像監視システムの動作〕
次に、本発明の実施形態1に係る映像監視システムの動作について、図1を参照して 詳細に説明する。
ホーム500上、列車200への乗降状況をホーム500内に設置された監視カメラ50で撮像する。撮像した映像は管理装置40内のエンコーダ42に伝送され、エンコーダ42にてアナログのNTSC(National Television Standards Committee)やPAL(Phase Alternation by Line)といったアナログ映像信号からイーサネット(登録商標)形式のデジタル映像信号に変換され、図示しないLANを介してミリ波(60GHz)の無線通信装置(1)20へ入力される。無線通信装置(1)20に入力されたデジタル映像信号は、60GHzの電波に変調され、列車200の車両201の運転席に設置されたミリ波(60GHz)の無線通信装置(2)210で受信される。無線通信装置(2)210で受信した電波は、装置内の図示しない復調部で復調処理され、図示しないLANを介してデコーダ220に入力される。デコーダ220は、伝送されたイーサネット形式のデジタル映像信号をアナログの映像信号に変換してデコードし、モニタ230に出力する。モニタ230はデコーダ220から入力されたホームの映像を画面上に表示する。なお、上記のLAN区間では、映像データはパケット化されており、パケットの伝送品質を維持するため、伝送結果をACK/NACKで確認等を行うため、双方向の送受信回線を形成する。この時、伝送品質の状況については、各装置の制御部においてパケットを監視確認することで、画像伝送が不能なら、その状況を表示部へ示す。従来は回線の“接”と“断”程度しか分からない。
【0036】
上述した動作は、従来の映像監視システムと同様の動作であって、本実施形態1の映像監視システムでは、管理装置40の制御部41は、無線通信装置(1)20に対して、定期的に機器の状態を問い合わせ、無線通信装置(1)20からの映像送信が正常である場合は表示部43のランプを緑に点灯させ、また、無線通信装置(1)20からの映像送信に異常がある場合は赤く表示させる。
つまり、検波ユニット10が、無線通信装置(1)20で無線送信した電波をアンテナ出力端で検波して、検波した結果を基に無線通信装置(1)20で送信状態を判断し、判定結果を管理装置40の制御部41へ伝送する。このとき、送信状態が異常であれば無線通信装置(1)20は、管理装置40からのポーリング問い合わせに対して異常である旨を送信し、管理装置40は受信した結果を判断し表示部43のランプに示す。駅員は、この表示部43を見ることで、正しく送信が為されているか確認することができる。
また、無線通信装置(1)20の制御部23が、ログとして異常検出結果を保持しておくことにより、事後にログを確認することで、送信異常があったことを知ることができる。
【0037】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
本発明の実施形態1によれば、送信アンテナの出力をアンテナ特性に影響を与えることなく検波することができる。
そして、かかる検波結果に基づいてアラームを出力することが可能になる。
また、当該無線通信装置で測定した結果を基に駅員に緊急事態の発生を容易に通報することができ、駅員がホームの安全確認に素早く対応することが可能な映像監視システムを提供することができる。
【0038】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも上記に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。
例えば、上述した実施形態では、無線通信装置(1)20の制御部23が検波ユニット10の検波結果に基づいて異常を検出し管理装置40にアラームを出力するように構成した。しかし、かかる制御部23の機能を、管理装置40や無線通信装置(1)20の別筺体の装置が備えるように構成してもよい。これによっても上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、映像監視システムだけでなく、データを伝送する無線通信システム全般に広く適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等のハードウェア資源を備えたコンピュータが、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に永続的に格納されたプログラムを実行することにより、制御される構成が用いられてもよい。また、当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウェア回路として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:検波ユニット、11:基板、11a:開口部、11b:貫通穴、12:検波部、12a:アンテナ部、12b:増幅器、13:検波回路部、14:ダイオード、15:抵抗、16:キャパシタ、17:抵抗、18:同軸コネクタ、19:多極コネクタ、20:無線通信装置(1)、21:送信アンテナ、21a:ネジ穴、21b:電力給電部、22:送信部、23:制御部、24:CPU、25:メモリ、26:ベースバンド処理部、26a:信号変換手段、26b:信号比較手段、27:増幅部、28:インタフェース部、29:IF検波部、30:受信部、31:受信アンテナ、40:管理装置、50:監視カメラ、40:管理装置、41:制御部、42:エンコーダ、43:表示部、44:メモリ、45:インタフェース部、50:監視カメラ、110:シールド板、200:列車、201:車両、210:無線通信装置(2)、211:受信アンテナ、220:デコーダ、230:表示モニタ、240:運転士、300:測定器、310:プローブ、320:送信アンテナ、500:ホーム、601:ネジ。
図1
図2
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図7
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図9