(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337232
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】増水すると浮上する堤防
(51)【国際特許分類】
E02B 3/10 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
E02B3/10
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-13704(P2014-13704)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-140562(P2015-140562A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−251090(JP,A)
【文献】
特開2006−070536(JP,A)
【文献】
特開2013−087574(JP,A)
【文献】
米国特許第05725326(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に水の侵入を妨げないような形態を具えた堤防の基礎となる構造体(M)の上面に、堤防の上面構築を成すための土台としての役割を果たす浮遊基体(1)を位置させると共に、当該浮遊基体(1)の下面の海側寄りと陸側寄りとに、浮遊制御用海側垂下体(5)及び浮遊制御用陸側垂下体(6)を夫々垂設すると共に、当該垂下体(5及び6)の全長を摺動自在に受け入れるための縦溝孔(7及び8)を構造体(M)の海側と陸側に設け、
潮が満ちることによって浮遊基体(1)に浮力が生じてこれを上昇させた際、上記浮遊制御用陸側垂下体(6)を介して、浮遊基体(1)の浮上に基づき形成される構造体(M)との隙間と、構造体(M)に設けられている海側と陸側とを連通させるトンネル状連通部とが封鎖されるように構成した増水すると浮上する堤防。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば潮の干満、津波の押し寄せ等に基づく水位の変化が生じた際、これに即応した浮上作用が奏されるようにした堤防体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潮の干満、津波の押し寄せ等に基づく水位の変化が生じた際、これによる影響を防止する手段としては、麻袋等の丈夫な袋に土砂等の充填物を入れた土嚢を積み上げて堤防を嵩上げして決壊を防止することが昔から行われている。 然し乍、土嚢の充填物である土壌を緊急事態時に即座に用意することは、現代においては殆ど不可能である。
【0003】
そこで、土嚢を用いない方式として、堤防の嵩上げを所定の形状に形成した土木資材を用いる様に構成したものがある(例えば特許文献1及び特許文献2参照。)。 これは本願と同一の発明者及び同一出願人に係るものである。 そして、所定の形状に形成されている土木資材を、決壊が予想される堤防の上面に組み込むようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−42982号公報
【特許文献2】特開2010−111993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような土木資材を組み込むようにしたものであると、堤防の決壊が予想される時にその組立作業上の迅速対応性の点においてやや欠けることがある。 そして、その嵩上げ高さは定まったものに限定され、これの調節を行うことは通常は出来なかった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題を排し、例えばベニスのように潮の満ち干による影響が恒久的に発生する都市等における堤防として最適とするように、潮の満ち干に起因する水位の変化に基づく昇降作用、すなわち、浮き沈み作用が奏されるようにした全く新しいタイプの堤防の提供を図ったものである。 具体的に言えば、海側の水位が高まった際には、堤防自体がこれに即応して上昇することによって、陸側の水位は常に一定に保たれるような作用が奏されるようにした新規の堤防を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部空間に水の侵入を妨げないような形態を具えた堤防の基礎となる構造体Mの上面に、堤防の上面構築を成すための土台としての役割を果たす浮遊基体1を位置させると共に、当該浮遊基体1の下面の海側寄りと陸側寄りとに、浮遊制御用海側垂下体5及び浮遊制御用陸側垂下体6を夫々垂設すると共に、当該垂下体5及び6の全長を摺動自在に受け入れるための縦溝孔7及び8を構造体Mの海側と陸側に設け、潮が満ちることによって浮遊基体1に浮力が生じてこれを上昇させた際、上記浮遊制御用陸側垂下体6を介して、浮遊基体1の浮上に基づき形成される構造体Mとの隙間と、構造体Mに設けられている海側と陸側とを連通させるトンネル状連通部とが封鎖されるように構成した増水すると浮上する堤防に係る。
【発明の効果】
【0008】
本発明は請求項1に記載のような構成の採用に基づき、潮が満ちることによって浮遊基体1に浮力が生じてこれを上昇させた際、上記浮遊制御用陸側垂下体6を介して、浮遊基体1の浮上に基づき形成される構造体Mとの隙間と、構造体Mに設けられている海側と陸側とを連通させるトンネル状連通部とが封鎖されるため、海側の水位が上昇しても陸側の水位は常に一定したものとされる。 従って、潮の満ち干に即応させて陸側の浸水に対する対応を採ることなく、安定したものとされるから、例えばベニスのように潮の干満に左右される土地に対する堤防として最適とするものである。
【0009】
更に、本発明は、内部空間に水の侵入を妨げないような形態を具えた堤防の基礎となる構造体Mを用い、海側と陸側とを連通させるトンネル状連通部を具えたものとしてあるから、これらの部分は漁礁として最適なものとされ、魚類の繁殖作用にも貢献することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】通常時状態にある本発明に係る堤防の説明用縦断面図である。
【
図2】増水時状態にある本発明に係る堤防の作動を表した説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図において、Mは堤防の基礎となる構造体であって、内部に空間が形成される構造体、例えば特開2001−355259号公報に掲載の「構造体」を用いて形成する等成して、構造体の内部に対する水侵入を妨げないような形態を呈し、換言すると、堤防内外(構造体内外)の水循環性を阻害することのないように構成することにより、漁礁としての機能が果たされるような形態に構成してある。
【0012】
そして、当該構造体Mの中央部分には、海側と陸側とを連通させるトンネル状連通部mを形成してある。
【0013】
1は独立気泡を具える等成した材料で形成した浮遊基体であって、堤防の上面構築を成すための土台としての役割を果たすものである。 そして、当該浮遊基体1の上面中央部には客土2を介在させて遊歩用または車両用の道路3が、またその両側部には必要に応じて植林4等を成すことにより、緑化施設が形成してある。
【0014】
そして、上記した浮遊基体1は、上記材料の使用等に基づき、海水が満ちた際には浮遊するような浮力性能が付与されている。 更に、当該浮遊基体1の下面両側部にはその長手方向に沿うように、浮遊制御用海側垂下体5及び浮遊制御用陸側垂下体6が夫々垂設してある。
【0015】
一方、構造体Mの対応箇所には、当該垂下体5及び6を摺動自在に受け入れ可能とする縦溝孔7及び8が形成してある。 そして、当該縦溝孔7に挿入される浮遊制御用海側垂下体5には、構造体Mに対して海側からの水流入を阻害しないための流通用開口5aが開設されている。
【0016】
更に、前記縦溝孔8に挿入される浮遊制御用陸側垂下体6のほぼ中央部には、開口状態にあるトンネル状連通部mと連通する開口面部6aが開設されている。 従って、その上端寄り板面6bは浮遊基体1の浮上に基づき形成される隙間を封鎖するための閉鎖用板面として機能し、その下端寄り板面6cは、同上浮上時におけるトンネル状連通部mの封鎖用板面として機能する様に構成してある。
【0017】
図1に示すように、浮遊基体1に対して海水の浮力が働かないために構造体Mに対して接している状態あっては、本発明に係る堤防の海側と陸側は同一水位(通常時水位)に保たれている。
【0018】
次に、
図2に示すように、潮が満ちることによって浮遊基体1に対して海水による浮力が及んでこれを上昇させた際、これに垂設されている浮遊制御用海側垂下体5及び浮遊制御用陸側垂下体6も連動して引き上げられることとなる。 そのため、陸側垂下体6における上端寄り板面6bが、浮遊基体1の浮上に基づき形成される隙間を封鎖するための閉鎖用板面として機能する。 更に、その下端寄り板面6cが、同上浮上時におけるトンネル状連通部mの封鎖用板面として機能する。
【0019】
上記の各封鎖に基づき、海側の水位が上がっても、これが陸側に流れ込むことが阻止されているため、陸側の水位が変化することなく「通常時水位」を保つこととなる。 換言すると潮の干満に基づく海側の水位変化とは関わりなく、陸側の水位は常に「通常時水位」に保たれることとなる。
【0020】
一方、海側の流れは堤防の基礎となる構造体M内に対する流入・流出性は様炊けられないため、魚の出入りとされ、結局、構造体Mは魚の産卵場、所謂漁礁として機能することとなる。
【符号の説明】
【0021】
M 構造体
m 連通部
1 浮遊基体
2 客土
3 車両用の道路
4 植林
5 浮遊制御用海側垂下体
5a 流通用開口
6 浮遊制御用陸側垂下体
6a 開口面部
6b 上端寄り板面
6c 下端寄り板面
7 縦溝孔
8 縦溝孔