(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337144
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】メソ多孔性材料被覆型コバルト系フィッシャートロプシュ合成触媒及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/75 20060101AFI20180528BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20180528BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20180528BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
B01J23/75 M
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J35/10 301G
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-563174(P2016-563174)
(86)(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公表番号】特表2017-521227(P2017-521227A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】CN2015072402
(87)【国際公開番号】WO2015161701
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】201410162615.4
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512244657
【氏名又は名称】武▲漢凱▼迪工程技▲術▼研究▲総▼院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】▲饒▼莎莎
(72)【発明者】
【氏名】宋▲徳▼臣
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲倩▼▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼申▲こー▼
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102836706(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0238442(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101811050(CN,A)
【文献】
特開2008−073687(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0240777(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/046009(WO,A1)
【文献】
特表2015−513449(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0250122(US,A1)
【文献】
特表2008−529784(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0146684(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒であって、触媒は二酸化ケイ素キャリアを含み、
前記二酸化ケイ素キャリアの表面には活性成分のコバルト及び選択的増進剤のジルコニウムが担持され、
前記活性成分のコバルト及び選択的増進剤のジルコニウムの外側には、メソ多孔性材料の外殻層が被覆される
フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項2】
前記メソ多孔性材料の外殻層は、有機化合物の疎水層により被覆される、請求項1のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項3】
前記二酸化ケイ素キャリアは無機シリカゲルである、請求項1又は2のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項4】
前記無機シリカゲルは、150〜350m2/gの比表面積と、3〜50nmの平均孔径と、0.7〜1.7mL/gの孔容積と、20〜200μmの粒径を有する、請求項3のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項5】
前記無機シリカゲルの比表面積は200〜300m2/gであり、前記無機シリカゲルの平均孔径は8〜13nmであり、前記無機シリカゲルの孔容積は0.75〜1.3mL/gであり、前記無機シリカゲルの粒径は40〜150μmである、請求項4のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項6】
前記活性成分のコバルトの含有量は、前記触媒の総重量の10〜25wt%であり、前記選択的促進剤のジルコニウムの含有量は、前記触媒の総重量の5〜10wt%を占める、請求項1又は2のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項7】
前記活性成分のコバルトの含有量は、前記触媒の総重量の15〜20wt%であり、前記選択的促進剤のジルコニウムの含有量は、前記触媒の総重量の5〜8wt%を占める、請求項6のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項8】
前記活性成分のコバルトの含有量は、前記触媒の総重量の20〜25wt%であり、前記選択的促進剤のジルコニウムの含有量は、前記触媒の総重量の8〜10wt%を占める、請求項6のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項9】
前記メソ多孔性材料の外殻層の厚みは、1.8〜13μmである、請求項1又は2のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項10】
前記メソ多孔性材料の外殻層の厚みは、2.0〜6.0μmである、請求項9のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項11】
前記触媒は、150〜400m2/gの比表面積と、2〜40nmの平均孔径と、0.5〜1.4mL/gの孔容積を有する、請求項1又は2のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項12】
前記触媒は、250〜350m2/gの比表面積と、3〜9nmの平均孔径と、0.6〜1.0mL/gの孔容積を有する、請求項11のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒。
【請求項13】
請求項1のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法であって、
1) 二酸化ケイ素キャリアをジルコニウム塩水溶液に含浸させ、12〜24時間熟成させ、70〜120℃で8〜24時間乾燥させ、400〜500℃で3〜12時間か焼することにより、ジルコニウム担持二酸化ケイ素キャリアを生成する工程と、
2) ジルコニウム担持二酸化ケイ素キャリアをコバルト塩水溶液に含浸させ、12〜24時間熟成させ、70〜120℃で8〜24時間乾燥させ、400〜500℃で3〜12時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒を生成する工程と、
3) テンプレートP123をニトリル酸溶液に溶解させ、均一に攪拌し、オルトケイ酸テトラエチルを加え、攪拌を12〜30時間継続することにより、メソ多孔性材料の前駆体溶液を生成する工程と、
4) フィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒をメソ多孔性材料の前駆体溶液に含浸させ、結晶化、洗浄、乾燥、か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成する工程と
を含むフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項14】
更に、5)フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を疎水性有機溶液に含浸させ、3〜12時間密封し、洗浄用有機溶媒を選択してすすぎ、60〜90℃で3〜8時間乾燥させることにより、疎水特性を備えたメソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成する工程を含む、請求項13のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項15】
前記工程1のジルコニウム塩は、硝酸ジルコニウム又は硝酸ジルコニルである、請求項13又は14のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項16】
前記工程2のコバルト塩は、炭酸コバルト又は硝酸コバルトである、請求項13又は14のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項17】
前記工程3において、ニトリル酸溶液の濃度は1〜2mol/Lであり、清澄溶液が生成されるまで、25〜45℃で攪拌し、オルトケイ酸テトラエチルを清澄溶液に加え、12〜24時間継続して攪拌することにより、メソ多孔性材料の前駆体溶液を生成する、請求項13又は14のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項18】
前記工程4において、結晶化は80から130℃で20〜100時間、回転速度7〜20rpmで行われ、洗浄は、中性になるまで、脱イオン水を使って行われ、乾燥は、80〜120℃で10〜20時間行われ、か焼は、400〜550℃で5〜12時間行われる、請求項13又は14のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項19】
前記工程4において、結晶化は90〜120℃で30〜80時間、回転速度7〜15rpmで行われる、請求項18のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項20】
前記工程5において、疎水性有機溶液は、ポリメチルトリエトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、及びトリメチルクロロシランから構成されるグループから選択される、請求項14のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項21】
前記工程5において、洗浄用有機溶媒は、n‐ヘキサン、アセトン及びエタノールから構成されるグループから選択される、請求項14のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【請求項22】
前記工程5において、前記フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒は、疎水性有機溶液に含浸され、3〜8時間密封されてから、洗浄用有機溶媒で2〜3回すすがれる、請求項20のフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用に触媒化されるフィッシャートロプシュ合成の分野に関し、特に、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆型コバルト系触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭、石油、天然ガスは、人類文明の存在と発展が依存する重要なエネルギであり、国家の経済的に持続可能な発展、安全、安定のための防衛手段である。これらのエネルギの継続的な貢献に伴い、エネルギ危機は深刻になり、そのため、科学者は再生可能エネルギを求めることが緊急の課題となっている。中国は巨大な農業国であり、多種多様な多量の再生可能バイオマスを持っている。エネルギ危機を解消するために、化石エネルギを再生可能なバイオマスエネルギに置き換えることは、重要な手段である。
【0003】
フィッシャートロプシュ合成は、バイオマスの合成ガスへのガス化工程と、合成ガス(CO+H
2)を触媒の存在中で炭化水素に変換する工程を含む方法である。バイオマスを合成ガスへ変換するとともに、フィッシャートロプシュ合成により様々な油を生成する方法により、エネルギ危機は有効に解消される。
【0004】
フィッシャートロプシュ合成の基本反応は、CO+2H
2→(-CH
2-)+H
2Oである。炭化水素の生成に伴い水が生じるので、スラリー床などの後混合を採用している反応器では、水の濃度が非常に高い。現在、フィッシャートロプシュ合成に最も広く適用されている産業化された触媒は、鉄及びコバルトを活性成分として採用している。フィッシャートロプシュ合成用コバルト系触媒では、金属コバルトが触媒の活性成分であり、生じた水により酸化、非活性化される可能性があり、合計生成量の50wt%を占める。また、COの変換率が高くなるにつれて、非活性化はより深刻になる。例えば、非特許文献1によれば、水は担持されていないコバルト系触媒を非活性化する。なぜなら、高圧(>0.4MPa)の水により触媒が容易に焼結してしまい、コバルトの比表面積が減少し、金属の活性化が低減し、或いは、触媒表面でのCOの吸収が低減する。非特許文献2もまた、水蒸気により非担持触媒の焼結速度が増加すると報告している。コバルト系触媒は比較的生産費用が高く、触媒には高い安定性、活性及び選択性が求められることから、水に反応しない触媒を調製することが必要である。
【0005】
特許文献1では、酸化キャリアを含むコバルト系触媒を開示している。酸化キャリアはアルミニウムと、0.01〜20wt%のリチウムを含み、このリチウムは、アルミン酸リチウムの形態で存在する。このアルミン酸リチウムを含有するキャリアは、耐水性を改善し、ジアルミニウムコバルトテトラオキシドの形成を低減させ、また、高い活性とC
5+選択性を持つようにする。しかし、キャリアの調製は難しく、また、700〜1000℃で長時間か焼される必要がある。
【0006】
特許文献2は、合成ガスにより中間留分を合成するための触媒を開示している。この触媒はキャリアとしてメソ多孔性二酸化ジルコニウムを採用する。触媒は、5〜35wt%の金属コバルトと、0〜2wt%の貴金属と、0〜10wt%の非貴金属酸化物を含む。触媒は活性が高く、安定性がよく、11から20個の炭素を含む炭化水素の選択性が高く、機械特性が良好である。しかし、メソ多孔性二酸化ジルコニウムの調製は、複雑且つ高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許公開第101203304A号公報
【特許文献2】中国特許公開第1785515A号広報
【0008】
【非特許文献1】Bertole, et al., (J. Catal., 2002, 210:84-96)
【非特許文献2】Batholomew (Appl. Catal. A, 2001, 212.17-60)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の課題に鑑み、本発明の目的は、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒及びその調製方法を提供することにある。触媒は耐用寿命が長く、安定性が良く、外殻層の厚みを制御可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明の一実施形態に係り、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を提供する。触媒は
二酸化ケイ素キャリアを含む。
二酸化ケイ素キャリアの表面には活性成分のコバルト及び選択的増進剤のジルコニウムが担持される。活性成分コバルト及び選択的増進剤のジルコニウムの外側には、メソ多孔性材料の外殻層が被覆される。
【0011】
本発明の触媒は、先ず、
含浸により
二酸化ケイ素キャリアの表面に活性成分を担持させ、通常の孔導管を有するメソ多孔性材料を活性成分の外側に被覆させ、その間、メソ多孔性材料の外殻の厚みは、パラメータを変化させることにより制御可能である。メソ多孔性材料の外殻層の厚みは、1.8〜13μm、好適には2.0〜6.0μmとなるように構成される。従って、メソ多孔性材料の外殻層は、孔導管の内部で活性成分を包囲することにより、活性成分の凝集や脱粒を阻止すると同時に、メソ多孔性材料の通常の孔導管により、CO及びH
2の物質移動導管を提供し、触媒の高活性を確実にする。
【0012】
好適には、反応工程又は移動工程での活性成分の脱粒により、触媒の活性が低下するのを阻止するために、また、反応で生じる水により活性金属Coが酸化や非活性化されるのを阻止するために、メソ多孔性材料の外殻層は、有機化合物の疎水層で被覆される。
【0013】
好適には、
二酸化ケイ素キャリアは無機
シリカゲルである。
【0014】
好適には、無機
シリカゲルは、150〜350m
2/gの比表面積と、3〜50nmの平均孔径と、0.7〜1.7mL/gの孔容積と、20〜200μmの粒径を有する。
【0015】
好適には、無機
シリカゲルの比表面積は200〜300m
2/gであり、無機
シリカゲルの平均孔径は8〜13nmであり、無機
シリカゲルの孔容積は0.75〜1.3mL/gであり、無機
シリカゲルの粒径は40〜150μmである。
【0016】
好適には、活性成分コバルトの含有量は、触媒の総重量の10〜25wt%であり、選択的促進剤ジルコニウムの含有量は、触媒の総重量の5〜10wt%を占める。
【0017】
好適には、活性成分コバルトの含有量は、触媒の総重量の15〜20wt%であり、選択的促進剤ジルコニウムの含有量は、触媒の総重量の5〜8wt%を占める。
【0018】
好適には、活性成分コバルトの含有量は、触媒の総重量の20〜25wt%であり、選択的促進剤ジルコニウムの含有量は、触媒の総重量の8〜10wt%を占める。
【0019】
好適には、触媒は、150〜400m
2/gの比表面積と、2〜40nmの平均孔径と、0.5〜1.4mL/gの孔容積を有する。
【0020】
好適には、触媒は、250〜350m
2/gの比表面積と、3〜9nmの平均孔径と、0.6〜1.0mL/gの孔容積を有する。
【0021】
上記触媒の調製方法も提供する。本方法は、以下の工程を含む。
【0022】
1)
二酸化ケイ素キャリアをジルコニウム塩水溶液に
含浸させ、12〜24時間熟成させ、70〜120℃で8〜24時間乾燥させ、400〜500℃で3〜12時間か焼することにより、ジルコニウム担持
二酸化ケイ素キャリアを生成する工程。
【0023】
2) ジルコニウム担持
二酸化ケイ素キャリアをコバルト塩水溶液に
含浸させ、12〜24時間熟成させ、70〜120℃で8〜24時間乾燥させ、400〜500℃で3〜12時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒を生成する工程。
【0024】
3) テンプレートP123をニトリル酸溶液に溶解させ、均一に攪拌し、オルトケイ酸テトラエチルを加え、攪拌を12〜30時間継続することにより、メソ多孔性材料の前駆体溶液を生成する工程。
【0025】
4) フィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒をメソ多孔性材料の前駆体溶液に
含浸させ、結晶化、洗浄、乾燥、か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成する工程。
【0026】
好適には、前記方法は更に、5)フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を疎水性有機溶液に
含浸させ、3〜12時間密封し、
洗浄用有機溶媒を選択してすすぎ、60〜90℃で3〜8時間乾燥させることにより、疎水特性を備えたメソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成する工程を含む。
【0027】
好適には、工程1のジルコニウム塩は、硝酸ジルコニウム又は硝酸ジルコニルであり、好適には硝酸ジルコニルである。
【0028】
好適には、工程2のコバルト塩は、炭酸コバルト又は硝酸コバルトであり、好適には硝酸コバルトである。
【0029】
好適には、工程3において、ニトリル酸溶液の濃度は1〜2mol/Lであり、清澄溶液が生成されるまで、25〜45℃で混合する。オルトケイ酸テトラエチルを清澄溶液に加え、12〜24時間継続して攪拌することにより、メソ多孔性材料の前駆体溶液を生成する。
【0030】
テンプレートP123は周知のトリブロック共重合体、例えばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンを採用し、分子式がPEO−PPO−PEOであり、一般式はEO
20PO
70EO
20である。
【0031】
好適には、工程4において、結晶化は80〜130℃で20〜100時間、回転速度7〜20rpmで行われる。洗浄は、中性になるまで、脱イオン水を使って行われる。乾燥は、80〜120℃で10〜20時間行われる。か焼は、400〜550℃で5〜12時間行われる。
【0032】
好適には、工程4において、結晶化は90〜120℃で30〜80時間、回転速度7〜15rpmで行われる。
【0033】
好適には、工程5において、疎水性有機溶液は、ポリメチルトリエトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、及びトリメチルクロロシレンから構成されるグループから選択される。
【0034】
好適には、工程5において、
洗浄用有機
溶媒は、n‐ヘキサン、アセトン及びエタノールから構成されるグループから選択される。
【0035】
好適には、工程5において、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒は、疎水性有機溶液に
含浸され、3〜8時間密封されてから、
洗浄用有機溶媒で2〜3回すすがれる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の実施形態に係るフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒、及びその調製方法の効果は、次のとおりである。
【0037】
本発明で調製されるフィッシャートロプシュ合成用コバルト系触媒は、従来のコバルト系触媒及び卵の殻型触媒の限界を克服する。最初にメソ多孔性材料の外殻層で触媒表面を被覆するとともに、工程パラメータにより外殻層の厚さを制御することにより、触媒の活性成分が保護されると同時に、メソ多孔性材料の孔導管構造がCO及びH
2の拡散のための導管となる。また、超疎水性有機分子をメソ多孔性材料の外殻層に導入することにより、水分子が導管の内部へ流入するのを効果的に阻止する。
【0038】
触媒の摩擦、活性、又は移動工程の間に活性成分の脱粒が阻止されるだけでなく、反応中の触媒への蒸気の影響を阻止できる。従って、触媒の安定性が大きく改善し、触媒の耐用寿命が効果的に長期化し、触媒の産業用途への期待が高まる。本発明のCo系触媒は、耐用寿命が長く、活性が高く、安定性が良く、C
5+の選択性が高く、メタンの選択性が低いので、気泡塔スラリー床や連続攪拌スラリー床に特に適する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒の調製方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を更に詳細に説明するために、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒について詳述する実施形態を、以下に記載する。当然のことながら、以下の実施例は本発明の説明を目的とするものであり、限定するものではない。
【実施例1】
【0041】
触媒Bの調製
【0042】
触媒Bは、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrと、メソ多孔性材料の外殻層を含む。Zrの含有量は5wt%であり、Coの含有量は20wt%である。
【0043】
触媒Bの調製は、次のとおりである。
【0044】
1)比表面積が280m
2/g、孔容積が1.25mL/g、平均孔径が13.6nm、粒径が40μmの無機
シリカゲルキャリア30gを、5.07gのZrO(NO
3)
2を含む水溶液45mLに
含浸させ、次に、空気中で16時間熟成させ、110℃で8時間乾燥させ、450℃のマッフル炉で10時間か焼することにより、ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを生成した。
【0045】
2)ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを、39.43gのCo(NO
3)
3・6H
2Oを含む水溶液63mLに
含浸させ、その後、空気中で16時間熟成させ、110℃で8時間乾燥させ、450℃のマッフル炉で10時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒を生成した。
【0046】
3)4gのテンプレートP123を、2mol/Lの濃度を有するニトリル酸溶液140mLに溶解させ、その後、清澄溶液が生成されるまで、35℃で攪拌した。8.4gのオルトケイ酸テトラエチルを清澄溶液に加え、24時間連続攪拌することにより、メソ多孔性材料の前駆体溶液を得た。
【0047】
4)メソ多孔性材料の前駆体溶液を清潔なテフロン反応器へ移した。10gのフィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒をメソ多孔性材料の前駆体溶液へ
含浸させ、次に、水熱合成装置に固定し、130℃で20時間、回転速度7rpmで結晶化させた。次に、脱イオン水により中性になるまで洗浄し、100℃で12時間乾燥させ、550℃で5時間か焼することにより、触媒B、即ちフィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成した。
【0048】
検査により、触媒Bは、比表面積が291m
2/g、孔容積が1.16mL/g、平均孔径が10.6nm、外殻層の厚みが1.8μmであった。触媒Bの外殻層の厚みを、
図2のTEM写真に示す。
【実施例2】
【0049】
触媒Cの調製
【0050】
触媒Cは、実施例1に示すように、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrと、メソ多孔性材料の外殻層を含む。Zrの含有量は5wt%であり、Coの含有量は20wt%である。
【0051】
触媒Cの調製は、工程3の結晶化時間が本実施例では60時間であることを除き、実施例1と基本的に同じである。
【0052】
検査により、触媒Cは、比表面積が301m
2/g、孔容積が0.98mL/g、平均孔径が9.5nm、外殻層の厚みが5μmであった。触媒Cの外殻層の厚みを、
図3のTEM写真に示す。
【実施例3】
【0053】
触媒Dの調製
【0054】
触媒Dは、実施例1と同様に、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrと、メソ多孔性材料の外殻層を含む。Zrの含有量は5wt%であり、Coの含有量は20wt%である。触媒Dは、比表面積が320m
2/g、孔容積が1.02mL/g、平均孔径が8.9nm、外殻層の厚みが13μmであった。
【0055】
触媒Dの調製は、工程3の結晶化時間が本実施例では100時間であることを除き、実施例1と基本的に同じである。触媒Dの外殻層の厚みを、
図4のTEM写真に示す。
【実施例4】
【0056】
触媒Eは、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrと、メソ多孔性材料の外殻層と、トリメチルクロロシランの疎水性有機化合物層を含む。Zrの含有量は5wt%であり、Coの含有量は20wt%である。
【0057】
触媒Eの調製は、次のとおりである。
【0058】
1)比表面積が280m
2/g、孔容積が1.25mL/g、平均孔径が13.6nm、粒径が40μmの無機
シリカゲルキャリア30gを、5.07gのZrO(NO
3)
2を含む水溶液45mLに
含浸させ、次に、空気中で16時間熟成させ、110℃で8時間乾燥させ、450℃のマッフル炉で10時間か焼することにより、ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを生成した。
【0059】
2)ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを、39.43gのCo(NO
3)
3・6H
2Oを含む水溶液63mLに
含浸させ、その後、空気中で16時間熟成させ、110℃で8時間乾燥させ、450℃のマッフル炉で10時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒を生成した。
【0060】
3)メソ多孔性材料外殻層の被覆:4gのテンプレートP123を、2mol/Lの濃度を有するニトリル酸溶液140mLに溶解させ、その後、清澄溶液が生成されるまで、35℃で攪拌した。8.4gのオルトケイ酸テトラエチルを清澄溶液に加え、24時間連続攪拌することにより、メソ多孔性材料の前駆体溶液を得た。
【0061】
4)メソ多孔性材料の前駆体溶液を清潔なテフロン反応器へ移した。10gのフィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒をメソ多孔性材料の前駆体溶液へ
含浸させ、次に、水熱合成装置に固定し、130℃で20時間、回転速度7rpmで結晶化させた。次に、脱イオン水により中性になるまで洗浄し、100℃で12時間乾燥させ、550℃で5時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成した。
【0062】
5)フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を、200mLのトリメチルクロロシラン溶液に
含浸させ、8時間密封した。次に、無水エタノールで2回すすぎ、80℃で8時間乾燥させることにより、触媒E、即ち疎水特性を備えたメソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成した。
【0063】
検査により、触媒Eは、比表面積が279m
2/g、孔容積が0.86mL/g、平均孔径が8.2nm、外殻層の厚みが2.5μmであった。触媒Eの外殻層の厚みを、
図5のTEM写真に示す。
【実施例5】
【0064】
触媒Fは、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrと、メソ多孔性材料の外殻層と、ポリメチルトリエトキシシランの疎水性有機化合物層を含む。Zrの含有量は5wt%であり、Coの含有量は20wt%である。
【0065】
触媒Fの調製は、ポリメチルトリエトキシシランが、疎水性有機化合物層材料として、実施例4のトリメチルクロロシランと置き換わるように採用される点を除き、実施例4と基本的に同じである。
【0066】
検査により、触媒Fは、比表面積が282m
2/g、孔容積が0.91mL/g、平均孔径が7.9nm、外殻層の厚みが2.1μmであった。触媒Fの外殻層の厚みを、
図6のTEM写真に示す。
【実施例6】
【0067】
触媒Gは、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrと、メソ多孔性材料の外殻層と、γ‐アミノプロピルトリエトキシシランの疎水性有機化合物層を含む。Zrの含有量は5wt%であり、Coの含有量は20wt%である。
【0068】
触媒Gの調製は、γ‐アミノプロピルトリエトキシシランが、疎水性有機化合物層の材料として、実施例4のトリメチルクロロシランと置き換わるように採用される点を除き、実施例4と基本的に同じである。
【0069】
検査により、触媒Gは、比表面積が280m
2/g、孔容積が0.83mL/g、平均孔径が8.5nm、外殻層の厚みが2.3μmであった。触媒Gの外殻層の厚みを、
図7のTEM写真に示す。
【実施例7】
【0070】
触媒Hは、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrと、メソ多孔性材料の外殻層と、γ‐アミノプロピルトリエトキシシランの疎水性有機化合物層を含む。Zrの含有量は8wt%であり、Coの含有量は25wt%である。
【0071】
触媒Hの調製は、次のとおりである。
【0072】
1)比表面積が150m
2/g、孔容積が1.3mL/g、平均孔径が8nm、粒径が90μmの無機
シリカゲルキャリア30gを、16.74gのZ
r(NO
3)
4・5H
2Oを含む水溶液45mLに
含浸させ、次に、空気中で24時間熟成させ、120℃で10時間乾燥させ、500℃のマッフル炉で3時間か焼することにより、ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを生成した。
【0073】
2)ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを、22.5gのCoCO
3を含む水溶液63mLに
含浸させ、その後、空気中で24時間熟成させ、120℃で10時間乾燥させ、500℃のマッフル炉で3時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒を生成した。
【0074】
3)メソ多孔性材料外殻層の被覆:4gのテンプレートP123を、1mol/Lの濃度を有するニトリル酸溶液140mLに溶解させ、その後、清澄溶液が生成されるまで、45℃で攪拌した。8.4gのオルトケイ酸テトラエチルを清澄溶液に加え、12時間連続攪拌することにより、メソ多孔性材料の前駆体溶液を得た。
【0075】
4)メソ多孔性材料の前駆体溶液を清潔なテフロン反応器へ移した。10gのフィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒をメソ多孔性材料の前駆体溶液へ
含浸させ、次に、水熱合成装置に固定し、100℃で24時間、回転速度10rpmで結晶化させた。次に、脱イオン水により中性になるまで洗浄し、80℃で20時間乾燥させ、400℃で12時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成した。
【0076】
5)フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を、200mLのγ‐アミノプロピルトリエトキシシラン溶液に
含浸させ、3時間密封した。次に、n‐ヘキサンで3回すすぎ、60℃で3時間乾燥させることにより、触媒H、即ち疎水特性を備えたメソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成した。
【0077】
検査により、触媒Hは、比表面積が200m
2/g、孔容積が1.0mL/g、平均孔径が4.0nm、外殻層の厚みが2.0μmであった。
【実施例8】
【0078】
触媒Iは、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrと、メソ多孔性材料の外殻層と、γ‐アミノプロピルトリエトキシシランの疎水性有機化合物層を含む。Zrの含有量は10wt%であり、Coの含有量は10wt%である。
【0079】
触媒Iの調製は、次のとおりである。
【0080】
1)比表面積が300m
2/g、孔容積が0.75mL/g、平均孔径が13nm、粒径が150μmの無機
シリカゲルキャリア30gを、9.5gの硝酸ジルコニルを含む水溶液45mLに
含浸させ、次に、空気中で12時間熟成させ、70℃で24時間乾燥させ、400℃のマッフル炉で12時間か焼することにより、ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを生成した。
【0081】
2)ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを、7.55gのCoCO
3を含む水溶液63mLに
含浸させ、その後、空気中で12時間熟成させ、70℃で24時間乾燥させ、400℃のマッフル炉で12時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒を生成した。
【0082】
3)メソ多孔性材料外殻層の被覆:4gのテンプレートP123を、2mol/Lの濃度を有するニトリル酸溶液140mLに溶解させ、その後、清澄溶液が生成されるまで、25℃で攪拌した。8.4gのオルトケイ酸テトラエチルを清澄溶液に加え、30時間連続攪拌することにより、メソ多孔性材料の前駆体溶液を得た。
【0083】
4)メソ多孔性材料の前駆体溶液を清潔なテフロン反応器へ移した。10gのフィッシャートロプシュ合成用一次コバルト系触媒をメソ多孔性材料の前駆体溶液へ
含浸させ、次に、水熱合成装置に固定し、80℃で70時間、回転速度15rpmで結晶化させた。次に、脱イオン水により中性になるまで洗浄し、120℃で10時間乾燥させ、500℃で8時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成した。
【0084】
5)フィッシャートロプシュ合成用メソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を、200mLのγ‐アミノプロピルトリエトキシシラン溶液に
含浸させ、15時間密封した。次に、アセトンで2回すすぎ、90℃で5時間乾燥させることにより、触媒I、即ち疎水特性を備えたメソ多孔性材料被覆コバルト系触媒を生成した。
【0085】
従来の触媒Aの比較例1
【0086】
従来の触媒Aは、キャリアとしての無機
シリカゲルと、活性成分としてのCoと、促進剤としてのZrを含む。Zrの含有量は5wt%であり、Coの含有量は20wt%である。
【0087】
触媒Aの調製は、次のとおりである。
【0088】
1)比表面積が280m
2/g、孔容積が1.25mL/g、平均孔径が13.6nm、粒径が40μmの無機
シリカゲルキャリア30gを、5.07gのZrO(NO
3)
2を含む水溶液45mLに
含浸させ、次に、空気中で16時間熟成させ、110℃で8時間乾燥させ、450℃のマッフル炉で10時間か焼することにより、ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを生成した。
【0089】
2)ジルコニウム担持無機
シリカゲルキャリアを、39.43gのCo(NO
3)
3・6H
2Oを含む水溶液63mLに
含浸させ、その後、空気中で16時間熟成させ、110℃で8時間乾燥させ、450℃のマッフル炉で10時間か焼することにより、フィッシャートロプシュ合成用コバルト系触媒Aを生成した。
【0090】
触媒B−I及び従来の触媒Aそれぞれが存在する中、バイオマスを使用する液体炭化水素合成の試験結果を、表1で比較する。
【0091】
表1から分かるように、従来の触媒がメソ多孔性材料の外殻層で被覆されると、COの変換は可視的に変化せず、約55〜65wt%である。これは主に、メソ多孔性材料の外殻層は所定の厚みを有するが、触媒の粒径が相対的に小さく、物質移動抵抗も相対的に小さく、メソ多孔性材料の外殻層はH
2及びCOに対する物質移動導管を供給することによる。液体炭化水素の選択性は僅かに改善するとともに、メタンの選択性は僅かに低減するが、これは、メソ多孔性材料の外殻層により、活性化及び移動過程での摩擦による活性成分の脱粒を阻止することによる。また、メソ多孔性材料の外殻層は、多量の水が活性中心に直接接触することを阻止することができる。外殻層表面の疎水性有機改質後、液体炭化水素の選択性は増加する一方、メタンの選択性は明らかに低下しており、疎水性物質のメソ多孔性材料外殻層への導入により、触媒が水により酸化され、非活性化されるのを効果的に阻止できることを示す。分子が小さい水が生成されると、疎水性有機化合物層と一緒に、外殻層から吹き飛ばされる。従って、本発明で調製されるコバルト系触媒は、活性が相対的に高く、C
5+の選択性が高く、メタンの選択性が低い。
【0092】
疎水性物質をメソ多孔性材料の外殻層へ導入した後、特に、液体炭化水素の選択性が大きく改善する。改質した触媒Fの有機化合物の分子構造は相対的により小さいので、改質触媒Fの疎水性は、触媒E及びGよりも相対的に低い。改質触媒Eにおける有機化合物の価格は、変質触媒Gよりも高く、揮発し易く、腐食性が高い。触媒Hは比表面積及び孔径が相対的に小さく、その活性と炭化水素の選択性が僅かに低下している。触媒Iは粒径が相対的に大きく、外殻層が厚く、物質移動抵抗が所定であり、COの変換率が低いが、触媒Iの結晶化時間は相対的に長い。上記の点に基づき、触媒Gは、触媒E、F、H、Iよりも優れている。
【0093】
【表1】
【0094】
本発明の効果をより詳細に説明するために、従来の触媒Aと本発明の触媒B及びGの長期の安定性を検証した。その結果を表2及び表3に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
表2及び3から分かるように、いかなる変更もされない従来の触媒Aの反応時間は、800時間に達し、従来の触媒Aの活性は低下し始める。これは、長期間の攪拌後の摩擦の作用により、触媒表面のCoが脱粒し、反応により生じる水が、触媒を酸化、非活性化させることによる。従来の触媒がメソ多孔性材料の外殻層で被覆されて触媒B及びGが生成されると、反応時間は1500時間に長くなり、COの変換率は55%以上のままである。これはおそらく、触媒の外殻層が触媒の活性中心を保護するとともに、触媒の金属部分が摩擦で脱粒することを阻止することによる。とりわけ、疎水性有機物質により改質された触媒Gでは反応が2500時間行われ、触媒の活性が未だ高く、COの変換率が未だ約60%のままであり、液体炭化水素の選択性が約85%であるので、触媒の耐用寿命が明らかに延びている。これは、疎水基がメソ多孔性材料の外殻層へ導入されることにより、金属部分が触媒から脱粒するのを効果的に阻止するとともに、水が活性中心と接触するのを効果的に阻止することにより、さもなければ、触媒は非活性化される。要するに、本発明で調製されるCo系触媒は、安定性が高く、耐用寿命が効果的に延びている。