特許第6337102号(P6337102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許63371022,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337102
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/61 20060101AFI20180528BHJP
   C07D 213/74 20060101ALI20180528BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   C07D213/61
   C07D213/74
   !C07B61/00 300
【請求項の数】30
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-518843(P2016-518843)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公表番号】特表2016-521730(P2016-521730A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】DK2014050166
(87)【国際公開番号】WO2014198278
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】PA201370319
(32)【優先日】2013年6月14日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】PA201470138
(32)【優先日】2014年3月20日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】515347290
【氏名又は名称】ケミノバ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】カスパ ストウベク アナスン
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−70825(JP,A)
【文献】 特開平2−212475(JP,A)
【文献】 特開平2−218666(JP,A)
【文献】 特開昭63−30428(JP,A)
【文献】 特開昭62−286967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温及び高圧で、一般式[I]
【化1】
(式中、XはCOOH、CONH2、CCl3又はCN;及び、R1はH又はClを表す)
の化合物と、塩素化剤としてのPCl5とを反応させること、
を含む、
式[II]
【化2】
の2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの製造方法であって、
中間化合物2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンが反応の過程で形成され得る、方法。
【請求項2】
Cl2、PCl3、SOCl2、COCl2、(COCl)2、POCl3又はそれらの混合物の内から選択された、追加の塩素化剤が存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
追加の塩素化剤がCl2である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
XはCOOHを表し、式[I]の反応中に、COClとしてXを有する中間化合物が製造される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
反応温度が70℃を超える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応温度が70℃から200℃の範囲内である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応温度が160℃を超える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
反応温度が350℃未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応圧力が2バールを超える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応圧力が50バール未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応圧力が2から30バールの範囲内である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応圧力が30バールを超える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
反応温度が160℃から250℃の範囲内であり、かつ、反応圧力が10バールから30バールの範囲内である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
反応が溶媒の存在なしに行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
反応が溶媒の存在下で行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒が塩素化溶媒である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒が、三塩化リン、塩化ホスホリル、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロナフタレン、二塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はそれらの混合物である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
塩素化剤として用いられるPCl5が、一部又は全部において、インサイチュで生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
PCl3とCl2との反応からPCl5が生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PCl3に対して等モル量又はそれ未満のCl2が用いられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
塩素化剤の総量が、一般式[I]の化合物のモル当たり2から15モルの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
式[II]の化合物を製造するために、反応の過程で形成された、任意の量の中間化合物2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの2次的塩素化を後に行う、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
2次的塩素化を促進するためにCl2が添加される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
2次的塩素化に先立って、PCl3がもし存在するならば、反応混合物から取り除かれる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
2次的塩素化を促進するために触媒が提供される、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記触媒が、金属塩化物、酸塩化物及びカルボニル、例えば、FeCl3、AlCl3、RuCl3、SnCl4、WCl6、MoCl5、MoCl4O、WCl4O、Mo(CO)6もしくはW(CO)6;ホスフィン、例えば、(Ph)3Pもしくは(Ph)3P=O;ボラン、例えば、BCl3;又はそれらの混合物、の内から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
式[II]の化合物が、式[III]
【化3】
の化合物を得るために、フッ素化ステップにさらに供される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
式[III]の化合物が農薬活性化合物にさらに変換される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記農薬活性化合物が、除草剤、殺虫剤又は殺菌剤である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記農薬活性化合物が、フルアジナム(fluazinam)、フルオピコリド(fluopicolide)、ハロキシホップ(haloxyfop)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)又はフルアズロン(fluazuron)である、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序文
本発明は、化合物2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
2,3−ジクロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン(DCTF)は、農薬産業、特に、フルアジナム(fluazinam)及びフルオピコリド(fluopicolide)、並びに他の農薬活性ピリジン化合物、例えば次の特許明細書番号WO2007/060662−A2、US 6,921,828及びGB 2002368−A、に開示された、の合成における使用のための、重要な有機中間体である。該分子の前駆体は、2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジン(PCMP)である。
【0003】
いくつかのDCTFの製造方法は、6−ヒドロキシニコチン酸、3−ピコリン又は2−クロロ−5−クロロメチルピリジン等の、異なる出発物質の使用と、最終DCTF生成物に向かう共通中間体、すなわちPCMP、を経る経路を含む、文献に記載される。
【0004】
3−ピコリン−N−オキシドからのDCTFの製造は、4ステップの合成経路によって達成することができる。合成の第1のステップは、2−クロロ−5−メチルピリジンが合成される、米国特許番号US 4,897,488に開示され、次いで例えばUS 4,241,213に記載される、ラジカル塩素化ステップ、次いで例えば米国特許番号US 4,331,811に記載される、PCMPの形成が続き、一方でDCTFへの最終ステップは欧州特許公開番号EP 110690−A1に開示される。
【0005】
例えば、米国特許番号US 4,636,565、US 4,331,811、US 4,309,548及び欧州特許出願番号EP 246349−A1に記載される、種々の金属系触媒の存在下で任意に塩素ガスを用いて、2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンからの、いくつかの既知のPCMPの調製方法がある。2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンは、米国特許明細書番号US 4,324,627及び欧州特許出願番号EP 4414−A1に開示されている手順に従って調製され得る。
【0006】
ピリジン環上でのシアノピリジンの直接塩素化は、特許公開番号WO 9413640−A1及びUS 5,484,929に開示される。
【0007】
種々の塩素化剤を用いた、ニコチン酸からの3−トリクロロメチルピリジンの調製方法は、以下の特許公報:US 4,634,771並びにEP 281965−A1及びその米国対応特許US 4,833,250、に記載される。
【0008】
3−トリクロロメチルピリジンの調製に用いられる、塩素化剤としてのPCl5の使用は、例えば、ニコチン酸からの3−トリクロロメチルピリジンの調製を開示する、米国特許公開番号US 4,958,025から知られている。米国特許公開番号US 4,419,514において、PCl5は、5−クロロ−6−ヒドロキシニコチン酸からのPCMPの調製のための塩素化剤として、フェニルホスホン酸ジクロリドと組み合わせて用いられる。
【0009】
DCTFの製造は、中国特許公開番号CN 101092392に開示される、2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン(CCMP)からの、マルチトンスケール(multi−ton scale)の製造においても達成することができる。米国特許番号US 5,229,519に開示されるように、CCMPは、6ステップの合成経路で、シクロペンタジエンから製造され得るが、この方法は非常に低いアトムエコノミーを有し、それゆえ、大きな廃棄物問題を生じる。しかしながら、シクロペンタジエンの低いコストのため、シクロペンタジエンからの、この6ステップの合成経路は、代替案よりも選択される。世界は、それゆえ、市販のバルク材から出発して、ごく少ない合成ステップでDCTFを合成する、高収率の製造手段を必要としている。
【0010】
本発明の目的は、高収率及び/又は、より少ない副生成物、特に、容易にPCMPに変換され得ない種類のより少ない副生成物を有する、中間生成物2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジン(PCMP)の製造方法を提供することである。さらに、本方法は中間体反応生成物CCMPがない。従って、本発明は、容易に入手可能な物質、例えばニコチン酸(ビタミンB3としても知られる)から、1の単一ステップで、2,3−ジクロロ−5−トリクロロメチルピリジン(PCMP)を製造する方法を提供する。本発明の方法は、また、いかなる問題のある廃棄物をも生成することなく、最小単位の操作を用いて、行われるであろう。
【0011】
中間体PCMPは、単一の後続ステップによってDCTFに変換され得る。ある実施態様において、本発明は、市販のバルク材ニコチン酸からDCTFを製造するために、操作しやすく、経済的な、2つのステップの方法を提供する。
【発明の概要】
【0012】
発明の概要
本発明は、高温及び高圧で、一般式[I]の化合物と、塩素化剤としてのPCl5とを反応させること、
を含む、式[II]の2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの製造方法に関する
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、XはCOOH、CONH2、CCl3又はCN;及び、R1はH又はClを表す)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施態様において、XはCOOHを表す。より好ましい実施態様において、出発物質は、R1がHかつXがCOOHである、式[I]、すなわちニコチン酸である。R1がCl又はH、かつ、XがCCl3を表す式[I]の化合物は、上で定義されているがCCl3とは異なるXを有する、式[I]の任意の化合物からの反応の過程で、中間生成物としてしばしば観察される。XがCOClを表す、式[I]の類似の化合物は、特にXがCOOHを表す2つの化合物のいずれかから出発する場合、一定の条件下で、中間化合物として形成されると考えられる。
【0016】
反応は、溶媒の存在とともに、又は溶媒の存在なしに行われてもよい。溶媒は、任意の芳香族炭化水素溶媒、例えばベンゼン、又は、任意の塩素化溶媒、例えば、三塩化リンもしくは塩化ホスホリル等の、塩素化亜リン酸化合物、あるいは、脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素の塩素化合物、例えば、クロロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロナフタレン、二塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン及びトリクロロエタンもしくはそれらの混合物、でよい。溶媒が存在する場合、それは好適には塩素化溶媒である。ある実施態様において、塩素化溶媒は塩素化剤のインサイチュ生成にも使用され、最も好ましくは塩素化溶媒は、例えば、塩素ガス等の塩素源と反応する場合にPCl5の原料となる、三塩化リンである。塩化ホスホリルは反応の過程で形成され得、量が比較的少ない場合には、本文脈においては溶媒とはみなされない。
【0017】
本方法の温度は、高速反応を提供するために十分に高い温度であるが、安全な操作上の圧力を保つために十分に低い温度を有することと、不必要な副生成物、出発物質の分解、及びオートクレーブの腐食を避けることとの折衷案である。本方法は高温、例えば、本発明の1の実施態様において、温度は、好ましくは70から200℃の範囲、より好ましくは75から190℃の範囲であり、最も好ましくは80から185℃の範囲であるが、より高い温度、例えば200℃以上と同程度の高さで行うことができる。上限は、特に工業規模で実用的に可能なもの、例えば、反応装置及び使用される試薬の安定性によって、一般に決定され、一般に350℃未満に保たれる。
【0018】
本方法は高圧、すなわち1バールよりも高い圧力で行われる。したがって、上限は無いが、実践的見地から、圧力は好ましくは50バールよりも低い。
【0019】
本発明の1の実施態様において、本方法は、1から30バールの間、好ましくは2から20バールまでの高圧で行われる。
【0020】
本発明の好ましい実施態様において、反応圧力は2バールよりも高く、好ましくは4バールよりも高く、より好ましくは5よりも高く、又は最も好ましくは10バールよりも高い;そして、圧力は、50バールよりも低く、好ましくは40バールよりも低く、より好ましくは35バールよりも低く、かつ、最も好ましくは30バールよりも低い。従って、好ましい実施態様において、反応圧力は、2〜50バールの間、より好ましくは2〜40バール、さらにより好ましくは2〜35バールの間そして、最も好ましくは 2〜30バールの間であり;より好ましい実施態様において、反応圧力は、4〜50バールの間、より好ましくは4〜40バール、さらにより好ましくは4〜35バールの間、そして最も好ましくは4〜30バールの間であり;より好ましい実施態様において、反応圧力は、5〜50バールの間、より好ましくは5〜40バール、さらにより好ましくは5〜35バールの間、そして最も好ましくは5〜30バールの間であり;そして、さらにより好ましい実施態様において、反応圧力は、10〜50バールの間、より好ましくは10〜40バール、さらにより好ましくは10〜35バールの間、そして最も好ましくは10〜30バールの間である。これら好ましい圧力条件下において、反応は好ましくは160℃よりも高い高温において行われ、より好ましくは180℃よりも高く、さらにより好ましくは185℃よりも高く、最も好ましくは190℃よりも高く、そして、最大限に好ましくは200℃よりも高い。上限は、特に工業規模で実用的に可能なものによって一般に決定されるが、一般に350℃未満に保たれ、好ましくは300℃よりも低く、そして最も好ましくは250℃よりも低い。従って、好ましい実施態様において、温度は、160〜350℃の間、好ましくは180〜350℃の間、より好ましくは185〜350℃の間、最も好ましくは190〜350℃の間、そして最大限に好ましくは200〜350℃の間に保たれ;より好ましい実施態様において、温度は、160〜300℃の間、好ましくは180〜300℃の間、より好ましくは185〜300℃の間、最も好ましくは190〜300℃の間、そして最大限に好ましくは200〜300℃の間に保たれ;そして、さらにより好ましい実施態様において、温度は、160〜250℃の間、好ましくは180〜250℃の間、より好ましくは185〜250℃の間、最も好ましくは 190〜250℃の間、そして最大限に好ましくは200〜250℃の間に保たれる。
【0021】
本方法に用いられる、塩素化剤の化合物[I]に対する量、すなわちPCl5の量は、特定の方法条件に応じて変化し得るが、好ましくは塩素化剤の量は、一般式[I]の化合物のモル当たり、2から15モルの間、より好ましくは2から10モルの間である。好ましい実施態様において、塩素化剤の量は、一般式[I]の化合物のモル当たり、3から10モルの間、より好ましくは3から8モルの間、さらにより好ましくは3から6モルの間、そして、最も好ましくは3から5モルの間である。
【0022】
PCl5は、一度に、又は連続的に、反応容器に直接添加されてもよいが、例えば、塩素源と反応された適量のPCl3からの反応、例えば、PCl3とCl2とが、例えば等モル量において反応されている反応、の過程に先立って、又は過程中に、塩素化剤の総量又は総量の一部で、調製されてもよい。PCl3は反応中に形成され、それに応じて、例えば本発明に係るその後の反応における再利用のため、反応中又は反応完了後に、PCl5の生成に用いられ得る。従って、用いられるPCl5の量は、必ずしも最初は存在することを必要としないが、反応中に(再)生成されることがある。PCl5はCl2と共に添加されてもよい。もしあるならば又はすべてのPCl5は、PCl3とCl2との反応から生成され、Cl2がPCl3を超えて用いられている場合、反応は所望の化合物[II]の高い収率をもたらすが、所望の最終生成物から容易に分離されず、不必要な廃棄物流を生成する、いくつかの望まれない過塩素化合物(2,3,4−トリクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジン及び2,3,4,6−テトラクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジン等)をもたらす、ということが見出されている。他方で、Cl2がPCl3に対して等モル量又はそれ以下で用いられている場合、化合物[II]は、化合物2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンと共に、しかしごく少量の望まれない過塩素化合物と共に、好収率で形成される。選択された反応条件に従って、割合は変化するが、一般に2,3−ジクロロ−と2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンとが約2:1の比率である。2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンはしかしながら、例えば特許出願番号US4,636,565、US4,331,811、US4,309,548及びEP246349−A1に記載されるように、例えば1以上の触媒の存在下又は存在なしに、塩素ガスを用いる、既知の反応条件を用いて、容易に化合物[II]に変換される。この変換は、本発明に係る先の反応から化合物[II]を分離しなくても、すなわち、全体でワンポットプロセスを用いて、行われ得る。しかしながら、塩素ガスの添加に先立って、任意の残量のPCl3を除去することは有利である。従って、用いられる塩素ガスの量に関して、反応条件は、化合物[II]の直接的に高い収率を得ることか、化合物[II]のさらに高い収率をもたらすように追加の処理を要求する高い選択性かの、トレードオフである。反応条件は、60%超(出発化合物[I]の量に基づく)、好ましくは70%超、より好ましくは80%以上、そして最も好ましくは90%以上、の化合物[II]の全収率をもたらすように、好ましくは選択される。
【0023】
従って、本発明の実施態様において、反応の過程で形成された、任意の量の中間化合物2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンは、2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンを塩素化ステップに供すること、すなわち、任意に触媒の存在下で、塩素化剤、例えばCl2を用いることによって、2次的塩素化を通じて、式[II]の化合物へと変換される。本明細書に記載された第1の反応が、完了であると判断され、又は停止が引き起こされ、例えば、出発化合物[I]のさらなる変換が起こらなくなった後、この2次的塩素化は続く。任意の触媒は、塩化物、臭化物、酸塩化物、オキシ臭化物、ホスフィン及び酢酸塩、特に金属塩化物及び臭化物(酸塩化物及びオキシ臭化物を含む)、例えば、FeCl3、AlCl3、RuCl3、SnCl4、WCl6、MoCl5、MoCl4OもしくはWCl4O、並びに金属カルボニル、例えばMo(CO)6もしくはW(CO)6;又はホスフィン、例えば(Ph)3P、(Ph)3P=O;ボラン、例えばBCl3;並びにそれらの任意の混合物、を含む金属系触媒の内から選択され得る。触媒(複数)の量は、2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンに対して好ましくは0.01から20mol%の間、より好ましくは0.05から10mol%、そして最も好ましくは0.5から5mol%である。好ましい実施態様において、式[II]の化合物への2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの塩素化は、先の反応から2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンを単離することなく行われ、好ましくは、塩素化剤の添加に先立って、任意の残存するPCl3の除去とともに行われる。塩素化剤は好ましくは2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンを超えて用いられる。塩素化は高温かつ任意に高圧で行われることを必ずしも必要としない。しかしながら、高い圧力及び温度は反応の速度に影響する。従って、反応は、70℃を超える温度、好ましくは100から250℃の間の範囲内で、好ましくは行われ、一方、圧力は1から30バールの間の範囲内、好ましくは2から20バールまでである。
【0024】
所望の反応圧力が、反応全体を通して、又は好ましい間隔内で保たれる限り、本発明に係る反応中に形成されるHClガスは、反応容器内に保持される。反応容器は、本明細書に記載され、かつ好ましい反応条件、特に温度及び圧力条件だが、好ましくは、形成される最終生成物及び任意の副生成物、並びに出発物質及び用いられる他の試薬に対し不活性な物質の反応条件、に耐えるように有利に選択される。
【0025】
本発明の1の実施態様において、式[I]の化合物は、例えば、式[I]の化合物を3.5未満のpKa値を有する酸と反応することによって製造される、その塩の形で用いられる。好ましくは、酸は、塩酸塩を製造する塩酸等の無機酸である。
【0026】
本発明の他の実施態様において、式[II]の化合物は、式[II]の化合物をフッ素化ステップに供することによって、式[III]の化合物に変換されてもよい。
【0027】
【化2】
【0028】
当該方法に用いられるフッ素化剤は、フッ化水素(HF)、フッ化カリウム(KF)、三フッ化アンチモン(SbF3)、又は五フッ化アンチモン(SbF5)の内から選択されてもよい。フッ素化剤は好ましくは化合物[II]を超えて用いられる。フッ素化反応は、100℃を超える温度、好ましくは 100から250℃の間の範囲内で好ましくは行われ、一方、圧力は、好ましくは5バールよりも高く、好ましくは5から40バールの間の範囲内、より好ましくは10から30バールまでである。
【0029】
式[III]の化合物はさらに農薬活性化合物、例えば、フルアジナム、フルオピコリド、ハロキシホップ(haloxyfop)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)又はフルアズロン(fluazuron)等の、除草性、殺虫性又は殺菌性活性化合物、に変換されてもよい。フルアジナム及びフルオピコリドの調製の例は以下に示した通りである。
【0030】
【化3】
【0031】
本発明の方法は、オートクレーブ内で、一般式[I]の化合物を、塩素化剤としてのPCl5と反応することによって行われる。反応混合物は、高温に加熱され、一定時間、加圧される。反応が完了であると判断された後、塩基が得られる懸濁液に添加され得る。その後、反応混合物はワークアップされ、生成物は当業者に周知の従来技術を用いて単離される。
【0032】
別の方法では、本発明は、オートクレーブ内で、溶媒の存在下で、一般式[I]の化合物を、塩素化剤としてのPCl5と反応することによって行われる。反応混合物は、高温に加熱され、一定時間、加圧される。反応が完了であると判断された後、塩基が得られる懸濁液に添加され得る。その後、反応混合物はワークアップされ、生成物は当業者に周知の従来技術を用いて単離される。
【0033】
大きな実験室規模において、本発明は、オートクレーブ内で、一般式[I]の化合物を塩素化剤としてのPCl5と反応することによって行われる。反応混合物は、高温に加熱され、一定時間、加圧される。反応完了であると判断された後、得られる懸濁液は、三塩化リン及び塩化ホスホリルを回収するために、還流するまで加熱された。生成物は蒸留により得ることができる。
【0034】
本発明に係る反応を実施するいずれの上述の方法においても、PCl5は、一度に、又は連続的に、反応容器に直接添加されてもよいが、例えば塩素源と反応させる適量のPCl3からの反応、例えばPCl3とCl2との反応、の過程に先立って又は過程中に、塩素化剤の総量又は総量の一部で、調製されてもよい。好ましい実施態様において、PCl5はインサイチュで生成される。
【0035】
一般式[I]の出発化合物は既知であり、商業規模で入手可能であるか、又は既知の方法によって容易に調製される。XがCOClを表す式[I]の化合物は、標準的な方法を用いて、例えば、SOCl2、COCl2,(COCl)2、PCl5又はPOCl3等の種々の塩素化剤を用いて、対応する酸化合物(XはCOOHを表す)から調製され得る。最初の出発物質が酸である場合、酸塩化物は中間化合物として形成される、すなわちそれは反応容器内でインサイチュで形成される。従って、出発物質が、XはCOOHを表す化合物[I]である場合、PCl5の総量の最大1当量が、酸塩化物例えば先に述べたもの、を調製することに適した、任意の塩素化剤によって置き換えられる。かくして、塩素化剤の好ましい量、一般式[I]の化合物のモル当たり2から25モルの間の量が用いられるPCl5に従って、一般式[I]の化合物のモル当たりPCl5の最大1モルは、例えば上述の塩素化剤によって、置き換えられる。
【実施例】
【0036】
実施例1
2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンへのニコチン酸の変換
ニコチン酸(2g、16.25mmole)及び五塩化リン(27g、130mmole)を、50mlのテフロン(登録商標)オートクレーブ内で混合した。オートクレーブを閉じ、180℃の温間金属ブロック(warm metal block)で加熱した。48時間後、オートクレーブを25℃まで冷却し、開けた。得られる懸濁液は、30℃未満の温度を保ち、撹拌のもと、NaOH(10%)及びジクロロメタンの混合物内で、クエンチした。相は分離し、有機相を蒸発乾固して、粗生成物を得た。生成物をその後蒸留し、2.8gの2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンを得た(収率65%)。
【0037】
実施例2
2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンへのニコチン酸の大きな実験室規模の変換
ニコチン酸(14g、0.114mole)及び三塩化リン(126g、0.91mole)をオートクレーブに加えた。撹拌は300rpmに調節し、温度は80℃に調節した。80℃で、ヘッドスペースに塩素ガスを添加した(16g、0.228mole)。温度は120℃まで上昇させる。120℃で、塩素ガスのもう一部を添加し(48.5g、0.68mole)、続いて114時間、165℃に加熱し、15バールの圧力をもたらした。オートクレーブを25℃まで冷却し、苛性アルカリ溶液スクラバーに通気した。得られる溶液は、還流するまで加熱し、蒸留によって三塩化リン及び塩化ホスホリルを回収した。生成物をその後蒸留し、純度とは関連せず72%の収率を与え、21.7gの2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンを得た。
【0038】
実施例3
2,3−ジクロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジンへの2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの変換
2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジン(5g、18.84mmole)、塩化鉄(III)(0.153g、0.942mmole)及びフッ化水素(2.423g、85mmole)のピリジン溶液(70%)を、オートクレーブに加え、一晩、175℃に加熱した。オートクレーブを130℃まで冷却し、さらに5時間撹拌し、次いで25℃まで冷却し、注意深く開けて、気相を苛性アルカリ溶液スクラバーに通した。粗生成物をジクロロメタンに溶解し、1M NaOH(aq)及び水で洗浄した。有機相を蒸留によって除き、生成物を蒸留によって得た(3.0g、収率73%)。
【0039】
実施例4
2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンへのニコチン酸の変換
実施例1に記載された、同様の手順を用いて、種々の量の塩素化剤を使用し、175℃の温度と、20から50バールの間に設定した圧力で、一連の実験を行い、以下の表1の通りの結果となった。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例5
2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンへのニコチン酸の変換
実施例1に記載された、同様の手順を用いて、4モル当量のPCl5で、種々の温度及び、完了後25から40バールの間に達する圧力にて、一連の実験を行った。結果は表2に示される。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例6
2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンへのニコチン酸の変換
実施例1に記載された、同様の手順を用いて、種々の量のPCl5を用いて、210℃に設定した温度で、完了後25から40バールの間に達する圧力で、一連の実験を行った。結果は以下の表3の通り。
【0044】
【表3】
【0045】
実施例7
2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジン及び2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの混合物へのニコチン酸の変換
PTFEライニングの250mlベルクホーフ(Berghof)オートクレーブに、ニコチン酸(20g、162mmole)及び五塩化リン(139g、668mmole)を加えた。オートクレーブを閉じ、14時間、210℃に加熱した。加熱中に、130℃の温度周辺で、温度が190℃となる発熱を観察し、圧力は2分の内に2バールから8バールへと上昇した。加熱は210℃まで続いた。14時間後、圧力は37バールまで上昇した。オートクレーブを室温まで冷却し、スクラバーに通気し、開けて、GCによって定量化し、ニコチン酸の出発物質と比較して33%の2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの収率、及び60%の2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの収率を示した。
【0046】
実施例8
実施例7の混合反応媒体からの2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの調製
一連の実験は、実施例7からの手順を用いて行い、2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの単離をすることなく、それぞれの得られる反応混合物を、丸底フラスコに入れて、任意の残存するPCl3を常圧で蒸留によって除去した。各実験において、得られる溶液をオートクレーブに戻して、ドライアイス/アセトンバスで冷やし、2−クロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの当量当たり3〜6当量のCl2を添加し、任意に触媒も存在した。オートクレーブを3〜16時間、140〜175℃に加熱した。結果は以下の表4の通り。
【0047】
【表4】
【0048】
実施例9
式[I]の種々の化合物からの2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンの調製
50mlのテフロン(登録商標)オートクレーブ内で、式[I]の出発物質(50mmole)及びPCl5(1又は2当量)を混合した。オートクレーブを閉じ、210℃の温間金属ブロックで加熱した。16時間後、オートクレーブを25℃まで冷却し、開けた。得られる溶液をGCによって分析し、結果は表5による。
【0049】
【表5】
【0050】
実施例10
2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンへのニコチン酸の変換
冷却−加熱サーキュレータに接続された0.5Lのジャケットオートクレーブに、ニコチン酸(50g、0.4mole)及び三塩化リン(223g、1.6mole)を加えた。反応混合物の温度を120℃に調節し、塩素ガス(115g、1.6mole)を耐圧瓶からヘッドスペースへ添加した。塩素の添加中、ジャケット上で冷却循環しながら、温度を120℃から140℃の間に保った。塩素ガスの添加後、オートクレーブ内の圧力は約3バールである。温度は180℃まで上昇し(210℃まで上昇することが好ましいであろう、しかし、これは現在の手順では不可能であった)、そして、144時間、180℃で維持する(210℃では反応を16時間以内に終えるであろう)。反応中、HCl(g)をスクラバーを通じて定期的に除去し、12から16バールの間の圧力を保った。オートクレーブをその後25℃まで冷却し、苛性アルカリ溶液スクラバーに通気した。得られる溶液は還流するまで加熱し、蒸留によって三塩化リンを回収した。オートクレーブを再度閉じて、塩素ガス(50g、0.5mole)を室温で添加した。得られる混合物を130℃に加熱し、コンデンサをこえて苛性アルカリ溶液スクラバーでHCl(g)を除去することによって、圧力を15バール未満に維持した。圧力が安定する時に(一般的に2〜4時間後)、反応は完了したと判断し、オートクレーブを冷却した。分析が他の状態を示す場合、最後の塩素化手段が繰り返され得る。反応混合物をその後丸底フラスコに移し、塩化ホスホリルを蒸留によって除去する。反応器内に任意の固体のPCl5がある場合、それは数滴の水で塩化ホスホリルに変換でき、主な反応混合物と共に移すことができる。塩化ホスホリルの蒸留に際して、氷水へ追加、10分間撹拌し、25℃で1時間、分離のために放置することによって、粗生成物を得た。下相の有機相を酸性の水層から分離し、生成物をその後蒸留して、96%の純度で80gの2,3−ジクロロ−5−(トリクロロメチル)ピリジンを得る(収率75%)。
【0051】
実施例11
フルアジナムへの2,3−ジクロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジンの変換
2,3−ジクロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン(26,75g、0.125mole)及び水(25ml)をオートクレーブに加えた。オートクレーブを閉じ、液体アンモニア(45g、2,85mole)を耐圧瓶から添加した。オートクレーブを、22から18バールの間の圧力で9時間、80℃に加熱した。反応を室温まで冷却し、中間体、2−アミノ−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジンを、濾過、水での洗浄及び乾燥することによって得た(22g、90%)。中間体をアセトニトリル(230ml)に溶解した。溶液を5℃まで冷却し、KOH(s.、12g、0.22mole)を添加した。アセトニトリル(230ml)中の2,4ジクロロ−3,5−ジニトロ−5−(トリフルオロメチル)ベンゼン(25g、0.08mole)の溶液を15分にわたって連続冷却で添加した。温度は4時間で25℃まで上昇し、その後、温度は上昇し、2時間、40℃に維持した。混合物を1500mlの水に添加し、4N HCl(aq)でpH約4に中和し、酢酸イソプロピル(2x 750ml)で抽出した。有機相を蒸発乾固し、粗フルアジナム(43g、収率70%、純度60%)を得た。フルアジナムは再結晶によってさらに精製することができる。
【0052】
実施例12(比較)
開放反応器を用いたニコチン酸の変換
塩化チオニル(250ml、3.4mole)を丸底フラスコ中で機械的撹拌機によりニコチン酸(123g、1mole)と混合した。懸濁液を15分間、55℃に加熱し、過剰の塩化チオニルの蒸留に続いた。三塩化リン(275g、2mole)、次いで塩素ガス(140g、2mole)を、得られる反応混合物に添加した。混合物を、オイルバス内で、150℃まで徐々に加熱した。加熱は約5時間を要し、同時に塩化ホスホリルを留去した。150℃で1時間後、反応混合物をGCで分析した。結果は以下の表6に示される。
【0053】
【表6】