【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項に記載されている主題によって達成される。この主題の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項に記載されており、以下の説明および図面からも明らかになるであろう。
【0009】
少なくとも一実施形態によると、半導体レーザダイオードは、垂直方向に上下に重ねて形成されている半導体層を有する半導体積層体を有する。個々の半導体層は、垂直の成長方向に対して直角に向いた横方向または横断方向と、垂直方向および横方向に対して直角な縦方向とを有する。特に、半導体積層体は、動作時に活性領域においてレーザ放射を生成する活性層を有する。動作時、レーザ放射は放射取り出し面を介して放出され、放射取り出し面は、半導体積層体の側面によって形成されており、半導体積層体の反対側の裏面とともに、縦方向における共振器を形成する。したがって、本明細書に記載されている半導体レーザダイオードは、いわゆる端面発光型半導体レーザダイオードであることが好ましい。
【0010】
半導体積層体の上面に直接接触した状態でメタライゼーション層が形成されており、半導体積層体の上面は半導体カバー層によって形成されている。言い換えれば、半導体カバー層は、垂直方向において半導体積層体の一番上の半導体層である。
【0011】
半導体積層体の上面には、構造化された放熱層も形成されている。構造化された放熱層は、少なくともメタライゼーション層を有する。
【0012】
さらには、半導体レーザダイオードの活性領域は、30μm以上の幅を有する。このような半導体レーザダイオードは、いわゆるストライプレーザと称することもでき、特に好ましくはいわゆるブロードストライプレーザと称することができる。さらには、活性領域の幅は、200μm以下とすることができ、特に好ましくは、50μm以上150μm以下とすることができる。好ましい一実施形態においては、活性領域は、約100μmの幅を有することができる。活性領域の幅は、半導体層における電流拡張効果(current expansion effect)を考慮したときの横方向の電流拡張を定義する半導体層の幅によって実質的に決まる。この層(好ましくは帯状に形成されている)は、この場合には電流供給半導体層と称し、半導体カバー層、もしくは、1層または複数層の下層、またはその両方によって形成することができる。
【0013】
半導体積層体の共振器は、少なくとも、主に横方向の利得導波(predominately lateral gain-guiding)を有する共振器である。言い換えれば、本明細書に記載されている半導体レーザダイオードの場合、共振器において横方向の屈折率導波(lateral index-guiding)よりも横方向の利得導波が優勢であり、これは、活性層の上に配置されている半導体層における、活性層の近くのリッジ構造によって達成することができる。横方向の利得導波および横方向の屈折率導波の原理は、当業者に公知であり、したがってこれ以上説明しない。本明細書に記載されている半導体レーザダイオードとは異なり主として横方向の屈折率導波を有する半導体レーザの一例は、当業者に公知である台形状のリッジ導波路型レーザである。以下では、主として横方向の利得導波を有する共振器を、簡略的に、横方向の利得導波を有する共振器と称する。
【0014】
半導体レーザダイオードを動作させることにより、本明細書において熱影響領域(thermal region of influence)と称する領域において、レーザ放射の生成時に半導体積層体が加熱される。本明細書に記載されている半導体レーザダイオードの熱影響領域それぞれは、縦方向において、放射取り出し面まで約50μmの位置から、裏面まで約50μmの位置まで延在する。横方向には、熱影響領域は、活性領域の中心から見たとき、温度が値Tmin+(Tmax−Tmin)/10に下がる、活性領域の中心からの距離によって定義され、TmaxおよびTminは、活性領域の横方向中心と半導体積層体の横方向縁部との間の領域における温度の全体的な最大値(overall maximum value)および全体的な最小値(overall minimum value)である。横方向に互いに隣り合って配置されている複数の活性領域を有する半導体レーザダイオードの場合、Tminは、2つの隣り合う活性領域の間の温度の全体的な最小値を表す。
【0015】
前に定義した熱影響領域の外側(例えば放射取り出し面および裏面の真上)における半導体積層体の加熱については、以下では考慮しない。
【0016】
熱影響領域の幅は、活性領域の幅に依存し、したがって、電流が注入される活性層の領域の幅に依存する。半導体積層体における熱拡散効果のため、熱影響領域はつねに活性領域よりも広い。一般に、熱影響領域の幅は、活性領域の幅に約2×50μmを加えた値より小さい。言い換えれば、熱影響領域は、活性領域の両側においてそれぞれ横方向に50μm未満だけ突き出している。
【0017】
メタライゼーション層は、熱影響領域の上方の領域における累積幅(cumulative width)をさらに備えている。メタライゼーション層がその幅の方向に局所的に連続しており構造化されていない場合、累積幅は、メタライゼーション層の幅に一致する。メタライゼーション層が1つの領域において横方向に構造化部(例えば、後からさらに説明するように、開口部、ハーフトーン状の(half-tone-like)構造化された縁部、くさび形状の切取り部)を有する場合、累積幅は、この領域における部分領域すべての幅の合計を表す。
【0018】
本明細書に記載されている半導体レーザダイオードの場合、熱影響領域の幅に対するメタライゼーション層の累積幅の比は、放射取り出し面までの距離に依存して変化し、この場合、放射取り出し面までの同じ距離における累積幅と熱影響領域の幅の比が使用される。したがって、構造化された放熱層によって、活性領域からの放熱を縦方向もしくは横方向またはその両方向に沿って変化させることができる。
【0019】
メタライゼーション層の累積幅と熱影響領域の幅の比が縦方向において変化することにより、半導体積層体の熱影響領域からの放熱のための局所的な熱抵抗を変化させることができる。局所的な熱抵抗とは、本明細書においては、半導体レーザダイオードの活性領域における局所的な温度上昇と、半導体レーザダイオードの動作時に発生する局所的な損失要因密度(local loss factor density)の商に比例する変数を表す。したがって、局所的な熱抵抗は、活性領域への電流注入と、それによって発生する局所的な損失要因密度に起因して、半導体レーザダイオードの動作によって活性領域の部分領域が加熱される程度の測度である。局所的な熱抵抗が高いほど、特定の局所的な損失要因密度における局所的な温度上昇が高くなり、この逆も成り立つ。局所的な熱抵抗は、構造化された放熱層を通じての放熱が大きいほど小さく、したがって、特に放熱の測度でもあり、なぜなら、構造化された放熱層を通じての対応する局所的な放熱が大きいほど、局所的な熱抵抗と、したがって特定の局所的な損失要因密度における局所的な温度上昇が低いためである。
【0020】
構造化されていない放熱層を使用して大きな領域を通じて熱接合する場合(これは公知のレーザダイオードチップの場合である)、放熱のための局所的な熱抵抗は、領域全体にわたり少なくとも実質的に均一であり、したがって、局所的な損失要因密度が高い位置では、損失要因密度が低い位置よりも高い温度上昇が発生し、この結果として、特に、熱影響領域において、上述した不均一な温度分布につながる。本明細書に記載されている半導体レーザダイオードの場合、熱影響領域において局所的な熱抵抗が局所的な損失要因密度に適合化されて、局所的な損失要因密度が他の部分領域よりも低い部分領域において局所的な熱抵抗が高いように、構造化された放熱層の構造化と、特にメタライゼーション層の構造化とを選択することができ、これは有利である。
【0021】
本明細書において、層または要素が別の層または別の要素の「上」または「上方」に配置または形成されているとは、その層または要素がその別の層または別の要素に、機械的に直接接触した状態で、もしくは、電気的に接触した状態で、またはその両方の状態で、直接配置されていることを意味しうる。さらに、このことは、層または要素が別の層または別の要素の上または上方に間接的に配置されていることも意味しうる。この場合、層と別の層の間、または要素と別の要素の間に、さらなる層もしくはさらなる要素またはその両方を配置することができる。
【0022】
本明細書において、層または要素が2つの別の層または別の要素の「間に」配置されているとは、その層または要素が、2つの別の層または別の要素のうちの一方に、機械的に直接接触した状態で、もしくは、電気的に接触した状態で、またはその両方の状態で、または間接的に接触した状態で、直接配置されており、かつ、その層または要素が、2つの別の層または別の要素のうちの他方に、機械的に直接接触した状態で、もしくは、電気的に接触した状態で、またはその両方の状態で、または間接的に接触した状態で、直接配置されていることを意味しうる。間接的な接触の場合、1つの層と、2つの別の層のうちの少なくとも一方との間、または、1つの要素と、2つの別の要素のうちの少なくとも一方との間に、さらなる層もしくはさらなる要素またはその両方を配置することができる。
【0023】
上の説明によると、半導体積層体は、それぞれが主面に沿って延在する半導体層を有し、主面は、縦方向と、横方向または横断方向によって定義されており、その一方で、半導体積層体の配置方向または成長方向は、半導体レーザダイオードの垂直方向を定義する。以下の説明において、例えば半導体積層体の幅や、それ以外の層または領域の幅が言及される場合、その幅は、横方向または横断方向における、該当する要素の範囲を意味する。長さは、縦方向における範囲を意味し、厚さまたは高さは、垂直方向における範囲を表す。
【0024】
さらなる実施形態によると、半導体積層体は、活性層に加えて、さらなる機能半導体層、例えば、導波路層、シェル層、バッファ層、半導体コンタクト層のうちの1層または複数層を有する。活性領域として、半導体積層体は、例えば、従来のpn接合部、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造、または多重量子井戸構造を有することができる。量子井戸構造は、例えば、量子井戸、量子細線、量子ドット、またはこれらの構造の組合せを備えていることができる。
【0025】
半導体積層体は、例えば、ヒ化物半導体材料、リン化物半導体材料、または窒化物半導体材料からなる1層またはいくつかの半導体層を有することができる。長波長の赤外線〜赤色の放射の場合、例えばIn
xGa
yAl
1−x−yAs系の半導体積層体が適しており、赤色放射の場合、例えばIn
xGa
yAl
1−x−yP系の半導体積層体が適しており、短波長の可視放射(すなわち緑色光〜青色光、または紫外線放射)の場合、例えばIn
xGa
yAl
1−x−yN系の半導体積層体が適しており、いずれの場合も0≦x≦1かつ0≦y≦1である。
【0026】
半導体積層体の半導体層は、半導体積層体が、基板とは反対側の最後の層として半導体カバー層を有するように、基板の上に成長させることが好ましい。層を成長させた後、基板を、完全に、または部分的に除去することができる。さらには、半導体層に接触するための電極層を、半導体積層体の上に設ける。メタライゼーション層(半導体カバー層に直接接触している)が、このような電極層を形成していることが好ましい。したがって、半導体カバー層は、半導体コンタクト層を形成していることが好ましく、半導体コンタクト層は、特に好ましくは、特に1×10
18cm
−3より高いドーパント濃度で、高濃度にドープすることができる。一般には、この目的のため、半導体カバー層は、約200nmのオーダーの厚さを有することができる。この厚さは、半導体カバー層の横方向導電率に応じて、より大きい厚さまたはより小さい厚さとすることもできる。メタライゼーション層とは反対側の半導体積層体の面には、さらなる電極層によって接触することができる。
【0027】
さらには、例えば、半導体積層体の上面、少なくとも部分領域に、パッシベーション層を配置することができ、このパッシベーション層は、メタライゼーション層が、部分領域においてのみ、特に半導体カバー層の領域において、半導体積層体の上面に直接接触することができるように、構造化されている。半導体カバー層は、例えば、構造化して、部分領域を除去することができる。この場合、半導体カバー層が除去されている領域においては、半導体積層体の上面は、下層の露出した半導体層によって形成されている。
【0028】
さらには、半導体積層体は、構造化された放熱層と活性領域との間に、活性領域に電流を供給する半導体層を有することができる。この電流供給半導体層は、構造化することができ、縦方向において変化する横方向幅を有することができる。例えば、電流供給層の幅を、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて小さくすることができ、すなわち、電流供給層は台形状の構造を有する。あるいは、電流供給層は、放射取り出し面までの距離が大きくなるにつれて、少なくとも部分的に大きくなる幅を有することができる。電流供給層の幅を変化させることによって、熱影響領域の幅も変化する。
【0029】
例えば、電流供給層は、前述したように構造化することができ、半導体カバー層を備えている、または半導体カバー層によって形成することができる。これに代えて、またはこれに加えて、構造化された電流供給半導体層が、活性層と半導体カバー層との間に配置されている半導体層を備えている、またはこのような半導体層によって形成されていることも可能である。したがって、構造化された電流供給半導体層は、縦方向における帯状部を好ましく形成することができ、この帯状部は、放射取り出し面から、放射取り出し面とは反対側の裏面まで延在している。電流供給半導体層が、放射取り出し面までの距離が大きくなるにつれて少なくとも部分的に小さくなる、または大きくなる幅を有する場合、電流注入の幅、したがって局所的な損失要因密度が発生する領域の幅を、放射取り出し面までの距離に依存して変化させることができる。特に、電流供給層が放射取り出し面に向かって狭くなっていく場合、活性領域における電流密度、およびしたがって局所的な損失要因密度を、放射取り出し面から離れた位置よりも放射取り出し面の近くにおいて、小さくすることができる。この場合、特に活性領域および周囲の半導体層における温度分布を調整することが可能であり、これは有利である。放射取り出し面の近くで電流密度を減少させることによって、一般的なレーザダイオードでは放射取り出し面において上昇する温度を下げることが可能である。
【0030】
さらには、メタライゼーションと半導体積層体の上面との間の接触面(半導体積層体の上面に配置されているパッシベーション層において縦方向に延びている開口部によって形成されている)は、例えば、より狭くすることができ、電流供給層の幅もしくは構造化またはその両方とは独立した形状とすることができる。
【0031】
さらなる実施形態によると、少なくとも1層の半導体層は、半導体カバー層と活性層との間に、横方向において構造化された縁部を有する。したがって、横方向におけるこの縁部は、半導体層の幅の境界を形成する、または幅を定義する縁部であり、縦方向に延びている。特に、構造化された縁部を有する半導体層は、構造化された電流供給半導体層と活性層との間に配置することができる。縁部は、例えば、鋸歯状に構造化することができる。このような構造化によって、電流拡張と、したがって活性層における活性領域の範囲を、有利な様式で調整することができる。
【0032】
さらなる実施形態によると、メタライゼーション層は、それぞれが金属または合金からなる1層または特に好ましくは複数の層を備えている。したがって、メタライゼーション層は、複数の層の形の垂直構造を有することができる。メタライゼーション層の合計厚さは、最大で数マイクロメートルとすることができる。例えば、メタライゼーション層は、材料Ti/Pt/AuまたはAuGe/Ni/Auを有する積層体を有することができる。メタライゼーション層の層は、特に、製造効率と、金属と半導体積層体の上面との間の機械的な接着性と、金属−半導体遷移部の電気接触抵抗とに基づいて、選択することができる。
【0033】
さらなる実施形態によると、構造化された放熱層は、メタライゼーション層によって形成されている。言い換えれば、メタライゼーション層は、熱影響領域における横方向もしくは縦方向またはその両方向における構造化によって、縦方向もしくは横方向またはその両方向に沿って変化する局所的な熱抵抗をもたらす。
【0034】
さらなる実施形態によると、熱影響領域の幅に対するメタライゼーション層の累積幅の比は、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて減少する。結果として、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて、メタライゼーション層によって形成されている半導体積層体の接合面が、熱影響領域に関連して小さくなり、すなわち、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて、放熱量が低下することを達成することができる。大きな領域の上の構造化されていないメタライゼーションによる、大きな領域を通じての公知の構造化されていない接合と比較すると、裏面までの距離が小さくなるにつれて半導体積層体の部分領域において温度が上昇し、したがって、共振器の方向における温度差を減少させることができる。
【0035】
特に、メタライゼーション層は、放射取り出し面までの距離に依存して変化する構造化もしくは変化する幅またはその両方を有することができる。変化する構造化もしくは変化する幅またはその両方は、メタライゼーション層と活性層との間に配置されている半導体積層体の半導体層の構造化もしくは幅またはその両方と、少なくとも部分的に異なっていることができる。特に、このことは、メタライゼーション層と、活性層の上方に配置されている半導体層(すなわち特に例えば半導体カバー層)が、公知のリッジ導波路レーザの場合のように横方向および縦方向における同じ層断面を有するリッジ導波路構造を形成しないことを意味しうる。
【0036】
さらなる実施形態によると、メタライゼーション層は、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて減少する幅を有する。言い換えれば、メタライゼーション層は、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて狭くなる。結果として、すでに前述したように、半導体レーザダイオードを外部キャリアまたは外部ヒートシンクの上に例えばはんだ付けによって配置することのできる面を、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて小さくすることができる。したがって、メタライゼーション層を通じての放熱は、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて減少し、これに対応して、局所的な熱抵抗が増大する。放射取り出し面の近くでは、例えば、メタライゼーション層を電流供給半導体層よりも広くすることができ、特に、熱影響領域よりも広くすることができる。「放射取り出し面の近く」という表現は、縦方向において放射取り出し面の側の、メタライゼーション層の端部を意味する。裏面の近くでは、メタライゼーション層を熱影響領域よりも狭くすることができ、さらには電流供給半導体層よりも狭くすることができる。
【0037】
さらなる実施形態によると、メタライゼーション層は、開口部、特に、例えば垂直方向において電流供給層の上に配置されている開口部を有し、この開口部は、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて大きな表面積を占めることができる。すなわち、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて、大きさ、数、密度、またはこれらの特性の組合せが大きくなる。結果として、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて、メタライゼーション層の累積幅が小さくなる。
【0038】
さらなる実施形態によると、メタライゼーション層よりも低い熱伝導率を有する材料が開口部の中に配置されている。さらには、メタライゼーション層よりも低いはんだ付け性を有する材料を開口部の中に配置することも可能である。低いはんだ付け性とは、特に、はんだ境界面において高い熱抵抗が生じることを意味しうる。結果として、開口部の領域において、低い熱伝導率と、したがってメタライゼーションの上に配置されているヒートシンクへの、活性領域において発生する熱の小さい放熱を可能にすることができる。材料は、例えば合成材料(例:ベンゾシクロブテン(BCB))、空気、または真空によって形成することができる。さらには、開口部の中の材料が、はんだ付けできない材料、または極めて効果的にははんだ付けできない材料、例えば極めて効果的にははんだ付けできない金属(例:酸化金属)によって、形成されていることも可能である。さらに、メタライゼーションを開口部なしで形成し、次いで、相互に個別の部分領域においてメタライゼーションを酸化することも可能であり、酸化する部分領域の面密度は、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて大きくなる。
【0039】
さらなる実施形態によると、メタライゼーション層は、島状に構造化されている、横方向における縁部を有する。横方向における縁部とは、メタライゼーション層の縁部であって、それによってメタライゼーション層の幅が決まり、縦方向に延在する縁部を意味する。島状の構造化部を有する縁部とは、特に、中央の帯状部が活性領域の上方に縦方向に配置されており、メタライゼーション層が、横方向において、中央の帯状部に加えて島部を有することを意味しうる。中央の帯状部までの横方向距離が増大するにつれて、島部は小さい面密度を有することができ、すなわち、中央の帯状部までの横方向距離が増大するにつれて、大きさ、数、密度から選択される1つまたは複数の特性が小さくなるようにすることができる。メタライゼーション層の横方向における構造化された縁部は、特に好ましくは、ハーフトーン状に構造化することができる。さらには、横方向における縁部が開口部を有し、メタライゼーション層の中心から見たときに横方向距離が増大するにつれて、開口部が大きくなる、または、開口部の数または密度の少なくとも一方が増大する、またはその両方であることも可能である。
【0040】
さらなる実施形態によると、メタライゼーション層に内部ヒートシンクが直接接触した状態で形成されている。本明細書においては、内部ヒートシンクまたは一体型ヒートシンクは、好ましくははんだ結合を使用することなくメタライゼーション層に直接形成されている領域または層であって、少なくとも部分的に好ましくは高い熱伝導率を有する領域または層、を意味する。半導体レーザダイオードが上にはんだ付けされる外部ヒートシンクまたはキャリアとは異なり、内部ヒートシンクは、半導体レーザダイオードの一部であり、ウェハ複合体の形の複数の半導体レーザダイオードに形成されていることが好ましく、オプションとして構造化されており、ウェハ複合体によって隔てられている。内部ヒートシンクによって、半導体積層体と外部ヒートシンクとの間の熱抵抗を下げることができ、なぜなら、放熱に関して重要な境界面(半導体レーザダイオードと外部ヒートシンクまたは外部キャリアとの間のはんだ面によって形成される境界面であって、一般には極めて高い接触熱抵抗を有する)を、半導体積層体から遠く離して、したがって活性領域から遠く離して配置することができるためである。高い横断方向熱伝導率(thermal transverse conductivity)によって、内部ヒートシンクによって追加的に得られる層厚における熱経路が、はんだ境界面より前に内部ヒートシンク内で効率的に拡散し、したがって熱抵抗が下がる。特に、内部ヒートシンクは、半導体積層体とは反対側のはんだ面を有することができ、このはんだ面を介して半導体レーザダイオードをはんだ層によって外部キャリアの上に実装することができる。
【0041】
さらなる実施形態によると、内部ヒートシンクは、横方向および縦方向において構造化されておらず、したがって、横方向および縦方向において均一な熱伝導率を有する。したがって、縦方向もしくは横方向またはその両方向における変化する局所的な熱抵抗は、ここまでの実施形態による構造化されたメタライゼーション層によってあらかじめ決めることができ、一体型ヒートシンクは、半導体レーザダイオードの総熱抵抗を下げるのみである。
【0042】
さらなる実施形態によると、構造化された放熱層は、内部ヒートシンクをさらに備えており、内部ヒートシンクは、少なくとも横方向もしくは縦方向またはその両方向における構造化部を有する。言い換えれば、内部ヒートシンクを、構造化された放熱層の一部とすることができる。
【0043】
内部ヒートシンクの構造化部は、例えば、異なる熱伝導率を有し、かつ横方向もしくは縦方向またはその両方向において構造化された状態に配置される複数の材料によって、形成することができる。さらに、内部ヒートシンクは、垂直方向における構造化部を有することもできる。一体型ヒートシンクは、例えば、1種類またはいくつかの種類の金属(例えば、Au、Ag、Cu、Niから選択される金属)、合金(例えばCuW)、誘電体材料(例えばシリコン酸化物やシリコン窒化物などの酸化物または窒化物)、ポリマー(例えばBCB)、結晶性半導体(例えばAlN)、アモルファス半導体(例えばSiまたはGe)、ダイアモンド、セラミック材料、空気、または真空を備えていることができる。内部ヒートシンクの材料は、例えば蒸着、スパッタリング、ガルバニック堆積、プラズマ蒸着、スピンコーティング、または接合によって、メタライゼーション層の上に堆積させることができる。
【0044】
特に好ましくは、内部シンクは、大きく異なる熱伝導率を有する少なくとも2種類の材料を含んでおり、これにより、熱伝導率の差の大きい熱プロファイルを達成することができる。内部ヒートシンクの設計において構造的な形状および材料を選択するときの自由度により、熱伝導率プロファイルを大幅に調整することができ、これにより、半導体レーザダイオードのレーザパラメータの最適化を達成することができる。内部ヒートシンクは、数百ナノメートルの厚さ、好ましくは1μm以上の厚さを有することができる。特に好ましくは、内部ヒートシンクは、金属材料を使用し、かつ厚さが2μm以上のとき、ガルバニック堆積によって形成される。内部ヒートシンクは、導電性材料の場合、メタライゼーション層に電気を供給する目的に使用することができる。内部ヒートシンクに非導電性材料が使用される場合、電気供給要素(例えば電気ブッシングの形)が設けられ、電気供給要素によって、熱経路に加えて電気平行経路(electric parallel path)が達成される。電気平行経路は、半導体積層体に対して低い供給抵抗を有することが好ましい。
【0045】
一体型ヒートシンクの厚さは、使用される材料の熱伝導率に依存する最小厚さを下回らないようにするべきである。例えば金の場合、最小厚さは、1μm、好ましくは少なくとも2μm、特に好ましくは少なくとも5μmであるべきである。
【0046】
さらには、構造化された外部ヒートシンクに半導体レーザダイオードを貼り付けることも可能である。しかしながら、内部ヒートシンクを使用することは、熱伝導率の低いはんだ境界面が半導体積層体から遠く離れ、これにより低い総熱抵抗が達成されることにおいて有利である。さらには、内部ヒートシンクの場合、あらかじめ構造化された外部ヒートシンク上に実装するときに、半導体レーザダイオードの正確な調整が要求されることもない。
【0047】
さらなる実施形態によると、半導体レーザダイオードの製造時もしくは動作時またはその両方における欠点として、1種類または複数種類の材料を周囲に対して封止しなければならないという欠点を回避する必要がありうる。このような欠点の理由として、例えば、空気中において酸化する(例えば銅の場合)、材料が半導体内に拡散し、したがって半導体積層体の特性が変化する(例えば銅、銀、金の場合)、または異なる材料の間で冶金反応が発生する。封止部としては、例えば、密封層(enclosed layers)からなる障壁を使用することができる。例えば、白金またはクロムを使用して金を封止することができ、銅の場合には、例えばニッケルを使用することができる。
【0048】
さらには、封止する材料を、薄層封止部を使用して封止することができる。薄層封止部の場合、実質的に、薄層として設計される障壁層もしくはパッシベーション層またはその両方によって、障壁効果が生じる。薄層封止部の層は、一般的には、数百nm以下の厚さを有する。薄層は、例えば原子層成長法(ALD)工程によって形成することができる。封止構造の層に適切な材料は、例えば、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物、チタン酸化物、ハフニウム酸化物、ランタン酸化物である。封止構造は、それぞれが1原子層〜10nmの範囲内(両端値を含む)の厚さを有する複数の薄層を有する積層体を備えていることが好ましい。
【0049】
内部ヒートシンクは、ガルバニック堆積によって形成されることが好ましい。結果として、室温において、または半導体レーザダイオードのその後の動作温度において、金属層もしくは金属領域またはその両方を形成することが可能である。したがって、完成した部品は、極めて小さい留め部材(bracing)のみを有することができ、このことは、例えば特に、内部ヒートシンクに好ましい厚い金属層の場合に極めて有利であり得る。従来技術において一般的であるように、蒸着またはスパッタリングによって、すなわち高温において金属が堆積される場合、使用される複数の材料(すなわち、半導体材料、誘電体材料、金属、合成材料のうちの少なくとも1種類)の間で熱膨張係数が異なるため、室温まで冷やした後、完成した部品に大きな留め部材が存在することがある。膨張係数の例は、ガリウムヒ素の場合には6×10
−6/K、銅の場合には1.6×10
−5/K、銀の場合には1.9×10
−5/Kである。大きな留め部材は、特に、偏光純度、効率および広がり、半導体レーザダイオードの信頼性の点において、性能の低下につながりうる。
【0050】
さらなる実施形態によると、内部ヒートシンクは、それぞれが第2の材料を有する2つのさらなる領域の間に横方向に配置されている、第1の材料を有する領域を有する。第2の材料は、第1の材料とは異なる熱伝導率、好ましくは第1の材料よりも低い熱伝導率を有することができる。さらに、第1の材料と第2の材料を垂直方向に交互に配置する、例えば、垂直方向において第1の材料の領域の間に第2の材料を配置することが可能である。第2の材料もしくは第1の材料またはその両方は、くさび形状を有することもでき、例えば、内部ヒートシンクの中心から見たとき横方向距離が増大するにつれて第2の材料の厚さが大きくなる。さらには、例えば、第1の材料が、放射取り出し面までの距離が増大するにつれて減少する幅を有することも可能である。さらには、第2の材料を、例えば複数の相互に個別の部分領域の形で第1の材料に埋め込むることも可能である。さらに、例えば第3の材料を設けることもでき、第3の材料は、第1の材料および第2の材料とは異なる熱伝導率を有し、少なくとも部分的に、第1の材料または第2の材料について前述したように配置されている。
【0051】
さらなる実施形態によると、内部ヒートシンクは、縦方向において半導体積層体よりも小さい長さを有することができ、したがって、放射取り出し面の領域、もしくは、放射取り出し面とは反対側の裏面の領域、またはその両方において、半導体積層体はヒートシンクの第1の材料を超える突き出し部を有することができる。突き出し部の領域には、例えば第1の材料よりも高い熱伝導率を有する第2の材料を配置することができる。第2の材料は、低い温度、特に第1の材料よりも低い温度において融解し、かつ高い熱伝導率を有する材料から形成することができる。例えば、第2の材料は、例えば約157℃の融点を有するインジウムや、約230℃の融点を有する錫などの金属によって、形成することができる。第2の材料は、突き出し部の領域に堆積物の形で堆積させることができる。結果として、堆積物として形成された第1の材料および第2の材料を含む内部ヒートシンクを有する、ウェハ複合体における複数の半導体レーザダイオードを製造し、次いで個々の半導体レーザダイオードを分離することが可能である。分離は、例えば、ウェハ複合体を切断してレーザ傾斜面を生成することによって実施することができる。分離した後、第2の材料の融点よりも高い温度まで加熱することによって、第2の材料の自己調整溝(self adjusted channel)を堆積物から形成することができ、したがって、第2の材料と、縦方向における第1の材料への遷移によって、放射取り出し面の近くで局所的な熱抵抗の低減が生じる。溝は、材料、提供される量および寸法、および工程パラメータに応じて、凹状または凸状として形成することができる。
【0052】
全体的な熱抵抗を最小にする目的でできる限り大きい結合面が設けられている公知のレーザダイオードチップとは異なり、本明細書に記載されている半導体レーザダイオードでは、放熱層の上述した構造化によって半導体積層体と外部ヒートシンクとの間の局所的な熱抵抗を変化させることが特に可能であり、これにより、熱影響領域において半導体層内の温度分布の不均一性を低減することができる。結果として、全体としては温度の不均一性によって発生する熱レンズの出力を低減することが可能であり、ただし、半導体レーザダイオードの総熱抵抗と、半導体積層体の絶対的な温度レベルも、公知のレーザダイオードチップと比較して増大することがある。
【0053】
上述した実施形態によると、説明した有利な効果は、特に、特に好ましくはブロードストライプレーザとして設計されている半導体レーザダイオードにおいて電気経路と熱経路を部分的に切り離す、もしくは分離する、またはその両方を行うことによって、達成することができる。これは、2次元または3次元に構造化されたメタライゼーション(すなわちメタライゼーション層)、またはさらにはんだ境界面の上の内部ヒートシンクを使用することによってと、さらには例えば横方向および縦方向に構造化された高導電性の半導体層(例えば半導体カバー層)によって、可能である。結果として、熱影響領域において、電流の分布と熱の流れを、相互に独立して特定の限界内で調整することができ、したがって、半導体レーザダイオードにおける温度分布を、電気パラメータとは無関係に変化させて均一化することができる。前述したように、半導体積層体の上面における、または上面に近い、2次元または3次元に構造化されたメタライゼーションは、1種類または複数種類の金属、もしくは、異なる熱伝導率を有する追加の材料(例えば空気、真空、誘電体材料など)、またはその両方を備えていることができ、したがって、構造化された領域と構造化されていない領域の熱伝導率の差を増大させることができる。構造化によって、外部ヒートシンクまたは外部キャリアに熱的に結合される面を小さくすることができ、これにより、構造化の存在しない場合と比較して、半導体レーザダイオードの総熱抵抗が増大することがあるが、熱レンズの厚さを低減することができる。
【0054】
上述したように内部ヒートシンクをモノリシックに一体化することは、外部ヒートシンクまたは外部キャリアと半導体積層体との間の、熱伝導率の低いはんだ境界面を、主損失要因源(すなわち活性領域)から遠くに移動させる目的と、それによって改善される熱拡散によって半導体レーザダイオードの総熱抵抗を下げる目的で、例えば高い熱伝導率を有する厚いメタライゼーションの形においても、特に有利であり得る。結果として、前述したようにメタライゼーションの構造化によってもたらされる熱抵抗の増大は、少なくとも一部を埋め合わせることができる。
【0055】
さらなる利点、有利な実施形態、および有利な発展形態は、以下に図面を参照しながら説明する例示的な実施形態から明らかになるであろう。