特許第6337140号(P6337140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティドの特許一覧

<>
  • 特許6337140-二股グラフト装置 図000002
  • 特許6337140-二股グラフト装置 図000003
  • 特許6337140-二股グラフト装置 図000004
  • 特許6337140-二股グラフト装置 図000005
  • 特許6337140-二股グラフト装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337140
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】二股グラフト装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20180528BHJP
【FI】
   A61F2/07
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-560694(P2016-560694)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公表番号】特表2017-509439(P2017-509439A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】US2015022684
(87)【国際公開番号】WO2015153268
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】14/667,883
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/975,688
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】アネット ダン
【審査官】 白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0103587(US,A1)
【文献】 特表2009−538245(JP,A)
【文献】 特表2006−512099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の脚のルーメンを画定する管状の第一の脚のグラフトを有する、第一の分岐と;
第二の脚のルーメンを画定する管状の第二の脚のグラフトを有する第二の分岐であって、前記第二の脚のグラフトは、前記第一の脚のグラフトから間隔を置いて離れており重複していない、第二の分岐と;
主要ルーメンを画定する主要部であって、前記主要部は、第一の部分と、第二の部分と、前記第一の部分及び前記第二の部分の間に延在するサドルとを有する第一の層を含み、前記第一の部分及び前記第二の部分はそれぞれ、前記主要部の外周上に間隔を置いて離れて外周方向に沿った第一の幅を画定する両側端部を有し、前記サドルは、前記第一の脚と前記第二の脚との間の部分に間隔を置いて離れて前記第一の脚と前記第二の脚とを結ぶ方向に沿った第二の幅を画定する両側部を有する、主要部と
を含む、二股グラフトであって、
前記サドルは、前記第一の脚のグラフトと前記第二の脚のグラフトとの間の分岐に沿って延在しており、前記サドルの前記第二の幅は、前記第一の部分及び前記第二の部分のそれぞれの前記第一の幅より小さく、
前記主要部は、近位端と反対側の遠位端とを含み、前記第一の分岐及び前記第二の分岐は、前記主要部の前記遠位端から延在しており、前記主要部の前記近位端が実質的に筒形であり、前記遠位端が実質的に円錐台形である、二股グラフト。
【請求項2】
前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトはそれぞれ、反対側の近位端及び遠位端と、前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分の両方と少なくとも部分的に重複する前記近位端から延在する尾部とを含む、請求項1に記載の二股グラフト。
【請求項3】
前記主要部は、前記近位端から延在する実質的に筒状の部分、並びに前記筒状の部分と前記第一の分岐及び前記第二の分岐との間に延在する円錐台形部分を含む、請求項2に記載の二股グラフト。
【請求項4】
前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトの前記尾部は、それぞれ、前記主要部の前記円錐台形部分に沿って前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分にある、請求項3に記載の二股グラフト。
【請求項5】
前記サドルの前記両側部は、前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトにそれぞれ重複する、請求項1に記載の二股グラフト。
【請求項6】
前記主要部の前記第一の部分及び前記第二の部分のそれぞれの前記側端部が、前記主要部の長軸に対して略平行である、請求項3に記載の二股グラフト。
【請求項7】
前記第一の部分のそれぞれの側部は、前記第二の部分の側部の一つとそれぞれ重なる、請求項6に記載の二股グラフト。
【請求項8】
前記第一の部分及び前記第二の部分はそれぞれ、前記主要部の前記近位端に沿って延在する末端を含み、前記第一の部分及び前記第二の部分の前記末端は、合わせて前記主要部の前記近位端の外周に近似する、請求項1に記載の二股グラフト。
【請求項9】
前記第一の層に重複する第二の層を含む、請求項1に記載の二股グラフト。
【請求項10】
前記第二の層は、前記主要部の周りに実質的に螺旋状に延在する、請求項9に記載の二股グラフト。
【請求項11】
前記主要部は、前記近位端から延在する実質的に筒状の部分と、前記筒状の部分と前記第一の分岐及び前記第二の分岐との間に延在する円錐台形部分とを含み、前記第二の層は、前記筒状の部分のみに沿って延在する、請求項10に記載の二股グラフト。
【請求項12】
前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトはそれぞれ、反対側の近位端及び遠位端と、前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分の両方に少なくとも部分的に重複する前記遠位端から延在する尾部とを含む、請求項11に記載の二股グラフト。
【請求項13】
前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトの前記尾部と、前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分との間の重複が、前記円錐台形部分に沿って延在する、請求項12に記載の二股グラフト。
【請求項14】
請求項2に記載の二股グラフトを製造する方法であって、前記方法は:
主要部、並びに前記主要部の末端から延在する第一の脚及び第二の脚を有するマンドレルを提供することと;
前記マンドレルの前記第一の脚上に第一の脚のグラフトを置くことと;
前記マンドレルの前記第二の脚上に第二の脚のグラフトを置くことと;
前記サドルが分岐に沿って延在し、前記第一の部分及び前記第二の部分が前記マンドレルの前記主要部の両側部に沿って延在するように、第一の層を前記主要部上に置くことと;
前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分を、重なり合う側端部に沿って互いに固定して、主要ルーメンを形成することと;
前記主要ルーメンが前記第一の脚のルーメン及び前記第二の脚のルーメンと流体連結するように、前記第一の脚及び前記第二の脚の尾部を、前記第一の層の重なり合う前記第一の部分及び前記第二の部分に固定することと
を含む、方法。
【請求項15】
前記マンドレルは、実質的に筒状の部分、並びに前記筒状の部分と前記第一の脚及び前記第二の脚との間に延在する円錐台形部分を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マンドレルの前記筒状の部分のみに沿って、前記第一の層上に第二の層を螺旋状に捲回することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の層と、前記第二の層と、重なり合う脚の尾部とを結合する程度に充分な温度まで前記マンドレルを加熱して、得られた二股グラフトを前記マンドレルから除去することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
得られた前記二股グラフトをステント構造体に結合することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腔内ステントグラフト装置に関する。より詳細には、本開示は、ステントグラフト装置の構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
腹部大動脈瘤を処理するための二股ステントグラフト装置は、本技術分野において知られている。そのような装置は管腔内的に供給することができる。12fr(約4mm)以下の小輪郭での送達を可能にする二股ステントグラフト装置を提供することが望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
添付の図面は、本開示の更なる理解を提供するものとして含まれ、本明細書中に取り入れられて一部を構成し、本開示の実施形態を例示し、その記載と共に本開示の原則を説明するのに役立つ。
【0004】
図1図1は、二股グラフト装置の正面立面図である。
【0005】
図2図2は、様々な実施形態による二股グラフト装置の構造に使用される層の平面図である。
【0006】
図3図3は、様々な実施形態による二股グラフト装置の構造を示す。
図4図4は、様々な実施形態による二股グラフト装置の構造を示す。
図5図5は、様々な実施形態による二股グラフト装置の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
当業者であれば、本開示の様々な側面は、意図された機能を発揮するよう構成されたあらゆる方法及び装置によって実現することができることを容易に認識するだろう。言い換えれば、他の方法及び装置は、意図された機能を発揮するよう本明細書に取り入れることができる。本明細書において参照される添付の図面はすべて一定比率で描かれたものではなく、本開示の様々な側面を例示するために誇張されている可能性があり、その点において、図面は限定的なものとして解釈すべきでないこともまた注意すべきである。最後に、本開示は様々な原則及び考えに関連付けて記載されている可能性があるが、しかしながら、本開示は理論に限定されない。
【0008】
この明細書の全体にわたって、及び特許請求の範囲において、用語「遠位(distal)」とは、移植されたとき装置の他の部分よりも血流に対して更に下流にある場所、又は腔内装置(例えばステント−グラフト)の一部を意味する。同様に、用語「遠位に(distally)」とは、血流の方向、又は血流の方向に更に下流を意味する。
【0009】
用語「近位(proximal)」とは、移植されたとき装置の他の部分よりも血流に対して更に上流にある場所、又は腔内装置の一部を意味する。同様に、用語「近位に(proximally)」とは、血流の方向とは反対方向、又は血流の方向から上流を意味する。
【0010】
近位及び遠位との用語に対して更に考慮すれば、本開示は周辺的及び/又は中心的アプローチに限定されないので、本明細書はこれらの用語に関して狭く解釈されるべきでない。むしろ、本明細書に記載の装置及び方法は、患者の解剖学に関して変更及び/又は調整することができる。
【0011】
この明細書の全体にわたって、及び特許請求の範囲において、用語「先導(leading)」は、患者の脈管構造内に挿入され、それを通って進む装置の終端により近い、装置上の相対的な場所を意味する。用語「追従(trailing)」とは、患者の脈管構造の外側に位置する装置の終端により近い装置上の相対的な場所を意味する。
【0012】
本明細書で用いる用語「熱可塑性樹脂」は、熱に暴露したとき軟化し、室温に冷やしたとき元の状態に戻るポリマーを定義する。そのようなポリマーは、熱、又は熱及び圧力を適用することによって、ポリマーの元の状態を著しく分解又は変性することなく軟化し、流れ、又は新たな形状をとることができる。
【0013】
熱可塑性樹脂ポリマーとは対照的に、本明細書において「熱硬化性」ポリマーは、硬化させると不可逆的に凝固する又は「固まる」ポリマーとして定義される。本発明の意味の範囲内において、ポリマーが「熱可塑性樹脂」ポリマーであるか否かの判断は、応力を加えた試料の温度をゆっくり上昇させて変形を見ることによって行うことができる。ポリマーの元の化学的状態が著しく分解又は変性することなく、ポリマーが軟化し、流れ、又は新たな形状をとることができる場合、ポリマーは熱可塑性樹脂であると考えられる。
【0014】
図1を参照すれば、二股グラフト装置10は、近位端14及び反対側の遠位端16を有する、略管状又は筒状の主要部12を含む。主要部12は、外面18と、主要部12の近位端14及び遠位端16の間に長手方向に延在する主要ルーメン22を画定する反対側の内面20とを含む。主要部の遠位端16は略円錐台形である。グラフト装置10は、主要部12の遠位端16から延在し、かつ第一の分岐ルーメン32を画定する、管状又は筒状の第一の脚30を含む。グラフト装置10は、主要部12の遠位端16から延在し、かつ第二の分岐ルーメン42を画定する、管状又は筒状の第二の脚40を含む。第一の分岐ルーメン32及び第二の分岐ルーメン42は、分岐領域24で交差し、主要ルーメン22と流体連結している。
【0015】
様々な実施形態において、例えば図2に示すように、主要部12は、生体適合性材料の第一の層100を含む。第一の層100は、本技術分野において知られている様々な方法によって製造することができる。これらの方法としては、限定されないが、押出、鋳造、スプレーコーティング、浸漬コーティング、及びフィルム舗装が挙げられる。第一の層100は、単一の材料又は複数の材料を含むことができる。材料は、所望の強度、厚み、透過性、可撓性、又は他の特性を生じるよう選択することができる。第一の層100は、同じ又は異なる材料から構成される積層された一連のフィルム層であることができる。積層フィルム層は、熱硬化性又は熱可塑性樹脂接着剤を用いた熱圧着プロセスによって互いに接着することができる。
【0016】
積層フィルム層及び接着剤のための適切な材料としては、ポリマー、例えばナイロン、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、弾性有機ケイ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリアミド、これらの混合物、ブレンド、及びコポリマーが挙げられる。他の適切な材料は、ポリエステルの分類、例えばポリエチレンテレフタレート、例えばDACRON(登録商標)及びMYLAR(登録商標)、及びポリアラミド、例えばKEVLAR(登録商標)、ポリフルオロカーボン、例えば共重合ヘキサフルオロプロピレンを含む及び含まないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(TEFLON(登録商標)又はGORE−TEX(登録商標))、並びに多孔質又は非多孔質ポリウレタンであることができる。
【0017】
他の実施形態において、第一の層は、英国特許第1,355,373号明細書;若しくは1,506,432号明細書、又は米国特許第3,953,566号明細書;4,187,390号明細書に記載されている、PTFEを含む延伸フルオロカーボンポリマー材料を含むことができる。フルオロポリマーの分類に含まれるものとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(ポリピルビニルエーテル)(PFA)とのコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)のホモポリマー及びそのTFEとのコポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリフッ化ビニル(PVF)のコポリマーが挙げられる。
【0018】
更なる適切な材料としては、限定されないが、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン、1−ヒドロペンタフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオルアセトン、ヘキサフルオロイソブチレン、フッ化ポリ(エチレン−コ−プロピレン(FPEP)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン)(PHFP)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)(PCTFE)、ポリ(ビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド−コ−テトラフルオロエチレン)(PVDFTFE)、ポリ(ビニリデンフルオリド−コ−ヘキサフルオロプロペン)(PVDF−HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン)(PTFE−HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ビニルアルコール)(PTFE−VAL)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ビニルアセテート)(PTFE−VAG)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−プロペン)(PTFEP)ポリ(ヘキサフルオロプロペン−コ−ビニルアルコール)(PHFPVAL)、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)(PETFE)、ポリ(エチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン)(PEHFP)、ポリ(ビニリデンフルオリド−コ−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−CTFE)、及びこれらの組み合わせ、並びに米国特許出願公開第2004/0063805号明細書に記載されている更なるポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0019】
更なるポリフルオロコポリマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)が挙げられる。本質的に米国特許出願公開第2006/0198866号明細書、及び米国特許第7,049,380号明細書に記載されているように、PAVEは、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、又はパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)であることができる。他のポリマー及びコポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン−グリコリド、ポリオルトエステル、ポリ無水物;ポリ−アミノ酸;多糖類;ポリホスファゼン;ポリ(エーテル−エステル)コポリマー、例えばPEO−PLLA、又はそれらの混合物、ポリジメチル−シロキサン;ポリ(エチレン−酢酸ビニル);アクリレートベースのポリマー又はコポリマー、例えば、ポリ(ヒドロキシエチルメタアクリル酸メチル)、ポリビニルピロリジノン;フッ化ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン;米国特許出願公開第2004/0063805号明細書に記載のセルロースエステル、並びに任意のポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0020】
個々のフィルム層は、フィルムの表面の一方又は両方に予め適用された接着剤とともに供給することができる。例えば、任意の適切な接着剤をフィルムに被覆し、吹き付け、又はそうでなければ適用することができる。予め適用される適切な接着剤の例は、熱可塑性樹脂FEPである。熱可塑性樹脂接着剤を用いて個々のフィルム層を互いに結合し、積層構造を形成することができる。
【0021】
積層フィルム層は、方向性、例えば第一の軸に沿った高い引張強度と、第二の軸に沿った低い引張強度とを有することができる。これらの方向性強度を用いて、フィルム積層構造体の特定の全体的強度を決定づけることができる。一例として、フィルムのいくつかの層は、単一の軸に方向的に沿った高強度で積層することができる。フィルムは、例えば、互いに90°に配向した個々のフィルム層の高強度の方向性で適用し、その結果2つの異なる軸に沿って平衡のとれた強度を有する積層体にすることもできる。フィルム層間の角度配向は、最終的な積層体の所望の強度配向を生じるよう選択することができる。
【0022】
フィルム積層体厚は、適用したフィルム層の数及び個々のフィルムの厚みによって決定することができる。例えば、積層体の厚みは約0.01mm〜約10mmであることができる。個々のフィルムの厚みは約0.001mm〜約1mmであることができる。様々な実施形態に従うグラフト構造体を以下詳細に記載し、これは、上記厚み範囲のより薄い側に向かう薄いポリマーフィルムを使用して、そのような装置を12fr(約4mm)以下の送達輪郭で送達することを可能にする小輪郭なグラフト装置を作製することを可能にするであろう。
【0023】
再び図2を参照すれば、第一の層100は、第一の部分110と、第一の部分110から間隔を置いて離れた第二の部分120と、第一の部分110及び第二の部分120の間に延在しこれらを相互接続しているサドル130とを含む。第一の部分110は、間隔を置いて離れた側端部112及び114の間で略画定される幅を有し、かつ、側端部112及び114の間に延在する横断方向に延在する端部116と、サドル130との間で略画定される高さを有する、略長方形の領域にわたって延在する。同様に、第二の部分120は、間隔を置いて離れた側端部122及び124の間で略画定される幅を有し、かつ、側端部122及び124の間に延在する横断方向に延在する端部126とサドル130との間で略画定される高さを有する、略長方形の領域にわたって延在する。多くの実施形態において、主要部12の第一の部分110及び第二の部分120を合わせた幅は、主要部12の外周に近似する。第一の部分110及び第二の部分120の横断方向に延在する端部116及び126は、ともに主要部12の近位端14の全体的な外周を画定する。サドル130は、一般に左右対称であり間隔を置いて離れた側部132及び134の間で画定される幅を有する。側部132及び134の間のサドル130の幅は、第一の部分110及び第二の部分120のそれぞれの幅に対して実質的に小さい。第一の部分110及び第二の部分120のそれぞれの幅は、サドル130へ向かってテーパーがついていることができる。
【0024】
様々な実施形態において、第一の層100は、いくつかの異なる種類のフィルム及び熱可塑性樹脂接着剤から構成される、いくつかのフィルム層の積層体であることができる。フィルムは、平坦な基材上、筒状のマンドレル上、又はあらゆる所望の形状の基材上に層状に重ねることができる。層状に重ねたフィルムは、熱可塑性樹脂接着剤を加熱及びリフローすることによって互いに結合し、第一の層を形成することができる。
【0025】
第一の層は、図2の方向ライン140で示すような単一の軸に沿って高い引張強度方向性を有する第一のフィルムの単一の層から作ることができる。次に薄いFEPの第二のフィルムの単一の層を、第一のフィルム上に配置することができる。次に第三のフィルムの単一の層を、第二のフィルム上に配置することができる。第三のフィルムは、低い引張強度方向性(第一の層の高強度軸から約90°に配向)を有することができる。第三のフィルムは、予め適用されたFEPの薄い層と共に供給することができる。第三のフィルムは、第二のフィルムに背を向けて予め適用されたFEPとともに、第二のフィルム上に配置することができる。次に第四のフィルムの単一の層を、第三のフィルム上に配置することができる。第四のフィルムは、低い引張強度方向性(第三の層の低強度軸から約90°に配向)を有することができる。第四のフィルムは、予め適用されたFEPの薄い層と共に供給することができる。第四のフィルムは、第三のフィルムに背を向けて予め適用されたFEPとともに、第三のフィルム上に配置することができる。したがって、最外部の第四のフィルム層は、他のフィルム、部分的に組み立てられた装置、支持フレーム、又は任意の他の所望の部品に接続できるよう外側に向けて予め適用されたFEPの薄い層を有する。
【0026】
様々な実施形態において、第一の層は、高い引張強度の方向が主要部の長軸に関して略整列するように、主要部構造内に取り入れることができる。例えば、図3〜5に図示するように、マンドレル50は、グラフト装置の組立に利用することができる。マンドレル50は、グラフト装置10の二股形態に近似する形状を有する。より具体的には、マンドレル50は、主要部と、主要部の末端から延在する脚部230及び240とを含む。図3に示すように、別々の第一の脚30及び第二の脚40は、マンドレルのそれぞれの脚部230及び240上に造られ、挿入される。それぞれの脚30及び40は、近位端34及び44、並びに反対側の遠位端36及び46を含む。それぞれの脚30及び40は、近位端34及び44から延在する尾部39及び49を含む。尾部39及び49の側部38及び48は、互いに円周方向に間隔を置いて離れており、マンドレル50の両側に窓を画定している。尾部39及び49と、第一の層100とは互いに重なり合う。しかしながら、分岐領域24において、脚30及び40と第一の層100と間の重複は最小化され、又はそうでなければ回避されて、装置10を腔内送達のために凝縮したとき小さな輪郭を促進する。
【0027】
図4を参照すれば、第一の層100がマンドレル50上に適用されている。脚30及び40の尾部39及び49と第一の層100とは互いに重なり合っている。サドル130は、分岐領域24上に中心に置かれ、分岐領域24に沿って延在している。サドル130の側部132及び134は、分岐領域24の両側の脚30及び40を覆う、又は重複することもできる。高い引張強度方向140は、主要部12の長軸13に略整列している。側端部112、122、及び114、124は、マンドレル50に沿って互いに整列している。任意に、側端部112、122、及び114、124は重複することができる。横断方向に延在する端部116及び126は整列して、主要部12の近位端14の外周を画定している。
【0028】
図5を参照すれば、第二の層200は、マンドレル50の主要部領域の周りに螺旋状に、第一の層100上に捲回されている。上記のように、第二の層200は、いくつかの異なる種類のフィルム及び熱可塑性樹脂接着剤から構成される、いくつかのフィルム層の積層体から作ることができる。フィルムは、平坦な基材上、筒状のマンドレル上、又はあらゆる所望の形状の基材上に層状に重ねることができる。層状に重ねたフィルムは、熱可塑性樹脂接着剤を加熱及びリフローすることによって互いに結合し、第二の層を形成することができる。
【0029】
様々な実施形態において、第二の層200は、高い引張強度の捲回方向が、図5の240で示すように、螺旋状の捲回方向に略整列するように、主要部構造に取り入れられることができる。
【0030】
第一の層100、第二の層200、及び脚30、40の尾部39、49が互いに結合するように、図5におけるグラフト装置構造体を、熱可塑性樹脂接着剤が軟化及びリフローする程度に充分な温度に加熱することができる。次に、得られたグラフト構造体をマンドレル50から除去して、ステント構造体に結合して二股グラフト装置10を形成することができる。
【0031】
本開示の精神又は範囲を逸脱することなく、本開示において様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者にとって明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲及び均等物の範囲内である限りにおいて、本開示は、本開示の変更及び変形を包含することが意図されている。以下、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
第一の脚のルーメンを画定する管状の第一の脚のグラフトを有する、第一の分岐と;
第二の脚のルーメンを画定する管状の第二の脚のグラフトを有する第二の分岐であって、前記第二の脚のグラフトは、前記第一の脚のグラフトから間隔を置いて離れており重複していない、第二の分岐と;
主要ルーメンを画定する主要部であって、前記主要部は、第一の部分と、第二の部分と、前記第一の部分及び前記第二の部分の間に延在するサドルとを有する第一の層を含み、前記第一の部分及び前記第二の部分はそれぞれ、間隔を置いて離れて第一の幅を画定する両側端部を有し、前記サドルは、間隔を置いて離れて第二の幅を画定する両側部を有する、主要部と
を含む、二股グラフトであって、
前記サドルは、前記第一の脚のグラフトと前記第二の脚のグラフトとの間の分岐に沿って延在しており、前記サドルの前記第二の幅は、前記第一の部分及び前記第二の部分のそれぞれの前記第一の幅より小さい、二股グラフト。
[2]
前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトはそれぞれ、反対側の近位端及び遠位端と、前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分の両方と少なくとも部分的に重複する前記近位端から延在する尾部とを含む、項目1に記載の二股グラフト。
[3]
前記主要部は、実質的に筒状の部分、並びに前記筒状の部分と前記第一の分岐及び前記第二の分岐との間に延在する円錐台形部分を含む、項目2に記載の二股グラフト。
[4]
前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトの前記尾部は、それぞれ、前記主要部の前記円錐台形部分に沿って前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分にある、項目3に記載の二股グラフト。
[5]
前記サドルの前記両側部は、前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトにそれぞれ重複する、項目1に記載の二股グラフト。
[6]
前記主要部の前記第一の部分及び前記第二の部分のそれぞれの前記側端部が、前記主要部の長軸に対して略平行である、項目3に記載の二股グラフト。
[7]
前記第一の部分のそれぞれの側部は、前記第二の部分の側部の一つとそれぞれ重なる、項目6に記載の二股グラフト。
[8]
前記主要部は、近位端と反対側の遠位端とを含み、前記第一の分岐及び前記第二の分岐は、前記主要部の前記遠位端から延在する、項目1に記載の二股グラフト。
[9]
前記主要部の前記近位端が実質的に筒形であり、前記遠位端が実質的に円錐台形である、項目8に記載の二股グラフト。
[10]
前記第一の部分及び前記第二の部分はそれぞれ、前記主要部の前記近位端に沿って延在する末端を含み、前記第一の部分及び前記第二の部分の前記末端は、合わせて前記主要部の前記近位端の外周に近似する、項目9に記載の二股グラフト。
[11]
前記第一の層に重複する第二の層を含む、項目1に記載の二股グラフト。
[12]
前記第二の層は、前記主要部の周りに実質的に螺旋状に延在する、項目11に記載の二股グラフト。
[13]
前記主要部は、実質的に筒状の部分と、前記筒状の部分と前記第一の分岐及び前記第二の分岐との間に延在する円錐台形部分とを含み、前記第二の層は、前記筒状の部分のみに沿って延在する、項目12に記載の二股グラフト。
[14]
前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトはそれぞれ、反対側の近位端及び遠位端と、前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分の両方に少なくとも部分的に重複する前記遠位端から延在する尾部とを含む、項目13に記載の二股グラフト。
[15]
前記第一の脚のグラフト及び前記第二の脚のグラフトの前記尾部と、前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分との間の重複が、前記円錐台形部分に沿って延在する、項目15に記載の二股グラフト。
[16]
項目2に記載の二股グラフトを製造する方法であって、前記方法は:
主要部、並びに前記主要部の末端から延在する第一の脚及び第二の脚を有するマンドレルを提供することと;
前記マンドレルの前記第一の脚上に第一の脚のグラフトを置くことと;
前記マンドレルの前記第二の脚上に第二の脚のグラフトを置くことと;
前記サドルが分岐に沿って延在し、前記第一の部分及び前記第二の部分が前記マンドレルの前記主要部の両側部に沿って延在するように、第一の層を前記主要部上に置くことと;
前記第一の層の前記第一の部分及び前記第二の部分を、重なり合う側端部に沿って互いに固定して、主要ルーメンを形成することと;
前記主要ルーメンが前記第一の脚のルーメン及び前記第二の脚のルーメンと流体連結するように、前記第一の脚及び前記第二の脚の尾部を、前記第一の層の重なり合う前記第一の部分及び前記第二の部分に固定することと
を含む、方法。
[17]
前記マンドレルは、実質的に筒状の部分、並びに前記筒状の部分と前記第一の脚及び前記第二の脚との間に延在する円錐台形部分を含む、項目16に記載の方法。
[18]
前記マンドレルの前記筒状の部分のみに沿って、前記第一の層上に第二の層を螺旋状に捲回することを含む、項目17に記載の方法。
[19]
前記第一の層と、前記第二の層と、重なり合う脚の尾部とを結合する程度に充分な温度まで前記マンドレルを加熱して、得られた二股グラフトを前記マンドレルから除去することを含む、項目18に記載の方法。
[20]
得られた前記二股グラフトをステント構造体に結合することを含む、項目19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5