【実施例】
【0146】
〔実施例1〕
被験者の診断と評価。
まず、本CNP製剤またはBNP製剤の投与に先だって被験者の診断と評価を行った。被験者の診断と評価方法は下記のとおりである。
【0147】
1.被験者の診断;
被験者は、いずれも、ステロイド等の既存の外用薬を使用しても効果が認められない患者である。これら被験者の診断と処置は、本発明者が医師として実施した。
【0148】
2.症状の評価;
アトピー性皮膚炎の症状の評価は、原則的に「厚生労働省科学研究班アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005」(以下、単に「ガイドライン2005」と呼ぶ)に従って表1の通り、4段階に分類して行った。
【0149】
【表1】
【0150】
また、各部位の皮疹の重症度は、「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」(以下、単に「皮膚科学会ガイドライン」と呼ぶ)に従って表2の通りに判定した。
【0151】
【表2】
【0152】
また、各部位の皮疹の重症度は、European Task Force on Atopic Dermatitis が提唱して世界的に頻用されているSCORAD (SCORing of Atopic Dermatitis)インデックスによる判定も併せて行なった。SCORADインデックスとは、範囲%(A)、皮疹の強さ(B)、自覚症状(C)の合計点で点数化して重症度を分類するものである。今回の評価においては、紅班、浮腫/丘疹、浸出液/痂皮、掻破痕、苔癬化、乾燥の6項目の皮疹の強さ(B)について、0:なし 1.軽症 2.中等症 3.重症の4段階の評価を行った。総合指数は、塗布した部位が全身ではなく限られた部分だけであるため、SCORADによる重症度分類の所定の算定式によって総合点を算出したのではなく塗布部位の皮疹の強さの6項目のスコアを塗布前と塗布後で単純に合計したもので示した。治療の主体である外用療法の選択は個々の皮疹の重症度により決定されるので、個々の皮疹の重症度が、外用療法の選択と、治療効果の予測に最も重要な指針である。SCORADインデックスの詳細は、例えば、C.Gelmetti and C. Colonna, Allergy 59巻,補遺78,61頁,2004年に解説されている。
【0153】
3.試験方法;
一般に、個々の症例に対する外用薬の効果を確認するためには、左右塗り分け法が好適である。左右塗り分け法は、例えば、疾患部位の左側には試験すべき有効成分を含んだ外用薬を塗布し、右側には有効成分を含まない外用薬を塗布して、その治療効果を確認する方法である。本発明製剤の試験も、予備試験においては左右塗り分け法に従って行った。ただし、医療倫理に鑑み、左右塗り分け法による予備試験は最小限にとどめ、予備試験を行なわない場合には、塗布前と塗布後の比較により、治療効果を判定した。
【0154】
〔実施例2〕
1.CNPゲル製剤の製造;
パラオキシ安息香酸メチルエステル(商品名:メッキンスM、上野製薬製)0.1g、 フェノキシエタノール0.2g、1,2−ペンタンジオール3.0g、濃グリセリン6.0g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g、アラントイン0.1gおよび塩酸ピリドキシン0.05gを精製水75.72gに加えて溶解した。次に、この溶液に昭和電工社製のルブラジェル(精製水4.674g、カルボキシビニルポリマー0.12g、ポリアクリル酸ナトリウム0.006g、グリセリン1.2gからなる混合物) 6.0g、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール940、ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)0.44gおよびキサンタンガム(商品名:ケルトロールT、、CP KELCO社製)の1%溶液8.00gを加えて撹拌混合した後、さらに天然ビタミンEを0.04g加えて均一な混合溶液とした。最後に、中和のための水酸化カリウム0.25gを加えて溶液を十分に撹拌してゲル状にすることによってゲル剤を得た。
【0155】
CNPゲル製剤は、主剤としての3mgのヒトCNP−22(株式会社ペプチド研究所製)を3mlの生理食塩水に溶解して得られた溶液100μlを400μlの生理食塩水で希釈し、200μg/ml濃度に調製し、この溶液1.5mlを上記で得た8.5gのゲル剤に混合し、撹拌することによって調製した。該ゲル製剤のCNP濃度は30μg/gである。
【0156】
〔実施例3〕
2.CNP水溶液製剤の製造;
主剤としての3mgのヒトCNP−22(株式会社ペプチド研究所製)を3mlの生理食塩水に溶解して得られた溶液100μlに生理食塩水900μlで希釈してCNP濃度100μg/mlの水溶液製剤を調製した。また、同様にしてCNP濃度が、それぞれ50μg/mlおよび200μg/mlの水溶液製剤を調製した。
【0157】
〔実施例4〕
3.被験者の診断;
本発明のCNPゲル製剤およびCNP水溶液製剤の投与に先だって、被験者への問診、アレルゲンに対するScratch試験、診断を行った。表3(被験者1〜5)および表5(被験者6〜10)に、それら被験者への問診、診断結果、即ち、各症例における被験者の性別、年齢、発症経緯と経過、家族歴、既 往 歴、Scratch試験結果、診断所見、「ガイドライン2005」に基づく症状の評価を示す。
【0158】
〔実施例5〕
4.被験者の治療効果;
本発明のCNPゲル製剤およびCNP水溶液製剤の治療効果を表4(被験者1〜5)および表6(被験者6〜10)に示す。表4および表6において、「掻痒感」とは、Visual analogue scale法を用いて評価した掻痒感を治療の前後で比較したものである。同様に、「非再燃期間」とは、症状が軽快した後に本発明の製剤による治療を中断しても症状が再燃しなかった期間を示す。なお、客観的に評価するために、全症例についてCNP製剤を塗布する前後の写真を記録した。そのうち、一部の症例の写真を図に示した。
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
〔実施例6〕表3ないし表6にまとめたCNPゲル製剤およびCNP水溶液製剤の試験例の詳細を以下に示す。
CNPゲル製剤試験例1(症例1;被験者1;表3および表4を参照):
予備試験;
症例1の被験者の顔面および頚部には、紅班、浸潤性紅班、鱗屑が観察された。これら紅班、浸潤性紅班、鱗屑に対してはステロイド外用薬での効果が見られなかった。
そこで、被験者の顔面および頚部の右側のみに本発明のCNPゲル製剤を塗布し、左側には有効成分としてのCNPを含有しないゲルをそれぞれ1日2回塗布して症状を観察した。用いたCNPゲル製剤は、実施例2で得られたCNPゲル製剤(30μg/g)である。
予備試験結果;
塗布後10分で、CNPゲル製剤を塗布した右側は自覚症状としてほてり感が沈静化し、さらに30分経過後には紅班もやや軽快しはじめた。また、CNPゲル製剤塗布による刺激症状は全くないとのことであった。
治療とその結果;
上記予備試験の所見から本発明のCNPゲル製剤が本症例に有効であり、かつ副作用がないと判断し、1日2回左右両側の顔面および頚部への塗布を開始した。その結果、治療開始から4日後には紅班が著明に軽快し、さらに、鱗屑が消失し肌の肌理が細かく整って肌ざわりが柔らかくなった。また、CNPゲル製剤を塗布する前の掻痒感を10とした場合、塗布後は掻痒感が完全に消失して0であった。なお、掻痒感の評価はVisual analogue scale法で行った。
その後の経過を観察したところ、4日ないし5日程度CNPゲル製剤の塗布を中止した場合には、軽微な紅班と鱗屑の再発が観察されたが、急性に悪化することはなく、数日CNPゲル製剤を塗布することによって症状は軽快し、遷延することはなかった。また、生理前増悪にも有効であり、朝、夕2回の塗布で翌朝には症状が軽快し、炎症症状に乏しくほぼ正常と言える状態までになった。
【0164】
CNPゲル製剤試験例2(症例6;被験者2;表3および表4を参照):
治療とその結果;
症例6の被験者は、全身に睡眠障害を伴う掻痒を伴う浸潤性紅班、苔癬化病変、紅班が認められるとともに、顔面にも高度の鱗屑、強いほてり感がある浸潤性紅班が認められた。加えて、長年のステロイド外用療法によると思われる湿疹続発性紅皮症状態にあり、全身の潮紅と落屑が認められた。顔面の皮疹の重症度は、高度の浸潤、紅班、多数の掻破痕を主体とするものであった。
そこで、左右塗り分け法で、まず右側顔面のみに実施例2で得た濃度30μg/gのCNPゲル製剤を塗布し、左側顔面にはゲルのみを塗布した。その結果、CNPゲル製剤を塗布した直後に右側で自覚症状としてほてり感が沈静化し、さらに紅班も軽快し始めた。また、CNPゲル製剤塗布による刺激症状も全く認められなかった。
引き続いて、濃度30μg/gのCNPゲル製剤を1日2回、両側顔面および頚部に塗布した。その結果、著効を示し、3日後には紅班がほぼ消失し、さらに、鱗屑が消失して肌の肌理が細かく整った。
顔面の皮疹の重症度は、本CNPゲル製剤の塗布により、日本皮膚科学会ガイドラインによる分類で、重症から軽症にまで改善された。また、本CNPゲル製剤の塗布により、掻痒感はVisual analogue scale法で10から1に改善された。
その後の経過を観察したが、本CNPゲル製剤を中止して3日目頃から軽度の紅班が再発したが、それ以上悪化することはなかった。この場合、再び本CNPゲル製剤の塗布を開始すると、3日ないし4日目にはこれら症状は見られなくなった。
【0165】
CNPゲル製剤試験例3(症例5;被験者3;表3および表4を参照):
治療とその結果;
本試験では、背部におけるCNPゲル製剤の吸収性を確認することを主な試験目的とした。
症例5の被験者は、全身に中等症から重症までの紅班、鱗屑、掻破痕が認められ、背中の皮疹の重症度は、高度の腫脹、浮腫を伴う紅班、鱗屑を主体とするものであった。
そこで、左右塗り分け法で、被験者の背部左側のみに実施例2で得た濃度30μg/gのCNPゲル製剤を20分おきに2回塗布し、背部右側にはゲルのみを塗布した。その結果、45分後には左側で腫脹を伴う紅班が著明に改善し、軽度の紅班を主体とする軽症に改善された。表4中の記載は、このときのCNPゲル製剤による治療効果を評価したものである。
また同被験者の顔面と頚部に、左右塗り分けはせずに、上記ゲル製剤(濃度30μg/g)を1日2回、3日間塗布した。その結果、顔面と頚部における紅班、鱗屑は軽度と判定されるまでに顕著に改善された。即ち、顔面と頚部の、日本皮膚科学会ガイドライン分類で、重症から軽症にまで改善された。
この試験結果から、本発明のCNPゲル製剤は、上記のように顔面、頚部、前腕部のみならず、背部に対しても優れた経皮吸収性を有することが明らかになった。
【0166】
CNPゲル製剤試験例4(症例9;被験者4;表3および表4を参照):
治療とその結果;
症例9の被験者は、全身型で掻痒のある湿疹を繰り返している女児であり、全身に紅班、丘疹、鱗屑、多数の掻破痕が認められた。また、両側前腕部に紅班、丘疹、鱗屑、多数の掻破痕が認められた。
そこで、まず、右側前腕部のみに実施例2で得た濃度30μg/gのCNPゲル製剤を塗布した。塗布は、20分おきに2回行った。その結果、右肘窩の落屑性紅班、浸潤が軽快し、前腕の紅班、丘疹、鱗屑も改善された。
この症例で特筆すべきことは、この効果が、外来診察時に2回塗布しただけで、良好な状態が2週間以上にわたって持続したことである。本試験の結果、鱗屑が消え肌理が細かい柔らかい皮膚になることが、乳児においても認められた。
【0167】
CNPゲル製剤試験例5(症例10;被験者5;表3および表4を参照):
治療とその結果;
症例10の被験者は、幼少時から発症し、掻痒のある湿疹を繰り返し、全身型で睡眠障害を伴う掻痒を伴う浸潤性紅班、苔癬化病変、鱗屑が認められ、悪寒を伴い、湿疹続発性紅皮症と診断される症例である。特に上肢では強いほてり感がある浸潤性紅班が難治性を示していた。両側上肢の皮疹は高度の腫脹、浸潤、紅班、びらんを主体としたものであり、多数の掻爬痕が認められた。
被験者に対して、左右塗り分け法で、右側の上肢にのみ実施例2で得た濃度30μg/gのCNPゲル製剤を20分おきに塗布し、左上肢にはゲルのみ塗布した。その結果、60分後には、CNPゲル製剤を塗布した右側は自覚症状としてほてり感が沈静化し、右側の浸潤、鱗屑、紅班が、塗布前の右腕と比べても、CNPを添加していないゲル剤を20分おきに3回塗布した左腕と比べても、著明に改善した。本被験者に本発明のCNPゲル製剤を適用した場合の図面代用写真を
図1に示した。
【0168】
CNP水溶液製剤試験例1(症例2;被験者6;表5および表6を参照):
予備試験;
症例2の被験者は、顔面の皮疹が、高度の腫脹、浸潤、ないし苔癬化を伴う紅班、丘疹、びらん,多数の掻破痕を主体としていた。また、自覚症状としてほてり感があった。また、本被験者はヘルペスウィルス感染性を繰り返して発症している経緯があり、タクロリムス外用療法ができない症例である。
試験例1との場合と同様に、まず被験者の右側顔面にのみに実施例3で得られた濃度100μg/mlのCNP水溶液製剤を塗布し、左側には生理食塩水溶液のみ塗布した。
予備試験結果;
塗布後10分で、CNP水溶液製剤を塗布した右側顔面でほてり感が沈静化し、さらに30分経過後には右側顔面の紅班もやや軽快し始める。また、CNP水溶液製剤塗布による刺激症状は全くないとのことであった。ほてり感と重苦しさが軽快し肌に浸透する感じがあるために、自覚症状の軽減に有効であると考えられる。また、浸潤と紅班の明らかな改善が確認された。
治療とその結果;
上記予備試験の所見から本発明のCNP水溶液製剤が本症例に有効であり、かつ副作用がないと判断し、1日2回、左右両側顔面および頚部への塗布を開始した。その結果、4日後には紅班が著明に軽快し、さらに、鱗屑が消失し、肌の肌理が細かく整った。また、CNP水溶液製剤を塗布する前の掻痒感はVisual analogue scale法で10であったが、塗布後は著明に改善され、その値は1であった。
その後の経過を観察したところ、4日ないし5日程度の塗布中止により軽度の紅班が再発したが、それ以上悪化することはなかった。また、塗布中止による軽度の紅班の再発は、3日ないし4日の投与再開で再び改善された。本被験者に本発明のCNP水溶液製剤を適用した場合の図面代用写真を
図2に示した。
なお、本被験者は本CNP水溶液製剤の継続的な塗布により著しく症状が改善され、化粧することも可能となった。また、本試験により、タクロリムス外用療法ができないヘルペスウィルス感染性合併の患者にも外用できる安全性と有効性が確認できた。
用量設定試験;
本被験者を対象として用量設定試験を行った。CNP濃度が50μg/mlのCNP水溶液製剤は、100μg/mlの場合に比べて傷の治りがやや遅くなり、皮膚もややカサカサしていた。CNP濃度が200μg/mlのCNP水溶液製剤は、依然として刺激はないが、効果が倍増するということはなかった。
【0169】
CNP水溶液製剤試験例2(症例7;被験者7;表5および表6を参照):
治療とその結果;
症例7の被験者は、四肢および顔面に浸潤性紅班、苔癬化病変、紅班、高度の鱗屑、痂皮の付着、多数の掻破痕が認められ、顔面の皮疹は、苔癬化を伴う紅班、丘疹、びらん,鱗屑、多数の掻破痕を主体とするものであった。
そこで、左右塗り分け法で、まず右側顔面のみに実施例3で得た濃度100μg/mlのCNP水溶液製剤を塗布し、左側顔面には生理食塩水溶液のみを塗布した。
その結果、20分後には右側顔面で自覚症状としてほてり感が沈静化し、紅班もやや軽快し始めた。本CNP水溶液製剤塗布による刺激症状も全く認められなかった。本CNP水溶液製剤塗布を開始して4日目には、顔面の浸潤性紅班、苔癬化病変、紅班、高度の鱗屑、痂皮の付着、多数の掻破痕のすべてが著明に改善した。本CNP水溶液製剤の塗布により、掻痒感はVisual analogue scale法で10から自覚的には掻痒感が全くない0に改善された。また、顔面の皮疹の重症度は、本CNP水溶液製剤の塗布により、日本皮膚科学会ガイドラインによる分類で、重症から軽症にまで改善された。その後も経過を観察したが、本CNP水溶液製剤の投与中止後も紅班の再発は認められていない。本被験者に本発明のCNP水溶液製剤を適用した場合の図面代用写真を
図3に示した。
【0170】
CNP水溶液製剤試験例3(症例8;被験者8;表5および表6を参照):
治療とその結果;
症例8の被験者は、全身に睡眠障害を伴う掻痒を伴う浸潤性紅班、苔癬化病変、紅班が認められ、また、掻痒のある湿疹の繰り返しによる高度の浸潤、紅班が全身におよび、ストロンゲストのステロイド外用薬を塗らないと浸出液が出てくる状態であった。
そこで、ステロイド外用薬で効果が見られない顔面および頚部の紅班、浸潤性紅班、鱗屑に対して、実施例3で得た濃度100μg/mlのCNP水溶液製剤を塗布することを試みた、塗布回数は、1日2回とした。
左右塗り分け法で、まず右側顔面および頚部のみにCNP水溶液製剤を20分間隔で2回塗布し、左側には生理食塩水溶液のみ塗布した。その結果、右側では、浸潤と紅班がやや軽快しはじめた。本CNP水溶液製剤塗布による刺激症状も全く認められなかった。
引き続き、1日2回、両側顔面および頚部にCNP水溶液製剤を塗布した。その結果、3日後には紅班と浸潤が軽快し、びらんも軽減された。本CNP水溶液製剤の塗布により、掻痒感が軽減され、掻痒感はVisual analogue scale法で10から4に改善された。塗布を開始して3日後の皮疹の重症度は、ガイドライン2005基準で最重症から中等症にまで改善された。その後さらに7日間CNP水溶液製剤を1日2回継続塗布したところ、皮疹はさらに改善され、中等度の浸潤性紅班が軽度の紅班にまで改善された。
【0171】
CNP水溶液製剤試験例4(症例3;被験者9;表5および表6を参照):
治療とその結果;
症例3の被験者は、浸潤性紅班、苔癬化病変、紅班、高度の鱗屑、痂皮の付着、多数の掻破痕が全身に認められ、顔面の皮疹は、苔癬化を伴う紅班、丘疹、びらん,鱗屑、多数の掻破痕を主体としていた。
被験者の左右両側顔面への濃度100μg/mlのCNP水溶液製剤を塗布した。その結果、10分後にはパンパンに張った感じの自覚症状が改善され、さらに30分経過後から紅班も軽快し、触った感じも柔らかく、肌理が整ってきた。外用時の刺激症状は全くなく、びらんや掻破痕の上皮化に対する有効性も確認された。さらに、鱗屑が減り、肌理が細かくなるなどの改善所見が得られた。CNP水溶液製剤100μg/ml塗布4日後には浸潤性紅班、苔癬化病変、紅班、高度の鱗屑、痂皮の付着、多数の掻破痕すべてが著明に改善した。塗布前の掻痒感を10とすると自覚的には全然掻痒感がなく0であるという。
CNP水溶液製剤塗布後における顔面の紅班の重症度は炎症症状に乏しく、乾燥症状もほとんど見られず、「皮膚科学会ガイドライン」による皮疹の重症度分類は、重症から軽微へと顕著に改善された。
以上の所見からCNP水溶液製剤が本症例に非常に有効であると判断された。その後の経過観察においても、本製剤の投与を中止した後にも紅班の再発は認められていない。
【0172】
CNP水溶液製剤試験例5(症例4;被験者10;表5および表6を参照):
治療とその結果;
本試験では、経皮吸収性が顔面より劣るとされる前腕部における本発明CNP製剤の吸収性を確認することを主な試験目的とした。
症例4の被験者は、全身に中等度の紅班、鱗屑、掻破痕が認められ、前腕部の皮疹の重症度は、高度の腫脹を伴う紅班、鱗屑、掻破痕を主体とするものであった。
そこで、右側の前腕部に濃度100μg/mlのCNP水溶液製剤100μlを20分おきに3回塗布し、左側前腕部には生理食塩水溶液のみを塗布した。その結果、60分後にはCNP水溶液製剤を塗布した右側前腕部の自覚症状として掻痒感が軽快し、紅班も著明に改善され、炎症症状と乾燥症状もほとんど消滅した。水溶液製剤の塗布に伴う刺激症状も全くなかった。このように、本発明のCNP水溶液製剤は、前腕部における本症例においても著効を示した。このことは、薬剤吸収率が比較的高いとされる顔面以外の部位、例えば前腕部における疾患にも有効であることを示すものである。前腕部における皮疹は、CNP水溶液製剤投与により、日本皮膚科学会ガイドライン分類で、重症から軽微にまで改善された。また、CNP水溶液製剤の塗布により、掻痒感はVisual analogue scale法で10から1に改善された。
【0173】
次に、CNPゲルベース製剤について試験を行った。「ゲルベース製剤」は、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、塩酸ピリドキシン、キサンタンガムおよびビタミンEを含まない点で「ゲル製剤」と異なる製剤である。これらの薬効を有する可能性のある成分を排除した製剤でCNPの効果を確認することにより、CNP自体の薬効であることがより明確になる。
【0174】
〔実施例7〕
1.CNPゲルベース製剤の製造;
ゲルの調製は次のようにして行った。
パラオキシ安息香酸メチルエステル(商品名:メッキンスM、上野製薬製)0.1g、フェノキシエタノール0.2g、1、2ペンタンジオール3.0gを同一容器に秤量し、これを60〜70℃で溶解して混合釜に投入した。さらに濃グリセリン6.0gを投入し、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール940、ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)0.44gとキサンタンガム(商品名:ケルトロールT、CP KELCO社製)0.08gの混合物を加えてパドル15rpmで撹拌し十分に分散させた。次にパドル15rpmで撹拌しつつ精製水83.95gを徐々に投入し、釜温を70〜80℃、パドル20rpm、デイスパー1,500〜2,000rpmで撹拌溶解した。デイスパーは停止して溶解を確認し、直ちに冷却を開始し、釜温が40℃付近にしてから、アイエスピー・ジャパン社製のルブラジェルNPを6.0g(グリセリン2.7g、カルボキシビニルポリマー0.06g、ポリアクリル酸ナトリウム0.018g、水3.222g)加えてパドル20rpmで均一に混合し、更に水酸化カリウム0.230gを加えて溶液を中和し、釜温が25℃に達した時点で、パドルの回転を停止してゲルベースを作成した。
次いで、主剤としての3mgのヒトCNP−22(株式会社ペプチド研究所製)を3mlの生理食塩水に溶解して得られた1000μg/mlの濃度のCNP溶液1mlを上記で得られたゲルベース19gに均一に撹拌混合して50μg/g濃度のゲルベース製剤を作成した。
同様に、上記の1000μg/mlの濃度のCNP溶液600μlを400μlの生理食塩水で希釈し、600μg/ml濃度に調製し、この溶液1mlを上記で得られたゲルベース19gに均一に撹拌混合して30μg/g濃度のゲルベース製剤を作成した。
【0175】
〔実施例8〕
2.被験者の診断;
本発明のCNPゲルベース製剤の投与に先だって、被験者への問診、アレルゲンに対するScratch試験、診断を行った。表7(被験者11〜15)および表9(被験者16〜20)に、それら被験者への問診、診断結果、即ち、各症例における被験者の性別、年齢、発症経緯と経過、家族歴、既 往 歴、Scratch試験結果、診断所見、「ガイドライン2005」に基づく症状の評価を示す。
【0176】
〔実施例9〕
3.被験者の治療効果;
本発明のCNPゲルベース製剤の治療効果を表8(被験者11〜15)および表10(被験者16〜20)に示す。表8および表10において、「掻痒感」とは、Visual analogue scale法を用いて評価した掻痒感を治療の前後で比較したものである。同様に、「非再燃期間」とは、症状が軽快した後に本発明の製剤による治療を中断しても症状が再燃しなかった期間を示す。なお、客観的に評価するために、全症例についてCNP製剤を塗布する前後の写真を記録した。そのうち、一部の症例の写真を図に示した。
表7ないし表10に示したとおり、アトピー性皮膚炎に対して、本発明のCNPゲルベース製剤を1日2回、2日〜4日間、患部に塗布するだけで、掻痒感がほとんどなくなり、皮膚科学会ガイドラインによる外見的な皮疹重症度によっても、SCORAD法による外見的な皮疹重症度によっても、著明な改善を示した。
本発明のCNPゲルベース製剤は、30μg/gでも50μg/gでもほぼ同等に有効であり、男女を問わず、21歳から39歳にわたる幅広い年齢層において、効果を示した。また、顔面、頚部、上肢のいずれの部位にも有効であった。さらに、ハウスダストとダニに対する免疫反応性を有する患者から、ハウスダスト、ダニ、スギ、カモガヤ、ブタクサのすべてのアレルゲンに対して免疫反応性を有する患者に渡る幅広い免疫反応性を有する患者のいずれにおいても、そのアトピー性皮膚炎を改善した。
本発明のCNPゲルベース製剤は、家族性のアレルギー素因を有する患者のアトピー性皮膚炎を著明に改善した。また、本発明のCNPゲルベース製剤は、幼少時に発症して再発を繰り返してきた被験者11〜被験者18のアトピー性皮膚炎に対しても、その症状を著明に改善した。さらに、本発明のCNPゲルベース製剤は、再発を繰り返してきた難治性のアトピー性皮膚炎の症状を著明に改善した。さらにまた、ステロイド外用療法でも軽快しないアトピー性皮膚炎に対しても、本発明のCNPゲルベース製剤はその症状を著明に改善したことは、驚くべきことである。加えて、本発明のCNPゲルベース製剤の塗布を中止した後、少なくとも5日間、長い場合には2週間以上にわたってアトピー性皮膚炎の再燃が見られなかったことは、特筆に値する。
なお、本発明のCNPゲルベース製剤は、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、塩酸ピリドキシン、キサンタンガムおよびビタミンEを含まない点で「ゲル製剤」と異なる製剤であるので、上記のアトピー性皮膚炎に対する治療効果は、CNP自体の薬効であることがより明確に確認された。
【0177】
【表7】
【0178】
【表8】
【0179】
【表9】
【0180】
【表10】
【0181】
〔実施例10〕
1.CNP軟膏製剤の製造;
軟膏剤の調製は、主剤としての3mgのヒトCNP−22(株式会社ペプチド研究所製)を3mlの生理食塩水に溶解して得られた1000μg/mlの濃度のCNP溶液1mlを9gの日本薬局方の白色ワセリンに高速撹拌で均一に混合し、撹拌することによって、100μg/g濃度に調整した。
同様に、上記の1000μg/mlの濃度のCNP溶液500μlを500μlの生理食塩水で希釈し、500μg/ml濃度に調製し、この溶液1mlを9gの日本薬局方 白色ワセリンに高速撹拌で均一に混合し、撹拌することによって、50μg/g濃度に調整した。
また、上記の1000μg/mlの濃度のCNP溶液300μlを700μlの生理食塩水で希釈し、300μg/ml濃度に調製し、この溶液1mlを9gの日本薬局方 白色ワセリンに高速撹拌で均一に混合し、撹拌することによって、30μg/g濃度に調整した。
【0182】
〔実施例11〕
2.被験者の診断;
本発明のCNP軟膏製剤の投与に先だって、被験者への問診、アレルゲンに対するScratch試験、診断を行った。表11(被験者21〜25)、表13(被験者26〜30)および表15(被験者31〜35)に、それら被験者への問診、診断結果、即ち、各症例における被験者の性別、年齢、発症経緯と経過、家族歴、既 往 歴、Scratch試験結果、診断所見、「ガイドライン2005」に基づく症状の評価を示す。
【0183】
〔実施例12〕
3.被験者の治療効果;
本発明の軟膏剤の治療効果を表12(被験者21〜25)、表14(被験者26〜30)および表16(被験者31〜35)に示す。表12、表14および表16において、「掻痒感」とは、Visual analogue scale法を用いて評価した掻痒感を治療の前後で比較したものである。同様に、「非再燃期間」とは、症状が軽快した後に本発明の製剤による治療を中断しても症状が再燃しなかった期間を示す。
表11ないし表16に示したとおり、アトピー性皮膚炎に対して、本発明のCNP軟膏製剤を1日2回、2日〜3日間、患部に塗布するだけで、掻痒感がほとんどなくなり、皮膚科学会ガイドラインによる外見的な皮疹重症度によっても、SCORAD法による外見的な皮疹重症度によっても、著明な改善を示した。なお、客観的に評価するために、全症例についてCNP製剤を塗布する前後の写真を記録した。そのうち、一部の症例の写真を図に示した。
本発明のCNP軟膏製剤は、30μg/gでも50μg/gでも100μg/gほぼ同等に有効であり、男女を問わず、3歳から56歳にわたる幅広い年齢層において、効果を示した。また、顔面、頚部、背部、上肢のいずれの部位にも有効であった。さらに、ハウスダストとダニとカモガヤに対する免疫反応性を有する患者から、ハウスダスト、ダニ、スギ、カモガヤ、ブタクサのすべてのアレルゲンに対して免疫反応性を有する患者に渡る幅広い免疫反応性を有する患者のいずれにおいても、そのアトピー性皮膚炎を改善した。
本発明のCNP軟膏製剤は、家族性のアレルギー素因を有する患者のアトピー性皮膚炎を著明に改善した。また、本発明のCNP軟膏製剤は、幼少時に発症して再発を繰り返してきたアトピー性皮膚炎に対しても、その症状を著明に改善した。さらに、本発明のCNP軟膏製剤は、再発を繰り返してきた難治性のアトピー性皮膚炎の症状を著明に改善した。さらにまた、ステロイド外用療法でも軽快しないアトピー性皮膚炎に対しても、本発明のCNP軟膏製剤はその症状を著明に改善したことは、驚くべきことである。加えて、本発明のCNP軟膏製剤の塗布を中止した後、少なくとも5日間、長い場合には2週間以上にわたってアトピー性皮膚炎の再燃が見られなかったことは、特筆に値する。
なお、本発明のCNP軟膏製剤は、CNP以外に薬効を示す可能性のある成分を全く含まないので、上記のアトピー性皮膚炎に対する治療効果は、CNP自体の薬効であることがより明確に確認された。
【0184】
【表11】
【0185】
【表12】
【0186】
【表13】
【0187】
【表14】
【0188】
【表15】
【0189】
【表16】
【0190】
CNPゲル剤、CNP水溶液製剤、CNPゲルベース製剤、およびCNP軟膏製剤による治療結果の総括:
上記の症例試験から以下のことが明らかとなった。
CNPを含有する皮膚外用組成物を投与することにより、高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癬化を伴う紅班、丘疹,鱗屑を著明に改善し、あるいは、乾燥および軽度の紅班、鱗屑などを主体とする軽症ないし炎症症状に乏しく乾燥症状主体の軽微な皮疹に改善することができた。特に、CNPを含有する皮膚外用組成物を投与することにより、治療に苦慮し、社会生活にも支障をきたす成人顔面の潮紅、浸潤、鱗屑ないし苔癬、ほてりを全く刺激症状ない状態に、劇的に改善することができた。その他、上肢、背部など他部位においても顕著に改善がみられ、また成人に限らず幼児においても同様の効果が認められた。これらのCNPを含有する皮膚外用組成物は、CNPゲル剤、CNP水溶液製剤、CNPゲルベース製剤、CNP軟膏製剤のいずれであっても、ほぼ同等の治療効果を示した。
CNPを含有する皮膚外用組成物のこれらの効果の発現は、塗布後10分程度で自覚的にほてりが鎮まり、30分経過後くらいから他覚的に紅班、浸潤の軽快が認められた。さらに、3日ないし4日塗布を継続すると、紅班、浸潤が明らかに軽快し、きめのととのったほぼ正常に近い皮膚になった。これは重症のアトピー性皮膚炎にとって大いなる福音であろう。
【0191】
また、CNPを含有する皮膚外用組成物を投与することにより、血管拡張と炎症性紅班が改善されていることがダーモスコピーによる皮膚真皮上層の所見から確認された。さらに、CNPを含有する皮膚外用組成物を投与することにより、皮膚表面のきめが細かく整い、鱗屑が減り、肌触りが柔らかくなることが確認された。この所見はダーモスコピーによる皮膚真皮上層の所見からも確認された。皮膚表面のきめが細かく整い、鱗屑が減り、肌触りが柔らかくなることは、乾燥およびバリアー機能の低下を補完し、炎症の再燃を予防する上で重要である。このような効果は、乾癬でも認められ、鱗屑が消え、浸潤が軽快したことが確認された。CNP塗布による局所刺激症状並びに全身の副作用は全く認められなかった。酒さにおいてもCNP塗布により毛細血管拡張と紅班の改善がみられた。
これら治療効果は、塗布中止後も5日から2週間程度良好な皮膚症状が持続した。また、その後、仮に紅班が再発しても、塗布前のように悪化することはなく、軽度であり、安定した状態が継続できることが確認された。このことは、従来の治療法であるステロイドの外用では全く得られなかったことであり、特筆に値する。また、再発した場合でも、皮疹に再度塗布することによって、初回よりも少ない塗布回数で再び軽症ないし軽微な皮疹に導くことが可能であることが確認された。
そもそも、アトピー性皮膚炎の治療の目標は、患者を次のような状態に到達させることにある。
(1)症状がないこと。あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としないこと。
(2)軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化する可能性が低く、仮に悪化しても遷延することはないこと。
上記の症例試験から、本発明のCNPを含有する皮膚外用組成物は、患者をこのような状態に到達させうることが明確に確認された。
次に、BNPを含有する皮膚外用組成物について試験を行った。
【0192】
〔実施例13〕
1.BNPゲルベース製剤の製造;
BNPゲルベース製剤の調製は次のようにして行った。
パラオキシ安息香酸メチルエステル(商品名:メッキンスM、上野製薬製)0.1g、フェノキシエタノール0.2g、1、2ペンタンジオール3.0gを同一容器に秤量し、これを60〜70℃で溶解して混合釜に投入した。さらに濃グリセリン6.0gを投入し、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール940、ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)0.44gとキサンタンガム(商品名:ケルトロールT、大CP KELCO社製)0.08gの混合物を加えてパドル15rpmで撹拌し十分に分散させた。次にパドル15rpmで撹拌しつつ精製水83.95gを徐々に投入し、釜温を70〜80℃、パドル20rpm、デイスパー1,500〜2,000rpmで撹拌溶解した。デイスパーは停止して溶解を確認し、直ちに冷却を開始し、釜温が40℃付近にしてから、アイエスピー・ジャパン社製のルブラジェルNP6.0g(グリセリン2.7g、カルボキシビニルポリマー0.06g、ポリアクリル酸ナトリウム0.018g、水3.222g)を加えてパドル20rpmで均一に混合し、更に水酸化カリウム0.230gを加えて溶液を中和し、釜温が25℃に達した時点で、パドルの回転を停止してゲルベースを作製した。
次いで、主剤としての3mgのヒトBNP−32(株式会社ペプチド研究所製)を3mlの生理食塩水に溶解して得られた1000μg/mlの濃度のBNP溶液1mlを上記で得られたゲルベース19gに均一に撹拌混合して50μg/g濃度のゲルベース製剤を作成した。
同様に、上記の1000μg/mlの濃度のBNP溶液600μlを400μlの生理食塩水で希釈し、600μg/ml濃度に調製し、この溶液1mlを上記で得られたゲルベース19gに均一に撹拌混合して30μg/g濃度のゲルベース製剤を作成した。
【0193】
〔実施例14〕
2.BNP水溶液製剤の製造;
主剤としての3mgのヒトBNP−32(株式会社ペプチド研究所製)を3mlの生理食塩水に溶解して得られた溶液1.0mlに生理食塩水19mlで希釈してBNP濃度50μg/mlの水溶液製剤を調製した。
【0194】
〔実施例15〕
3.被験者の診断;
被験者の診断、症状の評価、外用療法の選択、試験方法および皮膚の観察は実施例1の方法と同様に行った。
また、実施例1の方法と同様に 本発明のBNPゲルベース製剤またはBNP水溶液製剤の投与に先だって、被験者への問診、アレルゲンに対するScratch試験、診断を行った。表17(被験者36〜40)および表19(被験者41〜45)に、それら被験者への問診、診断結果、即ち、各症例における被験者の性別、年齢、発症経緯と経過、家族歴、既 往 歴、Scratch試験結果、診断所見、「ガイドライン2005」に基づく症状の評価を示す。
【0195】
〔実施例16〕
4.被験者の治療効果;
本発明のBNPゲルベース製剤またはBNP水溶液製剤の治療効果を表18(被験者被験者36〜40)および表20(被験者41〜45)に示す。表18および表20において、「掻痒感」とは、Visual analogue scale法を用いて評価した掻痒感を治療の前後で比較したものである。同様に、「非再燃期間」とは、症状が軽快した後に本発明の製剤による治療を中断しても症状が再燃しなかった期間を示す。なお、客観的に評価するために、全症例についてBNP製剤を塗布する前後の写真を記録した。そのうち、一部の症例の写真を図に示した。
【0196】
【表17】
【0197】
【表18】
【0198】
【表19】
【0199】
【表20】
【0200】
〔実施例17〕
表17ないし表20にまとめたBNPゲルベース製剤およびBNP水溶液製剤の試験例の詳細を以下に示す。参考のため、最重症患者の塗布前後の写真として、症例1(被験者41)の写真を
図12に、症例4(被験者42)の写真を
図13に、症例5(被験者40)の写真を
図14にそれぞれ示した。
【0201】
BNP試験例1(症例1;被験者41):
症例1の被験者は、浮腫、浸潤性紅班、紅班、高度の鱗屑、多数の掻破痕が全身に認められ、湿疹続発性紅皮症状態にあると認められた。また、頚部の皮疹は、高度の浮腫、浸潤、紅班、びらん,鱗屑、多数の掻破痕を主体としており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であった。この被験者は、ステロイド外用剤を使用しても症状を改善することはできなかった。
治療とその結果;
症例1の被験者に対して、実施例13で得た50μg/g濃度のBNPゲルベース製剤を頚部に1日2回単純塗布したところ、5日後には浮腫、紅班、掻破痕、浸潤、鱗屑,火照り感、掻痒とも著明に改善した。掻痒感は、塗布前10に比し、2まで改善された。塗布前と塗布5日後の図面代用写真を
図12に示す。Aは塗布前、Bは塗布後である。
【0202】
BNP試験例2(症例2;被験者38):
症例2の被験者は、顔、頚部および躯幹に浸潤性紅班、紅班および鱗屑が認められ、顔面および頚部の皮疹は高度の浸潤、紅班、鱗屑を主体としていた。また、顔面、頚部の皮疹は、高度の浸潤、紅班、鱗屑を主体としており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は重症であった。この被験者にステロイド外用療法を試みたが、外用中止後、すぐに再発してしまった。
治療とその結果;
症例2の被験者に対して、実施例13で得た50μg/g濃度のBNPゲルベース製剤を顔面に1日2回単純塗布したところ、3日後には紅班、浸潤、火照り、掻痒とも著明に改善した。掻痒感は、塗布前10に比し、0まで改善された。
【0203】
BNP試験例3(症例3;被験者39):
症例3の被験者は、顔面、四肢および背部に浸潤性紅班、紅班、多数の丘疹痂皮の付着および掻破痕が認められ、顔面の皮疹は、浸潤性紅班、多数の丘疹および掻破痕を主体としていた。また、顔面、頚部の皮疹は、高度の浸潤、紅班、鱗屑を主体としており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は重症であった。この被験者にステロイド外用療法を試みたが、外用中止後、すぐに再発してしまった。
治療とその結果;
症例3の被験者に対して、実施例13で得た50μg/g濃度のBNPゲルベース製剤を顔面に一日2回単純塗布したところ、3日後には紅班、浸潤、掻痒とも著明に改善された。掻痒感は、塗布前10に比し3日間の塗布で3まで改善した。
【0204】
BNP試験例4(症例4;被験者42):
症例4の被験者は、四肢、躯幹、頚部および顔面に浸潤性紅班、紅班、浮腫、鱗屑、痂皮の付着が認められ、上肢の皮疹は、浸潤性紅班、紅斑、丘疹、高度の鱗屑、痂皮からなっていた。また、上肢の皮疹は浸潤、紅斑、浮腫、高度の鱗屑、痂皮からなっており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であり、ステロイド外用剤でも症状を改善することはできなかった。
治療とその結果;
症例4の被験者の上肢に実施例13で得た50μg/g濃度のBNPゲルベース製剤を1日2回単純塗布したところ、3日後には軽度の紅班は残存していたが、浸潤、丘疹,鱗屑、痂皮および掻痒が著明に改善された。掻痒感は、塗布前10に比し3日間の塗布で1まで改善した。塗布前と塗布5日後の図面代用写真を
図13に示す。Aは塗布前、Bは塗布後である。
【0205】
BNP試験例5(症例5;被験者40):
症例5の被験者は、顔面、頚部および四肢躯幹に、浸潤性紅班、紅班、浮腫、鱗屑、痂皮の付着、多数の掻破痕が認められ、顔面および頚部の皮疹は、浮腫を伴う紅班、びらん,鱗屑、多数の掻破痕を主体としていた。また、顔面、頚部の皮疹は、浮腫を伴う紅班、びらん,鱗屑、多数の掻破痕を主体としており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であり、ステロイド外用剤でも症状を改善することはできなかった。
治療とその結果;
症例5の被験者の顔面、頚部に実施例13で得た50μg/g濃度のBNPゲルベース製剤を1日2回単純塗布したところ、1日でびらんが改善し、2日後には紅班、浸潤,掻破痕、掻痒とも著明に改善された。掻痒感は、塗布前10に比し塗布2日後には1まで改善された。塗布前と塗布1日後の図面代用写真を
図14に示す。Aは塗布前、Bは塗布後である。
【0206】
BNP試験例6(症例6;被験者37):
症例6の被験者は、全身に浮腫、浸潤性紅班、紅班、高度の鱗屑、多数の掻破痕が認められ、湿疹続発性紅皮症状態にあった。また、顔面、頚部の皮疹は、高度の浮腫、浸潤、紅班、びらん,鱗屑、多数の掻破痕を主体としており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であった。この被験者は、ステロイド外用療法でも症状を改善できなかった。
治療とその結果;
症例6の被験者に対して、実施例13で得た30μg/g濃度のBNPゲルベース製剤を顔面、頚部に1日2回単純塗布したところ、5日後には浮腫、紅班、掻破痕、浸潤、鱗屑,火照り感、掻痒とも著明に改善した。掻痒感は塗布前10に比し、2に改善された。
【0207】
BNP試験例7(症例7;被験者36):
症例7の被験者は、顔と頚部に浸潤性紅班、浮腫、紅班が、また、四肢には丘疹,紅班が播種しており、顔面、頚部の皮疹は、高度の浸潤、紅班、腫脹を主体としていた。「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であり、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は重症であった。この被験者にステロイド外用療法を試みたが、外用中止ですぐに再発してしまった。
治療とその結果;
症例7の被験者に対して、実施例18で得た50μg/g濃度のANPゲルベース製剤を塗布したが、乾燥してかえって紅班、掻痒とも増悪した。そこで、顔面に1日2回、実施例13で得た30μg/g濃度のBNPゲルベース製剤を単純塗布したところ、2、3日で紅班、浮腫、乾燥、掻痒とも著明に改善した。掻痒感は塗布前10に比し、0に改善された。
【0208】
BNP試験例8(症例8;被験者43):
症例8の被験者は、体に苔癬化を伴う浸潤性紅班、紅班、多数の丘疹、掻破痕がみられ、顔面にも浸潤性紅班、紅班、多数の丘疹が認められ、顔面の皮疹は、浸潤性紅班、多数の丘疹、鱗屑、掻破痕を主体としていた。「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であり、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であった。この被験者にステロイド外用療法を試みたが、外用中止ですぐに再発してしまった。
治療とその結果;
症例8の被験者に対して、顔面に実施例14で得た50μg/ml濃度のBNPの水溶液製剤を1日2回単純塗布したところ、2日後には紅班、浸潤、鱗屑、掻痒とも著明に改善した。掻痒感は塗布前10に比し、3に改善された。塗布前と塗布5日後の図面代用写真を
図15に示す。Aは塗布前、Bは塗布後である。
【0209】
BNP試験例9(症例9;被験者44):
症例9の被験者は、四肢、躯感、頚部、顔面に浸潤性紅班、紅班、浮腫、鱗屑、多数の掻破痕が認められ、顔面の皮疹は浸潤、紅斑、高度の鱗屑、痂皮からなっていた。「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であり、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は重症であった。この被験者にステロイド外用療法を試みたが、ステロイド外用ではすぐに再発してしまった。
治療とその結果;
症例9の被験者に対して、実施例18で得た50μg/g濃度のANPゲルベース製剤を塗布したところ、3日くらいで若干赤みがとれたが、その後7日間外用を継続しても、それ以上紅班が消失することはなく、鱗屑も残った。そこで、顔面、頚部に実施例14で得た50μg/ml濃度のBNP水溶液製剤を1日2回単純塗布したところ、翌日には紅班、掻痒、乾燥とも著明に改善した。掻痒感は塗布前10に比し、0に改善された。
【0210】
BNP試験例10(症例10;被験者45):
症例10の被験者は、ほぼ全身に悪寒を伴う潮紅、浮腫、浸潤性紅班が認められ、顔面、頚部、四肢の皮疹は、高度の腫脹、潮紅、浮腫からなっており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であり、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であった。長年のステロイドの外用および過剰塗布による副作用で紅皮症状態にあった。
治療とその結果;
症例10の被験者は、後述のANPゲルベース製剤を適用した比較試験例における比較症例3の患者である。そこで、顔面、頚部に実施例14で得た50μg/ml濃度のBNPの水溶液製剤を1日2回単純塗布したところ、1日で腫脹、紅班、掻痒感、突っ張り感がかなり改善して楽になり、3日後には浸潤性紅班、腫脹、掻破痕、掻痒とも著明に改善したが、まだ鱗屑、乾燥はのこっている。掻痒感は塗布前10に比し、1に改善された。
この改善状態に50μg/g濃度のANPの水溶液を1日2回単純塗布したところ、1日で紅班の範囲が拡大し、掻痒感がはっきりと自覚できるほど増強した。
【0211】
BNPゲルベース製剤およびBNP水溶液製剤による治療結果の総括:
上記の症例試験から以下のことが明らかとなった。
BNPを含有する皮膚外用組成物を投与することにより、高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癬化を伴う紅班、丘疹,鱗屑を著明に改善し、あるいは、乾燥および軽度の紅班、鱗屑などを主体とする軽症ないし炎症症状に乏しく乾燥症状主体の軽微な皮疹に改善することができた。特に、BNPを含有する皮膚外用組成物を投与することにより、治療に苦慮し、社会生活にも支障をきたす成人顔面の潮紅、浸潤、鱗屑ないし苔癬、ほてりのない状態に、劇的に改善することができた。これらのBNPを含有する皮膚外用組成物は、BNP水溶液製剤、BNPゲルベース製剤のいずれであっても、同等の治療効果を示した。
BNPを含有する皮膚外用組成物のこれらの効果は、3日ないし4日塗布継続により、紅班、浸潤が明らかに軽快し、きめのととのったほぼ正常に近い皮膚になった症例もある。これは重症のアトピー性皮膚炎にとって大いなる福音であろう。
また、BNPを含有する皮膚外用組成物を投与することにより、血管拡張と炎症性紅班が改善されていることがダーモスコピーによる皮膚真皮上層の所見から確認された。さらに、BNPを含有する皮膚外用組成物を投与することにより、皮膚表面のきめが細かく整い、鱗屑が減り、肌触りが柔らかくなることが確認された。この所見はダーモスコピーによる皮膚真皮上層の所見からも確認された。皮膚表面のきめが細かく整い、鱗屑が減り、肌触りが柔らかくなることは、乾燥およびバリアー機能の低下を補完し、炎症の再燃を予防する上で重要である。このような効果は、乾癬でも認められ、鱗屑が消え、浸潤が軽快したことが確認された。BNP塗布による局所刺激症状並びに全身の副作用は全く認められなかった。酒さにおいてもBNP塗布により毛細血管拡張と紅班の改善がみられた。
これらBNP皮膚炎治療剤の効果も、先の出願に係るCNPとほぼ同様で塗布後20分程度で自覚的に火照り、重苦しさが改善し、40分程度で他覚的に、紅班、浸潤、腫脹が軽減されているのが認められた。さらに塗布後2ないし3日で高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癬化を伴う紅班、丘疹,鱗屑を著明に改善し、乾燥および軽度ないし軽微の紅班、鱗屑などを主体とする症状に改善できた。また効果の持続性が認められ、塗布中止後も5日から2週間程度良好な皮膚症状が持続した。
また、その後、仮に紅班が再発しても、塗布前のように悪化することはなく、軽度であり、安定した状態が継続できることが確認された。このことは、従来の治療法であるステロイドの外用では十分に得られなかったことであり、特筆に値する。また、再発した場合でも、皮疹に再度塗布することによって、初回よりも少ない塗布回数で再び軽症ないし軽微な皮疹に導くことが可能であることが確認された。
皮疹の改善度は日本皮膚科学会の皮疹の重症度では重症から軽症ないし軽微に改善した。世界的に用いられている”SCORAD index:Clinical evaluation”による局所症状の重症度では”Erythema”、”Edema/papulation”、”Oozing/crusting”、”Excoriation”, ”Lichenification“ともほとんどのケースでステージ3から最も軽症のステージ1に改善された。
そもそも、アトピー性皮膚炎の治療の目標は、患者を次のような状態に到達させることにある。
(1)症状がないこと。あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としないこと。
(2)軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化する可能性が低く、仮に悪化しても遷延することはないこと。
上記の症例試験から、本発明のBNPを含有する皮膚外用組成物は、患者をこのような状態に到達させうることが明確に確認された。
【0212】
〔実施例18〕
比較試験:
1.ANPゲルベース製剤の製造;
比較試験のために、ANPゲルベース製剤を次のようにして調製した。
パラオキシ安息香酸メチルエステル(商品名:メッキンスM、上野製薬製)0.1g、フェノキシエタノール0.2g、1、2ペンタンジオール3.0gを同一容器に秤量し、これを60〜70℃で溶解して混合釜に投入した。さらに濃グリセリン6.0gを投入し、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール940、ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)0.44gとキサンタンガム(商品名:ケルトロールT、CP KELCO社製)0.08gの混合物を加えてパドル15rpmで撹拌し十分に分散させた。次にパドル15rpmで撹拌しつつ精製水83.95gを徐々に投入し、釜温を70〜80℃、パドル20rpm、デイスパー1,500〜2,000rpmで撹拌溶解した。デイスパーは停止して溶解を確認し、直ちに冷却を開始し、釜温が40℃付近にしてから、アイエスピー・ジャパン社製のルブラジェルNP6.0g(グリセリン2.7g、カルボキシビニルポリマー0.06g、ポリアクリル酸ナトリウム0.018g、水3.222g)を加えてパドル20rpmで均一に混合し、更に水酸化カリウム0.230gを加えて溶液を中和し、釜温が25℃に達した時点で、パドルの回転を停止してゲルベースを作製した。
主剤としてのハンプ注射用1000(注射用カルペリチド;α型ヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチド製剤)1000μgを注射用水10mlに溶解して得られた100μg/mlの濃度のANP溶液10mlを上記のゲルベース10gで希釈してANP濃度50μg/gのゲルベース製剤を調製した。
また、BNPと同様の条件で比較検討するためヒトANP−28(株式会社ペプチド研究所製)でも検討した。この場合、0.5mgを1mlの精製水に溶解して得た500μg/mlの濃度のANP溶液1.0mlを同じく上記で得たゲルベース9gに均一に混合撹拌してANPゲルベース製剤を得た。該ゲルベース製剤のANP濃度は50μg/gである。
【0213】
〔実施例19〕
2.ANP水溶液製剤の製造;
主剤としての0.5mgのヒトANP−28(株式会社ペプチド研究所製)を1mlの精製水に溶解して得られた溶液1.0mlに精製水9mlで希釈してANP濃度50μg/mlの水溶液製剤を調製した。
【0214】
〔実施例20〕
3.被験者の診断;
被験者の診断、症状の評価、外用療法の選択、試験方法および皮膚の観察は実施例1の方法と同様に行った。
また、実施例1の方法と同様に 本発明のANPゲルベース製剤の投与に先だって、被験者への問診、アレルゲンに対するScratch試験、診断を行った。表21(被験者45〜49)に、それら被験者への問診、診断結果、即ち、各症例における被験者の性別、年齢、発症経緯と経過、家族歴、既往歴、Scratch試験結果、診断所見、「ガイドライン2005」に基づく症状の評価を示す。
【0215】
〔実施例21〕
4.被験者の治療効果;
本発明のANPゲルベース製剤の治療効果を表22(被験者45〜49)に示す。表22において、「掻痒感」とは、Visual analogue scale法を用いて評価した掻痒感を治療の前後で比較したものである。同様に、「非再燃期間」とは、症状が軽快した後に本発明の製剤による治療を中断しても症状が再燃しなかった期間を示す。なお、客観的に評価するために、全症例についてANP製剤を塗布する前後の写真を記録した。そのうち、一部の症例の写真を図に示した。
【0216】
【表21】
【0217】
【表22】
【0218】
〔実施例22〕
比較のために実施例18で得た50μg/g濃度のANPゲルベース製剤を用いて試験を行った。参考のため、塗布前後の写真として、比較試験例2(症例2;被験者46)の写真を
図16に、比較試験例3(症例3;被験者45)の写真を
図17に、比較試験例5(症例5;被験者48)の写真を
図18にそれぞれ示した。
【0219】
比較試験例1(症例1;被験者49):
比較症例1の被験者は、睡眠障害を伴う強い掻痒を伴う紅班、高度の鱗屑、多数の掻破痕が全身にみられた。また、背部の皮疹は、高度の鱗屑、紅班、多数の掻破痕を主体としており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、この被験者は、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であり、ステロイド外用療法では一時的には軽快するが、すぐに再発して乾燥してしまった。
治療とその結果;
比較症例1の被験者の背部に実施例18で得た50μg/g濃度のANPゲルベース製剤を1日2回7日間単純塗布したが、塗布前に比べ高度の鱗屑、紅班、多数の掻破痕が、残存していた。掻痒感は塗布前10に比し、10であり、依然として重症度は重症であった。
【0220】
比較試験例2(症例2;被験者46):
比較症例2の被験者は、顔面、頚部には苔癬化を伴う浸潤性紅班、紅班、高度の鱗屑、がみられ、四肢、躯幹には浸潤性紅班がみられた。また、顔面の皮疹は、高度の苔癬化浸潤、紅班、鱗屑を主体としており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、この被験者は、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であり、顔面の浸潤性紅班はステロイド外用療法では十分な効果が得られなかった。
治療とその結果;
比較症例2の被験者の顔面、頚部に実施例18で得た50μg/g濃度のANPゲルベース製剤を1日2回7日間単純塗布したが、赤みがとれず、紅班、鱗屑とも増悪した。塗布前と塗布5日後の図面代用写真を
図16に示す。Aは塗布前、Bは塗布後である。掻痒感は塗布前10に比し、10であり、依然として重症度は重症であった。
【0221】
比較試験例3(症例3;被験者45):
比較症例3の被験者は、悪寒を伴う潮紅、浮腫、浸潤性紅班がほぼ全身に認められた。また、顔面、頚部、四肢の皮疹は、高度の腫脹、潮紅、浮腫からなっており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、この被験者は、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は最重症であり、長年のステロイドの外用および過剰塗布による副作用で紅皮症状態にあった。
治療とその結果;
比較症例3の被験者の顔面、上肢に実施例18で得た50μg/g濃度のANPゲルベース製剤を1日2回単純塗布したところ、やや浮腫は軽快したが、7日経過しても潮紅、紅班とも改善が見られなかった。塗布前と塗布7日後の図面代用写真を
図17に示す。Aは塗布前、Bは塗布後である。掻痒感は塗布前10に比し、10であり、依然として重症度は重症であった。
【0222】
比較試験例4(症例4;被験者47):
比較症例4の被験者は、浸潤性紅班、紅班、高度の鱗屑、痂皮の付着、多数の掻破痕が全身に認められ、特に顔面,頚部で顕著であった。また、顔面の皮疹は、高度の浸潤、浮腫、紅班、丘疹、鱗屑、痂皮、掻破痕を主体としており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、この被験者は、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は重症であり、ステロイドを使用するも顔面の症状はすぐに再発し、外用前よりも増悪する傾向が見られた。
治療とその結果;
比較症例4の被験者の顔面に実施例18で得た50μg/g濃度のANPゲルベース製剤を1日2回単純塗布したが、5日経過後も紅班、浸潤とも全く軽快しなかった。掻痒感は塗布前10に比し、10程度であり、依然として重症度は重症であった。
【0223】
比較試験例5(症例5;被験者48):
比較症例5の被験者は、浸潤性紅班、紅班、多数の掻破痕、丘疹、が特に背部に顕著にみられた。また、背部の皮疹は、高度の浸潤、紅班、多数の掻破痕、丘疹、苔癬化からなっており、「皮膚科学会ガイドライン」に基づく重症度は重症であった。なお、この被験者は、「ガイドライン2005」に基づく症状評価は重症であり、ステロイド外用では十分な効果は得られず、すぐに再発し、激痒がとれなかった。
治療とその結果;
比較症例5の被験者の背部に実施例18で得た50μg/g濃度のANPゲルベース製剤を1日2回単純塗布したところ、3日経過しても紅班。掻痒とも全く効果は得られなかった。塗布前と塗布5日後の図面代用写真を
図18に示す。Aは塗布前、Bは塗布後である。掻痒感は塗布前10に比し、10程度であり、依然として重症度は重症であった。
【0224】
比較試験例の総括:
上記の比較症例試験から以下のことが明らかとなった。
ANPを含有する外用製剤を用いた比較試験によれば、ANP外用製剤は同じ濃度で若干の効果が認められたる症例もあったが、効果の発現時期が塗布後3日程度要し、また完全に紅班が消失することはなく、7日以上外用を継続しても、CNPまたはBNPを含有する皮膚炎治療剤のように紅班が消失することはなく、かえって増悪する例もあった。また、外用を中止するとすぐに再発して乾燥がひどくなり、かゆみも増強する。明らかにCNPまたはBNPを含有する皮膚炎治療剤に比較して劣るものであった。多くの症例ではANP外用製剤は、効果が見られないかむしろ増悪し皮疹の改善度は日本皮膚科学会の皮疹の重症度では重症から重症のままにとどまった。世界的に用いられている”SCORAD index:Clinical evaluation”による局所症状の重症度”Erythema”、“Edema/papulation”、”Oozing/crusting”、“Excoriation” “Lichenification”では、“Edema/population”、”Oozing/crusting”、はステージ3からステージ2に改善されることもあるが、“Excoriation” “Lichenification” “Erythema”はステージ3からステージ3に止まった。
そもそも、アトピー性皮膚炎の治療の目標は、患者を次のような状態に到達させることにある。
(1)症状がないこと。あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としないこと。
(2)軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化する可能性が低く、仮に悪化しても遷延することはないこと。
上記の比較症例試験では、ANPを含有する外用製剤では、患者をこのような状態に到達させることはできないことが確認された。
【0225】
本発明の効果の全体総括:
本発明の皮膚外用剤組成物の効果を俯瞰的に確認するために、各製剤について、SCORADによる皮疹部位の重症度評価による総合指数を、塗布前後で比較する棒グラフを作成し、
図19に示した。
比較試験例であるANPゲルベース製剤の使用前後ではSCORADによる皮疹部位の重症度にほとんど変化がなかったことがわかった。一方で、CNPまたはBNPを含有する皮膚外用剤組成物においては、塗布後は、SCORADによる皮疹部位の重症度が劇的に改善されたことがわかった。
同様に、本発明の皮膚外用剤組成物の効果を俯瞰的に確認するために、各製剤について、Visual analogue scale法を用いて評価した掻痒感を、塗布前後で比較する棒グラフを作成し、
図20に示した。
比較試験例であるANPゲルベース製剤の使用前後では掻痒感に変化がなかったことがわかった。一方で、CNPまたはBNPを含有する皮膚外用剤組成物においては、塗布後は、掻痒感が劇的に軽快したことがわかった。
以上、
図19および
図20からも、本発明のCNPまたはBNPを含有する皮膚外用剤組成物が、アトピー性皮膚炎の症状を劇的に改善することが確認された。