【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、総務省、「ICTを活用した次世代ITSの確立」のうち、「インフラレーダシステム技術の開発」に関する委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置1Aの外観構成を示す斜視図である。また、
図2は、第1実施形態に係るアンテナ装置1Aの一次放射器2、第1の誘電体レンズ3及び第2の誘電体レンズ4の位置関係を示す図である。
図1及び
図2において、第1実施形態に係るアンテナ装置1Aは、ミリ波帯(例えば、300GHz帯)以下の周波数で動作するレンズアンテナ装置であり、平面波を放射する一次放射器2と、第1の焦点距離f
1を有する第1の誘電体レンズ3と、第2の焦点距離f
2を有する第2の誘電体レンズ4とを備える。一次放射器2は、所望の軸方向に放射部2aの開口径D1が使用周波数の5波長以上である。所望の軸方向とはレンズによって光線設計を行う軸方向であり、
図1及び
図2ではY軸方向である。
【0029】
図3は、一次放射器2の外観構成を示す斜視図である。同図に示すように、一次放射器2は、長方形板状を成し、X方向に8素子(アンテナ素子21)、Y方向に16素子(アンテナ素子21)を持つ。X軸方向の8素子は、それぞれの位相と振幅の制御が可能であり、合成することによりXZ平面上で指向性走査を行うことができる。Y軸方向の16素子は、中央にある給電部22から給電線23を介して給電され、開口面におけるY軸方向の磁界強度分布がガウス分布となるように設計されている。このように設計することで、放射パターンのサイドローブを小さくすることができる。一次放射器2の開口面のサイズは、X軸方向が約13mm、Y軸方向が約43mmである。また、放射偏波25は、X軸をXY平面上で45°回転させた軸方向の直線偏波である。
【0030】
図1及び
図2に戻り、第1の誘電体レンズ3は、一次放射器2の放射方向(図中Z軸方向)に第1の焦点距離f
1を有し、一次放射器2の放射部2aの開口径D1と同方向(図中Y軸方向)に、一次放射器2の開口径D1と同径の開口径D2を有する。ここで、第1の誘電体レンズ3の開口径D2は、一次放射器2の開口径D1以上であればよく、本実施形態では同径としている。第2の誘電体レンズ4は、一次放射器2の放射方向に対向して第2の焦点距離f
2を有する。第2の誘電体レンズ4は、第1の誘電体レンズ3の主面3aから、一次放射器2と反対側に、第1の誘電体レンズ3の第1の焦点距離f
1と第2の誘電体レンズ4の第2の焦点距離f
2とを加算して得られた距離(f
1+f
2)だけ離れた位置に配置される。第2の誘電体レンズ4は、第1の誘電体レンズ3よりも小径であって、開口径D3が一次放射器2の開口径D1より小さくなっている。本実施形態では、一次放射器2の開口径D1を43mm、第2の誘電体レンズ4の開口径D3を30mmとしている。なお、誘電体レンズにおける主面は、入射前及び出射後の光線をそれぞれ延長した2直線を考え、その2直線の交点が描く軌跡のことである。
【0031】
第1実施形態に係るアンテナ装置1Aにおける定数、変数値は以下の通りである。
43[mm]:一次放射器2の開口径(Y軸方向)
n=√ε
r:誘電体の屈折率(誘電体は、例えば“テフロン(登録商標)”)
ε
r=1.96:誘電体の比誘電率(誘電体は、例えば“テフロン(登録商標)”)
f
1=37mm:第1の誘電体レンズ3の第1の焦点距離(光線近似による設計値)
f
2=26mm:第2の誘電体レンズ4の第2の焦点距離(光線近似による設計値)
43mm:第1の誘電体レンズ3の開口径(Y軸方向)
30mm:第2の誘電体レンズ4の開口径(Y軸方向)
79GHz:周波数
【0032】
第1実施形態に係るアンテナ装置1Aは上述した構成を採るので、Y軸方向の開口径が43mmから30mmとなり、一次放射器2が平面波を放射するものであっても、誘電体レンズで開口面の直径を変えることができて、ビーム幅を広げることができる。
【0033】
このように、第1実施形態に係るアンテナ装置1Aによれば、Y軸方向に放射部2aの開口径が5波長以上であり、平面波を放射する一次放射器2を使用し、Y軸方向に一次放射器2の開口径以上の開口径を有するとともに第1の焦点距離f
1を有する第1の誘電体レンズ3を一次放射器2の放射方向に配置し、更に第1の誘電体レンズ3の主面3aから、一次放射器2と反対側に第1の焦点距離f
1と第2の焦点距離f
2(第2の誘電体レンズ4の焦点距離)とを加算して得られた距離だけ離れた位置に第2の誘電体レンズ4を配置したので、アンテナのY軸方向の開口径を小さくでき、ビーム幅を広げることができる。
【0034】
なお、第1実施形態に係るアンテナ装置1Aのようなレンズアンテナ装置は、所望の軸方向をY軸方向/X軸方向それぞれの断面を個別に設計することができる。つまり、
図1及び
図2に示すように、Y軸方向に曲率を持つ円柱形状のシリンドリカルレンズのみならず、Y軸方向/X軸方向で異なる曲率を持つトーリックレンズ、回転対称のレンズ等でも良い。
【0035】
また、誘電体レンズを光学設計するためには、一般に使用周波数の5波長以上程度の開口径が必要とされているため、第1実施形態に係るアンテナ装置1Aにおいて第2の誘電体レンズ4も5波長以上の開口径であると、より設計通りにビーム幅を広げることが可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの外観構成を示す斜視図である。また、
図5は、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの一次放射器2、誘電体レンズ5及び金属板6の位置関係を示す図である。なお、
図4及び
図5において、前述した
図1及び
図2に示す第1実施形態に係るアンテナ装置1Aと共通する部材には同一の符号を付けている。
【0037】
図4及び
図5において、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bは、ミリ波帯(例えば、300GHz帯)以下の周波数で動作するレンズアンテナ装置であり、平面波を放射する一次放射器2と、一次放射器2の放射方向に焦点距離fを有する誘電体レンズ5と、所望の軸方向に使用周波数の5波長以下のスリット7を有する金属板6と、を備える。一次放射器2は、所望の軸方向に放射部2aの開口径D1が使用周波数の5波長以上である。誘電体レンズ5は、所望の軸方向に一次放射器2の開口径D1と同径の開口径D4を有する非球面レンズである。金属板6は、誘電体レンズ5の主面5aから、一次放射器2と反対側に焦点距離fだけ離れた位置に配置される。
【0038】
ここで、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bにおいても誘電体レンズ5の開口径D4は、一次放射器2の開口径D1以上であればよいため、同径としている。また、第1実施形態に係るアンテナ装置1Aで説明したように、上記所望の軸方向は、レンズによって光線設計を行う軸方向であり、
図4及び
図5ではY軸方向である。また、誘電体レンズにおける主面は、入射前及び出射後の光線をそれぞれ延長した2直線を考え、その2直線の交点が描く軌跡のことである。
【0039】
図4に示すように、金属板6は、2枚の長方形状の金属板6A,6Bからなり、スリット7を形成する距離(スリット幅:d)を隔てて対向配置される。この場合、金属板6A,6Bの長手方向側が対向するように配置される。
【0040】
図6は、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの金属板6の配置位置を示す図である。同図において、“Mef”は一次放射器2の開口面の磁界強度の分布、“P”は一次放射器2の開口面における磁界強度がピークの1/e(e:自然対数の底)になる点、“ω[f]”は誘電体レンズ5の主面におけるビーム半径、“fp”は誘電体レンズ5の焦点、“θ”は誘電体レンズ5の焦点fpから無限遠におけるビームの広がり角度、“ω
0”は誘電体レンズ5の焦点fpにおけるビーム半径、“BW”は実際のビーム分布範囲、“Oax”は光軸(誘電体レンズ5の焦点fpを通る光学設計の代表線であり、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bでは誘電体レンズ5のY軸方向中央とする)である。
【0041】
上記ビームの広がり角度θ、誘電体レンズ5の焦点fpにおけるビーム半径ω
0及び誘電体レンズ5の主面におけるビーム半径ω[f]は、以下に示す式(1)〜(3)で表すことができる。
【0045】
mouth=43[mm]:一次放射器2の開口径(Y軸方向)
ω[f]=10.75[mm]:誘電体レンズ5の主面におけるビーム半径(式(3)より)
ω
0=3.84[mm]:誘電体レンズ5の焦点fpにおけるビーム半径
n=√ε
r:誘電体の屈折率(誘電体は、例えば“テフロン(登録商標)”)
ε
r=1.96:誘電体の比誘電率(誘電体は、例えば“テフロン(登録商標)”)
f=37[mm]:誘電体レンズ5の焦点距離f(光線近似による設計値)
θ=32deg:誘電体レンズ5の焦点fpから無限遠におけるビームの広がり角度(式(1)より)
d=8.5[mm]≧2*ω
0:金属板6のスリット幅
79GHz:周波数
【0046】
一次放射器2の開口面分布の磁界強度がピーク値の1/eになる点Pはビーム半径と呼ばれ、誘電体レンズ5の焦点fpで最小となる。誘電体レンズ5の焦点fpにおけるビーム半径ω
0は特にビームウェスト半径と呼ばれる。ビーム半径ω
0の端では電力密度がピーク値の1/e
2になるため、この半径内に約86%のエネルギーが含まれる。したがって、誘電体レンズ5の焦点fpにビームウェスト半径と同等の幅を持つスリット7を配置することでエネルギーの遮蔽が少なく非常に小さい開口径(最小で2ω
0)を実現することができる。但し、一次放射器2から伝搬してくる電磁波の一部をスリット7によって遮蔽しているため、スリット7の通過後は回折波によるグレーティングローブが発生する。グレーティングローブについては、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの遠方界放射パターンにおいてメインローブの外側で発生していることが確認できるが、目的通り半値幅を広げることが実現できているため、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bは有効である。
【0047】
また、一次放射器2から放射された平面波は、誘電体レンズ5を通過した後は球面波として空間を伝搬するため、YZ平面で切った断面で見た際に等位相面が湾曲している。しかし、誘電体レンズ5の焦点fpにおいては等位相面がY軸と並行となっており、位相の観点からもスリット7を誘電体レンズ5の焦点fpに配置することが適している。ω
0は、tanθに反比例する関数となっているが、実際にはビームの広がり角度θを大きくすると収差によって指数関数的にビームウェストが悪化する。このような場合に非球面レンズを使用することで収差(主に球面収差)が抑えられ、ビームの広がり角度θを大きくすることでビームウェスト径をさらに小さくすることができる。
【0048】
第2実施形態に係るアンテナ装置1Bにおいて、正規化した一次放射器2の開口面の磁界強度分布関数は、以下に示す式(4)で表すことができる。
【0050】
r:mouth/2で正規化した、誘電体レンズ5のY軸方向中心からの開口面位置、“0”が中心で、“1”が開口端面となる。
r
0=0.5:一次放射器2の開口面端(r=1)における磁界強度を決める係数
ff[r]:位置rにおけるピーク値で正規化した磁界強度分布関数
開口面分布の磁界強度がピーク値の1/eになる点はr=0.5となる。実寸法は開口面中心からmouth/4となる。これにより式(3)が導出される。
【0051】
第2実施形態に係るアンテナ装置1Bでは、Y軸方向の開口径を43mmから8.5mmとすることができる。即ち、ビーム幅を広くすることができる。
【0052】
図7は、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの遠方界放射パターンと、その比較対象である一次放射器2のみの遠方界放射パターンを示す図である。この場合、
図7の(a)が一次放射器2のみの遠方界放射パターンであり、
図7の(b)が第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの遠方界放射パターンである。共にYZ平面における放射パターンを示している。一次放射器2のみの場合、ピーク利得は25.2dBi、半値幅は7.0degである。他方、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの場合、ピーク利得は19.2dBi、半値幅は26.5degである。半値幅においては、一次放射器2のみの場合の7.0degに対し、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの場合は26.5degと、ビーム幅が広くなっているのが分かる。
【0053】
このように、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bによれば、Y軸方向に放射部2aの開口径が5波長以上であり、平面波を放射する一次放射器2を使用し、Y軸方向に一次放射器2の開口径以上の開口径を有するとともに、焦点距離fを有する誘電体レンズ5を一次放射器2の放射方向に配置し、更に誘電体レンズ5の主面5aから、一次放射器2と反対側に焦点距離fだけ離れた位置に、Y軸方向に5波長以下のスリット7を有する金属板6を配置したので、アンテナのY軸方向の開口径を小さくできて、ビーム幅を広げることができる。
【0054】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係るアンテナ装置1Cの外観構成を示す斜視図である。なお、同図において、前述した
図4に示す第2実施形態に係るアンテナ装置1Bと共通する部材には同一の符号を付けている。
【0055】
前述した第2実施形態に係るアンテナ装置1Bは、片凸レンズの誘電体レンズ5を有したが、第3実施形態に係るアンテナ装置1Cは、両凸レンズの誘電体レンズ10を有している。誘電体レンズ10は、YZ平面の断面で両凸レンズとして光学設計されたシリンドリカルレンズである。なお、誘電体レンズ10のYX平面視した形状は長方形である。誘電体レンズ10は、一次放射器2に対し、YZ平面の放射パターンを変化させ、XZ平面の放射パターンはできるだけ変化させないようにしている。両凸レンズの誘電体レンズ10を使用しても本発明の効果は得られ、より簡便な設計で誘電体レンズの設計を行うことができる。
【0056】
図9は、第3実施形態に係るアンテナ装置1Cの金属板6の配置位置を示す図である。ビームの広がり角度θ、誘電体レンズ10の焦点fpにおけるビーム半径ω
0及び誘電体レンズ10の主面におけるビーム半径ω[f]は、前述した式(1)〜(3)で表すことができる。また、正規化した一次放射器2の開口面の磁界強度分布関数ff[r]は、前述した式(4)で表すことができる。なお、mouth=43[mm]、ω[f]=10.75[mm]、n=√ε
r、ε
r=1.96、周波数79GHzは、前述した通りである。他の定数、変数値は以下の通りである。
【0057】
ω
0=8.69[mm]:焦点fpにおけるビーム半径(ビームウェスト半径)(式(2)より)
R
1=60mm:誘電体レンズ10の一次放射器側曲率半径
R
2=−60mm:誘電体レンズ10の放射方向側曲率半径
LD
1=20mm:光軸Oaxにおける誘電体レンズ10の厚み
f=79mm:誘電体レンズ10の焦点距離(式(5)より)
θ=15.5deg:焦点fpから無限遠におけるビームの広がり角度(式(1)より)
d=17.5mm≧2*ω
0:金属板6のスリット幅
なお、レンズ曲率半径は、一次放射器2側へ膨らむ方向をプラスで表記している。
【0058】
焦点距離fの逆数であるジオプトリ(1/f)は、以下に示す式(5)で表すことができる。
【0060】
第3実施形態に係るアンテナ装置1Cでは、Y軸方向の開口径を43mmから17.5mmとすることができる。即ち、ビーム幅を広くすることができる。
【0061】
このように、第3実施形態に係るアンテナ装置1Cによれば、Y軸方向に放射部の開口径が5波長以上であり、平面波を放射する一次放射器2を使用し、Y軸方向に一次放射器2の開口径以上の開口径を有するとともに、焦点距離fを有する両凸レンズの誘電体レンズ10を一次放射器2の放射方向に配置し、更に誘電体レンズ10の主面から、一次放射器2と反対側に焦点距離fだけ離れた位置に、Y軸方向に5波長以下のスリット7を有する金属板6を配置したので、アンテナのY軸方向の開口径を小さくできて、ビーム幅を広げることができる。
【0062】
(第4実施形態)
図10は、本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置1Dの一次放射器2、第1の誘電体レンズ30、金属板6及び第2の誘電体レンズ31の位置関係を示す図である。なお、同図において、前述した
図4及び
図5に示す第2実施形態に係るアンテナ装置1Bと共通する部材には同一の符号を付けている。また、第1の誘電体レンズ30は、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの誘電体レンズ5と同一のものであり、非球面レンズである。また、金属板6にはスリット(スリット幅:d)7が設けられている。
【0063】
前述した第2実施形態に係るアンテナ装置1Bは、一次放射器2、誘電体レンズ5及び金属板6の3つの部材を有したが、第4実施形態に係るアンテナ装置1Dは、それらの部材の他に第2の誘電体レンズ31を有する。第2の誘電体レンズ31は、第1の誘電体レンズ30とは異なるものであり、YZ平面における断面が、|R
3|<|R
4|となった凹メニスカレンズである。第2の誘電体レンズ31は、金属板6のスリット7の出力側部分に設けられる。第2の誘電体レンズ31を設けることで、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bよりもさらにビーム幅を広げることができる。なお、第2の誘電体レンズ31は、凹レンズであれば良く、例えば両凹レンズや平凹レンズでも良い。
【0064】
第4実施形態に係るアンテナ装置1Dにおいて、ビームの広がり角度θ、第1の誘電体レンズ30の焦点fpにおけるビーム半径ω
0及び第1の誘電体レンズ30の主面におけるビーム半径ω[f]は、前述した式(1)〜(3)で表すことができる。また、正規化した一次放射器2の開口面の磁界強度分布関数ff[r]は、前述した式(4)で表すことができる。なお、mouth=43[mm]、ω[f]=10.75[mm]、n=√ε
r、ε
r=1.96、周波数79GHzは、前述した通りである。他の定数、変数値は以下の通りである。
【0065】
ω
0=3.84[mm]:焦点fpにおけるビーム半径(ビームウェスト半径)(式(2)より)
R
3=−8.5mm:第2の誘電体レンズ31の一次放射器側曲率半径
R
4=−25.5mm:第2の誘電体レンズ31の放射方向側曲率半径
LD
2=4.25mm:光軸Oaxにおける第2の誘電体レンズ31の厚み
f=37mm:第1の誘電体レンズ30の焦点距離(光線近似による設計値)
θ=32deg:焦点fpから無限遠におけるビームの広がり角度(式(1)より)
d=8.5mm≧2*ω
0:金属板6のスリット幅
なお、レンズ曲率半径は、一次放射器2側へ膨らむ方向をプラスで表記している。
【0066】
第4実施形態に係るアンテナ装置1Dでは、Y軸方向の開口径を43mmから8.5mmとなり、第2の誘電体レンズ31を有したことで、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bよりもビーム幅が広がる。
【0067】
図11は、第4実施形態に係るアンテナ装置1Dの遠方界放射パターンと、その比較対象である一次放射器2のみの遠方界放射パターンを示す図である。この場合、
図11の(a)が一次放射器2のみの遠方界放射パターンであり、
図11の(b)が第4実施形態に係るアンテナ装置1Dの遠方界放射パターンである。共にYZ平面における放射パターンを示している。一次放射器2のみの場合、ピーク利得は25.2dBi、半値幅は7.0degである。他方、第4実施形態に係るアンテナ装置1Dの場合、ピーク利得は19.1dBi、半値幅は29.9degである。半値幅においては、一次放射器2のみの場合の7.0degに対し、第4実施形態に係るアンテナ装置1Dの場合は29.9degと、ビーム幅が広くなっているのが分かる。また、そのビーム幅は、第2実施形態に係るアンテナ装置1Bの26.5degよりも広がっている。
【0068】
このように、第4実施形態に係るアンテナ装置1Dによれば、Y軸方向に放射部の開口径が5波長以上であり、平面波を放射する一次放射器2を使用し、Y軸方向に一次放射器2の開口径以上の開口径を有するとともに、焦点距離fを有する第1の誘電体レンズ30を一次放射器2の放射方向に配置し、更に第1の誘電体レンズ30の主面から、一次放射器2と反対側に焦点距離fだけ離れた位置に、Y軸方向に5波長以下のスリット7を有する金属板6を配置し、更にYZ平面における断面が、|R
3|<|R
4|となった凹メニスカレンズである第2の誘電体レンズ31を金属板6のスリット7の出力側部分に配置したので、アンテナのY軸方向の開口径を小さくできて、ビーム幅を広げることができ、しかも第2の誘電体レンズ31を有していない第2実施形態に係るアンテナ装置1Bよりも更にビーム幅を広げることができる。
【0069】
以上、本発明の第1〜第4実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【解決手段】Y軸方向に放射部2aの開口径が5波長以上であり、平面波を放射する一次放射器2を使用し、Y軸方向に一次放射器2の開口径以上の開口径を有するとともに第1の焦点距離f