(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.ポリアミド中空糸膜
本発明のポリアミド中空糸膜は、(1)メチレン基とアミド基を−CH
2−:−NHCO−=4:1〜10:1のモル比で有するポリアミド樹脂からなり、(2)膜表面の水に対する接触角が80°以下であり、(3)外圧透水量が50L/(m
2・atm・h)以上であり、(4)50nmの粒子の阻止率が90%以上であることを特徴とする。以下、本発明のポリアミド中空糸膜について詳述する。
【0017】
本発明のポリアミド中空糸膜は、メチレン基とアミド基を−CH
2−:−NHCO−=4:1〜10:1のモル比で有するポリアミド樹脂によって形成される。このようなポリアミド樹脂を使用することにより、所望の微細孔径を有し、高い親水性を有する中空糸膜を形成することが可能になる。当該ポリアミド樹脂におけるメチレン基とアミド基のモル比としては、より親水性を高め、微細孔径をより効率的に形成させるという観点から、好ましくは−CH
2−:−NHCO−=4:1〜7:1、更に好ましくは−CH
2−:−NHCO−=4:1〜5:1が挙げられる。尚、本発明において、芳香環を有するポリアミドの−CH−基又は−C=基は、−CH
2−基とみなしてメチレン基のモル比を計算するものとする。
【0018】
本発明に使用されるポリアミド樹脂としては、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミドMXD6等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミドMXD6が挙げられる。本発明において、ポリアミド中空糸膜は、1種のポリアミド樹脂により形成されていてもよく、また2種以上のポリアミド樹脂のブレンドポリマーにより形成されていてもよい。
【0019】
本発明に使用されるポリアミド樹脂は、繊維形状に成形可能であることを限度として、架橋の有無は問わない。コスト低減の観点からは、架橋されていないポリアミド樹脂が好ましい。
【0020】
本発明に使用されるポリアミド樹脂は、金属を含有する重合触媒を使用せずに合成されたものであることが好ましく、また、酸化防止剤、滑剤、加水分解抑制剤、末端封止剤、可塑剤、重合開始剤等の添加物が添加されていないものが好ましい。このようなポリアミド樹脂を用いることにより、本発明のポリアミド中空糸膜が濾過膜として使用される際の不純物の溶出を非常に低くすることが可能となる。このような観点から、本発明に使用されるポリアミド樹脂の好適な例としては、ポリアミド6、ポリアミド11等であって、水を重合開始剤とした開環重合により重合されたものが挙げられる。
【0021】
また、ポリアミド樹脂の相対粘度としては、特に制限されないが、例えば2.0〜6.2、好ましくは3.0〜5.5が挙げられる。このような相対粘度を備えるポリアミド樹脂を使用することにより、中空糸膜状への成形性、相分離の制御を容易ならしめることができる。本明細書において、相対粘度とは、96%硫酸を用い、ポリアミド樹脂濃度1g/dlで溶解し、25℃の条件でウベローデ型粘度計によって測定された値である。
【0022】
本発明のポリアミド中空糸膜は、膜表面の親水性に優れており、膜表面の水に対する接触角が80°以下である。膜表面の水に対する接触角として、好ましくは70°以下、更に好ましくは40〜65°が挙げられる。本明細書において、水に対する接触角は、膜の表面に1.8μl量の純水の水滴を優しく接触させ、膜の表面に形成された水滴の端点における接線と膜表面とのなす角度を接触角計で測定し、θ/2法にて求められる値である。従って、この値が小さいほど親水性が高いといえる。
【0023】
本発明のポリアミド中空糸膜は、膜表面の水に対する接触角が80°以下という特性を備えることにより、疎水性物質の吸着を抑制でき、膜の濾過性能が短時間で低下するのを防止することができる。また、上記接触角を備えることにより、本発明のポリアミド中空糸膜を乾燥状態で水の濾過に供しても、表面張力により水の透過が阻害されるのを抑制することができる。更に、本発明のポリアミド中空糸膜は、当該接触角の範囲を備えることにより、有機溶剤系での濾過においては、親水性の異物を特異的に吸着除去することができる。
【0024】
また、本発明のポリアミド中空糸膜は、透過性能の一つとして外圧透水量が50L/(m
2・atm・h)以上2500L/(m
2・atm・h)以下である。外圧透水量は孔径によっても変わるが、孔径5nmの粒子を90%以上阻止する性能を有する中空糸膜においては、50L/(m
2・atm・h)以上であることが好ましく、100L/(m
2・atm・h)以上であることが更に好ましい。孔径5nmの粒子を10%以上透過させるが孔径10nmの粒子を90%以上阻止する性能を有する中空糸膜においては、150L/(m
2・atm・h)以上であることが好ましく、200L/(m
2・atm・h)以上であることが更に好ましい。孔径10nmの粒子を10%以上透過させるが孔径20nmの粒子を90%以上阻止する性能を有する中空糸膜においては、250L/(m
2・atm・h)以上であることが好ましく、350L/(m
2・atm・h)以上であることが更に好ましい。孔径20nmの粒子を10%以上透過させるが孔径50nmの粒子を90%以上阻止する性能を有する中空糸膜においては、500L/(m
2・atm・h)以上であることが好ましく、1000L/(m
2・atm・h)以上であることが更に好ましい。本発明のポリアミド中空糸膜は、このように高い外圧透水性能を有しているので、処理液の流量を高く設定でき、濾過効率を高めることができる。
【0025】
本明細書において、ポリアミド中空糸膜の外圧透水量は、外圧式濾過によって測定される値であり、具体的には、ポリアミド中空糸膜を9〜12cmに切断し、両端の中空部分に内径に合う径の注射針を挿入し、一方の注射針をキャップ20で封止し、他方の注射針を排出口部21に連結させて、
図1に示すような装置にセットした後、所定時間(時間)送液ポンプ14で純水を通しながら、出口弁18のバルブを調整して0.05MPaの一定の圧力に維持させ、膜を透過して受け皿19に貯まった水の容量(L)を透過水量として測定し、以下の式により算出される値である。なお、入口圧は
図3の入口圧力計15で測定され、出口圧は
図3の出口圧力計17で測定される。
【0026】
外圧透水量=透過水量(L)/[外径(m)×3.14×長さ(m)×{(入口圧(atm)+出口圧(atm))/2}×時間(h)]
【0027】
また、本発明のポリアミド中空糸膜は、濾過性能として、50nmの粒子の阻止率が90%以上である。本発明のポリアミド中空糸膜が備える50nmの粒子の阻止率として、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上が挙げられる。
【0028】
また、本発明のポリアミド中空糸膜における濾過性能の好適な例として、20nmの粒子の阻止率が90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上が例示される。更に、本発明のポリアミド中空糸膜における濾過性能のより好適な例として、10nmの粒子の阻止率が90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上が例示される。特に、本発明のポリアミド中空糸膜における濾過性能のより一層好適な例として、10nmの粒子の阻止率が90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上が例示される。本発明のポリアミド中空糸膜は、このように微小な粒子を分離できるような細孔構造を有しており、微細粒子の除去が可能になっている。
【0029】
本明細書において、各粒径の粒子の阻止率は、所定の平均粒子径をもつ金コロイド粒子を用いて濾過試験をした場合に、除去された金コロイド粒子の割合から算出される。金コロイド粒子は、粒子径の分布が非常に狭いため、金コロイドを用いて濾過試験により中空糸膜の粒子の阻止率を正確に反映できる。金コロイド粒子を用いた濾過試験は、具体的には、所定の平均粒子径をもつ金コロイドを10ppm含む水分散液に、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを2mmol/lを添加し、濾過圧力0.3MPa、濾過温度25℃の条件で定圧デッドエンド濾過を行い、ろ液を積算濾過量0.005(m
3/m
2)毎に分取し、2番目の分取液の波長524nmの吸光度を測定し、次式から各粒径の粒子の阻止率が算出される。
粒子の阻止率(%)={(濾過原液の吸光度−濾液の吸光度)/濾過原液の吸光度}×100
【0030】
本発明のポリアミド中空糸膜が備える破断強度については、特に制限されないが、例えば5〜30MPa、好ましくは7〜25MPa、更に好ましくは9〜20MPaが挙げられる。また、本発明のポリアミド中空糸膜が備える破断伸度についても、特に制限されないが、例えば50〜300%、好ましくは80〜250%、更に好ましくは100〜230%が挙げられる。更に、発明のポリアミド中空糸膜が備える引張弾性率についても、特に制限されないが、例えば50〜250MPa、好ましくは50〜200MPa、更に好ましくは70〜170MPaが挙げられる。本明細書において、破断強度、破断伸度、及び引張弾性率は、JIS L−1013に準拠し、試長50mm、引張速度50mm/min、測定数=5にて測定される値である。
【0031】
本発明のポリアミド中空糸膜の内径及び外径については、特に制限されず、使用目的等に応じて適宜設定されるが、内径としては、例えば800〜100μm、好ましくは600〜150μm、更に好ましくは450〜200μmが挙げられ、外径としては、例えば1800〜250μm、好ましくは1500〜300μm、更に好ましくは1000〜400μmが挙げられる。
【0032】
本発明のポリアミド中空糸膜の金属含有量は、各々の金属元素ごとに、例えば10ppm以下であり、5ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。このように、本発明のポリアミド中空糸膜は、金属元素などの不純物の含有量が少ないため、濾過膜として使用される際の不純物の溶出が非常に少ない。ここでいう金属としては、Ag、Al、As、Au、B、Ba、Be、Bi、Ca、Cd、Ce、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Ga、Gd、Ge、Hf、Hg、Ho、In、Ir、K、La、Li、Lu、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、P、Pb、Pd、Pr、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Se、Si、Sm、Sn、Sr、Ta、Tb、Te、Ti、Tl、Tm、V、W、Y、Yb、Zn、Zrが挙げられる。
【0033】
本発明のポリアミド中空糸膜の金属含有量は、中空糸膜の乾燥試料を硝酸、硫酸、ギ酸、トリクロロ酢酸等の室温でポリアミドを溶解する溶媒に溶解させ、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定して得られた値をいう。
【0034】
2.ポリアミド中空糸膜の製造方法
本発明のポリアミド中空糸膜は、TIPS法による特定の製造条件を採用することにより製造することができる。具体的には、本発明のポリアミド中空糸膜は、下記第1〜3工程を経て製造される。
【0035】
第1工程:メチレン基とアミド基を−CH
2−:−NHCO−=4:1〜10:1のモル比で有するポリアミド樹脂を21〜35質量%の範囲の濃度で、150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度では当該ポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に溶解させた製膜原液を調製する。
第2工程:二重管構造の中空糸製造用二重管状ノズルを用い、外側の環状ノズルから前記製膜原液を吐出すると共に内側のノズルから内部液を吐出し、多価アルコール又は多価アルコールと水の混合液を含む凝固浴中に浸漬させて、中空糸膜を形成する。
第3工程:第2工程で形成された中空糸膜から有機溶媒を除去する。
【0036】
以下、本発明のポリアミド中空糸膜の製造方法について工程毎に詳述する。
【0037】
第1工程
第1工程では、メチレン基とアミド基を−CH
2−:−NHCO−=4:1〜10:1のモル比で有するポリアミド樹脂を21〜35質量%の範囲の濃度で、150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度では当該ポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に溶解させた製膜原液を調製する。
【0038】
150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度ではポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒、グリセリンエステル類、グリコール類、有機酸及び有機酸エステル類、高級アルコール類、グリコール類等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒の具体例としては、スルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどが挙げられる。グリセリンエステル類の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。グリコール類の具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量100〜600)、1,3−ブタンジオール等が挙げられる。有機酸及び有機酸エステル類の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、サリチル酸メチル、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等が挙げられる。これらの中でも、強度が高く、均質で微細な孔径を有するポリアミド中空糸膜を得るという観点から、好ましくは非プロトン性極性溶媒、更に好ましくはスルホラン、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、特に好ましくはスルホラン、ジメチルスルホンが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記有機溶媒の中でも、とりわけ、スルホランとジメチルスルホンの混合溶媒は、微細な孔径を形成する上で特に有効であり、本発明において好適に使用される。スルホランとジメチルスルホンの混合溶媒を使用する場合、その混合比としては、例えば、スルホラン:ジメチルスルホンの質量比が、100:50〜1000、好ましくは100:100〜500、更に好ましくは100:200〜400が挙げられる。
【0040】
また、ポリアミド中空糸膜の孔径制御や性能向上のために、必要に応じてこれらの前記有機溶媒には、増粘剤、界面活性剤、アミド系添加剤等を添加してもよい。
【0041】
ポリアミド樹脂を前記有機溶媒に溶解する際の濃度は、21〜35質量%の範囲内で設定すればよいが、好ましくは21〜30質量%、更に好ましくは23〜28質量%である。このような濃度範囲を満たすことにより、外圧透水量と粒子の阻止率を前述する範囲内で充足させることが可能になる。
【0042】
また、ポリアミド樹脂を前記有機溶媒に溶解するに当たり、溶媒の温度を100℃以上にしておくことが必要である。具体的には、その系の相分離温度の10℃〜50℃高い温度、好ましくは20℃〜40℃高い温度で溶解させるのがよい。その系の相分離温度とは、樹脂と溶媒を十分に高い温度で混合したものを徐々に冷却し、液−液相分離又は結晶析出による固−液相分離が起こる温度である。相分離温度の測定は、ホットステージを備えた顕微鏡等を使用することで好適に行うことができる。
【0043】
第2工程
第2工程では、二重管構造の中空糸製造用二重管状ノズルを用い、外側の環状ノズルから前記製膜原液を吐出すると共に内側のノズルから内部液を吐出し、多価アルコール又は多価アルコールと水の混合液を含む凝固浴中に浸漬させて、中空糸膜を形成する。
【0044】
ここで、中空糸製造用二重管状ノズルとしては、溶融紡糸において芯鞘型の複合繊維を作製する際に用いられるような二重環状構造を有する口金を用いることができる。中空糸製造用二重管状ノズルの断面構造の一例を
図2に示す。中空糸製造用二重管状ノズルの外側の環状ノズルの径、内側のノズルの径については、ポリアミド中空糸膜の内径と外径に応じて適宜設定すればよい。
【0045】
また、第2工程において、中空糸製造用二重管状ノズルの内側のノズルから吐出される内部液については、ポリアミド樹脂に対して不活性であることを限度として、液体と気体の別を問わないが、液体は、製膜原液の粘性が低く糸状形成が難しい条件でも紡糸が可能であるため好適に使用される。内部液として使用される液体は、ポリアミド樹脂に対して不活性であることを限度として特に制限されないが、ポリアミド中空糸内表面の孔を大きくしたい場合には当該ポリアミド樹脂と親和性の高い良溶媒を、ポリアミド中空糸内表面の孔を小さくしたい場合には貧溶媒を使用することができる。かかる良溶媒の具体例としては、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、スルホラン等が挙げられる。また、かかる貧溶媒の具体例としては、ポリエチレングリコール(300〜600)、高級脂肪酸類、流動パラフィン等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、製膜原液の粘性が高く、曳糸性に優れている場合には、不活性ガス等の気体を流入する方法を用いてもよい。
【0046】
これらの内部液の中でも、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、スルホランは、ポリアミド中空糸の外圧透水量と粒子の阻止率を前述する範囲内で充足させる上で特に好適に使用される。
【0047】
さらに、孔径を10nm以下と微細にする際には、貧溶媒を使用又は混合使用することが好ましい。かかる貧溶媒の具体例としては、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400が好ましい。これらを使用又は混合使用することにより、本発明のポリアミド中空糸膜は、高い透水量を維持したまま孔径を小さくでき、より微細な粒子を捕捉することが可能となる。
【0048】
本第2工程において、凝固浴として多価アルコール又は多価アルコールと水の混合液を含む凝固浴を使用する。このような凝固浴を採用することにより、前記特性のポリアミド中空糸を形成することが可能になる。凝固浴に使用される多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(200〜400)、1,3−ブタンジオール等が挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール200は、ポリアミド中空糸の外圧透水量と粒子の阻止率を前述する範囲内で充足させる上で特に好適に使用される。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
また、凝固浴として、多価アルコールと水の混合液を使用する場合、これらの混合比については、特に制限されないが、例えば、多価アルコール:水の質量比が、25〜80:75〜20、好ましくは40〜70:60〜30が挙げられる。
【0050】
凝固浴の温度は、特に限定されないが、通常、−20〜100℃、好ましくは−10〜80℃、更に好ましくは0〜40℃が挙げられる。凝固浴の温度を変化させることにより、結晶化速度を変えることができるため、孔径サイズ、透水量、強度を変化させることができる。一般には、凝固浴の温度が低ければ孔径サイズは小さくなり透水量は低下し強度が向上する傾向がみられ、凝固浴の温度が高ければ孔径サイズが大きくなり透水量は向上し強度は低下する傾向がみられるが、製膜原液に含まれる溶媒と内部液との溶解性や樹脂自体の結晶化速度によっても変わり得る。ポリアミド中空糸の外圧透水量と粒子の阻止率を前述する範囲内で充足させるためには凝固浴は低温度が好ましいが、条件によっては必ずしも低温度である必要はない。凝固浴の温度が上記範囲内であれば、ポリアミド中空糸の外圧透水量と粒子の阻止率を前述する範囲内で充足させつつ、膜の強度を高め、しかも温度制御に要するエネルギーを低減することもできる。
【0051】
また、中空糸製造用二重管状ノズルの外側の環状ノズルから前記製膜原液を吐出させる際の流量については、特に制限されないが、例えば2〜20g/分、好ましくは3〜15g/分、更に好ましくは4〜10g/分が挙げられる。また、内部液の流量については、中空糸製造用二重管状ノズルの内側ノズルの径、使用する内部液の種類、製膜原液の流量等を勘案して適宜設定されるが、例えば製膜原液の流量に対して、0.1〜2倍、好ましくは0.2〜1倍、更に好ましくは0.4〜0.7倍が挙げられる。
【0052】
斯して第2工程を実施することにより、中空糸製造用二重管状ノズルから吐出された製膜原液が凝固浴中で凝固してポリアミド中空糸膜が形成される。
【0053】
第3工程
第3工程では、第2工程で形成された中空糸膜から有機溶媒を除去する。中空糸膜から有機溶媒を除去する方法については、特に制限されず、ドライヤーで乾燥させて有機溶媒を揮散させる方法であってもよいが、抽出溶媒に浸漬して中空糸膜内部で相分離を起こしている有機溶媒を抽出除去する方法が好ましい。有機溶媒の抽出除去に使用される抽出溶媒としては、安価で沸点が低く抽出後に沸点の差などで容易に分離できるものが好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサン、石油エーテル、トルエンなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、更に好ましくは水が挙げられる。また、フタル酸エステル、脂肪酸等の水に不溶の有機溶媒を抽出する際は、イソプロピルアルコール、石油エーテル等を好適に用いることができる。また、抽出溶媒に中空糸膜を浸漬する時間としては、特に制限されないが、例えば0.2時間〜2ヶ月間、好ましくは0.5時間〜1ヶ月間、更に好ましくは2時間〜10日間が挙げられる。ポリアミド中空糸に残留する有機溶媒を効果的に抽出除去する為に、抽出溶媒を入れ替えたり、攪拌したりしてもよい。特に本発明のポリアミド中空糸膜を、半導体工業、食品工業、浄水用に使用する場合には、不純物(メタル)、有機溶媒等の残存が問題となる為、本第3工程は時間をかけて徹底的に行うことが望ましい。
【0054】
斯して第3工程を実施することにより、本発明のポリアミド中空糸膜が製造される。
【0055】
本発明のポリアミド中空糸膜の製造は、前述する第1〜3工程を経ればよく、その製造に使用される装置については、特に制限されないが、好ましくは、
図3に示すような乾湿式紡糸に用いられる一般的な装置が挙げられる。
図3に示す装置を例として挙げて、本発明のポリアミド中空糸膜の製造フローを以下に概説する。第1工程で調製された製膜原液は、コンテナ3に収容される。又は、コンテナ3中で第1工程を実施し、製膜原液を調製してもよい。コンテナ3に収容された製膜原液と、内部液導入口5から導入された内部液は、それぞれ定量ポンプ4によって計量され、中空糸製造用二重管状ノズル(紡糸口金)6に送液される。中空糸製造用二重管状ノズル(紡糸口金)6から吐出された製膜原液は、わずかなエアーギャップを介して凝固浴7に導入され、冷却固化される。製膜原液が冷却固化される過程で、熱誘起の相分離が起こって、海島構造を有するポリアミド中空糸膜8が得られる。このようにして得られたポリアミド中空糸膜8を巻き取り機9で巻き取りながら、ボビンを設置しているボビン巻き取り機10にて巻き取りを行う。ボビンへの巻き取りと同時に洗浄用シャワー11にて、凝固浴の溶媒及び、中空糸膜に残存する海島構造の島成分である有機溶媒、及び中空部に流し込んだ内部液を除去することにより、ポリアミド中空糸膜が得られる。
【0056】
3.ポリアミド中空糸膜を利用した中空糸膜モジュール
本発明のポリアミド中空糸膜は、濾過フィルターとして好適に使用するために、被処理液流入口や透過液流出口等を備えたモジュールケースに収容され、中空糸膜モジュールとして使用される。
【0057】
具体的には、中空糸膜モジュールは、本発明のポリアミド中空糸膜を束にし、モジュールケースに収容して、ポリアミド中空糸膜束の端部の一方又は双方をポッティング剤により封止して固着させた構造であればよい。中空糸膜モジュールには、被処理液の流入口又は濾液の流出口として、ポリアミド中空糸膜の外壁面側を通る流路と連結した開口部と、ポリアミド中空糸膜の中空部分と連結した開口部が設けられていればよい。
【0058】
中空糸膜モジュールの形状は、特に制限されず、デッドエンド型モジュールであっても、クロスフロー型モジュールであってもよい。中空糸膜モジュールの形状として、具体的には、中空糸膜束をU字型に折り曲げて充填し、中空糸膜束の端部を封止後カットして開口させたデッドエンド型モジュール;中空糸膜束の一端の中空開口部を熱シール等により閉じたものを真っ直ぐに充填し、開口している方の中空糸膜束の端部を封止後カットして開口させたデッドエンド型モジュール;中空糸膜束を真っ直ぐに充填し、中空糸膜束の両端部を封止し片端部のみをカットして開口部を露出させたデッドエンドモジュール;中空糸膜束を真っ直ぐに充填し、中空糸膜束の両端部を封止し、中空糸膜束の両端の封止部をカットし、フィルターケースの側面に2箇所の流路を作ったクロスフロー型モジュール等が挙げられる。
【0059】
モジュールケースに挿入するポリアミド中空糸膜の充填率は、特に制限されないが、例えば、モジュールケース内部の体積に対する中空部分の体積を入れたポリアミド中空糸膜の体積が30〜90体積%、好ましくは35〜75体積%、更に好ましくは40〜65体積%が挙げられる。このような充填率を満たすことによって、十分な濾過面積を確保しつつ、ポリアミド中空糸膜のモジュールケースへの充填作業を容易にし、中空糸膜の間を流体が流れ易くすることができる。
【0060】
中空糸膜モジュールの製造に使用されるポッティング剤については、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレア樹脂等が挙げられる。これらのポッティング剤の中でも、硬化した時の収縮や膨潤が小さく、硬度が硬過ぎないものが好ましい。ポッティング剤の好適な例として、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、シリコン樹脂、ポリエチレンが挙げられ、更に好ましくはポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドが挙げられる。これらのポッティング剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
中空糸膜モジュールに使用するモジュールケースの材質については、特に制限されず、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、更に好ましくはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0062】
本発明のポリアミド中空糸膜を利用した中空糸膜モジュールは、半導体工業、食品工業、医薬品工業、医療品工業等の分野で、水の浄化、異物の除去等に使用される。特に、半導体工業におけるフォトレジストの濾過においては、マイクロチップ上の配線幅の1/10以上の異物は欠陥を生じる可能性があると考えられており(非特許文献:M.Yang,D.L.Tolliver,The Journal of Environmental sciences 32(4),35−42(1989))、配線の微細化が進んだ近年においては、微細で高親水性を示す本発明のポリアミド中空糸膜モジュールは、極めて有効である。また、医薬品工業の分野では、血液製剤やバイオ医薬品の製造過程においてウイルスの除去が重要な課題となっており、例えば、パルボウイルスのような20〜25nm程度の小型のウイルスの除去には、本発明のポリアミド中空糸膜モジュールは好適に使用される。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中、中空糸膜についての各物性値は、以下の方法により測定した。
【0064】
<接触角>
協和界面科学製の自動接触角計DM−500を使用し、水に対する接触角を上述した方法により測定した。
【0065】
<外圧透水量>
図1に示す装置を用いて、外圧透水量を上述した方法により測定した。
【0066】
<粒子の阻止率>
以下に示す各粒径の金コロイド粒子を用いて、粒子の阻止率を上述した方法により測定した。
50nm:商品名「Gold colloid−50nm」(ブリティッシュ・バイオセル・インターナショナル社製)
20nm:商品名「Gold colloid−20nm」(ブリティッシュ・バイオセル・インターナショナル社製)
10nm:商品名「Gold colloid−10nm」(ブリティッシュ・バイオセル・インターナショナル社製)
5nm:商品名「Gold colloid−5nm」(ブリティッシュ・バイオセル・インターナショナル社製)
【0067】
<ポリアミド中空糸膜の内径及び外径>
ポリアミド中空糸膜の内径及び外径は、ポリアミド中空糸膜の横断面を光学顕微鏡にて200倍に拡大観察して測定し、n=3の平均値として算出した。
【0068】
<ポリアミド中空糸膜の金属元素含有量>
乾燥させたポリアミド中空糸膜0.5gを硝酸5mlと混合し、150℃10分、180℃15分の加熱条件でマイクロウェーブ湿式分解により分解させた。これを試料として、サーモフィッシャーサイエンティフィック製iCAP6500Duo ICP発光分光分析装置によって、金属元素含有量を測定した。
【0069】
実施例1
ポリアミド6のチップ(ユニチカ(株)製A1030BRT、相対粘度3.53)260g、スルホラン(東京化成(株)製)197g、ジメチルスルホン(東京化成(株)製)543gを180℃で1.5時間攪拌し溶解させ製膜原液を調製した。製膜原液を定量ポンプを介して紡糸口金(二重管構造の中空糸製造用二重管状ノズル)に送液し、5g/分で押出した。紡糸口金の孔径は外径1.5mm、内径0.6mmのものを用いた。内部液にはグリセリンを2.0g/分の送液速度で流した。押出された紡糸原液は10mmのエアーギャップを介して、5℃の50質量%プロピレングリコール水溶液からなる凝固浴に投入して冷却固化させ、20m/分の巻取速度にて巻き取った。得られた中空糸は24時間、水に浸漬して溶媒を抽出し、その後50℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させてポリアミド中空糸膜を得た。
【0070】
得られたポリアミド中空糸膜は外径550μm、内径300μmであった。性能は表1に示すように接触角が52°であり、外圧透水量は450L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は93%であった。得られた中空糸膜の破断強度は12MPa、破断伸びは200%、弾性率は80.0MPaであった。また、得られた中空糸膜の電子顕微鏡写真を
図4に示す。断面には緻密で大きさのそろった孔が存在しマクロボイドが無いことが観察され、内表面、外表面共に多くの緻密な孔が観察された。
【0071】
このポリアミド中空糸膜に含まれる金属元素の含有量をICP発光分光分析により測定した結果を表2に示す。その結果、ほとんどの金属元素が検出されず、多く含有される金属元素でも4ppm程度と低濃度であった。
【0072】
実施例2
凝固浴を5℃の50質量%グリセリンに変えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が52°であり、透水量は410L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は98%であった。
【0073】
実施例3
凝固浴をグリセリンとエチレングリコールの等重量混合物に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が52°であり、外圧透水量は200L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は94%であった。
【0074】
実施例4
製膜原液を10g/分で押出し、内部液を4g/分で送液し、巻取速度40m/分で巻き取ったこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を得た。得られたポリアミド中空糸膜は、外径540μm、内径290μmであった。性能は表1に示すように接触角が52°であり、外圧透水量は560L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は90%であった。
【0075】
実施例5
製膜原液の溶媒をスルホラン740gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が53°であり、外圧透水量は400L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は61%、20nmの粒子の阻止率は98%であった。
【0076】
実施例6
製膜原液の溶媒をγ−ブチロラクトン740gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が53°であり、外圧透水量は350L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は85%、20nmの粒子の阻止率は94%であった。
【0077】
実施例7
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップを230g、溶媒をスルホラン770gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が53°であり、外圧透水量は720L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は81%、20nmの粒子の阻止率は97%であった。
【0078】
実施例8
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップを210g、溶媒をスルホラン211g、ジメチルスルホン579gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が50°であり、外圧透水量は940L/(m
2・atm・h)であり、20nmの粒子の阻止率は20%、50nmの粒子の阻止率は99%であった。
【0079】
実施例9
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップを300g、溶媒をスルホラン187g、ジメチルスルホン513gにしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が55°であり、外圧透水量は70L/(m
2・atm・h)であり、5nmの粒子の阻止率は93%、10nmの粒子の阻止率は99%であった。
【0080】
実施例10
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップを350g、溶媒をスルホラン173g、ジメチルスルホン477gにし、製膜原液を4g/分で、内部液を2.5g/分で流して製膜したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は外径490μm、内径320μmであり、表1に示すように接触角が55°であり、外圧透水量は53L/(m
2・atm・h)であり、5nmの粒子の阻止率は98%、10nmの粒子の阻止率は100%であった。
【0081】
実施例11
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップを280g、溶媒をスルホラン192g、ジメチルスルホン528gにし、製膜原液を4g/分で、内部液をグリセリン:ポリエチレングリコール300=75:25に変更して2.5g/分で流して製膜したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は外径500μm、内径300μmであり、表1に示すように接触角が54°であり、外圧透水量は280L/(m
2・atm・h)であり、5nmの粒子の阻止率は93%、10nmの粒子の阻止率は100%であった。
【0082】
実施例12
製膜原液を8g/分で、内部液を5g/分で流し、巻取速度40m/分で製膜したこと以外は、実施例11と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は外径500μm、内径310μmであった。性能は表1に示すように接触角が52°であり、外圧透水量は310L/(m
2・atm・h)であり、5nmの粒子の阻止率は92%、10nmの粒子の阻止率は100%であった。
【0083】
実施例13
内部液をポリエチレングリコール200に変えたこと以外は実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は表1に示すように接触角が51°であり、外圧透水量は550L/(m
2・atm・h)であり、10
nmの粒子の阻止率は91%であった。
【0084】
実施例14
内部液をスルホランに変えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が53°であり、外圧透水量は330L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は94%であった。
【0085】
実施例15
凝固浴を100質量%プロピレングリコールに変えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が52°であり、外圧透水量は550L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は92%であった。
【0086】
実施例16
製膜原液の調製においてポリアミド樹脂としてポリアミド610のチップ(東レ(株)製CM2001)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が68°であり、外圧透水量は200L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は99%であった。
【0087】
実施例17
製膜原液の調製においてポリアミド樹脂としてポリアミドMXD6のチップ(三菱ガス化学(株)製S6121)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が72°であり、外圧透水量は320L/(m
2・atm・h)であり、10nmの粒子の阻止率は95%であった。
【0088】
比較例1
製膜原液の調製において、ポリアミド樹脂としてポリアミド12のチップ(アルケマ社製リルサンAECN0TL、相対粘度2.25)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が95°と高く、外圧透水量は30L/(m
2・atm・h)と低かった。10nmの粒子の阻止率は100%であった。
【0089】
比較例2
製膜原液の調製において、ポリアミド6を190g、スルホランを216g、ジメチルスルホンを594g用いて行ったこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が51°であり、外圧透水量は1170L/(m
2・atm・h)と高かったが、50nmの粒子の阻止率は76%であった。
【0090】
比較例3
製膜原液の調製において、ポリアミド6を410g、スルホランを157g、ジメチルスルホンを433g用いて行ったこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が55°であった。なお、外圧透水量の測定を試みたが、0.3MPaまで圧力をかけても水が通らなかった。
【0091】
比較例4
凝固浴を5℃の水に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製した。得られたポリアミド中空糸膜は表1に示すように接触角が55°であり、外圧透水量は20L/(m
2・atm・h)と低かった。10nmの粒子の阻止率は99%であった。
【0092】
比較例5−17
製膜原液の溶媒を、1−プロパノール(比較例5)、イソプロパノール(比較例6)、n−ブタノール(比較例7)、テトラヒドロフラン(比較例8)、クロロホルム(比較例9)、アセトン(比較例10)、メチルエチルケトン(比較例11)、メチルイソブチルケトン(比較例12)、ヘキサン(比較例13)、トルエン(比較例14)、シクロヘキサン(比較例15)、ピリジン(比較例16)、又は酢酸エチル(比較例17)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド中空糸膜を作製を試みたが、いずれの溶媒も、ポリアミド樹脂を溶解させるには沸点が低く、沸点より5℃低い温度で攪拌してもいずれも均一に溶解せず、ポリアミド中空糸膜を作成できなかった。
【0093】
<ポリアミド中空糸膜の物性値の纏め>
【0094】
実施例1〜17及び比較例1〜4のポリアミド中空糸膜の製造条件及び各物性値を表1に纏めて示す。これらの結果から、製膜原液、内部液、及び凝固浴として、特定の組成のものを採用することにより、水に対する接触角が80°以下、外圧透水量が50L/(m
2・atm・h)以上、且つ50nmの粒子の阻止率が90%以上という高性能のポリアミド中空糸膜が得られることが明らかとなった(実施例1−17参照)。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
実施例18:クロスフロー型モジュールの作製
実施例1において得られた中空糸膜を250mm長に切断し、50本を束ねて両端を熱シーラーを用いて融着封止した。モジュールケースは両端からそれぞれ35mmの部分に出入水口を備えた塩化ビニル製の外径20mm、内径17mm、長さ140mmの円筒状パイプを作製した。次にモジュールケースと同じ外内径で25mm長のPTFE製ポットに、サンユレック(株)製の2液型ポリウレタンポッティング剤をすり切り一杯入れ、上記モジュールケースの片端を上部に装着し、膜束を上からポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ポットの底に当たるまで押し込んだ。この状態で10時間静置し、片端をポッティングした。固化後、PTFE製ポットを引っ張りながら引き抜き、モジュールケースから出ているポリウレタン樹脂を膜束ごと切断し、中空部を露出させた。他方の膜束の端部も同様にポッティングし切断することで、両端に中空部が露出した状態とした。両端に出入水口を備えたキャップをかぶせて接着し、クロスフロー型モジュールが作製できた(
図5のA参照)。このクロスフロー型モジュールの有効膜長は115mm×50本であった。
【0098】
実施例19:デッドエンド型モジュールの作製
実施例1において得られた中空糸膜を200mm長に切断し、50本を束ねてU字状に折り曲げ、端部を熱シーラーを用いて融着封止した。モジュールケースは塩化ビニル製の外径20mm、内径17mm、長さ60mmの円筒状パイプを作製した。次にモジュールケースと同じ外内径で25mm長のPTFE製ポットに、サンユレック(株)製の2液型ポリウレタンポッティング剤をすり切り一杯入れ、上記フィルターケースの片端を上部に装着し、U字型膜束の封止部分を上からPTFE製ポットの底に当たるまで押し込んだ。
この状態で10時間静置し、ポッティングした。固化後、PTFE製ポットを引っ張りながら引き抜き、モジュールケースから出ているポリウレタン樹脂を膜束ごと切断し、中空部を露出させた。モジュールケースの両端に出入水口を備えたキャップをかぶせて接着し、デッドエンド型モジュールが作製できた(
図5のB参照)。このデッドエンド型モジュールの有効膜長は80mm×50本であった。