(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337146
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】SOFC陰極拡散バリア層を生成する方法およびSOFC
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1213 20160101AFI20180528BHJP
H01M 8/1253 20160101ALI20180528BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20180528BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20180528BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20180528BHJP
C04B 41/87 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/1253
H01M8/12 101
H01M4/88 T
H01M4/86 U
C04B41/87 E
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-564382(P2016-564382)
(86)(22)【出願日】2014年1月14日
(65)【公表番号】特表2017-504946(P2017-504946A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EE2014000001
(87)【国際公開番号】WO2015106769
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】516212865
【氏名又は名称】エルコゲン エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エン オウンプー
(72)【発明者】
【氏名】ジュハン スッビ
(72)【発明者】
【氏名】サンニ セッパラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャッコ ニーニスト
(72)【発明者】
【氏名】マルク レスケラ
(72)【発明者】
【氏名】ミッコ リターラ
【審査官】
▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−195281(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/069685(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0094213(US,A1)
【文献】
Zeng Fan,Improving solid oxide fuel cells with yttria-doped ceria interlayers by atomic layer deposition,Journal of Materials Chemistry,The Royal Society of Chemistry,2011年,Vol.21,10903-10906
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86 − 4/88
H01M 8/00 − 8/2495
C04B 41/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SOFC陰極拡散バリアセリア層を製造する方法であって、
a)焼結された半電池の異種原子価的に安定化されたジルコニアからなる電解質層上に、原子層堆積によって純粋なセリアまたは異種原子価的にドープされたセリア層を堆積させるステップであって、膜が堆積される電解質の表面は、1または複数のランタニドの第1の前駆体からの1回分の蒸気に曝露され、その前駆体からの未反応蒸気が除去され、第2の前駆体の1回分の蒸気が表面にもたらされ、反応させられ、このサイクルのステップが繰り返されて、より厚い膜が構築されるステップと、
b)前記セリア層の上にコバルタイト系陰極層をスクリーン印刷するステップと、
c)前記セリア層および陰極層が一緒に加熱されるステップと
の連続したステップを含む方法。
【請求項2】
前記第1の前駆体が一般式Ln(thd)n(式中、thdは、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネートである)を有するランタニドジケトネート、または一般式Ln(mmp)nまたはLn(dmap)n(式中、mmpは1−メトキシ−2−プロパノラートであり、dmapは4−(ジメチルアミノ)ピリジンである)を有するランタニドアルコキサイドであり、
前記第2の前駆体がオゾンまたは水である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電解質層はイットリウム安定化ジルコニアである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電解質層はスカンジウム安定化ジルコニアである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記セリア層は、YまたはGdドープセリア層である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の前駆体Ce(thd)4とY(thd)3またはCe(thd)4とGd(thd)3の堆積のためのパルシング比(pulsing ratio)は、30:1〜5:1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コバルタイト系陰極層はLSC(LaxSr(1-x)CoO3)またはLSCF(LaxSr(1-x)CoyFe(1-y)O3)層である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱する温度は、1000〜1200℃の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップa)の連続したサイクル中で異なるランタニドが使用され、混合酸化物を構築する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法で製造した陰極拡散バリアセリア層を含むSOFC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、固体酸化物燃料電池(SOFC)に関し、より詳細には、陰極拡散バリア層を製造する方法、および該バリア層を含む電池に関する。
【背景技術】
【0002】
SOFCは、電気と熱との分散型熱電併給のための将来の可能性のある電源の1つである。この目標を実現するために、SOFCの運転温度範囲を、800〜1000℃から600〜700℃に下げて、より安価な構成素材の使用を促進し、システムの熱劣化を減少させなければならない。これは、一方では、これらの温度でより低い抵抗率を有する固体電解質の開発に特別な重点を置き、他方では、電池の陽極で異なる燃料を酸化し陰極で酸素を還元するための、新しい混合伝導性の、より効率的で選択的に触媒的な電極の開発に特別な重点を置く。ストロンチウムドープランタンコバルタイトおよびストロンチウムドープランタンフェライトが、より低い温度でより高い効率を有する潜在的な新しい陰極材料として台頭してきた。
【0003】
しかし、これらのより効率的なコバルタイト陰極材料およびフェライト陰極材料は、ジルコニア系電解質と反応し、イオンに対して高い抵抗率の層を発達させ、SOFCの効率および寿命を低下させる傾向がある。これらの望ましくない反応を回避するために、ドープ化セリア拡散バリア層が一般に堆積されており、その理由は、セリアが、化学的により不活性であり、SOFCが生産または使用される条件下で陰極材料と望ましくない化合物を形成しないためである。しかし、セリアは、ジルコニアとの固溶体を形成し、それは、ドープ化ジルコニアまたはドープ化セリアより低いイオン伝導性を有する。この固溶体形成は、1300℃以上の温度で著しく、この場合、電池の同時焼成(cell cofiring)が高密度な電解質層をもたらす。
【0004】
この拡散バリア層は、陰極生成サイクルの過程、および元素の完全なライフサイクルの過程で、陰極から元素、好ましくはストロンチウムおよびランタンのドープ化ジルコニア電解質層への拡散に耐えなければならない。拡散バリア層は、必ずしも高密度である必要はないが、高密度な層は、著しい利点を有する。表面上および粒界上の金属原子拡散は、粒を通じた拡散より速く、したがって拡散バリア層が多孔質である場合、電池の寿命を制限し得る。さらに、高密度な層は、イオン移動にとって電解質とのより良好な接触を有することになる。
【0005】
ドープ化セリア拡散バリア層は、
(i)予備焼成された基板上にスクリーン印刷し、その後、1200℃から1400℃の間で焼結し、基板へのいくつかの反応で厚さ0.5〜5マイクロメートルを有する多孔質層を生成する[非特許文献1];
(ii)400〜800℃でパルスレーザー堆積させ、柱状構造を生成する[非特許文献2][非特許文献3];
(iii)800℃でマグネトロンスパッタリングによって物理気相堆積させ、柱状構造を生成し、(i)に対して利点をもたらす[非特許文献4]
ことによって生産することができる。
【0006】
(ii)および(iii)は、より低い温度で行われ、電解質との望ましくない反応を回避するが、これらは依然として多孔質層を生成し、高価な技術であり、大面積生産に拡張することが困難である。
【0007】
(i)および(iii)は、本発明と最も近い先行技術を形成する。
【0008】
当技術分野におけるこれらの問題を克服するために、大面積生産に適切な高密度陰極拡散バリア層を生成する安価な方法、すなわち原子層堆積(ALD)、ならびに効率および寿命が増大した固体酸化物燃料電池を、本発明において記載する。
【0009】
原子層堆積は、公知の技術分野であり[非特許文献5]、多孔質基板上にイオン伝導体層を生成するのに使用される[特許文献1、Cassir M.ら、2002]。ALDプロセスは、2種以上の異なる気相前駆体を使用して固体材料の薄層を堆積させる。膜が堆積される基板の表面は、1つの前駆体からの1回分(dose)の蒸気に曝露される。次いで、その前駆体からの任意の過剰の未反応蒸気がポンプで除かれ、またはパージされる。次に、第2の前駆体の1回分の蒸気が表面にもたらされ、反応させられる。第2のパージがALDサイクルを完了する。非特許文献6、非特許文献7および非特許文献8に記載されているように、このサイクルのステップを繰り返して、より厚い膜を構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願国際公開第02053798号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A. Mai et al., Solid State Ionics Vol.176 (2005) pp 1341−1350
【非特許文献2】Jong Hoon Joo, Gyeong Man Choi, Journal of the European Ceramic Society Vol.27 (2007) pp 4273−4277
【非特許文献3】K. Rodrigo et al., Appl Phys A Vol.101 (2010) pp 601−607
【非特許文献4】N. Jordan et al., Solid State Ionics 179 (2008) pp 919−923
【非特許文献5】M. Putkonen et al., Chem. Mater. Vol.13 (2001) pp 4701−4707
【非特許文献6】Paivasaari, J., Putkonen, M. and Niinisto, L. J. Mater. Chem. Vol.12 (2002) pp 1828−1832
【非特許文献7】Niinisto, J., Petrova, N., Putkonen, M., Sajavaara, T., Arstila, K. and Niinisto, L. J. Cryst. Growth Vol.285 (2005) pp 191−200
【非特許文献8】Putkonen, M, Nieminen, M., Niinisto, J., Sajavaara, T. and Niinisto, L. Chem. Mater. Vol.13 (2001) pp 4701−4707
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、陰極拡散バリア層を生成するための改良法を提供すること、ならびにそれによって現況技術から公知のものより高い効率および寿命を有する固体酸化物燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
それは、焼結された半電池の電解質層上に原子層堆積によって純粋なセリアまたは異種原子価的に(aliovalently)ドープされたセリア層を堆積させるステップを含む。膜が堆積される電解質の表面は、1または複数のランタニドの第1の前駆体からの1回分の蒸気に曝露される。次いで、その前駆体からの任意の過剰の未反応蒸気が除去される(ポンプで除かれ、またはパージされる)。次に、第2の前駆体の1回分の蒸気が表面にもたらされ、反応させられる。第2のパージによりALDサイクルが完了する。このサイクルのステップが繰り返されて、より厚い膜が構築される。連続したサイクル中の異なるランタニドが混合酸化物を構築するのに使用されることになる。このセリア層は、陰極拡散バリア層を形成し、その上にコバルタイト系陰極層がスクリーン印刷によって塗布され、陰極拡散バリア層および陰極層が一緒に加熱されて、改善された固体酸化物燃料電池が形成される。加熱温度は、1000〜1200℃の間、好ましくは1000〜1100℃の間である。
【0014】
第1の前駆体は、一般式Ln(thd)
n(式中、thdは、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネートである)を有するランタニドジケトネート、または自己制限的成長の要件を満たすのに十分熱的に安定である任意の他の揮発性ランタニド化合物である。第1の前駆体Ce(thd)
4とY(thd)
3またはGd(thd)
3との堆積のためのパルシング比(pulsing ratio)は、30:1〜5:1、好ましくは10:1である。第2の前駆体は、オゾンまたは水である。
【0015】
電解質層は、イットリウム安定化ジルコニアまたはスカンジウム安定化ジルコニアであり、セリア層は、好ましくはYドープセリア層またはGdドープセリア層である。
【0016】
コバルタイト系陰極層は、好ましくはLSC(La
xSr
(1-x)CoO
3)またはLSCF(La
xSr
(1-x)Co
yFe
(1-y)O
3)層である。
【0017】
本発明の目的はまた、上述した方法によって生成される陰極拡散バリア層を含む固体酸化物燃料電池である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】燃料電池スキームを示す図である。1−陰極、2−陰極拡散バリア層、3−電解質、4−陽極活性層、5−陽極支持層。
【
図2】燃料電池を示す図である。1−陰極、2−陰極拡散バリア層、3−電解質、4−陽極活性層、5−陽極支持層。
【
図3】より詳細な燃料電池を示す図である。1−陰極、2−陰極拡散バリア層、3−電解質。
【
図4】0.5〜2.0秒の異なる金属前駆体パルス長でのa)CeO
2、b)Gd
2O
3、およびc)Y
2O
3の成長速度を示す図である。堆積温度は、250℃であった。
【
図5】Si(100)上の厚さ200nmのCeO
2膜、CeO
2:Gd膜、およびCeO
2:Y膜のXRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
燃料電池は、焼結された半電池のイットリウム安定化ジルコニア電解質層上に、ALDによって、異種原子価的にドープされたセリア層、好ましくはYドープセリア層またはGdドープセリア層を堆積させることによって生産され、その上にはコバルタイト系陰極層、好ましくはランタンストロンチウムコバルタイト(La
xSr
(1-x)CoO
3)(LSC)層またはランタンストロンチウムコバルタイトフェライト(La
xSr
(1-X)Co
yFe
(1-y)O
3)(LSCF)層がスクリーン印刷され、そのように覆われた電池は、1000℃〜1200℃の間、好ましくは1000℃〜1100℃の間で加熱される。電池のスキームは、
図1にある。
【0020】
陰極層と一緒に未処理のALD層を加熱すると、陰極拡散バリア層と電解質層との間、および陰極拡散バリア層と陰極層との間の有利な接触が生じる。これは、現況技術より低い電気抵抗率およびより良好な拡散耐性を伴ったほとんど連続的な陰極拡散バリア層をもたらす。電池のSEM断面は、
図2および
図3にある。
【0021】
ALD陰極拡散バリア層は、現況技術に対して複数の利点を有する。スクリーン印刷層と比較して、それは、より高密度であり、陽イオン拡散に対してより良好なバリアを形成する。それは、より低い温度で生成され、バリア層材料と電解質材料との相互拡散を最小限にし、燃料電池の電気抵抗を低下させる。それはまた、生産サイクルから1つの加熱ラウンドを除外し、生産性を増大させ、コストを低下させる。
【0022】
物理気相堆積(スパッタリング)と比較して、ALD陰極拡散バリア層は、より高密度であり、はるかによりコンフォーマルであり、柱状構造を回避し、それにより陽イオン拡散に対するより良好なバリアを形成する。ALD法はまた、工業スケールアップについてスパッタリングに対して利点を有し、その理由は、燃料電池を反応器チャンバー内に一緒に最密充填することができるためである。
【実施例】
【0023】
1.原子層堆積による固体酸化物燃料電池のためのCeO
2、CeO
2:Gd、およびCeO
2:Y陰極拡散拡散バリア層
拡散バリア層CeO
2、CeO
2:Gd、およびCeO
2:Yを、固体酸化物燃料電池(SOFC)ボタン電池上に原子層堆積(ALD)によって堆積させて、陰極から電解質への陽イオンの拡散を防止した。最初に、二元酸化物CeO
2、Gd
2O
3、およびY
2O
3の成長速度を、Si(100)ウエハーおよびイットリア安定化ジルコニア(YSZ)上で判定した。次いでドープ膜を、異なるCe:Gd前駆体パルス比およびCe:Y前駆体パルス比を用いてSi(100)上に堆積させて、ドーパント含有量について適切な比を見出した。実際の膜は、NiO/YSZ陽極およびYSZ電解質からなっていたSOFC半電池上に堆積させた。
【0024】
すべての膜は、フロー式ホットウォールALD反応器(ASM Microchemistry F−120)内で堆積させた。反応器内の圧力は、5〜10mbarであった。Ce(thd)4、Gd(thd)3、およびY(thd)3(thd=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)(VolatecOy)を金属前駆体として使用し、オゾン発生器(Wedeco OZOMATIC 4 HC)で酸素(AGA、99,999%)から生成されるオゾン(100g/m
3)を酸素源として使用した。窒素(Domnick Hunter N2発生器、99.999%超)を、担体およびパージガスとして使用した。
【0025】
フィルム厚は、反射率スペクトルから判定した。スペクトルは、Hitachi U−2000分光光度計で370と1100nmとの間の波長で測定した。YSZ上のCeO
2の厚さは、エネルギー分散X線分析(EDX)で測定した元素のk値から判定した。ドープ膜のドーパントレベルもEDXによって判定した。堆積させた膜の結晶性は、PanalyticalX’Pert PRO MPD回折計におけるCu Kα放射線を用いてX線回折(XRD)によって判定した。ALDによって堆積された二元酸化物CeO
2、Gd
2O
3、およびY
2O
3は、以前に徹底的に研究されている。報告された成長速度は、250℃で、CeO
2について、0.32Å/サイクル、Gd
2O
3について0.30Å/サイクル、およびY
2O
3について0.22〜0.23Å/サイクルである。本研究では、成長速度は、250℃で、CeO
2について、0.31Å/サイクル、Gd
2O
3について0.30Å/サイクル、およびY
2O
3について0.25Å/サイクルであった。
【0026】
YSZ上のCeO
2の成長速度は、Si(100)上よりほんのわずかに低かった。すべての場合において、ALD型自己制限的成長モードが確認された(
図4)。
【0027】
ドープ膜をSi上に堆積させ、10陽イオン−%ドーパントレベルを得るための適切なGd:Ce前駆体パルシング比およびY:Ce前駆体パルシング比を判定した。試験したパルシング比およびEDXによって測定されたドーパント含有量を表1および表2に提示する。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
2.電池製造
最初に半電池を製造する。半電池を、YSZおよびNiOから構成される陽極支持層(5)をテープキャスティングし、この上にYSZおよびNiOから構成される陽極活性層(4)をスクリーン印刷し、この上にYSZから構成される電解質層(3)をスクリーン印刷し、この多層未焼結半電池を1400℃で焼結することによって製造する。
【0031】
完全な燃料電池は、焼結された半電池のイットリウム安定化ジルコニア電解質層上に、ALDによって、純粋なセリア、または異種原子価的にドープされたセリア層、好ましくはYドープセリア層もしくはGdドープセリア層を堆積させることによって生産し、その上にコバルタイト系陰極層、好ましくはLSC層またはLSCF層がスクリーン印刷され、そのように覆われた電池を、温度が少なくとも1時間にわたって1000℃超に留まるように、1000℃〜1200℃の間、好ましくは1000℃〜1100℃の間で加熱する。
【0032】
上記ALD結果に基づいて、1:10のパルシング比を、SOFCボタン電池上のCeO
2:Gd膜およびCeO
2:Y膜の堆積について選択した。堆積温度は、250℃であった。Ce(thd)
4は、170℃で保持し、Gd(thd)
3は、137℃で保持し、Y(thd)
3は、127℃で保持した。パルス長は、Gd(thd)
3およびCe(thd)
4について0.5秒、Y(thd)
3について1.0秒であった。パージは、Gd(thd)
3のパルスおよびCe(thd)
4のパルス後に1.0秒、Y(thd)
3のパルス後に1.5秒であった。オゾンのパルスは常に1.0秒であり、オゾン後のパージは、1.5秒であった。厚さ100nmのCeO
2膜を堆積させるために、3334サイクルを施した。厚さ200nmの膜については、7800サイクルを施した。ドープ膜については、10サイクルのCeO
2を最初に堆積させ、次いで1サイクルのGd
2O
3またはY
2O
3を堆積させた。厚さ100nmの膜については、このシーケンスを337回繰り返し、厚さ200nmの膜については674回繰り返した。Si(100)上の厚さ200nmのCeO
2膜、CeO
2:Gd膜、およびCeO
2:Y膜のXRDパターンを
図2に示す。相は、立方晶系CeO
2(PDFカード34−0394)であり、最も強力な反射は、(200)である。