【文献】
AZIMZADEH, A.,MEASUREMENT OF AFFINITY OF VIRAL MONOCLONAL ANTIBODIES BY ELISA TITRATION OF FREE ANTIBODY IN EQUILIBRIUM MIXTURES,JOURNAL OF IMMUNOLOGICAL METHODS,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS B.V.,1991年 8月 9日,V141 N2,P199-208
【文献】
STAACK, ROLAND F.,MATHEMATICAL SIMULATIONS FOR BIOANALYTICAL ASSAY DEVELOPMENT: THE (UN-)NECESSITY AND (IM-)POSSIBILITY OF FREE DRUG QUANTIFICATION,BIOANALYSIS,FUTURE SCIENCE,2012年 2月 1日,V4 N4,P381-395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発明の背景
全身に作用する薬物の薬理学的効果は、薬物の固有活性だけでなく、ヒト体内でのその吸収、分布、代謝、および排出の関数である。これらの特徴は、「薬物動態学」という用語に集約される。一般に、薬物動態学は、生体内での薬物および/またはその代謝産物の吸収、分布、代謝、および排出といった動態プロセスと関連した経時変化(すなわち、動態)の研究と呼ばれ、生物薬剤学、薬理学、および治療学といった分野と密接な相互関係がある。
【0003】
身体は、膜を通過する薬物分子の輸送を遅らせ、様々な分布区画へとそれらを希釈し、それらを代謝産物に転換し、最終的にそれらを排出するため、薬物のインビボでの薬理学的効果を予測することはしばしば困難である。しかしながら、研究者は、体内の作用部位での薬物の有効性を予測するための一つの方法として薬物動態学的研究を一般的に使用する。
【0004】
伝統的に、吸収、分布、代謝、および排出の前臨床研究に関与している研究者は、血液(または血清もしくは血漿)および/または尿からの実際の薬物濃度データならびに様々な組織からの濃度データと結び付けた薬物動態学的/数学的モデルを使用して、生体内での薬物の挙動および特性を特徴付けてきた。
【0005】
薬物動態学的情報を手元に有すると、(1)薬物が十分に吸収されずに、治療量以下の循環レベルをもたらしたかどうか、または(2)薬物が、全身循環以前の代謝を経て不活性代謝産物になったかどうかを知ることができる。また、このような情報は、(1)塩の形態もしくは配合を変更することによって薬物吸収を改善すべきかどうか、(2)プロドラッグを製造するという可能性を調査すべきかどうか、または(3)異なる投与経路を検討すべきかどうかなどのその後の判断のための手引きにもなり得る。
【0006】
前述の内容に加えて、薬物動態学的/数学的モデルはまた、とりわけ、次のことに有用であると一般に考えられている:(1)任意の投与計画に伴う血漿、組織、および尿の薬物レベルを予測すること;(2)個々の患者に対して最適な投与計画を算定すること;(3)薬物および/または代謝産物の起こり得る蓄積を推定すること;(4)薬物濃度と薬理学的および毒物学的活性との相関関係を明らかにすること(すなわち薬力学);(5)製剤間の有効性の割合または程度の差を評価すること(すなわちバイオイクイバレンス);(6)生理機能または疾患の変化が薬物の吸収、分布、および/または排除にどのように影響を及ぼすかを説明すること;ならびに(7)薬物間相互作用および食品と薬物との相互作用を説明すること。
【0007】
また、吸収、分布、代謝、および排出の薬物動態学的データは、有望な新しい薬物候補物を薬理学的に特徴付けるプロセスに絶対必要な部分にもなっている。
【0008】
したがって、薬物開発プロセスの不可欠な部分は、薬物の薬物動態学(PK)および毒物動態学(TK)を特徴付けすること、ならびに薬物動態学的効果と薬力学的(PD)効果の関係(PK/PD)の理解を確立することである。PK/TK評価の必要条件は、信頼性が高い生物分析方法が利用できることである。液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)に基づく方法を用いて一般に定量される低分子薬物とは対照的に、治療的タンパク質の場合に基準となる生物分析技術は、リガンド結合アッセイ法(LBA)である。高い感度およびハイスループットな能力に加えて、LBAの主な利点は、全薬物の濃度、またはリガンドに結合可能な薬物分子(「遊離薬物」)のみを特に、分析できることである。
【0009】
薬物定量のために使用される生物分析アッセイ法の能力および限界を明確に理解することは、一応信頼できそうなデータ解釈を可能にするために不可欠である。遊離薬物の濃度を測定するための必要条件は、例えば標的捕捉アッセイ法を用いた、複合マトリックス中のリガンド結合可能薬物分子の分析を可能にするLBAの使用である。しかしながら、適切なアッセイ法形式を選択するだけでは、遊離薬物の濃度を正確に測定するのに必ずしも十分ではない。薬物と標的は、質量作用の法則によって司られる可逆的な非共有結合的様式で相互作用する。さらに、LBAは、薬物/分析物とアッセイ法試薬との可逆的な非共有結合的相互作用にも同様に基づいている。その結果として、アッセイ法の結果は、結合相手の平衡状態への任意の干渉によって容易に乱される。このようなアッセイ法への干渉は、現在得られる文献で扱われているが、詳細にはまだ考察されていない(例えば、Lee, J.W., et al., AAPS.J. 13 (2011) 99-110 (非特許文献1)、Kuang, B., et al., Bioanal. 2 (2010) 1125-1140 (非特許文献2)を参照されたい)。
【0010】
治療的タンパク質の生物分析のための標準技術は、リガンド結合アッセイ法(LBA)である。LBAの大きな利点は、全薬物濃度と標的に結合可能な薬物の濃度とを区別できることである。しかしながら、適切なアッセイ法形式を選択するだけでは、遊離薬物の濃度を正確に測定するのに必ずしも十分ではない。薬物、標的、およびアッセイ法試薬は、質量作用の法則によって司られる可逆的な非共有結合的様式で相互作用する。その結果として、アッセイ法の結果は、結合相手の平衡状態への任意の干渉によって容易に乱される。しかしながら、アッセイ法の可能性および限界を明確に理解することは、一応信頼できそうなデータ解釈を可能にするために不可欠である(例えば、Staack, G., et al., Bioanalysis 4 (2012) 381-395 (非特許文献3)を参照されたい)。
【0011】
WO 2008/005674 (特許文献1)において、結合相互作用を解析する方法が報告されている。クーマシーブリリアントブルー/タンパク質複合体を調製および使用するための方法は、US 6,057,160 (特許文献2)において報告されている。Azimzahdeh, A.およびVan Regenmortel, M.H.V.は、平衡混合物中の遊離抗体をELISA滴定することによる、ウイルスモノクローナル抗体の親和性の測定を報告している(J. Immunol. Meth. 141 (1991) 199-208) (非特許文献4)。Lee, J.W., et al. (AAPS J. 13 (2011) 99-110) (非特許文献1)は、「全」治療的抗体および「遊離」治療的抗体ならびにそれらの標的を定量するための生物分析アプローチを報告している。生物分析アッセイ法を開発するための数学的シミュレーションが、Staack, R.F.ら(Bioanalysis 4 (2012) 381-395) (非特許文献3)によって報告されている。WO 2011/094445 (特許文献3)において、標的を定めて広域性にインフルエンザを中和するための人工的に設計されたポリペプチド剤が報告されている。
【発明の概要】
【0014】
遊離薬物/結合物、標的-薬物/リガンド-薬物複合体、および遊離の標的/リガンドの混合物を含む試料中の遊離薬物/結合物を測定することが必要とされている。
【0015】
緩衝液または血清/血漿試料中の結合物およびそのリガンドの親和性および結合動態(K
D、結合速度および解離速度の速度定数)の決定は、極めて限られた/少数の測定値/試料、すなわち、1つまたは2つを用いて実施され(そして、適切な較正を与え)得ることが判明している。この方法は、曲線の直線状の/一定の平坦領域の範囲内で(低結合物濃度/高リガンド濃度においては、遊離結合物の割合に変化がなく、または同様に高結合物濃度/低リガンド濃度では、遊離リガンドの割合に変化がない)測定が実施される場合、遊離結合物または遊離リガンドの測定が可能であるという知見に基づいている。
【0016】
単一の(1つの)値の測定(すなわち、例えば、遊離結合物の量に関する1つの値)が、親和性の決定に十分であることが判明している。さらに第2の値が測定される場合(これは、任意である)、この方法は、測定された結果の内在的な品質管理も含む。したがって、本明細書において報告される方法を用いると、データポイントの困難なプロットを取得し解析する必要がない。測定されたデータポイントの最良適合を実施する必要さえない。
【0017】
結合動態の決定は、親和性が公知である場合、1つの値を測定することによって可能である。
【0018】
測定は、1つの相手が過剰(リガンドに対して結合物が過剰(高い結合物:リガンド比)または結合物に対してリガンドが過剰(高いリガンド:結合物比))な試料を用いて実施されるべきであることが判明している。
【0019】
1つの態様において、1つの相手の過剰の程度は、10倍である。1つの態様において、1つの相手の過剰の程度は、少なくとも40倍である。1つの態様において、1つの相手の過剰の程度は、少なくとも100倍である。
【0020】
本明細書において報告される方法は、血清または血漿を含む試料を用いて使用され得ることが判明している。
【0021】
本明細書において報告される方法において、リガンドまたは結合物の濃度は一定に保たれ、一方、それぞれの他方の相手(すなわち、結合物またはリガンド)の濃度は変更される。
【0022】
本明細書において報告される方法の1つの態様において、結合物の濃度は一定に保たれ、一方、リガンドの濃度は変更される。
【0023】
低い結合物:リガンド比(すなわち1未満)では、遊離結合物の平坦域を観察することができ、これはリガンド濃度およびK
Dに特異的であり、したがって、低い結合物:リガンド比においては、遊離結合物の割合に関して一定の値が得られることが判明している。同様に、高い結合物:リガンド比(すなわち1より大きい)では、遊離リガンドの平坦域を観察することができ、これは結合物濃度およびK
Dに特異的であり、したがって、高い結合物:リガンド比においては、遊離リガンドの割合に関して一定の値が得られる。
【0024】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-遊離結合物の平坦域において、結合物、リガンド、および非共有結合性の結合物-リガンド複合体を含む試料中の、リガンドに特異的に結合する遊離の(すなわち複合体を形成していない)結合物の割合を測定する段階、ならびに
-前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合に基づいて、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を計算する段階。
【0025】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-遊離リガンドの平坦域において、結合物、リガンド、および非共有結合性の結合物-リガンド複合体を含む試料中の、結合物に特異的に結合する遊離の(すなわち複合体を形成していない)リガンドの割合を測定する段階、ならびに
-前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)リガンドの割合に基づいて、結合物に対するリガンドの結合親和性(K
D値)を計算する段階。
【0026】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-遊離結合物の平坦域または遊離リガンドの平坦域において、結合物、リガンド、および非共有結合性の結合物-リガンド複合体を含む試料中の結合物-リガンド複合体の割合を測定する段階、
-測定された結合物-リガンド複合体に基づいて、遊離の(複合体を形成していない)結合物またはリガンドの割合を計算する段階、ならびに
-前段階で計算された遊離の(複合体を形成していない)結合物またはリガンドの割合に基づいて、結合物に対するリガンドの結合親和性(K
D値)を計算する段階。
【0027】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-試料の少なくとも2つの異なる結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および非共有結合性の結合物-リガンド複合体を含む試料中の、リガンドに特異的に結合する遊離の(すなわち複合体を形成していない)結合物の割合を測定し、遊離の(複合体を形成していない)結合物の測定された割合が、使用されたすべての結合物:リガンド比において類似しているわけではない場合には、試料の結合物:リガンド比を小さくし(すなわち、一定量のリガンドによって結合物の量を減少させる)、試料を再解析する段階、
または
試料の少なくとも2つの異なる結合物:リガンド比において、リガンドに特異的に結合する結合物、リガンド、および非共有結合性の結合物-リガンド複合体を含む試料中の、遊離の(すなわち複合体を形成していない)リガンドの割合を測定し、遊離の(複合体を形成していない)リガンドの測定された割合が、使用されたすべての結合物:リガンド比において類似しているわけではない場合には、試料の結合物:リガンド比を大きくし(すなわち、一定量の結合物によってリガンドの量を減少させる)、試料を再解析する段階、ならびに
-リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を、前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合に基づいて計算する段階、または前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)リガンドの割合に基づいて計算する段階。
【0028】
1つの態様において、この方法は、スキャッチャード解析ではない。
【0029】
1つの態様において、この方法は、データポイントの直線化を必要としない。
【0030】
1つの態様において、この方法は、EC
50値の計算もIC
50値の計算も必要としない。
【0031】
1つの態様において、2つまたは3つの異なる結合物:リガンド比が使用される。
【0032】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-試料の第1の結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および結合物-リガンド複合体を含む試料中の遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合を測定する段階であって、
その結合物:リガンド比が、少なくとも2つの異なる結合物:リガンド比において、遊離の(複合体を形成していない)結合物の測定された割合が類似している結合物:リガンド比と等しいか、またはそれ未満である、段階、
-試料の少なくとも第2の結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および結合物-リガンド複合体を含む試料中の遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合を測定する段階であって、
第2の結合物:リガンド比が、試料中のリガンドの量を増やすまたは減らすことによって、かつ試料中の結合物の量を維持することによって、第1の結合物:リガンド比とは異なり、
遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合が、増量または減量された試料中結合物に対して増量または減量された試料中リガンドを有する結合物:リガンド比において類似している、段階、
-前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合に基づいて、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を計算する段階。
【0033】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-試料の第1の結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および結合物-リガンド複合体を含む試料中の遊離の(複合体を形成していない)リガンドの割合を測定する段階であって、
その結合物:リガンド比が、少なくとも2つの異なる結合物:リガンド比において、遊離の(複合体を形成していない)リガンドの測定された割合が類似している結合物:リガンド比と等しいか、またはそれより大きい、段階、
-試料の少なくとも第2の結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および結合物-リガンド複合体を含む試料中の遊離の(複合体を形成していない)リガンドの割合を測定する段階であって、
第2の結合物:リガンド比が、試料中の結合物の量を増やすまたは減らすことによって、かつ試料中のリガンドの量を維持することによって、第1の結合物:リガンド比とは異なり、
遊離の(複合体を形成していない)リガンドの割合が、増量または減量された試料中リガンドに対して増量または減量された試料中結合物を有する結合物:リガンド比において類似している、段階、
-前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)リガンドの割合に基づいて、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を計算する段階。
【0034】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-試料の第1の結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および結合物-リガンド複合体を含む試料中の遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合を測定する段階であって、
その結合物:リガンド比が、少なくとも2つの異なる結合物:リガンド比において、遊離の(複合体を形成していない)リガンドの測定された割合が類似している結合物:リガンド比と等しいか、またはそれより大きい、段階、
-試料の少なくとも第2の結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および結合物-リガンド複合体を含む試料中の遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合を測定する段階であって、
第2の結合物:リガンド比が、試料中の結合物の量を増やすまたは減らすことによって、かつ試料中のリガンドの量を維持することによって、第1の結合物:リガンド比とは異なり、
遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合が、増量または減量された試料中リガンドに対して増量または減量された試料中結合物を有する結合物:リガンド比において類似している、段階、
-前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合に基づいて、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を計算する段階。
【0035】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-試料の第1の結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および結合物-リガンド複合体を含む試料中の結合物-リガンド複合体の割合を測定する段階であって、
その結合物:リガンド比が、少なくとも2つの異なる結合物:リガンド比において、結合物-リガンド複合体の測定された割合が類似している結合物:リガンド比と等しいか、またはそれより大きい、段階、
-試料の少なくとも第2の結合物:リガンド比において、結合物、リガンド、および結合物-リガンド複合体を含む試料中の結合物-リガンド複合体の割合を測定する段階であって、
第2の結合物:リガンド比が、試料中の結合物の量を増やすまたは減らすことによって、かつ試料中のリガンドの量を維持することによって、第1の結合物:リガンド比とは異なり、
結合物-リガンド複合体の割合が、増量または減量された試料中リガンドに対して増量または減量された試料中結合物を有する結合物:リガンド比において類似している、段階、
-前段階で測定された結合物-リガンド複合体の割合に基づいて、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を計算する段階。
【0036】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、リガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を決定するための方法である:
-結合物:リガンド比が異なる少なくとも2つの試料中の遊離結合物の割合を測定する段階であって、
少なくとも2つの試料中で、結合物の量は一定に保たれ(同じであり)、リガンドの量は各試料において異なり、ただし、試料が、結合物と比べて過剰なリガンドを含むことを条件とする、段階、
または
結合物:リガンド比が異なる少なくとも2つの試料中の遊離リガンドの割合を測定する段階であって、
少なくとも2つの試料中で、リガンドの量は一定に保たれ(同じであり)、結合物の量は各試料において異なり、ただし、試料が、リガンドと比べて過剰な結合物を含むことを条件とする、段階、
-各試料のリガンドに対する結合物の結合親和性(K
D値)を、前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)結合物の割合に基づいて計算する段階、または前段階で測定された遊離の(複合体を形成していない)リガンドの割合に基づいて計算する段階であって、少なくとも3つのK
D値が類似している場合、結合親和性が決定されており、
少なくとも2つのK
D値が類似していない場合、
先の測定で使用された試料と比べて、
i)結合物の量が一定で、リガンドの量が減らされているか、または
ii)リガンドの量が一定で、結合物の量が減らされているか、のいずれかの
試料を用いて、方法が繰り返される、段階。
【0037】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、結合物/リガンドは、抗原/抗体、細胞/標識、薬物/標的、受容体/受容体リガンド、酵素/酵素基質、および錯形成剤(complexant)/金属イオンを含む群より選択される。
【0038】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、結合物は、低分子薬物、生物学的に活性なポリペプチド、および抗体を含む群より選択される。
【0039】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、抗体は、完全長抗体、抗体断片、および抗体結合体を含む群より選択される。
【0040】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、抗体は、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、および六重特異性抗体を含む群より選択される。
【0041】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、抗体は、二価抗体、三価抗体、四価抗体、および六価抗体より選択される。
【0042】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、試料は、血清または血漿を含む。
【0043】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、測定はイムノアッセイ法による。1つの態様において、再解析は、同じイムノアッセイ法による。1つの態様において、イムノアッセイ法は、不均一アッセイ法である。
【0044】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、薬物/結合物は抗体であり、標的/リガンドは、抗体によって特異的に結合される抗原である。
【0045】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、結合物またはリガンドは、固相上に固定される。
【0046】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、K
D値の計算のために、以下の式が使用される:
K
D=(遊離薬物/結合物の割合)
*(標的/リガンドの濃度[nM])/(1-遊離薬物/結合物の割合)。
【0047】
本明細書において報告される1つの局面は、溶液中親和性(K
D)の決定のための、遊離結合物の平坦域において測定された(適切な較正を用いて測定された)単一のデータポイントの使用である。
【0048】
本明細書において報告される1つの局面は、結合物およびリガンドの結合期または試料希釈によって誘導された解離期において遊離の結合物またはリガンドの濃度を測定することによって、結合動態/速度定数(k
onおよびk
off)を決定するためにK
Dを決定するための、本明細書において報告される方法の使用である。
【0049】
本明細書において報告される1つの局面は、溶液中結合動態/速度定数(k
onおよびk
off)を決定するための、本明細書において報告される方法の使用である。
【0050】
本明細書において報告される1つの局面は、溶液中k
on値を決定するための、本明細書において報告される方法の使用である。この場合、K
D値は公知である。
【0051】
本明細書において報告される1つの局面は、溶液中k
off値を決定するための、本明細書において報告される方法の使用である。
[本発明1001]
以下の段階を含む、標的に対する薬物の結合親和性を決定するための方法:
-遊離薬物の平坦域について、薬物、標的、および非共有結合性の薬物-標的複合体を含む試料中の遊離薬物または遊離標的の割合を決定する段階、ならびに
-標的に対する薬物の結合親和性を、前段階で決定された遊離薬物の割合に基づいて計算する段階、または前段階で決定された遊離標的の割合に基づいて計算する段階。
[本発明1002]
以下の段階を含むことを特徴とする、本発明1001の方法:
-試料の少なくとも2つの異なる薬物:標的比について、薬物、標的、および薬物-標的複合体を含む試料中の遊離薬物の割合を、イムノアッセイ法の結果に基づいて決定し、かつ決定された遊離薬物の割合が、使用されたすべての薬物:標的比について類似しているわけではない場合には、試料の薬物:標的比を小さくし、かつ同じイムノアッセイ法によって試料を再解析する段階、または
試料の少なくとも2つの異なる薬物:標的比について、薬物、標的、および薬物-標的複合体を含む試料中の遊離標的の割合を、イムノアッセイ法の結果に基づいて決定し、かつ決定された遊離標的の割合が、使用されたすべての薬物:標的比について類似しているわけではない場合には、試料の薬物:標的比を大きくし、かつ同じイムノアッセイ法によって試料を再解析する段階、
-標的に対する薬物の結合親和性を、前段階で決定された遊離薬物の割合に基づいて計算する段階、または前段階で決定された遊離標的の割合に基づいて計算する段階。
[本発明1003]
1つ、または2つ、または3つの異なる薬物:標的比が使用されることを特徴とする、本発明1002の方法。
[本発明1004]
以下の段階を含む、標的に対する薬物の結合親和性を決定するための方法:
-試料の第1の薬物:標的比について、薬物、標的、および薬物-標的複合体を含む試料中の遊離薬物の割合を、イムノアッセイ法の結果に基づいて決定する段階であって、
前記薬物:標的比が、少なくとも2つの異なる薬物:標的比について、決定された遊離薬物の割合が類似している薬物:標的比と等しいか、またはそれ未満である、段階、
-試料の少なくとも第2の薬物:標的比について、薬物、標的、および薬物-標的複合体を含む試料中の遊離薬物の割合を、イムノアッセイ法の結果に基づいて決定する段階であって、
第2の薬物:標的比が、試料中の標的の量を増やすかまたは減らすことによって、かつ試料中の薬物の量を維持することによって、第1の薬物:標的比とは異なり、
決定された遊離薬物の割合が、試料中の増量または減量された薬物に対して試料中の増量または減量された標的を有する薬物:標的比、および出発時の薬物:標的比について類似している、段階、
-前段階で決定された遊離薬物の割合に基づいて、標的に対する薬物の結合親和性を計算する段階。
[本発明1005]
以下の段階を含む、標的と薬物との結合親和性を決定するための方法:
-試料の第1の薬物:標的比について、薬物、標的、および薬物-標的複合体を含む試料中の遊離標的の割合を、イムノアッセイ法の結果に基づいて決定する段階であって、
前記薬物:標的比が、少なくとも2つの異なる薬物:標的比について、決定された遊離標的の割合が類似している薬物:標的比と等しいか、またはそれより大きい、段階、
-試料の少なくとも第2の薬物:標的比について、薬物、標的、および薬物-標的複合体を含む試料中の遊離標的の割合を、イムノアッセイ法の結果に基づいて決定する段階であって、
第2の薬物:標的比が、試料中の薬物の量を増やすかまたは減らすことによって、かつ試料中の標的の量を維持することによって、第1の薬物:標的比とは異なり、
前記遊離標的の割合が、試料中の増量または減量された標的に対して試料中の増量または減量された薬物を有する薬物:標的比および出発時の薬物:標的比について類似している、段階、
-前段階で決定された遊離標的の割合に基づいて、標的に対する薬物の結合親和性を計算する段階。
[本発明1006]
以下の段階を含む、標的に対する薬物の結合親和性を決定するための方法:
-薬物:標的比が異なる少なくとも3つの試料中の遊離薬物の割合を決定する段階であって、
少なくとも3つの試料中で、薬物の量は一定に保たれ、かつ標的の量は各試料において異なり、ただし、試料が、薬物と比べて過剰な標的を含むことを条件とする、段階、または
薬物:標的比が異なる少なくとも3つの試料中の遊離標的の割合を決定する段階であって、
少なくとも3つの試料中で、標的の量は一定に保たれ、かつ薬物の量は各試料において異なり、ただし、試料が、標的と比べて過剰な薬物を含むことを条件とする、段階、
-各試料の標的に対する薬物の結合親和性を、前段階で決定された遊離薬物の割合に基づいて計算する段階、または前段階で決定された遊離標的の割合に基づいて計算する段階であって、
少なくとも3つのKD値が類似している場合、結合親和性が決定されており、
少なくとも3つのKD値が類似していない場合、先の決定で使用された試料と比べて、
i)薬物の量が一定で、標的の量が減らされているか、または
ii)標的の量が一定で、薬物の量が減らされているか、のいずれかの
試料を用いて、方法が繰り返される、段階。
[本発明1007]
試料が血清または血漿を含むことを特徴とする、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1008]
薬物が抗体であり、かつ標的が、抗体によって特異的に結合される抗原であることを特徴とする、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1009]
標的が固相に固定されることを特徴とする、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1010]
KD値の計算のために、以下の式が使用されることを特徴とする、前記本発明のいずれかの方法:
KD=(遊離薬物の割合)*(標的の濃度[nM])/(1-遊離薬物の割合)。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
緩衝液または血清/血漿試料中のリガンドに対する結合物の親和性および結合動態(K
D、結合速度および解離速度の速度定数)の決定は、遊離結合物または遊離リガンドの測定に基づいて、少数の試料を用いて実施され得、その際、測定は、曲線の直線状の/一定の平坦領域の範囲内で (すなわち、低い結合物/リガンド濃度では、遊離結合物の割合に変化がなく、または同様に高い結合物/リガンド濃度では、遊離リガンドの割合に変化がない)、実施されるべきであることが判明している。
【0054】
低い結合物:リガンド比では、遊離結合物の平坦域を観察することができ、これはリガンド濃度およびK
Dに特異的であり、したがって、低い結合物:リガンド比においては、遊離結合物の割合に関して一定の値が得られることが判明している。同様に、高い結合物:リガンド比では、遊離リガンドの平坦域を観察することができ、これは結合物濃度およびK
Dに特異的であり、したがって、高い結合物:リガンド比においては、遊離リガンドの割合に関して一定の値が得られる。
【0055】
「遊離結合物の平坦域」という用語は、様々な結合物濃度、一定のリガンド濃度、および非共有結合性の各結合物-リガンド複合体を含む試料における、一定のリガンド濃度における結合物濃度範囲であって、遊離結合物の割合が一定のままである、結合物濃度範囲を意味する(
図5を参照されたい)。
【0056】
「遊離リガンドの平坦域」という用語は、様々なリガンド濃度、一定の結合物濃度、および非共有結合性の各結合物-リガンド複合体を含む試料における、一定の結合物濃度におけるリガンド濃度範囲であって、遊離リガンドの割合が一定のままである、リガンド濃度範囲を意味する。
【0057】
「類似である」という用語は、2つの測定値の相対的差異(%Diff)が100%未満であることを意味する。1つの態様において、差異は50%未満である。1つの態様において、差異は30%未満である。差異(%Diff)は、以下の式を用いて計算される:
%Diff=[(最大値)-(最小値)]/(値の算術平均)。
【0058】
例えば、1回目の測定において、10%の遊離結合物が測定され、2回目の測定において、13%の遊離結合物が測定された。上記の式に基づくと、この結果、差異は26%になる(13-10)/((13+10)/2)=26%)。
【0059】
「類似していない」という用語は、2つの測定値の相対的差異(%Diff)が100%より大きいことを意味する。1つの態様において、差異は50%より大きい。1つの態様において、差異は30%より大きい。差異(%Diff)は、以下の式を用いて計算される:
%Diff=[(最大値)-(最小値)]/(値の算術平均)。
【0060】
結合物の例としての薬物およびリガンドの例としての標的を用いて、以下に本発明が例示される。薬物は、標的と特異的に相互作用する。
【0061】
図7に示すように、薬物濃度、標的濃度、および親和性(K
D)の間には相互依存性が存在する。
【0062】
低い薬物:標的比では、標的濃度およびK
Dに特異的な、遊離薬物の平坦域が観察され得る。一定の標的濃度において薬物濃度に依存する、実験で測定された遊離薬物の割合が、
図8に示される。低い薬物:標的比では、遊離薬物の割合に関して一定の値が得られることを認めることができる。
【0063】
同じく、高い薬物:標的比でも、同様の平坦域を観察することができる。この平坦域もまた、K
D値の決定のために使用され得る。したがって、低い薬物:標的比(過剰な標的)を対象とするすべての局面および態様はまた、高い薬物:標的比(過剰な薬物)を用いても実施され得る。
【0064】
同じく、この方法は、過剰な薬物が使用される場合に遊離標的の濃度を測定することによって、変更されることができる。したがって、薬物を対象とするすべての局面および態様はまた、標的を対象とする場合にも実施され得る。
【0065】
遊離薬物の平坦域内では、遊離薬物の割合、およびそれに対応してK
D値は、薬物濃度とは無関係に一定であることが判明している(
図9を参照されたい)。
【0066】
遊離薬物の平坦域内では、K
D値は、標的濃度とは無関係に一定であることが判明している(
図10を参照されたい)。
【0067】
緩衝液または血清/血漿試料における薬物-標的親和性および結合動態(K
D、結合速度および解離速度の速度定数)を決定するために、予想される遊離薬物/分析物濃度が異なる試料が作製された(K
Dを推定するために、平衡状態に到達しなければならない)。遊離薬物/分析物の割合は、曲線の直線状の/一定の平坦領域中に存在しなければならない(低い薬物/分析物濃度では、遊離薬物の割合に変化がない)。遊離薬物/分析物の割合の1回目の推定のために、
図1は、対応する濃度を与える。実際の遊離薬物/分析物の割合が解析された。親和性(K
D)および速度定数(k
on、k
off)は、測定された遊離薬物の割合を用いることによって計算された。
【0068】
したがって、遊離薬物の割合を測定するのに適する任意の方法が、本明細書において報告される方法において使用され得る。
【0069】
あるいは、遊離薬物の割合は、形成された複合体を測定するためのアッセイ法設定を用いることによって、間接的に測定され得る。
【0070】
例えば、緩衝液または血清/血漿試料中の遊離薬物/分析物の濃度を測定するために、2種類の連続的サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)が使用され得る。
【0071】
図2および3は、ELISAに基づくアッセイ法手順の異なる段階を示している。
【0072】
より詳細には、ビオチン標識された捕捉タンパク質(標的-Bi)、薬物/分析物、mAb<薬物/分析物>-Dig、および抗ジゴキシゲニン-PODが、ストレプトアビジン(SA)でコーティングされたマイクロタイタープレート(MTP)に連続的に添加され、MTP振盪機において1時間、各試薬をインキュベートする。アッセイ法を高速化するために、別法として、mAb<薬物/分析物>-PODが、mAb<薬物/分析物>-Digと抗ジゴキシゲニン-PODの組合せの代わりに使用され得る。
【0073】
溶液中の遊離薬物/分析物の濃度の正確な像のために、薬物/分析物は、約5分間インキュベートされる。(シグナル生成と平衡状態の最小干渉との間を取る(compromise))。
【0074】
各段階の後、MTPは3回洗浄され、残りの液体が除去される。最後に、着色された反応生成物に変換されるTMB溶液、POD基質を添加することによって、形成された固定された免疫複合体が可視化される。発色は、測光法でモニターされ(680nmにおける吸収、参照波長450nm)、最高濃度の(highest)較正物質のODが0.65に達した際に1M H
2SO
4の添加によって停止されることが望ましい。最後に、色強度が測光法で測定され(450nmにおける吸収、参照波長690nm)、これは、血清/血漿/緩衝液試料中の分析物濃度に比例している。薬物/分析物の定量は、非線形4変数ウィマー-ロドバード(Wiemer-Rodbard)曲線当てはめ関数を用いた対応する検量線を利用して吸光度の値を逆算することによって実施される。
【0075】
インキュベートされた試料の遊離薬物の濃度を再計算した後、
図5に示されるものに類似した曲線がプロットされ得る。平坦域において少なくとも2つの類似した遊離薬物の値が得られることが望ましい(アッセイ法の直接的品質管理、例えば、標的のオリゴマー形成)。
【0076】
K
D値を計算するために、以下の式が使用される:
K
D=(遊離薬物の割合)
*(標的の濃度[nM])/(1-遊離薬物の割合)
【0077】
例示的な計算(実施例3を参照されたい):
標的濃度=1nM=一定
薬物濃度:17ng/mLの場合、遊離薬物の割合は9.2%となる。
薬物濃度:8.5ng/mLの場合、遊離薬物の割合は7.6%となる。したがって、K
D=0.1nMおよび0.08nM
【0078】
本明細書において報告される方法を用いると、必要とされる薬物は少量であり、高親和性薬物が解析/特徴付けされ得る。
【0079】
本明細書において報告される1つの局面は、抗体のような二価薬物のK
D値を決定するための、本明細書において報告される方法の使用である。
【0080】
1つの態様において、K
D値の決定は、平衡状態の試料から開始して希釈によって誘導された、薬物標的複合体の解離による。
【0081】
二価薬物のK
D値を決定するためのすべての溶液中アプローチに固有の問題は、溶液中アプローチが遊離薬物の測定に基づいているため、全面的遊離薬物(結合価がまったく使用されていない)と部分的遊離薬物(1つの結合価が使用されている)と結合薬物(両方の結合価が使用されている)の間に平衡が存在することである。
【0082】
一般に、二価薬物のK
D値を決定するのに使用される試料は、公知の量の薬物および標的を含む。遊離薬物のアッセイ法の読取りは、試料中に存在する遊離薬物の量に相関付けられた遊離薬物較正曲線を介する。二価薬物の場合、遊離薬物は、全面的遊離薬物および部分的遊離薬物の混合物であり、それらの個々の割合は、統計的分布に従って分布している。実際の遊離薬物濃度は、全面的遊離薬物および部分的遊離薬物の統計的分布を用いて決定され得、その結果、結合可能な薬物の総量が決定される。
【0083】
この方法は、以下の段階を含む:
1)標的の固定、例えば、ストレプトアビジンでコーティングされた固相(例えばマイクロタイタープレート)に捕捉タンパク質(標的-Bi)をコーティング、
2)試料、QC、および較正物質とのインキュベーション、
3)標識された抗薬物抗体、例えばmAb<薬物/分析物>-Digを用いた、捕捉された薬物の検出、
4)標識された二次抗体、例えば抗ジゴキシゲニン-PODを用いた、一次抗体の検出。
【0084】
さらに、段階3および段階4は、mAb<薬物/分析物>-PODとのインキュベーションで置き換えられ得る。
5)読取り
6)データ解析
各標準物質および各試料希釈物の平均値が計算される。
標準較正曲線は、(例えばXLfitを用いることによって)ウィマー-ロドバード(Wiemer-Rodbard)関数を用いた非線形4変数当てはめによって作成される。
AおよびBは、シグナルの偏差に関与している(較正曲線のおおよその始点および終点)。CおよびDは曲線の形状に関与している。
試験試料希釈物の再現可能かつ信頼性の高い計算は、0.033ng/mL(定量の下限)〜8.0ng/mL(アッセイ濃度)の間の濃度範囲内で実現される。試料は、この範囲に収まるように希釈される。
アッセイ法の典型的な較正曲線(標的濃度に重み付けして計算)および対応するデータは、
図4に示される。
【0085】
本明細書において報告される1つの局面は、結合物の結合動態を決定するための、本明細書において報告される方法の使用である。
【0086】
この方法は、次の3つの段階を含む:
1)試料作製、
2)遊離薬物または遊離標的の定量、および
3)結合動態の計算。
【0087】
原理的には、次の2つのアプローチが可能である:
a)結合および平衡アプローチ、ならびに
b)平衡状態から開始して希釈によって誘導される、試料中の薬物標的複合体の解離による、平衡および解離アプローチ。
【0088】
所与のK
Dに関して、ただ1つのk
onおよびk
offから、2つの所与の時点における遊離薬物割合を得ることができる(
図6を参照されたい)。
【0089】
相互作用の速度定数を決定するために、2つの方法が考えられ得る。速度定数の計算のために、どちらの方法もK
D値を定数として使用し、これが決定されなければならない。1つの実現可能なアプローチは、両方の結合相手を混合し、結合期の間に、例えば遊離薬物の割合を測定することである(「結合-平衡アプローチ」)。速度定数を決定するための他の可能性は、平衡になった混合物を希釈によって乱し、平衡に達する前の解離期の間に、例えば遊離薬物の割合を測定することである(「平衡-解離アプローチ」)。各アプローチにおいて、平衡ではない試料のデータポイントは、わずか1つしか必要とされない。速度定数の計算は、系(例えば、二次反応(reaction 2
nd order))の微分方程式を解くことによって行われる。公知のK
D値を有する系を表す、存在し得るk
on(結合の速度定数)およびk
off(解離の速度定数)のペアはただ1つしかない。両方のアプローチの適用が、測定された動態パラメーターの相互確認のために使用され得る。
【0090】
速度定数を計算するために、平衡ではない少なくとも1つの時点において推定された遊離薬物の割合(
図6を参照されたい)を、以下の微分方程式の計算された解答に当てはめることが行われ得る。親和性(K
D)は、計算の拠り所(anchor)を有するために必須の値である。k
onまたはk
offを変動させることによって、当てはめが最適化される。
【0091】
微分方程式:
d/dt(薬物)=-k
on*薬物
*標的+k
off*複合体
d/dt(標的)=-k
on*薬物
*標的+k
off*複合体
d/dt(複合体)=k
on*薬物
*標的-k
off*複合体
【0092】
結合動態を決定するために、遊離薬物を測定するための本明細書において報告されるイムノアッセイ法が使用され得る。
【0093】
図11は、アッセイ法手順の異なる段階を示している。
【0094】
アッセイ法は以下の段階を含む:
1)試料調製
低薬物濃度および高標的濃度、または
高薬物濃度および低標的濃度
2)インキュベーションおよび複合体形成
3)遊離薬物の定量または遊離標的の定量
実施例2を参照されたい
4)遊離薬物の割合または遊離標的の濃度の計算
例えば
5)K
D値の計算
【0095】
したがって、本明細書において報告される方法には、以下のような独特の特徴がある
-結合親和性(K
D値)を決定する場合、
i)一方の相手が(大幅に)過剰に存在していること(薬物または標的のいずれか)、
ii)2つまたは3つの試料の解析/測定が、KD値を決定するのに十分であること、および
iii)最も顕著なものとして、試料が平坦領域内にあるかを確認するための本質的な品質管理、
-結合動態(k
on値およびk
off値)を決定する場合、
i)イムノアッセイ法による結合動態の決定(リアルタイム解析を必要としない)、
ii)2つの試料の解析/測定が、k
on値およびk
off値の決定のために十分であること、ならびに
iii)最も顕著なものとして、結合動態の決定のために希釈アプローチを用いること(平衡に到達している試料を希釈することによる)、
-二価薬物を測定する場合、
i)最も顕著なものとして、試料中の全面的遊離薬物および部分的遊離薬物を測定するために統計的アプローチを使用すること。
【0096】
以下の実施例および図面は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の精神から逸脱することなく、説明される手順に修正を加え得ることが理解される。
【0097】
略語
BLQ 定量限界未満(Below limit of quantification)
BPA 1 ウシ血漿アルブミン1(Bovine plasma albumin 1)
CoA 分析証明書(Certificate of analysis)
Conc. 濃度(Concentration)
CV 変動係数(Coefficient of variation)
Dig ジゴキシゲニン(Digoxigenin)
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme linked immunosorbent assay)
H
2SO
4 硫酸
IgG 免疫グロブリンG(Immunoglobulin G)
mAb モノクローナル抗体(Monoclonal antibody)
MTP マイクロタイタープレート(Microtiter plate)
OD 光学濃度(Optical density)
PBS リン酸緩衝化生理食塩水(Phosphate buffered saline)
POD 重合させた西洋ワサビペルオキシダーゼ(Polymerized horse-radish peroxidase)
QC 品質管理(Quality control)
RPM 毎分回転数(Revolutions per minute)
RT 室温(Room temperature)(+15℃〜+25℃)
SA ストレプトアビジン(Streptavidin)
SD 標準偏差(Standard deviation)
TMB 3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(3,3',5,5'-Tetramethylbenzidine)
【実施例】
【0098】
材料
機器
・96ウェルMTPのためのELISA読取装置(モニタリング λ:680/450nm、測定 λ:450/690 nm)
・マイクロタイタープレート(MTP)洗浄装置
・マイクロタイタープレート(MTP)振盪装置
・標準ピペットおよびマルチピペット
・反応チューブ
・一般的実験室機器
【0099】
消耗品
・ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレート
・すぐ使用できるTMB基質溶液
・10×PBS
脱イオン水に1:10希釈して1×PBSにする。
・アルブミン、ウシ血漿アルブミン1(BPA1)
・Tween 20
【0100】
試料
・最低10名の健常な未処置のヒト個体のプール血清/血漿(血清試料を遠心分離して、MTPウェル中に凝固または混濁した血清をピペットで移すことを避ける)。
【0101】
緩衝液
・アッセイ用緩衝液:1×PBS中0.5% BPA1
例えば、5gのBPA1を1000mLの1×PBS中で希釈
・洗浄用緩衝液:1×PBS/0.05% Tween 20
例えば、10mLのTween 20を2000mLの1×PBS中で希釈
・プール血清/血漿の希釈液:
アッセイ用緩衝液中で希釈した10%ブランクヒトプール血清
例えば、プール血清1mLをアッセイ用緩衝液9mLと混合。
【0102】
試薬
・抗ジゴキシゲニン-POD(ポリ)、Fab断片(<Dig>-POD)
第2の検出試薬
50Uの凍結乾燥されたアリコート、脱イオン水1mLを加えて戻して50U/mlにする。
【0103】
実施例1
K
D値決定のための一般的アッセイ法の原理
緩衝液または血清/血漿試料中の遊離薬物/分析物の濃度を測定するために、2種類の連続的サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)が確立されていた。
【0104】
図2および3は、アッセイ法手順の異なる段階を示している。
【0105】
ビオチン標識された捕捉タンパク質(標的-Bi)、薬物/分析物、mAb<薬物/分析物>-Dig、および抗ジゴキシゲニン-PODを、ストレプトアビジン(SA)でコーティングされたマイクロタイタープレート(MTP)に連続的に添加し、MTP振盪機において1時間、各試薬をインキュベートする。アッセイ法を高速化するために、別法として、mAb<薬物/分析物>-Digと抗ジゴキシゲニン-PODの組合せの代わりにmAb<薬物/分析物>-PODを使用することができる。
【0106】
溶液中の遊離薬物/分析物の濃度の正確な像のために、薬物/分析物を約5分間インキュベートする(シグナル生成と平衡状態の最小干渉との間を取る)。
【0107】
各段階の後、MTPを3回洗浄し、残りの液体を除去する。最後に、着色された反応生成物に変換されるTMB溶液、POD基質を添加することによって、形成された固定された免疫複合体を可視化する。発色は、測光法でモニターし(680nmにおける吸収、参照波長450nm)、最高濃度の較正物質のODが0.65に達した際に1M H
2SO
4の添加によって停止することが望ましい。最後に、色強度を測光法で測定し(450nmにおける吸収、参照波長690nm)、これは、血清/血漿/緩衝液試料中の分析物濃度に比例している。薬物/分析物の定量を、非線形4変数ウィマー-ロドバード(Wiemer-Rodbard)曲線当てはめ関数を用いた対応する検量線を利用して吸光度の値を逆算することによって実施する。
【0108】
実施例2
試料解析
試料、品質管理試料(QC)、および陽性対照標準物質を、アッセイ用緩衝液中で解析する。
【0109】
試験手順の段階はすべて、+15℃〜+25℃(RT)で実施する。
【0110】
与えられた体積は、1つのMTPの調製のために計算されたものである。複数のMTPを解析する場合、下記に示す体積にMTPの数を掛けられたい。最小のピペット操作体積は2μLである。
【0111】
正確な測定を徹底するために、すべての試験試料、陽性対照試料希釈物(検量線)、および品質管理試料は2つ組にして解析されるべきである。
【0112】
較正用標準物質および試験試料の調製:
7種の異なる較正物質濃度および1つのブランク値を含む検量線として、連続的用量設定(serial titrations)の薬物/標的(mAb<標的>)の標準物質を調製されたい(100%のプールされた緩衝液/血清/血漿中で1:2.5の段階希釈)。
【0113】
図1に基づいて推定されるいくつかの試験試料を調製されたい(標的との薬物/分析物のインキュベーション)。存在し得る最低の薬物/分析物濃度において、親和性を決定するための試料が平衡に達することが必須である。速度定数の推定のために、正確な時間尺度を用いて平衡状態にないときに測定することが必須である。
【0114】
アッセイ法は次の段階を含む:
1)ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートに捕捉タンパク質(標的-Bi)をコーティングする段階;
1時間インキュベーションした後に3回洗浄
最終濃度が例えば500ng/mLである、捕捉試薬標的-Biの希釈標準溶液(working solution)12mLをアッセイ用緩衝液中で調製した。
希釈標準溶液100μLを各MTPウェルにピペットで移す。接着性のカバーホイルでMTPを覆い、MTP振盪機(450rpm)上で1時間インキュベートする。ウェル当たり300μLの洗浄緩衝液を用いてMTPを3回洗浄し、残りの洗浄緩衝液を除去する。その後、標準物質および試料を添加する。
2)試料、QC、および較正物質をプレートに載せる段階;約5分間(できるだけ短く)インキュベーションした後に3回洗浄
標準物質100μLおよび試験試料希釈物100μLを、2つ組でMTPの指定のウェルにピペットで移す。接着性のカバーホイルでMTPを覆い、MTP振盪機(450rpm)上で1時間インキュベートする。ウェル当たり300μLの洗浄緩衝液を用いてMTPを3回洗浄し、残りの洗浄緩衝液を除去する。その後、第1の検出抗体を添加する。
3)mAb<薬物/分析物>-Digを用いた検出;1時間インキュベーションした後に3回洗浄
各MTPに対して、アッセイ用緩衝液中の最終濃度が例えば500ng/mLであるmAb<薬物/分析物>-Digを含む第1の検出試薬の希釈標準溶液12mLを調製する。
希釈標準溶液100μLを各MTPウェルにピペットで移す。接着性のカバーホイルでMTPを覆い、MTP振盪機(450rpm)上で1時間インキュベートする。ウェル当たり300μLの洗浄緩衝液を用いてMTPを3回洗浄し、残りの洗浄緩衝液を除去する。その後、第2抗体を添加する。
4)抗ジゴキシゲニン-PODを用いた検出;1時間インキュベーションした後に3回洗浄
各MTPに対して、アッセイ用緩衝液中の最終濃度が2.5mU/mLである<Dig>-PODを含む第2の検出試薬の希釈標準溶液12mLを調製する。
この溶液100μLを各MTPウェルにピペットで移す。接着性のカバーホイルでMTPを覆い、MTP振盪機(450rpm)上で1時間インキュベートする。ウェル当たり300μLの洗浄緩衝液を用いてMTPを3回洗浄し、残りの洗浄緩衝液を除去する。その後、基質試薬を添加する。
段階3および段階4は、mAb<薬物/分析物>-PODとのインキュベーションで置き換えることができる。
5)TMB溶液を用いて読取りを実施し、H
2SO
4溶液を用いて停止した。OD680/450が0.65に達するまで吸収をモニターした。OD450/690が1.8〜2.2に達するまで、吸収測定を実施した。
すぐ使用できるTMB溶液100μLを各MTPウェルにピペットで移す。MTPは、450rpmで振盪しながら基質溶液と共にインキュベートすることができる。最高濃度の標準溶液(c=8.0ng/ml)のOD680/450が0.65となるように、吸収を数回モニターする。1M H
2SO
4溶液50μLで反応を停止し、最高濃度の標準溶液(c=8.0ng/ml)のOD450/690が1.8〜2.2となるように、吸収を数回測定する。
モニター波長:680nm(参照波長:450nm)
測定波長:450nm(参照波長:690nm)
6)データ解析
各標準物質および各試料希釈物の平均値を計算する。
(例えばXLfitを用いることによって)ウィマー-ロドバード(Wiemer-Rodbard)関数を用いた非線形4変数当てはめによって、標準較正曲線を作成する。
AおよびBは、シグナルの偏差に関与している(較正曲線のおおよその始点および終点)。C およびDは曲線の形状に関与している。
試験試料希釈物の再現可能かつ信頼性の高い計算は、0.033ng/mL(定量の下限)〜8.0ng/mL(アッセイ濃度)の間の濃度範囲内で実現される。試料を、この範囲に収まるように希釈する。
アッセイ法の典型的な較正曲線(標的濃度に重み付けして計算)および対応するデータを、
図4および以下の表に示す。
【0115】
表
【0116】
実施例3
イムノアッセイ法に基づく溶液中K
D値の決定-薬物としての二重特異性抗EGFR/IGFR抗体および標的としてのEGFRを用いた、一価結合例
遊離薬物のイムノアッセイ法および測定ならびにK
D値の計算を、上記に概説したようにして実施した。
【0117】
(平衡を確実にするために15時間のインキュベーション期間を用いた)K
D決定を、別の日に様々な薬物濃度および標的濃度を用いて実施した。これらの結果を下記の表に示す。
【0118】
表
【0119】
K
D値決定が再現可能であり、薬物濃度および標的濃度に依存していないことを確認することができる。
【0120】
実施例4
イムノアッセイ法に基づく溶液中K
D値の決定-薬物としての二重特異性抗EGFR/IGFR抗体および標的としてのIGFRを用いた、一価結合例
遊離薬物のイムノアッセイ法および測定ならびにK
D値の計算を、上記に概説したようにして実施した。
【0121】
(平衡を確実にするために15時間のインキュベーション期間を用いた)K
D決定を、別の日に様々な薬物濃度および標的濃度を用いて実施した。これらの結果を下記の表に示す。
【0122】
表
【0123】
実施例5
イムノアッセイ法に基づく結合動態決定-薬物としての二重特異性抗EGFR/IGFR抗体および標的としてのEGFRを用いた、結合および平衡アプローチ
二重特異性抗体は濃度17ng/mLで使用した。EGFR(標的)は濃度1nMで使用した。決定されたK
D値は0.09nMである。
【0124】
30分間のインキュベーション期間(結合期)の後に測定された遊離薬物の割合は0.31であった(
図6の第1の時点)。180分間のインキュベーション期間(平衡)の後に測定された遊離薬物の割合は0.09であった。
【0125】
これらの実験結果に基づき、結合動態パラメーターk
offを0.000073(1/s)と計算し、結合動態パラメーターk
onを7300000(1/s
*nM)と計算した。
【0126】
実施例6
イムノアッセイ法に基づく結合動態決定-薬物としての二重特異性抗EGFR/IGFR抗体および標的としてのIGFRを用いた、平衡および解離アプローチ
二重特異性抗体は濃度680ng/mLで使用した。IGFR(標的)は濃度200nMで使用した。決定されたK
D値は9.4
*10
-9Mである。
【0127】
平衡状態で測定された遊離薬物の割合は0.07であった。緩衝液希釈の15分後(解離期)に測定された遊離薬物の割合は0.67であった。
【0128】
これらの実験結果に基づき、結合動態パラメーターk
offを0.0014854(1/s)と計算し、結合動態パラメーターk
onを158020(1/s
*nM)と計算した。