特許第6337124号(P6337124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337124
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】インダゾール及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20180528BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20180528BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20180528BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20180528BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180528BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20180528BHJP
   C07D 417/12 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C07D401/12CSP
   C07D403/14
   C07D403/12
   A61P25/04
   A61P29/00
   A61P43/00 111
   A61K31/4439
   C07D417/12
   A61K31/433
【請求項の数】26
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2016-542142(P2016-542142)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公表番号】特表2017-500351(P2017-500351A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】US2014052243
(87)【国際公開番号】WO2015099841
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年6月30日
(31)【優先権主張番号】61/920,037
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508150854
【氏名又は名称】パーデュー、ファーマ、リミテッド、パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジアンミン
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/085650(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/030665(WO,A1)
【文献】 特表2006−506458(JP,A)
【文献】 特表2013−530180(JP,A)
【文献】 特表2007−533635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/00
A61K 31/00
C07D 403/00
C07D 417/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、
、Z、及びZはそれぞれ独立にN及びCR11からなる群より選択され、
但し、Z、Z、及びZの一つがNであり、
Gはシアノ、ジヒドロキシアルキル及び−(CHR1a−C(=O)Eからなる群より選択され、
mは0、1、若しくは2であり、
各R1aは水素であり、
Eはヒドロキシ、アルコキシ、及び−NRからなる群より選択され、
は水素及びアルキルからなる群より選択され、
は水素及びアルキルからなる群より選択され、
は水素及びアルキルからなる群より選択され、
は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、及びハロアルキルからなる群より選択され、
は水素、ハロ、アルキル、ヒドロキシアルキル、及びアルケニルからなる群より選択され、
は水素であり、
11は水素である。)
を有する化合物あるいは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項2】
式I’
【化2】
(式中、
、Z、及びZはそれぞれ独立にN及びCR11からなる群より選択され、
但し、Z、Z、及びZの少なくとも二つがNであり、
Gはシアノ、ジヒドロキシアルキル及び−(CHR1a−C(=O)Eからなる群より選択され、
mは0、1、若しくは2であり、
各R1aは水素であり、
Eはヒドロキシ、アルコキシ、及び−NRからなる群より選択され、
は水素及びアルキルからなる群より選択され、
は水素及びアルキルからなる群より選択され、
は水素及びアルキルからなる群より選択され、
は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、及びハロアルキルからなる群より選択され、
5aは水素、ハロ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、及び−X−Rからなる群より選択され、
は水素であり、
Xは−NR8a−であり、
は水素、アルキル、
【化3】
からなる群より選択され、
8aは水素であり、
は水素及びアルキルからなる群より選択され、
10a及びR10bは独立に水素及びアルキルからなる群より選択され、
11は水素である。)
を有する化合物あるいは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項3】
Gがジヒドロキシアルキルである、請求項1または2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項4】
Gが−(CHR1a−C(=O)Eであり、
mが0である
請求項1または2に記載の化合物、あるいは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項5】
式II
【化4】
(式中、R、R、R、R、Z及Gは請求項1で定義されたものと同じである。)
を有する、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項6】
式II’
【化5】
(式中、R、R、R5a、R、Z及Gは請求項2で定義されたものと同じである。)
を有する、請求項2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項7】
がN及びCHからなる群より選択され、
が水素、ハロゲン、アルキル、及びハロアルキルからなる群より選択される、
請求項5または6に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項8】
がCHである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項9】
Eが−NRであり、R及びRが水素である、請求項1、2及び4〜8のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項10】
5aが水素、ヒドロキシアルキル、及び−X−Rからなる群より選択される、請求項2または6に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項11】
5a
【化6】
からなる群より選択されるジヒドロキシアルキルである、請求項10に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項12】
5aが−X−Rである、請求項10に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項13】

【化7】
からなる群より選択される、請求項12に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項14】
が(C〜C)アルキルである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項15】
が水素、フルオロ、及びクロロからなる群より選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項16】
式IA
【化8】
(式中、
Wは−S(O)N(R)−であり、
Arは任意選択で置換された5員ヘテロアリールであり、
は水素若しくはアルキルであり、
nは0、1、2、3、若しくは4であり、
は水素及びアルキルからなる群より選択され、
は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、及びハロアルキルからなる群より選択され、
は水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、及びシアノからなる群から選択され、
前記ヘテロアリール基は、チエニル、フリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、及びイソキサゾリルからなる群より選択され、かつ、
前記ヘテロアリール基は、無置換であるか、またはハロ、シアノ、ハロアルキル、アルキル、及び(シアノ)アルキルより独立に選択される、1〜4の置換基により置換されているかのいずれかである。)
を有する化合物あるいは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項17】
Arが無置換の5員ヘテロアリールである、請求項16に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項18】
がHである、請求項16または17に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項19】
が水素またはハロゲンである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項20】
nが0、1、または2である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項21】
(S)−2−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−((2−オキソピロリジン−3−イル)アミノ)ピリミジン−4−カルボキサミド、
2−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピリミジン−4−カルボキサミド、
6−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリンアミド、
(S)−6−((1−アミノ−1−オキソプロパン−2−イル)アミノ)−2−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピリミジン−4−カルボキサミド、
(S)−2−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−((2−オキソピロリジン−3−イル)アミノ)ピリミジン−4−カルボキサミド、
(S)−2−(4−((1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−((2−オキソピロリジン−3−イル)アミノ)ピリミジン−4−カルボキサミド、
(S)−2−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−(1,2−ジヒドロキシエチル)ピリミジン−4−カルボキサミド、
(S)−6−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)ピコリンアミド、
(S)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)−6−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリンアミド、
(R)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)−6−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリンアミド
5−クロロ−4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)−2−フルオロ−N−(1,3,4−チアジアゾール−2−イル)ベンゼンスルホンアミド、及び
4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)−N−(1,3,4−チアジアゾール−2−イル)ベンゼンスルホンアミド
からなる群より選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項23】
哺乳動物における疾病若しくは障害を治療する、または哺乳動物における局所麻酔を提供するための薬剤の製造における、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物の使用であって、前記疾病若しくは障害が疼痛である、前記使用。
【請求項24】
前記疼痛が、慢性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、急性疼痛、及び術後疼痛からなる群より選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
イン・ビトロでの、細胞におけるナトリウムチャネルの調節方法であって、前記細胞に、少なくとも1種の、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物を接触させることを含み、Nav1.7ナトリウムチャネルが調節される、前記方法。
【請求項26】
H、11C、または14Cで放射標識された、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医化学の分野に属する。本発明は新規インダゾール及び電位開口型ナトリウム(Na)チャネルの遮断薬としてのこれらの化合物の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
電位開口型ナトリウムチャネル(Voltage−gated sodium channels)(VGSC)は全ての興奮性細胞に見られる。中枢神経系(CNS)及び末梢神経系(PNS)の神経細胞において、主としてナトリウムチャネルが、活動電位の速やかな立ち上がりの生起を担っている。このように、ナトリウムチャネルは、神経系における電気的信号の開始及び伝播にとって欠くことのできないものである。従って、ニューロンの正常な作用にとって、ナトリウムチャネルの適正な作用が必要である。その結果として、異常なナトリウムチャネルの作用が、てんかん(Yogeeswariら、Curr.Drug Target 5:589〜602(2004))、不整脈(Noble、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:5755〜5756(2002))、ミオトニア(Cannon、Kidney Int. 57:772〜779(2000))、及び疼痛(Woodら、J.Neurobiol.、61:55〜71(2004))を始めとする様々な医的障害の根底にあると考えられる(遺伝性イオンチャネル障害の総説としては、Hubnerら、Hum.Mol.Genet. 11:2435〜2445(2002)を参照のこと。)。
【0003】
VGSCは、チャネルの核を形成し、電位依存性開口及びイオン透過を担う1のα−サブユニット、並びにいくつかの補助的なβ−サブユニットより構成される(例えば、Chahineら、CNS & Neurological Disorders−Drug Targets 7:144〜158(2008)並びにKyle及びIlyin、J.Med.Chem. 50:2583〜2588(2007)を参照のこと。)。α−サブユニットは4の相同のドメインより構成される巨大タンパク質である。各ドメインは6のα−ヘリックスの膜貫通セグメントを含有する。現在、電位開口型ナトリウムチャネルのα−サブユニットの群は、既知の9種から構成される。この群に対する名称としては、SCNx、SCNAx、及びNax.xが挙げられる(下記の表1を参照のこと。)。VGSC群は系統学的に2つの下位群Na1.x(SCN6Aを除く全て)及びNa2.x(SCN6A)に分割されている。Na1.x下位群は機能上、テトロドトキシンによる遮断に対して感受性のあるもの(TTX感受性またはTTX−s)及びテトロドトキシンによる遮断に対して抵抗性であるもの(TTX抵抗性またはTTX−r)の2群に細分化することができる。
【0004】
TTX抵抗性ナトリウムチャネルの下位群は3種で構成される。SCN5Aの遺伝子産物(Na1.5、H1)は殆ど専ら心組織において発現し、様々な心不整脈及びその他の伝導障害の根底にあることが示されている(Liuら、Am.J.Pharmacogenomics 3:173〜179(2003))。その結果、Na1.5の遮断薬がかかる障害の治療において臨床上有用となっている(Srivatsaら、Curr.Cardiol.Rep. 4:401〜410(2002))。残るTTX抵抗性ナトリウムチャネル、Na1.8(SCN10A、PN3、SNS)及びNa1.9(SCN11A、NaN、SNS2)は末梢神経系において発現し、一次侵害受容ニューロンにおける優先的発現を示す。これらのチャネルのヒトにおける遺伝変異体は、いずれの遺伝性の臨床上の障害にも関係してはいない。但し、ヒト多発性硬化症(MS)患者のCNSにおいて、及びMSの齧歯動物モデルにおいても、Na1.8の異常発現が見出されている(Blackら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:11598〜115602(2000))。侵害受容への関与の証左は、連合的なもの(侵害受容ニューロンにおける優先的発現)及び直接的なもの(遺伝子ノックアウト)の両方がある。Na1.8欠損マウスは、鋭い侵害刺激に応答して典型的な侵害受容挙動を示したが、関連痛及び痛覚過敏が有意に欠失した(Lairdら、J.Neurosci. 22:8352〜8356(2002))。
【表1】
【0005】
Na1.7(PN1、SCN9A)VGSCはテトロドトキシンによる遮断に対して感受性であり、末梢の交感神経ニューロン及び感覚ニューロンにおいて優先的に発現する。SCN9A遺伝子は、ヒト、ラット、及びウサギを始めとする多数の種からクローン化されており、ヒトとラットの遺伝子間における約90%のアミノ酸の同一性を示している(Toledo−Aralら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1527〜1532(1997))。
【0006】
ますます増加する多数の証左が、Na1.7は、急性疼痛、炎症性疼痛及び/または神経因性疼痛を始めとする様々な疼痛の状態において、重要な役割を果たすことを示唆している。マウスの侵害受容ニューロンにおいてSCN9A遺伝子を除去すると、機械疼痛及び熱疼痛の閾値が上昇し、炎症性疼痛反応が減少または消滅する(Nassarら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:12706〜12711(2004))。
【0007】
ナトリウムチャネル遮断薬が、様々な病状の治療において有効であることが報告されており、例えば、リドカイン及びブピバカインのような局所麻酔薬として、また、例えばプロパフェノン及びアミオダロンのように心不整脈の治療において、例えば、ラモトリジン、フェニトイン及びカルバマゼピンのようにてんかんの治療において、特に使用されている(Clareら、Drug Discovery Today 5:506〜510(2000)、Laiら、Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol. 44:371〜397(2004)、Angerら、J.Med.Chem. 44:115〜137(2001)、及びCatterall、Trends Pharmacol.Sci. 8:57〜65(1987)を参照のこと。)。これらの薬剤のそれぞれは、ナトリウムイオンの急激な流入を妨げることによって作用すると考えられている。
【0008】
BW619C89及びリファリジンなどのその他のナトリウムチャネル遮断薬は、全体的及び限局的虚血の動物モデルにおいて、神経保護作用があることが示されている(Grahamら、J.Pharmacol.Exp.Ther. 269:854〜859(1994)、Brownら、British J.Pharmacol. 115:1425〜1432(1995))。
【0009】
ナトリウムチャネル遮断薬は、急性疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、及び一般的には発作性激痛症と関係する直腸、眼球、及び顎下の疼痛などのその他の種別の疼痛を始めとする疼痛の治療(例えば、Kyle及びIlyin、J.Med.Chem. 50:2583〜2588(2007)、Woodら、J.Neurobiol. 61:55〜71(2004)、Bakerら、TRENDS in Pharmacological Sciences 22:27〜31(2001)、及びLaiら、Current Opinion in Neurobiology 13:291〜297(2003)を参照のこと。);てんかん、痙攣、熱性痙攣を伴うてんかん、良性家族性新生児痙攣を伴うてんかんなどの神経障害、例えば、原発性先端紅痛症及び発作性激痛症などの遺伝性疼痛性障害、家族性片麻痺性偏頭痛、及び運動障害の治療;自閉症、小脳萎縮症、運動失調、及び精神遅滞などのその他の精神疾患の治療(例えば、Chahineら、CNS & Neurological Disorders−Drug Targets 7:144〜158(2008)並びにMeisler及びKearney、J.Clin.Invest. 115:2010〜2017(2005)を参照のこと。)に有用であり得ることが報告されている。上述の臨床上の使用に加えて、カルバマゼピン、リドカイン及びフェニトインは、三叉神経痛、糖尿病性神経障害及び他の形態の神経損傷に由来する等の神経因性疼痛を治療するために用いられる(Taylor及びMeldrum、Trends Pharmacol.Sci. 16:309〜316(1995))。更に、慢性疼痛と耳鳴りとの間の多くの類似性に基づいて(Moller、Am.J.Otol. 18:577〜585(1997)、Tonndorf、Hear.Res. 28:271〜275(1987))、耳鳴りは慢性疼痛の知覚の形態の一つと見なすべきとの提案がなされている(Simpsonら、Tip. 20:12〜18(1999))。実際に、リドカイン及びカルバマゼピンは、耳鳴りの治療に有効であることが示されている(Majumdar,B.ら、Clin.Otolaryngol. 8:175〜180(1983)、Donaldson、Laryngol.Otol. 95:947〜951(1981))。
【0010】
急性または慢性の疼痛性障害のいずれかをもつ多くの患者は、疼痛に対する現在の療法に対してあまり良好な応答を示しておらず、鎮痛剤に対する抵抗性または非感受性を生じることが一般的である。加えて、現在利用可能な治療の多くが、望ましからざる副作用を有する。
【0011】
現在利用可能な薬剤の限定的な効能及び/または甘受できない副作用に鑑みて、より有効且つより安全な、ナトリウムチャネル遮断により作用する鎮痛剤に対する逼迫したニーズがある。
【発明の概要】
【0012】
一態様において、本開示は、後に示す式I、II、及びIAで表されるインダゾール、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物を提供し、本明細書においてこれらを集合的に「本開示の化合物」という。
【0013】
別な態様において、本開示は、本開示の化合物の、1種または複数種のナトリウム(Na)チャネルの遮断薬としての使用を提供する。
【0014】
別な態様において、本開示は、1種または複数種のナトリウム(Na)チャネルの遮断薬を製造するために用いることができる合成中間体としての化合物を提供する。
【0015】
別な態様において、本開示は、哺乳動物における、1種または複数種のナトリウムチャネルの遮断に対して応答性である障害の治療方法であって、上記哺乳動物に対して、有効量の本開示の化合物を投与することを含む上記治療方法を提供する。
【0016】
別な態様において、本開示は、疼痛(例えば、急性疼痛;神経因性疼痛、術後疼痛、及び炎症性疼痛を始めとする、但し、それらに限定されない慢性疼痛;または術後疼痛)の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に対して、有効量の本開示の化合物を投与することを含む上記治療方法を提供する。詳細には、本開示は、疼痛の先制的または対症的治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に対して、有効量の本開示の化合物を投与することによる上記方法を提供する。
【0017】
別な態様において、本開示は、卒中、頭部外傷に起因する神経損傷、てんかん、痙攣、熱性痙攣を伴う全身性てんかん、重症乳児ミオクロニーてんかん、全体的及び限局的虚血に続くニューロン欠損、偏頭痛、家族性原発性先端紅痛症、発作性激痛症、小脳萎縮、運動失調、ジストニア、振戦、精神遅滞、自閉症、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、またはパーキンソン病)、躁うつ病、耳鳴り、ミオトニア、運動障害、若しくは心不整脈の治療方法、または局所麻酔の提供方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に対して、有効量の本開示の化合物を投与することを含む上記方法を提供する。
【0018】
別な態様において、本開示は、本開示の化合物及び1種または複数種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
別な態様において、本開示は、ナトリウムイオンチャネルの遮断に対して応答性である障害の治療のための医薬組成物であって、1種または複数種の薬学的に許容される担体との混合物中に有効量の本開示の化合物を含む上記医薬組成物を提供する。
【0020】
別な態様において、本開示は、哺乳動物におけるナトリウムチャネルの調節方法であって、有効量の少なくとも1種の本開示の化合物を上記哺乳動物に対して投与することを含む上記方法を提供する。
【0021】
別な態様において、本開示は、哺乳動物における疼痛、例えば、急性疼痛;神経因性疼痛、術後疼痛、及び炎症性疼痛を始めとする、但しそれらに限定されない慢性疼痛;または術後疼痛、の治療に用いるための本開示の化合物を提供する。
【0022】
別な態様において、本開示は、哺乳動物において、卒中、頭部外傷に起因する神経損傷、てんかん、痙攣、熱性痙攣を伴う全身性てんかん、重症乳児ミオクロニーてんかん、全体的及び限局的虚血に続くニューロン欠損、偏頭痛、家族性原発性先端紅痛症、発作性激痛症、小脳萎縮、運動失調、ジストニア、振戦、精神遅滞、自閉症、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、またはパーキンソン病)、躁うつ病、耳鳴り、ミオトニア、運動障害、若しくは心不整脈の治療、または局所麻酔の提供に用いるための本開示の化合物を提供する。
【0023】
別な態様において、本開示は、放射標識された本開示の化合物、及びかかる化合物の、然るべく選択された任意の競合結合アッセイ及びスクリーニング技法における放射性リガンドとしての使用を提供する。従って本開示は、放射標識された本開示の化合物を用いた、候補化合物の、そのナトリウムチャネルまたはナトリウムチャネルのサブユニットに対する結合能力に関するスクリーニング方法を更に提供する。特定の実施形態において、上記化合物はH、11C、または14Cで放射標識される。この競合結合アッセイは、然るべく選択された任意の技法を用いて実施することができる。一実施形態において、上記スクリーニング方法は、i)可溶性または膜結合性のナトリウムチャネル、サブユニットまたはフラグメントを含むイン・ビトロ試料に、固定した濃度の上記放射標識された化合物を、上記放射標識された化合物が、それぞれ上記チャネル、サブユニットまたはフラグメントに対して結合し、抱合体を形成することが可能になる条件下で導入すること、ii)候補化合物によって上記抱合体を滴定すること、及びiii)候補化合物の、放射標識された化合物を上記チャネル、サブユニットまたはフラグメントから排除する能力を測定することを含む。
【0024】
別な態様において、本開示は、哺乳動物において疼痛を治療するための薬剤の製造に用いるための本開示の化合物を提供する。一実施形態において、本開示は、急性疼痛、慢性疼痛、または術後疼痛などの疼痛の、先制的または対症的治療のための薬剤の製造における、本開示の化合物の使用を提供する。
【0025】
別な態様において、本開示は、哺乳動物において、卒中、頭部外傷に起因する神経損傷、てんかん、痙攣、熱性痙攣を伴う全身性てんかん、重症乳児ミオクロニーてんかん、全体的及び限局的虚血に続くニューロン欠損、偏頭痛、家族性原発性先端紅痛症、発作性激痛症、小脳萎縮、運動失調、ジストニア、振戦、精神遅滞、自閉症、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、またはパーキンソン病)、躁うつ病、耳鳴り、ミオトニア、運動障害、若しくは心不整脈の治療、または局所麻酔の提供のための薬剤の製造に用いるための、本開示の化合物を提供する。
【0026】
本開示の更なる実施形態及び利点の一部は、以下の説明に示され、以下の説明の結果として表れることとなり、または本開示の実施により習得することができる。本開示の実施形態及び利点は、特に添付の特許請求の範囲に示される要素及び組み合わせによって実現し、達成されることとなる。
【0027】
上述の発明の概要及び後述の詳細な説明の両方共に、代表的且つ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の一態様は、本開示の化合物のナトリウム(Na)チャネルの遮断薬としての使用に基づく。この特性に鑑みて、本開示の化合物は、1種または複数種のナトリウムイオンチャネルの遮断に対して応答性の障害の治療に有用である。
【0029】
一態様において、本開示の化合物は、式I
【化1】
によって表される化合物並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物であって、
式中、
、Z、及びZはそれぞれ独立にN及びCR11からなる群より選択され、
但し、Z、Z、及びZの少なくとも1はNであり、
Gはシアノ、ジヒドロキシアルキル及び−(CHR1a−C(=O)Eからなる群より選択され、
mは0、1、または2であり、
各R1aは独立に水素及びヒドロキシからなる群より選択され、
Eはヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、及び−NRからなる群より選択され、
は水素、アルキル、アラルキル、(ヘテロシクロ)アルキル、(ヘテロアリール)アルキル、(アミノ)アルキル、(アルキルアミノ)アルキル、(ジアルキルアミノ)アルキル、(カルボキサミド)アルキル、(シアノ)アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、及びヘテロアルキルからなる群より選択され、
は水素及びアルキルからなる群より選択されるか、または
及びRが、R及びRが結合している窒素原子と共に3〜8員の、任意選択で置換されたヘテロシクロを形成し、
は水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、(アルキルアミノ)アルキル、及び(カルボキサミド)アルキルからなる群より選択され、
は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシ、(アミノ)アルキル、(ヘテロシクロ)アルキル、(ヘテロシクロ)カルボニル、カルボキサミド、スルホンアミド、ヒドロキシアルキル、カルボキシ、及び任意選択で置換されたヘテロアリールからなる群より選択され、
は水素、ハロ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、シアノ、ヘテロシクロ、及び−X−Rからなる群より選択され、
は水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、及びシアノからなる群から選択され、
Xは−O−、−NR8a−、及び−(CH−Y−からなる群より選択され、
Yは−O−及び−NR8b−からなる群より選択され、
tは1または2であり、
は水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、
【化2】
からなる群より選択され、
8aは水素及びアルキルからなる群より選択され、
8bは水素及びアルキルからなる群より選択されるか、または
8b及びRが、R8b及びRが結合している窒素原子と共に3〜8員の、任意選択で置換されたヘテロシクロを形成し、
は水素、アルキル、及びヒドロキシアルキルからなる群より選択され、
10a及びR10bは独立に水素及びアルキルからなる群より選択されるか、または
10a及びR10bが、R10a及びR10bが結合している窒素原子と共に3〜8員の、任意選択で置換されたヘテロシクロを形成し、
11は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、及びアルコキシからなる群より選択される、
上記化合物並びに上記それらの塩及び溶媒和物である。
【0030】
一実施形態において、本開示の化合物は、Gがジヒドロキシアルキルである、式Iを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。一実施形態において、Gは、
【化3】
からなる群より選択されるジヒドロキシアルキルである。
【0031】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Gが−(CHR1a−C(=O)Eであり、mが1または2であり、各R1aがヒドロキシである、式Iを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。一実施形態において、Gは、
【化4】
からなる群より選択される−(CHR1a)−C(=O)Eである。
【0032】
別な実施形態において、Gは、
【化5】
からなる群より選択される−(CHR1a−C(=O)Eである。
【0033】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Gが−(CHR1a−C(=O)Eであり且つmが0、すなわち、Gが−C(=O)Eである、式Iを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0034】
別な実施形態において、本開示の化合物は、式II
【化6】
を有する化合物並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物であって、R、R、R、R、Z及びGが、式Iに関して上記に規定された通りである、上記化合物並びに上記それらの塩及び溶媒和物である。一実施形態において、ZがN及びCHからなる群より選択され、Rが水素及びアルキルからなる群より選択され、Rが水素、ハロゲン、アルキル、及びハロアルキルからなる群より選択される。一実施形態において、ZがN及びCHからなる群より選択され、Rが水素及びアルキルからなる群より選択され、Rが水素、ハロゲン、アルキル、及びハロアルキルからなる群より選択され、Gが−C(=O)Eである。
【0035】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Rが水素である、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0036】
別な実施形態において、本開示の化合物は、ZがNである、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0037】
別な実施形態において、本開示の化合物は、ZがCH、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物である、式IあるいはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0038】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Eが−NR1a1bであり、R1a及びR1bが水素である、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0039】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Rが水素、ヒドロキシアルキル、及び−X−Rからなる群より選択される、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0040】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Rが水素である、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0041】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Rがヒドロキシアルキルである、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。一実施形態において、Rはジヒドロキシアルキルである。一実施形態において、R
【化7】
からなる群より選択されるジヒドロキシアルキルである。
【0042】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Rが−X−Rである、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。一実施形態において、Xは−Oである。一実施形態において、Xは−NHである。一実施形態において、Xは−CHNH−である。一実施形態において、Xは−CHO−である。一実施形態において、Rは、
【化8】
からなる群より選択される。
【0043】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Rが(C〜C)アルキルである、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0044】
別な実施形態において、本開示の化合物は、Rが水素、フルオロ、及びクロロからなる群より選択される、式IまたはIIを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0045】
本発明の別な態様は、式IA
【化9】
によって表される化合物または薬学的に許容されるそれらの塩若しくは溶媒和物であって、
式中、
Wは結合、−S(O)N(R)−、−N(R)−、または−C(O)N(R)−であり、
Arは任意選択で置換された5員ヘテロアリールまたは
【化10】
であり、
は水素またはアルキルであり、
nは0、1、2、3、または4であり、
、Z、及びZはそれぞれ独立にN及びCR11からなる群より選択され、
但し、Z、Z、及びZの少なくとも1はNであり、
Gはシアノ、ジヒドロキシアルキル及び−(CHR1a−C(=O)Eからなる群より選択され、
mは0、1、または2であり、
各R1aは独立に水素及びヒドロキシからなる群より選択され、
Eはヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、及び−NRからなる群より選択され、
は水素、アルキル、アラルキル、(ヘテロシクロ)アルキル、(ヘテロアリール)アルキル、(アミノ)アルキル、(アルキルアミノ)アルキル、(ジアルキルアミノ)アルキル、(カルボキサミド)アルキル、(シアノ)アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、及びヘテロアルキルからなる群より選択され、
は水素及びアルキルからなる群より選択されるか、または
及びRが、R及びRが結合している窒素原子と共に3〜8員の、任意選択で置換されたヘテロシクロを形成し、
は水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、(アルキルアミノ)アルキル、及び(カルボキサミド)アルキルからなる群より選択され、
は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシ、(アミノ)アルキル、(ヘテロシクロ)アルキル、(ヘテロシクロ)カルボニル、カルボキサミド、スルホンアミド、ヒドロキシアルキル、カルボキシ、及び任意選択で置換されたヘテロアリールからなる群より選択され、
は水素、ハロ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、シアノ、ヘテロシクロ、及び−X−Rからなる群より選択され、
は水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、及びシアノからなる群から選択され、
Xは−O−、−NR8a−、及び−(CH−Y−からなる群より選択され、
Yは−O−及び−NR8b−からなる群より選択され、
tは1または2であり、
は水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、
【化11】
からなる群より選択され、
8aは水素及びアルキルからなる群より選択され、
8bは水素及びアルキルからなる群より選択されるか、または
8b及びRが、R8b及びRが結合している窒素原子と共に3〜8員の、任意選択で置換されたヘテロシクロを形成し、
は水素、アルキル、及びヒドロキシアルキルからなる群より選択され、
10a及びR10bは独立に水素及びアルキルからなる群より選択されるか、または
10a及びR10bが、R10a及びR10bが結合している窒素原子と共に3〜8員の、任意選択で置換されたヘテロシクロを形成し、
11は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、及びアルコキシからなる群より選択される、
上記化合物または上記それらの塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0046】
一実施形態において、本開示の化合物は、Wが−S(O)N(R)−である、式IAを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。Wが−S(O)N(R)−である場合には、ArはW基のS原子またはN原子のいずれかに結合することができることが当業者に理解される。特定の実施形態において、Arは、
【化12】
などを始めとする、任意選択で置換された5員ヘテロアリールである。一実施形態は、Arが無置換の5員ヘテロアリールであると規定する。一例として、Arは無置換の
【化13】
である。
【0047】
別な実施形態において、本開示の化合物は、RがHである、式IAを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0048】
更に別な実施形態において、本開示の化合物は、Rが水素またはハロゲン(例えば、F、Cl、及びBr)である、式IAを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。一実施形態において、nは0である。別な実施形態において、nは1である。別な実施形態は、nが2であると規定する。
【0049】
一実施形態は、Wが−S(O)N(R)−であり、Arが任意選択で置換された5員ヘテロアリールであり、RがHであり、nが0、1、または2であり、Rがそれぞれ独立に、水素またはハロゲンである、式IAの化合物並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物を提供する。
【0050】
別個の実施形態において、本開示の化合物は、Wが結合である、式IAを有する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。一実施形態は、Wが結合であり、nが1であり、Ar
【化14】
であると規定し、換言すると、この実施形態において、式IAの化合物は、上記に規定された式Iによって表される化合物である。式Iの更なる実施形態は上述されている。
【0051】
本開示の化合物は、表2に提示する化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物を含む。
【表2】

【0052】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルキル」とは、1〜12の炭素原子を含む(すなわち、C1〜12アルキル)、または指定された数の炭素原子を含む(すなわち、メチルなどのCアルキル、エチルなどのCアルキル、プロピル若しくはイソプロピルなどのCアルキル等)直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素をいう。一実施形態において、上記アルキル基は、直鎖のC1〜10アルキル基より選択される。別な実施形態において、上記アルキル基は、分岐鎖のC3〜10アルキル基より選択される。別な実施形態において、上記アルキル基は、直鎖のC1〜6アルキル基より選択される。別な実施形態において、上記アルキル基は、分岐鎖のC3〜6アルキル基より選択される。別な実施形態において、上記アルキル基は、直鎖のC1〜4アルキル基より選択される。別な実施形態において、上記アルキル基は、分岐鎖のC3〜4アルキル基より選択される。別な実施形態において、上記アルキル基は、直鎖または分岐鎖のC3〜4アルキル基より選択される。限定されない代表的なC1〜10アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、iso−ブチル、3−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、その他が挙げられる。限定されない代表的なC1〜4アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、iso−ブチルが挙げられる。
【0053】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「任意選択で置換されたアルキル」とは、上記に定義されたアルキルが、無置換であるか、またはニトロ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキルチオ、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、シクロアルキル、その他より独立に選択される、1、2、若しくは3の置換基により置換されているかのいずれかであることを意味する。一実施形態において、上記任意選択で置換されたアルキルは、2の置換基で置換されている。別な実施形態において、上記任意選択で置換されたアルキルは、1の置換基で置換されている。限定されない代表的な任意選択で置換されたアルキル基としては、−CHCHNO、−CHCHCOH、−CHCHSOCH、−CHCHCOPh、−CH11、その他が挙げられる。
【0054】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「シクロアルキル」とは、3〜12の炭素原子を有する(すなわち、C3〜12シクロアルキル)または指定された数の炭素原子を有する、1〜3の環を含む、飽和及び部分的に不飽和(1または2の二重結合を含む)の脂環式炭化水素をいう。一実施形態において、上記シクロアルキル基は2環を有する。一実施形態において、シクロアルキル基は1環を有する。別な実施形態において、シクロアルキル基はC3〜8シクロアルキル基より選択される。別な実施形態において、シクロアルキル基はC3〜6シクロアルキル基より選択される。限定されない代表的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、デカリン、アダマンチル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、その他が挙げられる。
【0055】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「任意選択で置換されたシクロアルキル」とは、上記に定義されたシクロアルキルが、無置換であるか、またはハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキルチオ、カルボキサミド、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロ、アルコキシアルキル、(アミノ)アルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、(アルキルアミノ)アルキル、(ジアルキルアミノ)アルキル、(シアノ)アルキル、(カルボキサミド)アルキル、メルカプトアルキル、(ヘテロシクロ)アルキル、及び(ヘテロアリール)アルキルより独立に選択される、1、2、若しくは3の置換基により置換されているかのいずれかであることを意味する。一実施形態において、上記任意選択で置換されたシクロアルキルは、2の置換基により置換されている。別な実施形態において、任意選択で置換されたシクロアルキルは、1の置換基で置換されている。限定されない代表的な任意選択で置換されたシクロアルキル基としては、
【化15】
が挙げられる。
【0056】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルケニル」とは、1、2または3の炭素−炭素二重結合を含む上記に定義されたアルキル基をいう。一実施形態において、上記アルケニル基は、C2〜6アルケニル基より選択される。別な実施形態において、アルケニル基は、C2〜4アルケニル基より選択される。限定されない代表的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、sec−ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルが挙げられる。
【0057】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として本明細書において用いられる用語「任意選択で置換されたアルケニル」とは、上記に定義されたアルケニルが、無置換であるか、またはハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキルチオ、カルボキサミド、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロの群より独立に選択される、1、2、若しくは3の置換基により置換されているかのいずれかであることを意味する。
【0058】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルキニル」とは、1〜3の炭素−炭素三重結合を含む上記に定義されたアルキル基をいう。一実施形態において、上記アルキニルは、1の炭素−炭素三重結合を有する。一実施形態において、アルキニル基は、C2〜6アルキニル基より選択される。別な実施形態において、アルキニル基は、C2〜4アルキニル基より選択される。限定されない代表的なアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−ブチニル基、ペンチニル基、及びヘキシニル基が挙げられる。
【0059】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として本明細書において用いられる用語「任意選択で置換されたアルキニル」とは、上記に定義されたアルキニルが、無置換であるか、またはハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキルチオ、カルボキサミド、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロの群より独立に選択される、1、2、若しくは3の置換基により置換されているかのいずれかであることを意味する。
【0060】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ハロアルキル」とは、1または複数のフッ素、塩素、臭素及び/またはヨウ素原子によって置換されたアルキル基をいう。一実施形態において、上記アルキル基は、1、2、または3のフッ素及び/または塩素原子によって置換されている。別な実施形態において、上記ハロアルキル基は、C1〜4ハロアルキル基より選択される。限定されない代表的なハロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、及びトリクロロメチル基が挙げられる。
【0061】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ヒドロキシアルキル」とは、1または複数(例えば、1、2、若しくは3)のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基をいう。一実施形態において、上記ヒドロキシアルキル基は、モノヒドロキシアルキル基であり、すなわち、1のヒドロキシ基によって置換されている。別な実施形態において、ヒドロキシアルキル基は、ジヒドロキシアルキル基であり、すなわち、2のヒドロキシ基によって置換されている。別な実施形態において、ヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシ(C〜C)アルキル基より選択される。限定されない代表的なヒドロキシアルキル基としては、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1,2−ジヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、及び1,3−ジヒドロキシプロパ−2−イルなどのヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基及びヒドロキシブチル基が挙げられる。
【0062】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルコキシ」とは、末端酸素原子に結合した、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアルケニルまたは任意選択で置換されたアルキニルをいう。一実施形態において、上記アルコキシ基は、C1〜4アルコキシ基より選択される。別な実施形態において、アルコキシ基は、末端酸素原子に結合したC1〜4アルキル、例えばメトキシ、エトキシ、及びtert−ブトキシより選択される。
【0063】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルキルチオ」とは、任意選択で置換されたアルキル基によって置換されたイオウ原子をいう。一実施形態において、上記アルキルチオ基は、C1〜4アルキルチオ基より選択される。限定されない代表的なアルキルチオ基としては、−SCH、及び−SCHCHが挙げられる。
【0064】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。限定されない代表的なアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、イソ−プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、tert−ブトキシメチル、イソブトキシメチル、sec−ブトキシメチル、及びペンチルオキシメチルが挙げられる。
【0065】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ハロアルコキシ」とは、末端酸素原子に結合したハロアルキルをいう。限定されない代表的なハロアルコキシ基としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、及び2,2,2−トリフルオロエトキシが挙げられる。
【0066】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アリール」とは、6〜14の炭素原子を有する(すなわち、C〜C14アリール)、単環または二環の芳香環系をいう。限定されない代表的なアリール基としては、フェニル基(「Ph」と略記される)、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基、及びフルオレニル基が挙げられる。一実施形態において、上記アリール基はフェニルまたはナフチルである。
【0067】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として本明細書において用いられる用語「任意選択で置換されたアリール」とは、上記に定義されたアリールが、無置換であるか、またはハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキルチオ、カルボキサミド、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロ、アルコキシアルキル、(アミノ)アルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、(アルキルアミノ)アルキル、(ジアルキルアミノ)アルキル、(シアノ)アルキル、(カルボキサミド)アルキル、メルカプトアルキル、(ヘテロシクロ)アルキル、(シクロアルキルアミノ)アルキル、(ハロ(C〜C)アルコキシ)アルキル、及び(ヘテロアリール)アルキルより独立に選択される、1〜5の置換基により置換されているかのいずれかであることを意味する。一実施形態において、上記任意選択で置換されたアリールは、任意選択で置換されたフェニルである。一実施形態において、任意選択で置換されたフェニルは4の置換基を有する。別な実施形態において、任意選択で置換されたフェニルは3の置換基を有する。別な実施形態において、任意選択で置換されたフェニルは2の置換基を有する。別な実施形態において、任意選択で置換されたフェニルは1の置換基を有する。限定されない代表的な置換アリール基としては、2−メチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、2−ブロモフェニル、3−メチルフェニル、3−メトキシフェニル、3−フルオロフェニル、3−クロロフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2,6−ジ−フルオロフェニル、2,6−ジ−クロロフェニル、2−メチル、3−メトキシフェニル、2−エチル、3−メトキシフェニル、3,4−ジ−メトキシフェニル、3,5−ジ−フルオロフェニル、3,5−ジ−メチルフェニル、3,5−ジメトキシ、4−メチルフェニル、2−フルオロ−3−クロロフェニル、及び3−クロロ−4−フルオロフェニルが挙げられる。用語任意選択で置換されたアリールは、縮合した、任意選択で置換されたシクロアルキル環及び任意選択で置換されたヘテロシクロ環を有する基を包含することを意図する。例としては
【化16】
が挙げられる。
【0068】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アリールオキシ」とは、末端酸素原子に結合した、任意選択で置換されたアリールをいう。限定されない代表的なアリールオキシ基はPhO−である。
【0069】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ヘテロアリールオキシ」とは、末端酸素原子に結合した、任意選択で置換されたヘテロアリールをいう。限定されない代表的なヘテロアリールオキシ基としては、
【化17】
が挙げられる。
【0070】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アラルキルオキシ」とは、末端酸素原子に結合したアラルキル基をいう。限定されない代表的なアラルキルオキシ基はPhCHO−である。
【0071】
本開示の目的に対して、用語「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」とは、5〜14の環原子を有する単環及び二環の芳香環系(すなわち、C〜C14ヘテロアリール)であって、上記環の1の少なくとも1の炭素原子が、酸素、窒素及びイオウからなる群より独立に選択されるヘテロ原子によって置換された、上記芳香環系をいう。一実施形態において、上記ヘテロアリールは、酸素、窒素及びイオウからなる群より独立に選択される1、2、3、または4のヘテロ原子を含有する。一実施形態において、ヘテロアリールは3のヘテロ原子を有する。別な実施形態において、ヘテロアリールは2のヘテロ原子を有する。別な実施形態において、ヘテロアリールは1のヘテロ原子を有する。限定されない代表的なヘテロアリール基としては、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアントレニル、フリル、ベンゾフリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾオキサゾニル、クロメニル、キサンテニル、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、シンノリニル、キナゾリニル、プテリジニル、4aH−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、フェノチアゾリル、イソキサゾリル、フラザニル、及びフェノキサジニルが挙げられる。一実施形態において、ヘテロアリールは、チエニル(例えば、チエン−2−イル及びチエン−3−イル)、フリル(例えば、2−フリル及び3−フリル)、ピロリル(例えば、1H−ピロール−2−イル及び1H−ピロール−3−イル)、イミダゾリル(例えば、2H−イミダゾール−2−イル及び2H−イミダゾール−4−イル)、ピラゾリル(例えば、1H−ピラゾール−3−イル、1H−ピラゾール−4−イル、及び1H−ピラゾール−5−イル)、ピリジル(例えば、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル及びピリジン−4−イル)、ピリミジニル(例えば、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−4−イル、及びピリミジン−5−イル)、チアゾリル(例えば、チアゾール−2−イル、チアゾール−4−イル、及びチアゾール−5−イル)、イソチアゾリル(例えば、イソチアゾール−3−イル、イソチアゾール−4−イル、及びイソチアゾール−5−イル)、オキサゾリル(例えば、オキサゾール−2−イル、オキサゾール−4−イル、及びオキサゾール−5−イル)及びイソオキサゾリル(例えば、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、及びイソオキサゾール−5−イル)より選択される。用語「ヘテロアリール」はまた、可能なN−オキシドを包含することを意図する。代表的なN−オキシドとしては、ピリジルN−オキシド等が挙げられる。
【0072】
一実施形態において、上記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールである。一実施形態において、ヘテロアリールは5員ヘテロアリール、すなわち、当該ヘテロアリールは、5の環原子を有する単環芳香環系であって、当該環の少なくとも1の炭素原子が窒素、酸素、及びイオウより独立に選択されるヘテロ原子によって置換された上記芳香環系である。限定されない代表的な5員ヘテロアリール基としては、チエニル、フリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、及びイソキサゾリルが挙げられる。別な実施形態において、ヘテロアリールは6員ヘテロアリール、すなわち、当該ヘテロアリールは、6の環原子を有する単環芳香環系であって、当該環の少なくとも1の炭素原子が窒素原子によって置換された上記芳香環系である。限定されない代表的な6員ヘテロアリール基としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、及びピリダジニルが挙げられる。
【0073】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「任意選択で置換されたヘテロアリール」とは、上記に定義されたヘテロアリールが、無置換であるか、またはハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキルチオ、カルボキサミド、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロ、アルコキシアルキル、(アミノ)アルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、(アルキルアミノ)アルキル、(ジアルキルアミノ)アルキル、(シアノ)アルキル、(カルボキサミド)アルキル、メルカプトアルキル、(ヘテロシクロ)アルキル、及び(ヘテロアリール)アルキルより独立に選択される、1〜4の置換基、例えば、1または2の置換基、により置換されているかのいずれかであることを意味する。一実施形態において、上記任意選択で置換されたヘテロアリールは1の置換基を有する。一実施形態において、任意選択で置換されたヘテロアリールは、任意選択で置換されたピリジル、すなわち、2−、3−、または4−ピリジルである。任意の置換可能な炭素または窒素原子を置換することができる。別な実施形態において、任意選択で置換されたヘテロアリールは任意選択で置換されたインドールである。
【0074】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ヘテロサイクル」または「ヘテロシクロ」とは、1の環の少なくとも1の炭素原子がヘテロ原子によって置換された、3〜14の環原子を有する(すなわち、3〜14員ヘテロシクロ)、1、2、または3環を含む、飽和及び部分的に不飽和の(例えば、1または2の二重結合を含む)環状基をいう。各ヘテロ原子は、酸素、スルホキシド及びスルホンを含むイオウ、及び/または酸化若しくは四級化されていてもよい窒素原子からなる群より独立に選択される。用語「ヘテロシクロ」は、環の−CH−が−C(=O)−によって置換された基、例えば、2−イミダゾリジノンなどの環状ウレイド基及びβ−ラクタム、γ−ラクタム、δ−ラクタム、ε−ラクタム、及びピペラジン−2−オンなどの環状アミド基を包含することを意図する。用語「ヘテロシクロ」はまた、例えばインドリニルなどの、任意選択で置換された縮合したアリール基を有する基を包含することも意図する。一実施形態において、上記ヘテロシクロ基は、1の環並びに1若しくは2の酸素及び/または窒素原子を含む、5または6員の環状基より選択される。ヘテロシクロは、当該分子の残余の部分に対して、任意選択で、炭素または窒素原子を介して結合していてもよい。限定されない代表的なヘテロシクロ基としては、2−オキソピロリジン−3−イル、ピペラジン−2−オン、ピペラジン−2,6−ジオン、2−イミダゾリジノン、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、及びインドリニルが挙げられる。
【0075】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として本明細書において用いられる用語「任意選択で置換されたヘテロシクロ」とは、上記に定義されたヘテロシクロが、無置換であるか、またはハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキルチオ、カルボキサミド、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロ、アルコキシアルキル、(アミノ)アルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、(アルキルアミノ)アルキル、(ジアルキルアミノ)アルキル、(シアノ)アルキル、(カルボキサミド)アルキル、メルカプトアルキル、(ヘテロシクロ)アルキル、(ヘテロアリール)アルキル、その他より独立に選択される、1〜4の置換基により置換されているかのいずれかであることを意味する。置換は、任意の置換可能な炭素または窒素原子上で生じてよく、スピロ環を形成してもよい。限定されない代表的な任意選択で置換されたヘテロシクロ基としては、
【化18】
が挙げられる。
【0076】
一実施形態において、上記任意選択で置換されたヘテロシクロは、5または6員の任意選択で置換されたヘテロシクロである。限定されない代表的な、5または6員の任意選択で置換されたヘテロシクロ基としては、
【化19】
が挙げられる。
【0077】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アミノ」とは−NHをいう。
【0078】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルキルアミノ」とは、−NHR15(但し、R15はアルキルである。)をいう。
【0079】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ジアルキルアミノ」とは、−NR16a16b(但し、R16a及びR16bはそれぞれ独立にアルキルであるか、またはR16a及びR16bが共に3〜8員の、任意選択で置換されたヘテロシクロを形成する。)をいう。
【0080】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ヒドロキシアルキルアミノ」とは、−NHR17(但し、R17はヒドロキシアルキルである。)をいう。
【0081】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「シクロアルキルアミノ」とは、−NR19a19b(但し、R19aは任意選択で置換されたシクロアルキルであり、R19bは水素またはアルキルである。)をいう。
【0082】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(アミノ)アルキル」とは、アミノ基によって置換されたアルキル基をいう。限定されない代表的なアミノアルキル基としては、−CHCHNH、−CHCHCHNH、−CHCHCHCHNHその他が挙げられる。
【0083】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(アルキルアミノ)アルキル」とは、アルキルアミノ基によって置換されたアルキル基をいう。限定されない代表的な(アルキルアミノ)アルキル基は−CHCHN(H)CHである。
【0084】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(ジアルキルアミノ)アルキル」とは、ジアルキルアミノ基によって置換されたアルキル基をいう。限定されない代表的な(ジアルキルアミノ)アルキル基は−CHCHN(CHである。
【0085】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(シクロアルキルアミノ)アルキル」とは、シクロアルキルアミノ基によって置換されたアルキル基をいう。限定されない代表的な(シクロアルキルアミノ)アルキル基としては、−CHN(H)シクロプロピル、−CHN(H)シクロブチル、及び−CHN(H)シクロヘキシルが挙げられる。
【0086】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(ハロ(C〜C)アルコキシ)アルキル」とは、ハロ(C〜C)アルコキシ基によって置換されたアルキル基をいう。限定されない代表的な(ハロ(C〜C)アルコキシ)アルキル基としては、−CHOCHCF及び−CHOCFが挙げられる。
【0087】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(シアノ)アルキル」とは、1または複数のシアノ、例えば−CN、基によって置換されたアルキル基をいう。限定されない代表的な(シアノ)アルキル基としては、−CHCHCN、−CHCHCHCN、及び−CHCHCHCHCNが挙げられる。
【0088】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「カルボキサミド」とは、式−C(=O)NR24a24b(但し、R24a及びR24bはそれぞれ独立に、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、若しくは任意選択で置換されたヘテロアリールであるか、またはR24a及びR24bが、R24a及びR24bが結合している窒素と共に、3〜8員の任意選択で置換されたヘテロシクロ基を形成する。)の基をいう。一実施形態において、R24a及びR24bはそれぞれ独立に、水素または任意選択で置換されたアルキルである。限定されない代表的なカルボキサミド基としては、−CONH、−CON(H)CH、−CON(CH、及び−CON(H)Phが挙げられる。
【0089】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「スルホンアミド」とは、式−SONR23a23b(但し、R23a及びR23bはそれぞれ独立に、水素、任意選択で置換されたアルキル、若しくは任意選択で置換されたアリールであるか、またはR23a及びR23bが、R23a及びR23bが結合している窒素と共に、3〜8員のヘテロシクロ基を形成する。)の基をいう。限定されない代表的なスルホンアミド基としては、−SONH、−SON(H)CH、及び−SON(H)Phが挙げられる。
【0090】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルキルカルボニル」とは、アルキル基によって置換されたカルボニル基、すなわち、−C(=O)−をいう。限定されない代表的なアルキルカルボニル基は−COCHである。
【0091】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アリールカルボニル」とは、任意選択で置換されたアリール基によって置換されたカルボニル基、すなわち、−C(=O)−をいう。限定されない代表的なアリールカルボニル基は−COPhである。
【0092】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アルキルスルホニル」とは、任意の、上述の任意選択で置換されたアルキル基によって置換されたスルホニル基、すなわち、−SO−をいう。限定されない代表的なアルキルスルホニル基は−SOCHである。
【0093】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アリールスルホニル」とは、任意の、上述の任意選択で置換されたアリール基によって置換されたスルホニル基、すなわち、−SO−をいう。限定されない代表的なアリールスルホニル基は−SOPhである。
【0094】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「メルカプトアルキル」とは、−SH基によって置換された、任意の上述のアルキル基をいう。
【0095】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「カルボキシ」とは、式−COOHの基をいう。
【0096】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「カルボキシアルキル」とは、−COOHによって置換された、任意の上述のアルキル基をいう。限定されない代表的なカルボキシアルキル基は−CHCOHである。
【0097】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「アラルキル」または「アリールアルキル」とは、1、2、または3の任意選択で置換されたアリール基によって置換されたアルキル基をいう。一実施形態において、上記アラルキル基は、1の、任意選択で置換されたアリール基によって置換されたC1〜4アルキルである。限定されない代表的なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、−CHPh、−CH(4−F−Ph)、及び−CH(4−F−Ph)が挙げられる。
【0098】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ウレイド」とは、式−NR22a−C(=O)−NR22b22c(但し、R22aは水素、アルキル、若しくは任意選択で置換されたアリールであり、R22b及びR22cはそれぞれ独立に、水素、アルキル、若しくは任意選択で置換されたアリールであるか、またはR22b及びR22cが、R22b及びR22cが結合している窒素と共に、4〜8員のヘテロシクロ基を形成する。)の基をいう。限定されない代表的なウレイド基としては、−NH−C(=O)−NH及び−NH−C(=O)−NHCHが挙げられる。
【0099】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「グアニジノ」とは、式−NR25a−C(=NR26)−NR25b25c(但し、R25a、R25b、R25cはそれぞれ独立に、水素、アルキル、または任意選択で置換されたアリールであり、R26は水素、アルキル、シアノ、アルキルスルホニル、アルキルカルボニル、カルボキサミド、またはスルホンアミドである。)の基をいう。限定されない代表的なグアニジノ基としては、−NH−C(=NH)−NH、−NH−C(=NCN)−NH、及び−NH−C(=NH)−NHCHその他が挙げられる。
【0100】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(ヘテロアリール)アルキル」とは、1、2、または3の任意選択で置換されたヘテロアリール基によって置換されたアルキル基をいう。一実施形態において、上記(ヘテロアリール)アルキル基は、1の、任意選択で置換されたヘテロアリール基によって置換されたC1〜4アルキルである。限定されない代表的な(ヘテロアリール)アルキル基としては、
【化20】
が挙げられる。
【0101】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「ヘテロアルキル」とは、1〜10の炭素原子、及びO、N、若しくはSより選択される、同一であっても異なっていてもよい、少なくとも2のヘテロ原子を含む、安定した直鎖または分岐鎖の炭化水素基であって、1)上記窒素原子(複数可)及びイオウ原子(複数可)は任意選択で酸化されていてもよく、及び/または、2)上記窒素原子(複数可)は任意選択で四級化されていてもよい、上記基をいう。上記ヘテロ原子は、当該ヘテロアルキル基の任意の内部の位置若しくは末端の位置、または当該ヘテロアルキル基が当該分子の残余の部分に結合する位置に配置することができる。一実施形態において、上記ヘテロアルキル基は2の酸素原子を含有する。別な実施形態において、ヘテロアルキル基は2の窒素原子を含有する。他の実施形態において、ヘテロアルキル基は1の窒素原子及び1の酸素原子を含有する。限定されない代表的なヘテロアルキル基としては、−CHN(H)CHCHN(CH、−CHN(CH)CHCHN(CH、−CHN(H)CHCHCHN(CH、−CHN(H)CHCHOH、−CHN(CH)CHCHOH、−CHOCHCHOCH、−OCHCHOCHCHOCH、−CHNHCHCHOCH、−OCHCHNH、及び−NHCHCHN(H)CHが挙げられる。
【0102】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(ヘテロシクロ)アルキル」とは、1の、任意選択で置換されたヘテロシクロ基、及び任意選択で1のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基をいう。一実施形態において、上記(ヘテロシクロ)アルキルは、1の、任意選択で置換されたヘテロシクロ基、及び1のヒドロキシ基によって置換されたC1〜4アルキルである。別な実施形態において、(ヘテロシクロ)アルキルは、1の、任意選択で置換されたヘテロシクロ基によって置換されたC1〜4アルキルである。限定されない代表的な(ヘテロシクロ)アルキル基としては、
【化21】
が挙げられる。
【0103】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(カルボキサミド)アルキル」とは、1または2のカルボキサミド基、及び任意選択で、1のヘテロシクロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基によって置換されたアルキル基をいう。一実施形態において、上記(カルボキサミド)アルキルは、1のカルボキサミド基、及び任意選択で、1のヘテロシクロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基によって置換されたC1〜4アルキルである。別な実施形態において、(カルボキサミド)アルキルは、1のカルボキサミド基、及び1のヘテロシクロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基によって置換されたC1〜4アルキルである。別な実施形態において、(カルボキサミド)アルキルは、1のカルボキサミド基によって置換されたC1〜4アルキルである。限定されない代表的な(カルボキサミド)アルキル基としては、−CHCONH、−C(H)CHCONH、−CHCON(H)CH、−CHCON(CH
【化22】
が挙げられる。
【0104】
本開示の目的に対して、単独でまたは別な基の一部として用いられる用語「(ヘテロシクロ)カルボニル」とは、任意選択で置換されたヘテロシクロ基によって置換されたカルボニル基、すなわち、−C(=O)−であって、当該ヘテロシクロ基の任意の結合可能な炭素原子に結合した上記カルボニル基をいう。限定されない代表的な(ヘテロシクロ)カルボニル基としては、
【化23】
が挙げられる。
【0105】
本開示は、異なる原子質量、すなわち質量数を有する原子によって置換された1または複数の原子を有することによって、同位体標識された(すなわち、放射標識された)、任意の本開示の化合物を包含する。開示された化合物に組み込むことができる同位体の例としては、それぞれ、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clなど、例えばH、11C、及び14Cである、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体が挙げられる。同位体標識された本開示の化合物は、本技術分野において公知の方法によって製造することができる。
【0106】
本開示は、H、11C、及び14Cで放射標識された本開示の化合物、及びいずれかのかかる化合物の、それらのナトリウムチャネルに対して結合する能力による、放射性リガンドとしての使用を包含する。例えば、上記の標識された本開示の化合物の一つの使用は、特定の受容体の結合のキャラクタリゼーションである。標識された本開示の化合物の別な使用は、構造−活性の相関関係の評価のための動物実験の代替手段である。例えば、受容体アッセイは、競合アッセイにおいて、標識された本開示の化合物を固定濃度で、且つ被験化合物の濃度を増加させながら行うことができる。例えば、三重水素化された本開示の化合物は、例えば、三重水素を用いた接触脱ハロゲン化によって、特定の化合物中に三重水素を導入することによって調製することができる。この方法は、塩基の存在下または非存在下、適宜の触媒、例えばPd/C、の存在下で、適宜にハロゲンで置換した当該化合物の前駆体を、三重水素ガスと反応せしめることを含んでもよい。三重水素化された化合物の他の好適な調製方法は、Filer、Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences、第1巻、Labeled Compounds(Part A)、第6章(1987)に見ることができる。14Cで標識された化合物は、14C炭素を有する出発原料を用いることによって調製することができる。
【0107】
本開示の化合物は、1または複数の不斉中心を含んでいてもよく、従ってエナンチオマー、ジアステレオマー、及びその他の立体異性体の形態を生じる。本開示は、全てのかかる可能な形態、並びにそれらのラセミ形態及び分割された形態並びにそれらの混合物の使用を包含することが意図される。個々のエナンチオマーは、本開示を考慮すると、本技術分野において公知の方法に従って分離することができる。本明細書に記載の化合物がオレフィン性二重結合またはその他の幾何学的非対称性の中心を含む場合であって、別段の明記がない場合には、それらの化合物はE及びZ幾何異性体の両方を包含することが意図される。同様に、全ての互変異性体が本開示に包含されることが意図される。
【0108】
本明細書において用いられる用語「立体異性体」とは、個々の分子であって、それらの原子の空間内の位置付けのみが異なる上記分子の全ての異性体に対する包括的な用語である。該用語は、エナンチオマー及び、2以上のキラル中心をもつ化合物の、互いに鏡像ではない異性体(ジアステレオマー)を包含する。
【0109】
用語「キラル中心」とは、4の異なる基が結合した炭素原子をいう。
【0110】
用語「エナンチオマー」及び「鏡像異性の」とは、その鏡像と重ね合わせることができず、従って、当該エナンチオマーは偏光の面を一方の方向に回転させ、その鏡像体化合物は偏光の面を反対方向に回転させる、光学活性である分子をいう。
【0111】
用語「ラセミの」とは、等量部のエナンチオマーの混合物をいい、当該混合物は光学的に不活性である。
【0112】
用語「分割」とは、分子の2の鏡像異性形態の一方の分離または濃縮若しくは除去をいう。
【0113】
用語「a」及び「an」は1または複数をいう。
【0114】
用語「治療する」、「治療すること」または「治療」とは、対象に対して、先制的及び対症的治療を含む、緩解または治癒を目的として、本開示の化合物を投与することを包含することを意図する。一実施形態において、用語「治療する」、「治療すること」または「治療」とは、対象に対して、緩解または治癒を目的として本開示の化合物を投与することを包含することを意図する。
【0115】
本明細書において、測定された量に関して用いられる用語「約」とは、測定を行い、測定対象及び測定装置の精度に見合った水準の注意を払う熟練者によって予期される、当該の測定された量における正常変動をいう。
【0116】
本開示は、非毒性の薬学的に許容される塩を始めとする、本開示の化合物の塩の製造及び使用を包含する。薬学的に許容される付加塩の例としては、無機及び有機酸の付加塩並びに塩基の塩が挙げられる。上記薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩などの金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属;トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、酢酸塩、ジクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩などの有機酸塩;メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などのアミノ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
酸付加塩は、特定の本開示の化合物の溶液を、塩酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、リン酸、シュウ酸、ジクロロ酢酸などの薬学的に許容される非毒性の酸の溶液と混合することによって形成することができる。塩基の塩は、本開示の化合物の溶液を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、炭酸ナトリウムなどの薬学的に許容される非毒性の塩基の溶液と混合することによって形成することができる。
【0118】
本開示は、本開示の化合物の溶媒和物の製造及び使用を包含する。溶媒和物は一般的に当該化合物の生理学的活性または毒性を有意に変えることはなく、それ自体、薬理学的等価物として作用し得る。本明細書において用いられる用語「溶媒和物」は、例えば、溶媒分子の本開示の化合物に対する比がそれぞれ約2:1、約1:1または約1:2である、二溶媒和物、一溶媒和物またヘミ溶媒和物などの、本開示の化合物の溶媒分子との結合、物理的会合及び/または溶媒和である。この物理的会合は、水素結合を始めとする、種々の程度のイオン性結合及び共有結合を伴う。特定の例において、結晶性固体の結晶格子中に1又は複数の溶媒分子が取り込まれる場合などには、上記溶媒和物は単離することができる。従って、「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。本開示の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒と溶媒和した形態として存在することができ、本開示は、溶媒和した及び溶媒和していない形態の本開示の化合物の両方を含むことが意図される。溶媒和物の一種が水和物である。「水和物」とは、溶媒分子が水である、溶媒和物の特定の下位群の一種である。溶媒和物は一般的に、薬理学的な等価物として作用することができる。水和物の調製は本技術分野において公知である。例えば、M.Cairaら、J.Pharmaceut.Sci.、93(3):601〜611(2004)を参照されたく、該文献は、フルコナゾールの酢酸エチル及び水の溶媒和物の調製について述べている。溶媒和物、ヘミ溶媒和物、水和物などの同様の調製が、E.C.van Tonderら、AAPS Pharm.Sci.Tech.、5(1):論文12(2004)、及びA.L.Binghamら、Chem.Commun. 603〜604(2001)によって記述されている。一般的な、限定されない溶媒和物の製造プロセスは、20℃を超えて約25℃までの温度で、本開示の化合物を所望の溶媒(有機、水、またはそれらの混合物)に溶解させること、次いでこの溶液を、結晶を形成させるのに十分な速度で冷却すること、及び、例えばろ過などの公知の方法により、この結晶を単離することを伴うこととなる。赤外分光分析などの分析技法を用いて、当該溶媒和物の結晶中における溶媒の存在を確認することができる。
【0119】
本開示の化合物はナトリウム(Na)チャネルの遮断薬であることから、これらの化合物を用いることによって、ナトリウムイオンの流入によって媒介される多数の疾患及び疾病を治療することができる。従って、本開示は概括的には、ナトリウムチャネルの遮断に対して応答性である障害を病む、またはそれを病むおそれがある哺乳動物における上記障害の治療方法であって、上記哺乳動物に対して、有効量の1種または複数種の本開示の化合物を投与することを含む、上記治療方法を対象とする。
【0120】
本開示は更に、ナトリウムチャネルの調節を必要とする哺乳動物における上記調節の方法であって、調節に有効な量の少なくとも1種の本開示の化合物を、上記哺乳動物に対して投与することを含む上記方法を対象とする。
【0121】
より詳細には、本開示は、卒中、頭部外傷に起因する神経損傷、てんかん、全体的及び限局的虚血に続くニューロン欠損、疼痛(例えば、急性疼痛;神経因性疼痛、術後疼痛、及び炎症性疼痛を始めとする、但しそれらに限定されない慢性疼痛;または術後疼痛)、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、またはパーキンソン病)、片頭痛、躁うつ病、耳鳴り、ミオトニア、運動障害、若しくは心不整脈の治療方法、または局所麻酔の提供方法を提供する。一実施形態において、本開示は疼痛の治療方法を提供する。別な実施形態において、疼痛の種別は慢性疼痛である。別な実施形態において、疼痛の種別は神経因性疼痛である。別な実施形態において、疼痛の種別は術後疼痛である。別な実施形態において、疼痛の種別は炎症性疼痛である。別な実施形態において、疼痛の種別は術後疼痛である。別な実施形態において、疼痛の種別は急性疼痛である。別な実施形態において、上記疼痛(例えば、神経因性疼痛、術後疼痛、または炎症性疼痛などの慢性疼痛、急性疼痛または術後疼痛)の治療は先制的である。別な実施形態において、上記疼痛の治療は対症的である。各例において、かかる治療方法は、かかる治療を必要とする哺乳動物に対して、上記治療の実施において治療上有効である、ある量の本開示の化合物を投与することを必要とする。一実施形態において、かかる化合物の上記量は、イン・ビトロでナトリウムチャネルを遮断するために有効な量である。一実施形態において、かかる化合物の上記量は、イン・ビボでナトリウムチャネルを遮断するために有効な量である。
【0122】
慢性疼痛としては、炎症性疼痛、術後疼痛、がん性疼痛、転移性癌に関係する変形性関節炎疼痛、三叉神経痛、急性ヘルペス性及びヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、カウザルギー、腕神経叢裂離、後頭神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、線維筋痛症、痛風、幻肢痛、灼熱痛、他の形態の神経痛、並びに神経因性及び特発性疼痛症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
慢性体性疼痛は一般的に、神経絞扼、外科的処置、がんまたは関節炎などの組織傷害に対する炎症反応に起因する(Brower、Nature Biotechnology 18:387〜391(2000))。
【0124】
上記炎症過程は、組織傷害または異物の存在に対して反応して活性化された、複雑な連続した生化学的及び細胞的事象である(Levine、「疼痛読本」中の「炎症性疼痛」(Inflammatory Pain,In:Textbook of Pain)、Wall及びMelzack編、第3版、1994)。炎症は多くの場合傷害を受けた組織または異物の入った部位において生じ、組織修復及び治癒の過程に寄与する。炎症の主徴としては、紅斑(発赤)、発熱、浮腫(腫脹)、疼痛及び機能の減損が挙げられる(同書)。炎症性疼痛の患者の大多数は連続的に疼痛を感じるのではなく、炎症のある部位を動かしたり該部位に触れたりした場合に強い疼痛を感じる。炎症性疼痛としては、変形性関節炎及びリウマチ性関節炎に関係する疼痛が挙げられるが、これに限定されない。
【0125】
慢性神経因性疼痛は、病因が不明確な、不均質な疾患状態である。慢性神経因性疼痛においては、疼痛は複数の機序によって媒介され得る。この種別の疼痛は、一般に末梢または中枢神経組織への損傷から生じる。症候群としては、脊髄損傷、多発性硬化症、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、幻肢痛、カウザルギー、及び反射性交感神経性ジストロフィーに関係する疼痛並びに腰痛が挙げられる。慢性疼痛は、患者が、自発痛、連続的表在性熱傷及び/または深く疼く痛みと表現されることがある異常な痛覚を被るとの点で、急性疼痛とは異なる。該疼痛は、熱痛覚過敏、冷痛覚過敏、及び機械痛覚過敏によって、または熱異痛、冷異痛、及び機械異痛によって誘発される場合がある。
【0126】
神経因性疼痛は、末梢感覚神経の損傷または感染によって引き起こされる場合がある。神経因性疼痛としては、末梢神経外傷、ヘルペスウィルス感染、糖尿病、カウザルギー、神経叢裂離、神経腫、肢切断、及び血管炎由来の疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。神経因性疼痛はまた、慢性アルコール中毒、ヒト免疫不全ウィルス感染、甲状腺機能低下、尿毒症、またはビタミン欠乏由来の神経損傷によっても引き起こされる。卒中(脊髄または脳)及び脊髄損傷もまた、神経因性疼痛を誘発する場合がある。がんに関係する神経因性疼痛は、腫瘍の成長による隣接する神経、脳、または脊髄の圧迫に起因する。更に、化学療法及び放射線療法を始めとするがん治療もまた、神経損傷を引き起こす場合がある。神経因性疼痛としては、糖尿病患者が病む疼痛のような、神経損傷によって引き起こされる疼痛が挙げられるが、これに限定されない。
【0127】
本開示はまた、ナトリウムチャネルの遮断に対して応答性である障害(例えば、上記に掲げた障害のいずれか)を病む哺乳動物において上記障害を治療するための薬剤の製造における、本開示の化合物の使用も対象とする。
【0128】
概括的な化合物の合成
式IまたはIAの化合物は、本開示を考慮すると、従来の有機合成方法を用いて、または概括的スキーム1〜4に示す、例証となる方法によって調製することができる。
【0129】
概括的スキーム1
【化24】
概括的スキーム1において、化合物A(WO2008/107455)を、DMFなどの適宜の溶媒中、KCOなどの適宜の塩基の存在下で、化合物B(式中、Xはハライド、トリフレート、トシレート、メシレート等の適宜の脱離基)との反応によって、化合物Cへと転化させる。化合物Cを、DCMなどの適宜の溶媒中、Pd/Cなどの適宜の触媒の存在下で、水素化によって化合物Dへと還元する。化合物Dを、水性ACNなどの適宜の溶媒中、ジアゾ化(Sutton,D.、Chem.Rev.93:905(1993))及びそれに続くKIとの反応によって、化合物Eへと転化させる。化合物Eを、DMFなどの適宜の溶媒中、Pd(dppf)Clなどの適宜の触媒及びKOAcなどの適宜の塩基の存在下で、化合物Fとの反応によって、化合物Gへと転化させる。
【0130】
概括的スキーム2
【化25】
概括的スキーム2において、化合物Gを、水性ジオキサンなどの適宜の溶媒中、Pd(PPhClなどの適宜の触媒及びKCOなどの適宜の塩基の存在下で、化合物H(式中、Xはハライド、トリフレート、トシレート、メシレート等の適宜の脱離基)との反応によって、式Iを有する化合物へと転化させる。
【0131】
概括的スキーム3
【化26】
化合物K(式中、Xはハライド、トリフレート、トシレート、メシレート等の適宜の脱離基)を、水性ジオキサンなどの適宜の溶媒中、Pd(dppf)Clなどの適宜の触媒及びNaCOなどの適宜の塩基の存在下で、化合物Lとの反応によって、Rがアルケニルである、式Iを有する化合物へと転化させる。Rがアルケニルである、式Iを有する化合物を、水性アセトンなどの適宜の溶媒中、OsOなどの適宜の反応剤との反応、または水性t−BuOHなどの適宜の溶媒中、AD−mix−αまたはAD−mix−βなどの適宜のキラル反応剤との反応によって、Rがジヒドロキシアルキルである、式Iを有する化合物へと転化することができる。
【0132】
概括的スキーム4
【化27】
化合物Mを、上述の化合物Cと同様の方法で調製することができる。次いで、化合物Mを、適宜の溶媒(DMFなど)中、適宜の塩基(KCOなど)及びヨウ化銅(I)などの適宜の触媒の存在下で、X−Ar(但し、Xはハライド、トリフレート、トシレート、メシレート等の適宜の脱離基)の化合物との反応によって、式IAの化合物(式中、Arは、式IAにおいて定義される、任意選択で置換された5員ヘテロアリールまたは6員ヘテロアリール)へと転化させる。
【0133】
化合物の試験
本開示の化合物を、ナトリウムチャネル遮断薬活性に関して、ナトリウム流動アッセイ及び/または電気生理学的アッセイによって評価した。本開示の一態様は、本開示の化合物のナトリウムチャネル遮断薬としての使用に基づく。この特性に基づいて、本開示の化合物は、ナトリウムイオンチャネルの遮断に対して応答性である疾病又は障害、例えば、卒中、頭部外傷に起因する神経損傷、てんかん、痙攣、熱性痙攣を伴う全身性てんかん、重症乳児ミオクロニーてんかん、全体的及び限局的虚血に続くニューロン欠損、偏頭痛、家族性原発性先端紅痛症、発作性激痛症、小脳萎縮、運動失調、ジストニア、振戦、精神遅滞、自閉症、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、若しくはパーキンソン病)、躁うつ病、耳鳴り、ミオトニア、運動障害、心不整脈の治療、または局所麻酔の提供において有用であると考えられる。本開示の化合物はまた、例えば、急性疼痛;神経因性疼痛、術後疼痛、及び炎症性疼痛を始めとする、但しこれらに限定されない慢性疼痛;または術後疼痛などの疼痛の治療に有効であることも期待される。
【0134】
より詳細には、本開示は、ナトリウムチャネルの遮断薬である本開示の化合物を対象とする。本開示によれば、有用なナトリウムチャネル遮断特性を有するそれら化合物は、ナトリウム流動アッセイ及び/または電気生理学的アッセイにおいて、Na1.1、Na1.2、Na1.3、Na1.4、Na1.5、Na1.6、Na1.7、Na1.8、及び/またはNa1.9に対して、約100μΜ以下、例えば、約50μΜ以下、約25μΜ以下、約10μΜ以下、約5μΜ以下、または約1μΜ以下のIC50を示す。特定の実施形態において、本開示の化合物は、Na1.7に対して100μΜ以下、約50μΜ以下、約25μΜ以下、約10μΜ以下、約5μΜ以下、約1μΜ以下、約0.5μΜ以下、約0.1μΜ以下、約0.05μΜ以下、または約0.01μΜ以下のIC50を示す。本開示の化合物は、それらのNaチャネル遮断活性に関して、本技術分野で公知の方法を用いて、並びに以下の蛍光画像化及び電気生理学的イン・ビトロアッセイ及び/またはイン・ビボアッセイによって試験することができる。
【0135】
一実施形態において、本開示の化合物は、哺乳動物におけるCNS血液脳関門の貫通を実質的に示さない。かかる化合物は、それらのPNS対CNS組織選択性を表わす手段として、「末梢限局性」と呼ばれる。
【0136】
一実施形態において、末梢限局性の本開示の化合物のPNS:CNS濃度比は、約5:1、約10:1、約20:1、約30:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、約5,000:1、約10,000:1、またはそれ以上である。本開示の化合物を、それらの中枢神経系に浸透する能力に関して、本技術分野で公知のイン・ビトロ及びイン・ビボの方法を用いて試験することができる。
【0137】
イン・ビトロアッセイプロトコル
FLIPR(登録商標)アッセイ
組換えNa1.7細胞株:ヒトNa1.7のα−サブユニット(Na1.7、SCN9a、PN1、NE)をコードするcDNA(アクセッション番号NM_002977)を発現する組換え細胞株において、イン・ビトロアッセイを実施した。当該細胞株は、エール大学の研究者(Cumminsら、J.Neurosci. 18(23):9607〜9619(1998))によって提供された。Na1.7発現クローンの優占選択のために、発現プラスミドは、ネオマイシン耐性遺伝子を共発現した。当該細胞株は、CMV主要後期プロモータの影響下で、ヒト胚性腎臓細胞株HEK293において構築し、限界希釈クローニング及びネオマイシン類似体G418を用いた抗生物質選別を用いて、安定なクローンを選別した。組換えβ−及びγ−サブユニットは、この細胞株に導入しなかった。他の種よりクローニングされた組換えNa1.7を発現する更なる細胞株もまた、単独で、または種々のβ−サブユニット、γ−サブユニット若しくはシャペロンと組み合わせて用いることができる。
【0138】
天然のNa1.7を発現する非組換え細胞株:別の方法として、the European Cell Culture Collection(カタログ番号92090903、英国ウィルトシャー州ソールズベリー)より入手可能なND7マウス神経芽細胞腫×ラット後根神経節(DRG)ハイブリッド細胞株ND7/23などの、天然の非組換えNa1.7を発現する細胞株で、イン・ビロトアッセイを実施することができる。該アッセイは、様々な種由来の、天然の非組換えNa1.7を発現する他の細胞株、または様々な種より単離された、後根神経節(DRG)細胞などの、新しいまたは保存された感覚ニューロンの培養物において実施することもできる。他の電位開口型ナトリウムチャネルの一次スクリーニングまたはカウンタースクリーニングを行うこともでき、当該細胞株は、本技術分野で公知の方法を用いて構築するか、または共同研究者若しくは民間組織から購入することができ、該細胞株は、組換えまたは天然のいずれかのチャネルを発現することができる。上記一次カウンタースクリーニングは、HEK293宿主細胞内で発現する中枢神経のナトリウムチャネルの一つ、Na1.2(rBIIa)に関するものである(Ilyinら、Br.J.Pharmacol. 144:801〜812(2005))。これらのカウンタースクリーニングについての薬理学的プロファイリングは、以下に説明する一次またはそれに代わるNa1.7アッセイと同様の条件下で実施される。
【0139】
細胞の維持管理:別段の注記のない限り、細胞培養の試薬は、バージニア州ハーンドンのメディアテック社より購入した。組換えNa1.7/HEK293細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS、Hyclone、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、ユタ州ローガン)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、2〜4mMのL−グルタミン、及び500mg/mLのG418を含有するダルベッコ最小必須培地から構成される増殖培地中で、常法に従って培養した。天然の非組み換え細胞株に対しては、選別用の抗生物質を除去し、必要に応じて追加の培地処方を適用することができる。
【0140】
アッセイ緩衝液:アッセイ緩衝液は、新しい無菌のdHO(メディアテック社、バージニア州ハーンドン)の1Lボトルから120mLを抜き出し、100mLの、Ca++またはMg++不含の10倍濃縮のHBSS(Gibco、インビトロジェン社、ニューヨーク州グランドアイランド)、及びそれに続いて、20mLのpH7.3の1.0M HEPES緩衝液(フィッシャーサイエンティフィック社、BP299−100)を添加することによって処方した。最終的な緩衝液は、20mMのpH7.3のHEPES緩衝液、1.261mMのCaCl、0.493mMのMgCl、0.407mMのMg(SO)、5.33mMのKCl、0.441mMのKHPO、137mMのNaCl、0.336mMのNaHPO及び0.556mMのD−グルコースより構成され(Hanksら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med. 71:196(1949))、一般的には、アッセイ全体(すなわち、全ての洗浄及び添加のステップ)を通じて、この簡素な処方を基本的な緩衝液とした。
【0141】
一次蛍光アッセイ用CoroNa(商標)Green AM Na色素:一次蛍光アッセイで用いた蛍光指示薬は、蛍光領域の光を発光する色素である、CoroNa(商標)Greenの細胞浸透型(インビトロジェン社、Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)であった(Harootunianら、J.Biol.Chem. 264(32):19458〜19467(1989))。この色素がNaイオンに曝露されると、該色素がNaイオンと部分的な選択性で結合することができ、波長範囲ではなくこの発光の強度が増加する。Na1.7または他のナトリウムチャネルを発現する細胞に対して、CoroNa(商標)Green色素を蛍光測定の直前にロードし、次いで、作動薬刺激の後に、細胞外液から活性化されたナトリウムチャネル細孔を通過して細胞質内に流入するNaイオンとして、Naイオンの流動を検知した。上記色素は、凍結乾燥粉末として暗所に保存しておき、次いで製造者の説明書に従って、細胞へのローディング操作の直前に、その一部をDMSO中に10mMの原液濃度へと溶解させた。次いで、該原液をアッセイ緩衝液中で、細胞へのローディングのための緩衝液中の色素の最終濃度が5μMとなるように、4倍濃縮の希釈用溶液へと希釈した。
【0142】
別な蛍光アッセイ用膜電位色素:別な蛍光アッセイにおいて用いることができる蛍光指示薬は、膜電位の変化に追随する分子の変化を検知する色素である、青色型膜電位色素(MDS、Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベール)である。作動薬刺激が膜電位の変化を誘発する場合には、蛍光の増加が予想される。Na1.7または他のナトリウムチャネルを発現する細胞を、蛍光アッセイの30〜60分前に上記膜電位色素と共にインキュベートする。KClにより事前刺激を行う形態のアッセイの場合には、上記色素及び他の全ての成分をアッセイ直前に洗い流し、次いで色素を交換する。KCl事前刺激を行わない形態においては、色素は細胞上に残り、洗い流すまたは交換することはない。上記色素は凍結乾燥粉末として暗所に保存しておき、次いでその一部をアッセイ緩衝液中に溶解させて20倍濃縮の原液を形成し、該原液は数週の間使用可能である。
【0143】
作動薬:蛍光アッセイにおいては、2種の作動薬、すなわち、1)ベラトリジン、及び2)イエロースコーピオン(Leiurus quinquestriatus hebraeus)由来の毒液、を組み合わせて用いた。ベラトリジンは、不活性化を阻害することにより、チャネル開口部の捕捉を容易にするアルカロイド低分子であり、上記サソリ毒は、電位開口型ナトリウムチャネルの種々のサブセットに対して選択的なペプチド毒素を含む天然の調合薬である。これらのサソリ毒は、それらの同族の標的チャネルの速やかな不活性化を阻害する。上記作動薬の原溶液を、DMSO中40mM(ベラトリジン)及びdHO中1mg/mL(サソリ毒)にて調製し、次いで、(特定のアッセイに応じて)アッセイ緩衝液中で希釈して4倍または2倍の原液を作製し、最終濃度を100μΜ(ベラトリジン)及び10μg/mL(サソリ毒)とした。両方の作動薬はシグマ−アルドリッチ社(ミズーリ州セントルイス)より購入した。
【0144】
被験化合物:被験化合物をDMSOに溶解させて10mMの原液を得た。この原液を更に、DMSOを用いて、1:3の一連の10点(10,000μΜ、3.333μΜ、1.111μΜ、370μΜ、123μΜ、41μΜ、14μΜ、4.6μΜ、1.5μΜ及び0.5μΜ)での希釈ステップで希釈した。この原液を、アッセイにおける上記化合物の最終濃度が20μΜ、6.7μΜ、2.2μΜ、0.74μΜ、0.25μΜ、並びに0.08μΜ、0.03μΜ、0.01μΜ、0.003μΜ及び0.001μΜとなるように、0.8%のDMSO濃度(アッセイにおける上記化合物成分由来の最終[DMSO]=0.2%)を有する、4倍濃縮の一連の原希釈液として、アッセイ緩衝液中で更に希釈した(1:125)。特定の被験物質が特に効能を有すると思われた場合には、濃度曲線は、より適切な濃度範囲での用量−応答を行うために、例えば、10倍低い濃度まで調整した。化合物の希釈液を色素ローディングステップ及び事前刺激ステップの間、次いで、蛍光アッセイの間、動態読み込みの初期に再度添加した。化合物の希釈溶液を、96ウェルプレートの中心の80ウェルにわたる再現性用の2列ずつに添加した一方、十分に刺激された及び十分に阻害された(正及び負の)比較対照は、それぞれ、アッセイプレートの左側及び右側の、最上部の4の端側のウェル及び最下部の4の端側のウェルの位置とした。
【0145】
データ分析:データを、当業者に公知の方法に従って、またはGraphPad(登録商標)Prism Program、バージョン4.0以上(GraphPad Software社(カリフォルニア州サンディエゴ)より入手可能)を用いて解析し、被験物質に関するIC50値を求めた。各実験の間に、少なくとも1種の標準対照化合物を評価した。
【0146】
KCl及び被験物質による事前インキュベーションを伴うFLIPR(登録商標)またはFLIPRTETRA(登録商標)ナトリウム色素アッセイ:組換え若しくは非組換えの天然Na1.7 α−サブユニットのいずれかを、単独でまたは種々のβ−及びγ−サブユニットとの組み合わせで発現する組換えHEK293細胞あるいは他の宿主細胞を、約40,000細胞/ウェルの密度で、96ウェルの、黒色で、底が透明のPDL被覆プレート中にプレートすることにより準備した。上記アッセイは、所望であれば、比例してより少ない細胞及びより少ない培地を用いて、384ウェルまたは1,536ウェル形式に適合可能である。次いで、上記プレートを、選別のための抗生物質を含むまたは含まない増殖培地中、37℃、5%CO、湿度95%で終夜、アッセイの準備のためにインキュベートした。他の電位開口型ナトリウムチャネルのカウンタースクリーニングについては、細胞の最適密度、培地及び続くアッセイの成分を、特定の細胞株またはイソ型に対して微調整することは可能であるが、手順は非常に類似したものであった。
【0147】
翌日、アッセイの開始時に、培地を細胞から払い落とし、ウェルを50μl/ウェルのアッセイ緩衝液(炭酸水素ナトリウムまたはフェノールレッド不含の1Xハンクス平衡塩溶液、20mM HEPES緩衝液、pH7.3)で一回洗浄し、次いで、被験物質、(細胞へのローディングのための)CoroNa(商標)Green AMナトリウム色素及び細胞の集団全体におけるチャネルの再分極及び同期のためのKClと共に事前インキュベートした。この色素ローディング及び事前刺激ステップのために、上記成分を洗浄ステップの直後に次のように添加した。すなわち、1)初めに、上記化合物の希釈液及び比較対照を、アッセイ緩衝液中の4倍濃縮液として、50μL/ウェルにて添加し、2)CoroNa(商標)Green AM色素を、上記原液よりアッセイ緩衝液中で20μΜに希釈し(4倍濃縮液)、50μL/ウェルにて上記プレートに添加し、3)最後に、180mMのKCl溶液(2倍濃縮液)を、2Mの原液をアッセイ緩衝液中で希釈することによって調製し、該溶液を100μl/ウェルにて上記細胞に添加した。細胞を25℃、暗所で30分間インキュベートした後、それらの蛍光を測定した。
【0148】
次いで、色素をロードした細胞の入ったプレートを弾いて、事前インキュベーションの成分を除去し、100μL/ウェルのアッセイ緩衝液で1回洗浄した。100μL/ウェルのアッセイ緩衝液の分割液をプレートに再度添加し、リアルタイムアッセイを開始した。細胞の蛍光を、蛍光プレートリーダー(FLIPRTETRA(登録商標)またはFLIPR384(登録商標)、MDS、Molecular Devices社、カルフォルニア州サニーベール)を用いて測定した。試料をレーザーまたはPMT光源(励起波長=470〜495nM)のいずれかによって励起し、発光(発光波長=515〜575nM)をフィルタリングした。この細胞に基づく、中〜高スループットアッセイへの化合物及びチャネル活性化剤の添加は蛍光プレートリーダー上で行い、結果(相対蛍光単位として表される)を1〜3秒毎にカメラで撮影することによって捉え、次いでリアルタイムで表示し、保存した。一般的には、1.5秒毎のカメラ撮影を伴う15秒間のベースライン期間があり、次いで被験化合物を添加し、その後、3秒毎のカメラ撮影を伴う120秒間のベースライン期間を再度設け、最後に、(ベラトリジン及びサソリ毒を含有する)作動薬溶液を添加した。その後、NaイオンのCoroNa(商標)Green色素への結合によって生じる蛍光の増加の大きさを約180秒間捉えた。結果は、相対蛍光単位(RFU)で表し、刺激の後半における最大の信号、若しくは作動薬刺激の全期間中の最大値より最小値を減じた値を用いることによって、または全刺激期間に対する曲線下面積をとることによって決定することができる。
【0149】
上記アッセイは、一次スクリーニングの間に、マルチウェルプレートの1または2のウェルのみにおいて、標準量(例えば、10μΜ)で存在する被験物質を更に用いたスクリーニングアッセイとして行うことができる。このスクリーニングにおいて的中したものは、一般的には、更に徹底的に(複数回)プロファイリングを行い、用量−応答または競合アッセイに供し、他の電位開口型ナトリウムチャネルまたは他の生物学的に関連する標的分子に対するカウンタースクリーニングにおいて試験した。
【0150】
KCl及び被験物質での事前インキュベーションを伴うFLIPR(登録商標)またはFLIPRTETRA(登録商標)膜電位アッセイ:組換え若しくは非組換えの天然Na1.7 α−サブユニットのいずれかを、単独でまたは種々のβ−及びγ−サブユニットとの組み合わせで発現する組換えHEK293細胞あるいは他の宿主細胞を、約40,000細胞/ウェルの密度で、96ウェルの、黒色で、底が透明のPDL被覆プレート中にプレートすることにより準備する。上記アッセイは、所望であれば、比例してより少ない細胞及びより少ない培地を用いて、384ウェルまたは1,536ウェル形式に適合可能である。次いで、上記プレートを、選択のための抗生物質を含むまたは含まない増殖培地中、37℃、5%CO、湿度95%で終夜、アッセイの準備のためにインキュベートする(例えば、Benjaminら、J.Biomol.Screen 10(4):365〜373(2005)を参照のこと)。他の電位開口型ナトリウムチャネルのスクリーニング及びカウンタースクリーニングについては、細胞の最適密度、培地及び続くアッセイの成分を、試験する特定の細胞株またはナトリウムチャネルイソ型に対して微調整することは可能であるが、アッセイのプロトコルは類似したものである。
【0151】
翌日、アッセイの開始時に、培地を細胞から払い落とし、ウェルを50μl/ウェルのアッセイ緩衝液(炭酸水素ナトリウムまたはフェノールレッド不含の1Xハンクス平衡塩溶液、20mM HEPES緩衝液、pH7.3)で一回洗浄し、次いで、被験物質、(細胞へのローディングのための)膜電位色素、及び細胞の集団全体におけるチャネルの再分極及び同期のためのKClと共に事前インキュベートする。この色素ローディング及び事前刺激ステップのために、上記成分を洗浄ステップの直後に次のように添加する。すなわち、1)初めに、上記化合物の希釈液及び比較対照を、アッセイ緩衝液中の4倍濃縮液として、50μL/ウェルにて添加し、2)膜電位色素を、上記原液よりアッセイ緩衝液中で希釈し(4倍濃縮液)、50μL/ウェルにて上記プレートに添加し、
3)最後に、180mMのKCl溶液(2倍濃縮液)を、2Mの原液をアッセイ緩衝液中で希釈することによって調製し、該溶液を100μL/ウェルにて上記細胞に添加する。細胞を37℃、暗所で30〜60分間インキュベートした後、それらの蛍光を測定する。
【0152】
次いで、色素をロードした細胞の入ったプレートを弾いて、事前インキュベーションの成分を除去し、50μL/ウェルのアッセイ緩衝液で1回洗浄する。50μL/ウェルの膜電位色素の分割液をプレートに再度添加し、リアルタイムアッセイを開始する。細胞の蛍光を、蛍光プレートリーダー(FLIPRTETRA(登録商標)またはFLIPR384(登録商標)、MDS、Molecular Devices社、カルフォルニア州サニーベール)を用いて測定する。試料をレーザーまたはPMT光源(励起波長=510〜545nM)のいずれかによって励起し、発光(発光波長=565〜625nM)をフィルタリングする。ここへの上記化合物(最初に)及びその後のチャネル活性化剤(後で)の添加は蛍光プレートリーダー上で行い、相対蛍光単位(RFU)として表される結果を1〜3秒毎にカメラでの撮影によって捉え、次いでリアルタイムで表示し、保存する。一般的には、1.5秒毎のカメラ撮影を伴う15秒間のベースライン期間があり、次いで被験化合物を添加し、その後、3秒毎のカメラ撮影を伴う120秒間のベースライン期間を再度設け、最後に、(ベラトリジン及びサソリ毒を含有する)作動薬溶液を添加する。その後、膜電位変化の検知によって生じる蛍光の増加の大きさを約120秒間捉える。結果は、相対蛍光単位(RFU)で表し、刺激の後半における最大の信号、若しくは全刺激期間中の最大値より最小値を減じたものを用いることによって、または全刺激期間に対する曲線下面積をとることによって決定することができる。
【0153】
上記アッセイは、一次スクリーニングの間に、マルチウェルプレートの1または2のウェルのみにおいて、標準量(例えば、10μΜ)で存在する被験物質を更に用いたスクリーニングアッセイとして行うことができる。このスクリーニングにおいて的中したものは、一般的には、更に徹底的に(複数回)プロファイリングを行い、用量−応答または競合アッセイに供し、他の電位開口型ナトリウムチャネルまたは他の生物学的に関連する標的分子に対するカウンタースクリーニングにおいて試験する。
【0154】
KCl及び被験物質による事前インキュベーションを伴わないFLIPR(登録商標)またはFLIPRTETRA(登録商標)ナトリウム色素アッセイ:組換え若しくは非組換えの天然Na1.7 α−サブユニットのいずれかを、単独でまたは種々のβ−及びγ−サブユニットとの組み合わせで発現する組換えHEK293細胞あるいは他の宿主細胞を、約40,000細胞/ウェルの密度で、96ウェルの、黒色で、底が透明のPDL被覆プレート中にプレートすることにより準備する。上記アッセイは、所望であれば、比例してより少ない細胞及びより少ない培地を用いて、384ウェルまたは1,536ウェル形式に適合可能である。次いで、上記プレートを、選択のための抗生物質を含むまたは含まない増殖培地中、37℃、5%CO、湿度95%で終夜、アッセイの準備のためにインキュベートする。他の電位開口型ナトリウムチャネルのカウンタースクリーニングについては、細胞の最適密度、培地及び続くアッセイの成分を、特定の細胞株またはイソ型に対して微調整することは可能であるが、手順は非常に類似したものである。
【0155】
翌日、アッセイの開始時に、培地を細胞から払い落とし、ウェルを50μL/ウェルのアッセイ緩衝液(炭酸水素ナトリウムまたはフェノールレッド不含の1Xハンクス平衡塩溶液、20mM HEPES緩衝液、pH7.3)で一回洗浄する。次いで、膜電位色素を、上記原液をアッセイ緩衝液中で希釈した直後の試料(ここで4倍の濃度)から、上記96ウェルプレートの各ウェルに添加する(50μL/ウェル)。細胞を37℃、暗所で30〜60分間インキュベートした後、それらの蛍光を測定する。
【0156】
この標準の膜電位アッセイにおいては、次いで、色素溶液を吸引することなく、また如何なる更なる細胞の洗浄も行わず、色素をロードした細胞の入った96ウェルプレートを直接プレートリーダー上に載置する。細胞の蛍光を、蛍光プレートリーダー(FLIPRTETRA(登録商標)またはFLIPR384(登録商標)、MDS、Molecular Devices社、カルフォルニア州サニーベール)を用いて測定する。試料をレーザーまたはPMT光源(励起波長=510〜545nM)のいずれかによって励起し、発光(発光波長=565〜625nM)をフィルタリングする。この動態アッセイへの上記化合物(最初に、4倍濃度の原プレートより50μL/ウェル)及びその後のチャネル活性化剤(後で、2倍濃度の原液より100μL/ウェル)の添加は蛍光プレートリーダー上で行い、結果(相対蛍光単位(RFU)として表される)を1〜3秒毎のカメラ撮影によって捉え、次いでリアルタイムで表示し、保存する。一般的には、1.5秒毎のカメラ撮影を伴う15秒間のベースライン期間があり、次いで被験化合物を添加し、その後、3秒毎のカメラ撮影を伴う120秒間のベースライン期間を再度設け、最後に、(ベラトリジン及びサソリ毒を含有する)作動薬溶液を添加する。その後、膜電位変化の検知によって生じる蛍光の増加の大きさを約120秒間捉える。結果は、相対蛍光単位(RFU)で表し、刺激の後半における最大の信号、若しくは全刺激期間中の最大値より最小値を減じたものを用いることによって、または全刺激期間に対する曲線下面積をとることによって決定することができる。
【0157】
上記アッセイは、一次スクリーニングの間に、マルチウェルプレートの1または2のウェルのみにおいて、標準量(例えば、10μΜ)で存在する被験物質を更に用いたスクリーニングアッセイとして行うことができる。このスクリーニングにおいて的中したものは、一般的には、更に徹底的に(複数回)プロファイリングを行い、用量−応答または競合アッセイに供し、他の電位開口型ナトリウムチャネルまたは他の生物学的に関連する標的分子に対するカウンタースクリーニングにおいて試験する。
【0158】
電気生理学アッセイ
細胞 手動電気生理学:hNa1.7発現HEK−293細胞を、ポリ−D−リジンで予めコーティングした35mm培養皿上に、標準的なDMEM培地(メディアテック社、バージニア州ハーンドン)中でプレートし、5%COインキュベーター中、37℃でインキュベートする。培養した細胞はプレーティング後概略12〜48時間後に使用する。
【0159】
細胞 自動電気生理学:hNa1.7発現HEK−293細胞を、組織培養フラスコ上に、標準的なDMEM培地(メディアテック社)中でプレートし、5%COインキュベーター中、37℃でインキュベートする。培養した細胞はプレーティング後概略12〜48時間後に使用する。
【0160】
手動電気生理学:実験日に、上記35mm培養皿を、培養皿を連続的に新しい記録媒体で灌流する灌流システムを備えた倒立顕微鏡のステージ上に載置する。重力駆動灌流システムを用いて、評価中の細胞に試験溶液を直接印加する。この「シューター」システムは、モーターを備えた水平変換器にガラスで接続された、一列のガラスピペットから構成される。シューターの出口は、対象とする細胞から概略100μmの位置に配置される。
【0161】
全細胞電流は、Axopatch 200B増幅器(アクソンインスツルメンツ社、カリフォルニア州フォスターシティ)、1322A A/D変換器(アクソンインスツルメンツ社)及びpClampソフトウェア(v.8、アクソンインスツルメンツ社)を用い、全細胞パッチクランプ構成を使用して記録し、パーソナルコンピュータ上に保存する。ギガシールを形成し、全細胞構成を電圧クランプモードで設定し、hNa1.7チャネルによって発生した膜電流を記録する。ホウケイ酸ガラス製ピペットであって、ピペット溶液が充填された場合に1.5と2.0ΜΩとの間の抵抗値を有する上記ピペットを用い、直列抵抗(<5ΜΩ)を75〜80%補償する。信号を50kHzでサンプリングし、3kHzで低域通過フィルタ処理する。
【0162】
自動電気生理学:実験日に、培地を除去し、適宜の酵素で消化して、細胞を外部溶液中に懸濁させることによって、細胞を準備する。
【0163】
Patchliner(Nanion Technologies社、ドイツ国ミュンヘン)、EPC10 4チャンネル増幅器(HEKA社、ニューヨーク州ベルモア)及びPatchControl HT 10905(Nanion Technologies社)を用いた全細胞パッチクランプ構成並びにPatchMaster v2x73ソフトウェア(HEKA社)を使用して全細胞電流を記録し、パーソナルコンピュータに保存する。ギガシールを形成し、全細胞構成を電圧クランプモードで設定し、hNa1.7チャネルによって発生した膜電流を記録する。NPC−16先端部は、ピペット溶液が充填された場合に1.0と2.0ΜΩとの間の抵抗値及び、直列抵抗(<5ΜΩ)を有する。信号を25kHzでサンプリングし、3kHzで低域通過フィルタ処理する。
【0164】
電圧プロトコル 手動電気生理学:全細胞構成を電圧クランプモードで設定した後、電圧プロトコルを実行して以下を設定する。すなわち、1)保持電位(Vmax)、2)保持電位(Vh)、及び3)各細胞に対するコンディショニング電位である。
【0165】
電圧クランプモードでの全細胞構成を設定した後、標準的なI〜Vプロトコルを実施し、最大電流(Imax)が誘発される電位を測定する。この電位が試験電位(V)である。100%のチャンネルが不活性化状態にあるコンディショニング電位を測定するために、連続した15の、10mV刻みで増加する、長さ100msの脱分極前パルス、及びその直後に続くVmaxに達する5msの試験パルスを用いて、標準的な定常状態不活性化(SSIN)プロトコルを実施する。このプロトコルはまた、全てのチャネルが休止状態にある保持電位の測定も可能にする。
【0166】
不活性化からの回復の有意な遅延を生じさせる化合物に関して、不活性化状態のチャネルに対する親和性の推定値(K)は、以下のプロトコルを用いて与えられる。すなわち、負の、残存不活性化のない保持電位からコンディショニング電位へと、細胞を2〜5秒間脱分極し、速やかな不活性化を緩和するために、10〜20msの間負の保持電位に戻し、次いで、約15msの間試験電位へと脱分極する。この電圧プロトコルを、最初はベースラインを設定するために被験化合物の非存在下で、次いで被験化合物の存在下で、10〜15秒毎に繰り返す。
【0167】
安定したベースラインが設定された後、被験化合物を印加し、試験パルスによって誘発される電流の遮断を評価する。いくつかの場合において、多重の累積する濃度を印加して、この電流の40〜60%の間を遮断した濃度を特定する。一旦定常状態の遮断が観測された後に、比較対照溶液を用いた灌流によって上記化合物の洗い流しを試みる。Kの推定値を以下のように算出する。
=[薬剤]*{FR/(1−FR)} 数式1
式中、[薬剤]は薬剤の濃度であり、
FR=I(薬剤後)/I(比較対照) 数式2
式中、Iはピーク電流の大きさである。多重の濃度を用いる場合には、Kは、対応する薬剤の濃度に対してプロットしたFRに対するロジスティック方程式の当て嵌めにより決定される。
【0168】
別法において、hNa1.7電流を調べるための電圧クランププロトコルは以下の通りである。すなわち、電圧クランプモードでの全細胞構成を設定した後、2の電圧プロトコルを実施して、1)保持電位、及び2)各細胞に対する試験電位を設定した。
【0169】
休止の遮断:チャネルの大部分が休止状態にあるときの膜電位を測定するために、100msの前パルス×10mVの脱分極ステップを用いた標準的な定常状態不活性化(SSIN)プロトコルを実施する。休止の遮断を試験するための保持電位(Vh1)は、不活性化プロトコルを用いて不活性化が観測される第1の電位よりも、一般的に20mVより過分極している。
【0170】
この保持電位から標準のI〜Vプロトコルを実施して、最大電流が誘発される電位(Vmax)を測定する。この電位が試験電位(Vt)である。
【0171】
化合物試験プロトコルは、10〜15秒毎に繰り返される、Vh1(SSINより測定される)からVt(I〜Vプロトコルより測定される)までの連続した10msの脱分極である。安定したベースラインを設定した後、高濃度の被験化合物(溶解度によって許容される最高の濃度または約50%の遮断をもたらす濃度)を印加し、電流の遮断を評価する。一旦定常状態の遮断が観測された後に、比較対照溶液を用いた灌流によって上記化合物の洗い流しを試みる。チャネルの休止状態に対する親和性を以下のように算出する。
=[薬剤]*{FR/(1−FR)} 数式3
式中、[薬剤]は薬剤の濃度であり、
FR=I(薬剤後)/I(比較対照) 数式2
式中、Iはピーク電流の大きさであり、休止遮断解離定数Kの推定に用いる。
【0172】
不活性化チャネルの遮断:不活性化チャネルの遮断を評価するために、上記と同様のVtに達するパルスを与えた場合に電流の大きさの20〜50%が低下するように、保持電位を脱分極させる。これが第2の保持電位(Vh2)である。この脱分極の大きさは初期電流の大きさ及び緩慢な不活性化に起因する電流損失の割合に依存する。電流の低下を記録し、この電位(h)において利用可能なチャネルの分率を決定する。
h=I@Vh2/Imax 数式4
【0173】
この膜電圧においては、ある比率のチャネルが不活性化状態にあり、従って、遮断薬による阻害は、休止チャネル及び不活性化チャネルの両方との相互作用を含む。
【0174】
不活性化チャネルに対する被験化合物の効能を測定するために、10〜15秒毎に、Vh2からVtまでの10msの電圧ステップによって、連続した電流を誘発させる。安定したベースラインを設定した後、低濃度の被験化合物を印加する。いくつかの場合において、多重の累積する濃度を印加して、電流の40〜60%の間を遮断する濃度を特定しなければならないこととなる。ベースラインを再設定するために洗い流しを試みる。与えられたベースラインに関して部分応答を測定し、Kappを決定する。
app=[薬剤]*{FR/(1−FR)} 数式5
式中、[薬剤]は薬剤の濃度である。
【0175】
このKappの値をK及びhの値と共に用い、以下の式を使用して、不活性化チャネルに対する当該化合物の親和性(K)を算出する。
=(1−h)/((1/Kapp)−(h/K)) 数式6
【0176】
電圧プロトコル 自動電気生理学:上述したものと同様の電圧プロトコルを用いるが、試験電位(V)は所定の電圧に設定する。Kappは上述のように測定する。
【0177】
溶液及び化学物質:電気生理学の記録に関して、外部溶液は、標準の、10mMのHEPES緩衝液(NaOHによりpHを7.34に調節し、モル浸透圧濃度を320に調節)を補ったHBSSまたは10mMのHEPES緩衝液(NaOHによりpHを7.4に調節、モル浸透圧濃度=320)を補ったTyrode塩液(シグマ社、米国)のいずれかである。内部ピペット溶液は、NaCl(10)、CsF(140)、CaCl(1)、MgCl(5)、EGTA(11)、HEPES緩衝液(10:pH7.4、mOsm 305)(mMで表示)を含有する。化合物は、初めに一連のDMSO中の原液として調製し、次いで外部溶液中に溶解させ、最終的な希釈液中のDMSO含有量は0.3%を超えなかった。この濃度では、DMSOはナトリウム電流に対して影響を与えない。ベースラインを設定するために用いるビヒクル溶液も0.3%のDMSOを含有する。
【0178】
データ解析 手動電気生理学:データをClampfitソフトウェア(pClamp、v.8、アクソンインスツルメンツ社)を用いてオフラインで解析し、GraphPad Prizm(v.4.0)ソフトウェアを用いてグラフ化する。
【0179】
データ解析 自動電気生理学:データをIgor Pro(v6.2.2.2、ウェーブメトリクス社、オレゴン州レイクオスエゴ)及びマイクロソフトXL(マイクロソフトオフィス 2010、v14x、マイクロソフト社、ワシントン州レントン)を用いてオフラインで解析する。
【0180】
疼痛に対するイン・ビボアッセイ
本開示の化合物は、Hunskaarら、J.Neurosci.Methods 14:69〜76(1985)に記載されるように、それらの抗侵害受容活性について、ホルマリンモデルにおいて試験することができる。雄のスイス−ウェブスターNIHマウス(20〜30g、ハーラン社、カリフォルニア州サンディエゴ)を全ての実験に使用することができる。実験日には食餌を中止する。マウスを少なくとも1時間プレキシガラスのビンに入れておき、環境に順化させる。上記順化期間に続いて、マウスを体重測定し、これらに腹腔内投与若しくは経口投与による対象化合物または、比較対照としての、然るべき量のビヒクル(例えば、10% Tween−80または0.9% 生理食塩水、及び他の薬学的に許容されるビヒクル)を与える。腹腔内投与の15分後、及び経口投与の30分後に、マウスに右後足の背側面からホルマリン(20μLの5%ホルムアルデヒドの生理食塩水溶液)を注射する。マウスをプレキシガラスのビンに移し、注射をした足を舐めるまたは噛む動作に費やす時間を監視する。ホルマリン注射後1時間、舐める及び噛む動作の時間を5分間隔で記録する。全ての実験を、明周期の間に盲検法で行う。
【0181】
ホルマリン反応の初期段階は、0〜5分の間の舐める/噛む動作として測定し、後期段階は15〜50分測定する。ビヒクル処理群と薬物処理群との間の違いは、一元配置分散分析(ANOVA)によって解析することができる。P値<0.05が有意と見なされる。化合物は、それらがホルマリンに誘発される足を舐める行動の早期段階及び第2段階の両方を遮断する活性を有する場合に、急性及び慢性疼痛の治療に有効であると見なされる。
【0182】
炎症性または神経因性疼痛に関するイン・ビボアッセイ
試験動物:各実験は、実験開始時に200〜260gの間の体重のラットを使用する。上記ラットは群で飼育し、被験化合物の経口投与の前の、投与の前16時間の間餌を撤去する場合以外は、常に餌及び水を自由に摂れるようにする。比較対照群は、本開示の化合物を用いて処理したラットとの比較としての役割を果たす。上記比較対照群には、試験化合物に使用する担体を投与する。比較対照群に投与する担体の容量は、試験群に投与する担体及び試験化合物の容量と同一である。
【0183】
炎症性疼痛:炎症性疼痛の治療における本開示の化合物の作用を評価するために、炎症性疼痛のフロイント完全アジュバント(「FCA」)モデルを用いる。ラットの後足のFCA誘発炎症は、持続性の炎症性機械痛覚過敏及び熱痛覚過敏の発症と関連しており、臨床的に有用な鎮痛薬の抗痛覚過敏作用の、信頼性のある予測を提供する(Barthoら、Naunyn−Schmiedeberg’s Archives of Pharmacol. 342:666〜670(1990))。損傷の前に、以下に説明するように、足を引っ込める動作の閾値(paw withdrawal threshold)(PWT)を測定することによって、有害な機械刺激に対する反応に関して、または、足を引っ込める動作の潜時(paw withdrawal latency)(PWL)を測定することによって、有害な熱刺激に対する反応に関して、当該動物を評価する(ベースラインPWTまたはPWL)。次いで、各動物の左後足に、50% FCAの50μL足底内注射を投与する。注射の24時間後にPWTまたはPWLを再度評価する(投与前PWTまたはPWL)。次いでラットに、被験化合物または30mg/Kgの正の比較対照化合物(例えば、インドメタシン)のいずれかの単回注射を投与する。その後、投与の1、3、5及び24時間後に、有害な機械または熱刺激に対する反応を測定する(投与後PWTまたはPWL)。各動物に関する、パーセンテージで表した痛覚過敏の回復は以下のように定義される。
【数1】
【0184】
神経因性疼痛:神経因性疼痛の治療に対する被験化合物の作用を評価するために、SeltzerモデルまたはChungモデルを用いることができる。
【0185】
Seltzerモデルにおいては、神経因性疼痛の部分坐骨神経結紮モデルを用いて、ラットにおいて神経因性痛覚過敏を生じさせる(Seltzerら、Pain 43:205〜218(1990))。イソフルラン/O吸入麻酔下で左坐骨神経の部分結紮を実施する。麻酔の誘導に続いて、ラットの左大腿部を剃毛し、坐骨神経を、小切開部を介して大腿部の高い位置で露出させ、共通の坐骨神経から後部二頭筋半腱様筋神経が分岐する点のすぐ遠位側の転子に近い部位において、この坐骨神経から周囲の結合組織を慎重に除去する。7−0絹縫合糸を、3/8湾曲、逆切断ミニ針を用いて当該神経に挿入し、神経の厚さの背側の1/3〜1/2が結紮内に保持されるように、強固に結紮する。創傷を単一の筋縫合糸(4−0ナイロン(バイクリル))及びVetbond組織接着剤を用いて閉鎖する。術後に、創傷領域に抗生物質粉末を振りかける。偽処置ラットは、坐骨神経に処理を行わないこと以外は同一の外科処置を受ける。術後に、動物の体重を計測し、麻酔から回復するまで暖かいパッド上に載置する。次いで、行動試験が開始されるまで、動物を元の飼育ケージに戻す。動物を、手術前(ベースライン)に、次いで薬物またはビヒクルのいずれかの投与の直前、並びにその1、3、及び5時間後に、当該動物の同側(損傷側)の後足に関して、下記のPWTを測定することによって、有害な機械刺激に対する反応に関して評価する。パーセンテージで表した神経因性痛覚過敏の回復は以下のように定義される。
【数2】
【0186】
Chungモデルにおいては、神経因性疼痛の脊髄神経結紮(spinal nerve ligation)(SNL)モデルを用いて、ラットにおいて機械痛覚過敏、熱痛覚過敏、及び接触性アロディニアを生じさせる。イソフルラン/O吸入麻酔下で外科的処置を実施する。麻酔の誘導に続いて、3cmの切開を行い、左の傍脊椎筋をL〜Sの位置で棘突起から分離する。L横突起を1対の小さな骨鉗子で慎重に除去して、L〜L脊髄神経を目視で特定する。左のL(またはL及びL)脊髄神経(複数可)を単離し、絹縫合糸を用いて強固に結紮する。完全に止血したことを確認し、創傷を、ナイロン縫合糸またはステンレス鋼ステープルなどの非吸収性縫合糸を用いて縫合する。偽処置ラットは、脊髄神経(複数可)に処理を行わないこと以外は同一の外科処置を受ける。術後に、動物の体重を計測し、生理食塩水または乳酸リンゲル液の皮下(s.c.)注射を投与し、創傷領域に抗生物質粉末を振りかけ、麻酔から回復するまで暖かいパッド上に載置する。次いで、行動試験が開始されるまで、動物を元の飼育ケージに戻す。動物を、手術前(ベースライン)に、次いで本開示の化合物またはビヒクルを投与する直前、並びにその1、3、及び5時間後に、当該動物の左の後足に関して、下記のPWTを測定することによって、有害な機械刺激に対する反応に関して評価する。動物はまた、下記の有害な熱刺激に対する反応または接触性アロディニアについて評価することもできる。神経因性疼痛に関するChungモデルは、Kimら、Pain 50(3):355〜363(1992)に記載される。
【0187】
接触性アロディニア:動物において、無害な機械刺激に対する感受性を測定し、接触性アロディニアを評価することができる。ラットを、高い位置に置いた底部が金網の試験用ケージに移し、5〜10分間順応させる。一連のフォン・フライ式モノフィラメントを後足の足底面に印加し、当該動物の足を引っ込める動作の閾値を測定する。最初に用いるフィラメントは9.1グラム(対数値0.96)の座屈荷重を有し、これを5回まで印加して、足を引っ込める反応を誘発するかを見る。動物が足を引っ込める反応を示した場合には、一連のフィラメントの中の次に最も軽いものを5回まで印加して、これもまた反応を誘発し得るかを測定することとなる。この操作を、次により軽いフィラメントを用いて、反応がなくなるまで繰り返し、反応を誘発する最も軽いフィラメントの種類を記録する。動物が、初めの9.1グラムのフィラメントから足を引っ込める反応を示さない場合には、あるフィラメントが反応を誘発するまで、重量の大きな次のフィラメントを印加し、このフィラメントの種類を記録する。各動物に対して、全ての時点において3回の測定を行い、平均の足を引っ込める動作の閾値を決定する。試験は薬物投与の前、並びにその1、2、4及び24時間後に行うことができる。
【0188】
機械痛覚過敏:代表的な本開示の化合物を、ラットのSNL誘発機械痛覚過敏モデルにおいて試験することができる。動物において、足への加圧試験を用いて、有害な機械刺激に対する感受性を測定し、機械痛覚過敏を評価する。ラットにおいて、無痛覚計(モデル7200、イタリア国のUgo Basile社より市販)を用い、Stein(Biochemistry & Behavior 31:451〜455(1988))に記載されるようにして、グラムで表して測定した、有害な機械刺激に対して反応する、後足を引っ込める動作の閾値(「PWT」)を測定する。ラットの足を小さな台上に載せ、点状の荷重を最大250グラムまで段階的に印加した。終点を、足を完全に引っ込めた荷重とする。各ラットについて、各時点でPWTを一旦測定する。PWTは損傷した足でのみ測定してもよく、または損傷した足及び損傷していない足の両方で測定してもよい。ラットを、外科的処置の前に試験し、ベースラインの、すなわち正常時のPWTを決定する。ラットを、術後2〜3週、薬物投与の前、並びにその後の種々の時点(例えば、1、3、5及び24時間)で再度試験する。薬物投与後のPWTの増加は、被験化合物が機械痛覚過敏を低減することを示す。
【0189】
抗痙攣活性に関するイン・ビボアッセイ
マウスまたはラットにおいて、静脈内注射、経口投与、または腹腔内注射後に、最大電気ショック発作試験(MES)を始めとする多くの抗痙攣試験のいずれかを用いて、本開示の化合物を、イン・ビボ抗痙攣活性に関して試験することができる。体重15〜20gの間の雄のNSAマウス及び体重200〜225gの間の雄のスプラーグ−ドリーラットにおいて、Ugo Basile ECT装置(モデル7801)を用いて、電流(マウスに対して:50mA、60パルス/秒、パルス幅 0.8ミリ秒、継続時間 1秒、直流;ラットに対して:99mA、125パルス/秒、パルス幅 0.8ミリ秒、継続時間 2秒、直流)の印加により、最大電気ショック発作を誘発させる。マウスは、その背側面のたるんだ皮膚を把持することにより拘束し、生理食塩水を塗布した角膜電極を2つの角膜に対して軽く保持する。ラットは、実験台上で自由に行動させ、耳電極を用いる。電流を印加し、動物を、強直性後肢伸筋反応の発生に関して最大30秒間観察する。強直痙攣は、体の面から90度を超える後肢伸長として定義する。結果は素量的に扱うことができる。
【0190】
医薬組成物
本開示の化合物は、如何なる他の成分も存在しない、そのままの化学物質の形態で哺乳動物に対して投与することができる。本開示の化合物はまた、適宜の薬学的に許容される担体と組み合わされた当該化合物を含有する医薬組成物の一部として、哺乳動物に対して投与することもできる。かかる担体は、薬学的に許容される賦形剤及び助剤より選択することができる。
【0191】
本開示の範囲内の医薬組成物は、本開示の化合物が1種または複数種の薬学的に許容される担体と組み合わされた、全ての組成物を包含する。一実施形態において、本開示の化合物は、その意図する治療上の目的を達成するために有効な量で、該組成物中に存在する。個々のニーズは変化し得るが、各化合物の有効量の最適な範囲の決定は本技術分野の技量の範囲内である。一般的には、本開示の化合物は、特定の障害を治療するために、哺乳動物、例えばヒト、に対して、1日当たり、当該哺乳動物の体重kg当たり約0.0025〜約1500mgの用量、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物の等価の量で、経口で投与することができる。哺乳動物に対して投与される本開示の化合物の有用な経口用量は、当該哺乳動物の体重kg当たり約0.0025〜約50mg、または薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物の等価の量である。筋内注射に関しては、用量は一般的に経口用量の約1/2である。
【0192】
単位経口用量は、約0.01mg〜約1gの本開示の化合物、例えば、約0.01mg〜約500mg、約0.01mg〜約250mg、約0.01mg〜約100mg、0.01mg〜約50mg、例えば、約0.1mg〜約10mgの当該化合物を含んでもよい。上記単位用量は、1日に1回または複数回、例えば、それぞれが約0.01mg〜約1gの当該化合物、あるいは薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物の等価の量を含有する、1錠若しくは複数錠の錠剤またはカプセル剤として投与することができる。
【0193】
本開示の医薬組成物は、本開示の化合物の有益な効果を得ることができる任意の動物に対して投与することができる。かかる動物の中で主要なものは哺乳動物、例えば、ヒト及び愛玩動物であるが、本開示はその様に限定されることを意図しない。
【0194】
本開示の医薬組成物は、その意図する目的を達成する任意の手段によって投与することができる。例えば、投与は、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、鼻腔内、経粘膜、直腸、膣内または口腔経路によって、若しくは吸入によることができる。投与される用量及び投与経路は、特定の対象の状況に応じて、また受容者の年齢、性別、健康状態、及び体重、治療を受ける疾病または障害、もしあれば併用治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質などの因子を考慮に入れて、変化することとなる。
【0195】
一実施形態において、本開示の医薬組成物は、経口投与することができ、錠剤、糖衣錠、カプセル剤または経口液体製剤に製剤される。一実施形態において、上記経口製剤は、本開示の化合物を含む押出多粒子を含む。
【0196】
あるいは、本開示の医薬組成物は直腸投与することができ、坐剤に製剤される。
【0197】
あるいは、本開示の医薬組成物は注射によって投与することができる。
【0198】
あるいは、本開示の医薬組成物は経皮投与することができる。
【0199】
あるいは、本開示の医薬組成物は吸入により、または鼻腔内若しくは経粘膜投与により投与することができる。
【0200】
あるいは、本開示の医薬組成物は膣内経路によって投与することができる。
【0201】
本開示の医薬組成物は、約0.01〜99重量%、好ましくは約0.25〜75重量%の活性化合物(複数可)を含有することができる。
【0202】
ナトリウムチャネルの遮断に対して応答性である障害の治療を必要とする動物における上記障害の治療方法などの本開示の方法は、本開示の化合物との組み合わせにおいて、当該動物に対して第2の治療薬剤を投与することを更に含むことができる。一実施形態において、上記他の治療薬剤は有効量で投与される。
【0203】
上記他の治療薬剤の有効量は当業者に公知である。但し、他の治療薬剤の最適な有効量の範囲を決定することは、熟練者の管理範囲内である。
【0204】
本開示の化合物(すなわち、第1の治療薬剤)及び上記第2の治療薬剤は、相加的に、または、一実施形態において、相乗的に作用することができる。あるいは、第2の治療薬剤は、第1の薬剤が投与されようとする対象である障害または疾病とは別の障害または疾病を治療するために用いることもでき、当該障害または疾病は、本明細書において規定された疾病または障害であってもそうでなくてもよい。一実施形態において、本開示の化合物は、第2の治療薬剤と同時に投与され、例えば、有効量の本開示の化合物及び有効量の第2の治療薬剤の両方を含む単一の組成物を投与することができる。従って、本開示は、本開示の化合物、第2の治療薬剤、及び薬学的に許容される担体の組み合わせを含む医薬組成物を更に提供する。あるいは、有効量の本開示の化合物を含む第1の医薬組成物及び有効量の第2の治療薬剤を含む第2の医薬組成物を同時に投与することができる。別な実施形態において、有効量の本開示の化合物が、有効量の第2の治療薬剤の投与に先立って、またはその後に投与される。この実施形態においては、第2の治療薬剤がその治療効果を発揮している間に本開示の化合物が投与されるか、または、本開示の化合物が障害若しくは疾病を治療するためのその治療効果を発揮している間に第2の治療薬剤が投与される。
【0205】
第2の治療薬は、オピオイド作動薬、非オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症剤、抗偏頭痛剤、Cox−II阻害剤、β−アドレナリン遮断薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗がん剤、嗜癖性障害治療薬、パーキンソン病及びパーキンソン症候群治療薬、不安治療薬、てんかん治療薬、痙攣治療薬、卒中治療薬、掻痒疾病治療薬、精神病治療薬、ALS治療薬、認知障害治療薬、偏頭痛治療薬、嘔吐治療薬、ジスキネジー治療薬、若しくはうつ病治療薬、またはそれらの混合物とすることができる。
【0206】
本開示の医薬組成物は、本開示を考慮すると、それ自体は公知となる方法で、例えば、従来の混合、顆粒化、糖衣錠作製、溶解、押出、または凍結乾燥プロセスを用いて製造される。従って、経口使用のための医薬組成物は、活性化合物を固体賦形剤と混ぜ合わせ、任意選択で得られた混合物を摩砕し、所望であるか必要な場合には適宜の助剤を添加後に、顆粒の混合物を処理して錠剤または糖衣錠の核部分を得ることによって、得ることができる。
【0207】
好適な賦形剤としては、糖類(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール)、セルロース製品、リン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)などの充填剤、並びに、(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、またはジャガイモデンプンを用いた)デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/またはポリビニルピロリドンなどの結合剤が挙げられる。所望であれば、上記のデンプン及び、更にカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸若しくは、アルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、1種または複数種の崩壊剤を添加することができる。
【0208】
助剤は、一般的には、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウム)、及びポリエチレングリコールなどの流動性調節剤及び潤滑剤である。糖衣錠の核部分には、胃液に耐性のある適宜のコーティングが施される。この目的のためには濃厚な糖の溶液を用いることができ、該溶液は任意選択で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及び/または二酸化チタン、ラッカー溶液及び適宜の有機溶媒または溶媒混合物を含んでいてもよい。胃液に耐性のコーティングを製造するためには、アセチルセルロースフタル酸エステルまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステルなどの適宜のセルロース製品の溶液を用いることができる。例えば、識別のため、または活性化合物の服用の組合せを特徴付けるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0209】
経口で使用することができる他の医薬製剤の例としては、ゼラチン製の押込嵌めカプセル、またはゼラチン及びグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤から製造された、軟質で密封されたカプセルが挙げられる。上記押込嵌めカプセルには、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/またはタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに任意選択で安定剤と混合することができる、顆粒の形態の化合物、あるいは押出多粒子の形態の化合物を入れることができる。上記軟質カプセルにおいては、活性化合物は、好ましくは、脂肪油または液体パラフィンなどの適宜の液体中に溶解または懸濁させる。更に、安定剤を添加することができる。
【0210】
直腸投与に対して可能な医薬製剤としては、例えば、坐剤が挙げられ、坐剤は1種または複数種の活性化合物と坐剤基剤との組み合わせから構成される。好適な坐剤基剤としては、とりわけ、天然及び合成のトリグリセリド、及びパラフィン炭化水素が挙げられる。活性化合物と、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素などの基材との組み合わせから構成される、ゼラチン直腸カプセルを使用することもまた可能である。
【0211】
非経口投与に適した製剤としては、例えば、水溶性塩などの水溶性の形態の活性化合物の水溶液、アルカリ性溶液、または酸性溶液が挙げられる。あるいは、活性化合物の懸濁液を油性懸濁液として調製することもできる。かかる懸濁液用の好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)、合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル)、トリグリセリド、またはポリエチレングリコール400(PEG−400)などのポリエチレングリコールを挙げることができる。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/またはデキストランを始めとする、当該懸濁液の粘度を増加させるための1種または複数種の物質を含有してもよい。上記懸濁液は任意選択で安定剤を含有してもよい。
【0212】
以下の実施例は、本開示の化合物、組成物、及び方法を例証するものであって、限定するものではない。本開示に照らして当業者に自明である、臨床治療において通常遭遇する様々な条件及びパラメータの適宜の改変及び適合化は、本開示の趣旨及び範囲内である。
【0213】
[実施例]
(実施例1)
7−クロロ−1−メチル−4−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノキシ)−1H−インダゾール(化合物11)の合成
【化28】
化合物1(4.0g、24.9mmol)のTHF(40mL)溶液に、−78℃でLDA(2M ヘキサン/THF溶液、12.5mL、24.9mmol)を15分かけて滴下により添加した。この混合物を−78℃で更に20分間撹拌し、次いでDMF(2.5mL)を一度に添加した。この混合物を−78℃で10分間撹拌し、次いでAcOH(5mL)及び水(30mL)でクエンチした。この混合物をEtOAcと水との間で分配させた。有機層を分離し、濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜30% EtOAc/ヘキサン)により精製して、2.30g(88%)の化合物2を黄色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 10.42(d,J=1.1Hz,1H),7.55(dd,J=8.8,8.1Hz,1H),6.77(dd,J=9.1,1.4Hz,1H),3.96(s,3H)。
【0214】
100mL丸底フラスコに化合物2(2.28g、12.1mmol)、ヒドラジン(6.20g、193mmol)、及びピリジン(33mL)を仕込んだ。この混合物を100℃で16時間加熱し、次いで水(50mL)及びEtOAc(150mL)を加えた。有機層を分離し、濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜30% EtOAc/ヘキサン)により精製して、2.26g(77%)の化合物3を白色の固体として得た。LC/MS:m/z=184[M+H](計算値:183)。
【0215】
化合物3(15.0g、82mmol)をDMF(100mL)中に溶解させ、この溶液を0℃に冷却し、NaH(60%、3.61g、90mmol)を添加した。室温で30分間撹拌後に、ヨードメタン(12.83g、90mmol)を滴下により添加した。室温で1時間撹拌後、この混合物をEtOAc(200mL)で希釈し、飽和食塩水(100mL)で洗浄し、NaSO上で脱水し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜15% EtOAc/ヘキサン)により精製して、8.80g(55%)の化合物4を白色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 8.03(s,1H),7.22(d,J=8.1Hz,1H),6.37(d,J=8.1Hz,1H),4.39(s,3H),3.95(s,3H)。LC/MS:m/z=198[M+H](計算値:197)。
【0216】
250mL丸底フラスコに化合物4(8.60g、43.7mmol)及び48% HBr(80mL)を仕込み、密封した。この混合物を100℃で20時間加熱した。室温まで冷却後、この混合物を水(100mL)で希釈し、飽和NaOH水溶液でpH6へと中和した。沈殿した固体をろ過及び水洗して、6.58g(82%)の化合物5を淡黄色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.02(s,1H),7.17(d,J=8.1Hz,1H),6.39(d,J=8.1Hz,1H),4.33(s,3H)。LC/MS:m/z=184[M+H](計算値:183)。
【0217】
150mL丸底フラスコに化合物5(6.58g、36mmol)、KCO(12.45g、90mmol)、及び化合物6(5.08g、36mmol)を仕込んだ。この混合物を室温で2日間撹拌した。この混合物をろ過し、ろ液を濃縮した。残渣を水(100mL)及びEtOAc(200mL)で希釈した。有機層を分離し、飽和食塩水(2回)で洗浄し、NaSO上で脱水し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜15% EtOAc/ヘキサン)により精製して、6.55g(60%)の化合物7を黄色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 8.18−8.30(m,2H),7.82(s,1H),7.34(d,J=8.1Hz,1H),7.05−7.15(m,2H),6.70(d,J=8.1Hz,1H),4.45(s,3H)。LC/MS:m/z=305[M+H](計算値:304)。
【0218】
化合物7(4.0g、13.2mmol)のDCM(100mL)溶液に、10% Pd/C(650mg)を添加した。この反応混合物を40psiで1時間水素化した。セライトを通すろ過の後、ろ液を濃縮して3.58g(99%)の化合物8を褐色の固体として得て、これを直接次のステップに用いた。H NMR(400MHz,CDOD):δ 7.92(s,1H),7.23(d,J=8.1Hz,1H),6.88−6.98(m,2H),6.74−6.83(m,2H),6.30(d,J=8.4 Hz,1H),4.37(s,3H)。LC/MS:m/z=275[M+H](計算値:274)。
【0219】
PTSAのACN(100mL)溶液に、室温で化合物8(6.89g、25.2mmol)のACN(40mL)溶液を添加した。この混合物を0℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム(3.47g、50.3mmol)及びKI(9.43g、30.9mmol)の水(20mL)溶液を10分かけて滴下により添加した。得られた茶色の混合物をこの温度で更に10分間撹拌し、次いで室温に加温して3時間撹拌した。この反応混合物を過剰の飽和NaHCO水溶液及びNaSO(10g)で処理し、EtOAcで抽出した。この有機抽出液を飽和食塩水(2回)で洗浄し、NaSO上で脱水し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜5% EtOAc/ヘキサン)により精製して、3.58g(37%)の化合物9を無色の油状物として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.89(s,1H),7.63−7.72(m,2H),7.23(d,J=8.1Hz,1H),6.82−6.90(m,2H),6.48(d,J=8.1Hz,1H),4.43(s,3H)。LC/MS:m/z=386[M+H](計算値:385)。
【0220】
50mL丸底フラスコに化合物9(3.58g、9.3mmol)、KOAc(2.74g、27.9mmol)、化合物10(3.07g、12.1mmol)、Pd(dppf)Cl(760mg、0.93mmol)及びDMF(30mL)を仕込んだ。この反応混合物を脱気し、60℃で終夜加熱した。室温まで冷却後、この混合物をEtOAc(200mL)及び水(50mL)で希釈した。有機層を分離し、飽和食塩水(2回)で洗浄し、NaSO上で脱水し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜10% EtOAc/ヘキサン)により精製して、3.0g(84%)の化合物11を白色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.88(s,1H),7.83(m,2H),7.24(d,J=8.1Hz,1H),7.03−7.10(m,2H),6.52(d,J=8.1Hz,1H),4.43(s,3H),1.37(s,12H)。LC/MS:m/z=386[M+H](計算値:385)。
【0221】
同様の方法で以下の化合物を調製した:
1−メチル−4−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノキシ)−1H−インダゾール(化合物12):LC/MS:m/z=351[M+H](計算値:350)、及び
7−フルオロ−1−メチル−4−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノキシ)−1H−インダゾール(化合物13):LC/MS:m/z=369[M+H](計算値:368)。
【0222】
(実施例2)
(S)−6−((1−アミノ−1−オキソプロパン−2−イル)アミノ)−2−クロロピリミジン−4−カルボキサミド(化合物18)の合成
【化29】
化合物14(34.83g、0.200mol)(アルドリッチ)、オキシ塩化リン(100mL、1.092mol)及び20滴のDMFの混合物を110℃で終夜加熱した。この暗色の混合物を冷却後にヘキサン(500mL)で希釈し、激しく撹拌した。ヘキサン層をデカントし、水(100mL)、飽和食塩水(100mL)で素早く洗浄し、MgSO上で脱水した。有機層をろ過し、減圧下で慎重に留去して、26.13g(62%)の化合物15を明黄色の液体として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.93(s,1H)。
【0223】
化合物15(26.13g、123.6mmol)のEtO(500mL)溶液に、0.5M NHのジオキサン溶液(250mL、125mmol)及びDIPEA(22mL、126mmol)の混合物を50分かけて滴下により添加した。室温で終夜撹拌後、この反応混合物を濃縮して残渣を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(SiO、10〜50% EtOAc/ヘキサン)により精製した。得られた生成物を10mLの10% EtOAc/ヘキサンを用いて粉体化し、ろ過して9.74g(41%)の化合物16を橙色の結晶性固体として得た。H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.40(br s,1H),8.16(br s,1H),8.10(s,1H)。LC/MS:m/z=192.2[M+H](計算値:191.4)。
【0224】
化合物16(4.80g、25.0mmol)のACN(100mL)溶液に、(S)−2−アミノプロパンカルボキサミド塩酸塩(化合物17)(3.18g、25.54mmol)及びDIPEA(9.60mL、55.11mmol)を添加した。この混合物を50℃で終夜加熱し、次いで濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、20〜60% アセトン/ヘキサン)により精製して、4.81g(79%)の化合物18を淡褐色の粉体として得た。LC/MS:m/z=244[M+H](計算値:243)。
【0225】
同様の方法で、(S)−2−クロロ−6−((2−オキソピロリジン−3−イル)アミノ)ピリミジン−4−カルボキサミド(化合物19)を調製した。LC/MS:m/z=256[M+H](計算値:255)。
【0226】
(実施例3)
(S)−2−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−((2−オキソピロリジン−3−イル)アミノ)ピリミジン−4−カルボキサミド(化合物20)の合成
【化30】
25mL丸底フラスコに、化合物11(128mg、0.33mmol)、化合物19(85mg、0.33mmol)、Pd(PPhCl(11.7mg、0.017mmol)及びKCO(217mg、0.66mmol)の5:1 ジオキサン/HO(6mL)溶液を仕込んだ。この反応混合物を脱気し、85℃で16時間加熱した。室温まで冷却後、この反応混合物をDCM(50mL)及びHO(20mL)で希釈した。有機層を分離し、飽和食塩水(20mL)で洗浄し、NaSO上で脱水し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜20% (10% NHOH/MeOH)/DCM)により精製して、40mg(25%)の化合物20を灰色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.25(d,J=8.8Hz,2H),7.86(s,1H),7.45(d,J=8.1Hz,1H),7.36(s,1H),7.28(d,J=8.8Hz,2H),6.79(d,J=8.1Hz,1H),5.16(t,J=9.6Hz,1H),4.41(s,3H),3.48−3.55(m,2H),2.63−2.73(m,1H),2.30−2.44(m,1H)。LC/MS:m/z=478[M+H](計算値:477)。
【0227】
同様の方法で以下の化合物を調製した:
2−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピリミジン−4−カルボキサミド(化合物21):H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 9.11(d,J=5.1Hz,1H),8.65−8.72(m,2H),8.63(br s,1H),7.99(m,2H),7.89(d,J=4.8Hz,1H),7.44(d,J=8.1Hz,1H),7.21−7.29(m,2H),6.68(d,J=8.1Hz,1H),4.35(s,3H)。LC/MS:m/z=380[M+H](計算値:379)、
6−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリンアミド(化合物22):H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.30−8.37(m,1H),8.17−8.24(m,2H),8.02−8.09(m,2H),7.79(s,1H),7.31(d,J=8.1Hz,1H),7.16−7.22(m,2H),6.61(d,J=8.1Hz,1H),4.30(s,3H)。LC/MS:m/z=379[M+H](計算値:378)、
4−クロロ−6−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリノニトリル(化合物23):LC/MS:m/z=395[M+H](計算値:394)、
(S)−6−((1−アミノ−1−オキソプロパン−2−イル)アミノ)−2−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピリミジン−4−カルボキサミド(化合物24):H NMR(400MHz,CDOD):δ: 8.26(m,2H),7.78(d,J=2.0Hz,1H),7.40(s,1H),7.16−7.25(m,3H),6.80(dd,J=8.4,2.9Hz,1H),4.84(q,J=7.0Hz,1H),4.25(s,3H),1.63(d,J=7.3Hz,3H)。LC/MS:m/z=450[M+H](計算値:449)、
(S)−2−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−((2−オキソピロリジン−3−イル)アミノ)ピリミジン−4−カルボキサミド(化合物25):H NMR(400MHz,CDOD):δ: 8.20(m,2H),7.76(d,J=2.2Hz,1H),7.33(s,1H),7.18−7.23(m,2H),7.13−7.17(m,1H),6.78(dd,J=8.4,2.9Hz,1H),5.13(t,J=9.6Hz,1H),4.23(s,3H),3.45−3.52(m,2H),2.60−2.71(m,1H),2.28−2.42(m,1H)。LC/MS:m/z=462[M+H](計算値:461)、及び
(S)−2−(4−((1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−((2−オキソピロリジン−3−イル)アミノ)ピリミジン−4−カルボキサミド(化合物26):H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.25(m,2H),7.90(s,1H),7.47−7.57(m,2H),7.35(s, 1H),7.27(d,J=8.8Hz,2H),6.84−6.91(m,1H),5.16(t,J=9.6Hz,1H),4.14(s,3H),3.48−3.54(m,2H),2.62−2.73(m,1H),2.30−2.43(m,1H)。LC/MS:m/z=444[M+H](計算値:443)。
【0228】
(実施例4)
メチル2−クロロ−6−ビニルピリミジン−4−カルボキシレート(化合物29)の合成
【化31】
250mL丸底フラスコに化合物27(10.0g、48.3mmol)、化合物28(8.93g、58.0mmol)、NaCO(10.24g、97.0mmol)及びPd(dppf)Cl(3.94g、4.83mmol)の1:1 ジオキサン/水(90mL)溶液を仕込んだ。この反応混合物を脱気し、90℃で24時間加熱した。室温まで冷却後、この反応混合物をEtOAc(150mL)及び水(50mL)で希釈した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄し、NaSO上で脱水し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜20% EtOAc/ヘキサン)により精製して、2.70g(28%)の化合物29を白色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.06(s,1H),6.84−6.96(m,1H),6.70(dd,J=17.4,0.9Hz,1H),5.91(dd,J=10.8,0.9Hz,1H),4.02(s,3H)。LC/MS:m/z=199[M+H](計算値:198)。
【0229】
同様の方法で以下の化合物を調製した:
6−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−4−ビニルピコリノニトリル(化合物30):LC/MS:m/z=387[M+H](計算値:386)、及び
6−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−4−ビニルピコリノニトリル(化合物31):LC/MS:m/z=371[M+H](計算値:370)。
【0230】
(実施例5)
2−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−ビニルピリミジン−4−カルボキサミド(化合物33)の合成
【化32】
100mL丸底フラスコに、化合物11(2.0g、5.2mmol)、化合物29(1.03g、5.2mmol)、NaCO(1.1g、10.4mmol)及びPd(dppf)Cl(212mg、0.26mmol)の5:1 ジオキサン/水(40mL)溶液を仕込んだ。この反応混合物を脱気し、100℃で30時間加熱した。室温まで冷却後、この反応混合物を、1N HCl水溶液を用いることによってpH約4に調節した。この混合物をMeOH(50mL)及びDCM(120mL)で希釈し、ろ過した。ろ液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜15% (10% NHOH/MeOH)/DCM)により精製して、420mg(20%)の化合物32を淡黄色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.67(d,J=8.8Hz,2H),7.93(s,1H),7.78(s,1H),7.37(d,J=8.1Hz,1H),7.20(d,J=8.8Hz,2H),6.93(dd,J=17.4,10.8Hz,1H),6.59−6.70(m,2H),5.77(d,J=11.4Hz,1H),4.41(s,3H)。LC/MS:m/z=407[M+H](計算値:406)。
【0231】
化合物32(99mg、0.243mmol)のDMF(10mL)溶液に、CDI(79mg、0.487mmol)を添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌し、次いでNHOAc(88mg、2.43mmol)を添加した。この反応混合物を室温で終夜撹拌した。EtOAc(100mL)及び水(50mL)で希釈した後、有機層を分離し、飽和食塩水(2回)で洗浄し、NaSO上で脱水し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜15% (10% NHOH/MeOH)/DCM)により精製して、44mg(45%)の化合物33を淡黄色の固体として得た。LC/MS:m/z=406[M+H](計算値:405)。
【0232】
(実施例6)
(S)−2−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−6−(1,2−ジヒドロキシエチル)ピリミジン−4−カルボキサミド(化合物34)の合成
【化33】
化合物33(40mg、0.1mmol)をt−BuOH(10mL)中に懸濁させ、室温で30分間撹拌し、次いで水(10mL)を添加した。この反応混合物を0℃に冷却し、次にAD−mix−α(200mg)を一度に添加した。室温まで加温後、この反応混合物を終夜撹拌した。過剰のNaSO(100mg)によりクエンチ後、混合物をDCM(100mL)で抽出した。有機抽出液をNaSO上で脱水し、ろ過し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜10% (10% NHOH/MeOH)/DCM)により精製して、12mg(27%)の化合物34を白色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.50−8.57(m,1H),8.06(s,1H),7.78(s,1H),7.26(d,J=8.1Hz,1H),7.07−7.14(m,1H),6.55(d,J=8.1Hz,1H),4.29(s,2H),3.91(dd,J=11.3,3.9Hz,1H),3.78(dd,J=11.3,5.8Hz,1H)。LC/MS:m/z=440[M+H](計算値:439)。
【0233】
同様の方法で以下の化合物を調製した:
【化34】
(S)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)−6−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリノニトリル(化合物35):LC/MS:m/z=405[M+H](計算値:404)、
(R)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)−6−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリノニトリル(化合物36):LC/MS:m/z=405[M+H](計算値:404)、及び
(S)−6−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)ピコリノニトリル(化合物37):LC/MS:m/z=421[M+H](計算値:420)。
【0234】
(実施例7)
(S)−6−(4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)ピコリンアミド(化合物38)の合成
【化35】
マイクロ波反応バイアルに、化合物37(50mg、0.12mmol)及びヒドリド(ジメチル亜ホスフィン酸−KP)白金(II)(4mg、0.0094mmol、J&K Scientific有限会社)のEtOH(6mL)及び水(1mL)の溶液を仕込んだ。この混合物をマイクロ波反応装置(Milestone MicroSYNTH)内で、100℃で1時間加熱した。室温まで冷却後、混合物をSiO上に吸収させ、フラッシュクロマトグラフィー(SiO、0〜10% MeOH/DCM)により精製して、35mg(67%)の化合物38を白色の発泡物として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.23−8.28(m,2H),8.11(s,2H),7.91(s,1H),7.36(d,J=8.1Hz,2H),7.21−7.26(m,1H),6.62(d,J=8.1Hz,1H),4.85(s,1H),4.41(s,3H),3.70−3.81(m,2H)。LC/MS:m/z=439[M+H](計算値:438)。
【0235】
同様の方法で以下の化合物を調製した:
(S)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)−6−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリンアミド(化合物39):H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.20−8.26(m,2H),8.10(m,2H),7.82(d,J=2.0Hz,1H),7.16−7.21(m,2H),7.10(dd,J=11.6,8.3Hz,1H),6.64(dd,J=8.4,2.9Hz,1H),4.84−4.87(m,1H),4.25(s,3H),3.69−3.80(m,2H)。LC/MS:m/z=423[M+H](計算値:422)、及び
(R)−4−(1,2−ジヒドロキシエチル)−6−(4−((7−フルオロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)フェニル)ピコリンアミド(化合物40):H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.20−8.26(m,2H),8.10(m,2H),7.82(d,J=2.0Hz,1H),7.16−7.21(m,2H),7.10(dd,J=11.6,8.3Hz,1H),6.64(dd,J=8.4,2.9Hz,1H),4.84−4.87(m,1H),4.25(s,3H),3.69−3.80(m,2H)。LC/MS:m/z=423[M+H](計算値:422)。
【0236】
(実施例8)
実施例1〜7において記載した合成手順及び上記概括的スキームに示した手順と同様の方法で、以下の化合物も調製した:
5−クロロ−4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)−2−フルオロ−N−(1,3,4−チアジアゾール−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(化合物41):H NMR(DMSO−d):δ 14.60(br s,1H),8.83(s,1H),8.08(s,1H),7.99(d,J=7.1Hz,1H),7.42(d,J=8.1Hz,1H),7.23(d,J=10.6Hz,1H),6.70(d,J=8.1Hz,1H),4.34(s,3H)。LC/MS:m/z=474[M+H](計算値:473)。
4−((7−クロロ−1−メチル−1H−インダゾール−4−イル)オキシ)−N−(1,3,4−チアジアゾール−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(化合物42):m/z=422.0[M+H](計算値:421.0)。
【0237】
前述の実施例においては、以下の略記を用いる。
【表3】
【0238】
(実施例9)
代表的な本開示の化合物を、詳細に上述した、ナトリウムチャネル遮断活性に関するFLIPR(登録商標)若しくはFLIPRTETRA(登録商標)アッセイ及び/またはEPアッセイにおいて試験した。
【0239】
上記アッセイより得られた代表的な値を表3に示す。
【表4】
【0240】
ここまで本開示を十分に記載してきて、当業者には、条件、処方及び他のパラメータの広範且つ等価な範囲内で、本開示またはそのいずれかの実施形態の範囲に影響を与えることなく、同様のことを実施することが可能であることが理解されよう。
【0241】
明細書の考察及び本明細書に開示の発明の実施より、本開示の他の実施形態が当業者には明らかとなろう。明細書及び実施例は例示的であるに過ぎず、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0242】
本明細書に引用した全ての特許及び刊行物は、参照によりそれらの全てが完全に組み込まれる。