特許第6337004号(P6337004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティドの特許一覧

特許6337004自動車の衝突シミュレーション用の試験設備
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337004
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】自動車の衝突シミュレーション用の試験設備
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/08 20060101AFI20180528BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   G01M7/08 A
   G01M17/007 Z
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-547430(P2015-547430)
(86)(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公表番号】特表2015-537230(P2015-537230A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013073498
(87)【国際公開番号】WO2014093149
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】102012223194.3
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル デリーウ
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング ブレントル
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ ケルン
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−521564(JP,A)
【文献】 独国特許発明第102005010189(DE,B3)
【文献】 独国特許出願公開第102007056572(DE,A1)
【文献】 特開2007−205922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00− 7/08
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の衝突シミュレーション用の試験設備(1)であって、
長手方向の軸線(A)に沿って実質的に水平に移動可能である第1のキャリッジ(11)と、
前記長手方向の軸線(A)に沿って前記第1のキャリッジ(11)と一緒に移動可能である第2のキャリッジ(12)であって、該第2のキャリッジ(12)が前記第1のキャリッジ(11)に対して移動可能であるように関節式に前記第1のキャリッジ(11)に連結されている第2のキャリッジ(12)と、
少なくとも1つの第1の駆動部材(13)であって、前記第1のキャリッジ(11)の前記長手方向の軸線(A)に沿って前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)を加速させる少なくとも1つの第1の駆動部材(13)と、
少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)であって、前記第1のキャリッジ(11)に対して実質的に上下方向に前記第2のキャリッジ(12)を加速させる少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)とを備え、
該試験設備(1)は、前記長手方向の軸線(A)に対して実質的に垂直な水平方向に前記第2のキャリッジ(12)を加速させるとともに、前記少なくとも1つの第2の駆動部材とは独立に制御される少なくとも1つの第3の駆動部材(15a、15b、15c、15d)を有することを特徴とする試験設備。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)は、該少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)を駆動させることによって前記第2のキャリッジ(12)が前記長手方向の軸線(A)に対して垂直な横軸を中心に回動可能であるように前記第2のキャリッジ(12)に連結される請求項1に記載の試験設備。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第3の駆動部材(15a、15b、15c、15d)は、該少なくとも1つの第3の駆動部材(15a、15b、15c、15d)を駆動させることによって前記第2のキャリッジ(12)が該第2のキャリッジ(12)の上下軸を中心に回動可能であるように該第2のキャリッジ(12)に連結される請求項に記載の試験設備。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)は、該少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)の位置にとどまるように前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)の隣に配置されるのに対し、前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)は、前記少なくとも1つの第1の駆動部材(13)によって前記長手方向の軸線(A)に沿って加速される請求項に記載の試験設備。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第3の駆動部材(15a、15b、15c、15d)は、該少なくとも1つの第3の駆動部材(15a、15b、15c、15d)の位置にとどまるように前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)の隣に配置されるのに対し、前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)は、前記少なくとも1つの第1の駆動部材(13)によって前記長手方向の軸線(A)に沿って加速される請求項に記載の試験設備。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)及び前記少なくとも1つの第3の駆動部材(15a、15b、15c、15d)は、少なくとも1つのガイドレール(16a、16b、16c、16d)を介して前記第2のキャリッジ(12)に連結され、前記少なくとも1つのガイドレール(16a、16b、16c、16d)は、前記第1のキャリッジ(11)の前記長手方向の軸線(A)に対して実質的に平行に延びる請求項に記載の試験設備。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)は、前記少なくとも1つのガイドレール(16a、16b、16c、16d)に連結され、前記第1のキャリッジ(11)に対して実質的に上下方向に前記少なくとも1つのガイドレール(16a、16b、16c、16d)を加速させるように構成されている請求項6に記載の試験設備。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第3の駆動部材15a、15b、15c、15d)は、前記少なくとも1つのガイドレール(16a、16b、16c、16d)に連結され、前記長手方向の軸線(A)に対して実質的に垂直な水平方向に前記少なくとも1つのガイドレール(16a、16b、16c、16d)を加速させるように構成されている請求項7に記載の試験設備。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の駆動部材(13)、前記少なくとも1つの第2の駆動部材(14a、14b、14c、14d)及び前記少なくとも1つの第3の駆動部材(15a、15b、15c、15d)はそれぞれ、少なくとも1つの油圧駆動シリンダー、空気圧駆動シリンダー又は電動シリンダーを有する請求項に記載の試験設備。
【請求項10】
前記第2のキャリッジ(12)は、プッシュロッド(18)を介して関節式に前記第1のキャリッジ(11)に連結され、前記プッシュロッドは、前記長手方向の軸線(A)に沿って前記第1のキャリッジ(11)から前記第2のキャリッジ(12)に前記第1の駆動部材(13)の加速度を伝達する請求項に記載の試験設備。
【請求項11】
前記プッシュロッド(18)は、前記第1の駆動部材(13)の加速度が前記第1のキャリッジ(11)から前記第2のキャリッジ(12)に伝達可能であるように各場合に関節構成部(181、182)を介して前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)に連結され、一方、前記第2のキャリッジ(12)は、前記第1のキャリッジ(11)に対して実質的に自由に移動可能である請求項10に記載の試験設備。
【請求項12】
前記プッシュロッド(18)及び/又は前記第2のキャリッジ(12)は、前記衝突シミュレーションの終了後、前記第1のキャリッジ(11)に対する前記第2のキャリッジ(12)の上下移動又は左右移動を減速させるブレーキ装置に連結される請求項10に記載の試験設備。
【請求項13】
該試験設備(1)は、前記衝突シミュレーションの終了後に前記第2のキャリッジ(12)の移動を制動する第3のキャリッジも有し、該第3のキャリッジは、前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)に対して、前記衝突シミュレーションの開始時は前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)に連結されず、前記衝突シミュレーションの終了時にのみ前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)に動作可能に連結される請求項に記載の試験設備。
【請求項14】
前記第3のキャリッジは、前記衝突シミュレーションの終了後に前記第1のキャリッジ及び/又は前記第2のキャリッジ(12)を開始位置に移すように構成されている請求項13に記載の試験設備。
【請求項15】
前記第1のキャリッジ(11)及び前記第2のキャリッジ(12)は主としてアルミニウムにより製造される請求項に記載の試験設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の衝突シミュレーション用の試験設備に関する。これは、特に3つの空間方向全てにおける移動シミュレーションを可能にする自動車衝突シミュレーション用の試験設備である。
【背景技術】
【0002】
従来技術から既知の自動車衝突シミュレーション用の試験設備は、特許文献1に見ることができる。まさに本発明に係る試験設備の場合のように、特許文献1から既知の試験装置は、「逆衝突試験機」と呼ばれるものを用いる、すなわち、自動車の実際の衝突において生じる減速を試験アセンブリの逆方向の加速度に変換する。これにより、車両の安全性を高める必要がある衝突シミュレーションにおいて、各場合に完成車が破壊される必要がなくなる。具体的には、車体(試験アセンブリ)をキャリッジに取り付け、上記車体を自動車の実際の衝突において生じる減速に対応する逆方向の加速度で長手方向に移動させる。ここで生じる力は、実際の事故において生じる力に可能な限り最大程度相当する。
【0003】
可能な限り現実的な事故状況のシミュレーションを達成するために、従来技術では、試験設備の、長手方向の制御された加速度に、上下方向の加速度を重ね合わせることが既に提案されてきている。キャリッジ構成部に上下方向の加速度を加えることで、自動車の横軸の回りの回転運動を再現することができることから、現実の後面衝突のシミュレーションが改善される。上述の回転軸の回りの回転の場合に生じる角度は、ピッチ角として従来技術に記載されている。特許文献1から分かるように、既知の試験設備は多くの場合、互いに重なるように配置されている第1のキャリッジ及び第2のキャリッジを備え、これらのキャリッジは互いに関節式に連結されている。ここでは、第2のキャリッジには通常、試験アセンブリ、すなわち、試験される車体が設置される。
【0004】
従来の試験設備では、長手方向の加速度に加え、車両のピッチ角のシミュレーションのために上下方向の加速度を提供しつつも、例えばヨーイング(上下軸の回りの試験アセンブリの回転)等の他の運動プロファイルを考慮しないことが問題であるとみなされている。自動車のそのようなヨーイングは、自動車が障害物に完全に正面衝突しない事故状況において特に生じる。そのため、障害物との実際の衝突におけるヨーイング運動と、その結果として生じる、運転者にかかる力とが、従来技術から既知の試験設備では検出されず、このため、従来の試験設備は、実際の衝突において生じるあらゆる力をシミュレートするのに常時用いることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第102005010189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した課題に基づき、本発明は、現実の場合に起こる事故による力の改善されたシミュレーションを可能にする、自動車の衝突シミュレーション用の試験設備を提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、独立特許請求項1の特徴部によって達成される。
【0008】
したがって、本発明に係る試験設備は、長手方向の軸線に対して実質的に垂直な水平方向に第2のキャリッジを加速させるように構成されている少なくとも1つの第3の駆動部材を有する。
【0009】
本発明に係る試験設備は、多数の利点を有する。したがって、第3の駆動部材の結果として、長手方向への加速度に加え、ピッチ運動を車両に加えることができるだけでなく、ヨー運動もシミュレートすることができる。このため、第3の駆動部材によって試験アセンブリに力成分が長手方向の軸線に対して水平及び垂直にもたらされる。したがって、試験アセンブリに対する少なくとも第3の駆動部材の配置に応じて、広範囲の車両運動学をシミュレートすることができる。したがって、ヨー運動のほか、別の道路利用者との側面衝突によって引き起こされる可能性があるようなサイドインパクトが考えられる。換言すれば、本発明に係る試験設備により、試験設備の長手方向又は上下方向への移動をシミュレートすることができるだけでなく、左右移動、すなわち、長手方向の軸線に対して垂直な水平方向への移動を模すこともできる。上記で既に示したように、より一層現実的なシミュレーションをこのようにして行うことができる。
【0010】
本発明に係る試験設備の有利な改良は、従属特許請求項から察することができる。
【0011】
したがって、本発明に係る試験設備の第1の改良では、少なくとも1つの第2の駆動部材が、第2の駆動部材を駆動させることによって第2のキャリッジが長手方向の軸線に対して垂直な横軸を中心に回動可能であるように第2のキャリッジに連結されるものとなっている。このため、少なくとも1つの第2の駆動部材を、例えば、第2のキャリッジの前端領域又は後端領域に配置することができ、そのため、第2の駆動部材を駆動させた場合、上記キャリッジが前方又は後方に傾き、結果として、長手方向の軸線に対して垂直な横軸の回りでピッチ運動、すなわち回転運動が行われる。後でより詳細に説明するように、特に、このため、試験設備は、第2のキャリッジが種々の水平軸を中心に回動可能であるように第2のキャリッジに種々の位置において連結される複数の第2の駆動部材を有するものとすることができる。
【0012】
同様にして、さらに、少なくとも1つの第3の駆動部材は、少なくとも1つの第3の駆動部材を駆動させることによって第2のキャリッジが第2のキャリッジの上下軸を中心に回動可能であるように第2のキャリッジに連結されるものとすることができる。したがって、サイドインパクトのほか、少なくとも1つの第3の駆動部材のため、特に簡単に衝突状況の上述したヨー運動をシミュレートすることも可能である。したがって、第2のキャリッジに対する少なくとも1つの第3の駆動部材の配置に応じて、種々の回転運動を試験アセンブリに加えることができる。
【0013】
本発明に係る試験設備の更なる実現によれば、少なくとも1つの第2の駆動部材は、その少なくとも1つの第2の駆動部材の位置にとどまるように第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの隣に配置されるのに対し、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジは、少なくとも1つの第1の駆動部材によって長手方向の軸線に沿って加速される。換言すれば、少なくとも1つの第2の駆動部材は実際、試験設備の第1のキャリッジ又は第2のキャリッジ上に位置しているのではなく2つのキャリッジの隣に静止していることが好ましい。このようにして、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジのキャリッジ構成部の重量が著しく減り、その結果、より一層高い加速度値を達成することができる。したがって、より高い力を伴う、事故による状況もまた、本発明に係る試験設備によってシミュレートすることができる。さらに、シミュレーション中の試験設備にかかる応力は、キャリッジ重量が減るために低減する。この理由は特に、キャリッジがより軽い場合、システムにかけられる力がより低いことにある。
【0014】
第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの隣の少なくとも1つの第2の駆動部材の上述した配置に対して代替的に又は付加的に、本発明によれば、少なくとも1つの第3の駆動部材は、その少なくとも1つの第3の駆動部材の位置にとどまるように第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの隣に配置されるのに対し、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジは少なくとも1つの第1の駆動部材によって長手方向の軸線に沿って加速されるものとすることもできる。当然のことながら、これにより、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジのキャリッジ構成部の重量が減り、その結果、上述した利点が達成される。ここでは、少なくとも1つの第2の駆動部材及び少なくとも1つの第3の駆動部材を第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの隣に配置することが特に好ましく、そのため、キャリッジ構成部の最大の減量を達成することができる。それにもかかわらず、単に少なくとも1つの第2の駆動部材又は第3の駆動部材だけが第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの隣に配置され、一方で、少なくとも1つの第3の駆動部材又は第2の駆動部材が第1のキャリッジ又は第2のキャリッジに配置されることも考えられる。
【0015】
本発明に係る試験設備の更なる一態様によれば、少なくとも1つの第2の駆動部材及び少なくとも1つの第3の駆動部材は、少なくとも1つのガイドレールを介して第2のキャリッジに連結される。少なくとも1つのガイドレールはここでは、第1のキャリッジの長手方向の軸線に対して実質的に平行に延びている。このようにして、少なくとも1つの第2の駆動部材の加速力及び第3の駆動部材の加速力が、少なくとも1つのガイドレールを介して試験設備の第2のキャリッジに伝達される。したがって、上下方向の加速度及び左右方向の加速度を、長手方向へのキャリッジの移動を妥協することなくキャリッジ構成部にもたらすことができる。さらに、ガイドレールにより、キャリッジ構成部を試験アセンブリと併せて、衝突シミュレーションの時点ごとに制御式にガイドすることができる。したがって、試験設備の不測の移動を防ぐことができ、その結果、作業員の安全性が著しく高まる。
【0016】
更なる一実施態様によれば、特に、少なくとも1つの第2の駆動部材は、少なくとも1つのガイドレールに連結されるとともに、第1のキャリッジに対して実質的に上下方向に少なくとも1つのガイドレールを加速させるように構成されているものとすることができる。したがって、少なくとも1つの第2の駆動部材の上下方向の加速力が、少なくとも1つのガイドレールを介して試験設備の第2のキャリッジに加えられる。そのため、第2のキャリッジに対するガイドレールの配置に応じて、第1のキャリッジに対して第2のキャリッジのピッチ運動を生じさせることが特に単純なやり方で可能である。上下方向の加速力を特に迅速に加えることを可能にするために、例えば、複数のガイドレール(例えば2つ)が第2のキャリッジの各側に配置され、複数のガイドレールはそれぞれ、第2のキャリッジの上下方向の撓みを相互に独立して達成することができるように第2の駆動部材に連結される。
【0017】
これと同様にして、少なくとも1つの第3の駆動部材もまた、少なくとも1つのガイドレールに連結され、長手方向の軸線に対して実質的に垂直な水平方向に少なくとも1つのガイドレールを加速させるように構成することができる。当然のことながら、ここでは、既に上述したヨー運動を起こすために複数の駆動部材が対応数のガイドレールに連結されることも考えられる。
【0018】
上述した例示的な実施形態によれば、第2の駆動部材及び第3の駆動部材は、各場合にガイドレールを介して第2のキャリッジに対して連結することができる。このため、例えば、第2の駆動部材及び第3の駆動部材が各場合に互いとは独立してガイドレールに直接連結されることが考えられる。これに対して代替的に、少なくとも1つの第2の駆動部材だけがガイドレールに連結され、一方、少なくとも1つの第3の駆動部材が、少なくとも1つの第2の駆動部材に直接作用し、したがって、少なくとも1つの第2の駆動部材を介してガイドレールに間接的に連結されることも考えられる。これと同様にして、当然のことながら、第3の駆動部材が少なくとも1つのガイドレールに直接連結され、一方、少なくとも1つの第2の駆動部材が少なくとも1つの第3の駆動部材を介して少なくとも1つのガイドレールに間接的に連結されることも考えられる。
【0019】
少なくとも1つの第1の駆動部材、少なくとも1つの第2の駆動部材及び少なくとも1つの第3の駆動部材はそれぞれ、少なくとも1つの油圧駆動シリンダー、空気圧駆動シリンダー又は電動シリンダーを有することが好ましい。このようにして、所望の加速力を試験設備において容易に生じさせることができる。当然のことながら、本発明に係る試験設備のキャリッジ構成部に加速力を加えるのに任意の他の適した動作原理を用いることも可能である。
【0020】
本発明に係る試験設備の更なる一実施形態によれば、第2のキャリッジがプッシュロッドを介して関節式に第1のキャリッジに連結され、その場合、プッシュロッドは、長手方向の軸線に沿って第1のキャリッジから第2のキャリッジに第1の駆動部材の加速力を伝達するように構成されている。プッシュロッドはここでは、各場合にボールジョイント又はユニバーサルジョイントを介して第1のキャリッジ又は第2のキャリッジに連結することができ、そのため、第1の駆動部材の加速度を第1のキャリッジから第2のキャリッジに伝達することができ、一方、第2のキャリッジは第1のキャリッジに対して実質的に自由に移動可能である。換言すれば、第1のキャリッジに対して第2のキャリッジを移動させるために、第2の駆動部材の加速力及び第3の駆動部材の加速力をキャリッジ構成部の長手方向移動とは独立して第2のキャリッジに加えることができる。具体的には、第2のキャリッジはその結果、長手方向への移動時に上下方向又は左右方向(すなわち長手方向に対して垂直)に加速を受けることができる。当然のことながら、第2のキャリッジはここでは、プッシュロッドによって第1のキャリッジにいつでも連結され、したがって、いかなる不測の移動も行われる可能性はない。
【0021】
これに関して、プッシュロッド及び/又は第2のキャリッジは、衝突シミュレーションの終了後に第1のキャリッジに対する第2のキャリッジの長手方向又は左右方向の移動を減速させるブレーキ装置に連結することができることに更に言及しておく。その結果、本発明に係る試験設備の安全性が更に向上する。さらに、ブレーキ装置のため、第1のキャリッジに対して第2のキャリッジがその開始位置に戻ることも実現することができる。
【0022】
本発明に係る試験設備の更なる一態様によれば、衝突シミュレーションの終了後に第2のキャリッジの移動を制動するように構成されている第3のキャリッジを更に設けることができる。第3のキャリッジはここでは、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジに対して、衝突シミュレーションの開始時は第1のキャリッジ及び第2のキャリッジに連結されず、衝突シミュレーションの終了時にのみ第1のキャリッジ及び第2のキャリッジに動作可能に連結されるように構成されている。換言すれば、第3のキャリッジは、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジのキャリッジ構成部の背後に長手方向に位置することができる。例えば、第3のキャリッジはここでは、第1のキャリッジと同じキャリッジ構成部に配置されており、初めは第1のキャリッジ及び第2のキャリッジのキャリッジ構成部から或る距離のところにある。衝突シミュレーションが行われた後、すなわち、長手方向への加速が終了した後でのみ、第3のキャリッジが、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの2つを制動するために、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジに動作可能に連結される。
【0023】
さらに、第3のキャリッジは、衝突シミュレーションの終了後に第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの2つをその開始位置に移すように構成されているものとすることができる。したがって、第3のキャリッジを用いて、衝突シミュレーションの終了後に第1のキャリッジ及び第2のキャリッジのキャリッジ構成部を制動することができるだけでなく、第3のキャリッジによって試験設備を戻すことも考えられる。
【0024】
第1のキャリッジ及び第2のキャリッジのキャリッジ構成部の重量を更に一層減らすために、別の実施態様によれば、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジは主としてアルミニウムにより製造されるものとなっている。これにより、より高い加速度値が達成され、試験設備における荷重が効果的に減る。
【0025】
図の以下の詳細な説明では、自動車の衝突シミュレーション用の本発明に係る試験設備が、図に示されている実施形態によってより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】開始位置における、本発明に係る試験設備の第1の実施形態の斜視図である。
図1b図1aに示されている本発明に係る試験設備の実施形態の平面図である。
図1c図1aに示されている本発明に係る試験設備の実施形態の側面図である。
図1d図1aに示されている本発明に係る試験設備の実施形態の背面図である。
図2a】衝突シミュレーションの50パーセント完了後の、図1aに係る実施形態の斜視図である。
図2b図2aに示されている図の平面図である。
図3a】衝突シミュレーションの終了時の、図1aに係る実施形態の斜視図である。
図3b図3aに示されている図の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図の以下の詳細な記載において、明確さの理由から、同一の部品又は動作上同一の部品には同一の参照符号が付されている。
【0028】
本発明に撚る自動車の衝突シミュレーション用試験設備の特定の実施形態を図1a〜図3bに示す。具体的には、試験設備は、図1a〜図3bでは、その開始位置で示されている、すなわち、衝突シミュレーションの開始前である。既に上述したように、試験設備は、長手方向の軸線Aに沿って実質的に水平に移動可能である第1のキャリッジ11を有する。第1のキャリッジ11はここでは、第1のキャリッジ11の下側に位置しているレール部材111、112によって長手方向の軸線Aの方向にガイドされることが好ましい。当然のことながら、第1のキャリッジ11は、2つのレール部材111、112によってガイドされる必要はなく、むしろ、任意の他のガイドによって、例えば長手方向の軸線Aに沿って磁気ガイドの上を浮揚状態で、キャリッジを移動させることも考えられる。
【0029】
第2のキャリッジ12が、第1のキャリッジに対して移動可能であるように関節式に第1のキャリッジ11に取り付けられている。ここでは、第2のキャリッジ12は特に、長手方向の軸線Aに沿って第1のキャリッジ11と一緒に移動可能である。換言すれば、第2のキャリッジ12が、長手方向の軸線Aに沿っての第1のキャリッジ11の動きを第2のキャリッジ12に伝達させることができるように第1のキャリッジ11に連結されると同時に、第1のキャリッジ11に対する第2のキャリッジ12の、可能な限り自由な動きが可能になる。図1b、1dにより、第1のキャリッジ11と第2のキャリッジ12との間の上述の連結は、各場合に1つの関節構成部(例えばボールジョイント又はユニバーサルジョイント)181、182を介して第1のキャリッジ11又は第2のキャリッジ12に連結されるプッシュロッド18によって達成されることが好ましいことが極容に理解されよう。
【0030】
長手方向の軸線Aに沿っての第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12の移動を可能にするために、長手方向の軸線Aに沿って第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12を加速させるように構成されている少なくとも1つの第1の駆動部材13が、本発明に係る試験設備上に設けられている。少なくとも1つの第1の駆動部材は例えば、サーボシリンダーとすることができ、サーボシリンダーは、従来技術から既知であり、ピストンアキュムレーターユニットに接続されている多段サーボ弁を介して制御される。このため、加速度を、サーボシリンダー内に取り付けられているピストン131(図2a)を介して設定値入力に従って第1のキャリッジ11に伝達することができる。
【0031】
図1aには、さらに、少なくとも1つの第2の駆動部材14a、14b、14c、14dが図示されており、これらの第2の駆動部材は、第1のキャリッジ11に対して実質的に上下方向に第2のキャリッジ12を加速させるように構成されている。図示のように、試験設備は特に、上下方向に加速させる役割を果たす3つの油圧駆動シリンダーをそれぞれが有する4つの第2の駆動部材14a、14b、14c、14dを有するものとなっていることが好ましい。後でより詳細に説明するように、この目的から、各場合、4つの第2の駆動部材14a、14b、14c、14dの3つの油圧駆動シリンダーは、各場合に1つのガイドレール16a、16b、16c、16dを介して第2のキャリッジ12に連結される。
【0032】
少なくとも1つの、特に4つの第2の駆動部材14a、14b、14c、14dに加え、本発明に係る試験設備は、少なくとも1つの、特に4つの第3の駆動部材15a、15b、15c、15dを有し、これらの第3の駆動部材は、長手方向の軸線に対して実質的に垂直な水平方向に第2のキャリッジを加速させるように構成されている。したがって、4つの第3の駆動部材15a、15b、15c、15dは、第2のキャリッジが長手方向の軸線Aに対して実質的に垂直にも移動可能であるように第2のキャリッジに左右の移動をもたらすように設計されている。図に示されている実施形態では、4つの第3の駆動部材15a、15b、15c、15dは各場合、ガイドレール16a、16b、16c、16dを介して長手方向の軸線Aに対して垂直な力を第2のキャリッジにもたらすために、割り当てられている第2の駆動部材14a、14b、14c、15dに連結される。
【0033】
本発明に係る試験設備による衝突シミュレーションの通常のシーケンスが、図1a、図2a及び図3a、又は図1b、図2b及び図3bの比較から得られ、これらの図は各場合、衝突シミュレーションのシーケンスにおける種々の時点の試験設備を示す。具体的には、図1aは、開始位置における試験設備を示すのに対し、図2aは、衝突シミュレーションの50パーセントに当たる時点を再現している。それに比して、図3aは、衝突シミュレーションの終了後の試験設備の位置を示す。図1a、図2a及び図3aを比べると、駆動部材13、14a、14b、14c、14d、15a、15b、15c、15dの動きは、個々の加速力が同時に加えられるように相互に同期して進行していることが理解されよう。図示の例示的な実施形態では、長手方向の軸線Aに沿っての加速度に加え、上下方向への、また左右方向への第2のキャリッジの加速度も、キャリッジ構成部に加えられる。したがって、加速度の重ね合わせが得られ、その結果、例えば、現実の場合に相当するピッチ運動及びヨー運動をシミュレートすることができる。
【0034】
この時点で、第2の駆動部材14a、14b、14c、14d及び第3の駆動部材15a、15b、15c、15dは当然のことながら、これらのピッチ運動及びヨー運動を実現するために、第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12に対して特定の構成を有する必要があることに言及しておく。したがって、詳細には、少なくとも1つの第2の駆動部材14a、14b、14c、14dは、少なくとも1つの第2の駆動部材14a、14b、14c、14dを駆動させることによって第2のキャリッジ12が長手方向の軸線Aに対して垂直な横軸を中心に回動可能であるように第2のキャリッジ12に連結される。より詳細には、試験設備1はこのため、第2のキャリッジ12に沿って種々の地点に取り付けられる上述した4つの第2の駆動部材14a、14b、14c、14dを有する。具体的には、2つの第2の駆動部材14a、14b又は14c、14dは、第2のキャリッジの各側に取り付けられる。各場合、2つの第2の駆動部材14a又は14cのうちの一方がここでは第2のキャリッジ12の後端領域に取り付けられるのに対し、他方の第2の駆動部材14b又は14dは第2のキャリッジの前端領域に連結される。第2の駆動部材14a、14b、14c、14dのそれぞれは、第2のキャリッジに上下方向の加速度を加えるように構成されており、上記第2のキャリッジは、第2の駆動部材14a、14b、14c、14bの補助により、その重心を中心に自由に傾けることができることがすぐに明らかである。しかしながら、ここでは、後部の第2の駆動部材14a、14cの排他的な駆動又は前部の第2の駆動部材14a、14bの排他的な駆動によって、長手方向の軸線Aに対して垂直である垂直な横軸(図示せず)を中心に第2のキャリッジ12を回動させ、その結果、既に上述したピッチ運動を生じさせることが特に好ましい。
【0035】
更に、少なくとも1つの第3の駆動部材15a、15b、15c、15dは、少なくとも1つの第3の駆動部材15a、15b、15c、15dを駆動させることによって第2のキャリッジ12が第2のキャリッジ12の上下軸(図示せず)を中心に回動可能であるように第2のキャリッジ12に連結される。特に、4つの第3の駆動部材15a、15b、15c、15dはまた、第2のキャリッジ12の後部領域、すなわちコーナーに連結される。したがって、左右の移動を極簡単に第2のキャリッジ12にもたらすことができる。同時に、この左右の移動を用いて、第3の駆動部材15a、15b、15c、15dの規定された駆動によって第2のキャリッジ12の回動運動/ヨー運動を引き起こすことができる。これは例えば、前部の第3の駆動部材15b、15dの方向とは反対の方向に後部の2つの第3の駆動部材15a、15cを移動させることにおいて達成することができる。図3bに係る例では、ヨー運動は、後部の2つの第3の駆動部材15a、15cが図では左に向かって移動していることによって生じているのに対し、前部の2つの第3の駆動部材15b、15dは右に向かって加速度を生じさせている。したがって、第2のキャリッジ12の前端領域は右に向かって枢動するのに対し、後端領域は左に向かって移動する。これにより、実際の衝突状況の場合におけるヨー運動と同様の回転運動が第2のキャリッジ12の上下軸を中心にもたらされる。
【0036】
図1b、図2b及び図3bに係る平面図から、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dは、その第2の駆動部材14a、14b、14c、14dの位置にとどまるように第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12の隣に配置されているのに対し、第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12は長手方向の軸線Aに沿って少なくとも1つの第1の駆動部材12によって加速されていることが極容易に理解されよう。これと類似して、第3の駆動部材15a、15b、15c、15dもまた、第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12の隣に配置されている。このため、第2の駆動部材及び第3の駆動部材を、第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12のキャリッジ構成部とともに移動させる必要がない。このため、キャリッジ構成部の重量が著しく減り、その結果、より高い加速度値を達成することができる。さらに、試験設備1に影響を及ぼす荷重が大幅に低減する。したがって、第2の駆動部材14a、14b、14c、14d及び第3の駆動部材15a、15b、15c、15cを、キャリッジ構成部の隣の下部表面にコンクリートで打設(cast)し、そのため、上記駆動部材は、キャリッジに加えられる力を問題なく吸収することができる。
【0037】
シミュレーションシーケンス全体を通して、第2のキャリッジ12は、少なくとも1つのガイドレール16a、16b、16c、16dの上をガイドされる。これは特に、第2の駆動部材14a、14b、14c、14d及び第3の駆動部材15a、15b、15c、15dが、各場合に、第1のキャリッジ12の長手方向の軸線Aに対して実質的に平行に延びる単一のガイドレール16a、16b、16c、16dを介して、第2のキャリッジ12に連結されることにおいて達成される。この目的から、第2のキャリッジ12は支持部材121を有しており、この支持部材はその端領域に、ガイドレール16a、16b、16c、16d内でガイド可能なガイド部材122を有する。このことは、特に図1dに示されており、図1dでは、ガイドレール16a、16b、16c、16dのC字状断面が示されている。ガイド部材122は例えば、ここでは、C字状ガイドレール内でガイドされるとともに、関節式に支持部材121に連結されるローラーを有することができる。したがって、第2のキャリッジのピッチ運動及びヨー運動を極簡単なやり方で補整することができる(図3b)。
【0038】
本発明に係る試験設備の特に簡単な実現によれば、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dは、ガイドレール16a、16b、16c、16dに連結され、第1のキャリッジに対して実質的に上下方向に少なくとも1つのガイドレールを加速させるように構成されている。同様にして、第3の駆動部材15a、15b、15c、15dもまた、ガイドレール16a、16b、16c、16dに連結され、長手方向の軸線Aに対して実質的に垂直な水平方向にガイドレール16a、16b、16c、16dを加速させるように構成されている。換言すれば、このことは、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dの加速力及び第3の駆動部材15a、15b、15c、15dの加速力が、それぞれのガイドレール16a、16b、16c、16dを介して第2のキャリッジ12に加えられることを意味する。したがって、ガイドレール16a、16b、16c、16dは、第2の駆動部材14a、14b、14c、14d及び第3の駆動部材15a、15b、15c、15dの駆動によって、上下方向又は左右方向に動く。
【0039】
図1dに戻ると、これに関連して、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dはこのため、ガイドレール16a、16b、16c、16dに直接連結することができるのに対し、第3の駆動部材15a、15b、15c、15dは、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dを介してガイドレール16a、16b、16c、16dと連結していることに更に言及しておく。したがって、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dの上下方向の加速力は、ガイドレールに直接もたらされるのに対し、第3の駆動部材15a、15b、15c、15dの左右方向の加速力は初めに、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dに伝達され、その結果、ガイドレール16a、16b、16c、16dと一緒に左右方向に移動するものとなっている。このため、当然のことながら、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dは、左右方向に或る程度まで移動可能であることが必要である。本例示的な実施形態では、これは特に、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dの枢支軸141a、141b、141c、141d(図2b、3bに示されている)によって達成される。このことは図からは直ちに理解されないかもしれないが、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dは、上記枢支軸141a、141b、141c、141dによって左右方向に枢動させることができる。枢支軸141a、141b、141c、141dはここでは、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dの下端領域に設けられることが好ましい。したがって、換言すれば、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dは、下部表面に対して左右方向に枢動可能であるように構成されている。当然のことながら、第2の駆動部材が上述の枢動を行う代わりに左右方向に並進して変位可能であることも同様に考えられる。
【0040】
既に示したように、第2の駆動部材14a、14b、14c、14d及び第3の駆動部材15a、15b、15c、15dはそれぞれ、油圧駆動シリンダー、空気圧駆動シリンダー又は電動シリンダーを有することができる。当然のことながら、任意の他の適した駆動原理も考えられる。図1a、図2a及び図3aから理解されるように、第2の駆動部材14a、14b、14c、14dは各場合、3つの駆動シリンダーを有することができるのに対し、第3の駆動部材15a、15b、15c、15dには1つの駆動シリンダーが備わっている。第3の駆動部材15a、15b、15c、15dに関して、駆動シリンダーは、縦方向に向き付けられるとともに、関節構成部を介して第2の駆動部材14a、14b、14c、14dに連結され、それによって、駆動シリンダーの上下リフト運動が、長手方向の軸線Aに対して実質的に垂直な第2の駆動部材14a、14b、14c、14dの水平方向の加速度に変換されることが好ましいことに更に言及しておく。これにより、第3の駆動部材15a、15b、15c、15dの省スペースの構成がもたらされ、この省スペースの構成を特定の適した方式で下部表面に更に連結することができる。このことはまた、第2の駆動部材14a、14b、14c、14d及び第3の駆動部材15a、15b、15c、15dによる荷重の分散に特に好都合である。
【0041】
図1b、図2b及び図3bの平面図並びに図1dの背面図に関して、第2のキャリッジ12は、プッシュロッド18を介して第1のキャリッジ11に関節式に連結されることが好ましいことに言及しておく。プッシュロッド18は、第1のキャリッジ11から第2のキャリッジ12の長手方向の軸線Aに沿って第1の駆動部材13の加速度を伝達するように構成されている。同時に、プッシュロッド18は、各場合に、第2のキャリッジ12が第1のキャリッジ11に対して実質的に自由に移動可能であるように関節構成部を介して第1のキャリッジ及び第2のキャリッジに連結される。これにより、長手方向の軸線Aへの移動に影響を及ぼすことなく上下方向の加速力又は左右方向の加速力を第2のキャリッジ12にもたらすことが可能になる。
【0042】
第1のキャリッジ11に対する第2のキャリッジ12の上下移動又は左右移動を減速させる場合、衝突シミュレーションの終了後に、プッシュロッド18及び/又は第2のキャリッジ12をブレーキ装置(図示せず)に連結することができる。ブレーキ装置は例えば、一方の側が第1のキャリッジ11に取り付けられるとともに、他方の側がプッシュロッド18又は第2のキャリッジ12に取り付けられる可逆性エネルギー吸収部材とすることができる。当然のことながら、ブレーキ装置は、衝突シミュレーションが終了すると、プッシュロッド18又は第2のキャリッジ12に単に制動作用をかけるべきものである。
【0043】
これもまた図に明示されていないが、試験設備1は、衝突シミュレーションの終了後に第2のキャリッジ12の移動を制動するように構成されている第3のキャリッジを更に有することができる。第3のキャリッジはここでは、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジに対して、衝突シミュレーションの開始時は第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12に連結されず、衝突シミュレーションの終了時にのみ第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12に動作可能に連結されるように構成されている。第3のキャリッジはここでは、例えば、第1のキャリッジ11もガイドされる同じレール部材111、112上に取り付けることができる。衝突シミュレーションの終了後、第3のキャリッジは、例えば第2のキャリッジ12の前領域123のパッドに衝当することができ、その結果、少なくとも長手方向の軸線Aに沿ってのキャリッジ構成部の移動が阻止される。よりソフトな制動を可能にするために、第3のキャリッジは、長手方向の軸線Aの方向にレール部材111、112に沿って或る特定の程度まで移動可能であるように構成することができる。
【0044】
さらに、第3のキャリッジが衝突シミュレーションの終了後にキャリッジ構成部を開始位置に戻すように構成されている場合が特に有利である。したがって、具体的には、第3のキャリッジを用いて、キャリッジ構成部を長手方向の軸線Aに沿って開始位置に至らしめるとともに第1のキャリッジ11に対して第2のキャリッジ12を同時に位置合わせすることができる。
【0045】
最後に、第1のキャリッジ11及び第2のキャリッジ12は主としてアルミニウムにより製造されることが好ましく、その結果、キャリッジ構成部の重量が著しく減り、本発明に係る試験設備1がより一層高い加速度値を達成することができることに言及しておく。
【符号の説明】
【0046】
1 試験設備
11 第1のキャリッジ
12 第2のキャリッジ
13 第1の駆動部材
14a、14b、14c、14d 第2の駆動部材
15a、15b、15c、15d 第3の駆動部材
16a、16b、16c、16d ガイドレール
18 プッシュロッド
50 被験物アセンブリ
111 レール部材
112 スライド部材
121 支持部材
122 ガイド部材
123 前領域
131 駆動ピストン
141a、141b、141c、141d 枢支軸
181、182 ボールジョイント/ユニバーサルジョイント
A 長手方向の軸線
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b