特許第6337251号(P6337251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6337251車両用インストルメントパネル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337251
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】車両用インストルメントパネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20180528BHJP
   B60K 37/04 20060101ALI20180528BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B60K37/00 G
   B60K37/04
   B60R11/02 S
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-258963(P2014-258963)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-117425(P2016-117425A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 真
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−038146(JP,U)
【文献】 実開昭56−039368(JP,U)
【文献】 特開平11−059507(JP,A)
【文献】 実開昭62−129887(JP,U)
【文献】 特開2004−262329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00−37/06
B60R 9/00−11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカが取付けられる第1仕様と取付けられない第2仕様とに適用可能であり、
内面側にスピーカ取付け部が設けられ、かつスピーカとの対向部を囲む複数のスリットが設けられた本体部と、スピーカ発生音を透過させるための透孔群が設けられ、かつ全ての前記スリットを囲む領域を前記本体部の外面側から覆うガーニッシュとを備え、
第1仕様に適用する際は、各スリット間の連結部を切断することで前記本体部にスピーカ発生音を通すための貫通孔が形成され、第2仕様に適用する際は、前記連結部を切断せずに前記対向部が前記本体部に残される車両用インストルメントパネルであって、
前記スリット及び前記透孔群の間の音伝達空間において、前記スリットから前記透孔群への直線的な音伝達経路を遮断する遮断壁が設けられている車両用インストルメントパネル。
【請求項2】
前記ガーニッシュに面直な方向から見たとき前記スリットが前記透孔群の外周に対してその外側にオフセットしており、
前記遮断壁が、前記ガーニッシュから前記本体部に向けて突出する環状のガーニッシュ側遮断壁と、前記ガーニッシュ側遮断壁に対してその内周側又は外周側にオフセットして前記本体部から前記ガーニッシュに向けて突出する環状の本体部側遮断壁とで構成されている請求項1に記載の車両用インストルメントパネル。
【請求項3】
前記本体部側遮断壁は、前記ガーニッシュ側遮断壁の前記対向部側の端部よりも前記ガーニッシュに近い箇所まで突出している請求項2に記載の車両用インストルメントパネル。
【請求項4】
前記ガーニッシュ側遮断壁及び前記本体部側遮断壁の少なくとも一方は複数設けられている請求項2又は3に記載の車両用インストルメントパネル。
【請求項5】
前記本体部側遮断壁は、前記対向部に近づくに従い厚みが増すように形成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両用インストルメントパネル。
【請求項6】
スピーカが取付けられる第1仕様と取付けられない第2仕様の車両用インストルメントパネルを製造する方法であって、
前記車両用インストルメントパネルは、内面側にスピーカ取付け部が設けられ、かつスピーカとの対向部を囲む複数のスリットが設けられた本体部と、スピーカ発生音を透過させるための透孔群が設けられ、かつ全ての前記スリットを囲む領域を前記本体部の外面側から覆うガーニッシュとを備え、
前記スリット及び前記透孔群の間の音伝達空間において、前記スリットから前記透孔群への直線的な音伝達経路を遮断する遮断壁を備えており、
前記車両用インストルメントパネルを第1仕様に適用する際には、各スリット間の連結部を切断することで前記本体部にスピーカ発生音を通すための貫通孔を形成し、第2仕様に適用する際には、前記連結部を切断せずに前記対向部を前記本体部に残す車両用インストルメントパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカが取付けられる第1仕様と取付けられない第2仕様とに適用可能に構成された車両用インストルメントパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用インストルメントパネルには、スピーカが取付けられる第1仕様(例えば、特許文献1参照)と取付けられない第2仕様とがある。共通の車両用インストルメントパネルで上記両仕様に対応する場合、従来は、第1仕様のときに、車両用インストルメントパネルにおいてスピーカの取付け予定箇所を打ち抜いて取付け孔を形成することが行なわれる。しかし、打ち抜きのための治具が必要であり、その分、設備費が増加する。また、打ち抜きのばらつきにより、取付け孔の位置がばらつく問題もある。
【0003】
そこで、打ち抜くことなく、また打ち抜きよりもばらつきの小さい態様で上記両仕様に対応できる車両用インストルメントパネルが考えられている。図6に示すように、この車両用インストルメントパネル51は、車両のエンジンルームに隣接して配置される本体部52と、ガーニッシュ53とを備える。これらの本体部52及びガーニッシュ53はいずれも金型を用いた樹脂成形によって形成される。そのため、形状のばらつきは、上記打ち抜きによって形成される場合よりも小さい。
【0004】
本体部52は、その内面側(図6の下側)にスピーカ取付け部55を備えている。また、本体部52は、スピーカ54と対向する部分に対向部57を備えるとともに、対向部57の周りに複数のスリット59を有している。ガーニッシュ53は、スピーカ発生音を透過させるための透孔群61を有しており、全てのスリット59を囲む領域を本体部52の外面側(図6の上側)から覆っている。
【0005】
そして、車両用インストルメントパネル51が第1仕様に適用される際には、各スリット59間の連結部58が切断されて対向部57が切り離されることで、本体部52にスピーカ発生音を通すための貫通孔56が形成される。これに対し、車両用インストルメントパネル51が第2仕様に適用される際には、連結部58が切断されず、対向部57が残される。
【0006】
なお、関連する技術として、例えば特許文献2には、連結部を切断して貫通孔を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−331449号公報
【特許文献2】特開平11−59507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記図6を参照して説明した従来の車両用インストルメントパネル51では、第2仕様のとき、対向部57が残っているものの、その周囲に、本体部52を貫通する複数のスリット59が存在する。そのため、エンジンルームの騒音N1が、スリット59及び透孔群61の間の音伝達空間A1を通った後、透孔群61から車室に漏れ、乗員に不快感を与えるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、スピーカが取付けられない第2仕様に適用されたとき、透孔群から車室に騒音が漏れるのを抑制することのできる車両用インストルメントパネル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する車両用インストルメントパネルは、スピーカが取付けられる第1仕様と取付けられない第2仕様とに適用可能であり、内面側にスピーカ取付け部が設けられ、かつスピーカとの対向部を囲む複数のスリットが設けられた本体部と、スピーカ発生音を透過させるための透孔群が設けられ、かつ全ての前記スリットを囲む領域を前記本体部の外面側から覆うガーニッシュとを備え、第1仕様に適用する際は、各スリット間の連結部を切断することで前記本体部にスピーカ発生音を通すための貫通孔が形成され、第2仕様に適用する際は、前記連結部を切断せずに前記対向部が前記本体部に残される車両用インストルメントパネルであって、前記スリット及び前記透孔群の間の音伝達空間において、前記スリットから前記透孔群への直線的な音伝達経路を遮断する遮断壁が設けられている。
【0011】
また、上記課題を解決する車両用インストルメントパネルの製造方法は、スピーカが取付けられる第1仕様と取付けられない第2仕様の車両用インストルメントパネルを製造する方法であって、前記車両用インストルメントパネルは、内面側にスピーカ取付け部が設けられ、かつスピーカとの対向部を囲む複数のスリットが設けられた本体部と、スピーカ発生音を透過させるための透孔群が設けられ、かつ全ての前記スリットを囲む領域を前記本体部の外面側から覆うガーニッシュとを備え、前記スリット及び前記透孔群の間の音伝達空間において、前記スリットから前記透孔群への直線的な音伝達経路を遮断する遮断壁を備えており、前記車両用インストルメントパネルを第1仕様に適用する際には、各スリット間の連結部を切断することで前記本体部にスピーカ発生音を通すための貫通孔を形成し、第2仕様に適用する際には、前記連結部を切断せずに前記対向部を前記本体部に残す。
【0012】
上記の構成及び製造方法によれば、車両用インストルメントパネルが第1仕様に適用される場合には、各スリット間の連結部が切断されることで、本体部にスピーカ発生音を通すための貫通孔が形成される。そのため、スピーカ発生音は貫通孔を通り、透孔群からガーニッシュの外方へ伝わる。
【0013】
これに対し、車両用インストルメントパネルが第2仕様に適用される場合には、連結部が切断されずに対向部が本体部に残される。対向部の周りには複数のスリットが存在する。そのため、エンジンルームから本体部へ伝わった騒音は、各スリットを通り、対向部とガーニッシュとの間に入り込む。この騒音は、スリット及び透孔群の間の音伝達空間において、スリットから透孔群への直線的な音伝達経路を通る過程で、遮断壁に当たって伝わる方向を変えられることで減衰される。その結果、透孔群を通って車室に漏れる騒音が小さくなる。
【発明の効果】
【0014】
上記車両用インストルメントパネル及びその製造方法によれば、スピーカが取付けられない第2仕様に適用されたとき、透孔群から車室に騒音が漏れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両用インストルメントパネル及びその製造方法を具体化した一実施形態を示す図であり、本体部にガーニッシュが取付けられる前の車両用インストルメントパネルの概略構成を示す斜視図。
図2図1における天板部の一部を拡大して示す部分斜視図。
図3】一実施形態におけるガーニッシュの部分底面図。
図4】(a)は、一実施形態において、第2仕様に適用された車両用インストルメントパネル前上部の内部構造を示す部分断面図、(b)は図4(a)の部分拡大断面図。
図5】一実施形態において、第1仕様に適用された車両用インストルメントパネル前上部の内部構造を示す部分断面図。
図6】従来の車両用インストルメントパネルの内部構造を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車両用インストルメントパネル及びその製造方法を具体化した一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後退方向を後方として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0017】
車両の車室の前部には、メータ類やスイッチ類が組込まれる車両用インストルメントパネルが配置されている。図1は、この車両用インストルメントパネル11の概略構成を示している。車両用インストルメントパネル11は、本体部12と、その本体部12の一部に上方から取付けられる複数のガーニッシュとを備えている。図1では、複数のガーニッシュのうちの一部(ガーニッシュ25)のみが図示されている。
【0018】
本体部12は、車両用インストルメントパネル11の主要部をなす部分であり、車両のエンジンルーム(図示略)の後側に隣接して配置されている。本体部12は、車室の全幅にわたって設けられている。
【0019】
本体部12の天板部13は樹脂材料によって形成されている。天板部13は、その多くの部分を占める一般部14と、その一般部14の前側に位置する段差部15とを備えている。一般部14前部の車幅方向における中央部及びその周辺部分は、後方へ凹む形状に形成されている。一般部14の上面には、図示しない表皮が貼付けられる。この貼付けは、表皮を一般部14に真空引きによって吸着させることで行なわれる。図1に示されるドット(・)は、真空引きを行なう孔14aを示している。
【0020】
段差部15は、車室の全幅にわたって設けられている。段差部15は、前後方向の寸法が車幅方向の寸法よりも小さい横長形状に形成されている。段差部15は、上記一般部14前部の凹んだ部分にも位置している。段差部15は、一般部14よりも若干低い箇所に形成されている。
【0021】
なお、図1では、本体部12において天板部13とは異なる箇所が二点鎖線で示されている。
図4及び図5に示すように、段差部15において車幅方向の略中央部の下方には、スピーカ取付け部16が設けられている。スピーカ取付け部16は、上方へ向けて音を発するスピーカ17が取付けられる第1仕様(図5)と、取付けられない第2仕様(図4(a),(b))とが選択的に採られる箇所である。ここで、スピーカ取付け部16及びスピーカ17にとって、本体部12から遠ざかる方向を「内方」といい、同本体部12に近づく方向を「外方」というものとする。スピーカ取付け部16の段差部15との位置関係でいうところの「下方」は、上記内方のうちの1つの方向である。また、スピーカ17が音を発する方向である「上方」は、上記外方のうちの1つの方向である。
【0022】
ここで、図2及び図4(a),(b)に示すように、段差部15において、スピーカ17と対向する部分、すなわち、スピーカ取付け部16の上方となる部分を、対向部21というものとする。対向部21の周縁部には、それぞれ段差部15を上下に貫通する複数のスリット23が、その周縁部に沿って互いに離間した状態で設けられている。このように複数のスリット23によって囲まれた対向部21は、平面視で略菱形をなしており、第2仕様のとき、エンジンルームからの騒音N1を遮って、後述する透孔群26に到達しにくくしている。
【0023】
なお、上記スリット23は、ガーニッシュ25に面直な方向から見たとき、透孔群26の外周に対してその外側にオフセットしている。
段差部15において、隣り合うスリット23によって挟まれる部分は、それぞれ対向部21を段差部15に連結する連結部22を構成している。本実施形態では、連結部22は、対向部21の左右両側の2箇所と後側の2箇所とに設けられている(図2参照)。
【0024】
複数の連結部22は、互いに同一の形状をなしていてもよいし、異なる形状をなしていてもよい。本実施形態では、対向部21の左右両側に位置する2つの連結部22は、いずれも対向部21から遠ざかるに従い幅狭となる形状に形成されている。また、対向部21の後側に位置する2つの連結部22は、いずれも平面視で矩形状をなしている。
【0025】
図3は、ガーニッシュ25の下面の構造を示している。図1及び図3に示すように、ガーニッシュ25は、上記本体部12と同様に樹脂材料によって形成されている。ガーニッシュ25は、段差部15において対向部21の周辺部分の平面形状に対応する平面形状を有している。ここでの対応する平面形状とは、少なくとも全てのスリット23を囲む領域を上方から覆うことのできる形状である。ガーニッシュ25は、その上面が一般部14の上面と略同じ高さとなるようにして段差部15に取付けられている。図5に示すように、ガーニッシュ25において、スピーカ取付け部16の上方には、上記スピーカ17からの音(スピーカ発生音S1)を通過させるための透孔群26が形成されている。透孔群26は、ガーニッシュ25を上下方向に貫通する透孔26aの集まりによって構成されている。図3及び図4(a),(b)に示すようにガーニッシュ25には、その下面から対向部21に向けて突出するハニカム状のリブ27が一体に形成されている。
【0026】
本体部12(段差部15)とガーニッシュ25との間であって、スリット23及び透孔群26の間は、円環状の音伝達空間A1を構成している。スリット23を通じてこの音伝達空間A1に入った音は、基本的には、スリット23と透孔群26とを結ぶ直線的な音伝達経路R1を通ることとなる。
【0027】
さらに、本実施形態では、上記音伝達空間A1において上記直線的な音伝達経路R1を遮断する遮断壁が設けられている。
遮断壁は、それぞれ円環状をなし、かつ同心円上に形成された2つのガーニッシュ側遮断壁31,32(図3参照)と、同じく円環状をなす1つの本体部側遮断壁33(図2参照)とによって構成されている。
【0028】
ガーニッシュ側遮断壁32はガーニッシュ側遮断壁31よりも小径状に形成されており、ガーニッシュ側遮断壁31との間に円環状の空間を形成している。両ガーニッシュ側遮断壁31,32は、ガーニッシュ25の下面に一体に形成されている。両ガーニッシュ側遮断壁31,32は、いずれもガーニッシュ25の上記透孔群26を取り囲む箇所から対向部21に向けて、上記ハニカム状のリブ27よりも多く突出している。両ガーニッシュ側遮断壁31,32は、対向部21及びガーニッシュ25の配列方向(上下方向)における中央部付近まで突出している。
【0029】
各ガーニッシュ側遮断壁31,32の断面形状は、径方向よりも上下方向に細長い縦長の矩形をなしている。また、各ガーニッシュ側遮断壁31,32は、上下方向のどの箇所でも厚みが一定となるように形成されている。ガーニッシュ側遮断壁31の外周面31b、及びガーニッシュ側遮断壁32の外周面32bは、いずれも対向部21及びガーニッシュ25の面に沿う方向に対し直角又はそれに近い角度で交差している。
【0030】
本体部側遮断壁33は、対向部21の上面に一体に形成されている。本体部側遮断壁33は、対向部21の上記透孔群26を取り囲む箇所であって、上記いずれのガーニッシュ側遮断壁31,32とも対向しない箇所からガーニッシュ25に向けて突出している。本実施形態では、本体部側遮断壁33は、ガーニッシュ側遮断壁31よりも小径であり、かつガーニッシュ側遮断壁32よりも大径に形成されており、両ガーニッシュ側遮断壁31,32間の上記円環状の空間に位置している。表現を変えると、本体部側遮断壁33は、ガーニッシュ側遮断壁31に対してその内周側にオフセットし、ガーニッシュ側遮断壁32に対してその外周側にオフセットしている。
【0031】
本体部側遮断壁33は、ガーニッシュ側遮断壁31の対向部21側の端部である下端部31aよりも、またガーニッシュ側遮断壁32の対向部21側の端部である下端部32aよりもガーニッシュ25に近い箇所まで突出している。こうした構成により、ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33は、対向部21及びガーニッシュ25の配列方向である上下方向にオーバラップしている。本体部側遮断壁33は、ガーニッシュ25の下面、ガーニッシュ側遮断壁31及びガーニッシュ側遮断壁32のいずれからも同程度ずつ離間している。本体部側遮断壁33の断面形状は、上側ほど厚みが小さくなる略三角形状をなしている。本体部側遮断壁33は、最も厚みの小さい箇所(上端部)でも、ガーニッシュ側遮断壁31,32よりも大きな厚みを有している。本体部側遮断壁33の外周面33bは、対向部21及びガーニッシュ25の面に沿う方向に対し直角に近い角度で交差している。
【0032】
ガーニッシュ25及び対向部21の間であって、ガーニッシュ側遮断壁31,32と本体部側遮断壁33との間の空間は、上下方向に蛇行(屈曲)した蛇行部R1aとなっている。
【0033】
上記本体部側遮断壁33の主な役割は、遮断壁の一部を構成することであるが、そのほかにも対向部21の剛性を高める役割も担っている。特に、本体部側遮断壁33の厚みが対向部21に近づくほど大きくなっていることから、対向部21の剛性が効果的に高められている。本体部側遮断壁33が環状をなしていて、対向部21の周縁部の近くに形成されていることは、同対向部21の剛性をさらに高めることに寄与している。
【0034】
次に、上記のようにして構成された本実施形態の作用について、車両用インストルメントパネル11の製造方法とともに説明する。ここでの製造方法については、車両用インストルメントパネル11を第1仕様又は第2仕様に適用する際に行なわれる作業を中心に説明する。
【0035】
車両用インストルメントパネル11が第1仕様に適用される場合には、ガーニッシュ25が段差部15に取付けられる前に、図2における各連結部22が切断されて、対向部21が段差部15から切り離される。各連結部22の切断に際しては、例えば、対向部21(本体部側遮断壁33)の中心から外れた箇所が作業者によって指で押される等して、同箇所に力が加えられる。すると、いずれかの連結部22を支点として対向部21を回転させようとする力が、その対向部21に作用する。連結部22に応力が集中し、その連結部22が対向部21から遠い側の端部で切断される。この際、対向部21は本体部側遮断壁33によって剛性を高められているため、撓んだり変形したりすることが起こりにくい。
【0036】
段差部15から対向部21が取出されると、図5に示すように、本体部12にスピーカ発生音S1を通すための貫通孔18が形成される。
さらに、貫通孔18が下方からスピーカ17によって覆われるように、そのスピーカ17がスピーカ取付け部16に取付けられる。その後に、ガーニッシュ25が段差部15に取付けられることで、第1仕様の車両用インストルメントパネル11が得られる。
【0037】
従って、第1仕様の車両用インストルメントパネル11が組込まれた車両において、スピーカ17からスピーカ発生音S1が発生されると、そのスピーカ発生音S1は、スピーカ17の上方の貫通孔18を通り、段差部15とガーニッシュ25との間に入り込む。スピーカ発生音S1は対向部21によって遮られることがない。そして、スピーカ発生音S1は、透孔群26を通じてガーニッシュ25の上方の車室に伝わる。
【0038】
これに対し、車両用インストルメントパネル11が第2仕様に適用される場合には、図4(b)に示すように、各連結部22は切断されない。対向部21が複数の連結部22を介して段差部15に接続された第2仕様の車両用インストルメントパネル11が得られる。
【0039】
第2仕様の車両用インストルメントパネル11が組込まれた車両の作動時には、エンジンルームからの騒音N1が本体部12に伝わる。対向部21は、この騒音N1を遮って透孔群26に到達するのを抑制する。しかし、対向部21の周りには複数のスリット23が存在する。これらのスリット23は、対向部21を連結部22によって、本体部12(段差部15)において対向部21の周りの部分に繋ぐという構成を採る以上少なからず存在する。そのため、エンジンルームからの騒音N1は、各スリット23を通り音伝達空間A1に入り込む。この騒音N1は、各スリット23から透孔群26に至る音伝達経路R1を伝わる。
【0040】
ここで、仮に遮断壁が設けられていないとすると、上記騒音N1は、各スリット23から透孔群26に向かう直線的な音伝達経路R1を通ることとなる。
この点、ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33が設けられた本実施形態では、各スリット23から音伝達空間A1に入り込んだ騒音N1は、音伝達経路R1を通る過程で蛇行部R1aを経由する。蛇行部R1aでは、騒音N1は、ガーニッシュ側遮断壁31の外周面31b、本体部側遮断壁33の外周面33b、及びガーニッシュ側遮断壁32の外周面32bに当たることで、伝わる方向を、対向部21及びガーニッシュ25の面に沿う方向から、交差する方向(上下方向)に変えられる。表現を変えると、各スリット23から透孔群26への直線的な音伝達経路R1がガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33によって遮断される。このようにして、伝わる方向が変えられる毎に騒音N1が減衰される。
【0041】
特に、本実施形態では、ガーニッシュ側遮断壁31,32も本体部側遮断壁33も環状をなしているため、いずれのスリット23を通って音伝達空間A1に入り込んだ騒音N1も、伝わる方向を好適に変えられて減衰される。
【0042】
また、本実施形態では、本体部側遮断壁33がガーニッシュ側遮断壁31,32の下端部31a,32aよりもガーニッシュ25に近い箇所まで突出していて、両ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33が対向部21及びガーニッシュ25の配列方向(上下方向)にオーバラップしている。そのため、各スリット23から音伝達空間A1に入り込んだ騒音N1は、ガーニッシュ側遮断壁31,32と本体部側遮断壁33とによって構成される蛇行部R1aを伝わる際に、それらの突出方向、すなわち、対向部21及びガーニッシュ25の配列方向(上下方向)に向けて伝わる。その結果、騒音N1が蛇行部R1aを経由する過程で、その騒音N1の伝わる方向が的確に変更される。この点、オーバラップしない場合に、騒音N1がガーニッシュ側遮断壁31,32と本体部側遮断壁33との隙間を、対向部21及びガーニッシュ25の各面に沿う方向に伝わるのと大きく異なる。
【0043】
ここで、騒音N1は、ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33に当たる毎に、伝わる方向を変えられて減衰される。この点、本実施形態では、ガーニッシュ側遮断壁31,32が2つ設けられていることから、1つの場合よりも、方向の変更回数が多くなり、騒音N1がより効果的に減衰される。
【0044】
なお、ハニカム状のリブ27は、ガーニッシュ25からの突出長さが僅かであり、上記両ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33によるような、音の伝わる方向を変更して減衰させる機能はほとんど発揮しない。
【0045】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)対向部21が複数のスリット23によって囲まれた本体部12を金型による樹脂成形によって形成している(図2)。
【0046】
そのため、車両用インストルメントパネルにおいてスピーカの取付け予定箇所を打ち抜いて取付け孔を形成する場合に比べ、取付け孔に相当する貫通孔18の形状のばらつきを小さくすることができる。また、打ち抜きのための治具が不要となり、その分、設備費を低減することができる。
【0047】
(2)スリット23及び透孔群26の間の音伝達空間A1において、スリット23から透孔群26への直線的な音伝達経路R1を遮断する遮断壁を設けている(図4(b))。
そのため、車両用インストルメントパネル11が第2仕様に適用されたとき、エンジンルームからの騒音N1が、各スリット23を通じて音伝達空間A1に入り込んでも減衰させることができ、透孔群26から車室に騒音N1が漏れるのを抑制することができる。
【0048】
(3)ガーニッシュ25に面直な方向から見たときスリット23が透孔群26の外周に対してその外側にオフセットしている車両用インストルメントパネル11を対象とする。遮断壁を、ガーニッシュ25から本体部12(対向部21)に向けて突出する環状のガーニッシュ側遮断壁31,32と、ガーニッシュ側遮断壁31に対してその内周側にオフセットして本体部12(対向部21)からガーニッシュ25に向けて突出する環状の本体部側遮断壁33とによって構成している(図4(b))。
【0049】
そのため、各スリット23から音伝達空間A1に入り込んだ騒音N1が透孔群26に向けて伝わる途中で、その騒音N1が伝わる方向をガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33によって、対向部21及びガーニッシュ25の面に沿う方向から交差する方向(上下方向)に変えて、直線的な音伝達経路R1を遮断することができる。その結果、上記(2)の効果を良好に得ることができる。
【0050】
(4)本体部側遮断壁33を、ガーニッシュ側遮断壁31,32の対向部21側の端部である下端部31a,32aよりもガーニッシュ25に近い箇所まで突出させる。このようにすることで、ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33を、対向部21及びガーニッシュ25の配列方向(上下方向)にオーバラップさせている(図4(b))。
【0051】
そのため、各スリット23から音伝達空間A1に入り込んだ騒音N1が、ガーニッシュ側遮断壁31,32と本体部側遮断壁33との隙間からなる蛇行部R1aを伝わる際には、その伝わる方向を、直線的な音伝達経路R1を遮断する方向、すなわち、対向部21及びガーニッシュ25の配列方向(上下方向)に的確に変更することができる。
【0052】
(5)ガーニッシュ側遮断壁31,32を複数(2つ)設けている(図3)。
そのため、ガーニッシュ側遮断壁31,32が1つ設けられた場合に比べ、騒音N1の伝わる方向の変更回数を多くして、騒音N1をより大きく減衰させることができる。
【0053】
(6)本体部側遮断壁33を、対向部21に近づくに従い厚みが増すように形成している(図4(b))。
本体部側遮断壁33には、もともと対向部21の剛性を高める機能があるが、本体部側遮断壁33を上記形状に形成することで、対向部21の剛性を効果的に高めることができる。連結部22を切断するために、対向部21に力を加えたときにその対向部21が撓んだり変形したりするのをより好適に抑制することができる。その結果、各連結部22を良好に切断することができる。
【0054】
(7)ガーニッシュ25を、その上面が一般部14の上面と略同じ高さとなるように段差部15に取付けている。
そのため、車両用インストルメントパネル11では本体部12とは別にガーニッシュ25を用いているが、両者の間に段差を生じにくくし、境界部分の見栄えをよいものにすることができる。
【0055】
(8)本体部側遮断壁33をガーニッシュ25の下面からも、ガーニッシュ側遮断壁31,32からも離間させている(図4(b))。
そのため、車両の振動が、第2仕様に適用された車両用インストルメントパネル11に伝わっても、本体部側遮断壁33がガーニッシュ25の下面やガーニッシュ側遮断壁31,32と接触して異音を発生するのを抑制することができる。
【0056】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・遮断壁が上記実施形態とは異なる構造を有するものに変更されてもよい。
【0057】
例えば、本体部側遮断壁33が、対向部21の上面から下方に凹み、かつ環状をなす2つの凹部によって構成され、ガーニッシュ25から突出するガーニッシュ側遮断壁31,32が、これらの凹部内に入り込ませられてもよい。
【0058】
また、ガーニッシュ側遮断壁31,32が、ガーニッシュ25の下面から上方へ凹み、かつ環状をなす凹部によって構成され、対向部21から突出する本体部側遮断壁33が、この凹部内に入り込ませられてもよい。
【0059】
上記いずれの変形例でも、音伝達経路R1に蛇行部R1aを設け、騒音N1の伝わる方向を変えることにより直線的な音伝達経路R1を遮断して、騒音N1を減衰させることができる。
【0060】
・貫通孔18及び対向部21が、上記実施形態とは異なる平面形状に形成されてもよい。
・連結部22の数が複数であることを条件に増減されてもよい。また、連結部22は、上記実施形態とは異なる形状、大きさ、位置に形成されてもよい。
【0061】
・ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33は、円環状とは異なる環状、例えば四角環状、六角環状等の多角環状や、楕円環状に形成されてもよい。
・ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33の断面形状が上記実施形態とは異なる断面形状に変更されてもよい。
【0062】
・ガーニッシュ側遮断壁31,32の外周面31b,32b、及び本体部側遮断壁33の外周面33bは、必ずしも対向部21及びガーニッシュ25の面に沿う方向に対し直角又はそれに近い角度で交差しなくてもよく、それよりも大きく上記方向に対し傾斜してもよい。この場合にも、音の伝わる方向を変える効果は得られる。
【0063】
・2つのガーニッシュ側遮断壁31,32は、ガーニッシュ25からの突出長が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
・ガーニッシュ側遮断壁31,32が3つ以上設けられてもよい。また、本体部側遮断壁33が2つ以上設けられてもよい。このようにガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33の数が増加されると、騒音N1の伝わる方向の変更回数が増え、騒音N1を減衰させる効果が大きくなる。
【0064】
・ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33の少なくとも1つは、ガーニッシュ25及び対向部21の配列方向(上下方向)に対し傾斜する方向へ突出されてもよい。
【0065】
・本体部側遮断壁33は、ガーニッシュ側遮断壁31,32のいずれかと対向する箇所において、対向部21及びガーニッシュ25の配列方向(上下方向)に互いに離間した状態で設けられてもよい。この場合にも、ガーニッシュ側遮断壁31,32及び本体部側遮断壁33によって、音の伝わる方向を少なからず変えることは可能である。
【0066】
・ガーニッシュ側遮断壁31,32と本体部側遮断壁33とは必ずしもオーバラップしていなくてもよい。例えば、本体部側遮断壁33は、ガーニッシュ側遮断壁31,32の下端部31a,32aと、上下方向の同じ高さとなる箇所まで突出されてもよい(オーバラップ量:0)。このようにした場合にも、オーバラップさせた場合ほどではないものの、騒音N1を低減させる効果は少なからず得られる。
【0067】
・スピーカ取付け部16及びスリット23は、本体部12において車幅方向の中央部とは異なる箇所、例えば同方向の側部に設けられてもよい。
・スピーカ取付け部16及びスリット23は、天板部13において前後方向の前部とは異なる箇所、例えば中央部や後部に設けられてもよい。
【0068】
・スピーカ取付け部16及びスリット23は、本体部12において、天板部13とは異なる箇所(図1において二点鎖線で示される箇所)に設けられてもよい。
・ガーニッシュ25は、全てのスリット23を囲む領域を本体部12の外面側(上記実施形態の場合、上側)から覆う形状及び大きさを有するものであればよい。従って、ガーニッシュ25は、平面視で上記領域と略同じ形状及び大きさに形成されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
11…車両用インストルメントパネル、12…本体部、16…スピーカ取付け部、17…スピーカ、18…貫通孔、21…対向部、22…連結部、23…スリット、25…ガーニッシュ、26…透孔群、31,32…ガーニッシュ側遮断壁、31a,32a…下端部(ガーニッシュ側遮断壁の対向部側の端部)、33…本体部側遮断壁、A1…音伝達空間、R1…音伝達経路、S1…スピーカ発生音。
図1
図2
図3
図4
図5
図6