【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何等限定を受けるものではない。また実施例中における各値は下記の方法で求めた。
【0039】
(1)繊維の平均径:
得られた繊維の集合体の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日本電子製JCM−5000)により撮影(倍率10000倍)した。得た写真を無作為に10枚選び、写真内のすべての繊維の径を測定し、写真10枚の中に含まれるすべての繊維径の平均値を求めて、それを繊維の平均径とした。
(2)振動の角度
キーエンスVW−6000とレンズVH−Z50Lを組み合わせて撮影を行い、オリフィスから出たマルチフィラメント束の根元から垂直に下した線と、マルチフィラメント束の根元とマルチフィラメント束中央を結ぶ直線の角度を振動の角度(振動角)とした。
【0040】
[実施例1]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角32度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径310nm)を得ることができた。
【0041】
[実施例2]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(760dtex、120フィラメント)を用意した。整流部内径0.8mm、その整流部の長さは1.6mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が17%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角36度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径330nm)を得ることができた。
【0042】
[実施例3]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを0.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角25度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径310nm)を得ることができた。
【0043】
[実施例4]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(760dtex、120フィラメント)を用意した。整流部内径0.8mm、その整流部の長さは1.6mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が17%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを0.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角27度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径320nm)を得ることができた。
【0044】
[実施例5]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、25フィラメント)を用意した。整流部内径0.8mm、その整流部の長さは1.6mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が24%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角31度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径320nm)を得ることができた。
【0045】
[実施例6]
マルチフィラメントとして、繊維の断面形状が正三角形であるポリプロピレン製の異形マルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径330nm)を得ることができた。
【0046】
[実施例7]
マルチフィラメントとして、ポリエチレンテレフタレート製のマルチフィラメント(560dtex、96フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が14%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角41度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径400nm)を得ることができた。
【0047】
[実施例8]
マルチフィラメントとして、ナイロン66製のマルチフィラメント(560dtex、48フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が15%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角39度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径370nm)を得ることができた。
【0048】
[実施例9]
マルチフィラメントとして、プルシアンブルーを練り込んだポリプロピレン製のマルチフィラメント(760dtex、120フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が17%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角33度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径320nm)を得ることができた。得られたナノファイバーの集積体は均一に青みがかかっており、プルシアンブルー由来の成分が、均一に分散している事が示唆された。
【0049】
[実施例10]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmである同一形状のオリフィスが、1.5mm間隔で5つ直線状に並んでいるマルチオリフィスを用意した。これを用い、オリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角32度で振動した。また、ポリエチレン/ポリプロピレンの湿式複合不織布を基材として、オリフィス出口から60mmの距離で幅約10cmのナノファイバーの集積体を得ることができた。この集積体とポリエチレン/ポリプロピレンの湿式複合不織布ををロール温度120°で熱ラミネートすることにより複合化し複合不織布を得た。
【0050】
[実施例11]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(1670dtex、50フィラメント)を用意した。整流部内径1.0mm、その整流部の長さは3.0mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が23%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下5.0mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角30度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径340nm)を得ることができた。
【0051】
[実施例12]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.8mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径320nm)を得ることができた。
【0052】
[実施例13]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは3.0mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角25度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径310nm)を得ることができた。
【0053】
[実施例14]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.5mm、その整流部の長さは1.0mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が32%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角26度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径320nm)を得ることができた。
【0054】
[実施例15]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.8mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度8kPa(圧力差93kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径340nm)を得ることができた。
【0055】
[実施例16]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.8mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度41kPa(圧力差60kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角31度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径420nm)を得ることができた。
【0056】
[実施例17]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、25フィラメント)を用意した。整流部内径0.8mm、その整流部の長さは2.4mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が18%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下7mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角27度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径270nm)を得ることができた。
【0057】
[実施例18]
マルチフィラメントとして、ポリフェニレンサルファイド製のマルチフィラメント(170dtex、48フィラメント)を用意した。整流部内径0.3mm、その整流部の長さは0.6mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が18%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを0.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角20度で振動し、ナノファイバー(平均フィラメント径450nm)を得ることができた。
【0058】
[比較例1]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.35mm、その整流部の長さは0.8mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が66%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように、60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動することは無く、溶融部が塊として落下するだけで、ナノファイバーを得ることができなかった。
【0059】
[比較例2]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(220dtex、40フィラメント)を用意した。整流部内径0.9mm、その整流部の長さは1.6mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が4%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように、60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角90度で激しく振動し、一部ナノファイバー化したものの、得られたナノファイバー中には大量のショット(ポリマー玉)等が生じ、またオリフィスの汚れも激しく、汚れが溜まると大きな溶融物として溶融落下してナノファイバーを部分的に溶融しているなど、ナノファイバーの品質は非常に悪かった。
【0060】
[比較例3]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下0.7mmの位置になるように、60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが、振動角87度で激しく振動し、一部ナノファイバー化したものの、得られたナノファイバー中には大量のショット(ポリマー玉)等が生じ、またオリフィスの汚れも激しく、汚れが溜まると大きな溶融物として溶融落下してナノファイバーを部分的に溶融しているなど、ナノファイバーの品質は非常に悪かった。
【0061】
[比較例4]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下20mmの位置になるように、60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動することは無く、溶融部が塊として落下するだけで、ナノファイバーを得ることができなかった。
【0062】
[比較例5]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度90kPa(圧力差11kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように、60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動することは無く、溶融部が塊として落下するだけで、ナノファイバーを得ることができなかった。
【0063】
[比較例6]
マルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。整流部内径0.6mm、その整流部の長さは0mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が20%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でマルチフィラメントを1.5m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように、60Wのφ3mmレーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動することは無く、溶融部が塊として落下するだけで、ナノファイバーを得ることができなかった。
【0064】
[比較例7]
フィラメントとして、ポリプロピレン製のモノフィラメント(200μm)を用意した。整流部内径0.4mm、その整流部の長さは1.2mmであるオリフィスを用い、このときオリフィス占有率が24%の条件で、延伸室の真空度15kPa(圧力差86kPa)の状態でモノフィラメントを1.5m/minで供給し、モノフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように、60Wのφ3mmレーザーを照射したが、オリフィス出口でモノフィラメントの振動は生じなかった。このとき、元のフィラメントが太いため、溶融部が非常に大きくなってしまう事により、その一部が落下して大きなショット玉になる等、得られた繊維の品質は悪く、また原繊維よりも細化した繊維は得られたものの、平均繊維径は4μmと太く、平均繊維径1μ以下のナノファイバーと呼べるものを得ることはできなかった。