(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337129
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】噴霧乾燥機器内のノズル装置を清浄化する方法、及びその方法を実施する噴霧乾燥機器
(51)【国際特許分類】
F26B 17/10 20060101AFI20180528BHJP
B05B 1/12 20060101ALI20180528BHJP
B05B 1/30 20060101ALI20180528BHJP
B05B 15/50 20180101ALI20180528BHJP
【FI】
F26B17/10 B
B05B1/12
B05B1/30
B05B15/02
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-548414(P2016-548414)
(86)(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公表番号】特表2016-536563(P2016-536563A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】DK2013050336
(87)【国際公開番号】WO2015055204
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】516114569
【氏名又は名称】ゲーエーアー プロセス エンジニアリング アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ウルレク ニルスン
(72)【発明者】
【氏名】トマス フィルホルム
(72)【発明者】
【氏名】トローオルス オー.ヨズ.ペー.ベルウ
(72)【発明者】
【氏名】トマス ビロム イェンスン
【審査官】
長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/028105(WO,A2)
【文献】
特開2001−000162(JP,A)
【文献】
実開昭53−037964(JP,U)
【文献】
特開2004−174481(JP,A)
【文献】
特開2012−024682(JP,A)
【文献】
実開平07−025901(JP,U)
【文献】
特開2006−000769(JP,A)
【文献】
特開2002−038046(JP,A)
【文献】
特開平11−128796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/10
B05B 1/12
B05B 1/30
B05B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧乾燥機器のノズル装置を操作中に清浄化する方法であって、
乾燥チャンバ(2)を備えた噴霧乾燥機器(1)を用意し、
前記乾燥チャンバ(2)内に挿入されてフィード物入口とフィード物出口とを有する少なくとも2つの圧力ノズル装置(4)を用意し、
各ノズル装置(4)の前記フィード物入口へ液状フィード物を、該液状フィード物を霧化するための所定の圧力で供給するためのフィード物導管(51)を用意し、
少なくとも1つのノズル装置(4)を清浄化するシステム(7)を用意し、
操作中に清浄化されるべき前記ノズル装置(4)に対するフィード物供給を停止し、
前記ノズル装置(4)を前記乾燥チャンバ(2)から取り外す一方で、前記乾燥チャンバ内に存在する残りのノズル装置を通して霧化を行うことにより前記噴霧乾燥機器の操作を続行するとともに、
前記ノズル装置(4)を、清浄化する前記システム(7)内で清浄化する
工程を含み、
フィード物供給が停止された後、前記ノズル装置が前記乾燥チャンバから取り外される前に、前記ノズル装置(4)が、
i) 所定のフィード物供給圧力と同じ圧力で液体を前記ノズル装置のフィード物入口へ供給すること、
ii) 少なくとも16bar(1.6MPa)の圧力で加圧空気又はガスを前記ノズル装置の前記フィード物入口へ供給すること、
iii) 前記ノズル装置の前記フィード物入口から吸引力を加えること、及び
iv) 前記ノズル装置の前記フィード物出口と同軸的に付加的な加圧空気流又はガス流を加えること
から選択された方法工程によってフィード物を排出される、噴霧乾燥機器のノズル装置を操作中に清浄化する方法。
【請求項2】
前記方法が、前記乾燥チャンバ内の他のノズル装置の操作を妨害することなしに前記ノズル装置(4)を前記乾燥チャンバ(2)内に再挿入するさらなる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ノズル装置の別のサブセットに対するフィード物供給が清浄化のための排出及び取り外しのために停止されるのと同時に、清浄化されて前記乾燥チャンバ(2)内へ再挿入された前記ノズル装置(4)について前記フィード物供給の停止が解除される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程i)が第1の所定の時間にわたって適用され、続いて、前記フィード物中の溶媒の量に相当する量で前記液体を第2の所定の時間にわたって供給するさらなる工程が実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程i)の液体が水である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記所定のフィード物供給圧力、及び工程i)の前記圧力が100〜250bar(10MPa〜25MPa)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法工程ii)が少なくとも30bar(3MPa)で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法工程iii)が、少なくとも2.5kPaの、前記乾燥チャンバ内の圧力に対する負圧で実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
方法工程iv)が少なくとも0.5bar(50kPa)の圧力で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
同じ空気源又はガス源が前記ノズル装置のフィード物入口に供給を行い、且つ前記フィード物出口と同軸的に付加的な加圧空気又は加圧ガスを供給する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数の群(104,204,304)を成す複数のノズル装置を用意する工程を含み、前記群が相次いで順次に清浄化される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
噴霧乾燥機器(1)であって、
乾燥チャンバ(2)と、
空気分散器(3)と、
少なくとも2つの圧力ノズル装置(4)と、
フィードシステム(5)と、
フィード物排出システム(6)と、
清浄化システム(7)と
を含み、
前記フィード物排出システム(6)が、ポンプ(60)と、加圧空気源又は加圧ガス源(61)と、導管(62)とを含む、フィード物を排出する手段を含み、操作中に清浄化されるべき少なくとも1つのノズル装置(4)についてフィード物供給を停止した後、他のノズル装置(4)における霧化が維持されることにより、前記ノズル装置(4)に残っている前記フィード物の完全な霧化が達成されるように、前記噴霧乾燥機器が、前記フィードシステム(5)から前記フィード物排出システム(6)への切り換えを可能にする少なくとも1つの弁(45,53,63,64,65,66)を含むことを特徴とする、噴霧乾燥機器。
【請求項13】
前記フィードシステム(5)が、液状フィード物を前記少なくとも1つのノズル装置(4)へ送出する高圧ポンプ(50)を含み、前記噴霧乾燥機器がさらに、フィード物又は加圧空気又は加圧ガスの通過を可能にする弁(45)を含む、請求項12に記載の噴霧乾燥機器。
【請求項14】
前記フィード物排出システムが一方向弁(63)と、ドレン弁(64)と、逆止弁(65)と、加圧空気又は加圧ガスへの切り換えを可能にするためのさらなる弁(66)とを含む、請求項13に記載の噴霧乾燥機器。
【請求項15】
前記ノズル装置が複数の群(104,204,304)を成す複数のノズル装置として設けられている、請求項12から14のいずれか一項に記載の噴霧乾燥機器。
【請求項16】
前記清浄化システム(7)が、一度に1つのノズル装置群を収容するように構成されている、請求項15に記載の噴霧乾燥機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧乾燥機器のノズル装置を操作中に清浄化する方法であって、乾燥チャンバを備えた噴霧乾燥機器を用意し、乾燥チャンバ内に挿入されてフィード物入口とフィード物出口とを有する少なくとも1つの圧力ノズル装置を用意し、各ノズル装置のフィード物入口へ液状フィード物を、液状フィード物を霧化するための所定の圧力で供給するためのフィード物導管を用意し、少なくとも1つのノズル装置を清浄化するシステムを用意し、操作中に清浄化されるべきノズル装置に対するフィード物供給を停止し、少なくとも1つのノズル装置を乾燥チャンバから取り外すとともに、ノズル装置を清浄化システム内で清浄化する工程を含む、噴霧乾燥機器のノズル装置を操作中に清浄化する方法に関する。本発明はさらに噴霧乾燥機器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような噴霧乾燥機器において、霧化された液状フィード物と乾燥空気又はガスとを接触させることにより、液体生成物を粉末生成物に変化させる。乾燥は乾燥チャンバ内で行われる。乾燥チャンバ内で、乾燥空気は霧化されたフィード物と接触させられる。霧化は、1つ又は2つ以上のノズル、又は他の形態のアトマイザ、例えば回転アトマイザによって行われる。乾燥空気は、乾燥チャンバの頂部に、又はその近くに位置決めされた空気分散器を介して乾燥チャンバに入る。このような乾燥システム内にはさらなる乾燥手段、例えば流動床が設けられていてもよい。同じ液状フィード物、又は複数の異なる液状フィード物を乾燥させるために、同一の噴霧乾燥機器を利用することができる。
【0003】
噴霧乾燥機器の部分は定期的なインターバルで、例えば所定の清浄化スケジュールに従って清浄化する必要がある。定期的な清浄化は政府規制、及び/又は製造仕様書によって定められた要件を満たすために必要である。このような清浄化は生成物の劣化、汚染、及び構成部分内の堆積物の形成を回避するのに適したインターバルで行われる。清浄化をいわゆる現場清浄化(Cleaning-In-Place: CIP)システムによって行うことにより、清浄化に必要な時間をできる限り短くし、構成部分の分解をできる限り少なくする。清浄化流体は水、又は場合によっては水と適宜な洗剤又は清浄化剤とが交互に使用される。いくつかの目的では、さらなる滅菌プロセスとの組み合わせでCIPが用いられることがある。CIP後には、システムの乾燥が行われる。
【0004】
乾燥チャンバのような構成部分、及び噴霧乾燥プラントの部分を形成する他のユニット、例えばサイクロン、バグフィルタ、流動床チャンバ、プロセスチャンバ、コンテナ、タンク、ダクト、又は任意の類似の容器が、チャンバ又は容器自体内に清浄化流体を分配する清浄化ノズルによって清浄化される。液体の霧化のためにノズルを利用する噴霧乾燥機器内で、清浄化のために乾燥チャンバからノズルを取り外し、乾燥チャンバの頂部のCIPスタンドに置くことにより、ノズル、ノズルランス、及び上流側のフィード管を清浄化する。噴霧乾燥機器全体の清浄化は通常、休止時に行われるが、しかし機器の部分は操作中にもCIPで清浄化される。
【0005】
アトマイザノズルは主に2つのカテゴリ、すなわち圧力ノズル及び二流体ノズルを含む。上記タイプの組み合わせを含む他のタイプのノズルも数多く存在する。圧力ノズルの場合、液状フィード物は高い圧力で供給されるのに対して、二流体ノズル霧化は、液状フィード物に衝突する高速圧縮空気/ガスによって空気圧式に達成される。二流体ノズルは、流動特性が剪断とともに速度の急上昇をもたらすような生成物に適している。このような生成物は通常、圧力ノズル内の霧化は適しておらず、二流体ノズル内でうまく取り扱われる。二流体ノズル内では、極めて低い剪断応力を加えることによって霧化が達成される。二流体ノズル内の霧化のための運動エネルギーは圧縮空気によって供給され、従って二流体ノズルの適用は圧縮空気の生成コストにより限定される。
【0006】
ここで圧力ノズルについて述べるならば、清浄化中に、例えば清浄化スケジュールの1工程として、場合によってはそれぞれのノズルランスに取り付けられた、典型的には例えば4〜12本のノズルから成る群を成すノズルを乾燥チャンバから取り外し、乾燥チャンバの頂部のCIPスタンドに置く。ノズル群、すなわち操作中のノズル総数のうちのサブセットを取り外す前に、ノズルへの液状フィード物の供給を、例えばフィード物のための供給弁を切り換えることによってストップさせ、ノズル、ノズルランス、及び上流側のフィード物供給管をパージ空気又はガスでフラッシュすることにより、これらからフィード物を排出する。清浄化処置に続いて、ノズルを乾燥チャンバ内に再挿入し、フィード物の供給を再開する。典型的にはこれら全ては制御システムによって制御する。次いでこのルーティンをノズルの別のサブセットに対して行う。ノズル群のこのような切り換えプロセスにかかる時間は、噴霧乾燥機器のサイズ、タイプ、及び関与するフィード物に応じて、典型的には最大30分である。ノズル群の清浄化は例えば典型的には、関連の蒸発器及び/又は他のフィード物処理設備の上流側の清浄化によって決定し、これに関連づけることができる。
【0007】
このような切り換え処置及び清浄化処置は申し分なく機能するものの、時間の経過とともに、噴霧乾燥機器の部分、具体的には乾燥チャンバ内部の側壁及び上壁における堆積物の形成及び蓄積が不可避であることが判っている。このようなものとして堆積物は数多くの視点から、具体的には清浄化、生成物品質、容量、及び過熱に関して不都合である。
【0008】
従って、一例が出願人の国際公開第93/23129号パンフレット(商業製品はJET SWEEP(登録商標)という名称で取引されている)に示されている、堆積物の形成を低減しようという試み、また例えば操作中に赤外線カメラによって噴霧乾燥機をモニタリングする出願人の国際公開第2011/063808号パンフレットに示されているような、堆積物を検出する操作を調査しようという試みが為されている。
【0009】
とはいえ、上記刊行物はいくつかの利点をもたらしはするものの、堆積物の回避又は低減の問題はなおも極めて重要である。
【0010】
また弁が組み込まれた圧力ノズルが知られているが、しかし上述の目的にとって一連の欠点を有している。これら欠点により、このようなノズルは食品又は医薬品の噴霧乾燥プロセスにおける多くの目的のために選択されなくなる。上記欠点は例えば、機能及び密閉性に関する信頼性、CIP可能性、及び摩耗部分から摩耗片が生成物内へ放出される危険である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような背景において、本発明の目的は、堆積物形成のリスクが軽減される、冒頭で述べた種類の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様において、この目的及びさらなる目的は、噴霧乾燥機器のノズル装置を操作中に清浄化する方法であって、
乾燥チャンバを備えた噴霧乾燥機器を用意し、
乾燥チャンバ内に挿入されてフィード物入口とフィード物出口とを有する少なくとも1つの圧力ノズル装置を用意し、
各ノズル装置のフィード物入口へ液状フィード物を、液状フィード物を霧化するための所定の圧力で供給するためのフィード物導管を用意し、
少なくとも1つのノズル装置を清浄化するシステムを用意し、
操作中に清浄化されるべきノズル装置に対するフィード物供給を停止し、
操作中にノズル装置を乾燥チャンバから取り外し、
ノズル装置を清浄化システム内で清浄化する
工程を含み、
フィード物供給が停止された後、ノズル装置が乾燥チャンバから取り外される前に、ノズル装置が、
i) 所定のフィード物供給圧力と概ね同じ圧力で液体をノズル装置のフィード物入口へ供給すること、
ii) 少なくとも16barの圧力で加圧空気又はガスをノズル装置のフィード物入口へ供給すること、
iii) ノズル装置のフィード物入口から吸引力を加えること、及び
iv) ノズル装置のフィード物出口と同軸的に付加的な加圧空気流又はガス流を加えること
から選択された方法工程によってフィード物を排出される、噴霧乾燥機器のノズル装置を操作中に清浄化する方法によって満たされる。
【発明の効果】
【0013】
フィード物を排出するこのような方法工程を提供することにより、フィード物供給を停止した後にノズル装置及び上流側の設備に残っているフィード物も同様に確実に霧化される。理論に縛られたくはないが、本発明の根底にある原理は、ノズルのフィード物の供給停止後に乾燥チャンバに入るフィード物が噴霧乾燥チャンバの内面に形成される1つの堆積物源となるという認識に基づいている。従来の方法では、このような切り換え中に発生する霧化は不十分である。本発明による方法を用いれば乾燥チャンバに入るフィード物の全てが適切に霧化されるので、壁にフィード物が堆積するリスクは排除されるか、又は少なくとも大幅に軽減される。
【0014】
方法において、「ノズル装置」という用語はノズル自体と、ノズルランスと、個々のノズルに対応する閉鎖弁の下流側にある任意の管とを含むものとして定義される。
【0015】
「加圧空気又はガス」という用語は、目的に適するとともに、規制などと適合する任意のガスを含むように意図される。
【0016】
清浄化方法はプラントのいくつかの部分に関与する清浄化処置全体における1工程としてノズル装置を清浄化するために利用することができるが、乾燥チャンバ内の他のノズル装置の操作を妨害することなしにノズル装置を乾燥チャンバ内に再挿入するさらなる工程を含むことが特に有利である。さらに、ノズル装置の別のサブセットに対するフィード物供給が、清浄化のための排出及び取り外しのために停止されるのと概ね同時に、清浄化されるとともに乾燥チャンバ内へ再挿入されたノズル装置について、フィード物供給が停止解除される、プロセス全体の付加的な効率が得られる。
【0017】
本発明の方法の選択肢i)の場合、方法工程i)が第1の所定の時間にわたって適用され、続いて、フィード物中の溶媒の
量に相当する量で液体を第2の所定の時間にわたって供給するさらなる工程が実施されると有利である。この手段は、乾燥チャンバ内の乾燥条件ができるかぎり一定に維持されることを保証する。それというのも、第1の時間においてフィード物が排出されたあと、乾燥チャンバ内の乾燥空気と溶媒/液体とのバランスが第2の時間において妨げられずに維持されるからである。
【0018】
工程i)の液体は水であることが好ましく、所定のフィード物供給圧力、及び工程i)の圧力は100〜250barであることが好ましい。
【0019】
選択肢ii)の場合、方法工程ii)が少なくとも30bar、好ましくは50bar(5MPa)超で行われる。限界値16barで、供給停止後に、ノズル装置内に残ったフィード物が充分に霧化される。有利な下限値30barで、ノズル出口で「スパッタリング(sputtering)」がほとんど生じることなしにフィード物が排出される。
【0020】
選択肢iii)の場合、方法工程iii)は、少なくとも2.5kPa、より好ましくは少なくとも5kPa、及び最も好ましくは少なくとも10kPaの、乾燥チャンバ内の圧力に対する負圧で実施される。このような負圧を確立する手段は当業者によく知られている。
【0021】
選択肢iv)の場合、方法工程iv)は少なくとも0.5barの圧力で行われる。実際の圧力はフィード速度に応じて選択される。排出中にフィード物を霧化するために必要となる圧力は例えば、1又は3又は5bar、或いは8又は12barであってよい。なお、フィード物出口と同軸的に付加的な加圧空気/ガス流を提供することはフィード物排出段階中にのみ行われる一方、これと同時に適度の圧力が、ノズルにフィード物を導くためにノズル装置に加えられる。このような圧力は、霧化に関して上述した圧力と同じであってよいが、しかしフィード物特性に応じて異なっていてもよい。もちろん、同じ空気/ガス源を両方の目的に使用し得ると構成上好都合となる。この付加流のための供給システムは、本明細書中に提示された他の実施形態の教示内容に従ってよい。
【0022】
大型プラントにおいて特に有利な実施形態では、方法は、複数の群を成す複数のノズル装置を用意する工程を含み、前記群が相次いで順次に清浄化される。
【0023】
別の態様では、噴霧乾燥機器であって、乾燥チャンバと、空気分散器と、少なくとも1つの圧力ノズル装置と、フィードシステムと、フィード物排出システムと、清浄化システムとを含み、フィード物排出システムが、少なくとも1つのノズル装置内で霧化を維持しながらフィード物を排出する手段を含むことを特徴とする、噴霧乾燥機器が提供される。このようにして、ノズル装置内に残ったフィード物が完全に霧化される。
【0024】
目下のところ好ましい実施形態では、フィード物排出システムは、ポンプと、加圧空気/ガス源と、導管とを含み、噴霧乾燥機器は少なくとも1つの弁を含み、弁は、フィードシステムからフィード物排出システムへの切り換えを可能にする。このシステムはフィード物から排出媒体、すなわちここでは加圧空気、又は任意の適宜なガスへの、良好に機能する信頼性の高い切り換えをノズル装置に対して行うのを可能にする。
【0025】
上記実施形態の好ましい発展形では、フィードシステムが、液状フィード物を少なくとも1つのノズル装置へ送出する高圧ポンプを含み、噴霧乾燥機器がさらに、フィード物又は加圧空気/ガスの通過を可能にする弁を含み、フィード物排出システムが一方向弁と、ドレン弁と、逆止弁と、加圧空気/ガスへの切り換えを可能にするためのさらなる弁とを含む。
【0026】
本発明による方法によって清浄化されるべき噴霧乾燥機器内のノズル装置は、原則的には単一のノズル装置を含むことができる。しかしながら通常は、乾燥チャンバ内には少なくとも2つのノズル装置が存在する。本発明は、ノズル装置が複数の群を成す複数のノズル装置として提供される実施形態において特に有利である。
【0027】
この好ましい実施形態のさらなる発展形では、清浄化システムは、一度に1つのノズル装置群を収容するように構成されている。
【0028】
その他の従属請求項から、下記の好ましい実施形態、及び方法を実施するための例の詳細な説明から、さらなる詳細及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における噴霧乾燥機器を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の別の実施形態における噴霧乾燥機器を示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、
図1の実施形態における噴霧乾燥機器を示す概略頂面図である。
【
図4】
図4は、
図2の実施形態における噴霧乾燥機器を示す概略頂面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における乾燥チャンバを内部から示す部分図である。
【
図6】
図6は、噴霧乾燥機器のさらなる実施形態の詳細をより大きいスケールで示す部分断面図である。
【
図7】
図7は、
図6の実施形態のさらなる詳細を、
図6よりも小さなスケールで示す部分側面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示された実施形態に実質的に相応する、噴霧乾燥機器のさらに別の実施形態の詳細を別の角度から示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された噴霧乾燥機器の実施形態の詳細を示す頂面図である。
【
図10】
図10は、本発明のさらに別の実施形態における噴霧乾燥機器のフィードシステムの詳細を示すフローダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、全体的に符号1で表された噴霧乾燥機器の一実施形態が示されている。それ自体周知のように、噴霧乾燥機器1は乾燥チャンバ2と、乾燥チャンバ2の頂部に設けられた空気分散器3とを含んでいる。全体的に符号4で表されたノズル装置の形態を成すアトマイザ手段が、乾燥チャンバの鉛直又は高さ方向に対して所定の角度を成して延びるように、乾燥チャンバ2の上側区分に挿入されている。ノズル装置4は、乾燥チャンバ2の上側区分の周囲に均一に分配された4本のノズル装置4として概略的に示されている。個々のノズル装置4の構成については下でさらに詳述する。
【0031】
これに相応して、
図2及び
図4の実施形態は4本のノズル装置4を含むが、しかしこれらノズル装置は空気分散器3の頂部に位置決めされている。一般に、ノズル装置の位置及び角度は任意であり、申し分のない乾燥が行われるように選択される。種々の実施形態の説明全体を通して、同じ又は類似の機能を有するエレメントには、同一の符号を付ける。
【0032】
図5の実施形態では、ノズル装置4が乾燥チャンバ2内に概ね水平方向に延びるように位置決めされている。
【0033】
さらなる実施形態における噴霧乾燥機器1の上側区分の一部を示す
図6及び
図7を次に参照すると、ノズル装置4は空気分散器3の鉛直方向壁区分を通して乾燥チャンバ2内に挿入され、この場合には空気分散器3にそれぞれのソケット片21を当該角度で結合することにより、鉛直面に対して所定の角度を成して延びている。適宜のシール・ロック手段が設けられていてよい(詳細には図示せず)。
図7に示されているように、この実施形態の場合、噴霧乾燥機器には16本のノズル装置4が設けられている。
【0034】
各ノズル装置4は、ノズルランス42の一方の端部に位置決めされた圧力ノズル41を含んでいる。ノズルランス42の反対側の端部では、ノズル装置4は、液状フィード物の供給のためのフィードシステム(この実施形態を示す
図6及び
図7には示されていない)に結合されたフィード物入口43を備えている。フィードシステムは図示の実施態様では供給管44であり、この供給管は弁を介して上流側のパイプ状フィードシステムに結合されている。ノズル41は、乾燥チャンバ2の内部に向いた端部にフィード物出口(図示せず)を有している。この文脈において、「ノズル装置」という用語は、ノズル自体と、ノズルランスと、個々のノズルに対応する閉鎖弁の下流側にある任意の管とを含むものとして定義される。これらエレメントはさらに下で詳述するようにフィード物を排出され、清浄化される。
【0035】
このようなノズル41の構成はよく知られており、例えばGEA Process Engineering A/Sによって提供されるような商業的に入手可能な圧力ノズルである。ノズルランス42のようなさらなる構成部分、及びブラケット、取り付け装置、シール部材、パイプなどのような付属部品も標準的な設備である。
【0036】
図8及び
図9のさらに別の実施形態では、8本のノズル装置4が空気分散器3の頂部に配置されており、ノズルランス42はフィード物入口43から、乾燥チャンバ2内に位置するノズル41のフィード物出口へ概ね鉛直方向に延びている。
図9に示されているように、フィード物供給管44は、噴霧乾燥機器の全体的に符号5で表されたフィードシステムに結合されている。
【0037】
上記実施形態の噴霧乾燥機器はそれぞれ4本、16本、及び8本のノズル装置4を有する状態で示されている。ノズル装置は原則的にはいかなる構成で配置されていてもよく、典型的には例えば4〜12本のノズル装置から成る群を成して配置されている。ノズル装置群は、清浄化するために相次いで乾燥チャンバから取り外すことができる。
【0038】
図10は、本発明のさらに別の実施形態における噴霧乾燥機器のフィードシステム5の構成の詳細を示すフローダイヤグラムである。ここでは、ノズル装置は3つの群104,204,304を成して配列されている。それぞれの群は9本のノズル装置4を含んでいる。ノズル装置4の1つの群についてのみ詳細に説明する。さらに、全体的に符号7で表された清浄化システムが
図10に示されている。
【0039】
フィードシステム5は、液状フィード物を図示していない供給部から送出する高圧ポンプ50を含んでいる。ポンプ50は、主フィード物導管51を通して、さらに分枝フィード物導管52を通して、群104のうちの4本のノズル装置4から成る部分群へ、つまり
図10で見て左側の部分群へ液状フィード物を送出し、主フィード物導管52からの残りのフィード物を、群104のうちの5本のノズル装置4から成る他方の部分群へ、つまり
図10で見て右側の部分群へ供給する。弁53がノズル装置4の近くでフィード物の供給をオフ・オンにするのを可能にする。供給管44の上流側の端部にはさらなる弁45が設けられており、これによりフィード物又は排出媒体が導管46を通過することができる。排出媒体は
図10に示された実施形態では、下でさらに詳述するように加圧空気、又は任意の適宜なガスである。
【0040】
フィード物の排出中に霧化を維持するために、フィード物排出システム6が設けられている。フィード物排出システムは、ポンプ60と、加圧空気源61と、分枝導管62と、一方向弁63と、ドレン弁64と、逆止弁65とを含んでいる。さらなる弁66により、導管46へ入る流体を、フィード物から加圧空気、又はこの目的に適した任意の他のガスへ切り換えることができる。
【0041】
上記実施形態のいずれかの噴霧乾燥機器の操作中に、霧化されるべき液状フィード物がフィードシステム5から、フィード物供給管44を介してノズル装置4へ供給される。フィード物はフィード物入口43から、ノズルランス42、及びノズル41のフィード物出口を介して乾燥チャンバ2に入る。
【0042】
操作中の清浄化プログラムにおける清浄化工程として、又は1つのフィード物ラインから別のフィード物ラインへフィード物を切り換えることができるように、個々のノズル装置4、又はノズル装置4の群104,204,304を清浄化システム内で清浄化するときには、下記処置が開始される。
【0043】
先ず、清浄化されるべきノズル装置に対してフィード物供給を停止する。清浄化は通常、噴霧乾燥機器を含むプラントの操作中に行われる。個々のノズル、又は1つのノズル装置群全体を取り外す一方で、乾燥チャンバ内に存在する残りのノズル装置を通して霧化を行うことにより噴霧乾燥機器の操作を続行する。ノズル装置は、噴霧乾燥機器の清浄化システム内で清浄化する。
【0044】
フィード物供給が停止された後、少なくとも1つのノズル装置が乾燥チャンバから取り外される前に、ノズル装置が下記選択肢、すなわち:
i) 所定のフィード物供給圧力と概ね同じ圧力で液体をノズル装置のフィード物入口へ供給すること、
ii) 少なくとも16barの圧力で加圧空気又はガスをノズル装置のフィード物入口へ供給すること、
iii) ノズル装置のフィード物入口から吸引力を加えること、及び
iv) ノズル装置のフィード物出口と同軸的に付加的な加圧空気流又はガス流を加えること
のうちの1つから選択された方法工程によってフィード物を排出される。
【0045】
図10を参照すると、工程ii)に基づく排出処置が示されている。
【0046】
なお、圧力値は、当業者によって広く使用されている「bar」、「kPa」、及び「MPa」で表されており、値の変換は技能の範囲に含まれる。
【0047】
1つの群104のノズル装置のフィード物排出、取り外し、及び清浄化に続いて、残りの群の操作を続行しながら乾燥チャンバ内にこの群を再挿入することができ、相応の処置を別の群204又は304に対して行うことができる。これは、群を相次いで順次に清浄化するための予めプログラミングされたスケジュールに従って行うことができる。
【0048】
実施例
圧力ノズル装置によって液状の全乳フィード物を霧化した。下記表1に挙げた種々異なる圧力で方法工程ii)によってノズル装置からフィード物を排出した。その結果を視覚的に評価した。液状フィード物の粘度は48cPであり、固形分は47.3%であった。
【0049】
結果は、利用された圧力に応じて変動した。
【0050】
10barの圧力は霧化をもたらさなかった。
【0051】
16barの圧力は霧化をもたらしたが、しかし僅かに不均一であった。
【0052】
30barの圧力は申し分のない霧化をもたらした。ノズルからの僅かなスパッタが、フィード物排出処置の終了間近に観察された。
【0053】
50〜75barの圧力は申し分のない霧化をもたらす。フィード物排出処置の終了間近に、ノズルからのスパッタは事実上観察されなかった。
【表1】
【0054】
本発明は、上述した図示の実施形態に限定されるものと見なされてはならない。いくつかの変更及び組み合わせが添付の特許請求の範囲内で考えられる。