(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0030】
<1 実施形態>
<1.1 塗布装置1の全体構成・全体動作>
図1は、実施形態の塗布装置1の構成を示す斜視図である。なお、
図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0031】
本実施形態の塗布装置1は、スリットノズル30を用いて基板Gの表面に塗布液を塗布するスリットコータと呼ばれる塗布装置である。塗布装置1は、その塗布液として、レジスト液、カラーフィルター、ポリイミド、シリコン、ナノメタルインク、導電性材料を含むスラリーなど、種々の塗布液を用いることが可能である。また、塗布対象となる基板Gについても、矩形ガラス基板、半導体基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルター用基板、太陽電池用基板、有機EL用基板などの種々の基板に適用可能である。
【0032】
以下の説明では、ナノメタルインクを塗布液として、矩形のガラス基板(以下、「基板G」と呼ぶ)に塗布する塗布装置1ついて説明する。また、本明細書中で、「基板Gの表面」とは基板Gの両主面のうち塗布液が塗布される側の主面を意味する。
【0033】
図2は塗布装置1の構成を示す側面図であり、
図3は塗布装置1の各部の配置を概略的に示す上面図である。また、
図2および
図3では、ノズル支持体35など一部の構成を省略している。
【0034】
図1〜
図3に示すように、塗布装置1は、塗布対象の被処理体である基板Gを水平姿勢で吸着保持可能な保持面21を有するステージ2(保持手段)と、ステージ2に保持される基板Gにスリットノズル30を用いて塗布処理を施す塗布処理部3と、塗布処理に先立ってスリットノズル30に対して洗浄処理を施すノズル洗浄装置4と、塗布処理に先立ってスリットノズル30に対してプリディスペンス処理を施すプリディスペンス装置5と、これら各部を制御する制御部6と、を備える。以下、塗布装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0035】
<1.2 ステージ2>
ステージ2は略直方体の形状を有する花崗岩等の石材で構成されており、その上面(+Z側)のうち−Y側には、略水平な平坦面に加工されて基板Gを保持する保持面21を備える(
図2)。保持面21には図示しない多数の真空吸着口が分散して形成されている。これらの真空吸着口により基板Gが吸着されることで、塗布処理の際に基板Gが所定の位置に略水平状態に保持される。
【0036】
また、ステージ2において保持面21の占有する領域より+Y側には、ノズル調整エリアAR1が設けられており、ノズル調整エリアAR1のうち、+Y側にノズル洗浄装置4が配され、−Y側にプリディスペンス装置5が配される。
【0037】
本実施形態の塗布装置1では、スリットノズル30がノズル調整エリアAR1の上方に移動されている期間、すなわち、ステージ2において保持面21の占有する領域の上方にスリットノズル30がない期間に、ステージ2上で塗布処理後の先行基板Gの搬出と塗布処理前の後続基板Gの搬入とが行なわれる。
【0038】
<1.3 塗布処理部3>
塗布処理部3は主として、X方向に延びる長尺状の開口部である吐出口31を有するスリットノズル30と、ステージ2の上方をX方向に横断しスリットノズル30を支持するブリッジ構造のノズル支持体35と、Y方向に延びる一対のガイドレール36に沿ってノズル支持体35およびこれに支持されるスリットノズル30を水平移動させるスリットノズル移動手段37と、から構成される。
【0039】
図4は、スリットノズル30をX方向から見た側面図である。
図4に示すように、スリットノズル30は、ノズル支持体35によって固定支持される本体部301と、図外の供給機構から供給される塗布液を吐出口31まで送液する内部流路302と、本体部301より下方に突出するリップ部303とを有し、
図1のX方向に伸びる長尺のノズルである。
【0040】
また、リップ部303は、上記突出の先端に設けられた平坦面であり吐出口31が形成される先端面304と、上記突出の+Y側に形成される斜面である傾斜面305aと、その突出の−Y側に形成される斜面である傾斜面305bとを有する。以下の説明では、傾斜面305aと傾斜面305bとを区別しないときは、単に傾斜面305と呼ぶ。
【0041】
図外の供給機構より供給される塗布液は、内部流路302を通じてスリットノズル30の長手方向(X方向)に均等に拡幅されて送液され、リップ部303の先端面304に設けられた吐出口31より下方に向けて吐出される。このとき、スリットノズル30の吐出口31の周囲部分(リップ部303)には塗布液が付着することがある。付着した塗布液は、乾燥して残渣(
図5の付着物100)となり、これを放置すると、良好な吐出の妨げや、基板Gに形成される膜の汚れの原因になる。本実施形態の塗布装置1ではこの付着物の除去処理を行うが、この詳細については後述する。
【0042】
スリットノズル30は、その吐出口31が略水平にX軸方向に沿って直線状に延びるように、ノズル支持体35によって固定支持される。ノズル支持体35は、スリットノズル30を固定する固定部材35aと、固定部材35aを支持するとともに昇降させる2つの昇降機構35bとから構成される。固定部材35aは、X軸方向を長手方向とするカーボンファイバ補強樹脂等の断面矩形の棒状部材で構成される。
【0043】
2つの昇降機構35bは固定部材35aの長手方向の両端部に連結されており、それぞれACサーボモータ及びボールネジ等を備えている。これらの昇降機構35bにより、固定部材35a及びそれに固定されたスリットノズル30が鉛直方向(Z軸方向)に昇降され、スリットノズル30の吐出口31と基板Gとの間隔、すなわち、基板Gに対する吐出口の相対的な高さが調整される。なお、固定部材35aの鉛直方向の位置は、例えば、昇降機構35bの側面に設けられた図示省略のスケール部と、当該スケール部に対向してスリットノズル30の側面などに設けられた図示省略の検出センサとを備えて構成される図示省略のリニアエンコーダにより検出される。
【0044】
これらの固定部材35a及び2つの昇降機構35bにより形成されるノズル支持体35は、
図1に示すように、ステージ2の左右両端部をX軸方向に沿って掛け渡し、保持面21を跨ぐ架橋構造を有している。スリットノズル移動手段37は、この架橋構造体としてのノズル支持体35とそれに固定保持されたスリットノズル30とを、ステージ2上に保持される基板Gに対してY軸方向に沿って相対移動させる相対的移動手段として機能する。
【0045】
図1に示すようにスリットノズル移動手段37は、±X側のそれぞれにおいて、スリットノズル30の移動をY軸方向に案内するガイドレール36と、駆動源であるリニアモータ38と、スリットノズル30の吐出口の位置を検出するためのリニアエンコーダ39とを備えている。
【0046】
2つのガイドレール36はそれぞれ、ステージ2のX軸方向の両端部にY軸方向に沿ってノズル洗浄位置Y1から塗布終了位置Y4までの区間を含むように延設されている。このため、スリットノズル移動手段37によって2つの昇降機構35bの下端部が上記2つのガイドレール36に沿って案内されることで、スリットノズル30は、ノズル洗浄位置Y1(後述する除去ユニット4Aに対向する位置)とステージ2上に保持される基板Gに対向する位置との間を移動される。
【0047】
2つのリニアモータ38はそれぞれ、固定子38aと移動子38bとを有するACコアレスリニアモータとして構成される。固定子38aは、ステージ2のX軸方向の両側面にY軸方向に沿って設けられている。一方、移動子38bは、昇降機構35bの外側に対して固設されている。リニアモータ38は、これら固定子38aと移動子38bとの間に生じる磁力によってスリットノズル移動手段37の駆動源として機能する。
【0048】
また、2つのリニアエンコーダ39はそれぞれ、スケール部39aと検出部39bとを有している。スケール部39aはステージ2に固設されたリニアモータ38の固定子38aの下部にY軸方向に沿って設けられている。一方、検出部39bは、昇降機構35bに固設されたリニアモータ38の移動子38bのさらに外側に固設され、スケール部39aに対向配置される。リニアエンコーダ39は、スケール部39aと検出部39bとの相対的な位置関係に基づいて、Y軸方向におけるスリットノズル30の吐出口の位置を検出する。
【0049】
以上のような構成によって、スリットノズル30は、基板Gが保持される保持面21の上部空間を、略水平なY軸方向に、保持面21に対して相対的に移動可能とされる。
【0050】
基板Gの各辺の端部から所定の幅の領域(本実施形態では、矩形のリング状の領域)は、塗布液の塗布対象とならない非塗布領域となっている。そして、基板Gのうち、この非塗布領域を除いた矩形領域が、塗布液を塗布すべき塗布領域RTとなっている(
図3)。
【0051】
塗布処理を行う際には、ステージ2の保持面21上に処理対象の基板Gが保持された状態で、その上方をスリットノズル30が塗布液を吐出しながら走査する。より具体的には、スリットノズル30がスリットノズル移動手段37によって基板Gの上方を+Y方向から−Y方向に向けて移動され、当該移動区間のうち基板Gの塗布領域RTのY方向範囲に対応する塗布開始位置Y3(塗布領域RTの+Y側端部)〜塗布終了位置Y4(塗布領域RTの−Y側端部)の区間で吐出口31より塗布液が吐出される。その結果、基板G表面の塗布領域RT上に所定膜厚の塗布液の層が形成される(塗布処理)。
【0052】
また、塗布装置1と外部搬送機構との基板Gの受渡し期間(基板Gの搬入・搬出期間)などステージ2上で塗布処理が行われない期間には、スリットノズル30は、基板Gの保持面21から+Y側に外れたノズル調整エリアAR1に待避される(
図1に示す状態)。
【0053】
<1.4 ノズル洗浄装置4>
ノズル洗浄装置4は、大略的に、拭き取り部材41をスリットノズル30の傾斜面305に沿って水平X方向に摺動させることでスリットノズル30のリップ部303に付着する付着物を除去する除去ユニット4Aと、拭き取り部材41を密閉して密閉空間L1(後述する
図11(c)参照)を形成し、その密閉空間L1の内部で拭き取り部材41を洗浄する洗浄ユニット4Bと、X方向に沿って延設される2本のガイドレール44と、を備える装置である(
図3)。
【0054】
まず、除去ユニット4Aについて説明する。
【0055】
図5は、除去ユニット4Aがスリットノズル30の+X側端部より+X側の除去前待機位置X1(
図3)に位置するときの、スリットノズル30と除去ユニット4Aとの構成を示す斜視図である。
【0056】
除去ユニット4Aは、主として、スリットノズル30の傾斜面305と対応する傾斜面(以下、「摺接面413」と呼ぶ)を有する拭き取り部材41(除去手段)と、拭き取り部材41を固定支持する支持部材45(支持手段)と、支持部材45をガイドレール44に沿って駆動することでスリットノズル30の吐出口31に沿って拭き取り部材41を摺動させる駆動手段46と、を有する。
【0057】
図6は、除去ユニット4Aのうち特に、拭き取り部材41に係る構成を示す。
図6(a)は拭き取り部材41の斜視図を、
図6(b)は拭き取り部材41の支持部材45への取り付け角度を示している。
【0058】
拭き取り部材41は、900〜4000MPa(メガパスカル)の弾性率を有する本体部411と、本体部411に形成された略V字型の溝であるV字溝412とを有する。また、V字溝412には、その2辺に沿ってそれぞれ略直方形状の摺接面413a,413bが形成されている。なお、摺接面413a,413bを区別しないときには、単に摺接面413と呼ぶ。
【0059】
支持部材45は、X軸方向に延設されるスリットノズル30に対して所定の傾き角度θ(例えば、50度)で傾いた状態で拭き取り部材41を固定支持する(
図5および
図6(b))。また、支持部材45は、その−X側に上面視において2箇所の中空部45aと拭き取り部材41の基部を固定(例えば、ネジで締結)する固定部45bとを有し、その+X側が駆動手段46と連結するフレーム状の部材である(
図5)。このように、本実施形態の除去ユニット4Aでは、支持部材45が水平面視において駆動手段46と離間する位置に拭き取り部材41を支持する。
【0060】
そして、拭き取り部材41は、上記角度θで傾けて支持部材45に支持された状態において、V字溝412のV字型の内側に形成される2つの摺接面413a,413bが、リップ部303における2つの傾斜面305a,305bに摺接するよう形成される。すなわち、支持部材45に支持された拭き取り部材41をX方向から見た場合の(YZ平面における)摺接面413a,413bの傾きは、スリットノズル30をX方向から見た場合の(YZ平面における)傾斜面305a,305bとの傾きと略同一となる。
【0061】
また、駆動手段46は、X軸方向に延設される2本のガイドレール44(
図3)に沿って、当該駆動手段46に内蔵される駆動源により除去ユニット4A全体を、スリットノズル30のX方向範囲(除去開始位置X2〜除去終了位置X3の区間)を包含する除去前待機位置X1〜拭き取り部材洗浄位置X4の区間で自在に往復動させる駆動手段46である。駆動手段46は、例えば、上述したスリットノズル移動手段37と同様、リニア駆動機構を採用することができる。
【0062】
後述する除去工程では、スリットノズル移動手段37によってスリットノズル30をノズル洗浄位置Y1まで水平移動させ、かつ、X方向からの側面視においてリップ部303の傾斜面305と拭き取り部材41の摺接面413とが僅かな隙間(例えば、数μm)を形成するよう昇降機構35bによってスリットノズル30の高さ位置を調節した状態で、駆動手段46により除去ユニット4A全体を除去前待機位置X1から拭き取り部材洗浄位置X4に向けて移動させる(
図5、
図7)。
【0063】
この結果、スリットノズル30の+X側端部に対応するX方向位置である除去開始位置X2から、スリットノズル30の−X側端部に対応するX方向位置である除去終了位置X3までの区間において、スリットノズル30の傾斜面305に拭き取り部材41の摺接面413が摺接した状態で拭き取り部材41がスリットノズル30に沿って摺動する。ただし、この明細書における「摺接」とは、密着状態に限らず、肉眼的にはほとんど認識できない程度の僅かな間隔を隔てているが実質的には接触と同程度の近接状態である場合も含み、相対的なスライド動作が可能であることを言う。
【0064】
これにより、スリットノズル30に付着する付着物100(
図5)が拭き取り部材41の摺接面413aを用いて除去される(除去処理)。このように、除去処理では拭き取り部材41が+X側から−X側に駆動されるので、以下の説明では拭き取り部材41の−X側の面を「進行面414」、+X側の面を「背面415」と呼ぶ(
図6)。
【0065】
また、塗布装置1は、除去ユニット4Aの往復駆動域の下方(ノズル洗浄位置Y1における下方)に、スリットノズル30のX方向範囲(除去開始位置X2〜除去終了位置X3)と同等かそれ以上のX方向幅を有する回収トレイ70を備える(
図2)。このため、後述する除去工程でスリットノズル30に付着する付着物100が拭き取り部材41によって拭き取られる際に、付着物100がスリットノズル30或いは拭き取り部材41から落下した場合であっても、この回収トレイ70によって回収される。
【0066】
また、駆動手段46には、上下範囲に伸縮するバネ構造が弾性手段として内蔵されている。後述する密閉工程の際に上部チャンバ471が下降し、当該上部チャンバ471によって支持部材45が押し下げられると、支持部材45と連結されている駆動手段46も押し下げられる。他方、後述する開放工程の際に上部チャンバ471が上昇され押し下げ状態が解除されると、駆動手段46に内蔵される上記バネ構造によって、駆動手段46とそれと連結される支持部材45とが上昇される。
【0067】
除去ユニット4Aは、上記各部に加え、拭き取り部材41より+X側に配され、制御部6からのON/OFF制御に従ってスリットノズル30のリップ部303に向けてリンス液42(溶剤)を供給する2つのリンス液供給部43a,43bを備える。リンス液供給部43aはノズル洗浄位置Y1より+Y側に配され−Y側に向けてリンス液42を供給する機構であり、リンス液供給部43bはノズル洗浄位置Y1より−Y側に配され+Y側に向けてリンス液42を供給する機構である。
【0068】
したがって、ノズル洗浄位置Y1に移動され、かつ、リップ部303の傾斜面305とリンス液供給部43a,43bとが略同一な高さとなるよう昇降されたスリットノズル30に対して、リンス液供給部43a,43bからリンス供給をONとした状態で駆動手段46により除去ユニット4A全体を除去開始位置X2から除去終了位置X3に向けて移動させると、リンス液供給部43a,43bから供給されたリンス液42がスリットノズル30全長の傾斜面305a,305bに供給される。この結果、傾斜面305a,305bに付着した付着物100が除去され、或いは除去容易な状態となる。
【0069】
スリットノズル30に付着する付着物100を除去するための処理として、リンス液供給処理は必須の処理ではないが、除去処理に先立ってリンス液供給処理を実行することで、除去処理においてスリットノズル30に付着する付着物100がより効率的に除去される。
【0070】
また、除去ユニット4Aには、拭き取り部材41の姿勢を3次元的に調節する自動調芯機能を備えた調整部(例えば、特許文献1)を設けてもよい。この場合、スリットノズル30と除去ユニット4Aとの位置関係が多少ずれても、拭き取り部材41は自動調芯機能によってスリットノズル30に嵌め合わされて摺動し、スリットノズル30に付着する付着物100をより効率的に除去することができる。
【0071】
次に、洗浄ユニット4Bについて説明する。洗浄ユニット4Bは、密閉空間L1を形成し、スリットノズル30のリップ部303に付着する付着物100を拭き取って除去した拭き取り部材41に対して、上記密閉空間L1内で洗浄液を供給することで拭き取り部材41に付着する上記付着物100を洗い流すユニットである。
【0072】
図7は、除去ユニット4Aが除去開始位置X2から除去終了位置X3に移動する過程の、スリットノズル30と除去ユニット4Aと洗浄ユニット4Bとの構成を示す斜視図である。
【0073】
また、
図8〜
図10は、拭き取り部材洗浄位置X4に位置する除去ユニット4Aに対して密閉手段47が拭き取り部材41を密閉する過程における、除去ユニット4Aと洗浄ユニット4Bとの位置関係を示す斜視図である。
図11(a)〜(c)は、この密閉過程における、除去ユニット4Aと洗浄ユニット4Bとの位置関係を示す模式的な縦断面図である。
【0074】
洗浄ユニット4Bは、大略的に、所定の密閉空間L1を形成して拭き取り部材41を当該密閉空間L1内に密閉する密閉手段47と、密閉空間L1の内部に開口する供給口481を有しており当該供給口481から拭き取り部材41に洗浄液を供給する洗浄手段48と、密閉空間L1の内部に開口する排出口491を有しており当該排出口491より密閉空間L1内の気液を装置外部に排出する排出手段49と、を備える。
【0075】
密閉手段47は、スリットノズル30の−X側端部より−X側の拭き取り部材洗浄位置X4に配され、下部チャンバ474と、下部チャンバ474に対して開閉可能な上蓋として機能する可動の上部チャンバ471とを有する密閉空間L1の形成手段である。
【0076】
上部チャンバ471は、駆動源の内蔵された昇降機構472と連結されており、当該昇降機構472によって上下に駆動される。この昇降機構472としては、例えば、エアシリンダまたは電動リニアモータからなる昇降機構を採用することができる。
【0077】
また、上部チャンバ471の下面の淵にはシール部材473が、下部チャンバ474の上面の淵にはシール部材475が設けられている。そして、除去ユニット4Aが拭き取り部材洗浄位置X4に位置するときに、昇降機構472が駆動されることによって、シール部材473の下面が支持部材45の−X側領域の上面と密着され、シール部材475の上面が支持部材45の−X側領域の下面と密着されるよう、両シール部材473,475は形成される(
図11(a)〜
図11(c))。
【0078】
このような構成となっているため、除去ユニット4Aが拭き取り部材洗浄位置X4に位置するときに、昇降機構472によって上部チャンバ471を下降させることで当該上部チャンバ471によって支持部材45およびこれと連結する駆動手段46が押し下げられ、上から、上部チャンバ471、シール部材473、支持部材45、シール部材475、下部チャンバ474の順番で隣接する各部が密着し、密閉空間L1が形成される(
図8〜10および
図11:密閉工程)。
【0079】
このとき、支持部材45の−X側に固定支持される拭き取り部材41は密閉空間L1の内部に、駆動手段46は密閉空間L1の外部に配される。また、支持部材45が密閉手段47を構成する一部として機能し、密閉空間L1を形成する。
【0080】
他方、昇降機構472によって上部チャンバ471を上昇させることで、支持部材45が駆動手段46内部のバネ構造によって上方に駆動され、上部チャンバ471と支持部材45と下部チャンバ474とが分離されて密閉状態が解除される(密閉空間L1が開放される)。
【0081】
この開放状態では、除去ユニット4AをX方向に沿って駆動させることで、上下方向において上部チャンバ471と下部チャンバ474との間(洗浄ユニット4Bの内部)から、洗浄後の拭き取り部材41を搬出し、或いは洗浄ユニット4Bの内部に洗浄前の拭き取り部材41を搬入することが可能である。
【0082】
図12は、密閉空間L1の内部に拭き取り部材41が密閉された状態における、拭き取り部材41と、支持部材45と、洗浄ユニット4Bとの構成を示す模式的な断面図である。
【0083】
洗浄手段48は、気体(本実施形態では、高圧エア)と溶剤(本実施形態では、リンス液)とを混合して吐出可能な2流体ノズルを用いて拭き取り部材41を洗浄する手段であり、主として拭き取り部材41の進行面414を洗浄する洗浄部48Bと、主として拭き取り部材41の背面415を洗浄する洗浄部48Aと、を有する。
【0084】
図13は、洗浄手段48の構成を示す図である。図中の括弧外の符号が洗浄部48Aに係る構成を、図中の括弧内の符号が洗浄部48Bに係る構成を示す。以下、洗浄部48Aの構成について説明し、洗浄部48Aと同様の構成である洗浄部48Bについては重複説明を省略する。
【0085】
洗浄部48Aは、高圧エアを供給するエア供給源484Aと、リンス液を供給するリンス液供給源482Aと、エア供給源484Aより供給された高圧エアを配管部を通じてエア噴出口485A,486Aまで送り、リンス液供給源482Aより供給されるリンス液を配管部を通じてリンス液吐出口483Aまで送液する2流体ノズル480Aとを備える。
【0086】
エア噴出口485A,486Aおよびリンス液吐出口483Aからなる2流体ノズル480Aの供給口481Aは、密閉手段47における上部チャンバ471の内部に開口している。また、2流体ノズル480Aは、密閉工程において拭き取り部材41の背面415に向けて供給口481Aから気液が供給されるよう、鉛直下向きで上部チャンバ471に取り付けられている。
【0087】
このため、拭き取り部材41を密閉手段47によって密閉した状態で、2流体ノズル480Aからリンス液と高圧エアとから生成される混合流体(以下、「2流体洗浄液WL」と呼ぶ)を拭き取り部材41の主として背面415側に供給することで、当該背面415に付着する付着物100を除去することができる。また、洗浄部48Aでは、高圧エアを含む2流体の2流体洗浄液WLを用いて拭き取り部材41の洗浄を行うため、少量のリンス液で強力に(高圧力で)拭き取り部材41の洗浄を行うことができる。
【0088】
エア供給源484Aとリンス液供給源482Aとのうち一方のみを動作することも可能である。後述する洗浄工程では、リンス液と高圧エアとの混合流体である2流体洗浄液WLを供給口481Aより一定時間(例えば、3〜10秒)拭き取り部材41に供給した後、リンス液の供給を停止し、高圧エアのみを一定時間(例えば、5〜10秒)拭き取り部材41に供給するよう制御部6によって制御される。
【0089】
こうすることで、拭き取り部材41に付着する付着物100を2流体洗浄液WLで洗い流すとともに、2流体洗浄液WLを高圧エアで押し流し、拭き取り部材41を乾燥させることができる。この結果、拭き取り部材41に2流体洗浄液WLが残る残留せず、2流体洗浄液WLに起因して拭き取り部材41上に付着物100が発生するリスクを低下させることができる。
【0090】
また、
図13(a)に示すように、供給口481Aは、正面視において中心側に位置するリンス液吐出口483Aおよびエア噴出口485Aと、正面視において中心位置に対して点対称に配置される2つのエア噴出口486Aとを有し、扇形状に2流体洗浄液WLを噴射する2流体ノズル480Aである。このため、エア噴出口486Aが設けられておらず円錐状(シャワー状)に洗浄液を噴射するノズルに比べ、本実施形態の2流体ノズル480Aは強力に(高圧力で)2流体洗浄液WLを噴射することが可能となる。
【0091】
洗浄部48Bは、その構成は洗浄部48Aと同様であるが(
図13)、上部チャンバ471への取り付け位置および取り付け角度が洗浄部48Aとは異なる。具体的には、2流体ノズル480Bは、密閉工程において拭き取り部材41の進行面414に向けて供給口481Bから2流体洗浄液WLが供給されるよう、供給口481Bを斜め下向き(+X方向かつ−Z方向)として上部チャンバ471に取り付けられている(
図12)。このため、制御部6によって洗浄部48Bの機能を能動化することで、拭き取り部材41の進行面414を洗浄することができる。
【0092】
密閉空間L1のうち支持手段より下方側に形成される空間領域を「下方空間領域L2」、上方側に形成される空間領域を「上方空間領域L3」と呼ぶとき、本実施形態の洗浄ユニット4Bでは、本実施形態の洗浄手段48の供給口481が上方空間領域L3に開口しており、かつ、拭き取り部材41の下方には中空部45aが設けられている。このため、上方空間領域L3から拭き取り部材41に向けて2流体洗浄液WLが供給されると、当該2流体洗浄液WLおよび拭き取り部材41から洗い流された付着物100が支持部材45の中空部45aを通して下方空間領域L2に流下する。その結果、当該2流体洗浄液WLや当該付着物100が、洗浄後の拭き取り部材41に付着することを防止できる。
【0093】
また、2流体の2流体洗浄液WLを扇形状に噴射する強力な洗浄動作は密閉空間L1の内部で行われる。このため、拭き取り部材41に強力に洗浄可能であるとともに、当該洗浄によって2流体洗浄液WLや付着物100の微細な液滴(ミスト)が発生したとしても、当該ミストが密閉空間L1の外部に付着することがない。
【0094】
排出手段49は、洗浄工程の終了から開放工程によって密閉空間L1を開放するまでの期間(
図16の時刻T13〜T15)に、密閉空間L1内部の気液を塗布装置1の外部に排出するための手段である。本実施形態の排出手段49は、主として密閉空間L1の内部の気体(ミストなど)を排出する排出部49Aと、主として密閉空間L1内部の遊離固形物(拭き取り部材41から脱離した付着物100など)や液体(2流体洗浄液WLや溶解した付着物100など)を排出する排出部49Bとを有する(
図7)。
【0095】
排出部49Aは、下部チャンバ474の内部側面に開口する排出口491Aと、排気ポンプ(図示せず)と、排出口491Aと排気ポンプとを連通する配管492Aと、を有している。後述する排出工程では、拭き取り部材41の洗浄を行った後、密閉空間L1を形成した状態で排気ポンプを動作し、排出口491Aおよび配管492Aを通じて密閉空間L1内部の気体(ミストなど)を装置外部に吸引排出する。こうすることで、排出工程後に上部チャンバ471を上昇させ密閉空間L1を開放したとしても、2流体洗浄液WLのミストなどが密閉空間L1から装置内に飛散することがない。
【0096】
排出部49Bは、下部チャンバ474の内部底面に開口する排出口491Bと、ホッパー型のドレーン492Bと、を有している。後述する洗浄工程および排出工程では、洗浄工程で密閉空間L1の内部を流下する2流体洗浄液WLおよび付着物100が、下部チャンバ474の底面に設けられた排出口491Bとドレーン492Bとを通じて装置外部に排出する。この結果、排出工程後に上部チャンバ471を上昇させ密閉空間L1を開放したとしても、2流体洗浄液WLや付着物100が密閉空間L1から飛び散り装置内に付着することがない。
【0097】
以上説明したように、排出手段49の排出口491(491A,491B)は下方空間領域L2に開口している。このため、付着物100、2流体洗浄液WL、2流体洗浄液WLのミストなど(以下、「汚染要素」と呼ぶ)が、密閉空間L1内において、供給口481の配される上方から排出口491(491A,491B)の配される下方に向けての一方向の気流に沿って流される(
図12)。このため、汚染要素が舞い上がり洗浄後の拭き取り部材41に付着するリスクを低減することができる。
【0098】
また、洗浄ユニット4Bは、開放工程に先立って密閉空間L1内の汚染要素を装置外部に排出する。このため、洗浄工程によって発生するミストなど汚染要素が密閉空間L1の外部(例えばスリットノズル30など)に付着するリスクを低減することができる。
【0099】
<1.5 プリディスペンス装置5>
プリディスペンス装置5は、ノズル調整エリアAR1のうち−Y側に配される装置であって、その内部に溶剤54を貯留する貯留槽51と、その一部を溶剤54に浸漬しておりスリットノズル30からの塗布液の吐出対象となるプリディスペンスローラ52と、ドクターブレード53とを備える(
図2)。
【0100】
プリディスペンスローラ52は、図示省略の回転機構によって回転駆動されることにより、X軸方向に沿った軸心52a周りで矢印R1の向きに回転可能な円筒状のローラである。
【0101】
プリディスペンスローラ52の下部には、プリディスペンスローラ52に塗布された塗布液を溶解可能なシンナーなどの溶剤54が貯留された貯留槽51を備えている。また、シリコン製などのドクターブレード53が、プリディスペンスローラ52の外周面にその一端が接触するように設けられている。
【0102】
後述するプリディスペンス処理では、スリットノズル移動手段37によってスリットノズル30がプリディスペンスローラ52の上方位置(プリディスペンス位置Y2)に移動された状態で、回転しているプリディスペンスローラ52に向けてスリットノズル30が塗布液を吐出することによりプリディスペンスローラ52に塗布液が塗布される。この結果、吐出口31(特に、リップ部303の先端面304)に当該塗布液の液溜りが形成される。こうしてX軸方向に延びた直線状の吐出口31の全長にわたって液溜りが均一に形成されると、その後の塗布処理を高精度に遂行することが可能となる。
【0103】
プリディスペンス処理が行われれば、吐出口31の周囲に付着した汚れた塗布液などの付着物100が、吐出口31から新たに吐出される塗布液に結合してプリディスペンスローラ52の外周面に吐出され、吐出口31の周囲部分から除去される。
【0104】
塗布液が吐出されたプリディスペンスローラ52の外周面には、基板Gへの塗布処理において基板G上に塗布される塗布液の膜厚とほとんど同じ膜厚の塗布液の層が形成される。プリディスペンスローラ52の外周面に吐出された塗布液は、プリディスペンスローラ52の軸心52a周りの自転によって、貯留槽51に貯留された溶剤54に浸漬されて溶かされた状態となった後、ドクターブレード53によってプリディスペンスローラ52の外周面からかき取られる。プリディスペンスローラ52の外周面のうち塗布液がかき取られた部分は、プリディスペンスローラ52の自転によって吐出口31の下方に移動し、再度、吐出口31から塗布液が吐出される。
【0105】
本実施形態の塗布装置1では、塗布処理に先立ってノズル洗浄処理およびプリディスペンス処理を実行することで、付着物100が除去され液溜りを形成した状態のスリットノズル30を用いて基板Gに対して塗布処理を実行することができる。このため、塗布処理においてスリットノズル30から付着物100が落下することを防止できる。また、当該基板Gの塗布領域RTに所望の膜厚で塗布膜を形成することができる。
【0106】
<1.6 制御部6>
図14に示す制御部6は、塗布装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部6のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部6は、各種演算処理を行うCPU61、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM62、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM63、および処理プログラムやデータなどを記憶しておく固定ディスク64をバスライン69に接続して構成されている。
【0107】
また、バスライン69には、ステージ2、塗布処理部3、ノズル洗浄装置4およびプリディスペンス装置5が接続されている。制御部6のCPU61は、固定ディスク64に格納されている処理プログラムを実行することにより、塗布装置1に係る各部を制御して各処理を実行する。
【0108】
また、バスライン69には、入力部65および表示部66が電気的に接続されている。入力部65は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。表示部66は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やメッセージ等の種々の情報を表示する。
【0109】
塗布装置1の使用者は、表示部66に表示された内容を確認しつつ入力部65からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、入力部65と表示部66とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
【0110】
さらに、バスライン69には、DVDやCD−ROMなどの記録媒体RMから記録内容を読み取る読取装置66が接続されている。処理プログラムは、記録媒体RMから読取装置66によって読み出されて固定ディスク64に格納されるようにしてもよい。また、ネットワーク経由で外部の情報処理装置からダウンロードされるようにしてもよい。
【0111】
<1.7 塗布装置1の全体動作>
以下、塗布装置1の基本的な動作の流れについて説明する。
【0112】
図15は、塗布装置1の基本的な動作を例示するタイムチャートである。図の横軸は時間経過を示し、図の縦軸はノズル洗浄位置Y1〜塗布終了位置Y4の区間におけるスリットノズル30の存在位置、およびステージ2上に基板Gがあるか否かを示している。また、図中の時刻T1〜T7は、塗布処理における各時刻を示す。また、図中の基板G1,G2はそれぞれ、時刻T1〜T7の期間において先行して処理を受ける基板と、その後続の基板とを意味する。
【0113】
図に示すように、動作開始の時点では、スリットノズル30は、ノズル洗浄位置Y1に待機している。塗布装置1では、塗布処理に先立って、除去ユニット4Aを用いてスリットノズル30に付着する付着物100の除去処理を行う(時刻T1〜T2:除去工程)。この除去工程の詳細については、<1.8 ノズル洗浄装置4の動作>で詳細に説明する。
【0114】
除去工程でスリットノズル30に付着する付着物100が除去されると、スリットノズル移動手段37によってスリットノズル30がプリディスペンス位置Y2まで移動される(時刻T2〜T3)。
【0115】
そして、スリットノズル30をプリディスペンス装置5のプリディスペンスローラ52上方の所定高さに位置決めする準備動作が行われ、その後、プリディスペンス装置5においてプリディスペンス処理が行われる(時刻T3〜T4)。プリディスペンス処理によって、スリットノズル30の全長にわたって、その先端面304に塗布液の液溜りが均一に形成される。上述したように、プリディスペンス処理は、プリディスペンスローラ52がその円筒形状の軸心を回転中心として回転している状態で行われる。プリディスペンス処理が終了すると、プリディスペンスローラ52の回転は停止される。
【0116】
このプリディスペンス処理が終了するまでの間に、塗布装置1の外部の搬送機構により基板G1が装置内に搬入され、ステージ2の保持面21に受け渡される(
図15)。具体的には、ステージ2の表面に図示しないリフトピンを上昇させ、外部の搬送機構から基板G1がリフトピン上部に載置された後、当該リフトピンを下降させて基板Gをステージ2上の保持面21で水平に吸着保持する(塗布前搬送工程)。
【0117】
そして、除去処理およびプリディスペンス処理を施されたスリットノズル30が、スリットノズル移動手段37により塗布開始位置Y3まで移動される。また昇降機構35bによってスリットノズル30の高さ位置が、基板G1への塗布処理に適合するよう調節される(時刻T4〜T5:塗布前移動工程)。
【0118】
スリットノズル30が塗布開始位置Y3に移動されると、その吐出口31から基板G1に向けて塗布液の吐出が開始される(時刻T5)。またこれと同時に、スリットノズル移動手段37により−Y側へ向けて所定速度でのスリットノズル30の水平移動が開始される。このスリットノズル30の水平移動(塗布走査)は、スリットノズル30の吐出口31が塗布液の吐出を終了すべき終了位置、すなわち、塗布終了位置Y4まで継続される(時刻T5〜T6:塗布工程)。このように、吐出口31から塗布液を吐出した状態で、スリットノズル30と基板G1とを対向配置で相対移動させることで、基板G1への塗布処理を実行することができる。
【0119】
スリットノズル30は、塗布終了位置Y4まで移動されると塗布液の吐出が停止され(時刻T6)、昇降機構35bでその高さ位置が調節された後、スリットノズル移動手段37によりノズル洗浄位置Y1に水平移動される(時刻T6〜T7:塗布後移動工程)。そして、ノズル洗浄位置Y1で再びスリットノズル30の除去処理が行われるとともに、塗布処理が完了した先行基板G1が塗布装置1の外部に搬出(次処理の処理部に搬送)され(塗布後搬送工程)、後続の基板G2が装置内に搬入される(塗布前搬送工程)。
【0120】
塗布装置1では、時刻T7以降においても、以上説明した時刻T1〜T7の動作が繰返し行われる。この結果、塗布装置1に順次搬送される基板Gに対して、除去処理およびプリディスペンス処理を施されたスリットノズル30を用いて塗布処理を施すことができ、基板Gの塗布領域RTに所望の膜厚の塗布膜を形成することができる。
【0121】
<1.8 ノズル洗浄装置4の動作>
次にノズル洗浄装置4の動作について説明する。
【0122】
図16は、ノズル洗浄装置4の動作を例示するタイムチャートである。図の横軸は時間経過を示し、図の縦軸は除去前待機位置X1〜拭き取り部材洗浄位置X4の区間における拭き取り部材41の位置、および密閉手段47によって密閉空間L1が形成されているか否かを示している。また、図中の時刻T0〜T2および時刻T11〜T17は、塗布処理における各時刻を示す。特に、時刻T1,T2とは、
図15で示した塗布装置1の全体動作における時刻T1,T2と対応している。
【0123】
上述したように、時刻T1時点では、スリットノズル30がノズル洗浄位置Y1に移動されている(
図15)。また、除去工程開始(時刻T1)の直前に、スリットノズル30の吐出口31から下方(回収トレイ70)に向かって所定量の塗布液を吐出する。この結果、リップ部303の表面である先端面304および傾斜面305bには塗布液が付着した状態となる。この吐出のタイミングでは、拭き取り部材41は、吐出口30の直下位置より+X側に配されるので、スリットノズル30の吐出口31から吐出された塗布液が拭き取り部材41に降りかかることはない。
【0124】
塗布液の吐出後、X方向からの側面視においてリップ部303の傾斜面305と拭き取り部材41の摺接面413とが僅かな隙間(例えば、数μm)を形成するよう昇降機構35bによってスリットノズル30の高さ位置を調節する。そして、スリットノズル30と拭き取り部材41との相対位置を調節した状態で、駆動手段46によって除去ユニット4Aが除去前待機位置X1から拭き取り部材洗浄位置X4まで移動される(時刻T0〜T12)。
【0125】
除去ユニット4Aは、まず、除去前待機位置X1〜除去開始位置X2の区間まで移動する(時刻T0〜T1)。除去開始位置X2はスリットノズル30の+X側端部に対応しているので、この区間では拭き取り部材41とスリットノズル30とが接触することはない。
【0126】
そして、除去ユニット4Aが除去開始位置X2に移動したタイミングで、リップ部303の傾斜面305と拭き取り部材41の摺接面413とが摺接する。この摺接状態で、除去ユニット4Aは除去終了位置X3まで移動する、すなわち、拭き取り部材41はスリットノズル30(特に、リップ部303)を摺動する。この結果、
図5および
図7に示すように、スリットノズル30に付着する付着物100が拭き取り部材41の摺接面413aを用いて除去される(時刻T1〜T2:除去工程)。
【0127】
除去工程の開始時にスリットノズル30に付着していた付着物100は、除去工程によって、スリットノズル30から分離されて拭き取り部材41(特に、進行面414および背面415)に付着し、或いは落下する。そして、拭き取り部材41に付着した付着物100については後述する洗浄工程で拭き取り部材41から洗い流される。また、除去工程でスリットノズル30の下方に落下した付着物100は回収トレイ70によって回収される。このとき、吐出工程の直前に吐出口31より吐出されリップ部303に付着していた塗布液の大部分は除去工程で拭き取られるが、一部はリップ部303の表面に薄い被膜として残るので、吐出口31付近に液溜りが形成されうる。
【0128】
除去ユニット4Aは、除去工程の後も−X方向に移動し、スリットノズル30の長手方向端部と干渉しない位置である拭き取り部材洗浄位置X4で停止する(時刻T2〜T11)。このとき密閉手段47はチャンバ開放状態となっており、除去ユニット4Aが拭き取り部材洗浄位置X4に移動されると、拭き取り部材41は、上下方向において上部チャンバ471と下部チャンバ474との間(洗浄ユニット4Bの内部)に配される。
【0129】
除去ユニット4Aが拭き取り部材洗浄位置X4に位置すると、昇降機構472が能動化され上部チャンバ471が下降する。これに伴って、当該上部チャンバ471によって支持部材45およびこれと連結する駆動手段46が押し下げられ、上から、上部チャンバ471、シール部材473、支持部材45、シール部材475、下部チャンバ474の順番で隣接する各部が密着し、密閉空間L1が形成される(
図8〜10)。この結果、支持部材45の−X側に固定支持される拭き取り部材41は、密閉空間L1の内部に配される(時刻T11〜T12:密閉工程)。
【0130】
そして、拭き取り部材41が密閉空間L1の内部に配されると、上部チャンバ471内に設けられている洗浄部48A,48Bから拭き取り部材41の背面415,進行面414に向けて、リンス液と高圧エアとの2流体洗浄液WLを扇形状に一定時間(例えば、3〜10秒)噴射する。その後、リンス液の供給を停止し、高圧エアのみを一定時間(例えば、5〜10秒)拭き取り部材41に供給する(時刻T12〜T14:洗浄工程)。
【0131】
こうすることで、拭き取り部材41に付着する付着物100を2流体洗浄液WLで洗い流すとともに、2流体洗浄液WLを高圧エアで押し流し、拭き取り部材41を乾燥させることができる。その結果、拭き取り部材41に2流体洗浄液WLが残留することがなく、2流体洗浄液WLに起因して拭き取り部材41上に付着物100が発生するリスクを低下させることができる。
【0132】
洗浄工程において供給される2流体洗浄液WL、および2流体洗浄液WLによって拭き取り部材41から洗い流される付着物100は、支持部材45の中空部45aを通じて下部チャンバ474に流下する(
図12)。
【0133】
そして、洗浄工程が開始した後、一定時間経過すると、排出手段49によって密閉空間L1内部の気液が塗布装置1の外部に排出される(時刻T13〜時刻T15:排出工程)。密閉空間L1を維持した状態で、密閉空間L1内部に開口する排出口491Aおよび排出口491Bより密閉空間L1内部の汚染要素(ミスト、2流体洗浄液WL、付着物100など)を装置外部に排出する。
【0134】
洗浄工程および排出工程(時刻T12〜T15)は密閉空間L1の内部で行われるため、ミスト、2流体洗浄液WL、付着物100などの汚染要素が飛散し、密閉空間L1の外部(例えばスリットノズル30など)に付着するリスクを低減することができる。なお、本実施形態では、洗浄工程の後半と排出工程の前半とが時間的に重複しているが、これに限られるものではなく、洗浄工程と排出工程とを順次に行なってもよい。
【0135】
排出工程が終了すると、昇降機構472によって上部チャンバ471が上昇される。これに伴って、支持部材45が駆動手段46内部のバネ構造によって上方に駆動され、上部チャンバ471と支持部材45と下部チャンバ474とが分離されて、密閉状態が解除される。すなわち、密閉空間L1が開放される(時刻T15〜T16:開放工程)。
【0136】
そして、密閉空間L1が開放されると、除去ユニット4Aが、拭き取り部材洗浄位置X4から除去前待機位置X1まで駆動される(時刻T16〜T17:戻り工程)。この戻り工程によって、除去ユニット4Aは除去工程の開始位置まで駆動される。
【0137】
塗布装置1では、時刻T17以降においても、以上説明した時刻T0〜T17の動作が繰返し行われる。この結果、拭き取り部材41の付着物100を洗い流した状態で、塗布処理に先立ってスリットノズル30の高精度な除去処理を行うことができ、スリットノズル30からの吐出性能が高い状態で維持できる。
【0138】
また、本実施形態の塗布装置1のように、除去工程によって付着物100を除去されたスリットノズル30が基板Gに塗布処理を施し再びノズル洗浄位置Y1に移動されるまでの期間(
図15の時刻T2〜T7の期間)に、密閉工程、洗浄工程、排出工程、開放工程および戻り工程が実行されれば、拭き取り部材41の洗浄によって塗布処理のタクトが乱れることがない。
【0139】
<1.9 塗布装置1の効果>
ノズル洗浄装置4では、所定の密閉空間L1が形成され、スリットノズル30の付着物100を拭き取りにより除去する拭き取り部材41の洗浄がこの密閉空間L1内で行われる。また、密閉空間L1にはその内部の気液を装置外部に排出する排出口491が設けられている。
【0140】
このため、拭き取り部材41の洗浄に用いられる2流体洗浄液WLや当該洗浄によって発生するミストなどの汚染要素が、この排出口491から装置外部に排出され、装置内部のうち密閉空間L1の外部(スリットノズル30など)に付着することがない。
【0141】
そして、密閉空間L1の外部に汚染要素が付着することがないので、高圧状態で2流体洗浄液WLをするなどのミストが発生しやすい洗浄態様を採用することが可能となる。すなわち、ミスト飛散のリスクのために従来利用できなかった高圧洗浄や高圧エアによる乾燥であっても、密閉空間L1を形成しこの内部で洗浄処理を行うことで利用可能となる。この結果、拭き取り部材41の洗浄性能が高まるので、拭き取り部材41によるスリットノズル30に付着する付着物100の除去性能が高まり、歩留まりの向上に繋がる。
【0142】
特に、粘度が50cpを超える塗布液(例えば、ナノメタルインクなど)を用いるような塗布装置1の場合、拭き取り部材41に付着する付着物100の粘度も高く、従来の洗浄方法では、ミストを極力発生させず付着物100を除去する目的で洗浄液を長時間供給する必要があった。このため、2流体洗浄液WLの必要量が多く(コストが高く)、かつ洗浄時間がスループットの向上を妨げていた。しかし、本実施形態のノズル洗浄装置4では、密閉空間L1内で洗浄処理を行うことで高圧エアと溶剤とを用いた2流体の高圧洗浄が可能となり、2流体洗浄液WLの必要量を減らすとともに、かつスループットの向上を実現できる。
【0143】
また、洗浄工程および排出工程において、2流体洗浄液WL、2流体洗浄液WLのミスト、付着物100などの汚染要素が、2流体洗浄液WLの供給口481の配される上方空間領域L3から排出口491の配される下方空間領域L2に向けての一方向気流に沿って流される。その結果、汚染要素が、洗浄後の拭き取り部材41に付着するリスクを低下させることができる。
【0144】
<2 変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0145】
図17は、上記実施形態の変形例として、除去ユニット4Cが除去開始位置X2〜除去終了位置X3に位置するときの、スリットノズル30と除去ユニット4Cと密閉手段47Cの構成を示す斜視図である。
図17および以降の各図において、上記実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0146】
除去ユニット4Cは、その支持部材45cが中空部45aを有さない板状の部材である点で、上記実施形態の除去ユニット4A(
図5)と異なる。本変形例では支持部材45が中空部45aを有さないため、密閉手段47cが拭き取り部材洗浄位置X4に位置する支持部材45cに対して上部チャンバ471を昇降させることで、上部チャンバ471と支持部材45cとによって密閉空間L1を形成することができる。すなわち、下部チャンバ474を設ける必要がない。
【0147】
この結果、上記実施形態で示した下部チャンバ474の上面と支持部材45の下面とが密着する構成も不要となり、水平面視において駆動手段46と重複する位置に拭き取り部材41が支持されてもよい。このように、密閉手段47cおよび除去ユニット4Cの構成を省スペース化できる点で本変形例は有効である。
【0148】
他方、本変形例では下部チャンバ474が設けられないため、上記実施形態では下部チャンバ474に開口していた排出口491を上部チャンバ471に開口させる必要がある。上記実施形態は、2流体洗浄液WLの供給口481の配される上方空間領域L3から排出口491の配される下方空間領域L2に向けての一方向気流を形成でき、汚染要素が洗浄後の拭き取り部材41に付着するリスクを低下できるという点で優れている。
【0149】
図18は、上記実施形態の塗布装置1の変形例として、塗布装置1Aを概略的に示す側面図である。塗布装置1Aは、可撓性の基材Pを支持搬送する支持搬送機構110(典型的には搬送ローラ)、スリットノズル30、基材P上の塗布液を乾燥させる乾燥処理部120、スリットノズル移動手段37、ノズル洗浄装置4、および回収トレイ70を備える。このような構成となっているので、支持搬送機構110によって基材Pを搬送し基材Pとスリットノズル30とを相対的に移動させた状態で、スリットノズル30より塗布液を吐出することで、基材P上に搬送方向に沿って塗布液を塗布することができる。
【0150】
上記実施形態のノズル洗浄装置4は、本変形例のようなローラ搬送形式の塗布装置1Aにも利用することができる。塗布装置1,1Aはノズル洗浄装置4を利用可能な典型例にすぎず、これらの塗布装置以外にも、スリットノズル30によって被処理体(基板Gや基材Pなど)に塗布液を塗布する公知の種々の塗布装置に対してノズル洗浄装置4を利用可能である。
【0151】
また、上記実施形態では、除去ユニット4Aに備えられる拭き取り部材41は1つであったが、例えば、特許文献1(清掃部材が2つ)のように複数の拭き取り部材41を備える構成であっても構わない。
【0152】
また、上述したように、除去工程では、除去処理によってスリットノズル30から付着物100が除去されるとともに、吐出口31付近に液溜りが形成されうる。このため、本発明を実施する上でプリディスペンス処理は必須の構成ではなく省略しても構わない。他方、プリディスペンス処理を実行すれば、確実に吐出口31付近に液溜りを形成することができる。
【0153】
また、上記実施形態では洗浄手段48として2流体ノズル480を採用していたが、これに限られるものではなく、いわゆる高圧スプレー用のノズルでもよく、溶剤などのリンス液のみを供給する態様であっても構わない。また、上記実施形態のように扇形状に溶剤を噴射するものの他、柱状に溶剤を噴射するもの、シャワー状に溶剤を噴射するものなど、公知の種々の洗浄手段を採用することができる。
【0154】
また、上記実施形態のように、密閉手段47は、拭き取り部材41、支持部材45、駆動手段46のうち、少なくとも拭き取り部材41の摺接面413を密閉できれば足り、必ずしも駆動手段46や支持部材45をその内部に密閉する必要はない。このため、密閉手段が配される空間の省スペース化を実現できる。しかしながら、例えば、拭き取り部材41と支持部材45と駆動手段46とを密閉手段47によって密閉するような構成を採用しても構わない。