(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルファ相中の前記酸化アルミニウムと、層状ケイ酸塩構造を有するアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外の前記アルミニウム/ケイ素混合酸化物とは、前記鋳型原料に対して、当該鋳型材料混合物の0.05重量%と2.0重量%との間で存在する、請求項1に記載の鋳型材料混合物。
前記粒子状金属酸化物は、層状ケイ酸塩構造を有するアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外の、アルミニウム/ケイ素混合酸化物を備える又は当該アルミニウム/ケイ素混合酸化物からなる、請求項1に記載の鋳型材料混合物。
前記鋳型材料混合物は、圧縮空気を用いて吹込み式中子製造装置によって前記型内に導入され、前記型は成形用型であり、前記成形用型は当該成形用型を通過する1つ以上のガスを有する、請求項21に記載の鋳造用鋳型又は中子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
鋳造用鋳型は、本質的に、製造される鋳造物の凹型形状を表す鋳型と中子とのセットからなる。これらの中子及び鋳型は、例えばケイ砂のような耐熱性材料と、成形用型から取り外された鋳造用鋳型に十分な機械的強度を与える適当なバインダと、からなる。それゆえ、適切なバインダに包まれた耐熱性鋳型原料は、鋳造用鋳型の製造に用いられる。耐熱性鋳型原料は、適当な型に充填されてそこで圧縮され得るように、自由流動形態で好適に用いられる。バインダは、鋳造用鋳型が所望の機械的安定性を実現するように、鋳型原料の粒子間の堅固な密着をもたらす。
【0003】
鋳造用鋳型は、種々の要求に応えなければならない。実際の鋳造工程の間、それらは、1つ以上の鋳造用(の部分的な)鋳型からなる中空鋳型内の液体金属を収容するために、十分な強度と熱安定性とをまず示さなければならない。凝固工程が開始した後、鋳造の機械的安定性は、鋳造用鋳型の壁に沿って形成される凝固金属の層によって保証される。鋳造用鋳型の材料は、金属から放出される熱の影響によって、その機械的強度を失うように分解しなければならない。理想的な場合では、鋳造用鋳型は、細かい砂に再び割れ落ちて、鋳造品から容易に取り除かれ得る。
【0004】
加えて、最近は、環境を保護し炭化水素(主に芳香族)による環境への悪臭公害を規制するために、できる限り、CO
2又は炭化水素の形の大気汚染物質が鋳造物の製造及び冷却の間に放出されるべきでないとの要求が高まっている。これらの要求に適合するため、過去何年かにおいて無機バインダシステムが発展した、又は、さらに発展した。無機バインダシステムの使用は、金型の製造中におけるCO
2及び炭化水素の排出を防止又は少なくとも最少化することができる。しかしながら、無機バインダシステムの使用は、しばしば、以下の記載で詳細に説明する他の欠点を引き起こす。
【0005】
無機バインダは、有機バインダと比べて、製造される鋳造用鋳型が比較的低強度を有するという欠点を有する。これは、鋳造用鋳型の金型からの取り外し直後に特に顕著である。しかしながら、この時点での良好な強度は、複雑な及び/又は薄壁の鋳造物の製造及びそれらの安全な取扱いのために特に重要である。大気中の水分への耐性もまた、有機バインダと比較して明らかに低い。
【0006】
特許文献1(特許文献2)は、耐熱性鋳型原料、水ガラス系バインダ、並びに、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化亜鉛の群から選択された粒子状金属酸化物の割り当ての使用によって、より高い初期強度及び大気中の水分へのより高い耐性を実現し得ることを開示する。詳しく言えば、粒子状非晶質二酸化ケイ素の使用である。
【0007】
無機バインダシステムは、有機バインダシステムと比べて、製造された鋳造用鋳型が鋳造物への著しい砂の付着及び侵入をしばしばもたらすという他の欠点を有する。砂の付着及び侵入は、多大な清掃の労力及び従って鋳物工場のコスト増大と密接に関連する。
【0008】
加えて、中子落とし特性、即ち、金属鋳造後に(機械的応力の印加によって)自由流動形態へ急速に分解するような鋳造用鋳型の能力は、有機バインダを用いて製造された鋳造用鋳型の場合と比べて、(例えばバインダとして水ガラスを用いる)純粋な無機材料から製造される鋳造用鋳型の場合にはしばしば十分ではない。この最後に挙げた特性(より乏しい中子落とし特性)は、注湯完了後に理論的に除去しにくい、薄壁の又は壊れやすい又は複雑な鋳造用鋳型が用いられる場合に、特に不利益となる。例えば、内燃機関のある領域を製造するために必要な、いわゆる水ジャケット中子が挙げられる。
【0009】
溶銑の影響下での熱分解又は反応に耐え、従って、一方では細孔の形成によって鋳造後の鋳造用鋳型の分解を促進し、他方では鋳肌面の改善をもたらし得る、有機部品が鋳型材料混合物に添加されてもよいこともまた知られている。しかしながら、鋳型材料混合物における有機部品の使用は、注湯の間にCO
2及び他の熱分解生成物の放出をもたらす。
【0010】
特許文献3は、微細な耐熱性材料からなる鋳型材料混合物、特にケイ酸アルカリ溶液である液体バインダ、及び、金属鋳造後の鋳造用鋳型の中子落とし特性を改良するAl
2O
3を含有する活性物質、を開示している。Al
2O
3を含有する活性物質は、純粋な酸化アルミニウムとして定義され、アルミノケイ酸塩等の混合酸化物、ベントナイト又はモンモリロナイト等の粘土鉱物、ボーキサイト等の自然のAl
2O
3を含有する活性物質、並びに、セメント及びカオリン等のその他の鉱物、が知られる。Al
2O
3を含有する活性物質は、ここでは極めて一般的に説明されるのみであり、鋳造用鋳型の中子落とし能力、鋳型材料混合物の処理時間、又は、問題になっている鋳造物の鋳肌面の品質、に対してこれらの物質が特に好適であることについての正確な情報は無い。
【0011】
特許文献4は、砂、ケイ酸アルカリバインダ、少なくとも1つの硬化剤、からなり、平均粒子径の分布が0.2μmと5μmとの間にある、鋳型材料混合物を開示する。少なくとも1つの硬化剤は、炭酸アルカリ、有機モノカルボン若しくはジカルボン酸又はそのメチルエステル、n−若しくはジカルボン酸又はそのメチルエステル、二酸化炭素又は高炉スラグ、及び、それらのAl
2O
3を含有する物質、の群から選択される。
【0012】
酸化アルミニウムを含有する固体は、好ましくは、3m
2/gと40m
2/gとの間のBET表面積を有する、ことが説明されている。好ましい例としてAl
2O
3・3H
2Oが開示されている。
【0013】
特許文献5は、鋳物砂、ケイ酸アルカリバインダ、及び、酸性の球状酸化アルミニウムから作られる非晶質球状体、からなる鋳型材料混合物を開示する。
これらの非晶質球状体は、いわゆる「高流動化剤」として働き、最終的により高い強度をもたらすように硬化を支援することが意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
通常の材料は、鋳造用鋳型を製造するための耐熱性鋳型原料として用いることができる。例えば、下記が適する。ケイ砂又はクロム鉱石砂、かんらん石、バーミキュライト、ボーキサイト及び耐火粘土であり、特に、耐熱性鋳型原料に基づき50重量%超のケイ砂。新たな砂だけを用いる必要はない。実際、資源を節約し埋め立てコストがかかるのを避けるために、再生された古い砂を可能な最も高い割合で使用することも有益である。耐熱性鋳型原料は、鋳型材料混合物の80重量%を超え、特に90重量%を超えることが好ましい。
【0026】
適切な再生砂は、例えば、国際公開第2008/101668号(米国特許出願公開第2010/173767号明細書)に説明されている。同様に適切なものは、洗浄及びその後の乾燥によって得られた再生品である。使用可能であるがあまり好ましくないものは、純粋に機械的処理によって得られた再生品である。通例として、再生品は、(耐熱性鋳型原料中の)新しい砂の少なくとも約70重量%を置き換えることができ、好ましくは少なくとも約80重量%であり、特に好ましくは少なくとも約90重量%である。
【0027】
再生のために少なくとも200℃の温度に加熱された耐熱性鋳型原料の再生品、特にこの熱処理中に動かされた耐熱性鋳型原料の再生品が好ましい。
【0028】
加えて、合成鋳型材料も耐熱性鋳型原料として用いられ得る。例えば、ガラス玉、ガラス粉末、又は球状セラミック鋳型原料、又は「Cerabeads」若しくは「Carboaccucast」として知られるケイ酸アルミニウムの微小中空球状体(いわゆるマイクロスフェア)である。そのようなケイ酸アルカリの中空マイクロスフェアは、例えば、NorderstedtのOmega Minerals Germany GmbHによって、「Omega-Spheres」の名称において異なる酸化アルミニウム含有量の種々の等級が販売されている。対応する製品は、例えば、PQ Corporation (USA)から「Extendospheres」の名称で入手可能である。
【0029】
通例、耐熱性鋳型原料の平均直径は100μmと600μmとの間であり、好ましくは120μmと550μmとの間であり、特に好ましくは150μmと500μmとの間である。平均粒子径は、例えば、DIN ISO 3310-1に従う分析用ふるいを用いて、DIN 66165 (Part 2)に従ってふるい分析により決定することができる。特に好ましくは、(任意の空間方向において)最大縦寸法:最小縦寸法の比が1:1から1:5又は1:1から1:3の粒子形状であり、即ち、例えば繊維状ではないものである。
【0030】
特にアルミニウムについての鋳造実験では、合成鋳型原料、特にガラス玉、ガラス粉末又はマイクロスフェア、がより滑らかな鋳肌面の形成に寄与できることが分かった。この場合、合成鋳型原料から鋳型原料の全てを作ることは必要ではない。耐熱性鋳型原料の全体量に対する合成鋳型原料の好ましい割合は、少なくとも約3重量%であり、有利なのは少なくとも5重量%であり、特に有利なのは少なくとも10重量%であり、好ましくは少なくとも約15重量%であり、より好ましくは少なくとも約20重量%である。
【0031】
耐熱性鋳型原料は、特に従来の吹込み式中子製造機(Kern-schiesmaschinen)において本発明による鋳型材料混合物の処理を可能とするために、好ましくは自由流動状態を有する。
【0032】
無機バインダとしての水ガラスは、溶解したケイ酸アルカリを含有し、ガラス様のリチウム、ナトリウム及び/又はカリウムのケイ酸塩の水への溶解によって製造することができる。水ガラスは、SiO
2/M
2Oのモル比が、好ましくは1.6から4.0まで、特に2.0から3.5未満まで、の範囲にある。ここで、Mはリチウム、ナトリウム又はカリウムを表す。バインダはまた、独国特許出願公開第2652421号明細書(英国特許出願公開第1532847号明細書)から知られるリチウム修飾水ガラス等の言及されたアルカリイオンを2つ以上含有する水ガラスに基づくことができる。加えて、水ガラスは、例えば欧州特許出願公開第2305603号明細書(国際公開第2011/042132号)に記載されたAl修飾水ガラスのような、多価イオンをも含有し得る。B修飾水ガラスもまた可能である。水ガラスは、固体割合が25から65重量%、好ましくは30から60重量%、の範囲内にある。固体割合は、水ガラスに含まれるSiO
2及びM
2Oの量に基づく。用途と所望の強度レベルとに応じて、鋳型原料に基づき、水ガラス系バインダの0.5重量%と5重量%との間、好ましくは0.75重量%と4重量%との間、特に好ましくは1重量%と3.5重量%との間、が用いられる。記述は、水ガラスバインダの全量に基づき(=100%)、(特に水性の)溶媒又は希釈剤、及び、固体割合が存在する場合には、その分を含む。
【0033】
驚くことに、鋳型材料混合物に上述の粒子状金属酸化物を添加することによって、無機バインダに基づく鋳造用鋳型が製造され、製造直後と長期保管された状態とで高い強度を有するのみならず、特に鉄及び鋼から作られる鋳造物において良好な表面品質をもたらすことが分かった。
【0034】
アルファ相中の少なくとも1つの酸化アルミニウムと、層状ケイ酸構造を備えるアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外の少なくとも1つのアルミニウム/ケイ素混合酸化物と、を含有する粒子状金属酸化物は、純粋な酸化アルミニウム又は純粋なアルモケイ酸塩若しくはアルミノケイ酸塩からなる粒子状金属酸化物のみならず、上記金属酸化物とその他の酸化物との混合物としても定義される。その他の酸化物は、例えば、ジルコニウム酸化物、アルミニウム/ケイ素混合酸化物に取り込まれたジルコニウム、又は異種材料混合物、即ち、以下の固体又は相の少なくとも2つからなる、他の物質における、いくつかの相からなる異種材料混合物、である。固体又は相は、酸化アルミニウム含有の、及び/又は、アルミニウム/ケイ素酸化物含有の、固体又は相である。
【0035】
本発明による粒子状金属酸化物は、好ましくは、コランダム+二酸化ジルコニウム、ジルコニウムムライト、ジルコニウムコランダム、及び、ケイ酸アルミニウム(層状ケイ酸構造以外のもの)+二酸化ジルコニウムの群から選択され、並びに、選択的に追加の金属酸化物を含有する。
【0036】
アルミニウム/ケイ素混合酸化物はまた、好ましくはネソケイ酸塩である。これらのネソケイ酸塩の代表例は、(シュツルンツ分類第9版(Systematik der Minerale nach Strunz, 9th ed)に従い、)例えば、ムライト(ZrO
2含有ムライトのみならず溶融ムライト及び焼結ムライトも含む)、シリマナイト及びシリマナイト族の他の物質(例えば、カイヤナイト又はアンダルサイト)であり、特に好ましくはシリマナイト族からのカイヤナイトが用いられる。特に好ましいものは、全てのケイ素及びアルミニウムの原子並びに酸化アルミニウム含有の細粉(Staub)の全量に対してアルミニウム原子が50原子%を超える非晶質ケイ酸アルミニウム(層状ケイ酸構造以外のもの)である。酸化アルミニウム含有の細粉は、ジルコニウムコランダムの製造の副生成物として製造されるものであり、以下で詳細に説明される。
【0037】
本発明のある意味ではケイ酸アルミニウムは、アルモケイ酸塩及びアルミノケイ酸塩として定義される。
【0038】
ネソケイ酸塩において、構造に含まれるSiO
4部分(4面体)は、互いに直接結合されていない(Si−O−Si結合無し)代わりに、4面体SiO
4部分と1つ以上のAl原子との結合(Si−O−Al)が存在する。ここで特許請求されるネソケイ酸塩の構造において、Al原子は、酸素原子との4配位、5配位及び/又は6配位として存在する。
【0039】
例えばメタカオリンのような層構造を有するアルミニウム/ケイ素混合酸化物、カオリン及びカオリナイトは、バインダ用の添加物として適していない。同様に不適当なものは、発熱性の非晶質酸化アルミニウムである。
【0040】
本発明による粒子状金属酸化物の細かさは、ふるい法により決定することができる。典型的には、メッシュサイズ75μm(200メッシュ)のふるいを通した後の残留物が約50重量%を超えないこと、好ましくは約30重量%を超えないこと、より好ましくは約20重量%を超えないこと、及び、特に好ましくは約15重量%を超えないこと、である。
【0041】
ふるい残留物は、機械ふるい分け法を用いてDIN 66165 (Part 2)に従うふるい分析により決定され、一の実施形態によればふるい分けの補助が用いられず、他の実施形態によればふるい分けの補助としてチェーンリングもまた用いられる。
【0042】
粒子状金属酸化物の粒子形状は、基本的にはいかなる形状でもよく、例えば、繊維状、破片状、鋭い縁の形状、薄片状、丸い縁の形状、又は、丸い形状であってもよい。しかしながら、好ましくは、丸い縁の又は丸い粒子形状が好適である。特に好ましくは添加剤、丸い粒子形状が用いられ、これらは楕円体又は球状体であってもよい−ここでは球状体が好適である。
【0043】
(空間内のすべての方向についての)それぞれの粒子形状の最大縦寸法:最小縦寸法の比は、好ましくは10:1未満であり、特に好ましくは5:1未満であり、特に好ましくは3:1未満である。球状の粒子形状が特に有利なので、最大縦寸法:最小縦寸法の比は、1.1:1から1:1が理想的である。
【0044】
本発明による粒子状金属酸化物の平均一次粒子径は、SEM撮像及びグラフィカルな評価によって決定することができ、典型的には0.01μmより大きく、好ましくは0.02μmより大きい。この粒子径はまた、典型的には50μmより小さく、好ましくは20μmより小さく、特に好ましくは10μmより小さく、とりわけ好ましくは5μmより小さい。
【0045】
加えて、粒子状金属酸化物の平均比表面積は、DIN 66131に従うガス吸収測定(BET法)を用いて決定された。この物質の比表面積は、典型的には50m
2/gより小さく、好ましくは30m
2/gより小さく、特に好ましくは17m
2/gより小さい。この物質の比表面積は、典型的には0.1m
2/gより大きく、好ましくは0.5m
2/gより大きく、特に好ましくは1m
2/gより大きい。
【0046】
二酸化ジルコニウムは、正方晶又は単斜晶変態として存在することができる。
【0047】
とりわけ滑らかな鋳肌面を作るために特に好ましくは、粒子状金属酸化物は、ジルコニウムコランダムの製造の副生成物として形成され、以下で詳細に説明される。この細粉の主成分は、Al
2O
3、ZrO
2及びSiO
2であり、これらの酸化物は、純粋な酸化物の種々の変形例として又は混合酸化物の形態として存在してもよい。
【0048】
粒子状金属酸化物又は細粉においてAl
2O
3として算出されたアルミニウムの割合は、25重量%より大きいことが有利であり、好ましくは30重量%より大きく、特に好ましくは35重量%より大きく、とりわけ好ましくは40重量%より大きい。粒子状金属酸化物又は細粉においてAl
2O
3として算出されたアルミニウムの割合は、通常80重量%より小さく、好ましくは70重量%より小さく、特に好ましくは65重量%より小さく、とりわけ好ましくは60重量%より小さい。
【0049】
粒子状金属酸化物又は細粉においてZrO
2として算出されたジルコニウムの割合は、存在する場合には、2重量%より大きいことが有利であり、好ましくは4重量%より大きく、特に好ましくは8重量%より大きい。この細粉においてZrO
2として算出されたジルコニウムの割合は、通常50重量%より小さく、好ましくは40重量%より小さく、特に好ましくは30重量%より小さい。
【0050】
粒子状金属酸化物又は細粉においてSiO
2として算出されたケイ素(粒子状非晶質酸化ケイ素以外のもの)の割合は、存在する場合には、5重量%より大きいことが有利であり、好ましくは15重量%より大きく、特に好ましくは20重量%より大きい。この細粉においてSiO
2として算出されたケイ素の割合は、通常60重量%より小さく、好ましくは50重量%より小さく、特に好ましくは45重量%より小さい。
【0051】
例えばFe
2O
3、Na
2O、TiO
2、MgO及びCaOのような他の酸化物もまた、粒子状金属酸化物又は細粉における不純物として存在してもよい。一の実施形態によるこれらの不純物の割合は、通常12重量%より小さく、好ましくは8重量%より小さく、特に好ましくは4重量%より小さい。
【0052】
アルミニウムは、ジルコニウムコランダムの製造からの異種細粉においていくつかの相として存在する。コランダム(α−Al
2O
3)は、X線粉末回折法によって、結晶相として明確に決定することができる。そのような測定は、例えば、単色光分光器及び位置敏感型検出器を備えたPANalytical社(X´pert PW3040)の全保護型回折計(Vollschutz-Diffraktometer)において実行することができる。少量の結晶質合成ムライト(およそAl
2.4Si
0.6O
4.8)は、この方法を用いて同様に見つけられ得る。
【0053】
X線粉末回折法により発見されたこれらの相に加えて、27Al固体NMR測定は、他のアルミニウム含有層が存在することを示し、それは、発明者の推測によれば、非晶質である。そのような測定は、例えば、マジック角回転法(Magic-Angle-Spinning technique)(MAS、約25kHz)によるBRUKER AVANCE DSX 500分光計(磁束密度11.74テスラ)を用いて実行することができる。
【0054】
電子顕微鏡画像の走査によって(例えば、FEI社のNova NanoSEM 230によって生成されたSEM画像)、一次粒子の形態の詳細が0.01μmのオーダーの大きさにまで視覚化できる。鋭い縁の形状及び破片状の粒子に加えて、多量の球状粒子が特定され、それは互いの凝集度及び/又は相互成長の低さを示す。
【0055】
(画像解析により)SEM画像から決定され得る粒子状金属酸化物の球状粒子の平均一次粒子径は、0.01μmと10μmとの間であることができ、とりわけ0.02μmと5μmとの間であり、特に好ましくは0.02μmと2μmとの間である。走査型電子顕微鏡に統合されたEDXユニットを通して、球状粒子の元素組成は、エネルギー分散型X線分析によって決定することができる。二次電子の検出は、インレンズSE検出器(TLD-SE)によって行われた。エネルギー分散型X線分析は、EDAX社のシステムによって行われた。この研究の間に、ケイ酸アルミニウムからなる球状粒子のほとんどが見つけられた。
【0056】
発明者は、理論に縛られること無く、これらの球状酸化アルミニウム粒子は非晶質であり、鋳型材料混合物内のそのような粒子の存在が自身の圧縮に対して及び対応する鋳造物の表面品質に対して、有利な効果を奏することを示唆する。これは、鉄及び鋼の鋳造並びにアルミニウムの鋳造のいずれにも認められるものであり、それゆえ、ジルコニウムコランダムの製造からのこの酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムを含有する細粉の使用は、特に好ましい。
【0057】
本発明による、アルファ相中の酸化アルミニウム、及び/又は、層状ケイ酸構造を備えるアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外のアルミニウム/ケイ素混合酸化物は(必要により合計で)、鋳型原料に基づきそれぞれの場合において鋳型材料組成中に、0.05重量%と2.0重量%との間常時存在し、好ましくは0.1重量%と2.0重量%との間であり、特に好ましくは0.1重量%と1.5重量%との間であり、とりわけ好ましくは0.2重量%と1.2重量%との間であり、さらには0.2重量%と0.8重量%との間であり、上記の割合で鋳型材料組成に添加される。アルファ相中の酸化アルミニウム及び/又はアルミニウム/ケイ素混合酸化物が一緒に用いられると、上記制限値は、本発明によるアルファ相中の酸化アルミニウムと本発明によるアルミニウム/ケイ素混合酸化物との合計に適用される。
【0058】
追加の好ましい実施形態では、本発明による鋳型材料混合物に少量の粒子状非晶質SiO
2が添加され得る。添加により、そのような鋳型材料混合物によって製造される鋳造用鋳型の強度を増すことができる。鋳造用鋳型の強度の増加、特に熱間強度の増加は、自動製造プロセスにおいて有利となり得る。粒子状非晶質二酸化ケイ素は、300μm未満の粒子径を有することが有利であり、好ましくは200μm未満であり、特に好ましくは100μm未満であり、例えば平均一次粒子径が0.05μmと10μmとの間である。
【0059】
粒子径は、ふるい分析によって決定することができる。特に好ましくは、メッシュサイズ63μmのふるい上のふるい残留物は、10重量%未満であり、好ましくは8重量%未満である。
【0060】
ふるい残留物の粒子径の決定は、機械ふるい分け法を用いてDIN 66165 (Part 2)に従うふるい分析により行われ、一の実施形態によればふるい分けの補助が用いられず、他の実施形態によればふるい分けの補助としてチェーンリングもまた用いられる。一次粒子径は、動的光散乱法によって決定され、SEMによってチェックすることができる。
【0061】
粒子状非晶質二酸化ケイ素は、粒子状金属酸化物と一緒に又は別々に添加することができる。とにかく、粒子状金属酸化物及び粒子状非晶質二酸化ケイ素の濃度についてここでなされた記述は、それぞれ他の成分(複数含む)不含と理解されるべきである。疑わしい場合、その成分は算出されるべきである。
【0062】
本発明により好適に用いられる非晶質SiO
2は、15重量%未満の水分を有し、とりわけ5重量%未満であり、特に好ましくは1重量%未満である。特に、非晶質SiO
2は、粉末として添加される。
【0063】
用いられる非晶質SiO
2は、合成の又は天然のシリカであることができる。しかしながら、独国特許出願公開第102007045649号明細書から知られる後者は、好ましくない。通例、それらは実質的に結晶成分を含有しており、それゆえ発がん性物質として分類されるためである。
【0064】
合成非晶質SiO
2は、天然材料として定義されず、即ち、その製造は化学反応を備える。製造は、例えば、ケイ酸アルカリ溶液からのイオン交換プロセスによるシリカゾルの製造、ケイ酸アルカリ溶液からの沈降、四塩化ケイ素の火炎加水分解、フェロシリコン及びケイ素の製造中の電気アーク炉内でのコークスによるケイ砂の還元、を備える。最後の2つに述べた方法により製造された非晶質SiO
2は、発熱性SiO
2としても知られる。時として、合成非晶質SiO
2は、沈降シリカ(CAS-No. 112926-00-8)及び火炎加水分解により製造されたSiO
2(発熱性シリカ、フュームドシリカ、CAS No. 112945-52-5)としてのみ定義され、フェロシリコン又はケイ素の製造中に生成された生成物は、単に非晶質SiO
2(シリカ・フューム、マイクロシリカ、CAS No. 69012-64-12)と呼ばれる。本発明の目的のため、フェロシリコン又はケイ素の製造中に得られた生成物は、非晶質SiO
2とも呼ばれるだろう。
【0065】
沈降及び発熱性のSiO
2、即ち火炎加水分解又は電気アークによって製造された後者は、好適に用いられる。とりわけ好適に用いられるものは、ZrSiO
4の熱分解によって生成される非晶質SiO
2(独国特許出願公開第102012020509号明細書:ジルコニウム成分がZiO2として粒子状金属酸化物に、その他の成分が非晶質二酸化ケイ素に、添加される。)及び、酸素含有ガスを用いて金属Siの酸化によって生成されるSiO
2(独国特許出願公開第102012020510号明細書を参照)、である。また、粒子が非破片状の球状で存在するように(独国特許出願公開第102012020511号明細書を参照)、溶融及び急速再冷却によって結晶石英から生成された石英ガラス粉末(主に非晶質SiO
2)が好ましい。合成非晶質二酸化ケイ素の平均一次粒子径は、0.05μmと10μmとの間であることができ、特に0.1μmと5μmとの間であり、特に好ましくは0.1μmと2μmとの間である。一次粒子径は、例えば、動的光散乱法(例えば、Horiba LA 950)を用いて決定することができ、電子顕微鏡像の走査(例えば、FEI社のNova NanoSEM 230によるSEM画像)によってチェックすることができる。
【0066】
加えて、一次粒子の形態の詳細は、SEM画像を用いて0.01μmのオーダーの大きさにまで視覚化できる。SEM測定のために、SiO
2のサンプルは、蒸留水中に分散されて、その後水を蒸発させる前に、銅帯に接合されたアルミニウムのホルダにあてがわれた。また、合成非晶質二酸化ケイ素の比表面積は、DIN 66131に従うガス吸収測定(BET法)を用いて決定された。合成非晶質SiO
2の比表面積は、1m
2/gと200m
2/gとの間であり、特に1m
2/gと50m
2/gとの間であり、特に好ましくは1m
2/gと30m
2/gとの間である。任意として、例えばある粒子径の分布を備える混合物を選択的に得るために、生成物は混合されてもよい。
【0067】
非晶質SiO
2の純度は、製造方法及び製造者に依存して大きく変わり得る。好適な種類は、少なくとも85重量%のSiO
2を含有する非晶質SiO
2であり、好ましくは少なくとも90重量%であり、特に好ましくは少なくとも95重量%である、ことが分かった。
【0068】
使用及び所望の強度に依存して、鋳型原料に基づきそれぞれの場合において、0.1重量%と2重量%との間の、好ましくは0.1重量%と1.8重量%との間の、特に好ましくは0.1重量%と1.5重量%との間の、粒子状非晶質SiO
2が用いられる。
【0069】
粒子状金属酸化物及び非晶質SiO
2に対する水ガラスバインダが存在する場合にはその比は、広い範囲内で変わり得る。これは、最終強度に実質的に影響を及ぼすことなく、中子の初期強度、即ち、金型から取り外し直後の強度を大きく改善するという利点を提示するものである。
【0070】
これは、軽金属の鋳造においてとりわけ興味深い。一方では、中子を輸送し又は中子を製造直後に問題なく全ての中子パケット内に組み合わせることを可能にするために高い初期強度が望まれている。他方、注湯後の中子の分解時の問題を避けるため、最終強度はあまり高くなるべきではない。即ち、鋳型原料は、鋳造直後に問題なく鋳造用鋳型の空洞から取り外すことができるべきである。
【0071】
(希釈剤及び溶媒を含む)バインダの重量に基づき、非晶質SiO
2は、好ましくは2〜60重量%の割合で存在し、特に好ましくは3〜55重量%の割合で存在し、とりわけ好ましくは4〜50重量%の割合で存在し、又は、特に好ましくは水ガラスの固体割合と非晶質SiO
2との比が10:1〜1:1.2(重量部)である。
【0072】
欧州特許第1802409号明細書に従う非晶質SiO
2の添加は、バインダの添加の前及び後の両方で、耐熱性材料へ直接行うことができる。それだけでなく、欧州特許第1802409号明細書(米国特許出願公開第2008/029240号明細書)に記載されているように、先ずバインダ又は水酸化ナトリウムの少なくとも一部とSiO
2との予混合物を製造することができ、これはその後耐熱性材料へ混合されることができる。予混合物として用いられなかった残りのバインダ又はバインダ成分は、予混合物の添加の前又は後に、又はこれとともに、耐熱性材料へ添加され得る。好ましくは、非晶質SiO
2は、バインダの添加の前に耐熱性材料へ添加される。
【0073】
他の実施形態では、鋳造物の表面をさらに改善するために、硫酸バリウムが鋳型材料混合物へ添加されてもよい(独国特許出願公開第102012104934号明細書)。硫酸バリウムは、合成されたものでも天然の硫酸バリウムでもよく、即ち、重晶石又はバライト等の、硫酸バリウムを含有する鉱物の形態で添加することとしてもよい。合成された硫酸バリウム(沈降硫酸バリウムとも呼ばれる)は、例えば、沈降反応を用いて製造される。
【0074】
この目的のため、通常溶解性バリウム化合物(バリウム塩)が水に溶解される。その後、溶解性の低い硫酸バリウムは、溶解性硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)又は硫酸の添加によって沈降する。沈降した硫酸バリウムは、ろ過され、乾燥され、そして場合によっては粉砕される。
【0075】
天然の硫酸バリウムは、粗鉱として得られ、その後種々の方法によって処理される(例えば、密度選別、粉砕、等)。好ましくは、硫酸バリウムは純度が85重量%より高く、特に好ましくは90重量%より高い。天然で得られた硫酸バリウムは、例えば、不純物としてフッ化カルシウムを含有してもよい。フッ化カルシウムの割合は、典型的には、天然の硫酸バリウムの全重量に基づき約5%とすることができる。
【0076】
本発明で使用される硫酸バリウムの平均粒子径は、好ましくは0.1μmと90μmとの間である。粒子径の分布は、例えば、動的光散乱法(例えば、Horiba LA 950)を用いて決定することができる。
【0077】
好ましくは、メッシュサイズ45μmのふるい上のふるい残留物は、20重量%未満であり、特に好ましくは10重量%未満であり、とりわけ好ましくは5重量%未満である。ふるい残留物は、機械ふるい分け法を用いてDIN 66165 (Part 2)に従うふるい分析により決定され、一の実施形態によればふるい分けの補助が用いられず、他の実施形態によればふるい分けの補助としてチェーンリングが追加的に用いられる。
【0078】
硫酸バリウムは、全ての鋳型材料混合物に基づきそれぞれの場合において、好ましくは0.02〜5.0重量%の量が添加され、特に好ましくは0.05〜3.0重量%であり、特に好ましくは0.1〜2.0重量%又は0.3〜0.99重量%である。
【0079】
さらなる実施形態によれば、溶融アルミニウムに対して濡れ性が低い特徴の他の物質が、本発明による鋳型材料混合物に添加されてもよい。例えば、窒化ホウ素である。
【0080】
他の物質の中に低濡れ性物質としての硫酸バリウムを含有する、濡れ性の低い物質のそのような混合物は、砂の付着が無い滑らかな鋳肌面を同様にもたらすことができる。低濡れ性又は非濡れ性の物質の全量に基づき、硫酸バリウムの割合は、5重量%より大きくなるべきであり、好ましくは10重量%より大きく、特に好ましくは20重量%より大きく、又は、60重量%より大きい。純粋な硫酸バリウムの上限は、この場合、非濡れ性物質中の硫酸バリウムの割合は、100重量%である。低濡れ性又は非濡れ性の物質の混合物は、鋳型材料混合物に基づきそれぞれの場合において、好ましくは0.02〜5.0重量%の量が添加され、好ましくは0.05〜3.0重量%であり、特に好ましくは0.1〜2.0重量%、又は、0.3〜0.99重量%である。
【0081】
他の実施形態では、本発明による鋳型材料混合物は、リン含有化合物を備えることができる。この添加は、鋳造用鋳型の壁の部分が非常に薄い場合に好ましい。鋳型材料混合物は、無機リン化合物を備え、リンが+5の酸化状態において好適に存在することが好ましい。リン含有化合物の添加を通して、鋳造用鋳型の安定性はさらに向上することができる。これは、金属鋳造中に液体金属が傾斜面に当たり、高い溶湯静圧のためにそこで高浸食作用を起こすときに、又は、鋳造用鋳型の特に壁の薄い部分の破壊をもたらし得るときに、特に重要である。
【0082】
リン含有化合物は、好ましくはリン酸塩又は酸化リンの形態で存在する。リン酸塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属リン酸塩として存在することができ、アルカリ金属リン酸塩及び特にそのナトリウム塩が好ましい。
【0083】
理論的には、リン酸アンモニウム又は他の金属イオンのリン酸塩もまた用いられ得る。好適なものとして指定されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属リン酸塩は、しかしながら、手頃なコストで所望の量が容易に入手可能である。
【0084】
高原子価金属イオン、特に三価の金属イオンのリン酸塩は、好ましくない。そのような高原子価金属イオン、特に三価の金属イオンのリン酸塩が用いられるとき、鋳型材料混合物の処理時間が短縮されることが認められた。鋳型材料混合物のリン含有化合物が酸化リンの形態で添加される場合、酸化リンは好ましくは五酸化リンの形態である。しかしながら、三酸化リン及び四酸化リンもまた用いられる。
【0085】
ポリリン酸塩、ピロリン酸塩又はメタリン酸塩のようなオルトリン酸塩もまた、リン酸塩として用いてもよい。リン酸塩は、例えば、対応する塩基(例えばNaOH等のアルカリ金属塩基又は任意にアルカリ土類金属塩基も)と対応する酸との中和によって製造することができ、リン酸塩の全ての負電荷が金属イオンで飽和される必要はない。
【0086】
リン酸水素金属塩及びリン酸二水素金属塩のような金属リン酸塩としては、例えばNa
3PO
4、Na
2HPO
4及びNaH
2PO
4が用いられ得る。リン酸塩の水和物のような無水リン酸塩を用いてもよい。リン酸塩は、結晶質又は非晶質の形態で鋳型材料混合物に導入することができる。
【0087】
ポリリン酸塩は、1つを超えるリン原子を含有する線状リン酸塩として特に定義され、リン原子は酸素橋を越えて互いに結合する。ポリリン酸塩は、PO
4四面体が互いに角部で結合された直鎖が得られるように、水の分離によるオルトリン酸塩の濃縮によって得られる。ポリリン酸塩は、一般式(O(PO
3)n)
(n+2)−を有し、ここでnは鎖長に相当する。ポリリン酸塩は、数百個までのPO
4四面体を備えることができる。しかしながら、より短い鎖長のポリリン酸塩が好適に用いられる。好ましくは、nの値は2〜100であり、特に好ましくは5〜50である。より高濃縮のポリリン酸塩、即ち、PO
4四面体が2つを超える角部に亘って互いに結合しそれゆえ2次元又は3次元の重合を示す、ポリリン酸塩を用いてもよい。
【0088】
メタリン酸塩は、互いの角部で結合されたPO
4四面体から形成された環状構造として定義される。メタリン酸塩は、一般式((PO
3)n)
n−を有し、ここでnは少なくとも3である。好ましくは、nの値は3〜10である。
【0089】
個々のリン酸塩と種々のリン酸塩及び/又は酸化リンの混合物との両方を用いてもよい。
【0090】
耐熱性鋳型原料に基づくリン含有化合物の好ましい割合は、0.05重量%と1.0重量%との間である。0.05重量%より小さい割合では、鋳造用鋳型の寸法安定性に明確な効果が見られない。リン酸塩の割合が1.0重量%を超えると、鋳造用鋳型の熱間強度が大きく減少する。好ましくは、リン含有化合物の割合は0.1重量%と0.5重量%との間で選択される。
【0091】
リン含有無機化合物は、P
2O
5として算出して、好ましくは40重量%と90重量%との間、特に好ましくは50重量%と80重量%との間のリンを含有する。リン含有化合物自身は、固体の又は溶解された形態で鋳型材料混合物に添加することができる。好ましくは、リン含有化合物は、固体として鋳型材料混合物に添加される。リン含有化合物が溶解された形態で添加される場合、溶媒として水が好ましい。鋳造用鋳型を製造するために鋳型材料混合物へのリン含有化合物を添加することの他の利点として、金属鋳造後に鋳型が非常に良好な分解性を示すことが分かった。これは、軽金属等、特にアルミニウムの、より低い鋳造温度が要求される金属において当てはまる。鉄の鋳造では、1200℃を超える高温は、鋳造用鋳型のガラス化のリスクが増加し、従って特性が低下するように、鋳造用鋳型に影響を与える。
【0092】
他の実施形態では、(欧州特許第1802409号明細書及び国際公開第2008/046651号による)有機化合物は、本発明による鋳型材料混合物に添加することができる。少量の有機化合物の添加は、特定の用途について有利であり得る。例えば、硬化した鋳型材料混合物の熱膨張を制御するための用途である。しかしながら、そのような添加は、これが再度CO
2及びその他の熱分解生成物の排出にも関連するため、好ましくない。
【0093】
水を含有するバインダは、有機溶媒系バインダと比べて概して低い流動性を示す。これは、狭い通路と多数の方向転換を備える成形用型が十分に満たされないことを意味する。その結果、中子は、同様に注湯時の鋳造欠陥につながる可能性のある、不十分に圧縮された部分を有し得る。有利な実施形態によれば、本発明による鋳型材料混合物は、薄片状の潤滑剤、特に少量のグラファイト又はMoS
2を含有する。驚くことに、そのような潤滑剤、特にグラファイトを添加すると、薄壁の部分を備える複雑な鋳型さえも製造することができ、鋳型は、鋳造時の鋳造欠陥が実質的に認められないような均一性、高密度及び高強度を連続的に有する。添加される薄片状の潤滑剤、特にグラファイトの量は、鋳型原料に基づき、好ましくは0.05〜1重量%であり、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0094】
加えて、鋳型材料混合物の流動性を向上させるために、表面活性物質、特に界面活性剤を用いてもよい。これらの化合物の適切な代表例は、例えば、国際公開第2009/056320号(米国特許出願公開第2010/0326620号明細書)に記載されている。特に、硫酸基(複数含む)又はスルホン酸基(複数含む)を備える界面活性剤がここで言及され得る。
【0095】
表面活性物質は、水性の表面上の単分子層を形成することができ、従って例えば膜を形成することができる物質として定義される。加えて、表面活性物質は、水の表面張力を減少させる。好適な表面活性物質は、例えばシリコーンオイルである。
【0096】
特に好ましくは、表面活性物質は界面活性剤である。界面活性剤は、親水性の部分(頭部)及び長い疎水性の部分(尾部)を有する。それらの特性は、界面活性剤が例えば水相にミセルを形成することができ又は界面で濃縮されることができるように、両部分は十分にバランスされる。
【0097】
本質的に、全てのクラスの界面活性剤が、本発明による鋳型材料混合物に用いることができる。陰イオン界面活性剤に加えて、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤を用いることとしてもよい。
【0098】
非イオン界面活性剤の具体例は、例えば、エトキシル化脂肪アルコール、アルキルフェノールエトキシレート、エトキシル化脂肪アミン、エトキシル化脂肪酸、対応するプロポキシル化物、又は、例えば脂肪アルコール系ポリグリコシドである糖界面活性剤のような、エトキシル化又はプロポキシル化された長鎖アルコール、アミン又は酸である。脂肪アルコールは、好ましくは8〜20炭素原子を備える。好適な陽イオン界面活性剤は、アルキルアンモニウム化合物及びイミダゾリニウム化合物である。
【0099】
好ましくは、陰イオン界面活性剤は、本発明による鋳型材料混合物に用いられる。極性親水性基として、陰イオン界面活性剤は、好ましくは硫酸基、スルホン酸基、リン酸基又はカルボキシレート基を備え、硫酸基及びリン酸基は特に好ましい。硫酸基含有の陰イオン界面活性剤が用いられる場合、好ましくは硫酸モノエステルが用いられる。陰イオン界面活性剤の極性基としてリン酸基が用いられる場合、オルトリン酸のモノエステル及びジエステルが特に好ましい。
【0100】
本発明による鋳型材料混合物に用いられる界面活性剤は、好ましくは、非極性疎水性の部分(尾部)がアルキル基、アリール基及び/又はアラルキル基によって形成されるという事実を共通して有する。これらの各基は、好ましくは6個を超える炭素原子を備え、特に好ましくは8〜20個の炭素原子を備える。疎水性の部分は、直鎖と分岐構造との両方を有することができる。同様に、種々の界面活性剤の混合物を用いてもよい。特に好ましい陰イオン界面活性剤は、オレイル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、ラウリル硫酸塩、デシル硫酸塩、オクチル硫酸塩、2−エチルヘキシル硫酸塩、2−エチルオクチル硫酸塩、2−エチルデシル硫酸塩、パルミトレイル硫酸塩、リノリル硫酸塩、ラウリルスルホン酸塩、2−エチルデシルスルホン酸塩、パルミチルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、2−エチルステアリルスルホン酸塩、リノリルスルホン酸塩、ヘキシルリン酸塩、2−エチルヘキシルリン酸塩、カプリルリン酸塩、ラウリルリン酸塩、ミリスチルリン酸塩、パルミチルリン酸塩、パルミトレイルリン酸塩、オレイルリン酸塩、ステアリルリン酸塩、ポリ(1,2−エタンジイル)フェノールヒドロキシリン酸塩、ポリ(1,2−エタンジイル)ステアリルリン酸塩、及び、ポリ(1,2−エタンジイル)オレイルリン酸塩、の群から選択される。
【0101】
本発明による鋳型材料混合物では、純粋な表面活性物質は、耐熱性鋳型材料混合物の重量に基づき、好ましくは0.001〜1重量%の割合で存在し、特に好ましくは0.01〜0.2重量%である。そのような表面活性物質は、しばしば、20%〜80%の溶液として市販されている。この場合、表面活性物質の水溶液が特に好ましい。
【0102】
基本的に、表面活性物質は、独立した成分として、又は、キャリア材料として機能する固体成分(例えば添加剤)を介して、例えばバインダに溶解される形態で鋳型材料混合物に添加することができる。特に好ましくは、表面活性物質はバインダ中に溶解される。
【0103】
言及した成分に加えて、本発明による鋳型材料混合物は、追加の添加剤を備えることとしてもよい。例えば、成形用型からの鋳造用鋳型の分離を促進するため、内部離型剤を添加することとしてもよい。好適な内部離型剤は、例えば、ステアリン酸カルシウム、脂肪酸エステル、ワックス、天然樹脂、又は、特殊なアルキド樹脂、である。
【0104】
加えて、高湿度に対して及び/又は水系鋳型コーティングに対して鋳型及び中子の安定性を向上させるために、シランもまた本発明による鋳型材料混合物に添加することとしてよい。さらなる好適な実施形態によれば、本発明による鋳型材料混合物は、少なくとも1つの少量のシランを含有する。好適なシランは、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ヒドロキシシラン、及び、ウレイドシラン、である。好適なシランの具体例は、アミノプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、及び、N−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、である。バインダに基づき、典型的には0.1〜2重量%のシランが用いられ、好ましくは0.1〜1重量%である。他の好適な添加物は、アルカリ金属シリコネートであり、例えば、用いられ得るバインダに基づき、0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、及び、特に好ましくは1〜5重量%の、カリウムメチルシリコネートである。鋳型材料混合物がシラン及び/又はアルカリメチルシリコネートを含有する場合、それらは通常、予めバインダに包含させることによって添加される。しかしながら、それらは、独立の成分として鋳型材料に添加することもできる。
【0105】
本発明による鋳型材料混合物は、少なくとも言及した成分の均質な混合物を表す。耐熱性鋳型原料の粒子は、好ましくはバインダの層で覆われている。耐熱性鋳型原料の粒子間の堅い密着は、バインダ内に存在する水(バインダの重量に基づき約40〜70重量%)を蒸発させることにより実現することができる。
【0106】
本発明によるバインダシステムを用いて実現し得る注湯後の高強度にもかかわらず、本発明による鋳型材料混合物を用いて製造された鋳造用鋳型は、鋳造後には再び鋳造用鋳型の締め付けられ角度のついた部分からでさえも鋳型材料混合物を注ぎだすことが容易にできる程、驚くほど良好な分解性を示す。本発明による鋳型材料混合物から製造された鋳型は、例えば軽金属、非鉄金属又は鉄系金属の鋳造金属に概して適する。しかしながら、本発明による鋳型材料混合物は、鉄系金属の鋳造に特に好適である。
【0107】
本発明は、さらに、本発明による鋳型材料混合物を用いる金属処理のための鋳造用鋳型を製造する方法に関する。本発明による本発明は、以下の工程を備える。
・上述の鋳型材料混合物を用意する工程。
・鋳型材料混合物を成形する工程。
・成形された鋳型材料混合物を硬化させ、硬化した鋳型を得る工程。
【0108】
本発明による鋳型材料混合物の製造では、通例、(例えば、多成分系から)先ず耐熱性鋳型原料を取り出し、その後撹拌時にバインダを添加する。この処理において、本発明による水ガラス及び粒子状金属酸化物は、任意の順序で添加することができる。
【0109】
上述の添加剤は、任意の形態で鋳型材料混合物に添加することができる。それらは、個々に又は混合物として計量される。好ましい実施形態によれば、バインダは2成分系として用意され、第1の液体成分は水ガラス及び任意に界面活性剤(上記参照)を含有し、第2の液体成分は、本発明による金属酸化物を任意の上述の成分の1つ以上とともに備える。任意の上述の成分は、合成非晶質二酸化ケイ素、炭水化物、リン酸塩、好ましくは薄片状の潤滑剤、及び/又は、硫酸バリウム、であり、特に合成非晶質二酸化ケイ素である。
【0110】
鋳型材料混合物は、好ましくは、互いに空間的に分かれて存在する少なくとも以下の成分(A)及び(B)並びに任意の(F)を備える多成分系の形態で用意される。
(A)少なくとも1つの粒子状金属酸化物を備える粉末状添加成分。ここで、粒子状金属酸化物は、以下を備える又は以下からなる。
−アルファ相の少なくとも1つの酸化アルミニウム、及び/又は、
−層状ケイ酸構造を備えるアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外の、少なくとも1つのアルミニウム/ケイ素混合酸化物、そして、
−水ガラスは不含。
(B)液体バインダ成分(B)は、少なくとも、以下を備える。
−水を含有する水ガラス。
そして、任意の、
(F)自由流動性の耐熱性成分(F)は、以下を備える。
−耐熱性鋳型原料、そして、
−水ガラスは不含。
【0111】
組成の各追加成分は、以下のようにさらに詳細に定義される。具体的には、前述の追加成分は、好ましくは以下の成分(A)、(B)及び(F)に割り当てることができる。
成分(A)(添加成分):粒子状非晶質SiO
2、硫酸バリウム、リン含有化合物(固体として)、有機化合物。
成分(B)(バインダ成分):界面活性剤、リン含有化合物(水溶性の場合)。
成分(F)(耐熱性成分):合成鋳型材料。
【0112】
多成分系を用いることで、鋳型材料混合物は、必要量の成分を組み合わせることによって、又は、これより前でより具体的に定義された構成物質の必要量を備える成分を製造することによって、製造することができる。
【0113】
鋳型材料混合物の製造において、耐熱性鋳型原料は、ミキサ内に配置され、その後好ましくは先ず、粒子状金属酸化物の形態の固体成分、及び、任意の非晶質二酸化ケイ素、硫酸バリウム又は追加の粉末状固体が、耐熱性鋳型原料に添加され混合される。
【0114】
混合の継続時間は、耐熱性鋳型原料と追加される固体とが十分に混合されるように選択される。混合の継続時間は、用意される鋳型材料混合物の量と用いられる混合装置とに依存する。好ましくは、混合の継続時間は、1分と5分との間で選択される。
【0115】
その後、好ましくは混合物の撹拌を継続しながら、バインダの液体成分が追加され、その後混合物は、耐熱性鋳型原料の粒上にバインダの均一な層が形成されるまでさらに混合される。ここでも、混合の継続時間は、製造される鋳型材料混合物の量と用いられる混合装置とに依存する。好ましくは、混合処理の継続時間は、1分と5分との間で選択される。液体成分は、種々の液体成分の混合物としても個々の液体成分全ての総計としても定義され、後者は個々に追加することもできる。同様に、固体成分は、個々の固体成分の混合物としても上述の固体成分全ての総計としても定義され、後者は個々に又は1つずつ鋳型材料混合物に追加することとしてよい。他の実施形態によれば、先ず、バインダの液体成分を耐熱性鋳型原料に追加することができ、その後にだけ、固体成分が混合物に添加され得る。さらなる実施形態によれば、先ず、鋳型原料の重量に基づき0.05〜0.3%の水が耐熱性鋳型原料に追加され、その後にだけ、バインダの固体成分及び液体成分が追加される。
【0116】
この実施形態では、鋳型材料混合物の処理時間の驚くほど好ましい効果を実現することができる。発明者は、この方法ではバインダの固体成分の水の引出し効果が低減され、全硬化処理がそれに応じて遅延すると推定する。鋳型材料混合物は、その後、所望の形状にされる。この処理では、通常の成形が用いられる。例えば、鋳型材料混合物は、圧縮空気を用いる吹込み式中子製造機によって、成形用型内に吹き込むことができる。
【0117】
鋳型材料混合物は、その後完全に硬化する。ここでは、水ガラス系のバインダに対して知られる全ての方法が用いられる。例えば、熱間硬化、CO
2又は空気又は両方の組み合わせを用いるガス処理、及び、液体の又は固体の触媒を用いる硬化、である。
【0118】
熱間硬化では、鋳型材料混合物から脱水される。その結果、水ガラスの架橋結合が起こるように、シラノール基間で濃縮反応も始まると考えられる。
【0119】
例えば、加熱は、好ましくは100〜300℃の温度を有し、特に好ましくは120〜250℃の温度の、成形用型内ですることができる。成形用型内でも鋳造用鋳型を完全に硬化させることができる。しかしながら、成形用型から取り外すための十分な強度を有するように、鋳造用鋳型の外側領域のみを冷却することも可能である。鋳造用鋳型は、その後、他の水分を脱水することにより、完全に硬化される。これは、例えば、窯内で行うことができる。脱水は、例えば、減圧下での脱水によって行うこととしてもよい。
【0120】
鋳造用鋳型の硬化は、成形用型内に加熱空気を吹き込むことによって加速することができる。この方法の実施形態では、産業用に適する時間内に鋳造用鋳型が固まるように、バインダに含有される水の除去が達成される。吹き込まれる空気の温度は、好ましくは100℃〜180℃であり、特に好ましくは120℃〜150℃である。加熱空気の流速は、産業用に適する時間内に鋳造用鋳型の硬化が達成されるように、適宜調整される。時間は、製造される鋳造用鋳型の大きさに依存する。5分より短い時間内、好ましくは2分より短い時間の硬化が望ましい。しかしながら、非常に大きい鋳造用鋳型の場合、より長い時間が必要であってもよい。
【0121】
鋳型材料混合物からの水の除去は、マイクロ波の照射により鋳型材料混合物を加熱することによっても達成することができる。
【0122】
マイクロ波の照射は、好ましくは鋳造用鋳型が成形用型から取り外された後に行われる。しかしながら、この目的のため、鋳造用鋳型は既に十分な強度を有していなければならない。前述したように、これは、例えば、鋳造用鋳型の少なくとも1つの外殻部が既に成形用型内で硬化している場合に達成され得る。
【0123】
本発明による方法は、金属鋳造に通常用いられる全ての鋳造用鋳型、即ち例えば中子及び鋳型、の製造に本質的に適している。
【0124】
本発明による鋳型材料混合物から又は本発明による方法によって製造された鋳造用鋳型は、製造直後に高強度を示し、硬化後の鋳造用鋳型の強度は鋳造物の製造後の鋳造用鋳型の取り外しが困難になるほど高くない。加えて、これらの鋳造用鋳型は、周囲が高湿度であるときに高い安定性を示す。即ち、驚くことに、鋳造用鋳型は、長期に亘り問題なく保管することもできる。有利な点として、鋳造用鋳型は、機械的負荷の下で非常に高い安定性を示し、鋳造用鋳型の薄壁の部分であっても鋳造処理における溶湯静圧によって変形することなく実現することができる。従って、本発明の他の目的は、本発明による上述の方法により得られた鋳造用鋳型である。
【0125】
以下において、本発明は、実施例に基づき説明されるがそれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0126】
[曲げ強度及び処理時間に対する種々の酸化アルミニウム含有粉末の影響]
鋳型材料混合物の試験用に、いわゆるゲオルク・フィッシャー(Georg Fischer)試験棒が製造された。ゲオルク・フィッシャー試験棒は、150mm×22.36mm×22.36mmの寸法の矩形断面の試験棒である。鋳型材料混合物の成分を表1に示す。ゲオルク・フィッシャー試験棒を製造するため、以下の手順が用いられた。
【0127】
・表1に列挙された成分は、実験用櫂型ミキサ (Vogel & Schemmann AG, Hagen, DE)内で混合された。先ず、ケイ砂がミキサ内に配置され、撹拌しながら水ガラスが追加された。用いられた水ガラスは、少量のカリウムを含有するナトリウム水ガラスであった。それゆえ、以下の表において、モル比はSiO
2:M
2Oとして与えられる。ここで、Mはナトリウムとカリウムとの合計である。混合物が1分間撹拌された後、引き続き撹拌しながら任意に非晶質SiO
2及び/又は硫酸バリウムが追加された。混合物は、その後さらなる1分間撹拌された。
・鋳型材料混合物は、ViersenのRoperwerk - Giesereimaschinen GmbH社のH 2.5 Hot-Box中子製造機の貯槽へ移送された。
・鋳型材料混合物は、圧縮空気(5bar)を用いて成形用型内に送り込まれ、さらに35秒間成形用型内に留まった。
・混合物の硬化を加速するため、最後の20秒間は熱風(金型への入口で2bar、100℃)が成形用型を通過した。
・成形用型が開き、試験棒が取り出された。
【0128】
曲げ強度を決定するため、試験棒は、3点曲げ手段(DISA Industrie AG, Schaffhausen, CH)を備えるゲオルク・フィッシャー強度試験装置に配置され、試験棒を破壊させる力が測定された。曲げ強度は、以下の計画に従って測定された。
・取り外し後10秒(熱間強度)
・取り外し後1時間(冷間強度)
・1時間(空気交換無し)保管された鋳型材料混合物の取り外し後10秒(熱間強度)
・2時間(空気交換無し)保管された鋳型材料混合物の取り外し後10秒(熱間強度)
【0129】
混合物の1.01と1.02との曲げ強度の比較は、非晶質SiO
2粉末の追加によって熱間強度と冷間強度との両方が増加していることを示す。これは、独国特許出願公開第102004042535号明細書に記載された先行技術と一致している。
【0130】
混合物1.03〜1.09に対する混合物1.02の比較は、本発明によらない酸化アルミニウム含有粉末が、より低い強度をもたらし、又は、鋳型材料混合物の処理時間を低減させることを明確に示している(混合物1.08の強度の値を参照)。他方、混合物1.10〜1.13は、本発明による酸化アルミニウム含有粉末が、強度への影響がわずか又は無しであることを示している。処理時間(2時間より長い)もまた適切である。
【0131】
【表1】
【0132】
表1中の上付き文字は、それぞれ以下の意味を有する。
a)水ガラスの総重量に基づきSiO
2:M
2Oの重量比が約2.1のアルカリ水ガラス。固体分は約35%。
b)Microsilica white GHL DL971W(電気アーク炉内でシリコンの冶金製造中に形成された非晶質SiO
2、RW silicium GmbH社)
c)AEROXIDE Alu 130(BET表面積130m
2/gの発熱性酸化アルミニウム、Evonik Industries AG社)
d)AEROXIDE Alu 65(BET表面積65m
2/gの発熱性酸化アルミニウム、Evonik Industries AG社)
e)ARGICAL-M 1000(メタカオリン、calc.カオリン、板状粒子からなる非晶質材料、BET表面積17m
2/g、AGS Mineraux (IMERYS)社)
f)ARGICAL-M 1200S(メタカオリン、calc.カオリン、板状粒子からなる非晶質材料、BET表面積19m
2/g、AGS Mineraux (IMERYS)社)
g)Kaolin FP 80 ground(BET表面積19m
2/g、Dorfner社)
h)ARGICAL C88 R(カオリナイト、BET表面積13m
2/g、AGS Mineraux (IMERYS)社)
l)Kyanite 100 Mesh(Kyanite Mining Corporation社)
m)ALODUR WDCF coarse(特殊な溶融シリカのフィルタ細粉、Treibacher Schleifmittel社)
n)ALODUR FZM S(溶融ジルコニアムライト、Treibacher Schleifmittel社)
o)ALODUR ZKSF(ジルコニウムコランダム製造の細粉型副生成物、Treibacher Schleifmittel社)
【0133】
【表2】
【0134】
[鋳肌面の改善]
鋳肌面に対する本発明による粒子状金属酸化物の効果が評価された。以下の手順が用いられた。
・いわゆる階段状中子が製造された。これらの形状及び寸法を
図1及び2に示す。
図1は側面図を示し、図形の中にmmで段の高さが、図形の右側に各段の外径が、規定されている(段の直径の第1の値が下、段の直径の第2の値が上)。
図2には、階段状中子が上方から示されている。階段状中子の製造は、成形用型が180℃に加熱されたHot-Box吹込み式中子製造機を用いて行われた。鋳型材料混合物は、圧力下で成形用型内に送り込まれ、熱硬化を加速するために、熱風が鋳型材料混合物を通過した。表1の鋳型材料混合物1.02及び1.09〜1.12が用いられ、鋳造処理時に最も広い段の下側(ピラミッド型中子の立設面)のみが鋳造金属と接しないように鋳造用砂型に組み込まれた。階段状中子は鋳造用鋳型内でぶら下がり、その後、最も小さい段(最も狭い幅)が液体金属に最初に接するように、液体金属が満たされた。
・鋳造は、約1430℃の鋳造温度及び鋳造高さ55cmで溶融ねずみ鋳鉄GG20(新名称GJL20)を用いて行われた。
・鋳造用鋳型の冷却後、鋳造物はハンマーの打撃によって砂から離脱した。
・鋳造物は、その後、残った砂の付着について評価され、焼き付き(Versinterungen/Vererzungen)の可能性、及び、粗さ、について評価された。1(非常に良好)から6(不十分)までの評点が与えられた。これらを表3に示す。得られた鋳造物は、まだ砂の付着無しではなく、特に繊細な中子部分(狭い幅との段部)では砂の付着が見られ、それゆえ以下の手順が採用された。
・その後、鋳造物は、1barの軽いサンドブラスト圧力のサンドブラスト装置によって清掃された。用いられた粒は、100μmと200μmとの間の粒子径のガラスビーズであった。
【0135】
サンドブラスト時間は、1分に制限された。サンドブラストによる清掃の条件は、異なる鋳型材料混合物で製造された鋳造物間の差異が実質的に表面品質に影響を与えないで可視化され得るように選択された。
・鋳造物は、その後、焼き付きの可能性及び表面粗さについて評価された。この目的のため、1(非常に良好)から6(不十分)までの等級が与えられた。これらを表3に示す。
【0136】
【表3】
【0137】
混合物1.02の鋳造部分は、混合物1.09〜1.12の鋳造部分より砂の付着/焼き付きが多いこと又は粗さが大きいことを明確に示している。鋳肌面についての本発明による粒子状金属酸化物の好ましい効果は、ここでは非常に明確である。特に有利な結果は、ジルコニウムコランダム製造からの細粉型副生成物によって得られた。それゆえ、この物質の使用が極めて好ましい。
【0138】
サンドブラストの使用によって、付着している砂の残留物が完全に除去され、表面はこの使用によっていくらかなめらかにもなっているので、表面品質ははっきりと改善された。しかしながら、同じ条件下で全ての鋳造物にブラストするため、多大な注意が払われた。それゆえ、差異は単に鋳型材料混合物の成分に起因するのみである。また、鋳型原料としてケイ砂が用いられたが、いわゆる「ベーニング」は、ごくわずかに観察され得るか、全く観察され得ないことを留意されたい。
(付記)
(付記1)
金属処理用の鋳造用鋳型と中子とを製造するための鋳型材料混合物であって、少なくとも、
a)耐熱性鋳型原料と、
b)無機バインダとしての水ガラスと、
c)少なくとも1つの粒子状金属酸化物であって、
−アルファ相中の少なくとも1つの酸化アルミニウム、及び/若しくは、
−層状ケイ酸塩構造を有するアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外の少なくとも1つのアルミニウム/ケイ素混合酸化物、
を備える、又は、からなる、粒子状金属酸化物と、
を備える、鋳型材料混合物。
(付記2)
前記粒子状金属酸化物は、粒子状非晶質二酸化ケイ素以外のシリコンの酸化物をさらに備える、付記1に記載の鋳型材料混合物。
(付記3)
前記アルファ相中の前記酸化アルミニウムと、層状ケイ酸塩構造を有するアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外の前記アルミニウム/ケイ素混合酸化物とは、前記鋳型原料に基づきそれぞれの場合において、当該鋳型材料混合物の0.05重量%と2.0重量%との間で存在し、好ましくは0.1重量%と2.0重量%との間で存在し、特に好ましくは0.2重量%と0.8重量%との間で存在する、付記1又は2に記載の鋳型材料混合物。
(付記4)
前記粒子状金属酸化物は、前記アルファ相中の酸化アルミニウムを備える又は前記アルファ相中の酸化アルミニウムからなる、付記1〜3のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記5)
前記粒子状金属酸化物は、層状ケイ酸塩構造を有するアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外の、アルミニウム/ケイ素混合酸化物を備える又は当該アルミニウム/ケイ素混合酸化物からなる、付記1〜4のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記6)
前記アルミニウム/ケイ素混合酸化物は、アルミニウム原子とケイ素原子との合計に基づき、50原子%を超え且つ99原子%までのアルミニウム原子を含有し、好ましくは60原子%を超え且つ85原子%までである、付記1〜5のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記7)
前記粒子状金属酸化物は、特に合成若しくは天然のムライト、又は、好ましくはカイヤナイトであるシリマナイト族の物質、であり、それとは独立して、好ましくは、組み込まれた又は個別相としての酸化ジルコニウム、をさらに備える、ネソケイ酸塩を備える又は当該ネソケイ酸塩からなる、付記1〜6のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記8)
前記粒子状金属酸化物は、ジルコニウムコランダム及び/若しくはジルコニウムムライトである、又は、これらを含有する、付記1〜7のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記9)
前記粒子状金属酸化物は、
a)アルミニウムの酸化物の割合は、Al2O3として算出して、25重量%より大きく、好ましくは25重量%より大きく且つ80重量%より小さく、特に好ましくは30重量%より大きく且つ70重量%より小さく、特に好ましくは40重量%より大きく且つ60重量%より小さく、
b)好ましくはジルコニウムの酸化物の割合は、ZrO2として算出して、2重量%より大きく、好ましくは2重量%より大きく且つ50重量%より小さく、特に好ましくは4重量%より大きく且つ40重量%より小さく、特に好ましくは8重量%より大きく且つ30重量%より小さく、独立して、
c)ケイ素の酸化物の割合は、存在する場合、SiO2として算出して、5重量%より大きく、好ましくは5重量%より大きく且つ60重量%より小さく、特に好ましくは15重量%より大きく且つ50重量%より小さく、特に好ましくは20重量%より大きく且つ45重量%より小さく、独立して、
d)好ましくは、他の金属の割合は、主な酸化ステップにおける酸化物、特にFe2O3、Na2O、TiO2、MgO及びCaO、として算出して、12重量%より小さく、好ましくは8重量%より小さく、特に好ましくは4重量%より小さい、
付記1〜8のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記10)
前記粒子状金属酸化物は、ジルコニウムコランダム製造の副生成物として得られ得る酸化アルミニウム含有及び酸化ジルコニウム含有の細粉である、付記1〜9のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記11)
前記混合酸化物の比表面積は、50m2/gより小さく、好ましくは30m2/gより小さく、特に好ましくは17m2/gより小さく、それとは独立して、0.1m2/gより大きく、好ましくは0.5m2/gより大きく、特に好ましくは1m2/gより大きい、付記1〜10のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記12)
粒子状金属酸化物(複数含む)の直径として決定される平均一次粒子径は、0.01μmと50μmとの間であり、好ましくは0.02μmと20μmとの間であり、特に好ましくは0.02μmと10μmとの間である、付記1〜11のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記13)
メッシュサイズ75μm(200メッシュ)のふるいを通して前記粒子状金属酸化物をふるい分けして得た残留物は、約50重量%を超えず、好ましくは約30重量%を超えず、より好ましくは約20重量%を超えず、特に好ましくは約15重量%を超えない、付記1〜12のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記14)
前記粒子状金属酸化物のそれぞれの粒子の全ての空間方向の最大縦寸法:最小縦寸法の平均比は、好ましくは10:1より小さく、特に好ましくは5:1より小さく、とりわけ好ましくは3:1より小さく、とりわけ好ましくは1.1:1より小さい、付記1〜13のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記15)
前記粒子状金属酸化物は、前記鋳型材料混合物において多量の自由流動性粉末として用いられる、付記1〜14のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記16)
前記鋳型材料混合物は、有機化合物を最大1重量%、好ましくは最大0.2重量%含有する、付記1〜15のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記17)
前記鋳型材料混合物は、当該鋳型材料混合物の総量に基づきそれぞれの場合において、硫酸バリウムを好ましくは0.02〜5.0重量%、特に好ましくは0.1〜2.0重量%さらに備える、付記1〜16のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記18)
前記水ガラスは、SiO2/M2Oのモル比が1.6〜4.0であり、好ましくは2.0から3.5未満であり、Mはリチウム、ナトリウム及びカリウムの合計である、付記1〜17のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記19)
前記鋳型材料混合物は、当該鋳型材料混合物に基づき、0.5〜5重量%の水ガラス、好ましくは1〜3.5重量%の水ガラスを含有し、前記水ガラスの固体割合は25〜65重量%であり、好ましくは30〜60重量%である、付記1〜18のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記20)
前記鋳型材料混合物は、界面活性剤をさらに備え、当該界面活性剤は、好ましくは特にスルホン酸又はスルホン酸基を有する陰イオン界面活性剤の群から選択され、前記耐熱性鋳型原料の重量に基づき、特にそれぞれの場合において0.001〜1重量%の割合であり、特に好ましくは0.01〜0.2重量%である、付記1〜19のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記21)
前記鋳型材料混合物は、前記耐熱性鋳型原料の重量に基づき、好ましくは0.05〜1重量%の、特に0.05〜0.5重量%のグラファイトをさらに備える、付記1〜20のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記22)
前記鋳型材料混合物は、前記耐熱性鋳型原料の重量に基づき、好ましくは0.05重量%と1.0重量%との間で、特に好ましくは0.1重量%と0.5重量%との間で少なくとも1つのリン含有化合物をさらに備える、付記1〜21のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物。
(付記23)
・付記1〜22のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物を供給することと、
・型内に前記鋳型材料混合物を導入することと、
・前記鋳型材料混合物を硬化させることと、
を備える、鋳造用鋳型又は中子の製造方法。
(付記24)
前記鋳型材料混合物は、圧縮空気を用いて吹込み式中子製造装置によって前記型内に導入され、前記型は成形用型であり、前記成形用型は当該成形用型を通過する1つ以上のガスを有し、特にCO2又はCO2を含有するガスである、付記23に記載の鋳造用鋳型又は中子の製造方法。
(付記25)
前記鋳型材料混合物は、好ましくは5分より短い時間で少なくとも100℃の温度にさらされる、付記23又は24に記載の鋳造用鋳型又は中子の製造方法。
(付記26)
付記23〜25のいずれか1つに記載の製造方法により製造される鋳型又は中子。
(付記27)
好ましくは、中空マイクロスフェアをさらに備え、特にケイ酸アルミニウムの中空マイクロスフェア、及び/又は、ホウケイ酸塩の中空マイクロスフェアである、鉄系金属又はアルミニウムを鋳造するための付記1〜22のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物の使用。
(付記28)
少なくとも以下の空間的に分離した成分(A)及び(B)を備える、鋳型又は中子を製造するための多成分系。
(A)少なくとも粒子状金属酸化物を備える粉末状添加成分であって、前記粒子状金属酸化物は、
アルファ相中の少なくとも1つの酸化アルミニウム、及び/若しくは、
層状ケイ酸塩構造を有するアルミニウム/ケイ素混合酸化物以外の、少なくとも1つのアルミニウム/ケイ素混合酸化物、
を備え、又は、からなり、且つ、水ガラスを含まない、粉末状添加成分
(B)水を含有する水ガラスを少なくとも備える液体バインダ成分(B)
(付記29)
以下の(F)をさらに備える、付記28に記載の多成分系。
(F)耐熱性鋳型原料を備え且つ水ガラスを含まない、自由流動性耐熱性成分(F)
(付記30)
付記1〜22のいずれか1つに記載の鋳型材料混合物を製造するための、付記28又は29に記載の多成分系。