特許第6337200号(P6337200)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337200
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】銅金属製微量栄養素サプリメント
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/16 20160101AFI20180528BHJP
   C01G 3/02 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20180528BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20180528BHJP
   A23K 20/20 20160101ALI20180528BHJP
【FI】
   A23L33/16
   C01G3/02
   A61K33/34
   A61P3/02
   A23K20/20
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-512859(P2017-512859)
(86)(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公表番号】特表2017-518073(P2017-518073A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】US2015030758
(87)【国際公開番号】WO2015175771
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】14/279,731
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516343653
【氏名又は名称】マイクロニュートリエンツ ユーエスエー リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179039
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジェイ.レジャー
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02162091(US,A)
【文献】 国際公開第2013/036637(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1528171(CN,A)
【文献】 特開2012−184154(JP,A)
【文献】 特開2012−144414(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1230092(CN,A)
【文献】 米国特許第05451414(US,A)
【文献】 J. Anim. Sci.,2007年,Vol.85,p.871-876
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/16
C01G 3/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/FSTA/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅金属から微量栄養素サプリメントを作るための方法であって、前記方法が、以下のステップ
(a)
i)銅金属;
ii)塩酸、及び/又は塩化第二銅の一つ;及び
iii)酸化剤;を反応物として設けるステップ:並びに、
(b)上記i)、ii)、及びiii)の反応物を、下記式
【化1】
【化2】
及び、
【化3】
のいずれか1つの式に従って一緒に反応させることにより反応を行うステップを含み、
ここで、上記ステップ(b)の反応により、動物飼料混合物に添加でき動物に与えることができる医薬的に許容される微量栄養素サプリメントとしての三塩基性塩化銅の使用を妨げる副産物なく、三塩基性塩化銅(Cu2(OH)3Cl)を形成させる、前記方法。
【請求項2】
前記銅金属が、金属材料の銅を含む、請求項1に記載の微量栄養素サプリメントを作るための方法。
【請求項3】
前記銅金属が、スクラップ、又は廃棄銅を含む、請求項1に記載の微量栄養素サプリメントを作るための方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)において、前記反応物は前記反応式(ii)又は(iii)に従って銅金属、並びに塩酸及び塩化第二銅の一つと反応して反応混合物を形成し、そして、前記反応混合物に注入される、請求項に記載の微量栄養素サプリメントを作るための方法。
【請求項5】
前記酸素の注入が、前記反応の間の、前記銅金属の沈殿を妨げる、請求項に記載の微量栄養素サプリメントを作るための方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)における反応は、180°Fの温度で行われる、請求項1に記載の微量栄養素サプリメントを作るための方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)における反応は、前記反応物を撹拌しながら行われる、請求項1に記載の微量栄養素サプリメントを作るための方法。
【請求項8】
前記形成された三塩基性塩化銅が、スラリーを含む、請求項1に記載の微量栄養素サプリメントを作るための方法。
【請求項9】
前記スラリーが、噴霧乾燥される、請求項に記載の微量栄養素サプリメントを作るための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は他の哺乳類の生存率、成長、健康及び/又は生殖力を高める食品又は動物飼料のための微量栄養素サプリメントに一般的に関する。より具体的には、本発明は、必須物質の塩基性塩を製造するための方法を対象とし、そしてヒト及び他の哺乳類の必須物質の高い生物学的利用能を提供する。特に、本願は、出発物質として銅金属を使用する塩基性金属塩の形態での微量栄養素を製造するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
栄養素は、ビタミン、及び通常ミネラル、又は金属塩の形態で、いくつかのヨウ素を含む。中でも注目すべき要素は、カルシウム、リン、カリウム、鉄、亜鉛、銅、マグネシウム、マンガン、ヨウ素が挙げられる。微量栄養素は、一般的に、少量、つまり、1g/日未満で摂取され、そして多くの必須要素は、触媒機能を有している。微量栄養素は、多くの場合、微量で存在しているが、それらの生物学的利用能は、生存、成長、健康、及び生殖のための不可欠である。微量栄養素は、子ども、及び他の幼若動物が急速に成長しているときに、初期の発達段階で、子ども、及び他の幼若動物のために重要である。さらに、多くの新しい動物種は、より少ない飼料の摂取が改善した一方で、より速い速度で成長するためのそれらの能力として、微量栄養素の追加的な量を必要とする。この集中的な成長は、より大きい代謝ストレスを与え、ビタミン欠乏に対する増加した感受性を引き起こす。必要な微量栄養素は、それらの食事、又は飼料源において、これらの源が、天然、又は商業的に調製されたもののいずれにせよ、十分な量で、多くの場合、見られないか、又は見られないことが、よく認識されている。その結果、事実上すべての工業的な食品、及び飼料の処方は、ビタミン、及びミネラルで強化されている。家畜の群れに微量栄養素を供給するための商業的な家畜生産者のコストは、膨大になることがある。
【0003】
ヒト及び動物の追加的な栄養素の必要性が、十分実証されてきたが、微量栄養素の可用性は、必ずしも、ヒト及び動物の必要性を満たしているとは限らない。食品、又は飼料源において、単に微量栄養素の量を増加させるのに、十分ではない。この方法は、効果がなく、無駄が多く、そして安全ではない。微量栄養素の多くは、容易に吸収されず、添加されたビタミン、及びミネラルの量は、吸収されずに、単に排泄される。ビタミン、及びミネラルの過剰な供給は、安全ではなく、そして特定の状況では、過剰な供給は、有毒となることがあり、重度の急性、及び慢性の損傷を引き起こし、そして致命的でさえある。従って、コストを削減し、無駄を減らし、そしてヒトおよび動物のための栄養要求性のより正確な制御の確立を助けるために、安価で、容易に吸収される微量栄養素を提供する必要性がある。
【0004】
容易に生物学的に利用可能であり、貯蔵安定性であり、そして多種多様なビタミンと互換性のある、微量栄養素サプリメントを提供する必要性がある。微量栄養素サプリメントは、また、コスト効率の高い生産と、ヒトおよび動物の生存率、成長、健康及び/又は生殖力を増加させる、ヒトおよび動物用の食料源を提供する必要がある。
【0005】
微量栄養素は、一般的に生産され、そして塩、酸化物、及び錯体の形態で、入手可能である。酸化物は、比較的安価であるが、それらは、微量栄養素の塩、及びキレート形態として、効果的に吸収されない。
【0006】
錯体、及び特に、明確に定義されたキレート化微量栄養素は、比較的高価であるが、それらは、より容易に吸収され、そして優れた生物学的利用能を有する。
【0007】
様々な微量栄養素の例は、米国特許第4,021,569号、3,941,818号、5,583,243号(すべてAbdel−Monem)、米国特許第4,103,003号(Ashmead)、4,546,195号(Helbigら)、米国特許第4,900,561号、4,948594号(Abdel−Monemら)、米国特許第5,061,815号(Leu)、米国特許第5,278,329号(Anderson)、米国特許第5,698,724号(Andersonら)、6,114,379号(Wheelwrightら)、米国特許第7,523,563号(Hopf)、及び米国特許出願公開第2010/0222219号(Lohmannら)である。
【0008】
本発明者等の少なくとも1人は、米国特許第5,534,043号、5,451,414号、及び6,265,438号、並びに米国特許出願公開第2013/0064963号の共同発明者である。これらの特許、及び公開された特許出願は、式:M(OH)yX(2−y)/iの塩基性金属塩、及びその水和物形態である微量栄養素を開示し、そしてここで、Mは、金属カチオンであり、Xは、アニオン、又はアニオン性基であり、そしてiは、Xの価数に応じて、1〜3である。
【0009】
米国特許第5,534,043号、5,451,414号、及び6,265,438号に開示された微量栄養素は、エッチング溶液を金属カチオン源として使用するプロセス、及び約30〜300ミクロンの粒径を有する塩基性金属塩を製造するためのプロセスから、もともとは開発された。
【0010】
米国特許出願公開第2013/0064963号は、類似の微量栄養素よりもより多用途性であり、高い生物学的利用能を有し、そして必須ミネラルの金属酸化物、金属水酸化物、又は金属炭酸塩、及び酸を反応させて、可消化結合剤を有するスラリーを形成させ、そして噴霧乾燥、又は他の凝集方法により、凝集粒子を形成させることにより製造された、塩基性金属塩の形態での微量栄養素を記載する。
【0011】
本願は、銅金属を出発材料として使用する塩基性金属塩の形態での微量栄養素を製造するための方法を提供する。
【0012】
本発明の前に、本発明の少なくとも1人の共同発明者は、栄養サプリメントとして使用される必須微量元素を作るためのよりよい方法を見出すことに興味があった。発明者等は、化合物の化学構造が、その反応性(化学的/生化学的反応を受ける割合)を決定するので、最初は、特定の結晶構造を一貫して産生する製造方法の開発に取り組んだ。最終的に、発明者等は、アタカマ石および単斜アタカマ石のミネラルの組み合わせである特有の結晶化合物を製造するための方法を開発し、そして改善した。
【0013】
その後、多数の動物飼育試験を行い、そして試験した必須微量元素が、栄養素において使用した従来の銅化合物に対して、顕著な利点を示したことを、予想外に見出した。米国特許第5,451,414号(上述)は、非常に重要であるミネラル、銅の動物、及びヒトの食べ物への供給のための見出された改善された方法、及び常に一貫した多形の製品を作るために開発された結晶化方法を対象とする。つまり、元の結晶化方法は、晶析装置を供給するための原料として溶解した銅の溶液を有することに依存していた。
【0014】
米国特許出願公開第2013/0064963(上述)は、銅酸化物、及び塩酸、又は塩化第二銅溶液のいずれかを、原料として使用して、必須微量元素を製造する、異なる製造方法を記載する。代替的なアプローチの主な利点は、凝集された非常に小さな結晶粒径範囲の製造を可能にし、製品が使用されるときの、取り扱い特性を改善し、そして粉塵を低減したことである。
【0015】
本発明は、一つには、晶析装置中に注ぐ溶液を作るために金属を最初に完全に溶解することなしで、銅元素で開始することができるかどうか、及び直接、所望する多形の結晶構造を製造することができるかどうかを決定したことに向けられた研究の結果である。本発明者等は、そのような方法が可能であったという証拠を見つけることができなかった。本発明者等は、予想外に、所望の反応が進行する条件を見つけることができ、そして所望する製品、三塩基性塩化銅を、効率よく得るために制御することができた。
【0016】
QaimkhaniらのA New Method for the Preparation of Copper Oxychloride(A Fungicide)(J.Chem.Soc.Pak,Vol.30,No.3,2008)には、塩基性塩化銅として一般的に同定された化合物を作ることができるいくつかの方法を開示し、特に、反応物として銅線を使用する3つの方法を比較したことを開示する。Qaimkhaniらの方法IIでは、銅線と塩酸が反応して、塩化第二銅(CuCl2)の暗緑色の溶液を形成することを教示する。第二反応では、塩化第二銅が、水酸化ナトリウムで中和されて、塩化性塩化銅として記載されているもの、及び塩化ナトリウム(NaCl)を形成する。方法IIにおける2つの分離反応に関する必要性は、銅が、塩化物(NaCl溶液由来)と反応して、Qaimkhaniらによって言及された更なる反応から銅を保護する不溶性のコーティングを形成する、塩化第一銅(CuCl)を形成するからである。
【0017】
本発明は、銅金属と、塩酸、又は塩化第二銅とを、単一の全反応を、所望しない塩、例えば、塩化ナトリウムの形成なしで進めることができる条件下、反応させることによって、三塩基性塩化銅(Cu2(OH)3Cl)を製造するための方法を提供する。生じた三塩基性塩化銅は、微量栄養素としてのその使用を可能にする純度である。全反応は、安価な原料を使用し、そして従来公知の方法よりも、より低い環境負荷をもたらす。
【発明の概要】
【0018】
以下の明細書の記載から明らかになる本発明の様々な特徴、特性、及び実施態様に従って、本発明は、銅金属から、微量栄養素サプリメント、塩基性塩化銅(Cu2(OH)3Cl)を作る方法を提供し、本方法は、以下のステップ:
以下の:
銅金属;
i)塩酸、又は
ii)塩化第二銅
の一つ;及び
酸化剤
を一緒に反応させて、三塩基性塩化銅を形成する
ことを含む。
【0019】
銅金属は、金属材料の銅、又はスクラップ、若しくは再生可能な銅を含んでもよい。
【0020】
酸化剤は、反応混合物に注入して、反応の間、沈殿から銅金属を保護することができる、酸素を含むガス、又は酸素を含んでもよい。
【0021】
銅金属、並びに塩酸、及び塩化第二銅の一つ、及び酸化剤は、約180°Fの温度で反応させ、そして反応の間撹拌する。
【0022】
形成された三塩基性塩化銅は、噴霧乾燥された、又は他の方法によって凝集されることができるスラリーを含む。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、微量栄養素サプリメント、及び微量栄養素サプリメントを調製するための方法を対象とする。本発明の微量栄養素サプリメントは、固体、懸濁物、又は他の栄養素、例えば、ビタミン、ミネラルを含む混合物、及びヒト及び動物の生存率、成長、健康及び/又は生殖力を高めるための食品、又は動物飼料として、ヒト、又は動物に、直接投与することができる。微量栄養素中の塩基性塩は、必須金属の二価のカチオン、医薬的に許容されるアニオン、及びヒドロキシル基部分を含む。本発明の微量栄養素サプリメントは、容易に吸収されるか、又は生物学的に有効な量で取り込まれるので、必須金属の優れた生物学的利用能を提供する。微量栄養素は、他の栄養素、特に、ビタミンを組み合わせて、予混合されたサプリメントを提供することができる。本発明に従った塩基性塩を含む、予混合されたサプリメントは、含まれたビタミンの生物活性の顕著な低減なしに、長期間保存することができる。
【0024】
必須金属は、本発明の目的のために、ヒト、又は他の動物による、生物学的に有効な量でのそれらの摂取が、生存率、成長、健康及び/又は生殖力を増加させる、医薬的に許容される金属として定義される。必須金属の作用機序は、本発明のためには重要ではない。例えば、必須金属は、金属酵素、又は金属タンパク質において、補助因子、又は触媒として作用することができ、それは、様々な組織によって吸収されることができる。
【0025】
あるいは、必須金属、又はそれらの代謝物は、動物の生存率、成長、健康及び/又は生殖力にとって有害になる細菌、又は他の病原体の増殖を阻害することができる。
【0026】
本発明によれば、塩基性金属塩、三塩基性塩化銅(Cu2(OH)3Cl)は、二価の銅カチオン、ヒドロキシル基、及び一価の塩素アニオンを含む。塩基性塩を構成する微細構造では、銅カチオンは、その配位圏において、ヒドロキシル基を含む。
【0027】
塩基性金属塩の塩素アニオンは、医薬的に許容されるアニオンである。医薬的に許容されるアニオンは、当該技術分野において周知である。例えば、J.Pharmaceutical Sciences,66:1−19,1997(S.M.Bergeら)において、列挙されている医薬的に許容されるアニオンを参照し、そしてそれは、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0028】
本発明において使用される塩素アニオンは、それ自体で、顕著な生物学的効果を付与する。一般に、生物学的に顕著なアニオンの特定の例は、これらに限定されないが、ヨウ化物、塩化物、及びリン酸塩(リン)が、挙げられる。これらの生物学的に顕著なアニオンは、また、微量栄養素として考慮されることができ、塩化物アニオンは、本発明の目的のために特に有用である。従って、必ずしも、金属、例えば、塩化物などを考慮しなくてもよい、必須元素の塩基性塩を提供することは、本発明の範囲内である。
【0029】
微量栄養素として使用される塩基性金属塩は、一般的に、水溶性であるが、それらの溶解性は、pHに依存する。典型的には、塩基性金属塩は、低pH、すなわち、約2.0未満〜約0.1で、いくらかの溶解性を有する。また、特定の塩基性金属塩は、高pH、典型的には、約7.5超、又は8〜約11で、水に溶解する。
【0030】
本発明に従った微量栄養素を製造するための塩基性反応は、銅金属と、塩酸、又は塩化第二銅(CuCl2)とを、酸性条件下で、反応させることを含む。
【0031】
銅金属は、任意の種類の金属材料の銅、又はスクラップ、若しくは再生可能な銅、例えば、これらに限定されないが、銅ロッドミルスケール(rod mill scale)、ワイヤーチョップ(wire chop)、銅やすり粉(filings)、銅製粉(millings)などが挙げられる。銅は、粉として、粒状形態、又は小片(例えば、ワイヤー片)、又は任意の形態で、提供され、例えば、粒径を低減することにより、銅の表面積を増加させることが、反応速度を増加させることに留意すべきである。
【0032】
実験室での小規模試験において、必要な酸素は、反応混合物に、過酸化水素を添加することにより供給した。大規模試験、及び商業的応用において、酸素は、反応混合物に、酸素を注入することにより、供給することができる。任意の好適な従来の酸素注入システムが、使用されることができる。パイプライン酸化装置と称される、本発明の過程で開発された、特に好適な酸素注入システムは、実施例を参照して、以下に記載される。
【0033】
本発明の実施態様では、銅金属は、酸化条件下で、塩酸と反応し、三塩基性銅を製造するための全体の反応は、以下:
【0034】
【化1】
【0035】
である。
【0036】
本発明者等は、全体の一般的な反応は、以下のステップ:
銅が溶解し、塩化第二銅を形成し:
【0037】
【化2】
【0038】
塩化第二銅が、さらにCuを溶解し、塩化第一銅を形成し:
【0039】
【化3】
【0040】
塩化第一銅が酸化され、三塩基性塩化銅を形成し、そして塩化第二銅が、ステップ(ii)において、より銅を溶解するために戻る
【0041】
【化4】
【0042】
のように行われる、との理論を立てる。
【0043】
本反応は、反応槽中で行われ、銅金属は、塩酸、及び水の混合物に添加される。酸素は、反応混合物中に添加/注入され、そして反応を通して、連続的に添加/注入される。
【0044】
反応混合物は、加熱され、そして約180°Fの温度で維持される。金属銅が、反応混合物の底に沈殿するのを防ぐために、本明細書において記載したような、反応槽の底に材料が沈殿するのを妨げることができる任意の従来の種類のミキサー及び/又は反応槽の底から銅金属を混合/フラッシュすることができる酸素注入器が、提供され、そして反応の間、作動される。
【0045】
本発明の実施態様に関して、銅金属は、酸化条件下で、塩化第二銅と反応し、三塩基性銅を製造するための全体の反応は、以下:
【0046】
【化5】
【0047】
である。
【0048】
反応は、反応槽中で行うことができ、銅金属は、塩化第二銅、及び水の混合物に添加される。上記反応のように、酸素は、反応混合物中に添加/注入され、そして反応を通じて、連続的に添加/注入される。
【0049】
反応混合物は、加熱され、そして約180°Fの温度で維持される。金属銅が、反応混合物の底に沈殿するのを防ぐために、本明細書において記載したような、反応槽の底に材料が沈殿するのを妨げることができる任意の従来の種類のミキサー及び/又は反応槽の底から銅金属を混合/フラッシュすることができる酸素注入器が、提供され、そして反応の間、作動される。
【0050】
いずれの反応も、バッチモード、セミ−バッチモード、又は連続で、行うことができる。
【0051】
各反応は、噴霧乾燥させ、又は任意の様式で処理されることができる三塩基性塩化銅結晶の固形スラリーを生成し、三塩基性塩化銅結晶を回収する。一つの実施態様によると、可消化結合剤は、固形スラリーに添加することができ、そして生じたスラリーは、噴霧乾燥、又は他の凝集方法により、凝集させ、米国特許出願公開第2013/0064963に記載したように、微量栄養素の結晶の凝集物を形成することができる。
【0052】
本発明の微量栄養素サプリメントは、他の栄養素と混合することができる。栄養素は、微量、及び多量栄養素の両方を含む。微量栄養素の例は、ビタミン、及びミネラルを含む。本発明に有用であるビタミンの例は、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK(メナジオン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンC(アスコルビン酸)、ナイアシン、リボフラビン、チアミン硝酸塩、葉酸、パントテン酸カルシウム、ピリドキシン、塩化コリン、ビオチン、これらのビタミンの公知の医薬的に許容される誘導体、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明に有用であるミネラル、又は金属塩の例は、硫酸銅、硫酸鉄、酸化亜鉛、マンガン、鉄、ヨウ素、セレン、微量金属のアミノ酸錯体、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明において使用されることができる多量栄養素は、一般的な飼料成分、例えば、穀物、種子、草、肉粉、魚粉、油脂が挙げられる。
【0053】
本発明の特徴、及び特性は、例示の目的のみのための非限定的な例として提供される以下の実施例により例示される。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、実験台での試験、及びパイロット規模での試験を含む。
【0055】
実験台での試験を、加熱磁気撹拌プレート上で、ガラスビーカー中で行い、又はいくつかの場合において、トップマウントミキサーを使用した。全ての場合において、銅を、化学量論比、又はその近傍で、HCl、及び水の混合物に添加し、塩基性塩化銅を生成するので、化学的性質、及び処方は類似していた。混合物を、混合し、そして約180°Fに加熱した。すべての実験室試験に関して、30%過酸化水素を、酸素源として使用した。過酸化水素を、Cu+をCu++に変換の必要に応じて、試験を通じて、徐々に添加した。混合物のための目的の処方を、噴霧乾燥のために好適であると決定された三塩基性塩化銅結晶の固形スラリーの50重量%の収率に設計した。
【0056】
パイロット規模試験を、温度制御のための生蒸気注入を備えた、円錐形底のグラスファイバー混合タンク中で行った。パイロット試験で使用した処方は、実験台での試験で使用したものと同様であるが、過酸化水素ではなく、気体の酸素を、酸素源として使用した。酸化を、「パイプライン酸化装置(pipeline oxidizer)」を通じて、達成した。このセットアップは、タンクの上部から取り込み(大きな銅片の混入を避けるために)、100’コイルを通じて送りこみ、そしてその後タンクの底に戻るポンプから構成された。酸素を、コイルの間際で、インラインで注入する。静的ミキサーを、コイルの開始時と終了時に提供し、酸素と液体流の混合を提供した。この概念は、圧力下、優れた接触、及び滞留時間を提供し、高い酸化効率を生じる。円錐形の底に入るパイプライン酸化装置の放出は、2つの機能:1)円錐形底に沈殿しているかもしれない任意の銅片に混合/フラッシュを行い、詰まるのを防止すること;及び2)Cu++富化溶液を、任意の反応槽の底の沈殿した銅に提供し、反応を進めること、を提供した。任意の未反応の酸素ガスは、第二の機会を得て、混合タンク中でCu+を酸化させて、酸化効率を増加させる。
【0057】
実施例1
本実施例では、以下の反応:
【0058】
【化6】
【0059】
に従って、銅金属微粉末を、塩酸、及び過酸化水素と反応させて、塩基性塩化銅を生成した。
【0060】
反応物を、それらの化学量論量、又はその近傍で添加した。HClを、わずかに過剰で添加して、反応を進めるのを補助した。混合の間、53.57g/lの銅粉末を、ビーカーに添加した。ビーカーの温度を、180°F、又はその付近に維持した。試験を通して、30%過酸化水素を、徐々に添加して、Cu+を、変換して、Cu++を形成させた。反応を、24時間行った。反応時間の間、混合物は、透明〜暗褐色(塩化第一銅)溶液から、塩化第一銅の白色結晶を有する暗褐色溶液に転移し、そしてその後、最終的に、明緑色結晶の粘度があるスラリーに転移した(三塩基性塩化銅)。24時間の終わりに、目視できる銅は、存在しなかった。スラリーのサンプルを、乾燥させ、そしてX線回折で分析して、結晶構造を決定した。結果は、この材料が、99.1%の塩基性塩化銅(アタカマ石、及び単斜アタカマ石として定義)、及び0.1%の塩化第一銅であったことを示す。スラリーの固形分は、約50%固形分であり、そして噴霧乾燥の目的のために好適であるように決定した。
【0061】
実施例2
本実施例の方法、及び処方は、実施例1と、全く同じであるが、銅源は、裸輝(bare bright)銅ワイヤーチョップであった。銅は、実施例1の銅粉末のように、溶液を通じて均一に分散させることが可能なサイズ、及び濃度であった。銅は、ビーカーの底1/3にとどまり、そして混合により、動き回った。試験の間、同じ転移を、実施例1と同様に、本試験を通じて観察したが、非常に遅い速度であった。24時間後、目視で、約50%の銅を、塩基性塩化銅に変換した。反応の32時間後、ビーカーの内容物が、典型的な緑色の塩基性塩化銅に変化したが、ビーカーの底に、まだ目視できる銅金属が、まだ存在した。分析は、銅の、塩基性塩化銅の70%の変換を示した。
【0062】
実施例3
本実施例では、塩基性塩化銅を、銅ロッドミルスケール(銅ロッド製造由来の副産物)から生成した。銅ロッドミルスケールは、粒状であり、そして亜酸化銅、及び酸化銅のバランスで、約50重量%の銅を含んだ。使用する材料の銅アッセイは、約87.46重量%の銅であった。
【0063】
本実施例では、70mlの水を、250mlのビーカーに最初に添加し、続いて、45.1mlの32%HClを添加した。混合の間、68.05g/lの銅ロッドミルスケールを、ビーカーに添加した。ビーカーの温度を180°F、又はその付近に維持した。試験を通して、30%過酸化水素を、徐々に添加して、Cu+を、変換して、Cu++を形成させた。反応を、24時間行った。反応時間の間、混合物は、透明〜暗褐色(塩化第一銅)溶液から、塩化第一銅の白色結晶を有する暗褐色溶液に転移し、そしてその後、最終的に、明緑色結晶の粘度があるスラリーに転移した(三塩基性塩化銅)。24時間の終わりに、目視できる銅は、存在しなかった。スラリーのサンプルを、乾燥させ、そしてX線回折で分析して、結晶構造を決定した。結果は、この材料が、95.7%の塩基性塩化銅(アタカマ石、及び単斜アタカマ石として定義)、及び4.3%の塩化第一銅であったことを示す。
【0064】
実施例4
本実施例では、パイロット規模の試験を行い、HClの代わりに、塩化第二銅を使用して、銅片を、塩基性塩化銅に変換した。塩基性塩化銅を、塩化第二銅を、銅金属と、以下の反応:
【0065】
【化7】
【0066】
により反応させることで、生成した。
【0067】
本パイロット試験を、上述したような、5000ガロンの、パイプライン酸化装置を備えた、円錐形底のグラスファイバー混合タンクで行った。処方を、100%反応が完了したと仮定して、約11000ポンドの塩基性塩化銅を得るように設計した。
【0068】
本試験で使用した塩化第二銅は、188g/lのCu、及び1.34Nの遊離塩酸を含んでいた。844ガロンの本溶液を、715ガロンの水と共に、混合タンクに移した。混合の間、5229ポンドの銅ワイヤーチョップを、12時間にわたって、110ポンド/15分の速度で、徐々に添加した。銅の最初の添加後、ポンプを開始して、パイプライン酸化装置を通して、流れを送った。パイプラインへの酸素注入を、また、同時に開始した。進行を、全銅、及び混合物の濃度を測定することで、監視した。反応速度は、24時間後に著しく遅くなり、そして48時間後に、ほとんど完全に失速したと思われる。反応の48時間後、全体の77.4%の銅を、塩基性塩化銅に変換した。
【0069】
本発明の塩基性金属塩は、ヒト、及び他の動物の生存率、成長速度、健康及び/又は生殖力を高めるために使用することができる。いかなる理論にも拘束されることはないが、塩基性金属塩は、より容易に吸収され、及び/又はミネラル、無機金属塩、又は対応する必須金属を含む栄養素に対して増加した生物学的利用能を示すと考えらえる。本発明の塩基性金属塩の好ましい実施態様は、細菌の成長を顕著に低減し、従って、本発明の好ましい形態の使用が、効果的に、ヒト、及び他の動物の成長、及び健康を高めることができることを示すことを決定した。さらに、好ましい本発明の塩基性金属塩は、特定の細菌に対して改善された有効性を示し、それにより、動物に対して実質的に同等、又は同等の強い効果を提供するために、より少ない量及び/又は低濃度の必須金属の使用が可能であることを示す。
【0070】
本発明は、特定の方法、材料、及び実施態様に関して記載しているが、上述の説明から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を容易に特定し、そして様々な変更、及び修正を、上述した、そして特許請求の範囲に記載された本発明の精神、及び範囲から逸脱することなく、様々な使用、及び特性に適応させるために行うことができる。