(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記監視装置は、前記域内をリアルタイムに撮影した撮影データから前記域内の前記障害物を検出し、前記障害物の位置、移動速度、移動方向、移動する加速度及びサイズのうち少なくとも一つの情報を表す値を演算し、演算結果を前記障害物情報として前記エリア監視コンピュータに転送し、
前記エリア監視コンピュータは、前記自動走行機が走行する前記エリアに応じた前記障害物情報を当該自動走行機に向けて転送することを特徴とする請求項1に記載の自動運転システム。
前記エリア監視コンピュータは、前記走行ルートに前記障害物情報をマッピングして前記自動走行機に向けて転送することを特徴とする請求項3に記載の自動運転システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、添付図面は、説明の便宜上、実際の寸法・縮尺とは異なって図示されている部分がある。
図1は本実施形態に係る自動運転システムが適用される施設の一例として介護施設10が図示されている。介護施設10の敷地内には、複数の居住棟11A,11B(図示例ではA棟、B棟の2棟)が建てられている。居住棟11A,11Bの各々は、複数階(図示例では3階)の各階に要介護者Hが居住するための居室21が設けられている。要介護者Hの各々は、サポートロボットRによる補助を受けて介護施設10の施設内を移動する。居住棟11A,11Bは、各階が渡り廊下13により互いに連結されており、各居住棟11A,11B間をサポートロボットRに補助された要介護者Hが行き来することが可能となっている。また、居住棟11A,11Bの各々には、各階を移動するためのエレベータ15,16が設けられている。
【0011】
図2は、要介護者Hが居住する居室21を示している。
図2に示す居室21の構成は、一例であり、間取り、居室21内に配置された備品、設備などは適宜変更される。居室21は、リビングルーム23と食堂24とが通路25により繋がった間取りとなっている。居室21には、リビングルーム23、食堂24、通路25などの各場所に複数の監視装置31が設けられている。監視装置31の各々は、例えば、居室21内をリアルタイムに撮像するカメラと、カメラが撮像した撮像データを処理する処理ボードとを備えている。監視装置31は、居室21内を複数の領域に分けた域内41(図中の一点鎖線で示す領域)に対応して設けられている。域内41の設定及び監視装置31の設置個数は、例えば監視装置31が居室21内のほぼ全域にわたる領域を撮像でき、監視装置31がサポートロボットRとの通信(無線通信)を居室21内のほぼ全域にわたる領域で実施できるように設定されている。なお、
図2は、図面が煩雑となるのを避けるため、すべての域内41を図示せずにその一部のみを示している。また、
図1に示す介護施設10は、居室21を除く他の部分にも居室21と同様に監視装置31が域内41ごとに設けられ、監視装置31により施設内が監視できるようになっている。
【0012】
図3は、本実施形態の自動運転システム30の構成を示している。
図3に示すように、複数の監視装置31は、1つのエリア監視コンピュータ33に接続されている。エリア監視コンピュータ33は、各種の通信機器など(ルータ及びハブやそれらを接続するLANケーブル及び光ファイバーケーブルなど)を介して監視装置31と接続されている。エリア監視コンピュータ33は、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコルに準拠した通信を用いて当該TCP/IPプロトコルの上位層に位置するアプリケーション層における独自のアプリケーションにより監視装置31とデータ(上記した撮像データを含む)を転送するネットワークを構築する。また、エリア監視コンピュータ33は、監視装置31が監視する複数の域内41をまとめた1つのエリアに対応して設けられている。
図2に示す例では、自動運転システム30は、居室21のリビングルーム23を1つのエリアとして設定したエリア監視コンピュータ33が接続されている。また、自動運転システム30は、食堂24と、通路25と、通路25の出入り口からエレベータホールまでを繋ぐホール27とを合わせた領域を1つのエリアとして設定したエリア監視コンピュータ33が接続されている。同様に、自動運転システム30は、居室21以外の場所、例えば渡り廊下13に設定されたエリアに対応するエリア監視コンピュータ33が接続されている。
【0013】
また、自動運転システム30は、エリアの各々に対応して設けられた複数のエリア監視コンピュータ33を統括制御する広域監視ネットワークシステム34を備える。エリア監視コンピュータ33及び広域監視ネットワークシステム34は、例えばコンピュータを主体として構成され、監視装置31が撮像した撮像データを保存するためのデータベースサーバや撮像データを閲覧するために外部からアクセス可能なウェブサーバなどを備える。広域監視ネットワークシステム34は、介護施設10内のすべてのエリア監視コンピュータ33と各種の通信機器などにより接続され、装置間で相互にデータを転送するネットワークを構築する。自動運転システム30は、例えば、エリア監視コンピュータ33が複数の監視装置31を管理するローカルエリアネットワークを構築するとともに、広域監視ネットワークシステム34が各ローカルエリアネットワークを接続する広域なネットワークを構築する。この広域なネットワークは、介護施設10内に限らず、大規模な施設の敷地の全域や一つの都市の全域に跨がるMAN(Metropolitan Area Network)やWAN(Wide Area Network)を構成してもよい。従って、自動運転システム30が適用される広域なネットワークは、介護施設10のみに限らず、市街地や都市を対象としたより広域なネットワークでもよい。一方で、サポートロボットRは、監視装置31と各種のデータを転送する無線通信を行う。この無線通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信や監視装置31をアクセスポイントとした無線LAN通信などでもよく、特に限定されない。そして、本実施形態の自動運転システム30は、広域監視ネットワークシステム34、エリア監視コンピュータ33及び監視装置31により、広域なネットワーク内を移動するサポートロボットRの自動運転を制御しサポートロボットRに補助される要介護者Hを所望の目的地まで安全に移動させるシステムである。
【0014】
(サポートロボットRについて)
次に、
図4を参照してサポートロボットRについて説明する。
図4に示す本実施形態のサポートロボットRは、制御部50が内蔵された本体部51の下端部に一対(
図4においては一方のみを図示)の駆動輪52が回転可能に軸支されている。サポートロボットRは、駆動輪52を回転させながら床の上を前後方向(
図4における左右方向)や左右方向(
図4における紙面直交方向)に移動可能に構成されている。本体部51は、駆動輪52が設けられた下端部から上方に向かって延設され、延設された上端部にアーム部53が回転可能に軸支されている。アーム部53は、本体部51に軸支された基端部から一方(
図4において上方)に向かって延設され、延設された先端部に保持部55が設けられている。保持部55は、アーム部53に連結された部分から1方向(
図4において後方)に向かってU字状に延設される一対の翼部が設けられ、各翼部を駆動させることでU字状の開口部分の大きさが変更可能に構成されている。保持部55には、サポートロボットRに補助された要介護者Hが手で握るための把持部56が左右両側に設けられている。また、保持部55には、要介護者Hに対する各種の情報の表示や要介護者HがサポートロボットRに対する操作を行うための操作パネル57が設けられている。また、サポートロボットRには、外部装置との通信が可能な通信部61が設けられ制御部50に接続されている。制御部50は、通信部61を制御して要介護者Hが操作するリモコンからの操作指示のデータ転送や監視装置31とのデータ転送を無線通信により処理する。なお、サポートロボットRは、要介護者Hの足が載置可能なフットボード59が設けられ、要介護者Hが歩行せずにフットボード59に搭乗した状態で移動することが可能となっている。また、サポートロボットRは、フットボード59の他に、要介護者Hの体の一部、例えば臀部を保持するヒップボードを備えてもよい。また、サポートロボットRは、周囲の安全や要介護者Hの位置などを確認するための図示しないカメラやセンサを備えている。このように構成されたサポートロボットRは、要介護者Hの起立動作、移動動作などを補助して介護施設10内を移動する。
【0015】
次に、サポートロボットRの動作の一例について説明する。
図2に示すように、例えばベッドに座った要介護者Hがリモコンを使って呼び出す操作を実行すると、サポートロボットRは、呼び出しに応じて要介護者Hの近くまで移動する。サポートロボットRの制御部50は、後方側のカメラ(図示略)の撮像データを処理して要介護者Hの位置、姿勢などを検出する。制御部50は、検出結果に基づいて要介護者Hの胴部に近接した位置に保持部55を移動させる。要介護者Hは、把持部56を握って保持部55に寄りかかった状態となる。要介護者Hが保持部55に寄りかかった状態で操作パネル57に対し起立を指示する操作を行うと、制御部50は、要介護者Hがベッドから立ち上がる動作の補助を開始する。制御部50は、例えば、予め設定された要介護者Hの身体データが記憶されており、身体データと要介護者Hの姿勢などに応じてU字状の保持部55を駆動し、保持部55により要介護者Hの胴部を前方と左右両方向との3方向から保持させる。制御部50は、アーム部53を駆動して
図4中に矢印で示すように保持部55に保持された要介護者Hが立ち上がる方向への動作を補助する。要介護者Hは、サポートロボットRに補助されたまま立ち上がった状態となる。
【0016】
サポートロボットRは、要介護者Hを補助した状態で介護施設10内を移動する。制御部50には、介護施設10内の様々な場所(ベッドやトイレなど)を出発地及び目的地とした走行ルート71(
図3参照)が記憶されている。制御部50は、要介護者Hが選択できるように目的地を操作パネル57に表示する。制御部50は、要介護者Hが選択した目的地に応じた走行ルート71を操作パネル57に表示する。また、サポートロボットRは、走行ルート71に従って目的地までの自動運転を開始する。要介護者Hは、操作パネル57の表示を確認しつつ、サポートロボットRに補助された状態で歩行を開始する。制御部50は、要介護者Hの体重移動や予め設定された身体データに基づく歩幅などに基づいて要介護者Hを補助しながらサポートロボットRを移動させる。例えば、サポートロボットRには、ジャイロセンサ等の各種センサが設けられており、制御部50が要介護者Hの体重移動の変化を検出する構成となっている。制御部50は、歩行する要介護者Hが転倒しないように検出結果に応じて保持部55及びアーム部53を駆動しながらサポートロボットRを移動させる。一方で、
図3に示すエリア監視コンピュータ33は、監視装置31を介してサポートロボットRから走行ルート71を受信する。エリア監視コンピュータ33は、走行ルート71の経路上に障害物などがあった場合に、走行ルート71を変更して要介護者Hを安全に目的地まで移動させる処理を行う。なお、サポートロボットRの制御部50は、予め走行ルート71のデータを保有せず、他の装置から走行ルート71を取得する構成でもよい。例えば、制御部50は、目的地のリストや地図情報のデータを保有し、その情報を操作パネル57に表示する。制御部50は、操作パネル57の表示に従って要介護者Hが選択した目的地までの走行ルート71を、エリア監視コンピュータ33に問い合わせて取得してもよい。このような制御部50では、出発地及び目的地ごとの走行ルート71のデータをメモリ等に記憶しておく必要がないため、制御部50に必要とされる記憶容量の削減を図ることが可能となる。また、サポートロボットRは、要介護者Hの操作に応じて移動する構成としてもよい。例えば、サポートロボットRは、要介護者Hが把持部56を前方あるいは後方に倒した操作量を検出し、その操作量に応じて駆動輪52の駆動源(モータなど)を駆動して前進あるいは後進する構成でもよい。この場合、要介護者Hは、操作パネル57の表示を確認しながらサポートロボットRの進行方向を操作することができる。また、サポートロボットRは、要介護者Hをフットボード59に搭乗させた状態で、走行ルート71を目的地まで自動運転する構成でもよい。
【0017】
(目的地のプリセット)
次に、制御部50に目的地ごとの走行ルート71を予め設定する処理について、
図5及び
図6を参照して説明する。サポートロボットRは、例えば、健常者が操作者となって予め要介護者Hの移動が予想される経路を走行した走行結果を走行ルート71として制御部50に記憶する構成となっている。以下の説明では、走行ルート71の一例として、
図5に示すようにベッドからトイレまでの走行ルート71を例に説明する。
図6は、サポートロボットRが走行ルート71を設定する処理を説明するためのフローチャートである。なお、
図6に示す処理手順は一例であり、適宜変更される。
【0018】
図6に示すステップS11(以下S11と略記し、他のステップについても同様とする)において、
図5に示す健常者H2は、サポートロボットRの操作パネル57を操作して予め走行ルート71を設定するためのモード(プリセットモード)を選択する。制御部50は、健常者H2によりプリセットモードが選択されると、選択後にサポートロボットRが移動した経路を記憶する処理を開始する。
【0019】
健常者H2は、操作パネル57の表示によってプリセットモードが設定されたことを確認すると、保持部55に保持された状態でサポートロボットRを操作しベッド(出発地)からトイレ(目的地)までの移動を開始する(S12)。この移動は、例えば、健常者H2がサポートロボットRを押して移動させてもよく、健常者H2がサポートロボットRの把持部56を動かして所望の経路を移動するように操作してもよい。制御部50は、サポートロボットRが移動するのにともなって、各監視装置31(
図2参照)と無線通信を実施して位置情報の取得を行う。エリア監視コンピュータ33は、監視装置31を介して制御部50からの問い合わせを受信すると、サポートロボットRに向けて位置情報を送信する(S13)。サポートロボットRは、制御部50が監視装置31からの位置情報を取得しながら移動する(S14)。このサポートロボットRの位置情報は、例えば、各所に任意に設置された監視装置31を無線LANのアクセスポイントとして、監視装置31が受信した信号(電波強度など)を用いてエリア監視コンピュータ33が位置を測定してサポートロボットRに送信してもよい。また、制御部50は、通信部61により受信したGPS(Global Positioning System)の電波を用いて位置情報を取得してもよい。また、エリア監視コンピュータ33は、屋外で受信したGPS電波を屋内の監視装置31からサポートロボットRに向けて送信してもよい。また、サポートロボットRの位置情報は、他の測位技術を用いてもよく、特に限定されない。また、監視装置31は、トイレやお風呂場などカメラの設置が困難な場所には無線アンテナのみを設置してもよく、あるいは位置情報が検出可能な各種センサ(距離センサなど)を監視装置31として設定してもよい。
【0020】
健常者H2は、目的地のトイレに到着すると、操作パネル57の表示により自身が移動したベッドからトイレまでの走行ルート71を確認し、走行ルート71が正しければ設定ボタンを操作する(S15)。制御部50は、健常者H2の操作に応じて出発地及び目的地を走行ルート71に関連付けて記憶する(S16)。このような予め走行ルート71を設定する方法では、健常者H2が要介護者Hの安全などを考慮した走行ルート71を設定することができる。例えば、健常者H2は、目的地までの最短ルートを走行ルート71として設定するのではなく、通路幅が広い道や段差が少ない道を選んでより安全なルートを走行ルート71として設定してもよい。また、健常者H2は、例えば、要介護者HがサポートロボットRからトイレに移乗する位置を目的地として設定することで、要介護者Hの行動に応じた最適な目的地(走行ルート71)が設定できる。なお、走行ルート71を設定する方法は、出発地及び目的地が含まれる域内41を結ぶ最短ルートを設定してもよい。また、走行ルート71を設定する方法は、実際に走行せずに、居室21の間取りやフロアーマップなどの地図データに基づいて設定してもよい。また、走行ルート71を設定する方法は、出発地と目的地とを一対一の関係で設定する方法に限定されない。例えば、制御部50は、
図2に示すベッドを出発地とし居室21の外の複数の目的地の各々に行くための走行ルート71に対し共通となるベッドから通路25の出入り口までの走行ルート71を共通データとしてもよい。また、制御部50は、複数の種類の走行ルート71を組み合わせて用いてもよい。また、自動運転システム30は、サポートロボットR以外の装置、例えば広域監視ネットワークシステム34やエリア監視コンピュータ33がデータベースサーバを用いて走行ルート71を管理する構成でもよい。
【0021】
(サポートロボットRの移動)
次に、上記した工程に従って設定した走行ルート71に基づいて移動するサポートロボットRに対して自動運転システム30が実施する処理について
図7及び
図8を参照して説明する。まず、
図7に示すS21において、要介護者Hは、例えばサポートロボットRによって補助されながらベッドから立ち上がり、ベッドからサポートロボットRに移乗する。次に、要介護者Hは、操作パネル57に表示された目的地から所望の場所、例えばトイレを目的地として選択する(S22)。サポートロボットRの制御部50は、選択された目的地に関連付けられた走行ルート71を監視装置31との無線通信を介してエリア監視コンピュータ33に転送する(S23,
図3参照)。エリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRから受信した走行ルート71を広域監視ネットワークシステム34に転送する。広域監視ネットワークシステム34は、走行ルート71に応じたエリア及びそのエリアに対応するエリア監視コンピュータ33を選択する(S25)。広域監視ネットワークシステム34は、選択されたエリア監視コンピュータ33のうち、サポートロボットRが存在するエリアのエリア監視コンピュータ33に対する制御を開始する(S26)。例えば、
図5に示すように1つのエリア(リビングルーム23)内の移動であれば、リビングルーム23に対応する1つのエリア監視コンピュータ33が選択され制御される。なお、複数のエリアを跨がった走行ルート71の移動については後述する。
【0022】
選択されたエリア監視コンピュータ33(この場合は
図5に示す1つのエリア監視コンピュータ33)は、監視装置31を介してサポートロボットRから移動を開始した旨の情報を受信する(S28)。エリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRが移動を開始した旨を広域監視ネットワークシステム34に通知するとともに、サポートロボットRに対する監視を開始する。エリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRが移動を開始すると当該エリア監視コンピュータ33に接続される監視装置31の各々に対し撮像データの処理を開始する制御を実行する。監視装置31の各々は、域内41をリアルタイムに撮影した撮影データから域内41の障害物を検出する(S31)。ここでいう障害物とは、例えば、テーブル、植物が植えられたプランターや落とし物などの動かない物体の他に、人や食事を運ぶワゴンなどの位置が動的に変化するものを含む。
【0023】
図9は、サポートロボットRが障害物43を回避して走行する走行ルート71を示している。監視装置31は、カメラが撮像した撮像データに対する画像処理、例えば、時間の経過に応じて変化する撮像データの差分を比較する画像処理を施して障害物43に係わる情報(障害物43の位置、移動速度、移動方向、移動する加速度及びサイズなどの情報のすべてあるいはその少なくとも一つの情報)を表す値を演算する。域内41の障害物43を検出した監視装置31は、障害物43に係わる情報を障害物情報72(
図3参照)としてエリア監視コンピュータ33に転送する。なお、監視装置31が障害物43を検出する処理は、その全部又は一部をエリア監視コンピュータ33や広域監視ネットワークシステム34が実施してもよい。例えば、自動運転システム30は、監視装置31が撮像した撮像データあるいは撮像データに補正などの前処理を施したデータをエリア監視コンピュータ33に転送し、エリア監視コンピュータ33が転送されたデータから障害物43を検出する処理を実行する構成としてもよい。
【0024】
また、
図7に示すS32において、エリア監視コンピュータ33は、エリアの各監視装置31が監視する域内41を移動するサポートロボットRの位置を補足する。例えば、監視装置31は、障害物43の検出処理と同様に、撮像データに対する画像処理によって移動中のサポートロボットRをリアルタイムに検出し、その位置をエリア監視コンピュータ33に転送する。あるいは、サポートロボットRが自身の位置情報をリアルタイムにエリア監視コンピュータ33に転送してもよい。あるいは、エリア監視コンピュータ33は、上記した2つの方法の結果を比較しより高精度に現在地を補足してもよく、他の方法を用いてサポートロボットRの位置を補足してもよい。
【0025】
次に、エリア監視コンピュータ33は、監視装置31から転送された障害物情報72に基づいて走行ルート71の経路上に障害物43が存在するか否かを判定する(
図8のS33)。エリア監視コンピュータ33は、経路上に障害物43が存在する場合(S33:NO)には、障害物43を回避するための障害物回避ルートを演算し、サポートロボットRに送信する(S35)。サポートロボットRは、エリア監視コンピュータ33から転送された障害物回避ルートに従って走行ルート71を変更する(S36)。
【0026】
図9に示すように、例えば、エリア監視コンピュータ33は、予め設定された走行ルート71を、障害物43を回避するためにどの方向にどの程度だけ変更する必要があるかを示すデータを障害物回避ルート74としてサポートロボットRに送信する。エリア監視コンピュータ33は、
図9における下方に向かって移動する距離を距離Lだけ延長する旨の障害物回避ルート74をサポートロボットRに対して指示する。サポートロボットRは、障害物回避ルート74に従って操作パネル57の表示を変更して走行ルート71を変更する。なお、障害物回避ルート74のデータ形式は特に限定されない。例えば、エリア監視コンピュータ33は、
図9に示すようにサポートロボットRが進行方向を変更する位置P1,P2と変更後の進行方向を示すデータ、例えば位置P1であれば
図9における右に向かって進行方向を変更するデータを障害物回避ルート74としてサポートロボットRに指示してもよい。また、エリア監視コンピュータ33は、障害物情報72、例えば障害物43の位置や大きさなどをマッピングした走行ルート71を障害物回避ルート74としてサポートロボットRに転送してもよい。この場合、サポートロボットRは、例えば操作パネル57の走行ルート71の表示を、エリア監視コンピュータ33から受信した障害物43がマッピングされたものに切り替えるとともに障害物回避ルート74に従って走行ルート71を変更する。これにより、要介護者Hは、操作パネル57の表示により障害物43の正確な位置などを予め認識し適切な対応をとることができる。また、サポートロボットRは、要介護者Hをフットボード59に搭乗させた状態で自動運転する場合には、障害物回避ルート74に従って自動的に走行ルート71を変更してもよい。
【0027】
また、S33の処理において、エリア監視コンピュータ33は、経路上に障害物43が存在しない場合(S33:YES)には、サポートロボットRが目的地に到着したか否かを判定する(S40)。エリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRが目的地に到着していない場合には(S40:NO)、S31からの処理を再度行う。従って、エリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRが目的地に到着するまでの間は、上記した処理(S31〜S40)を繰り返し実行する。サポートロボットRの制御部50は、例えば、位置情報と走行ルート71に基づいて目的地に到着したことを検出すると、その旨を要介護者Hに報知するとともにエリア監視コンピュータ33にも通知する。エリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRから通知された情報に基づいてサポートロボットRが目的地についた否かを判定する。エリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRが目的地に到着した場合には(S40:YES)、その旨を広域監視ネットワークシステム34に通知する。広域監視ネットワークシステム34は、サポートロボットRに対する処理を終了する。要介護者Hは、サポートロボットRが停止したことを確認すると、サポートロボットRからトイレに移乗する。この際、サポートロボットRは、アーム部53及び保持部55を駆動して要介護者Hがトイレに着席するのを補助する。なお、トイレからベッドへの移動は、上記した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0028】
(エリアを跨がった移動)
次に、複数のエリアを跨がった走行ルート71の移動について説明する。以下の説明では、自動運転システム30が実施する処理について、
図7,
図8に加えて
図10を参照して説明する。
図10は、
図8に対応する処理であり、サポートロボットRがエリアを通過する際に実施される処理である。
図10は、
図8と同様の処理については同一の符号を付している。また、サポートロボットRが目的地を含むエリアに入った場合には、
図10の処理に換えて上記した
図8に示す処理が実施されるものとする。また、
図7の処理についての説明は、上記した1つのエリア内の移動の場合と同様の処理については適宜省略する。
【0029】
また、走行ルート71の一例として、
図1に示す居住棟11Aの3Fの居室21から居住棟11Bの3Fの居室21までの走行ルート71について説明する。
図11は、居住棟11A,11Bに設定されたエリアを模式的に示したものである。
図11に示す正方形の四角は、1つのエリアを示している。居住棟11A(A棟)の3Fには、居室21のリビングルーム23(
図2参照)に対応したエリア81と、食堂24、通路25及びホール27に対応したエリア82が設定されている。また、居住棟11B(B棟)の3Fには、居住棟11Aと同様に、居室21のリビングルーム23に対応したエリア85と、食堂24、通路25及びホール27に対応したエリア84が設定されている。また、居住棟11A,11Bを繋ぐ、即ち、エリア82,84を繋ぐエリアには、渡り廊下13に対応したエリア83が設定されている。従って、
図11に示す例では、居住棟11Aの3Fの居室21から居住棟11Bの3Fの居室21までの間に、エリア81〜85がこの順に設定されている。同様に、居住棟11A,11Bは、2Fにもエリア86〜90が設定されている。また、各エリア81〜90内には、複数の域内41が設定されている(一部図示省略)。そして、要介護者H及びサポートロボットRは、居住棟11Aの3Fの居室21内の出発地P11から居住棟11Bの3Fの居室21内の目的地P12までの走行ルート71の移動を開始する。その際に、3Fの渡り廊下13、即ちエリア83に障害物43が検出された場合の処理を説明する。なお、
図11に示すエリア81〜90は、一例であり、エリアの形状やエリアの数などを適宜変更してもよく、各エリアの一部が重なるように設定されてもよい。
【0030】
まず、
図7に示すS21〜S23までの処理は、上記した説明と同様の処理が実行される。次に、S25において、広域監視ネットワークシステム34は、走行ルート71に応じたエリア監視コンピュータ33を選択する。走行ルート71は、居住棟11Aの3Fの居室21から居住棟11Bの3Fの居室21までを最短で結ぶルートが設定されている。広域監視ネットワークシステム34は、サポートロボットRから受信した走行ルート71に基づいてエリア81〜85(
図11参照)を選択する(S25)。広域監視ネットワークシステム34は、選択されたエリア81〜85に対応する複数のエリア監視コンピュータ33のうち、サポートロボットRが存在するエリア、この場合はエリア81を管理するエリア監視コンピュータ33に対する制御を開始する(S26)。
【0031】
エリア81のエリア監視コンピュータ33は、監視装置31を介してサポートロボットRから移動を開始した旨の情報を受信する(S28)。エリア81のエリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRが移動を開始した旨を広域監視ネットワークシステム34に通知するとともに、サポートロボットRに対する監視を開始する。一方で、広域監視ネットワークシステム34は、エリア81〜85のエリア監視コンピュータ33のうち、サポートロボットRが走行中のエリア81に隣接したエリアのエリア監視コンピュータ33を制御する。この隣接するエリアの設定範囲は、走行ルート71、迂回ルートが合流するエリアの位置やサポートロボットR(要介護者H)の移動速度などに応じて適宜設定される。例えば、広域監視ネットワークシステム34は、エリア82からエレベータ15,16を使用し2Fや1Fを通って居住棟11Bの3Fまで移動できる迂回ルートが合流するエリア84までのエリア82〜84を隣接するエリアとして設定する。広域監視ネットワークシステム34は、隣接するエリア82〜84のエリア監視コンピュータ33に対し、監視装置31により域内41の障害物を検出する制御を行う(S31)。また、エリア81のエリア監視コンピュータ33は、監視する域内41を移動するサポートロボットRの位置を補足する(S32)。
【0032】
次に、エリア81〜84のエリア監視コンピュータ33は、監視装置31から転送された障害物情報72に基づいて走行ルート71の経路上に障害物43が存在するかを判定する(
図10のS33)。
図11に示す例では、エリア83(
図1の3Fの渡り廊下13に設定されたエリア)には障害物43があるため、サポートロボットRが走行中のエリア81に対応するエリア監視コンピュータ33は、障害物43を回避するための障害物回避ルート74を演算し、サポートロボットRに送信する(
図10のS35)。
図3に示すように、各エリア監視コンピュータ33は、ネットワークを介して接続されており、相互に障害物情報72が転送可能に構成されている。例えば、広域監視ネットワークシステム34は、障害物43を検出した旨の報告をエリア83のエリア監視コンピュータ33から受信すると、当該エリア83のエリア監視コンピュータ33からエリア81のエリア監視コンピュータ33に向けて障害物情報72を転送させる制御を実施する。エリア81のエリア監視コンピュータ33は、自身が監視するエリア81及び隣接するエリア83の障害物情報72と走行ルート71とに基づいて、障害物回避ルート74を演算する。演算の結果、例えば、障害物回避ルート74は、
図1に示すようにエレベータ15,16を使用して2Fの渡り廊下13を通過するルートとなる。また、エリア81のエリア監視コンピュータ33は、演算した障害物回避ルート74を広域監視ネットワークシステム34に転送する。広域監視ネットワークシステム34は、障害物回避ルート74に該当するエリア、この場合は
図11に一点鎖線で示すエリア88(
図1の2Fの渡り廊下13に設定されたエリア)を通過する3つのエリア87〜89のエリア監視コンピュータ33に対する制御を開始する。広域監視ネットワークシステム34は、例えば、エリア87〜89のエリア監視コンピュータ33に変更後の走行ルート71を送信する制御を行う。なお、
図11の破線で示すエリア86,90は、変更後の走行ルート71においても広域監視ネットワークシステム34による制御が開始されないエリアであることを示している。また、広域監視ネットワークシステム34は、エリア監視コンピュータ33に代わって障害物回避ルート74を演算してもよい。例えば、広域監視ネットワークシステム34は、走行ルート71に応じて選択したエリア監視コンピュータ33から障害物情報72をリアルタイムに取得し、取得した障害物情報72に基づいて障害物回避ルート74を演算してもよい。
【0033】
サポートロボットRは、エリア監視コンピュータ33から転送された障害物回避ルート74に従って走行ルート71を変更する(
図10のS36)。次に、
図7に示すS31,S32の処理が再度実行される。この場合、広域監視ネットワークシステム34は、例えば、障害物情報72を取得する隣接するエリアを、エリア82〜84からエリア82,エリア87〜89に変更する。つまり、広域監視ネットワークシステム34は、走行ルート71の変更後にサポートロボットRが迂回するする2Fのルートのエリア87〜89のすべてのエリアを、障害物情報72を取得する監視対象のエリアとする。これにより、自動運転システム30は、例えば、サポートロボットRが2Fに向かう間にも障害物43の検出処理を繰り返し実行し、2Fの迂回ルートにも障害物43が検出された場合には、1Fを通るルートなどに再度走行ルート71を変更することが可能となる。
【0034】
図7のS31,S32の処理が実行され、変更後の走行ルート71の経路上に障害物43がない場合には(
図10のS33:YES)、サポートロボットRがエリア81を通過したか否かが判定される(S37)。この判定は、例えば、エリア81のエリア監視コンピュータ33が実行してもよく、広域監視ネットワークシステム34が実行してもよい。サポートロボットRがエリア81を通過していない場合には(S37:NO)、S31〜S37までの処理が繰り返し実行される。
【0035】
また、サポートロボットRがエリア81を通過した場合には(S37:YES)、次のエリアが目的地P12(
図11参照)をエリア内に含むか否かが判定される(S38)。この判定は、例えば広域監視ネットワークシステム34が実行する。広域監視ネットワークシステム34は、次のエリア(この場合、エリア82)が目的地P12のエリアでないため(S38:NO)、エリア82のエリア監視コンピュータ33を制御してサポートロボットRの補足などの処理を開始する(S39)。また、広域監視ネットワークシステム34は、サポートロボットRがエリア82内を移動し始めたのに応じて、隣接するエリアとして走行中のエリア82に応じたエリアを設定する。広域監視ネットワークシステム34は、例えば、障害物情報72を取得する隣接するエリアを、エリア82,エリア87〜89からエリア87〜89,エリア84に変更する。
【0036】
ここで、本実施形態の自動運転システム30は、監視装置31、エリア監視コンピュータ33、広域監視ネットワークシステム34の他に、居住棟11A,11Bに設けられた様々な装置が接続されており、サポートロボットRの移動を補助する構成となっている。詳述すると、
図2及び
図3に示すように、エリア監視コンピュータ33は、監視装置31の他に、エレベータ15,16、自動ドア36、照明37などの装置がネットワークを通じて制御可能に接続されている。なお、エレベータ15,16等の制御方法、例えば制御データの形式、データの通信方式、遠隔制御のためのアプリケーション、接続のためのネットワークの形態などは特に限定されない。
【0037】
例えば、エリア82のエリア監視コンピュータ33は、
図2に示す居室21内の通路25からホール27を通ってエレベータ15までサポートロボットRが移動するのにともなって、ホール27の天井に設けられた照明37を点灯又は消灯させる。また、エリア82のエリア監視コンピュータ33は、エレベータ15の制御装置(図示略)とネットワークを通じて接続されており、サポートロボットRの移動に合わせてエレベータ15を3Fまで移動させる。エリア82のエリア監視コンピュータ33は、エレベータ15内に設けられた監視装置31のカメラの撮像データにより要介護者H及びサポートロボットRが搭乗したことを検出すると、エレベータ15の扉を閉じ2Fまで移動させる制御を行う。そして、エリア82のエリア監視コンピュータ33は、エレベータ15が2Fに到着すると、要介護者H及びサポートロボットRがエレベータ15の外に移動するまで扉を開けた状態とする。上記したとおり、本実施形態の自動運転システム30は、サポートロボットRの移動に応じて居住棟11A,11Bに設けられた様々な装置を制御する構成となっており、要介護者Hの目的地までの移動をより安全に且つ確実に実行できる構成となっている。なお、エレベータ16は、エレベータ15と同様に、例えばエリア84のエリア監視コンピュータ33により、サポートロボットRの移動に合わせて制御される。また、エリア82のエリア監視コンピュータ33は、障害物43がない場合など、3Fの廊下13を通過する場合には、自動ドア36の開閉を制御する。また、エレベータ15に対する制御は、広域監視ネットワークシステム34がエリア監視コンピュータ33に代わって統括的に実行してもよい。
【0038】
そして、自動運転システム30は、サポートロボットRが目的地のエリア85内に入るまでは、上記した
図7及び
図10に示すS31〜S39の処理を繰り返し実行する。自動運転システム30は、サポートロボットRがエリア85に入った場合には(
図10のS38:YES)、
図7のS31からの処理を実行するとともに、
図10に代えて
図8に示すS33からの処理を実行する。即ち、自動運転システム30は、上記した1つのエリア内の移動の場合と同様の処理(
図7及び
図8におけるS31〜S40の処理)をサポートロボットRが目的地P12に到達するまで実行する。このようにして、自動運転システム30は、エリアを跨がったサポートロボットRに対する制御を実行し目的地P12まで自動運転させる。
【0039】
(屋外での移動)
次に、本実施形態の自動運転システム30を、屋外での自動運転の制御に適用した場合について説明する。以下の説明では、屋外での自動運転の一例として、要介護者H及びサポートロボットRがロボットカーCに搭乗した状態で移動する場合について説明する。
図1に示すように、介護施設10には、ロボットカーCが敷地に駐車されている。広域監視ネットワークシステム34は、例えば、居室21内の要介護者HがサポートロボットRの目的地から屋外の場所(例えば、
図12に示すコミュニティ施設100)を選択すると、居室21から居住棟11A,11Bの出入り口の外に出るまでのサポートロボットRの移動に加えて、居住棟11A,11Bの出入り口からロボットカーCまでの移動を補助する。ロボットカーCは、例えば、屋外に設けられた監視装置31との無線通信を通じてエリア監視コンピュータ33から遠隔操作が可能に構成されている。また、ロボットカーCは、要介護者HがサポートロボットRに補助された状態で搭乗することが可能に構成されている。ロボットカーCは、例えば、エリア監視コンピュータ33からの制御に基づいてバックドアを自動で開け車高を下げてスロープを作る構成とされている。エリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRの移動に応じてロボットカーCを制御してサポートロボットR及び要介護者HがロボットカーCに搭乗するのを補助する。要介護者Hは、ロボットカーCへの搭乗が完了すると、例えば、サポートロボットRをドライブモードに切り替える操作を操作パネル57に対して実行する。サポートロボットRは、要介護者Hの操作に応じて監視装置31との通信を、ロボットカーCを介して通信するように制御を切り替える。例えば、サポートロボットRは、ロボットカーCとBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により各種データの通信を行う。
【0040】
ロボットカーCは、要介護者H及びサポートロボットRが搭乗した状態で、例えば
図12に示す道路102を通って介護施設10からコミュニティ施設100まで移動する走行ルート71を自動運転する。道路102は、介護施設10の敷地内の私道でもよく、一般の自動車が走行可能な公道でもよい。道路102には、監視装置31により障害物43が監視される複数のエリア92が設定されている。広域監視ネットワークシステム34(
図3参照)は、道路102に設定されたエリア92のうち、介護施設10からコミュニティ施設100までの走行ルート71に必要なエリア92を選択し、選択したエリア92に対応するエリア監視コンピュータ33の制御を開始する。なお、このような移動が広域な場合に、広域監視ネットワークシステム34は、同様に構成された複数のシステムが相互に連携して動作する構成としてもよい。例えば、自動運転システム30は、介護施設10、道路102、コミュニティ施設100の各々を監視する広域監視ネットワークシステム34が設けられ、各広域監視ネットワークシステム34が相互に各種の情報(サポートロボットRの位置情報、障害物情報72や走行ルート71など)を転送する構成でもよい。
【0041】
図13は、道路102の交差点付近に設置された自動運転システム30の構成の一例を示している。
図13に示すように、エリア92のエリア監視コンピュータ33は、道路102の交差点などに設定された域内41(
図2参照)の障害物を監視するための複数の監視装置31が接続されている。ロボットカーCは、監視装置31を通じてエリア監視コンピュータ33との通信を行う。ロボットカーCと監視装置31との通信は、例えば、ITS(Intelligent Transport Systems)と呼ばれる道路交通システムの分野に用いられる狭域無線通信(DSRC:dedicated short range communication)や光ビーコンの他に、モバイル通信に用いられる3G、4Gなどの様々な通信方式を用いることができ、特に限定されない。監視装置31の各々は、域内41の障害物(通行人や車からの落下物など)をリアルタイムに検出し、障害物情報72としてエリア監視コンピュータ33に転送する。エリア監視コンピュータ33は、監視装置31が転送する障害物情報72と走行ルート71とに基づいて障害物回避ルート74を演算しロボットカーCに通知する。
【0042】
ロボットカーCは、エリア監視コンピュータ33からの障害物回避ルート74に従って走行ルート71を変更する。ロボットカーCは、例えば、障害物回避ルート74に基づいて曲がる交差点や走行する車線を変更する。ロボットカーCは、障害物回避ルート74に基づいて走行ルート71を変更しながら目的地まで自動運転を実行する。また、ロボットカーCは、車体の周辺の障害物を検出するための障害物センサ103が1又は複数個設けられている。ロボットカーCは、エリア監視コンピュータ33からの障害物回避ルート74に加えて、障害物センサ103により検出した車体の周辺に存在する障害物の情報に基づいて道路102上の障害物を回避して自動運転を実行する。このようにして、自動運転システム30は、屋外でのロボットカーCを用いた自動運転を制御する。
【0043】
また、自動運転システム30は、目的地であるコミュニティ施設100においてロボットカーCを自動で駐車させる制御を行う。自動運転システム30は、コミュニティ施設100の敷地内の駐車場(図示略)あるいはコミュニティ施設100の周辺の駐車場に監視装置31が設置されている。自動運転システム30は、ロボットカーCがコミュニティ施設100に近い場所の道路102に設定されたエリア92まで移動してくると、予め駐車スペースが空いている駐車場を検索する。例えば、監視するエリア内に駐車場を含むエリア監視コンピュータ33は、監視装置31の画像処理により駐車スペースの空き状況を検出し、ロボットカーCが走行中のエリア監視コンピュータ33に転送する。あるいは、エリア監視コンピュータ33は、駐車場の管理システムから駐車スペースの空き情報を取得してもよい。コミュニティ施設100に設けられたエリア監視コンピュータ33は、例えば、ロボットカーCがコミュニティ施設100のエントランスに到着すると、サポートロボットR及び要介護者Hの降車を補助する制御を行う。また、エリア監視コンピュータ33は、降車が完了すると無人のロボットカーCを制御し、駐車スペースが空いている駐車場に向けてロボットカーCを移動させる。駐車場を監視するエリア監視コンピュータ33は、ロボットカーCが到着すると、監視装置31によって駐車場内の他の車や通行人などの障害物を検出及び回避しながらロボットカーCを空いている駐車スペースに駐車させる。このようにして自動運転システム30は、ロボットカーCを自動で駐車させることが可能となっている。なお、自動運転システム30によるコミュニティ施設100内のサポートロボットRの制御は、出発地の介護施設10での制御と同様であるため、説明を省略する。また、自動運転システム30は、要介護者Hがコミュニティ施設100から帰る際に、要介護者Hのリモコン操作等に応じて駐車されているロボットカーCをコミュニティ施設100のエントランスまで移動させる制御を実施してもよい。また、自動運転システム30は、介護施設10でのロボットカーCの駐車やエントランスまでの移動の制御を、コミュニティ施設100と同様に、実施してもよい。
【0044】
以上、詳細に説明した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
<効果1>本実施形態の自動運転システム30は、要介護者Hを保持した状態で介護施設10内を自動運転するサポートロボットRを制御する。自動運転システム30は、介護施設10の居室21内などに設定された複数の域内41の各々に対応した監視装置31が設けられ、各監視装置31が域内41の障害物43を検出する。自動運転システム30のエリア監視コンピュータ33は、複数の域内41が設定された1つのエリアに対応して設けられ、複数の監視装置31の各々が検出した障害物43の位置などの障害物情報72を取得するとともに、広域監視ネットワークシステム34により統括的に制御される。エリア監視コンピュータ33は、障害物情報72からサポートロボットRが障害物43を回避するための障害物回避ルート74を演算しエリア内を走行するサポートロボットRに転送する。サポートロボットRは、障害物回避ルート74に従って走行ルート71を変更しながら障害物43を回避した自動運転を実行する。
【0045】
このような構成では、サポートロボットRの操作が困難な要介護者Hであっても、サポートロボットRが自動運転で目的地まで移動するため、介護者等の補助を受けずに所望の目的地まで移動することが可能となる。また、走行ルート71の経路上に障害物43があった場合に、障害物43を回避するためのルートを要介護者H自らが考えてサポートロボットRを操作する必要がない。また、要介護者Hが出発地点では確認できないような範囲の障害物43、例えば
図1に示すような3Fの渡り廊下13にある障害物43によって通行できない状況が発生した場合にもサポートロボットRが障害物回避ルート74に従って自動で判断して障害物43を回避した走行ルート71を移動する。従って、要介護者Hは、障害物43を回避するために来た経路を戻って迂回する、あるいは介護者などの補助を受けて障害物43を回避する必要がない。これにより、要介護者Hは、日常生活での移動を介護者等の補助を受けずに、サポートロボットRにより自由に移動することが可能となる。
【0046】
また、サポートロボットRは、外部の装置であるエリア監視コンピュータ33からの障害物回避ルート74に基づいて障害物43を回避することが可能となるため、サポートロボットR自体に障害物43を検知するための装置(障害物センサなど)を備えない構成とすることが可能となる。また、エリア監視コンピュータ33において障害物回避ルート74を演算するため、サポートロボットRは、障害物回避ルート74を演算するための複雑な処理を実行する必要がない。その結果、サポートロボットRの構造や機能の簡易化が可能となり、サポートロボットRの製造コストの削減を図ることが可能となる。
【0047】
また、介護施設10では、複数のサポートロボットRが同時に移動することが想定される。この場合に、複数のサポートロボットRは、広域監視ネットワークシステム34、エリア監視コンピュータ33及び監視装置31を共通のシステムとして利用することが可能となる。従って、本実施形態の自動運転システム30では、複数のサポートロボットRを制御するシステムを共通のシステムとすることによっても自動運転システム30全体の製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0048】
<効果2>監視装置31は、域内41をリアルタイムに撮影した撮影データに対して画像処理を実行して障害物43を検出し、検出した障害物43の位置、移動速度、移動方向、移動する加速度及びサイズのうち少なくとも一つの情報を演算し、演算結果を障害物情報72としてエリア監視コンピュータ33に転送する。このような構成では、障害物情報72として演算すべき情報を、監視装置31が設置される場所で検出が予想される障害物43の特性に応じて監視装置31に対して設定できる。また、エリア監視コンピュータ33は、複数のエリア81〜90(
図11参照)を跨がって移動する場合に、サポートロボットRが走行する予定の走行ルート71に応じたエリアの障害物情報72から障害物回避ルート74を演算しサポートロボットRに転送する。これにより、自動運転システム30は、走行ルート71に応じた適切な障害物回避ルート74をサポートロボットRに指示することが可能となる。
【0049】
<効果3>
図11に示す場合において、サポートロボットRが走行中のエリア81のエリア監視コンピュータ33は、自身が監視するエリア81及び隣接するエリア82〜84の障害物情報72と、サポートロボットRの目的地までの走行ルート71とに基づいて、障害物回避ルート74を演算する。この隣接するエリアの設定範囲は、走行ルート71、迂回ルートが合流するエリアの位置やサポートロボットR(要介護者H)の移動速度などに応じて設定される。これにより、エリア81のエリア監視コンピュータ33は、サポートロボットRの通過が予想されるエリア82〜84の障害物43を予め検出し、その検出した障害物43を回避する障害物回避ルート74を演算することが可能となる。
【0050】
<効果4>エリア監視コンピュータ33は、例えば障害物情報72(障害物43の位置など)を走行ルート71にマッピングした障害物回避ルート74をサポートロボットRに転送する。サポートロボットRは、エリア監視コンピュータ33から受信した障害物回避ルート74に基づいた走行ルート71を操作パネル57に表示する。これにより、要介護者Hは、操作パネル57の表示により障害物43の正確な位置などを予め認識し適切な対応をとることが可能となる。
【0051】
<効果5>エリア監視コンピュータ33は、監視装置31の他に、エレベータ15,16がネットワークを通じて制御可能に接続されている(
図2及び
図3参照)。例えば、エリア82のエリア監視コンピュータ33は、エレベータ15の制御装置とネットワークを通じて接続されており、サポートロボットRの移動に合わせてエレベータ15を制御する。このような構成では、要介護者Hは、走行ルート71の経路上に設けられたエレベータ15,16などの搬送装置を操作することなく移動することが可能となる。
【0052】
<効果6>広域監視ネットワークシステム34は、サポートロボットRがエリア81を通過したか否かを判定し(
図10のS37)、次のエリア82のエリア監視コンピュータ33を制御してサポートロボットRの補足などの処理を開始する(S39)。また、広域監視ネットワークシステム34は、障害物情報72を取得する隣接するエリアを、走行中のエリア82に応じてエリア82〜89からエリア87〜89,エリア84に変更する。即ち、広域監視ネットワークシステム34は、サポートロボットRが走行中のエリアに応じたエリア監視コンピュータ33を制御する。これにより、自動運転システム30は、サポートロボットRが走行するエリアに応じたエリア監視コンピュータ33のみに障害物情報72などの処理を実行させることによってシステム全体の処理負荷の軽減を図ることが可能となる。
【0053】
<効果7>本実施形態のサポートロボットRは、エリア監視コンピュータ33が障害物情報72に基づいて演算した障害物回避ルート74に従って障害物43を回避した自動運転を実行することによって、要介護者Hを安全かつ適切に目的地まで移動させることが可能となる。
【0054】
<効果8>サポートロボットRは、U字状の保持部55により要介護者Hの胴部を前方と左右両方向との3方向から保持することで、要介護者Hをより安全に保持した状態で自動運転が可能となっている。
【0055】
<効果9>目的地のプリセットの処理において、健常者H2は、目的地に到着すると、操作パネル57の表示により自身が移動した走行ルート71を確認し設定ボタンを操作する(
図6のS15)。サポートロボットRの制御部50は、出発地及び目的地を走行ルート71に関連付けて記憶する。また、要介護者Hを保持した状態での移動において、サポートロボットRは、要介護者Hが操作パネル57で選択した目的地の走行ルート71と障害物回避ルート74とに基づいて自動運転を実行する。このような構成では、健常者H2が要介護者Hの安全などを考慮した走行ルート71を予め設定することができる。また、サポートロボットRは、健常者H2が設定した走行ルート71に基づいて移動しつつ、障害物43を回避した自動運転を実行することで要介護者Hを安全に目的地まで移動させることが可能となる。
【0056】
<効果10>ロボットカーCは、車体の周辺の障害物を検出するための障害物センサ103が設けられている(
図13参照)。ロボットカーCは、エリア監視コンピュータ33からの障害物回避ルート74に加えて、障害物センサ103により検出した車体の周辺に存在する障害物の情報に基づいて道路102上の障害物を回避して自動運転を実行する。これにより、ロボットカーCは、要介護者Hを安全に目的地まで移動させることが可能となる。
【0057】
ここで、サポートロボットR及びロボットカーCは、自動走行機の一例である。エレベータ15,16は、搬送装置の一例である。障害物回避ルート74は、障害物情報及び障害物情報に基づいて演算される障害物回避ルートの一例である。サポートロボットRを操作する健常者H2は、操作者の一例である。
【0058】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態において、エリア監視コンピュータ33は、障害物回避ルート74を演算せずに、障害物情報72をサポートロボットRに転送してもよい。この場合、サポートロボットRは、転送される障害物情報72に基づいて障害物回避ルート74を演算することが好ましい。
また、監視装置31は、サポートロボットRを補足する専用のカメラを搭載する必要はなく、防犯カメラ等の他の用途のカメラを兼用する構成でもよい。
【0059】
また、サポートロボットR及びロボットカーCは、自動運転システム30からの制御を受けずに、当該サポートロボットR及びロボットカーCが備える障害物センサ103などが検出する情報に基づいて走行ルート71を自動運転する構成としてもよい。
また、自動運転システム30は、複数のサポートロボットR及びロボットカーCを制御する構成でもよい。
【0060】
また、本願における要介護者Hは、歩行機能に恒久的な障害のある者に限定されず、例えば、リハビリによって回復する一時的に歩行機能が低下した者も含む。例えば、自動運転システム30は、要介護者Hの目的地までの移動に限らず、要介護者Hのリハビリのための運動を補助するサポートロボットRの自動運転を制御してもよい。
また、本願における自動走行機は、サポートロボットRやロボットカーCに限定されず、例えば製造工場内で部品を補給する作業用ロボットでもよい。この場合、自動運転システム30は、例えば製造工場内の作業用ロボットを制御し障害物を回避させて自動運転させてもよい。
また、本願における搬送装置は、エレベータ15,16に限定されず、サポートロボットRやロボットカーCなどを搬送可能な他の搬送装置でもよい。
【0061】
次に、上記実施形態の内容から導き出される技術的思想について記載する。
(イ)要介護者を保持した状態で走行するサポートロボットであって、
前記要介護者を保持する保持部と、
前記保持部により前記要介護者を保持した状態の当該サポートロボットを移動させる駆動輪と、
前記要介護者に対して目的地を選択可能に表示する操作パネルと、
前記操作パネルにより前記要介護者が選択した目的地に関連付けられた走行ルートに基づいて前記駆動輪を駆動制御して目的地まで自動運転させる制御部と、
を備えることを特徴とするサポートロボット。
【0062】
このような構成では、サポートロボットの操作が困難な要介護者であっても、サポートロボットが自動運転で目的地まで移動するため、介護者等の補助を受けずに所望の目的地まで移動することが可能となる。