(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料電池セルの膜電極接合体に設けられて、前記燃料電池セルに流体を供給する流体流路の周囲を囲う形状で延びて該流体流路の側壁の一部をなす凸部を有し、前記凸部と同凸部の先端に接触する接触部分との間が前記流体流路からの前記流体の漏れを抑えるためのシール部になる燃料電池のセパレータにおいて、
前記凸部は、直線状に延びる直線部と湾曲した形状で延びる湾曲部とを有し、直線部と湾曲部とは共に断面台形状で延びており、当該断面台形状を、延設形状が剛性の低い形状である直線部については剛性の高くなる形状にするとともに、延設形状が剛性の高い湾曲部については剛性が低くなる形状にして、直線部の剛性と湾曲部の剛性との差を小さくする
ことを特徴とする燃料電池のセパレータ。
燃料電池セルの膜電極接合体に設けられて、前記燃料電池セルに流体を供給する流体流路の周囲を囲う形状で延びて該流体流路の側壁の一部をなす凸部を有し、前記凸部と同凸部の先端に接触する接触部分との間が前記流体流路からの前記流体の漏れを抑えるためのシール部になる燃料電池のセパレータにおいて、
当該セパレータは薄板状の部材からなり、
前記凸部は、断面台形状で延びており、湾曲した形状で延びる湾曲部を複数有し、全ての前記湾曲部の曲げ半径が同一であり、
前記湾曲部は、前記断面台形状の脚にあたる側壁のうちの湾曲形状の内側にあたる内側壁の傾斜が同湾曲形状の外側にあたる外側壁の傾斜よりも緩やかである
ことを特徴とする燃料電池のセパレータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述のようにセパレータに流体流路の周囲を囲む形状の凸部が延設されている場合には、凸部の延設形状に起因して、凸部の各部における剛性にばらつきが生じやすい。そうした剛性のばらつきは、燃料電池が組み立てられた状態で、凸部と上記接触部分との合わせ面に作用する面圧にばらつきを生じさせるおそれがある。そして、この場合には、凸部に作用する面圧が低くなる部分ができてしまうために、これによるシール性能の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、凸部によるシール性能の低下を抑えることのできる燃料電池のセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための燃料電池のセパレータは、燃料電池セルの膜電極接合体に設けられて、前記燃料電池セルに流体を供給する流体流路の周囲を囲う形状で延びて該流体流路の側壁の一部をなす凸部を有し、前記凸部と同凸部の先端に接触する接触部分との間が前記流体流路からの前記流体の漏れを抑えるためのシール部になる。そして、前記凸部は、直線状に延びる直線部と湾曲した形状で延びる湾曲部とを有し、
直線部と湾曲部とは共に断面台形状で延びており、当該断面台形状を、延設形状が剛性の低い形状である直線部については剛性の高くなる形状にするとともに、延設形状が剛性の高い湾曲部については剛性が低くなる形状にして、直線部の剛性と湾曲部の剛性との差を小さくする。
【0009】
凸部の断面形状が同一であれば、凸部において延設形状が湾曲している部分(湾曲部)の剛性は直線状に延びる部分(直線部)の剛性と比較して高くなる。上記セパレータでは、延設方向と直
交する方向における湾曲部の断面形状が、延設方向と直
交する方向における直線部の断面形状と比較して、その突出方向(以下、厚さ方向)における剛性の低い形状になっている。そのため、延設方向と直
交する方向における断面形状を、延設形状が剛性の低い形状である直線部については剛性の高くなる形状にするとともに、延設形状が剛性の高い形状である湾曲部については剛性が低くなる形状にすることができる。これにより、直線部の剛性と湾曲部の剛性との差を小さくすることが可能になる。そして、このようにして凸部の各部の剛性のばらつきを小さくすることにより、燃料電池を組み立てた際に凸部の各部に作用する面圧のばらつきを抑えることができるため、同凸部によるシール性能の低下を抑えることができる。
【0010】
上記セパレータにおいて、当該セパレータは薄板状の部材からなり、前記凸部は、断面台形状で延びており、前記湾曲部における前記断面台形状の脚にあたる側壁の傾斜が前記直線部における前記断面台形状の脚にあたる側壁の傾斜よりも緩やかであることが好ましい。
【0011】
上記セパレータでは、延設方向と直
交する方向における凸部の断面が台形状である場合には、同凸部の厚さ方向における剛性は、台形状の脚にあたる側壁の傾斜が緩やかであるほど低くなる。上記セパレータによれば、直線部の上記側壁の傾斜よりも湾曲部の上記側壁の傾斜が緩やかであるため、湾曲部の延設方向と直
交する方向における断面形状を、直線部の延設方向と直
交する方向における断面形状と比較して、その厚さ方向における剛性の低い形状にすることができる。
【0012】
上記セパレータにおいて、前記凸部は、湾曲した形状で延びる湾曲部を複数有し、全ての前記湾曲部の曲げ半径が同一であることが好ましい。
湾曲部の剛性は、その曲げ半径によっても異なる。具体的には、曲げ半径が小さいほど湾曲部の剛性は高くなり易い。上記セパレータによれば、全ての湾曲部の曲げ半径が同一になっているために、複数の湾曲部における剛性のばらつきを抑えることができ、凸部の各部に作用する面圧にばらつきが生じることを抑えることができる。
【0013】
上記課題を達成するための燃料電池のセパレータは、燃料電池セルの膜電極接合体に設けられて、前記燃料電池セルに流体を供給する流体流路の周囲を囲う形状で延びて該流体流路の側壁の一部をなす凸部を有し、前記凸部と同凸部の先端に接触する接触部分との間が前記流体流路からの前記流体の漏れを抑えるためのシール部になる。そして、
当該セパレータは薄板状の部材からなり、前記凸部は、
断面台形状で延びており、湾曲した形状で延びる湾曲部を複数有し、全ての前記湾曲部の曲げ半径が同一であ
り、前記湾曲部は、前記断面台形状の脚にあたる側壁のうちの湾曲形状の内側にあたる内側壁の傾斜が同湾曲形状の外側にあたる外側壁の傾斜よりも緩やかである。
【0014】
上記セパレータによれば、全ての湾曲部の曲げ半径が同一になっているために、複数の湾曲部における剛性のばらつきを抑えることができる。そして、このようにして凸部の各部の剛性のばらつきを小さくすることにより、燃料電池を組み立てた際に凸部の各部に作用する面圧のばらつきを抑えることができるため、同凸部によるシール性能の低下を抑えることができる。
【0015】
上記セパレータにおいて、前記凸部は前記湾曲部のみによって構成されることが好ましい。
上記セパレータによれば、凸部の全ての部分を曲げ半径が同一の湾曲部によって構成することができる。そのため、凸部の各部における剛性のばらつきを、ひいては凸部の各部に作用する面圧のばらつきを抑えることができる。
【0016】
上記セパレータにおいて、当該セパレータは薄板状の部材からなり、前記凸部は、断面台形状で延びており、前記湾曲部は、前記断面台形状の脚にあたる側壁のうちの湾曲形状の内側にあたる内側壁の傾斜が同湾曲形状の外側にあたる外側壁の傾斜よりも緩やかであることが好ましい。
【0017】
上記セパレータでは、湾曲部の内側壁の傾きと外側壁の傾きとが同一の場合には、内側壁の曲げ半径が外側壁の曲げ半径よりも小さくなるため、内側壁の剛性が外側壁の剛性よりも高くなる。上記セパレータによれば、そうした湾曲部の内側壁の傾きが外側壁の傾きよりも緩やかであるため、曲げ半径が小さい内側壁を剛性の低くなる形状にし、曲げ半径が大きい外側壁を剛性が高くなる形状にすることができる。これにより、湾曲部の内側壁の剛性と外側壁の剛性との差を小さくすることが可能になるため、湾曲部の湾曲形状における内側と外側とでの面圧の差を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、セパレータの凸部によるシール性能の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、燃料電池のセパレータの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示す第1セパレータ20は、燃料電池スタックを構成する燃料電池セル10が備えるものである。第1セパレータ20は、金属製の薄板状部材にプレス加工により起伏が付与されたものである。この起伏は、凹部21および凸部22によって構成されている。凸部22には、燃料電池セル10の内部において反応ガス(具体的には、水素ガスや酸素ガス)の通路を区画したり、反応ガスや冷却水を流通させる流体流路を燃料電池スタックの外部から遮断するシール構造を構成したりする役割がある。
【0021】
第1セパレータ20には、上記薄板状部材が打ち抜かれることで貫通孔23〜28が形成されている。貫通孔23および貫通孔24は、各燃料電池セル10を冷却するための冷却水が通過する冷却水流路の一部を構成する。貫通孔25および貫通孔26は、各燃料電池セル10に供給される水素ガスが通過する水素ガス流路の一部を構成する。貫通孔27および貫通孔28は、各燃料電池セル10に供給される酸素ガスが通過する酸素ガス流路の一部を構成する。
【0022】
図2に示すように、第2セパレータ30は、金属製の薄板状部材にプレス加工により起伏が付与されたものである。この起伏は、凹部31および凸部32によって構成されている。凸部32には、燃料電池セル10の内部において水素ガス流路や酸素ガス流路を区画したり、水素ガス流路や酸素ガス流路、冷却水流路を燃料電池スタックの外部から遮断するシール構造を構成したりする役割がある。なお、上記第2セパレータ30の形状は、
図1に示した第1セパレータ20の形状の鏡像になっている。第2セパレータ30にも、第1セパレータ20(
図1参照)と同様に、上記薄板状部材が打ち抜かれることで貫通孔33〜38が形成されている。
【0023】
図3に示すように、燃料電池セル10は、上記第1セパレータ20および第2セパレータ30の他に、膜電極接合体40とフレーム50とを備えている。
膜電極接合体40は、固体高分子膜である電解質膜41と、電解質膜41を挟む一対の電極42,43とを備えている。すなわち、本実施形態では、燃料電池セル10として、固体高分子形燃料電池を例示している。膜電極接合体40は、フレーム50に接続されている。詳しくは、電解質膜41の端部をフレーム50が挟み込むことで、電解質膜41がフレーム50に接続されている。これは、
図3においては、燃料電池セル10の上記貫通孔25,35よりも内方側(同図の左側)では電解質膜41がフレーム50に挟まれる一方、貫通孔25,35よりも外方側(同図の右側)においては電解質膜41が存在しないことで示されている。なお、フレーム50にも、各貫通孔23〜28,33〜38に対応する位置にそれぞれ貫通孔51が形成されている。
【0024】
第2セパレータ30における貫通孔35の周縁や貫通孔36(図示略)の周縁は凹部31となっており、この凹部31とフレーム50との接触部分によって、貫通孔35,36の内部(水素ガス流路)が燃料電池セル10の内部に対してシールされている。ただし、第2セパレータ30における貫通孔35,36の周縁の一部は、フレーム50に形成された溝部52と接触した状態になっている。この溝部52は、フレーム50の表面が切削されてその厚さが低減された形状になっている。こうした構成によれば、水素ガス流路における上記貫通孔35,36によって区画される部分内の水素ガスは、
図3中に矢印で示すように、溝部52を介して、水素ガス流路における上記膜電極接合体40と第2セパレータ30内面とによって区画される部分に対して流入または流出する。このように、本実施形態では、溝部52によって、各燃料電池セル10に水素ガスを分配する水素ガス流路の一部が形成されている。
【0025】
一方、第1セパレータ20における貫通孔25の周縁や貫通孔26(図示略)の周縁は凹部21になっており、この凹部21とフレーム50との接触部分によって、貫通孔25,26の内部(水素ガス流路)を燃料電池セル10の内部に対してシールしている。また、第1セパレータ20における貫通孔25,26の周縁に接触する部分には溝部52が配置されない。これは、本実施形態においては、膜電極接合体40およびフレーム50と第2セパレータ30との間に水素ガスを流通させ、膜電極接合体40およびフレーム50と第1セパレータ20との間に水素ガスを流通させない設定を例示していることに対応している。
【0026】
図4に示すように、第1セパレータ20における貫通孔27の周縁や貫通孔28(図示略)の周縁は凹部21となっている。そして、これら凹部21とフレーム50との接触部分によって、貫通孔27,28の内部(酸素ガス流路)に対して燃料電池セル10の内部をシールしている。ただし、第1セパレータ20における貫通孔27,28の周縁の一部は、フレーム50に形成された溝部52(図示略)と接触した状態になっている。この溝部52は、フレーム50の表面が切削されてその厚さが低減された形状になっている。こうした構成によれば、酸素ガス流路における上記貫通孔27,28によって区画される部分内の酸素ガスは、上記溝部52を介して、酸素ガス流路における上記膜電極接合体40(
図3参照)と第1セパレータ20内面とによって区画される部分に対して流入または流出する。このように、本実施形態では、溝部52によって、各燃料電池セル10に酸素ガスを分配する酸素ガス流路の一部が形成されている。
【0027】
一方、第2セパレータ30における貫通孔37の周縁部分や貫通孔38(図示略)の周縁部分は、いずれも凹部31となっている。そして、これら凹部31とフレーム50との接触部分によって、貫通孔37,38の内部(酸素ガス流路)に対して燃料電池セル10内をシールしている。また、第2セパレータ30における貫通孔37,38の周縁に接触する部分には溝部52が配置されない。これは、本実施形態においては、膜電極接合体40(
図3参照)およびフレーム50と第1セパレータ20との間に酸素ガスを流通させ、膜電極接合体40およびフレーム50と第2セパレータ30との間に酸素ガスを流通させない設定を例示していることに対応している。
【0028】
図5に示すように、第1セパレータ20における貫通孔23の周縁部分や貫通孔24の周縁部分は、いずれも凹部21となっている。そして、これら凹部21とフレーム50との接触部分によって、貫通孔23,24の内部(冷却水流路)が燃料電池セル10の内部に対してシールされている。一方、第2セパレータ30における貫通孔33の周縁部分や貫通孔34の周縁部分は、いずれも凹部31となっている。そして、これら凹部31とフレーム50との接触部分によって、貫通孔23,24の内部(冷却水流路)を燃料電池セル10内に対してシールしている。
【0029】
そして、隣接する一対の燃料電池セル10のうちの一方の第1セパレータ20に他方の第2セパレータ30(
図5中の上部に示す)が重ねられることで、冷却水流路が区画形成される。すなわち、
図5においては、貫通孔23よりも内方側(同図の左側)において、一方の燃料電池セル10の第1セパレータ20外面と他方の燃料電池セル10の第2セパレータ30外面とによって区画される空間が冷却水流路になる。なお、この冷却水流路を通じて供給される冷却水(
図5中に矢印で示す)の冷却対象となる燃料電池セルは、その両側の一対の燃料電池セル10である。
【0030】
第1セパレータ20の凸部22および第2セパレータ30の凸部32における上記貫通孔25,26の周囲を囲む部分や貫通孔35,36の周囲を囲む部分は、水素ガス流路の側壁の一部を構成している。また、この部分では、第1セパレータ20の凸部22の先端と第2セパレータ30の凸部32の先端との接触部分に合成ゴム製のゴムシール29が設けられている。具体的には、第1セパレータ20の凸部22の先端に合成ゴムが印刷されることにより、同凸部22の先端部分の一部がゴムシール29によって構成されている。本実施形態では、そうした各凸部22,32の先端が水素ガス流路からの水素ガスの漏れを抑えるためのシール部として機能する。なお
図1においては、凸部22のうち、シール部として機能する部分を網掛けで示すとともに、それ以外の部分を実線で示すことで区別している。本実施形態では、そうしたシール部として機能する部分がゴムシール29を有している。
【0031】
一方、上記各凸部22,32における上記貫通孔27,37の周囲を囲む部分や貫通孔28,38の周囲を囲む部分は、酸素ガス流路の側壁の一部を構成している。また、この部分では、第1セパレータ20の凸部22の先端と他の燃料電池セル10の第2セパレータ30の凸部32の先端との接触部分に上記ゴムシール29が設けられている。本実施形態では、そうした各凸部22,32の先端が酸素ガス流路からの酸素ガスの漏れを抑えるためのシール部として機能する。
【0032】
他方、上記各凸部22,32における上記貫通孔23,24およびそれら貫通孔23,24を繋ぐ領域の周囲を囲む部分は、冷却水流路の側壁の一部を構成している。また、こうした部分では、第1セパレータ20の凸部22の先端と第2セパレータ30の凸部32の先端との接触部分に上記ゴムシール29が設けられている。本実施形態では、第1セパレータ20の凸部22の先端や第2セパレータ30の凸部32の先端が冷却水流路からの冷却水の漏れを抑えるためのシール部として機能する。
【0033】
なお本実施形態では、第1セパレータ20および第2セパレータ30において、膜電極接合体40から離間する方向に突出する部分を凸部22,32とし、膜電極接合体40に近接する方向に突出する部分を凹部21,31としている。
【0034】
図1および
図2に示すように、凸部22,32は直線状に延びる直線部60と湾曲した形状で延びる湾曲部61とを有している。また
図6および
図7に示すように、凸部22,32の直線部60と湾曲部61とは共に、左右対称の断面略台形状で延びている。そして、
図7に示す凸部22,32の湾曲部61における前記断面台形状の脚にあたる側壁62の傾斜が、
図6に示す直線部60における前記断面台形状の脚にあたる側壁62の傾斜よりも緩やかになっている。これにより、直線部60の延設方向と直
交する方向における断面形状(
図6に示す断面形状)が湾曲部61の延設方向と直
交する方向における断面形状(
図7に示す断面形状)よりも突出方向(
図6、
図7の上下方向、以下「厚さ方向」という)における剛性が低い形状になる。また、
図1および
図2に示すように、凸部22,32は、全ての湾曲部61の曲げ半径(詳しくは、断面台形状における上底の幅方向における中心を繋いだ線の曲げ半径)が同一に設定されている。
【0035】
以下、本実施形態の第1セパレータ20および第2セパレータ30の作用を説明する。
第1セパレータ20および第2セパレータ30では、延設方向と直
交する方向における凸部22,32の断面が略台形状である。そのため、凸部22,32の厚さ方向における剛性は、台形状の脚にあたる側壁62の傾斜が緩やかであるほど低くなる。上記各セパレータ20,30では、直線部60の上記側壁62の傾斜よりも湾曲部61の上記側壁62の傾斜が緩やかになっているため、湾曲部61の延設方向と直
交する方向における断面形状が、直線部60の延設方向と直
交する方向における断面形状と比較して、その厚さ方向における剛性の低い形状になる。
【0036】
凸部22,32の延設方向における断面形状が同一であれば、凸部22,32における湾曲部61の剛性は直線部60の剛性と比較して高くなる。
この点、第1セパレータ20および第2セパレータ30では、凸部22,32の延設方向と直
交する方向における湾曲部61の断面形状が、延設方向と直
交する方向における直線部60の断面形状と比較して、その厚さ方向における剛性の低い形状になっている。そのため、延設方向と直
交する方向における断面形状を、延設形状が剛性の低い形状である直線部60については剛性の高くなる形状にするとともに、延設形状が剛性の高い形状である湾曲部61については剛性が低くなる形状にすることができる。これにより、直線部60の剛性と湾曲部61の剛性との差を小さくすることが可能になる。本実施形態では、各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、直線部60の剛性と湾曲部61の剛性とが略同一になるように、直線部60および湾曲部61の形状が設定されている。
【0037】
また、上記湾曲部61の剛性は、その曲げ半径によっても異なる。具体的には、曲げ半径が小さいほど湾曲部61の剛性は高くなり易い。第1セパレータ20および第2セパレータ30では、全ての湾曲部61の曲げ半径が同一になっているため、複数の湾曲部61における剛性のばらつきが抑えられる。また、湾曲部61の曲げ半径として1つの値のみを考慮すればよくなるため、各セパレータ20,30の形状設定にかかる作業が容易になる。
【0038】
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)直線部60の延設方向と直
交する方向における断面形状を、湾曲部61の延設方向と直
交する方向における断面形状よりも、厚さ方向における剛性が低い形状にした。そのため、直線部60の剛性と湾曲部61の剛性との差を小さくすることが可能になる。そして、このようにして凸部22,32の各部の剛性のばらつきを小さくすることにより、燃料電池スタックを組み立てた際に凸部22,32の各部に作用する面圧のばらつきを抑えることができるため、同凸部22,32によるシール性能の低下を抑えることができる。
【0039】
(2)湾曲部61における前記断面台形状の脚にあたる側壁62の傾斜を、直線部60における前記断面台形状の脚にあたる側壁62の傾斜よりも緩やかにした。そのため、湾曲部61の延設方向と直
交する方向における断面形状を、直線部60の延設方向と直
交する方向における断面形状と比較して、その厚さ方向における剛性の低い形状にすることができる。
【0040】
(3)全ての湾曲部61の曲げ半径を同一に設定したために、それら湾曲部61における剛性のばらつきを抑えることができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0041】
・各セパレータ20,30の凸部22,32の全ての湾曲部61の曲げ半径を同一にしなくてもよい。
・各セパレータ20,30の凸部22,32の全ての湾曲部61の曲げ半径が同一なのであれば、直線部60の断面形状と湾曲部61の断面形状とを同一の形状にしてもよい。こうしたセパレータによっても、複数の湾曲部61における剛性のばらつきを抑えることはできる。
【0042】
・湾曲部61の肉厚を、直線部60の肉厚と比較して、薄くしてもよい。こうしたセパレータによっても、直線部60の延設方向と直
交する方向における断面形状と比較して、湾曲部61の延設方向と直
交する方向における断面形状を、その厚さ方向における剛性の低い形状にすることができる。
【0043】
・凸部22,32を左右対称の断面略台形状(断面略等脚台形状)に形成したが、凸部22,32の2つの側壁62の傾きを、湾曲部61の湾曲形状の内側と外側とで異ならせてもよい。
図8に示すように、この場合には、湾曲部71の、湾曲形状の内側にあたる内側壁72の傾斜を同湾曲形状の外側にあたる外側壁73の傾斜よりも緩やかにすればよい。ここで、湾曲部71の内側壁72の傾きと外側壁73の傾きとが同一の場合には、内側壁72の曲げ半径が外側壁73の曲げ半径よりも小さくなるために、内側壁72の剛性が外側壁73の剛性よりも高くなる。上記セパレータによれば、そうした湾曲部71の内側壁72の傾きが外側壁73の傾きよりも緩やかであるため、曲げ半径が小さい内側壁72を剛性の低くなる形状にし、曲げ半径が大きい外側壁73を剛性が高くなる形状にすることができる。これにより、湾曲部71の内側壁72の剛性と外側壁73の剛性との差を小さくすることが可能になるため、湾曲部71の湾曲形状における内側と外側とで、同湾曲部71に作用する面圧の差を抑えることができる。
【0044】
・
図9に示すように、セパレータ80の凸部のうちの流体流路の側壁の一部を構成する部分(凸部82)を、直線状に延びる直線部を形成することなく、同一の曲げ半径の湾曲部81のみによって構成するようにしてもよい。こうしたセパレータ80によれば、凸部82の全ての部分を曲げ半径が同一の湾曲部81によって構成することができる。そのため、凸部82の各部における剛性のばらつきを、ひいては燃料電池が組み立てられた状態で凸部82の先端に作用する面圧のばらつきを抑えることができる。
【0045】
・ゴムシールを第2セパレータ30の凸部32の突端に設けるようにしてもよい。また、ゴムシールに代えて、第1セパレータ20の凸部22の突端と第2セパレータ30の凸部32の突端との間にガスケットを介設するようにしてもよい。なお、第1セパレータ20の凸部22の突端と第2セパレータ30の凸部32の突端とが互いに及ぼしあう力によって十分なシール性能を確保できるならば、ゴムシールやガスケットを設けなくてもよい。
【0046】
・セパレータに形成されて先端がフレーム50に接触する部分であり、且つ水素ガス流路(あるいは酸素ガス流路)の周囲を囲む形状で延びる部分(上記実施形態における凹部21,31[
図3参照])を、膜電極接合体40に近接する方向に突出する凸部として、上記実施形態に記載の凸部22,32と同様の形状に形成してもよい。
【0047】
・第1セパレータ20や第2セパレータ30としては、金属製の薄板状部材がプレス加工により起伏を有するように成形されたものに限らない。たとえば、カーボン素材が上記実施形態において例示したような形状に成形されたものであってもよい。
【0048】
・上記実施形態では、冷却水用の貫通孔と水素ガス用の貫通孔との間に酸素ガス用の貫通孔を形成したが、これに限らない。例えば水素ガス用の貫通孔と酸素ガス用の貫通孔との間に、冷却水用の貫通孔を形成してもよい。
【0049】
・燃料電池のセル用の流体としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、流体のうちの反応ガスとしては、酸素ガスに代えて空気を用いてもよい。また、冷媒としては、冷却水以外の流体を採用してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、膜電極接合体40のうち電解質膜41の端部がフレーム50に挟まれる構成としたが、これは必須ではない。