【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
<B細胞の生存能及び活性化能の測定試験>
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓由来のB細胞(B220陽性細胞)に、殺菌処理を施した、味噌の醸造工程で単離された(即ち、味噌由来のものである)テトラジェノコッカス・ハロフィラス(即ち、耐塩性乳酸菌)の菌体を添加して細胞培養し、脾臓B細胞の生存能及び脾臓B細胞の活性化能を調査した。以下、本実施例では「脾臓B細胞」を単に「B細胞」と記す場合がある。
【0085】
(1)乳酸菌懸濁液の調製:
味噌の醸造工程から単離した乳酸菌の56株について、それぞれ、「10SG10N培地」を用いて、30℃、4〜7日間培養した。その後、上記56株の全てについて121℃で15分間オートクレーブ滅菌処理をして菌株毎の培養液を得た。
【0086】
なお、「10SG10N培地」は、醤油(イチビキ社製の商品名「こいくちしょうゆ」)10v/v%、ぶどう糖1.0w/v%、酵母エキス1.0w/v%、ポリペプトン0.5w/v%、酢酸ナトリウム3水和物0.2w/v%、塩化ナトリウム10w/v%、「Tween80(ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノオレアート)」0.0025w/v%、硫酸マグネシウム7水和物0.02w/v%、硫酸マンガン4水和物0.001w/v%、及び硫酸鉄7水和物0.001w/v%を混合し、pH6.8に調整してオートクレーブしたものである。なお、「v/v%」は、(体積/体積)%を示す。
【0087】
次に、滅菌処理して得られた各培養液を、5000rpmで10分間遠心分離を行った。その後、それぞれ集菌して、蒸留水で3回洗浄した後、蒸留水で懸濁して凍結乾燥して菌体(56株分)を得た。その後、凍結乾燥した菌体のそれぞれについて、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で0.1mg/mLになるように懸濁して、56株分の乳酸菌懸濁液を調製した。
【0088】
(2)B細胞の調製:
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓から採取した細胞を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio−One社製)に集め、0.5mLの赤血球溶解バッファー(0.155M NH
4Cl,0.01M Tris−HCl,pH7.5)を加えて細胞を懸濁した。その後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)を0.5mL加えて1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で1回洗浄した。
【0089】
基本培地で懸濁後、ビオチン−抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を加えて、冷蔵(5℃)して30分間静置した。なお、基本培地は、ペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液(培地中に100U/mL−100μg/mL、ナカライテスク社製)及び2−メルカプトエタノール(培地中に50μM、ナカライテスク社製)を加えた、L−グルタミン酸(0.3g/L)加RPMI 1640(ナカライテスク社製)に、55℃で30分間加熱して非働化した牛胎児血清(SAFC Biosciences社製)を培地中で9(w/v)%になるように添加したものを用いた。
【0090】
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄した後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で懸濁した。その後、磁気ビーズであるStreptavidin Particles Plus・DM(日本BD社製)を加えて、冷蔵(5℃)して30分間静置した。
【0091】
その後、1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で1回洗浄した後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)に再度懸濁して、ラウンドチューブに移した。
【0092】
その後、BD IMag Cell Separation System(日本BD社製)にて細胞分離を行い、磁石に引き寄せられている細胞をポジティブフラクションとして回収した。回収したポジティブフラクションを、「B細胞(B220陽性細胞)」として、再度基本培地に懸濁して、B細胞浮遊液を調製した。なお、得られたB細胞浮遊液は、血球計算板を用いて細胞数を計測した。
【0093】
(3)細胞培養:
2×10
6cells/mLになるようにB細胞浮遊液を基本培地で調整し、調整後のB細胞浮遊液を、48wellマイクロプレート(FALCON社製)に0.5mLずつ播種して、1×10
6cells/0.5mL/wellとした。その後、各乳酸菌懸濁液(0.1mg/mL)を5μLずつ加え、37℃、5%CO
2の条件下で2日間培養した。なお、調整後のB細胞浮遊液に菌体(乳酸菌懸濁液)を添加せずに、菌体を添加した水準と同一条件(37℃、5%CO
2の条件)で2日間培養したものをコントロールとした。
【0094】
(4)B細胞の生存能及び活性化能の測定:
培養後、フローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いて、各試料(細胞培養液)について生存能及び活性化能の測定を行った。
【0095】
まず、48wellマイクロプレートで培養していた細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio−One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.2mLに懸濁し、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)とAPC標識抗CD86抗体(TONBO Biosciences社製)を1μLずつ加え、冷蔵(5℃)で60分間静置した。
【0096】
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLに懸濁した。その後、Propidium Iodide(PI)核染色液(コスモバイオ社製)を0.5μL加えて測定用試料を得た。この測定用試料についてフローサイトメトリーを用いた測定を行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo (FlowJo, LLC社製)を用いた。なお、Propidium Iodide(PI)核染色液を用いたのは、この染色液は、生細胞の細胞膜を透過しない試薬であり、死細胞を染色できるためである。
【0097】
(B細胞の生存能)
測定用試料中において、カウントされた細胞数から、添加した乳酸菌の数(乳酸菌懸濁液中の菌体の数)を差し引いた数を総細胞の数とした。また、測定用試料のうち、PI検出された細胞(即ち、PI核染色液で染色された細胞)を死細胞とみなし、その数をカウントし、総細胞の数と死細胞の数との差を生細胞の数とした。そして、総細胞中の生細胞の割合(生細胞の数/総細胞の数×100)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞中の生細胞の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の生存能(細胞生存能)の値とした。なお、細胞生存能の試験は、繰り返して行い、B細胞の生存能の値について平均値(X
−)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を
図1及び表1に示す。なお、
図1〜
図7、
図9〜
図14中、「CTL」は、コントロール(control)を示す。本実施例において「平均値(X
−)」は、6回の試験(n=6)による平均値である。
【0098】
B細胞の生存能について、以下の基準で評価を行った。式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が、100超で110未満の場合を「A」とし、110以上で130未満の場合を「AA」とし、130以上の場合を「AAA」とする。結果を表1に示す。
【0099】
(B細胞の活性化能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体と、B細胞の活性化マーカーであるAPC標識抗CD86抗体によって、B220及びCD86を発現するB細胞を検出し、その数を数えた。そして、B細胞(B220陽性細胞)のうち、活性化しているB細胞(CD86
+,B220
+)と活性化していないB細胞(CD86
−,B220
+)の商(活性化しているB細胞の数と活性化していないB細胞の数との比)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているB細胞(CD86
+,B220
+)と活性化していないB細胞(CD86
−,B220
+)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の活性化能の値とした。なお、B細胞の活性化能の試験は、繰り返して行い、B細胞の活性化能の値について平均値(X
−)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を
図2及び表1に示す。
【0100】
B細胞の活性化能について、以下の基準で評価を行った。式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が、100超で110未満の場合を「A」とし、110以上で130未満の場合を「AA」とし、130以上の場合を「AAA」とする。結果を表1に示す。
【0101】
なお、表1、表2中、「評価」の欄の「−」は、式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が100以下であることを意味する。また、表1中、「評価」の欄の「OK/NG」は、式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が100超である場合(即ち、A、AA、AAAのいずれかの評価である場合)を「OK」とし、式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が100以下である場合を「NG」とした。また、表1中、「総合評価」の欄の「OK/NG」は、B細胞の生存能及び活性化能の評価がいずれも「OK」である場合を「OK」とし、それ以外を「NG」とした。「総合評価」の欄において「OK」である菌株は、B細胞の生存能及びB細胞の活性化能を有することが分かる。
【0102】
「CD86
+,B220
+」は、CD86及びB220の両方が細胞表面に発現していることを示す。また、「CD86
−,B220
+」は、CD86は発現せず、B220が発現していることを示す。
【0103】
【表1】
【0104】
味噌の醸造工程から単離した乳酸菌の56株のうち、No.1、3、13、15、19、30、31の7つの菌株(以下、「代表菌株」と記す場合がある)は、B細胞の生存能が高く、且つ、B細胞の活性化能も高い結果であった(表1参照)。これらの耐塩性乳酸菌は、表1に示すように、B細胞に直接作用することによってB細胞の生存能及び活性化能を向上させていると考えられる。また、これらの耐塩性乳酸菌は、味噌由来のものであるため食品適性が高い(即ち、安全性が高い)。更に、汚染菌が繁殖し難い高い塩分濃度で生育可能であるため、培養が簡単である。そのため、これらの耐塩性乳酸菌は、製造し易い。
【0105】
本実施例では、B220陽性細胞に着目してB細胞について解析したが、B220陽性細胞に代えてCD19陽性細胞で解析した場合にも同様の結果が得られた。このことからも、所定の菌株によってB細胞の生存能及び活性化能が向上されていることが確認できた。
【0106】
なお、No.1の菌株は、受託番号NITE
BP−02318の耐塩性乳酸菌であり、No.3の菌株は、受託番号NITE
BP−02319の耐塩性乳酸菌であり、No.13の菌株は、受託番号NITE
BP−02320の耐塩性乳酸菌であり、No.15の菌株は、受託番号NITE
BP−02321の耐塩性乳酸菌であり、No.19の菌株は、受託番号NITE
BP−02322の耐塩性乳酸菌であり、No.30の菌株は、受託番号NITE
BP−02323の耐塩性乳酸菌であり、No.31の菌株は、受託番号NITE
BP−02324の耐塩性乳酸菌である。
【0107】
(実施例2)
B細胞の生存能及び活性化能の両方が高い菌株(No.1、3、13、15、19、30、31)と、その他の任意の菌株(No.2、20、26、28、34、49)とを試験菌株として、脾臓細胞全体(全脾臓細胞)に対する影響を調べた。
【0108】
<細胞の生存能及び活性化能の測定試験>
各試験菌株を殺菌処理し、殺菌処理後の菌体を実験用マウス(C57BL/6)の脾臓細胞に添加して培養し、培養後における、脾臓細胞全体の生存能、脾臓B細胞と脾臓T細胞の生存能、及び脾臓B細胞と脾臓T細胞の活性化能を調査した。以下、本実施例では、「脾臓B細胞」を単に「B細胞」と記すことがあり、「脾臓T細胞」を単に「T細胞」と記す場合がある。なお、本実施例2は、実施例1とは異なり、B細胞を単離していない。即ち、試験に用いた細胞(全脾臓細胞)の中には、B細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞等が含まれていた。
【0109】
(1)乳酸菌懸濁液の調製:
実施例1で調製した乳酸菌懸濁液と同様のものを使用した。
【0110】
(2)脾臓細胞浮遊液の調製:
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓から採取した細胞を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio−One社製)に集め、0.5mLの赤血球溶解バッファー(0.155M NH
4Cl,0.01M Tris−HCl,pH7.5)を加えて脾臓細胞を懸濁した。その後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLを加えて1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄した。
【0111】
基本培地で懸濁して、脾臓細胞浮遊液を調製した。なお、基本培地は、実施例1と同じものを使用した。得られた脾臓細胞浮遊液は、血球計算板を用いて細胞数を計測した。
【0112】
(3)細胞培養:
2×10
6cells/mLになるように脾臓細胞浮遊液を基本培地で調整し、調整後の脾臓細胞浮遊液を、48wellマイクロプレート(FALCON社製)に0.5mLずつ播種して、1×10
6cells/0.5mL/wellとした。その後、各乳酸菌懸濁液(0.1mg/mL)を5μLずつ加え、37℃、5%CO
2の条件下で2日間培養した。なお、調整後の脾臓細胞浮遊液に菌体(乳酸菌懸濁液)を添加せずに、菌体を添加した水準と同一条件(37℃、5%CO
2の条件)で2日間培養したものをコントロールとした。
【0113】
(4)細胞の生存能及び活性化能の測定:
培養後、フローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いて、各試料(細胞培養液)について細胞の生存能及び活性化能の測定を行った。
【0114】
まず、48wellマイクロプレートで培養していた細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio−One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.2mLに懸濁し、以下の4つの抗体を1μLずつ加え、冷蔵(5℃)で60分間静置した。
【0115】
添加した4つの抗体は、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)、APC標識抗CD86抗体(TONBO Biosciences社製)、Brilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)、及びPE標識抗CD69抗体(BioLegend社製)であった。
【0116】
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLに懸濁した。その後、Propidium Iodide(PI)核染色液(コスモバイオ社製)を0.5μL加えて測定用試料を得た。この測定用試料についてフローサイトメトリーを用いた測定を行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo (FlowJo, LLC社製)を用いた。
【0117】
(細胞の生存能)
測定用試料中において、カウントされた細胞数から、添加した乳酸菌の数(乳酸菌懸濁液中の菌体の数)を差し引いた数を総細胞の数とした。また、測定用試料のうち、PI検出された細胞(PI核染色液で染色された細胞)を死細胞とみなし、その数をカウントし、総細胞の数と死細胞の数との差を生細胞の数とした。そして、総細胞中の生細胞の割合(生細胞の数/総細胞の数×100)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞中の生細胞の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出して細胞の生存能(細胞生存能)の値とした。なお、細胞生存能の試験は、繰り返して行い、細胞の生存能の値について平均値(X
−)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を
図3及び表2に示す。本実施例において「平均値(X
−)」は、8回の試験(n=8)による平均値である。
【0118】
細胞の生存能について、以下の基準で評価を行った。式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が、100超で120未満の場合を「A」とし、120以上で150未満の場合を「AA」とし、150以上の場合を「AAA」とする。結果を表2に示す。
【0119】
(B細胞の生存能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)にてB細胞を検出した。生細胞のうちのB細胞の数と、総細胞の数との商(総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合)を算出した。なお、本実施例では、測定用試料中において、カウントされた細胞数から、添加した乳酸菌の数(乳酸菌懸濁液中の菌体の数)を差し引いた数を「総細胞の数」とした。また、測定用試料のうち、PI検出された細胞(PI核染色液で染色された細胞)を死細胞とみなし、その数をカウントし、総細胞の数と死細胞の数との差を「生細胞の数」とした。そして、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞中の生細胞の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の生存能の値とした。なお、B細胞の生存能の試験は、繰り返して行い、B細胞の生存能の値について平均値(X
−)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を
図4及び表2に示す。
【0120】
B細胞の生存能について、以下の基準で評価を行った。式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が、100超で120未満の場合を「A」とし、120以上で150未満の場合を「AA」とし、150以上の場合を「AAA」とする。結果を表2に示す。
【0121】
(T細胞の生存能)
T細胞の細胞表面マーカーであるBrilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)にてT細胞を検出した。生細胞のうちのT細胞の数と、総細胞の数との商(総細胞の数に対する生存するT細胞の数の割合)を算出した。そして、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞中の生細胞の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してT細胞の生存能の値とした。なお、T細胞の生存能の試験は、繰り返して行い、T細胞の生存能の値について平均値(X
−)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を
図5及び表2に示す。
【0122】
T細胞の生存能について、以下の基準で評価を行った。式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が、100超で120未満の場合を「A」とし、120以上で150未満の場合を「AA」とし、150以上の場合を「AAA」とする。結果を表2に示す。
【0123】
(B細胞の活性化能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体と、B細胞の活性化マーカーであるAPC標識抗CD86抗体によって、B220及びCD86を発現するB細胞を検出し、その数を数えた。そして、B細胞(B220陽性細胞)のうち、活性化しているB細胞(CD86
+,B220
+)と活性化していないB細胞(CD86
−,B220
+)の商(活性化しているB細胞/活性化していないB細胞の比の値)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているB細胞(CD86
+,B220
+)と活性化していないB細胞(CD86
−,B220
+)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の活性化能の値とした。なお、B細胞の活性化能の試験は、繰り返して行い、B細胞の活性化能の値について平均値(X
−)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を
図6及び表2に示す。
【0124】
B細胞の活性化能について、以下の基準で評価を行った。式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が、100超で120未満の場合を「A」とし、120以上で150未満の場合を「AA」とし、150以上の場合を「AAA」とする。結果を表2に示す。
【0125】
(T細胞の活性化能)
T細胞の細胞表面マーカーであるBrilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)と、T細胞の活性化マーカーであるPE標識抗CD69抗体(BioLegend社製)によって、CD4及びCD69を発現する細胞を検出し、その数を数えた。そして、T細胞(CD4陽性(CD4
+)細胞)のうち、活性化しているT細胞(CD69
+,CD4
+)と活性化していないT細胞(CD69
−,CD4
+)の商(活性化しているT細胞/活性化していないT細胞の比の値)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているT細胞(CD69
+,CD4
+)と活性化していないT細胞(CD69
−,CD4
+)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してT細胞の活性化能の値とした。なお、T細胞の活性化能の試験は、繰り返して行い、T細胞の活性化能の値について平均値(X
−)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を
図7及び表2に示す。
【0126】
T細胞の活性化能について、以下の基準で評価を行った。式:「平均値(X
−)−標準誤差(S.E.)」により算出される値が、100超で120未満の場合を「A」とし、120以上で150未満の場合を「AA」とし、150以上の場合を「AAA」とする。結果を表2に示す。
【0127】
表2に示すように、代表菌株(No.1、3、13、15、19、30、31)は、脾臓細胞中でも同様にB細胞の生存能及び活性化能が高く、また、T細胞においても生存能及び活性化能が高かった。即ち、これらの耐塩性乳酸菌は、B細胞に直接的に作用することによってB細胞の生存能及び活性化能を高め、更に、T細胞の生存能及び活性化能も高めていると考えられる。そのため、これらの代表菌株は、免疫賦活作用を発揮させる免疫賦活剤の有効成分として採用できると考えられる。
【0128】
また、より具体的には、表2から明らかなように、No.1の菌株、No.13の菌株、No.19の菌株、及びNo.30の菌株の耐塩性乳酸菌は、細胞生存能の評価及びB細胞の生存能の評価がいずれも「AAA」であり、更に、T細胞の生存能が「A」以上であった。この結果から、各細胞(B細胞、T細胞を含む)の生存能が総じて優れることが分かる。また、No.1の菌株、No.31の菌株の耐塩性乳酸菌は、B細胞の生存能及び活性化能のいずれもが非常に高く(B細胞の生存能の評価が「AAA」であり、B細胞の活性化能の評価が「AA」であった)、特に、No.31の菌株の耐塩性乳酸菌は、B細胞の活性化能における平均値(X
−)が他の菌株に比べて高く、B細胞の活性化能が非常に高いことが分かる。
【0129】
【表2】
【0130】
表2中、「B220
+生細胞数/総細胞数」は、総細胞の数に対する「PI検出されず、violetFluor450標識抗B220抗体と反応したB細胞の数」の割合を算出していることを示す。「CD4
+生細胞数/総細胞数」は、総細胞の数に対する「PI検出されず、Brilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)と反応したT細胞の数」の割合を算出していることを示す。「CD86
+,B220
+/CD86
−,B220
+」は、活性化しているB細胞(CD86
+,B220
+)/活性化していないB細胞(CD86
−,B220
+)の比の値を算出していることを示す。「CD4
+,CD69
+/CD4
+,CD69
−」は、活性化しているT細胞/活性化していないT細胞の比の値を算出していることを示す。
【0131】
なお、本実施例では、B220陽性細胞に着目してB細胞について解析したが、B220陽性細胞に代えてCD19陽性細胞で解析した場合にも同様の結果が得られた。このことからも、所定の菌株によってB細胞の生存能及び活性化能が向上されていることが確認できた。
【0132】
(実施例3)
代表菌株のうちNo.1の菌株と、その他の菌株(No.2、20)について、マイクロアレイ解析を行い、遺伝子発現の状態を調べた。
【0133】
<DNAマイクロアレイ解析による遺伝子発現パターンの調査>
(1)RNAの調製:
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓から採取した細胞を基本培地中で、5×10
6cells/5mL/wellになるように、6wellマイクロプレート(FALCON社製)へ播種した。その後、乳酸菌懸濁液(0.1mg/mL)を50μLずつ加え、37℃、5%CO
2の条件下で24時間培養した。なお、脾臓細胞浮遊液に菌体(乳酸菌懸濁液)を添加しないで、菌体を添加した水準と同一条件(37℃、5%CO
2の条件下で24時間)で培養したものをコントロールとした。
【0134】
培養した細胞は、ビオチン−抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)及び磁気ビーズであるStreptavidin Particles Plus・DM(日本BD社製)と反応させた後、BD IMag Cell Separation System(日本BD社製)にて細胞分離を行い、磁石に引き寄せられている細胞(ポジティブフラクション)を、「B細胞(B220陽性細胞)」として回収した。
【0135】
なお、脾臓細胞の調製は、実施例2と同様の方法で行い、乳酸菌懸濁液の調製及びB細胞の回収は、実施例1と同様の方法で行った。
【0136】
RNA抽出は、ISOGEN II(ニッポン・ジーン社製)を用い、培養した脾臓細胞から分離したB細胞からトータルRNAを抽出した。その後、抽出したトータルRNAを鋳型とし、ラベリングしたcDNAを調製し、DNAマイクロアレイ解析に供した。
【0137】
DNAマイクロアレイ解析は、アジレント社製の「SurePrint G3 Mouse Gene Expression 8×60K」を用いた。その後、遺伝子発現ソフトウェア「R version 2.15.1(The R Foundation.)」によって解析した。
【0138】
「コントロールにおける遺伝子発現量」に対する「乳酸菌懸濁液を添加した場合における遺伝子発現量」を算出した。結果を表3に示す。なお、表3中、「2.0」以上である場合にコントロールに対して有意差があることになる。
【0139】
【表3】
【0140】
DNAマイクロアレイ解析の結果、B細胞にNo.1の菌株を添加することで、CD86遺伝子やCD70遺伝子の発現が増加していることが確認できた。これらの遺伝子発現が増加していることから、B細胞が活性化していることが分かる。また、CD86やCD70は、T細胞上のそれぞれCD28、CD27を介した補助シグナルを誘導し、T細胞の活性化に重要であることが知られている。No.1の菌株を添加することで、T細胞の活性化にも影響を与えると考えられる。
【0141】
DNAマイクロアレイ解析の結果から、No.1の菌株は、遺伝子レベルでもB細胞及びT細胞の両方を活性していること(即ち、B細胞の生存能及び活性化能を向上させ、更に、T細胞の生存能及び活性化能を向上させること)が分かった。
【0142】
また、本発明の耐塩性乳酸菌を添加することにより、インターフェロン−γの発現量が増加しており、インターフェロン−γの産生を誘導することによる免疫賦活作用も有することが分かった。インターフェロン−γは、抗ウイルス効果を持つサイトカインであることが知られている。
【0143】
また、本発明の耐塩性乳酸菌を添加することにより、インターロイキン−10の発現量も増加していた。インターロイキン−10は、強力な抗炎症作用を有するサイトカインであり、様々な細胞で炎症作用のあるサイトカインの放出を抑制する。よって、本発明の耐塩性乳酸菌によれば、免疫賦活作用だけでなく、免疫寛容にも作用し、免疫機能を成熟させると考えられる。
【0144】
更に、本発明の耐塩性乳酸菌を添加することにより、インターロイキン−22の発現が増加していた。インターロイキン−22は、組織修復、細胞生存・増殖、粘膜バリア防御に関与するものである。
【0145】
なお、No.1の菌株は、インターロイキン−12とインターフェロン−βの発現にはB細胞を介して直接的に影響を与えないことが分かった。インターロイキン−12は、キラーT細胞やNK細胞(ナチュラルキラー細胞)に対する活性化作用を特徴とするサイトカインである。インターフェロン−βは、免疫細胞が抗ウイルス機能を作用させる上で最初に産生される生理活性物質である。
【0146】
No.1の菌株を添加することで得られた遺伝子発現パターンは従来知られておらず、未知の作用機構で免疫賦活作用を示すものと推測される。
【0147】
また、インターロイキン−22は、CD4陽性T細胞、NK細胞、NKT細胞等の免疫細胞より産生されることが知られているが、B細胞からの産生については知られておらず、B細胞に基づいてインターロイキン−22の発現量を上げる乳酸菌についても報告がない。
【0148】
(比較例1)
<培地の塩分濃度の検討>
醤油醸造で使用している代表的な耐塩性乳酸菌(テトラジェノコッカス・ハロフィラス DA−297株)について、培地の塩分濃度を6段階(6サンプル)用意し、各段階における培養速度を比較した。なお、耐塩性乳酸菌(テトラジェノコッカス・ハロフィラス DA−297株)と同時に雑菌も添加して共培養を行い、これらの培養速度を比較した。
【0149】
雑菌としては、耐塩性スタフィロコッカス属細菌を用いた。なお、食中毒菌を含め、一般的な菌(細菌)は、食塩に対する耐性がなく、塩分を8w/v%より高くすると、十分に増殖を抑えることができるが、スタフィロコッカス属細菌の一部は、耐塩性であることが知られている。そのため、テトラジェノコッカス・ハロフィラス菌の培養において、最もコンタミネーションのリスクのある微生物の1種といえる。
【0150】
なお、使用したスタフィロコッカス属細菌は、醤油製造工程において、醤油乳酸菌を培養する工程で、培地に35℃で混入してくる菌であり、その中で最も耐塩性の高い菌株(SN−2820株)である。なお、培地には、醤油(イチビキ社製の商品名「こいくちしょうゆ」)20w/v%、ぶどう糖1.7w/v%を含み、塩分濃度14w/v%になるように食塩を添加し、pH6.8に調整したものを用いた。この菌株は、食塩の濃度が最も高い培地(塩分濃度18w/v%)でもわずかに増殖可能であった。
【0151】
なお、配列表に、耐塩性スタフィロコッカス属細菌SN−2820株の16SrDNA部分塩基配列を示す。配列表に示す塩基配列を既知の塩基配列データベースから相動性の高い塩基配列を検索した結果、スタフィロコッカス・サプロフィチカス・サブスピーシーズ・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus subsp. saprophyticus)の16SrDNA部分塩基配列と一致した。この結果から、SN−2820株は、スタフィロコッカス・サプロフィチカス・サブスピーシーズ・サプロフィチカスと同定した。
【0152】
(培地)
窒素源及び微量ミネラル分として、こいくちしょうゆ(イチビキ社製)、炭素源として、ぶどう糖(関東化学社製)を使用し、その他の原料としては、食塩(関東化学社製)と水を使用した。このように、簡素でかつ食品原料のみからなる培地で検討した。
【0153】
こいくちしょうゆは、全てのサンプルにおいて20v/v%とし、ぶどう糖は全てのサンプルにおいて1.7w/v%とした。更に、培地の塩分濃度が、8、10、12、14、16、18w/v%の6段階となるように、食塩の添加量を調整した。そして、全てのサンプルにおいてpHが7.0になるように食品添加物の水酸化ナトリウム(関東化学社製)で調整した。
【0154】
培地は、試験管(直径18mm×180mm)に10mLずつ入れ、シリコセン(信越ポリマー社製、登録商標)で栓をした後、121℃、15分間オートクレーブで滅菌をした。
【0155】
(培養)
継代培養を想定して、同培地で前培養しておいたテトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株を1v/v%添加して初発菌数が1.5×10
7cfu/mLになるように植菌した。また、スタフィロコッカス属細菌は、テトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株に対して0.1v/v%混入することを想定して、前培養しておいたスタフィロコッカス属細菌SN−2820株を添加した。このときのスタフィロコッカス属細菌の初発菌数は1.1×10
4cfu/mLであった。その後、テトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株について30℃の恒温器の中で24時間、及び72時間静置培養した。
【0156】
(菌数の測定)
24時間静置培養した後のテトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株の生菌数は、「10SG10N平板培地」に希釈菌液を塗布して培養(30℃で4日間、嫌気培養)した後にコロニー数を計測した。また、スタフィロコッカス属細菌は、標準寒天培地(SA)平板培養法にて培養した後、菌数(生菌)を測定した。
【0157】
「10SG10N平板培地」は、醤油(イチビキ社製の商品名「こいくちしょうゆ」)10v/v%、ぶどう糖1.0w/v%、酵母エキス1.0w/v%、ポリペプトン0.5w/v%、酢酸ナトリウム3水和物0.2w/v%、塩化ナトリウム10w/v%、「Tween80」0.0025w/v%、硫酸マグネシウム7水和物0.02w/v%、硫酸マンガン4水和物0.001w/v%、硫酸鉄7水和物0.001w/v%を含有する、pH6.8、寒天2%のものであった。
【0158】
そして、24時間後の菌数(生菌)を初発菌数で割った値(24時間後の菌数/初発菌数)を24時間の増殖倍率(倍/24時間)として算出した。結果を表4に示す。
【0159】
なお、72時間後のテトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株の菌数を「総菌数」とし、この総菌数(生菌と死菌の合計(最終収量))については、顕微鏡下で血球計算板を用いて菌数を計測した。
【0160】
【表4】
【0161】
表4に示すように、テトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株は、塩分濃度8〜14w/v%で旺盛に増殖し、18w/v%でも十分に増殖できることが分かった。一方、スタフィロコッカス属細菌は、塩分濃度8〜18w/v%の範囲では、塩分濃度が低い程、良好に増殖した。また、塩分濃度10w/v%以下では、テトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株よりも増殖倍率が高く、塩分濃度8w/v%では、テトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株よりも約8倍の速度で増菌した。
【0162】
以上の結果から、テトラジェノコッカス・ハロフィラスDA−297株では、培地の塩分濃度を14w/v%以上にすることが良いことが分かった。一方で、耐塩性乳酸菌の最終収量は、塩分濃度が高いほど低くなる。そのため、塩分12w/v%でも耐塩性スタフィロコッカス属細菌よりも生育速度が速い味噌由来の耐塩性乳酸菌について以下の実施例4で検討した。
【0163】
(実施例4)
<耐塩性乳酸菌の選抜>
本実施例では、培地の塩分濃度を12w/v%とした場合において、No.1、3、13、15、19、30、31の7つの菌株(7つのサンプル)を対象として、耐塩性スタフィロコッカス属細菌SN−2820株よりも増菌速度が速い耐塩性乳酸菌の選抜を行った。
【0164】
(培地)
窒素源及び微量ミネラル分として、こいくちしょうゆ(イチビキ社製)、炭素源として、ぶどう糖(関東化学社製)を使用し、その他の原料としては、食塩(関東化学社製)と水を使用した。このように、簡素でかつ食品原料のみからなる培地で検討した。
【0165】
上記培地は、具体的には、こいくちしょうゆが20v/v%、ぶどう糖が1.7w/v%、塩分濃度が12w/v%となるように、こいくちしょうゆ、ぶどう糖、及び食塩を水と混ぜ、その後、食品添加物の水酸化ナトリウム(関東化学社製)でpHが7.0になるように調整したものを用いた。
【0166】
作製した培地を試験管(直径18mm×180mm)に10mLずつ入れ、シリコセン(登録商標)で栓をした後、121℃、15分間オートクレーブで滅菌処理した。
【0167】
(培養)
継代培養を想定して、同培地で前培養しておいた各耐塩性乳酸菌を1v/v%添加した。このとき初発菌数は3.7×10
6〜1.5×10
7cfu/mLであった。また、耐塩性乳酸菌に対してスタフィロコッカス属細菌が1v/v%混入することを想定して、前培養しておいたスタフィロコッカス属細菌SN−2820株を添加した。このときのスタフィロコッカス属細菌の初発菌数は1.8×10
5〜5.7×10
5cfu/mLであった。その後、全てのサンプル(7つの菌株と耐塩性スタフィロコッカス属細菌SN−2820株)を30℃の恒温器の中で20時間静置培養した。
【0168】
(菌数の測定)
次に、菌数の測定を行った。菌数の測定は、比較例1と同様の方法で行った。
【0169】
20時間培養後の菌数を初発菌数で割った値(20時間後の菌数/初発菌数)を20時間の増殖倍率(倍/20時間)として算出した。結果を表5に示す。
【0170】
【表5】
【0171】
表5に示すように、No.19の菌株以外の菌株(No.1、No.3、No.13、No.15、No.30、No.31)については、塩分濃度12w/v%で旺盛に増殖し、耐塩性スタフィロコッカス属細菌よりも優位に増殖することが分かった。また、同様の結果は、塩分濃度14〜18w/v%でも得られた。このように、本発明の耐塩性乳酸菌は、塩分濃度12〜18w/v%でも耐塩性乳酸菌を良好に培養でき、耐塩性乳酸菌に対して1v/v%程度の耐塩性スタフィロコッカス属細菌が混入したとしても耐塩性乳酸菌を優先的に培養できることが分かった。
【0172】
培地の塩分濃度は、塩分濃度11w/v%以上であれば、雑菌(汚染菌)として想定される耐塩性スタフィロコッカス属細菌などの菌よりも旺盛に増殖するため好ましい。一方で、塩分濃度18w/v%では耐塩性乳酸菌自体の増殖速度が他の塩分濃度の場合に比して遅くなる傾向がある。そのため、本発明の耐塩性乳酸菌は、塩分濃度11〜16w/v%で培養することが好ましく、塩分濃度12〜16w/v%で培養することが更に好ましく、塩分濃度12〜14w/v%とすることが最も好ましい。
【0173】
なお、この実験で用いた前培養液の上清についてヒスタミン量を測定した。測定には、「チェックカラーヒスタミン(キッコーマンバイオケミファ社製)」を用いた。測定の結果、全ての乳酸菌培養液でヒスタミン濃度が20ppm未満となり、ヒスタミン産生能はないことが分かった。なお、測定方法は、「チェックカラーヒスタミン」に添付の取扱説明書に従った。
【0174】
(実施例5)
<サイトカイン産生細胞の測定試験>
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓細胞に殺菌処理後の試験菌体を添加して共培養し、インターロイキン−22、インターロイキン−10、インターフェロン−γの各種サイトカインの産生細胞の割合を測定した。試験菌株としては、代表菌株(No.1、3、13、15、19、30、31)と、その他の任意の菌株(No.2、20)とを用いた。
【0175】
(1)乳酸菌懸濁液の調製:
pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で1mg/mLの濃度になるように懸濁したこと以外は、実施例1で調製した乳酸菌懸濁液と同様にして調製した。
【0176】
(2)脾臓細胞浮遊液の調製:
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓から採取した細胞を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio−One社製)に集め、0.5mLの赤血球溶解バッファー(0.155M NH
4Cl,0.01M Tris−HCl,pH7.5)を加えて脾臓細胞を懸濁した。その後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLを加えて1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄した。
【0177】
その後、基本培地で懸濁して、脾臓細胞浮遊液を調製した。なお、基本培地は、実施例1と同じものを使用した。得られた脾臓細胞浮遊液は、血球計算板を用いて細胞数を計測した。
【0178】
(3)細胞培養:
上記脾臓細胞浮遊液を2×10
6cells/mLになるように基本培地で調整し、6wellマイクロプレート(FALCON社製)に3mLずつ播種して、6×10
6cells/3mL/wellとした。その後、各乳酸菌懸濁液(1mg/mL)を30μLずつ加え、37℃、5%CO
2の条件下で2日間培養して、乳酸菌添加培養物を得た。なお、上記脾臓細胞浮遊液に菌体(乳酸菌懸濁液)を添加せずに、菌体を添加した水準と同一条件(37℃、5%CO
2の条件)で培養したものをコントロールとした。
【0179】
(4)サイトカインの測定:
上記2日間培養のうち42時間の培養後の段階で各培養液にBD GolgiStop
TM(BD社製)を2μL加え、混合し、その後、37℃、5%CO
2の条件下で更に6時間培養した(培養時間の合計48時間)。その後、培養した細胞培養液を15mLコニカルチューブ(BD社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞について、BD Cytofix/Cytoperm
TM Fixation/Permeabilization Kit(BD社製)を用いて固定・透過の操作を行った。操作は添付の説明書に従った。
【0180】
ここで、使用する抗体の都合上、インターロイキン−22を産生する細胞とインターフェロン−γを産生する細胞の確認を行う第1の群と、インターロイキン−10を産生する細胞の確認を行う第2の群との2つの群に分けて細胞染色を行った。
【0181】
第1の群では、PE標識抗インターロイキン−22抗体(affymetrix eBioscience社製)、Alexa647標識抗インターフェロン−γ抗体(BD Pharmingen社製)、及びvioletFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用した。
【0182】
第2の群では、PE標識抗インターロイキン−10抗体(BioLegend社製)、Alexa647標識抗インターフェロン−γ抗体(BD Pharmingen社製)、及びvioletFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用した。
【0183】
なお、
図15に示すように、インターロイキン−22を産生する細胞とインターロイキン−10を産生する細胞とを同時に検出する際には、PE標識抗インターロイキン−22抗体(affymetrix eBioscience社製)、Alexa647標識抗インターロイキン−10抗体(BD Pharmingen社製)、及びvioletFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用した(第3の群)。
図15〜
図17では、染色前の細胞を3つの群(上記第1の群から第3の群)に分けてそれぞれについて細胞染色を行った結果を示している。
【0184】
染色後、1200rpmで5分間遠心分離して細胞を回収し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLに懸濁して測定用試料とした。
【0185】
サイトカインの測定は、フローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いて行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo (FlowJo, LLC社製)を用いた。
【0186】
(5)サイトカイン産生細胞量の測定:
(5−1)インターロイキン−22の産生細胞量:
フローサイトメトリーで得られた乳酸菌添加培養物の解析結果について、全脾臓細胞のリンパ球中のインターロイキン−22陽性細胞の割合を求めた。併せて、B220陽性細胞(脾臓B細胞)中のインターロイキン−22陽性細胞の割合を求めた。
【0187】
更に、フローサイトメトリーで得られたコントロール(乳酸菌懸濁液を添加せずに培養したもの)の解析結果について、上記乳酸菌添加培養物の場合と同様にして、全脾臓細胞中のインターロイキン−22陽性細胞の割合を求めた。更に、コントロールにおけるB220陽性細胞中のインターロイキン−22陽性細胞の割合を求めた。なお、
図8では、フローサイトメトリーにおける測定の一例を示し、縦軸がB220の発現を示し、横軸がインターロイキン−22の発現を示している。
図8中の上段にはコントロール(control)、下段にはNo.1の菌株を添加した場合(「+No.1」と記す)について示しており、更に、
図8中の左側には全脾臓細胞のリンパ球中のインターロイキン−22陽性細胞の割合を示し、右側にはB220陽性細胞(脾臓B細胞)中のインターロイキン−22陽性細胞の割合を示す。
【0188】
そして、コントロールで算出された値を基準(100)としたときの上記「全脾臓細胞中のインターロイキン−22陽性細胞の割合」を算出し、この算出値を、全脾臓細胞中のインターロイキン−22の産生細胞量(IL−22
+/全脾臓細胞)とした。同様に、コントロールで算出された値を基準(100)としたときの上記「B220陽性細胞中のインターロイキン−22陽性細胞の割合」を算出し、この算出値を、脾臓B細胞中のインターロイキン−22の産生細胞量(IL−22
+/脾臓B細胞)とした。なお、試験は、繰り返して行い、平均値(X
−)と標準誤差(S.E.)を求めた。本実施例において「平均値(X
−)」は、6回の試験(n=6)による平均値である。
【0189】
脾臓B細胞のインターロイキン−22の産生細胞量(IL−22
+/脾臓B細胞)について、結果を
図9、及び表6(「IL−22産生量」の「脾臓B細胞」の欄)に示す。なお、
図9中、「IL−22
+/脾臓B細胞」は、脾臓細胞のB細胞のうちのインターロイキン−22の産生細胞量(IL−22
+/脾臓B細胞)を示す。
【0190】
脾臓細胞のうちのインターロイキン−22の産生細胞量(IL−22
+/全脾臓細胞)について、結果を
図10、及び表6(「IL−22産生量」の「全脾臓細胞」の欄)に示す。
図10中、「IL−22
+/全脾臓細胞」は、脾臓細胞のうちのインターロイキン−22の産生細胞量(IL−22
+/全脾臓細胞)を示す。
【0191】
【表6】
【0192】
(5−2)インターロイキン−10の産生細胞量:
インターロイキン−10の産生細胞量についても上記「インターロイキン−22の産生細胞量」の測定試験と同様にして算出した。脾臓細胞のB細胞のうちのインターロイキン−10の産生細胞量の結果については、
図11及び表6に示し、脾臓細胞のうちのインターロイキン−10の産生細胞の量の結果については、
図12及び表6に示す。なお、表6中、脾臓細胞のB細胞のうちのインターロイキン−10の産生細胞の量の結果は、「IL−10産生量」の「脾臓B細胞」の欄に示し、脾臓細胞のうちのインターロイキン−10の産生細胞の量の結果は、「IL−10産生量」の「全脾臓細胞」の欄に示す。
【0193】
なお、
図11中、「IL−10
+/脾臓B細胞」は、脾臓細胞のB細胞のうちのインターロイキン−10の産生細胞の量を示す。
図12中、「IL−10
+/全脾臓細胞」は、脾臓細胞のうちのインターロイキン−10の産生細胞の量を示す。
【0194】
(5−3)インターフェロン−γの産生細胞量:
インターフェロン−γの産生細胞量についても上記「インターロイキン−22の産生細胞量」の測定試験と同様にして算出した。なお、脾臓細胞のB細胞のうちのインターフェロン−γの産生細胞の量の結果については、
図13及び表6に示し、脾臓細胞のうちのインターフェロン−γの産生細胞の量の結果については、
図14及び表6に示す。なお、表6中、脾臓細胞のB細胞のうちのインターロイキン−22の産生細胞の量の結果は、「IFN−γ産生量」の「脾臓B細胞」の欄に示し、脾臓細胞のうちのインターロイキン−22の産生細胞の量の結果は、「IFN−γ産生量」の「全脾臓細胞」の欄に示す。
【0195】
図13中、「IFN−γ
+/脾臓B細胞」は、脾臓細胞のB細胞のうちのインターフェロン−γの産生細胞の量を示す。
図14中、「IFN−γ
+/全脾臓細胞」は、脾臓細胞のうちのインターフェロン−γの産生細胞の量を示す。
【0196】
以上の結果より、代表菌株(No.1、3、13、15、19、30、31)と脾臓細胞とを共培養すると、インターロイキン−22、インターロイキン−10、及びインターフェロン−γを産生するB細胞の割合がコントロール(乳酸菌懸濁液を添加せずに培養したもの)に比べて増大することが分かった(
図9、
図11、
図13参照)。また、B細胞のみに限定されず、脾臓細胞全体でもこれらの代表菌株により、インターロイキン−22、インターロイキン−10、及びインターフェロン−γを産生する細胞の割合が増大することが分かった(
図10,
図12,
図14参照)。
【0197】
なお、実施例3のDNAマイクロアレイ解析では、代表菌株のNo.1の菌株によって、B細胞においてインターロイキン−22、インターロイキン−10、インターフェロン−γの産生が誘導されることが示された。更に、本実施例では、in vitroでの細胞培養におけるサイトカインの測定試験を行った。その結果、No.1の菌株に限らず代表菌株の全てにおいて、インターロイキン−22、インターロイキン−10、インターフェロン−γの産生が誘導されることが確認できた。具体的には、インターロイキン−22、インターロイキン−10、インターフェロン−γは、B細胞を含む脾臓細胞中で産生が誘導され、耐塩性乳酸菌である上記代表菌株との共培養によって、上記サイトカインを産生する細胞の量が1.1〜5倍程度に増大することが分かった(
図9〜
図14、表6参照)。
【0198】
(B細胞のサブセット)
図15〜
図17には、全脾臓細胞のリンパ球、及び脾臓B細胞(B220陽性(B220
+)細胞のサイトカイン産生をフローサイトメトリーで解析した結果を示す。具体的には、
図15は、インターロイキン−22とインターロイキン−10で展開した結果を示し、
図16は、インターロイキン−22とインターフェロン−γで展開した結果を示し、
図17は、インターロイキン−10とインターフェロン−γで展開した結果を示す。
【0199】
図15〜
図17から分かるように、全脾臓細胞及び脾臓B細胞(B220陽性(B220
+)細胞)のいずれの場合においても、インターロイキン−22、インターロイキン−10、インターフェロン−γのうちの2種以上を産生する細胞は確認できなかった。つまり、一個の細胞は、インターロイキン−22、インターロイキン−10、インターフェロン−γのうちの一種のみを産生していることが分かった。
【0200】
なお、
図15〜
図17には、No.1の菌株を添加した結果を示しているが、代表菌株を含むいずれの検体においても、No.1の菌株と同様の結果が得られた。
【0201】
ここで、ヘルパーT細胞には、サイトカイン産生の特徴によって分類されるサブセット(亜集団)が存在することが知られている。具体的には、ヘルパーT細胞には、Th1細胞(インターフェロン−γを産生することを特徴とするもの)や、Th2細胞(インターロイキン−4を産生することを特徴とするもの)、Th9細胞(インターロイキン−9を産生することを特徴とするもの)、Th17細胞(インターロイキン−17を産生することを特徴とするもの)、Th22細胞(インターロイキン−22を産生することを特徴とするもの)などのように、別々のサイトカインを産生する役割を持つものが存在することが知られている。
【0202】
一方で、B細胞については、サブセットが存在することは知られていなかったが、
図15〜
図17の結果からすると、B細胞についてもヘルパーT細胞のようにサブセットが存在することが分かった。つまり、B細胞には、「インターロイキン−22を産生するB細胞」、「インターロイキン−10を産生するB細胞」、「インターフェロン−γを産生するB細胞」が別々に存在することが分かった。B細胞のうちの制御性B細胞は、インターロイキン−10を産生することが知られている。この中で「インターロイキン−10を産生するB細胞」とは制御性B細胞であると考えられ、これらの乳酸菌により制御性B細胞も増加または活性化されると考えられる。
【0203】
なお、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加せずに培養したもの)においても、インターロイキン−22、インターロイキン−10、インターフェロン−γを産生するB細胞が微量ながら検出された。その結果、通常の条件(乳酸菌を含まない培養条件)下でもB細胞が上記サイトカイン(インターロイキン−22、インターロイキン−10、インターフェロン−γ)を産生することが分かった。
【0204】
本実施例では、B220陽性細胞を検出してB細胞について解析したが、B220陽性細胞に代えてCD19陽性細胞で解析した場合にも同様にインターロイキン−22、インターロイキン−10、及びインターフェロン−γを産生する細胞が検出された。この結果からもB細胞が上記サイトカインを産生し、代表菌株により上記サイトカインの産生が誘導されることが分かった。
【0205】
(実施例6)
<乳酸菌の給餌試験>
殺菌処理した乳酸菌の菌体を実験用マウス(C57BL/6)に給餌し、その後のマウスの血液中の血清IgAを測定した。乳酸菌としては、代表菌株のうちの、No.1及びNo.30の菌株を使用した。
【0206】
(1)乳酸菌配合飼料の調製:
通常のマウス用飼料に、殺菌処理しその後凍結乾燥した乳酸菌の菌体を1(w/w)%量含有した飼料を調製した。なお、通常のマウス用飼料としては、マウス飼育繁殖用飼料CE−2(日本クレア社製)を用いた。
【0207】
(2)給餌試験:
通常の実験用マウス(C57BL/6)(8週齢・雌)6匹を2群に分け、一方に乳酸菌配合飼料を与え(乳酸菌投与群)、もう一方に乳酸菌の菌体を含まない通常のマウス用飼料を与えて飼育した(コントロール群(乳酸菌非投与群))。試験開始より14日間後にそれぞれ血液を採取し、遠心分離により血清を回収して調製した。
【0208】
(3)IgAの測定:
調製した血清中の総IgA濃度をELISA法により測定した。
【0209】
測定には、MICROLON 96ウェル マイクロプレート(Greiner Bio−One社製)を用いた。抗原として、Goat Anti−Mouse IgA−UNLB抗体(SouthernBiotech社製)、2次抗体として、Goat Anti−Mouse IgA−AP conjugate(SouthernBiotech社製)を使用し、発色基質にAlkaline Phosphatase Substrate(SIGMA社製)を用いた。また、吸光度(405nm)の測定は、Vmax Kinetic Microplate Reader(Molecular Devices社製)を用いた。ここで、段階希釈したコントロール群の検体を用いて、吸光度とIgA濃度の検量線を作成した。そして、この検量線を用いて、乳酸菌投与群の検体とコントロール群(乳酸菌非投与群)の検体についてのIgA濃度を算出した。その後、コントロール群(乳酸菌非投与群)におけるIgA濃度の平均値を基準値(100)として、各検体のIgA濃度の相対値を求めた。
【0210】
乳酸菌投与群とコントロール群(乳酸菌非投与群)の各数値について、F検定を実施し分散に有意差があるか否か確認を行った。その後、Student’s t検定(これは、等分散を仮定した2標本による検定である)を行った。
【0211】
その結果、表7、表8、
図18及び
図19に示すように、No.1菌、No.30菌の乳酸菌投与群は、コントロール群(乳酸菌非投与群)と比較して血清中のIgA濃度がそれぞれ約25%、約22%上昇していた。そして、Student’s t検定の結果は、それぞれp<0.05(p=0.038)、p<0.01(p=0.0001)となり、有意水準5%及び1%で有意差が認められた。これらの結果から、本発明の耐塩性乳酸菌の摂取によって、血清中の総IgA濃度が増大し、本発明の耐塩性乳酸菌により免疫賦活化能が増大することが分かった。
【0212】
【表7】
【0213】
【表8】
【0214】
以上のことから、表1〜表3に示すように、本発明の耐塩性乳酸菌は、B細胞に直接作用することによってB細胞の生存能及び活性化能を向上させ、更に、T細胞の生存能及び活性化能を向上させることが分かった。このようなことから、本発明の耐塩性乳酸菌は、免疫賦活作用を有することが分かる。更に、本発明の耐塩性乳酸菌のうちのNo.1の菌株は、インターロイキン−22、インターロイキン−10、及びインターフェロン−γの産生を誘導することが分かった。更に、表6に示すように、No.1の菌株以外に、No.3、13、15、19、30、31の菌株についても、インターロイキン−22、インターロイキン−10、及びインターフェロン−γの産生を誘導することが分かった。そして、代表菌株の耐塩性乳酸菌は、血清中の総IgA濃度を増大させ、これらの乳酸菌により免疫賦活化能が増大すると考えられる(表7、表8、
図18及び
図19参照)。また、表4、表5に示すように、塩分濃度11〜18w/v%であれば、本発明の耐塩性乳酸菌を選択的に良好に培養でき、汚染菌の増殖を抑えることができることが分かった。