特許第6337176号(P6337176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337176
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】薬莢及び薬莢の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F42B 5/285 20060101AFI20180528BHJP
   B21D 51/10 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   F42B5/285
   B21D51/10
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-79865(P2017-79865)
(22)【出願日】2017年4月13日
(62)【分割の表示】特願2014-517837(P2014-517837)の分割
【原出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-138097(P2017-138097A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年4月13日
(31)【優先権主張番号】11172933.1
(32)【優先日】2011年7月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514005076
【氏名又は名称】ハンス−ユルゲン ノイゲバウアー
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユルゲン ノイゲバウアー
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第00574877(GB,A)
【文献】 米国特許第03099958(US,A)
【文献】 特公昭31−009800(JP,B1)
【文献】 特表2008−531977(JP,A)
【文献】 米国特許第03955506(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0159989(US,A1)
【文献】 米国特許第03408718(US,A)
【文献】 国際公開第2007/014024(WO,A2)
【文献】 仏国特許発明第00655854(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B
B21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射薬及び発射体を収容するための長尺状の内部空洞(4)を備え、上端と下端との間を長手方向軸線(5)に沿って延びる銃弾用薬莢(1)であって、
前記空洞(4)が、前記薬莢(1)の前記上端において開口し、
前記空洞(4)が、径方向において、周方向に延びる側壁(3)によって区画され、前記側壁(3)が、前記薬莢(1)の前記上端を形成する第一の軸方向端とその反対側の第二の軸方向端とを有し前記薬莢(1)の前記長手方向軸線(5)を規定する長尺状の筒状部により形成され、
前記空洞(4)がまた、その底において、底面(8)と上面を有する底壁(2)によって区画され、前記底壁(2)が、前記筒状部の前記第二の軸方向端に接続され、前記底壁(2)の前記底面(8)と前記上面との間を延びて点火手段を収容するように配置された孔(7)を備え、
前記薬莢(1)の前記下端の最も近くに位置して、前記薬莢(1)の前記長手方向軸線(5)に垂直な平面上を周方向に延びる環状突起(18)をその外側面に更に備える薬莢(1)において、
軸方向両端において開口する長尺状の筒状のスリーブ部(10)と、前記スリーブ部(10)に固定された別体の底部(11)とを備え、
前記薬莢(1)の前記筒状部は、前記側壁(3)がその全体において前記スリーブ部(10)により構成されるように前記スリーブ部(10)によって形成され、前記長手方向軸線(5)に垂直な断面における前記薬莢(1)の周方向最外面は、前記空洞(4)の上端から下端までの長さ全体にわたって前記側壁(3)の表面であり、
前記薬莢(1)の前記底壁(2)は、少なくとも部分的に前記スリーブ部(10)によって形成され、且つ、少なくとも部分的に前記底部(11)によって形成され、
前記底部(11)は、軸方向下端面(8)と、反対側の軸方向上端面(15)と、前記環状突起(18)が配置される周方向に延びる前記外側面とを備え、前記点火手段を収容するように構成されており、前記底部(11)は、その上端において、前記長手方向軸線に向かって前記孔内に延出する第二の環状突起を備え、
前記スリーブ部(10)は、その2つの軸方向端(12)の一方において、前記底部(11)の前記軸方向上端面(15)に対して固定され、
前記スリーブ部(10)は、前記スリーブ部(10)が前記底部(11)に固定される前記スリーブ部(10)の軸方向端部(12)において、径方向内側に突出するフランジ(13)を備え、前記フランジ(13)が、前記底部(11)の上端面(15)に対向して当接する環状端面(14)を有し、前記薬莢は、実質的にJ字状の断面形状を有する環状の接続部品を備え、
前記第二の環状突起と前記フランジは、前記接続部品が前記フランジの上面と前記第二の環状突起の下面に対し当接し押圧するように、前記接続部品の前記J字状断面により画定される環状スペース内に延びる、
ことを特徴とする銃弾用薬莢。
【請求項2】
前記スリーブ部(10)と前記底部(11)とは、互いに固定して取り付けた際に自動芯出しをする請求項1に記載の薬莢。
【請求項3】
前記底部(11)は、前記薬莢(1)の前記長手方向軸線(5)に垂直に延びる、板状要素又は平面環である請求項1又は2に記載の薬莢。
【請求項4】
前記底部(11)の壁厚は、前記スリーブ部(10)の壁厚より大きい請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬莢。
【請求項5】
前記底部(11)と前記スリーブ部(10)は、接着剤接合、リベット打ち、クリンチング、レーザー溶接、又はこれらの組み合わせによって互いに固定される請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬莢。
【請求項6】
前記底部(11)は、前記薬莢(1)の前記長手方向軸線(5)の方向において、前記底部(11)の軸方向下端面(8)から延びる第一の断面(17a)と、前記底部(11)の軸方向上端面(15)から延び、前記第一の断面(17a)より直径が小さい第二の断面(17b)とを備えて、
前記第一の断面(17a)が前記環状突起(18)を構成し、前記第二の断面(17b)が前記底部(11)の凹部を構成しており、
前記スリーブ部(10)における、前記底壁(2)から延出して前記底壁(2)の直ぐ近くに隣接する部分の直径は、前記底部(11)の前記第二の断面(17b)の直径よりも大きく、前記環状突起(18)及び前記スリーブ部(10)の前記部分がそれぞれ形成する2つの突出する段差(19,20)の間の領域によって抽筒溝(21)が規定される請求項1に記載の薬莢。
【請求項7】
前記底部(11)は、鋼、アルミニウム、若しくはその他の金属、又は金属合金から作られ、且つ/又は、
前記スリーブ部(10)は、鋼、アルミニウム、若しくはその他の金属、金属合金、又はブラスチック材料から作られる請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬莢。
【請求項8】
前記底部(11)及び/又は前記スリーブ部(10)には、防食材料がコーティングされる請求項1〜7のいずれか一項に記載の薬莢。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の薬莢(1)の製造方法であって、
前記底部(11)及び前記スリーブ部(10)を用意することと、
前記スリーブ部(10)を前記底部(11)に固定することを含む方法。
【請求項10】
前記底部(11)及び前記スリーブ部(10)を用意することは、トランスファプレスによって前記スリーブ部(10)を製造すること、及び/又は、成形加工及び/又は機械加工によって前記底部(11)を製造することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スリーブ部(10)を製造すること、及び/又は、前記底部(11)を製造することは、中間焼きなまし工程を含まない請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スリーブ部(10)を用意すること、及び/又は前記底部(11)を用意することは、前記スリーブ部(10)を前記底部(11)に固定する前に行われるコーティング工程を含む請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング工程は、浸漬コーティング、スプレーコーティング、粉体コーティング、静電粉体コーティング、微粉体コーティング、スケーリング、酸化、固形グリースコーティング、低温プラズマコーティング、及び/又は真空プラズマコーティングを含む請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発射薬及び発射体を収容して保持するための長尺状の内部空洞を備えた銃弾用薬莢に関する。
【背景技術】
【0002】
銃弾用カートリッジは、一般的に、発射体又は弾丸と、火薬やコルダイト等の発射薬と、プライマー又は点火媒体を含む点火手段とを保持する薬莢を備える。このため、薬莢は、その他のカートリッジ部品を機能的にまとめて保持し配置するための容器として用いられる。
【0003】
薬莢は、通常カップ状で、概して円対称性又は円筒対称性を有する。薬莢は、例えば、円筒状であるか、又は、異なる直径の2つ以上の円筒断面を備えて例えば首のある構成を形成しているものがある。薬莢の内部で、発射薬は、薬莢の上部開口に配置されて例えば摩擦で保持される発射体と、薬莢の底壁との間に配置される。点火手段は、底壁上又は内部に位置する。使用時、カートリッジは銃身の後端の薬室に装填され、この時、発射体は銃身の方向を向き、点火手段を含む底壁又は後端は、撃針や撃鉄等の、点火手段と協働する銃器の点火装置に面する。特定の銃器への使用に適したカートリッジの薬莢の寸法は、薬莢の直径が銃身の直径より僅かに小さくなるように、銃身に合わせて具体的に選択される。
【0004】
銃器が作動すると、銃器の点火装置がカートリッジの点火手段に作用して、プライマー又は点火媒体が点火され、又は火花を発し、それによって発射薬が点火される。通常、撃針や撃鉄は、機械的衝撃によってプライマー又は点火媒体を点火する。発射薬が点火されて燃焼すると、薬莢内でガスが発生し、それにより薬莢内部の圧力が増加する。この圧力によって薬莢が膨張し、薬室の壁に対してガス密封状態を形成する。そして、発射体が薬莢から分離して銃身内を加速する。発射体が銃身に沿って移動して銃身を離れると、圧力が再び低下し、続いて空薬莢が薬室から排出される。
【0005】
上記のプロセスにおいて、薬莢と薬室の壁との間に形成されるガス密封性は、薬莢内で発生したガスが、銃身以外の経路から銃器の外へ逃げてしまうのを防ぐ目的にも役立つ。もしこのガスが銃身以外の経路から逃げてしまうと、銃器の使用者が重傷を負う危険性が高い。
【0006】
発射薬の点火によって増加する薬莢内部の圧力は非常に高く、例えば4000バールという値に達する場合があり、薬莢にかかる負荷は大きい。薬莢は、銃器の誤作動及び使用者の負傷を回避するために、このような負荷に確実に耐えるような構成でなくてはならない。更に、底壁は通常、撃鉄や撃針からの衝撃に破裂することなく耐えるために、薬莢の他の部分よりも厚くなくてはならない。この場合、一般的に、厚い底壁と、重さを考慮して薄い材料で構成するのが好ましい円筒状のスリーブ部との間の移行領域で特に、非常に高い応力及びそれによる重大なノッチ効果が生じ、それにより亀裂が形成される危険が相当にある。
【0007】
更に、薬莢は、空になった薬莢が圧力解放時に適切な抽筒機構によって薬室から抽出されるように、元の形状に幾分戻り得るような構成でなくてはならない。一般的に、このような抽筒機構は、薬莢の外面に設けられた抽筒溝又は環状の突起若しくは段差に係合する。
【0008】
従来の銃器用薬莢は、その構成が統一されている。これらの薬莢は、100年以上前から、通常、絞り加工(特に深絞り加工)と複数の機械を使用した一連の工程によって、黄銅、又はそれほど多くはないが鋼若しくはアルミニウムから、単一部品として製造されてきた。その際、例えば絞り加工、圧印加工、旋削加工、縁切り加工、きりもみ加工、研磨加工、機械加工、及び/又はヘッダー加工等の各成形工程の間で、薬莢材料を再結晶化させるための焼きなまし工程を行わなければならず、この焼きなまし工程は、次の成形工程の前に、洗浄工程、エッチング工程、及び/又は脱酸工程を必要とする。このように工程数が多いと、その分薬莢の総コストが相当に増加する。
【0009】
黄銅は、延性及び軟性が比較的高いという有利な物性を有するため、成形金型に過度の摩耗及び負担を与えることなく、高い成形精度の深絞りを容易に行うのが可能になる。このため、黄銅は、最も一般に用いられる材料である。更に、黄銅は十分な弾力性も有するため、薬室から空薬莢を確実に抽出させることができる。しかし、黄銅は比較的重く、また、銅を多く含むために高価である。
【0010】
それほど多くはないが、鋼が使われることもある。黄銅に比べると変形性及び延性が劣るため、上記の深絞り加工を伴う従来の製造プロセスで鋼製の薬莢を製造するには、極めて高い技術的努力及び焼きなまし工程の追加が必要となる。
【0011】
より軽量な薬莢を必要とする特定の用途では、薬莢の材料としてアルミニウムが使用されてきた。しかし、アルミニウムは抗張力が極めて低く、銃器の薬莢に一般的に発生する高圧力によって、大惨事をもたらすほどの不具合が起こる危険性が高い。このため、アルミニウム製の薬莢は、ほとんどの銃器において使用に適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の目的は、薬莢及び対応するカートリッジの動作特性に影響を与えない範囲で選択可能な材料の種類を増やし、より高コスト効率で製造できる銃器用薬莢、及びそのような薬莢の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1で請求される薬莢及び請求項11で請求される方法によって達成される。この薬莢及び方法の有利な実施の形態が、各従属項の主題である。
【0014】
本発明によれば、銃弾用、特にライフルや拳銃の銃弾用薬莢は、発射薬と、発射体、即ち弾丸とを収容するための長尺状の内部空洞を備える。好ましくは、薬莢は、小型銃器の銃弾用の薬莢であり、即ち、0.5口径以下に対応する径方向外径を有する。これは、薬莢が、銃身の直径が12.7mm(0.5インチ)以下である銃器での使用に適することを意味する。細長の薬莢は、縦方向において2つの対向する端を有し、上記内部空洞は、これらの端の一方において開口し、カートリッジが組み立てられた状態で、この端において発射体を収容する。上記内部空洞の他端は、この空洞の底を形成する底壁によって実質的に閉鎖される。よって、これらの2つの縦方向の端は共通して、それぞれ上端及び下端とされる。したがって、本願において、「上」、「下(底)」、「上方」、及び「下方」といった表現は、通常通り、薬莢の底壁が下方を向き、カートリッジの組立後において発射体がこのカートリッジの上端又は頂点を形成する薬莢の向きに基づくものである。薬莢及び内部空洞によって長手方向軸線が規定され、薬莢は、この長手方向軸線に沿って上端と下端との間を延びる。薬莢は、好ましくは回転対称であり、より好ましくは、その全長に亘って円形断面を有する。
【0015】
薬莢の内部空洞は、周方向に延びる側壁によって、径方向、即ち長手方向軸線に垂直な方向において閉鎖又は境界付けられる。この側壁の一部、好ましくは全体は、薬莢の上端を形成する第一の軸方向端と、その反対側の第二の軸方向端とを有し、薬莢の長手方向軸線を規定する長尺状の筒状部によって形成される。この筒状部は、円筒状であるか、長手方向軸線を中心に円筒対称性を有するか、又はそれぞれが円筒状若しくは円筒対称の複数の縦断面を備えることが好ましい。
【0016】
更に、薬莢の内部空洞の底は、筒状部の第二の軸方向端に接続される底壁によって閉鎖又は境界付けられる。即ち、筒状部は、底壁から縦方向に延びる。底壁は、底壁の底面と上面との間を延びる孔を備え、この孔は、組立て後のカートリッジが装填された銃器の撃針又は撃鉄による衝撃を受けて内部空洞内の発射薬を点火するための、プライマー等のカートリッジの点火手段を収容するために配置される。
【0017】
薬莢の外側面上の、薬莢の下端に最も近い位置に環状突起が設けられる。この環状突起は、薬莢の長手方向軸線に対して垂直又は実質的に垂直な平面上を周方向に延びる。環状突起は、発砲後に空薬莢が薬室から抽出されるように、銃器の抽筒機構と係合可能である。環状突起、より詳細には環状突起によって形成される段差は、薬莢の長手方向軸線に対して垂直又は実質的に垂直な平面上を周方向に延びる抽筒溝の、軸方向における一方の境界を規定する働きをし得る。他方の軸方向の境界は、別の段差又は突起によって規定されることにより、この抽筒溝は、軸方向に離間した2つの突起又は段差の間を延びる。
【0018】
薬莢は、例えば機械的手段によって固定された2つの物理的に異なった部品、即ち、別々に製造した部品又は要素を備える。これらは即ち、軸方向両端が開口した長尺状の筒状スリーブ部及び底部である。薬莢は、これら2つの部品のみからなってもよいが、他の物理的に異なった部品を1つ以上備えてもよい。特に、例えば1つ以上のリベット又はリベット状要素といった、スリーブ部と底部とを互いに固定する固定部品を1つ以上備えてもよい。薬莢の筒状部は、スリーブ部の一部である、又は、スリーブ部によって構成される。よって、スリーブ部は、内部空洞の径方向又は側方の境界全体、即ち内部空洞の側壁全体を形成する。薬莢の底壁は、少なくともその一部、好ましくは大部分又は全体が底部によって形成される。なお、底壁の一部、好ましくは小部分だけは、スリーブ部の一部分によって形成され得る。
【0019】
底部は、薬莢の縦方向において、空洞に背を向ける下端面と、反対側の、空洞に対向する上端面とを備える。この2つの端面の間を、例えば円筒状であり得る周方向外側面が延びてこれらを接続し、この側方向又は径方向の外面上に、環状突起が設けられる。さらに、抽筒溝の一部が環状突起によって形成又は境界付けられる場合、抽筒溝は、この側方向又は径方向の外面に、その全部又は一部に亘って設けられる、又は延出する。後述するように、これは、抽筒溝の2つの軸方向境界又は側壁の一方、即ち、環状突起と反対側の段差又は突起を、隣接するスリーブ部の軸方向端部で形成することによって実現し得る。
【0020】
このような薬莢の構成によれば、スリーブ部と底部とが別々に製造可能であるため、薬莢の製造に要する工程数が極めて減るという利点がある。例えば、スリーブ部を、特にトランスファプレスを用いて単一工程で、中間焼きなましを行うことなく深絞り加工で製造できる、又は、その全体を、トランスファプロセス内でこのプロセスから途中で取り出すことなく製造できる。また、底部は、例えば、板状要素を機械加工することによって、又は成形型若しくはプレス型等の適切な金型を使用した単純な成形加工によって製造され得る。また、スリーブ部と底部とがこのように別々に製造可能であることにより、従来の製造処理には適さなかった、黄銅とは異なる材料を、他の問題が生じない範囲で使用することも可能となる。その際、スリーブ部と底部とに、異なる材料を選択することも可能となる。更に、抽筒機構と係合するための環状突起又は抽筒溝が底部に形成されることにより、製造が極めて簡素化される。特に、底部が成形加工によって製造される場合、同じ成形加工で簡単に環状突起又は抽筒溝を形成できるため、今日一般に利用される材料除去技術を採用しなくてよい。更に、高い内部ガス圧に耐えて亀裂形成や断裂を発生させない薬莢を構成できる。
【0021】
好適な実施形態において、スリーブ部と底部とは、それぞれ、単一部品として一体形成される。これにより、薬莢の製造が更に簡素化される。
【0022】
底部は、薬莢の長手方向軸線に垂直に延びる、平面で好ましくは円形の板状要素、又は平面で好ましくは円形の環であると有利である。このような底部は、特に製造が簡単である。
【0023】
好適な実施形態において、底部の壁厚、特に縦方向の壁厚は、その全長に亘って一定であってもよい、スリーブ部の壁厚より大きい。よって、底部の最大厚さ、特に薬莢の縦方向における最大厚さは、スリーブ部の最大壁厚より大きい。換言すれば、底壁を構成する底部の材料は、スリーブ部のどの部分を構成する材料よりも厚い。そのような底部は、有利には、点火手段を収容するのに適し、且つ、既存の銃器が対応する薬莢の外寸法を有するように構成できる。
【0024】
しかし、代替の好適な実施形態では、底部の最大壁厚、特に縦方向の最大壁厚は、ノッチ効果を増加させない又は亀裂形成若しくは断裂に対する耐性を犠牲にしない範囲で、スリーブ部の最大壁厚と同一若しくは実質的に同一、又はそれより小さくてもよい。このような構成により、従来の薬莢に比べて、薬莢の重さ及び材料消費量を大幅に減らすことができる。
【0025】
好適な実施形態において、底部とスリーブ部は、接着剤接合、リベット打ち、クリンチング、クランピング、レーザー溶接、又はこれらの組み合わせによって互いに固定される。ここで、物理的に異なった別体の接続部品を用いて底部とスリーブ部とを互いに固定することもできる。このような接続部品は、例えば環状であり、底部とスリーブ部とを互いに締め付ける。このような接続部品は、例えば、リベットであるか、リベット形状を有する。接着剤接合の場合は、液体や湿気の進入を防ぐために内部空洞を封止するように接着剤を配置すると有利である。
【0026】
有利な構成においては、スリーブ部は、その2つの軸方向終端の一方が、底部の上端面に固定される。これにより製造が更に簡素化される。スリーブ部が、底部に固定されるその軸方向端において、径方向内側に突出し、底部の上端面に対向し当接する環状端面を有するフランジ若しくはリムを備える、又はこのフランジ若しくはリムで終端すると、製造が尚更簡素化される。このような径方向内側に突出するフランジは、好ましくは90°又は実質的に90°の角度で外周が長手方向軸線に向かって径方向内側に折り曲げられた筒状のスリーブ部の端部によって有利に構成され得る。このフランジは、例えば深絞り加工によってトランスファプレスで直接製造してもよい。好ましくは、カップ状の部品は、トランスファプレスで、ブランク、特に丸いブランクから製造され、このカップ状部品の底に、トランスファプレス内で、又はトランスファプレスからこのスリーブ部を取り出して底部に装着する前に、穴を設ける。スリーブ部のフランジ部と側壁部との間の移行領域における厚さ分布がより均一であることにより、特に底壁が筒状部より厚い場合において底壁と筒状部との間の移行領域に生じるノッチ効果及び亀裂形成の危険性が大幅に低減されることが分かった。そして、底壁の材料及び底部の変形によって、この移行領域において亀裂が形成されない薬莢の緊塞が大いに促進される。
【0027】
これらの有利な構成において、底部が、薬莢の長手方向軸線方向において、第一の断面と、隣接する第二の断面とを備えることが更に好ましく、これらの断面は共に、円筒状又は実質的に円筒状であるのが好ましい。第二の断面の直径は、第一の断面の直径より小さい。第一の断面は、底部の軸方向下端面から第二の断面が始まるまで延び、第二の断面は、底部の軸方向上端面に向かって、好ましくはこの軸方向上端面まで延びる。よって、第一の断面と第二の断面とは、環状で且つ周方向に延びる、好ましくは直角又は90°の段差で接触する。このように、第一の断面は、第二の断面より径方向外側に突出し周方向に延びるフランジ又はリムの形状として設けられる環状突起を構成し、従って第二の断面は、底部の凹部を構成する。また、底部は、第二の断面に隣接し、径方向断面が第二の断面の径方向断面より大きく、第一の断面又は環状突起の直径と同一若しくは実質的に同一である第三の断面を更に備えてもよい。しかし、製造の簡単化の理由から、底部の第二の断面を底部の軸方向上端面まで延出させ、スリーブ部における、底壁から延出して底壁の直ぐ近くに隣接する部分の直径を、底部の第二の断面の直径よりも大きく、例えば第一の断面又は環状突起の直径と同一又は実質的に同一とし、底部の第二の断面とスリーブ部との間に、好ましくは直角又は90°の、環状で周方向に延びる段差をもう一つ形成させることが好ましい。このような構成により、好ましくは、環状突起又はフランジ及びスリーブ部の上記部分がそれぞれ形成する2つの突出する段差間の領域によって上記のような抽筒溝が形成される。よって、抽筒溝の上側の境界は、スリーブ部の一部によって形成されるのが好ましい。これらの構成、特に底部の第二の断面が底部の軸方向上端面まで延びる構成により、抽筒溝の形成が非常に簡素化される。
【0028】
薬莢がこのように2つの部材から構成されるので、コーティングされていない若しくはコーティングされた防錆若しくはステンレス材料又は腐食しやすいが適切なコーティングにより保護された材料を含む幅広い材料から底部を形成することができるという利点がある。好適な実施形態によると、底部は、鋼、アルミニウム、若しくはその他の金属、又は金属合金を含むか、これらの材料のいずれか1つから作られるか、又はその材料からなる。例えば、薬莢の上記の構造により、薬莢の動作特性、特に機械的安定性を犠牲にせずに、重さとコストを低減する目的で鋼又はアルミニウムを選択できる。更に、環状突起の底部を使用することもでき、また、抽筒溝を旋削加工で形成することもできる。
【0029】
好適の実施形態において、スリーブ部は、鋼、アルミニウム、アルミニウム以外の金属、金属合金、又はプラスチック材料を含むか、その材料から作られるか、又はその材料からなる。このように選択することにより、重さ及びコストを更に低減できる。当然ながら、スリーブ部は、黄銅を含むか、その材料から作られるか、又はその材料からなってもよい。
【0030】
上述したように、底部は、腐食しやすい材料を含んでいてもよい。これは、スリーブ部についても同様である。いずれにせよ、底部及び/又はスリーブ部は、防食性若しくは耐食性の材料でコーティングされるか、薬莢のその他の所望特性を得るための適切なコーティングが施されると有利であり得る。特に底部及びスリーブ部間が機械接続される場合に実現しやすい、コーティングを施すということによって、これら二つの部品を形成するのに選択可能な材料の幅が有利に広がる。使用可能なコーティングとしては、エポキシド樹脂、フェノール樹脂、アクリル、PTFE、PFA、FEP、PVDF、フッ化物重合体等のフッ素重合体、上記重合体を共重合体として有するフッ素重合体、ポリウレタン、シラン若しくはシロキサン、減摩材コーティング、及び/又は1以上の層を備えるメタルクラッド若しくは金属めっき面であるか、又はこれらいずれかを主成分として含むものである。スリーブ部及び/又は底部の製造には、例えば、ニッケルめっきを施した材料のストリップが有利に使用され得る。
【0031】
本発明によれば、まず上記に挙げた構成のいずれかを有する底部及びスリーブ部を形成して用意し、続いてこれら別々のスリーブ部と底部とを互いに固定して取り付ける方法により、銃器用薬莢を非常に簡単に且つ有利に製造できる。既に詳述したように、このような薬莢の製造方法は、コスト面で大きな利点を有すると共に、薬莢の動作特性に影響を与えない範囲の多くの材料及び寸法の採用を可能とする。これら2つの部品は、例えば、機械加工、鋳造、成形、圧印若しくは押付け加工、又はこれらの組み合わせで製造され得る。
【0032】
このような製造方法では、スリーブ部は、有利には、トランスファプレスによって例えば単一製造工程で形成又は製造され得る。特にスリーブ部は、その全て(或いは、カップ形状の底に孔を設ける時以外)をプレス機内で、中間処理のために取り出すことなく、形成され得る。全ての副工程は、プレス機内で行われる。いずれの場合も、例えば深絞りで製造され得るスリーブ部に焼きなまし工程を行わなくてよいため、中間焼きなましを実施することなく製造が行える。更に、底部は、有利には、適切な金型や工具を用いた成形加工及び/又は機械加工によって形成又は製造され得る。底部もまた、有利には、単一工程で、又は金型や工具から取り外さずに中間焼きなまし工程なしで製造できる。基材として、有利には、ストリップ状又はワイヤ状の材料を使用し得る。スリーブ部及び/又は底部は、例えば、ストリップ状又はワイヤ状の材料をコイル状に巻いたものからブランク若しくは丸いブランクを切り抜き、そしてそのブランクを、深絞りプレス機などのプレス機に導入し、スリーブ部又は底部を、中間加工工程のために途中で取り出すことなくこのプレス機内で完成させることにより製造し得る。
【0033】
好適な実施形態において、底部を用意すること及び/又はスリーブ部を用意することは、スリーブ部を底部に固定する前に行われるコーティング工程を含む。使用可能な有利なコーティングは先に述べた通りであり、底部又はスリーブ部のコーティング工程は、浸漬コーティング、スプレーコーティング、粉体コーティング、静電粉体コーティング、微粉体コーティング、スケーリング、酸化、固形グリースコーティング、低温プラズマコーティング、及び/又は真空プラズマコーティングを含み得る。
【0034】
スリーブ部と底部とは、互いに固定して取り付けた際に、自動芯出しをするように構成されるのが好ましい。即ち、スリーブ部と底部とを互いに固定・取付けした際に、底部が自動的にスリーブ部と同軸となるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】銃弾用薬莢の実施形態の概略断面図を示す。
図2】銃弾用薬莢の別の実施形態の概略断面図を示す。
図3】銃弾用薬莢の別の実施形態の概略断面図を示す。
図4】銃弾用薬莢の別の実施形態の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下において、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態をより詳細に説明する。
【0037】
各図面において、同一又は同様の要素には、同一の符号を付す。
【0038】
図面に、銃弾用、好ましくはライフルや拳銃の銃弾用カートリッジに用いられる薬莢1の断面を示す。薬莢1は、細長く、板状の底壁2と、底壁2から概して垂直に上方へ延びる側壁3とで構成される。よって、薬莢1は、中空であり、長尺状の内部空洞4を取り囲み、画定する。底壁2は好ましくは円形であり、従って、側壁3は、好ましくは、薬莢1及び空洞4の長手方向軸線5に対して円筒対称性を有する。
【0039】
長尺状の筒状部である側壁3は、縦方向において、上方の小径断面6aと、下方の大径断面6bと、これらの異なる直径を有する2つの断面6a,6bの間の移行領域6cとを備える。各断面6a及び6bは、縦方向、特に底壁2から離れる方向に僅かに先細になっていてもよい。
【0040】
底壁2は、縦方向に延びる貫通孔7を備え、この貫通孔7は、底壁2の軸方向下端面8から延びる下方の大径断面7aと、上方の小径断面7bとを有する。
【0041】
カートリッジを組み立てる際、銃器の例えば撃針や撃鉄と協働する点火手段が、貫通孔7に配置され、弾丸が、側壁3の小径断面6aに配置されて例えば摩擦でそこに保持され、発射薬が、上記弾丸と点火手段との間に位置するように、空洞4の中に配置される。
【0042】
図面から分かるように、薬莢1は、機械的に互いに固定された2つの別々の要素又は部品、即ち、長尺状の筒状スリーブ部10及び底部11から構成される(図1、3及び4に示す実施形態の場合)又はこれらの部品を含む(図2に示す実施形態の場合)。なお、以下に説明するように、図面に示す各実施形態において、スリーブ部10と、側壁3を形成する細長の筒状部とは同一ではなく、スリーブ部10は、底壁2の比較的小さい一部も形成する。よって、底部11は、底壁2のほぼ全体を形成するものの、底壁2の全体を形成するものではない。
【0043】
また、図面から分かるように、図示の実施形態では、スリーブ部10を構成する材料の厚さは、底部11を構成する材料の厚さよりも極めて小さい。よって、スリーブ部10の厚さは、その全長に亘って、後述の部分16を除いて、底部11の基本的に全体のどこよりも小さい。特に、縦方向における底壁2の合計の厚さに貢献する底部11の厚さは、スリーブ部10のどの部分の材料の厚さよりも相当に大きい。このような厚さは、主に、点火手段を収容する十分なスペース、及び既存の銃器が求める従来の薬莢の外部寸法を提供するように決定される。しかし、既述のように、底部11は、ノッチ効果の傾向を増大することなく、ずっと薄い材料で有利に構成できる。
【0044】
底部11がスリーブ部10に対して簡単に機械的に取付けられるように、スリーブ部10は、その下端12に、径方向内側に突出する環状フランジ13を備えるように形成される。この環状フランジ13の下面14は、スリーブ部10の環状の軸方向下端面又は底面を構成する。この面14は、図1図2及び図4に示す実施形態では、スリーブ部10の最下部、即ち、軸方向の下方末端部である。このスリーブ部10の底面14は、対応する底部11の環状の軸方向上端面15に対して当接するように配置され、適切な手段で軸方向上端面15に取り付けられ得る。
【0045】
図1及び図4に示す実施形態では、この取付けは、底部11の環状折返し部16によって達成される。この折返し部16は、貫通孔7のごく近傍において、底部11の環状の軸方向上端面15に対して、平行に且つ軸方向にある程度の距離を置いて延びる。スリーブ部10の環状フランジ13は、底部11の端面15及び折返し部16によって画定される環状スペース内に延びるように配置され、それにより、スリーブ部10は、これらの図面に示される底部11上の所定の位置に係止されてしっかりと保持される。底部11の環状折返し部16とスリーブ部10の環状フランジ13との嵌め合わせ構造により、組立て時に、スリーブ部10及び底部11の自動芯出しが有利に行われる。
【0046】
これに対し、図3に示す実施形態では、上記取付けは、スリーブ部10の環状折返し部22によって達成される。この折返し部22は、貫通孔7のごく近傍において、フランジ13の下面14に対して、平行に且つ軸方向にある程度の距離を置いて延びる。底部11は、その上端において、長手方向軸線5に向かって孔7内に延出する環状突起23を備える。突起23は、フランジ13の下面14とスリーブ部10の折り返し部22とによって画定される環状スペース内に延びるように配置され、それにより、底部11は、図3に示されるスリーブ部10上の所定の位置に係止されてしっかりと保持される。図1及び図4と同様に、スリーブ部10の環状折返し部22と底部11の突起23との嵌め合わせ構造により、組立て時に、スリーブ部10及び底部11の自動芯出しが有利に行われる。
【0047】
図2に、上記取付けを達成する別の可能な構成を示す。図示の実施形態では、この目的に、別の、物理的に異なった接続部品24が用いられる。接続部品24は、リベットのような働きをし、リベットとして見なすことができる。接続部品24は、環状であり、長手方向軸線に平行に延びる平面において、実質的にJ字状の断面形状を有する。図3の場合のように、底部11は、その上端において、長手方向軸線5に向かって孔7内に延びる環状突起23を備える。この突起23及びフランジ13は、両方とも、接続部品24のJ字状断面によって画定される環状スペース内に延び、接続部品24はフランジ13の上面と突起23の下面とに当接し、これらを押圧する。スリーブ部10と底部11は、これにより図2に示される所定の位置に係止されてしっかりと保持される。上記と同様に、スリーブ部10のフランジ13と底部11の突起23との嵌め合わせ構造により、組立て時に、スリーブ部10及び底部11の自動芯出しが有利に行われる。
【0048】
底部11の環状の軸方向上端面15に環状溝25を設け、フランジ13に設けられる環状バルジ26と係合させることにより、断裂又はノッチ効果に対する耐性を更に高めることができる。このように、発砲によって薬莢が膨張する際に変形する材料が、バルジ26の領域にも存在する。当然ながら、フランジ13に溝を設けて、底部11の面15に、それと係合するバルジを設けることもできる。
【0049】
どのような場合でも、取付け手段を追加して設けると有利となり得る。特に、スリーブ部10と底部11との接触領域に接着剤を設けることができる。このような接着剤により、2つの別々の部品10,11の接触面から液体及び湿気が進入するのを無事に防ぐことができる。
【0050】
図面から分かるように、底部11は、平面環の形状を有する。縦方向において、底部11は、隣接する、直径が異なる2つの断面17a,17bを備え、これら断面17a,17bの間に、矩形の急な段差19が形成される。よって、底部11は、凹部17bよりも、そして実に底部11の残りのどの部分よりも径方向外側に突出する最下の環状突起18を備える。スリーブ部10の下端12、即ちスリーブ部10の環状フランジ13の外周縁20は、底部11の凹部17bの直径より大きく、好ましくは、底部11の環状突起18の直径と同一又は実質的に同一である。この構成により、底部11の径方向外面には、環状溝21が存在し、この溝21の縁又は側壁は、2つの段差19及び20で形成される。この溝21は、組立後のカートリッジにおいて、銃器の作動後に銃器の薬室から空薬莢1を抽筒するための抽筒溝として機能する。図示のように、抽筒溝21は、例えば深絞り加工やその他のプレス加工で、非常に簡単に製造される。2つの断面17a,17bは、例えば旋削加工といった機械加工によっても製造され得る。
【0051】
更に、断面17bを、スリーブ部10の下端12、即ちスリーブ部10の環状フランジ13の外周縁20と同じ又は実質的に同じ直径とすることもできる。この場合、薬莢1は抽筒溝を備えず、底部11の最底部に環状突起18を設けてこの突起18と凹部17bとの間に段差を形成し、抽筒機構と係合させる。
図1
図2
図3
図4