(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)のキャパシタの各々に対して、2つの直列接続されたダイオードが並列に接続され、更に、該2つの直列接続されたダイオードの各々における中間点に中間キャパシタが接続された、多段倍電圧整流回路と、
入力電圧を出力電圧へと変換する、動作時において矩形波状の電圧が印加される素子を備えたコンバータと、
前記素子から電圧の入力を受けて、前記多段倍電圧整流回路に対して電圧を出力する、入力回路であって、
前記素子の電圧が入力される、第1のコイルを備えた第1の入力回路部と、
前記第1のコイルと磁気的に結合される第2のコイルを備え、前記多段倍電圧整流回路に電圧を出力する第2の入力回路部と
を備えた入力回路と
を備え、
第1から第nの太陽電池モジュールを直列接続してなる太陽電池モジュール鎖を前記コンバータの入力部に接続するとともに、第k(k=1,2,…n)の前記キャパシタに対して第kの該太陽電池モジュールを並列接続することにより、該第1から第nの太陽電池モジュールそれぞれに印加された電圧の合計電圧を前記コンバータによって変換するとともに、前記素子から前記入力回路を介して前記多段倍電圧整流回路に電圧を入力して、該第1から第nの太陽電池モジュールのうち最も電圧の低い太陽電池モジュールに並列接続される前記キャパシタに優先的に電流を供給するよう構成された
ことを特徴とする、太陽電池用コンバータシステム。
前記コンバータは、前記入力部からの電流によりコンバータ内インダクタに電磁気的エネルギーを蓄積する状態と、コンバータ内ダイオードを通る電流によって該コンバータ内インダクタから電磁気的エネルギーを放出する状態と、をスイッチによって切り替えるスイッチングコンバータとして構成され、前記素子として該コンバータ内ダイオードを用いるよう構成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の太陽電池用コンバータシステム。
前記コンバータは、前記入力部からの電流によりコンバータ内インダクタに電磁気的エネルギーを蓄積する状態と、コンバータ内ダイオードを通る電流によって該コンバータ内インダクタから電磁気的エネルギーを放出する状態と、をスイッチによって切り替えるスイッチングコンバータとして構成され、前記素子として該コンバータ内インダクタを用いるよう構成され、更に前記第1のコイルを該コンバータ内インダクタとして用いるよう構成されたことを特徴とする、請求項2に記載の太陽電池用コンバータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
これより図面を用いて、本発明に係る太陽電池用コンバータシステムを説明する。但し、本発明に係る太陽電池用コンバータシステムの構成は、各図面にて示される特定の具体的構成へと限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、以下において各キャパシタは主に単独の蓄電素子であるとして説明するが、これらは充放電可能な任意の素子、複数の素子からなるモジュール、あるいはそれらモジュールを用いて構成される任意の装置であってもよい。各蓄電素子の容量も、それぞれ異なっていてよい。その他、以下の実施例における多段倍電圧整流回路は4段倍電圧整流回路として示されているが、本発明における多段倍電圧整流回路の段数、すなわち直列接続されるキャパシタの数nは2以上の任意の整数であってよい。したがって太陽電池モジュール鎖におけるモジュールの直列数nも任意の整数となる。各スイッチについても、以下においてはMOSFETなどの半導体スイッチであるとして説明するが、任意の電子スイッチ、あるいは機械式スイッチを用いることも可能である。
【0021】
コンバータ
電流補償機能を有する本発明の太陽電池用コンバータシステムは、コンバータ、入力回路、及び多段倍電圧整流回路の3つの機能部を備えている。コンバータとして用いることが可能な代表例として、
図6a〜
図6fは、降圧型コンバータ、昇圧型コンバータ、反転型昇降圧コンバータ、SEPICコンバータ、Zetaコンバータ、Cukコンバータをそれぞれ示している。これらコンバータによって、入力電圧である太陽電池モジュール鎖の合計電圧を変換した上で出力することができるのであり、言い換えれば出力電圧を調整することにより太陽電池モジュール鎖の動作状態を制御できる。
【0022】
図6a〜
図6f中では、コンバータ内のスイッチングノードにおいて発生する矩形波状の電圧も、併せて図示されている。これらスイッチングノードで発生する矩形波状の電圧を、入力回路を介して多段倍電圧整流回路に入力することにより、多段倍電圧整流回路を動作させて、最も電圧の低い太陽電池モジュールに補償電流を供給することが可能となる。すなわち、コンバータと多段倍電圧整流回路を統合することで部分影補償器を構成する。
【0023】
図6dのSEPICコンバータ、
図6eのZetaコンバータ、
図6fのCukコンバータではスイッチングノードがそれぞれ2つ存在するが、いずれのノードを用いてもよい。また、ここではトランスを用いない非絶縁型のPWM(Pulse Width Modulation)コンバータについて例を示したが、その他の非絶縁型コンバータや絶縁型コンバータ(ハーフブリッジやフルブリッジ等)、共振型コンバータ等を用いることも可能である。ここで示したコンバータはいずれもダイオードを用いた方式のコンバータであるが、ダイオードをスイッチに置き換えた同期整流型コンバータも同様に用いることができる。
【0024】
例として、
図6a〜
図6fのコンバータのうち、
図6aの降圧型コンバータの動作時における動作波形ならびに電流経路を、
図7及び
図8a,
図8bにそれぞれ示す。
図7のグラフにおいて、V
QはスイッチQに印加される電圧(
図8a中でスイッチQを流れている電流の向きに電流を流そうとする極性を正とする。)を表わし、V
LはインダクタLに印加される電圧(
図8a中でインダクタLを流れている電流の向きに電流を流そうとする極性を正とする。)を表わし、i
Lは、インダクタLを流れる電流を表わし、i
DoはダイオードDoを順方向に流れる電流を表わす。
【0025】
スイッチQがオンとなる期間では、入力電源、及びキャパシタCinからインダクタLに電圧が印加されることにより、入力電源側からの電流によりインダクタLが電磁気的エネルギーを蓄積して、インダクタLを流れる電流は直線的に増加する。このときスイッチQに印加されている電圧はゼロであり(オン抵抗を無視した。)、ダイオードDoに印加されている電圧は入力電圧に等しく、インダクタLに印加されている電圧は(入力電圧−出力電圧)に等しい。スイッチQがオフとなる期間では、インダクタLを流れる電流はダイオードDoを介して負荷RL側へ流れる。これによりインダクタLは電磁気的エネルギーを負荷RL側に放出する。この電流は、電磁気的エネルギーの放出に伴い直線的に減少する。コンバータへの入力電圧がスイッチQに印加されるが、スイッチQはオフであるため電流は流れない。またダイオードDoに印加される電圧はゼロであり(順方向電圧降下を無視した。)、インダクタLに印加される電圧は(−1)×(出力電圧)である。このように、スイッチング動作に伴い、スイッチQ、ダイオードDo、インダクタLの電圧はいずれも矩形波状電圧となる。
【0026】
多段倍電圧整流回路、及び入力回路
図9に、多段倍電圧整流回路、及び入力回路の一例が示されている。多段倍電圧整流回路においては、直列接続された平滑キャパシタCout1〜Cout4の各々に対して、2つの直列接続されたダイオードD1,D2と、D3,D4と、D5,D6と、D7,D8と、がそれぞれ並列に接続され、更に、2つの直列接続されたダイオードの各々における中間点に中間キャパシタC1〜C4がそれぞれ接続されている。
【0027】
多段倍電圧整流回路に対しては、コンバータ内の素子から出力される電圧を多段倍電圧整流回路に入力するための入力回路が接続されている。
図9の例において、入力回路は、コンバータ内の素子側に接続されて当該素子の電圧が入力される第1のコイルと、任意のコアを介する等して第1のコイルと磁気的に結合され、更に多段倍電圧整流回路に接続されて多段倍電圧整流回路に電圧を出力する第2のコイルとを備えている。なお、第1のコイルに接続されているキャパシタCblockは、コンバータ内の素子から流れてくる電流の直流成分を遮断するためのブロッキングコンデンサである。また、第1のコイルと第2のコイルの巻数比をN:1とする。
【0028】
入力回路の端子A−B間には、上述のコンバータの素子(スイッチングノード。あるいは、後述のとおり矩形波状電圧が印加される別の素子でもよい。)で生成された矩形波状電圧が入力される。このとき、入力される矩形波状電圧の変化に応じて中間キャパシタC1〜C4に充放電電流が流れ、多段倍電圧整流回路内の奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7と偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8が交互に導通する。
【0029】
具体的には、
図10中、V
SNのグラフに示される矩形波状電圧(例えば、
図7のV
Q)が入力回路へと入力され、トランスによる変圧やブロッキングコンデンサCblockの直流成分除去作用を受けて多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、モード1(
図10中、V
SNのグラフ参照)においては
図11aに示すとおりの経路を電流が流れて、モード2(
図10中、V
SNのグラフ参照)においては
図11bに示すとおりの経路を電流が流れる(ただし、
図12を用いて後に説明するとおり、キャパシタCout1〜Cout4の電圧にばらつきがある場合は、電圧の低いキャパシタ、及び対応する番号のダイオードに優先的に電流が流れる。)。すなわち、
図11aに示すように、ブロッキングコンデンサCblockに流れる電流i
Cblockが正のとき(モード1)多段倍電圧整流回路内の奇数番号のダイオードD
(2i-1)(i=1…4)が導通し、
図11bに示すようにi
Cblockが負のとき(モード2)は多段倍電圧整流回路内の偶数番号のダイオードD
(2i)が導通する。
【0030】
ここで、キャパシタCout1〜Cout4の容量が中間キャパシタC1〜C4の容量と比較して十分大きいとすれば、入力電圧V
SNの動作周波数が十分高い場合、キャパシタCout1,Cout2,Cout3,Cout4の電圧V
Cout1,V
Cout2,V
Cout3,V
Cout4は1サイクル前後において不変であるとみなすことができる。モード1におけるV
SNの大きさをEとし(例えば
図6aの降圧型コンバータのダイオードDo、又はインダクタLから矩形波状電圧を入力する場合、スイッチQがオンの期間に対応する。また、第2のコイルから多段倍電圧整流回路に入力される電圧はE/Nである。)、モード1における中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1a,V
C2a,V
C3a,V
C4aとすれば、
図11aの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(1)が得られる。
【数1】
(1)
【0031】
なお、V
Cout1〜V
Cout4については、
図11a中でキャパシタCout3を流れている方向に電流を流す極性の電圧を正とし、V
c1a〜V
c4a(及び、後述のV
c1b〜V
c4b)については、
図11a中で中間キャパシタC1〜C4を流れている方向に電流を流す極性の電圧を負とした。
【0032】
同様に、モード2におけるV
SNの大きさを0とし(例えば
図6aの降圧型コンバータのダイオードDo、又はインダクタLから矩形波状電圧を入力する場合、スイッチQがオフの期間に対応する。なお、インダクタLの電圧は正と負の値をとるが、電圧の基準点を負側の電圧と取ることにより、モード2におけるV
SNをゼロとしてよい。)、中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1b,V
C2b,V
C3b,V
C4bとすれば、
図11bの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(2)が得られる。
【数2】
(2)
【0033】
上記式(1),(2)より、中間キャパシタC1〜C4における、モード1とモード2の間での電圧変動△V
C1=V
C1a−V
C1b,△V
C2=V
C2a−V
C2b,△V
C3=V
C3a−V
C3b,△V
C4=V
C4a−V
C4bは以下のとおり計算される。
【数3】
(3)
【0034】
中間キャパシタC1〜C4の容量をそれぞれG1,G2,G3,G4とした場合、中間キャパシタC1〜C4からキャパシタCout1〜Cout4に流れる電流I
C1,I
C2,I
C3,I
C4は、電流=周波数×電荷量=周波数×容量×電圧変動という関係から、
【数4】
(4)
となる。ここで、fはV
SNの周波数である。ここで、オームの法則から、f×G1,f×G2,f×G3,f×G4はそれぞれ抵抗の逆数、つまりコンダクタンスの次元であることがわかる。
【0035】
よって、上記式(4)から、
図9の回路を
図12のような等価回路に置き換えることができる。ここで等価電源Vdcは出力電圧E/Nの直流電源であり、等価抵抗R1〜R4は中間キャパシタC1〜C4の充放電動作を等価抵抗に置き換えたものであり、等価抵抗R1〜R4の抵抗値はそれぞれ、1/(f×G1),1/(f×G2),1/(f×G3),1/(f×G4)と表すことができる。G1〜G4が等しい場合、R1〜R4の値も等しくなるため、
図9においてキャパシタCout1〜Cout4の各電圧が同じ場合は等価抵抗R1〜R4に流れる電流も等しくなる。つまりキャパシタCout1〜Cout4は均等に充電されることになる。定常状態におけるキャパシタCout1〜Cout4の電圧はE/Nである。キャパシタCout1〜Cout4の電圧にばらつきがある場合は、
図12の等価回路から明らかなとおり電圧が最も低いキャパシタに対して優先的に電流が供給されて、電圧ばらつきが解消される方向に向かう。またG1〜G4が異なる場合、等価抵抗R1〜R4を流れる電流も異なることとなるが、最終的にキャパシタCout1〜Cout4の電圧が定常状態でE/Nの均一値となることに変わりはない(ただし、ダイオードにおける電圧降下は無視する。)。
【0036】
直列共振型入力回路
入力回路としては、共振回路を用いることも可能である。一例として、
図9の回路構成において入力回路を直列共振型のトランスを含む回路で置き換えた構成の回路図を
図13に示す。
【0037】
共振インダクタLrと共振キャパシタCrにより直列共振タンクが構成されており、トランス以降の回路は
図9で示したものと同じである。コンバータ内におけるスイッチングノード等で発生した矩形波状電圧V
SNが端子A−B間に印加されることで、多段倍電圧整流回路には正弦波状の交流電流が流れる。
【0038】
図13に示した回路をDCM(Discontinuous Conduction Mode)で動作させた場合の動作波形例を
図14に示す。i
Lrは共振インダクタLrに流れる電流(
図13中の矢印方向に流れる電流を正とする。)を表わし、i
D(2i-1)は奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7に流れる順方向電流を、i
D(2i)は偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8に流れる順方向電流を、それぞれ表わす。
【0039】
矩形波状電圧V
SNが正(
図13中、端子A側が高電圧)に切り替わったとき、共振インダクタLrには正の電流i
Lrが流れ始めるが(
図14中、モード1)、その波形は共振インダクタLrと共振キャパシタCrとの共振現象により正弦波状となるため、いずれは下降してゼロとなる。共振キャパシタCrの容量が比較的大きい場合には、モード1末期における共振キャパシタCrの電圧の大きさは比較的小さくなるため、負の電流i
Lrを流すには至らず、その後i
Lrはゼロの一定値をとる(
図14中、モード2)。
【0040】
このとき、矩形波状電圧V
SNが負に切り替えられると、共振インダクタLrには負の電流i
Lrが流れ始める(
図14中、モード3)。共振インダクタLrと共振キャパシタCrとの共振現象によりi
Lrは正弦波状に変化し、いずれは上昇してゼロとなる。共振キャパシタCrの容量が比較的大きい場合には、モード3末期における共振キャパシタCrの電圧の大きさは比較的小さくなるため、正の電流i
Lrを流すには至らず、その後i
Lrはゼロの一定値をとる(
図14中、モード4)。このとき、矩形波状電圧V
SNが正に切り替えられると、共振インダクタLrには正の電流i
Lrが流れ始める(
図14中、モード1)。以後、モード1〜4の動作が繰り返される。
【0041】
i
Lrが正のとき(
図14中、モード1)、多段倍電圧整流回路には
図15aに示すとおりの経路で、奇数番号のダイオードD
(2i-1)(i=1…4)に電流が流れ、i
Lrが負のとき(
図14中、モード3)、
図15bに示すとおりの経路で、偶数番号のダイオードD
(2i)に電流が流れる(ただし、キャパシタCout1〜Cout4の電圧にばらつきがある場合は、電圧の低いキャパシタ、及び対応する番号のダイオードに優先的に電流が流れる)。モード2,モード4において、
図13の回路内に電流は流れない。i
Lrが正弦波状に変化することに対応して、多段倍電圧整流回路内の各ダイオードを流れる電流も正弦波状に変化する(
図14)が、
図15a,
図15bに示される経路は上述の
図11a,
図11bの経路と同様の経路であり、したがって定性的には、上述の式(1)〜(4)を用いて説明した均等化動作と同様の均等化動作が行われて、キャパシタCout1〜Cout4の電圧が均等化される。
【0042】
以上の動作モードでは、スイッチのオンならびにオフ期間に共振周期の半周期に亘って電流が流れる。一般的にコンバータでは入出力電圧比に応じて時比率D(スイッチQのスイッチング1周期に対するオン期間の割合)が変動するが、以上の4つの動作モードで動作する限り、直列共振型の入力回路と多段倍電圧整流回路は時比率変動に影響を受けることなく動作することができる。以上の動作モード(DCM)が成立するためには、直列共振回路に印加される電圧V
SNがハイ及びローとなる期間のそれぞれが、直列共振回路の共振半周期よりも長くなるようスイッチング周波数もしくは回路定数を決定する必要がある。時比率Dに関して次の不等式を満たすようにスイッチング周波数ならびに共振周波数を決定すれば、上記の条件を満足することができる。
【数5】
(5)
ここでf
SはV
SNの周波数、f
rは直列共振回路の共振周波数である。コンバータでは入出力の電圧値に応じて時比率Dが変動するが、時比率Dが上記式(5)を満たすならば多段倍電圧整流回路は
図14に示した4つの動作モードで動作し、時比率変動に影響を受けることなく動作することができる。特に、既に述べたとおり、キャパシタCout1〜Cout4の電圧にばらつきがある場合は、電圧の低いキャパシタ、及び対応する番号のダイオードに優先的に電流が流れるため、
図9及び
図13に示した多段倍電圧整流回路はCout1〜Cout4のキャパシタのうち電圧の最も低いキャパシタに優先的に電流を供給するよう動作する。
【0043】
本発明の太陽電池用コンバータシステムでは、これらのキャパシタに対して太陽電池モジュールを並列に接続して使用する。
図1で示したように、部分影発生時には影モジュールの電流供給能力低下により影モジュールの電圧は日照モジュールの電圧よりも低くなるため、多段倍電圧整流回路は影モジュールに対して優先的に電流を供給するよう動作する。影モジュールは多段倍電圧整流回路から電流を受け取る、すなわち補助されることにより、全てのモジュールの特性は擬似的に均一となり、部分影の悪影響は防止される。
【実施例1】
【0044】
太陽電池用コンバータシステムの構成
本発明の太陽電池用コンバータシステムの、第1の実施形態を
図16に示す。4直列の太陽電池モジュールPV1〜PV4に対する本発明の統合型太陽電池用コンバータシステムの実施形態が示されている。ここではコンバータとして
図6aで示した降圧型(Buck)コンバータを用い、入力回路、多段倍電圧整流回路としては
図13に示した回路を用いた例を示している。降圧型コンバータ内のスイッチQとダイオードDbuckとインダクタLbuckの接点で構成されるスイッチングノードが、直列共振型の入力回路を介して多段倍電圧整流回路に接続されている。すなわち、多段倍電圧整流回路は降圧型コンバータ内のスイッチングノードで発生する矩形波状電圧(ダイオードDbuckの電圧)により駆動されることになる。降圧型コンバータの入力端子、すなわちスイッチQは太陽電池モジュールPV1〜PV4からなる太陽電池モジュール鎖に接続されている。一方、多段倍電圧整流回路はPV1〜PV4の各太陽電池モジュールに対して接続されており、太陽電池モジュールPV1〜PV4における部分影の発生状態に応じてモジュールに電流を供給することで部分影補償を行う。
【0045】
降圧型コンバータはPWM制御を用いて負荷電圧のレギュレーションを行う。入力電圧V
String(すなわち太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧の合計電圧)と負荷RLの電圧V
outの関係は、スイッチQの時比率Dを用いて次式で表される。
【数6】
(6)
【0046】
図16に示した本発明の統合型太陽電池用コンバータシステムで必要となるスイッチの数は1つ(スイッチQ)のみであり、部分影補償の機能を担う多段倍電圧整流回路、及び直列共振型入力回路はスイッチレスで構成可能である。本発明の統合型太陽電池用コンバータシステムは少数個のスイッチで構成可能であるため、
図3〜
図5で示した従来の部分影補償器と比較して回路構成を大幅に簡素化することができる。また、本統合型太陽電池用コンバータシステムではメインの電力変換を担うコンバータ部と、部分影補償機能を担う直列共振型入力回路、多段倍電圧整流回路とをそれぞれ最適に設計することにより、小型かつ経済的な設計が可能になる。例えば、一般的に部分影補償器に必要な電力容量はコンバータ自体に必要とされるそれと比較して大幅に小さいため、コンバータには大電力用の素子を用い、入力回路、多段倍電圧整流回路には小電力の素子を用いるような設計が最適である。
【0047】
太陽電池用コンバータシステムの動作
図16に示した実施形態の動作原理を、4直列モジュールのうちモジュールPV1に部分影が発生した状態を例にとり説明する。動作波形ならびに動作時における電流経路を
図17(DはスイッチQの時比率であり、Tsはスイッチングの周期である。)と
図18a〜
図18dにそれぞれ示す。
図17のグラフ中、i
L-buck,i
Q,i
D-buckは、それぞれインダクタLbuck,スイッチQ,ダイオードDbuckに流れる電流(
図16中の矢印方向に流れる電流を正とする。)を表わし、V
SNは入力回路に入力される矩形波状電圧(
図16の例では、ダイオードDbuckの電圧。
図16中、i
Lkgの矢印方向に電流を流そうとする電圧を正とする。)を表わし、i
Lkgは入力回路内のインダクタLkg(トランスの漏洩インダクタンス)に流れる電流(
図16中の矢印方向に流れる電流を正とする。)を表わし、i
Ciは、影モジュールに対応する中間キャパシタ(モジュールPV1が影モジュールであれば中間キャパシタC1)に流れる電流を表わし(
図16中の矢印方向に流れる電流を正とする。)、i
Dは、ダイオードD1又はD2に流れる順方向電流を表わす。なお、
図18a〜
図18dの電流経路において、特に多段倍電圧整流回路内を流れる電流経路としては、回路内の電流の主な流れである、最低電圧キャパシタCout1に流れ込む電流に関係する電流経路のみを描いているが、キャパシタ間の電圧差が小さい場合等には、
図15a,
図15bに示されている、他のキャパシタに関係する経路にも電流が流れ得る(
図15aが
図18aに、
図15bが
図18cにそれぞれ対応)。
【0048】
スイッチQがオフからオンへと切り替えられ、矩形波状電圧V
SNが正(
図13中、端子A側が高電圧)に切り替わったとき、システムの動作はモード1に移行し、
図18aに示す経路に電流が流れる。インダクタLbuckには、太陽電池モジュール鎖からの電流により電磁気的エネルギーが蓄積され、i
L-buckは直線的に増加する(
図17中、i
L-buckのグラフ。同グラフ中「1」で表わされる期間がモード1に対応する。モード2〜4には、グラフ中「2」〜「4」で表わされる期間が対応する。)。
図18aの電流経路から明らかなとおり、この時にスイッチQを流れる電流i
Qの大きさは、共振インダクタ(漏洩インダクタンス)Lkgと共振キャパシタCrとの共振現象により正弦波状となるi
Lkgの大きさと、上記直線状に増加するi
L-buckの大きさとの和に等しい(
図17中、i
Qのグラフ。)。また影モジュールに対応する中間キャパシタC1、及びダイオードD1に流れる電流は、一次コイル側の電流i
Lkgと同様に正弦波状に変化する(
図17中、i
Ciとi
D1のグラフ。)。
【0049】
電流i
Lkgは正弦波状に変化し、いずれは下降してゼロとなる(モード2)。システム内では、
図18bに示す経路に電流が流れる。既に述べたとおり、共振キャパシタCrの容量が比較的大きい場合には、モード1末期における共振キャパシタCrの電圧の大きさは比較的小さくなるため、負の電流i
Lkgを流すには至らず、その後i
Lkgはゼロの一定値をとる(
図17中、i
Lkgのグラフ。)。これに伴い、i
Ciとi
D1もゼロの一定値をとるが(
図17中、i
Ciとi
D1のグラフ。)、スイッチQがオンのままであるためインダクタLbuckには電磁気的エネルギーが蓄積され続け、i
L-buck及びi
Qは直線的に増加し続ける(
図17中、i
L-buckとi
Qのグラフ。)。
【0050】
スイッチQをオフに切り替えると、矩形波状電圧V
SNがゼロとなり、システムの動作はモード3に移行する。システム内では、
図18cに示す経路に電流が流れる。モード1,2の期間中にインダクタLbuckに蓄積された電磁気的エネルギーは、ダイオードDbuckを流れる電流によって出力キャパシタCout及び負荷RL側に流れる。電磁気的エネルギーの放出に伴い、インダクタLbuckに流れる電流i
L-buckは直線的に減少する(
図17中、i
L-buckのグラフ。)。共振インダクタLkgには負の電流が流れ始めるが、共振インダクタLkgと共振キャパシタCrとの共振現象により、この負の電流は正弦波状となる(
図17中、i
Lkgのグラフ。)。この時にダイオードDbuckを流れる電流i
D-buckは、i
Lkgの符号を
図16の向きにおいて正としていることに注意すればi
D-buck=i
Lkg+i
L-buckであるから、
図17中のi
D-buckのグラフ(モード3)のとおり変化する。また影モジュールに対応する中間キャパシタC1、及びダイオードD2に流れる電流は、一次コイル側の電流i
Lkgと同様に正弦波状に変化する(
図17中、i
Ciとi
D2のグラフ。極性の定義により、i
Ciは負である。)。
【0051】
電流i
Lkgは正弦波状に変化し、いずれは上昇してゼロとなる(モード4)。システム内では、
図18dに示す経路に電流が流れる。既に述べたとおり、共振キャパシタCrの容量が比較的大きい場合には、モード3末期における共振キャパシタCrの電圧の大きさは比較的小さくなるため、正の電流i
Lkgを流すには至らず、その後i
Lkgはゼロの一定値をとる(
図17中、i
Lkgのグラフ。)。これに伴い、i
Ciとi
D2もゼロの一定値をとるが(
図17中、i
Ciとi
D2のグラフ。)、スイッチQがオフのままであるためインダクタLbuckは電磁気的エネルギーを放出し続け、i
L-buck及びi
D-buckは直線的に減少し続ける(
図17中、i
L-buckとi
D-buckのグラフ。)。
【0052】
このとき、スイッチQをオンに切り替えると、矩形波状電圧V
SNが正となり、共振インダクタLkgには正の電流i
Lkgが流れ始める(モード1)。以後、モード1〜4の動作が繰り返される。
【0053】
以上説明したとおり、降圧型コンバータにおけるインダクタ電流i
L-bcukは従来のコンバータと同様、三角波電流である。それに対して、スイッチQのターンオン/オフに伴い正弦波電流が多段倍電圧整流回路の入力端子に流れるため、降圧型コンバータにおけるスイッチQとダイオードDbuckの電流(i
Qとi
D-buck)は台形波電流に正弦波電流が重畳した波形となる。一方、多段倍電圧整流回路内では平滑キャパシタ(Cout1〜Cout4)を除いて影モジュールPV1に対応する素子(C1、D1、D2)のみが動作状態にあり、その他の素子にはほとんど電流が流れない。キルヒホッフの電流則より、影モジュールPV1にはダイオードD1の電流I
D1の、モード1〜4に亘る平均値に相当する電流が多段倍電圧整流回路から供給されることになる。なお、中間キャパシタC1のモード1〜モード4に亘る平均電流がゼロであることに鑑みれば、I
D1の上記平均値はダイオードD2の電流I
D2のモード1〜4に亘る平均値に等しい。
【0054】
以上のとおり、入力回路に矩形波状電圧が入力されたときには
図18a〜
図18dに示される経路で多段倍電圧整流回路に電流が流れ、影モジュールPV1に補償電流が供給される(モード1の期間中にキャパシタCout1が充電され、その充電電流が補償電流として影モジュールPV1に供給される。なお、モード1の期間中にはキャパシタCout2も充電されるが、キャパシタCout2はモード3の期間中に放電されるためサイクル全体での充放電はゼロであり、日照モジュールPV2の充放電もゼロである。)。影モジュールPV1から、自己の出力電流と補償電流が放出されることにより、太陽電池モジュール鎖全体としての高い出力電流を維持することができる。スイッチQの時比率Dを調整することで太陽電池モジュール鎖全体の動作状態をMPP近傍に調整しつつ、このような補償電流により各モジュールの動作状態を疑似的に均一化すれば、太陽電池モジュール鎖全体として高い出力を達成することができる。
【0055】
太陽電池用コンバータシステムの動作に関する実験
図16の回路構成を備えた本発明の太陽電池用コンバータシステムについて、以下のとおり実験を行った。
【0056】
まず、
図16の回路構成で、太陽電池用コンバータシステムを構築して太陽電池モジュールPV1〜PV4を接続した。ここで、インダクタLbuckのインダクタンスは220μHであり、中間キャパシタC1〜C4の容量は47μFであり、平滑キャパシタCout1〜Cout4の容量は188μFであり、トランスの一次巻線の巻き数は12,二次巻線の巻き数は3であり(巻き数比N=12/3=4)、共振インダクタLkgのインダクタンスは4.8μHであり、共振キャパシタCrの容量は330nFであった。また、スイッチのオン抵抗やダイオードの順方向電圧降下は無視できる大きさであった。
【0057】
次に、太陽電池モジュールPV1〜PV4として太陽電池アレイ・シミュレータ(Agilent Technologies社製、E4350B)を
図16に従い接続し、部分影が発生している状態を擬似的に実現した。具体的には、4つの(擬似)太陽電池モジュールPV1〜PV4により構成される太陽電池モジュール鎖の中で太陽電池モジュールPV1にのみ影がかかった場合を想定し、
図19aのグラフに示すとおりの動作特性を設定した。
【0058】
以上の条件の下で、負荷電圧を24Vに固定し、コンバータのスイッチQの時比率Dを変えつつ太陽電池モジュール鎖の動作状態を測定した。また比較のため、
図16のシステム構成から本発明の太陽電池用コンバータシステムを取り除き、太陽電池モジュール鎖に印加する電圧を変えつつ太陽電池モジュール鎖の動作状態を測定した。
【0059】
実験に用いた各モジュールの単体特性を
図19a(横軸は太陽電池モジュールに印加される電圧を表わし、上側のグラフの縦軸は太陽電池モジュールの出力電力を表わし、下側のグラフの縦軸は太陽電池モジュールの出力電流を表わす。)に、太陽電池モジュール鎖の動作特性の取得結果を
図19b(横軸は太陽電池モジュール鎖に印加される電圧を表わし、上側のグラフの縦軸は太陽電池モジュール鎖の出力電力を表わし、下側のグラフの縦軸は太陽電池モジュール鎖の出力電流を表わす。)に、それぞれ示す。本発明の太陽電池用コンバータシステムを用いない場合においては太陽電池モジュールのP−V(電力−電圧)特性上に2つのMPPが存在し、抽出可能最大電力は約55W(太陽電池モジュール鎖の電圧V
string=30V)であった。それに対し、太陽電池用コンバータシステムを用いることでMPPは1点に収束し、抽出可能最大電力も約75W(V
string=36V)まで大幅に増加した。
【0060】
太陽電池モジュールPV1以外に影がかかっている場合
以上においては、
図16の回路中で主に太陽電池モジュールPV1に影がかかっている場合について説明したが、他のモジュールに影がかかっている場合であっても、本発明の太陽電池用コンバータシステムは同様の原理で動作可能である。
【0061】
一例として、太陽電池モジュールPV3に影がかかっている場合に、スイッチQのオンオフ切り替えによって
図17のV
SNのグラフに示す矩形波状電圧をダイオードDbuckから入力回路に入力したときに回路内を流れる、各モードでの電流の経路を
図20a〜
図20dに示す。
【0062】
スイッチQがオフからオンへと切り替えられ、矩形波状電圧V
SNが正(
図13中、端子A側が高電圧)に切り替わったとき、システムの動作はモード1に移行し、
図20aに示す経路に電流が流れる。インダクタLbuckには、太陽電池モジュール鎖からの電流により電磁気的エネルギーが蓄積され、i
L-buckは直線的に増加する(
図17中、i
L-buckのグラフ。同グラフ中「1」で表わされる期間がモード1に対応する。モード2〜4には、グラフ中「2」〜「4」で表わされる期間が対応する。)。
図20aの電流経路から明らかなとおり、この時にスイッチQを流れる電流i
Qの大きさは、共振インダクタLkgと共振キャパシタCrとの共振現象により正弦波状となるi
Lkgの大きさと、上記直線状に増加するi
L-buckの大きさとの和に等しい(
図17中、i
Qのグラフ。)。また影モジュールに対応する中間キャパシタC3、及びダイオードD5に流れる電流は、一次コイル側の電流i
Lkgと同様に正弦波状に変化する(
図17中、i
Ciのグラフでi=3とする。またダイオードD5を流れる電流i
D5のグラフは
図17中、i
D1のグラフと同様。以下、i
D1のグラフをi
D5のグラフに読み替え、i
D2のグラフを、ダイオードD6を流れる電流i
D6のグラフに読み替える。)。
【0063】
電流i
Lkgは正弦波状に変化し、いずれは下降してゼロとなる(モード2)。システム内では、
図20bに示す経路に電流が流れる。既に述べたとおり、共振キャパシタCrの容量が比較的大きい場合には、モード1末期における共振キャパシタCrの電圧の大きさは比較的小さくなるため、負の電流i
Lkgを流すには至らず、その後i
Lkgはゼロの一定値をとる(
図17中、i
Lkgのグラフ。)。これに伴い、i
Ciとi
D5もゼロの一定値をとるが(
図17中、i
Ciとi
D1のグラフ。)、スイッチQがオンのままであるためインダクタLbuckには電磁気的エネルギーが蓄積され続け、i
L-buck及びi
Qは直線的に増加し続ける(
図17中、i
L-buckとi
Qのグラフ。)。
【0064】
スイッチQをオフに切り替えると、矩形波状電圧V
SNがゼロとなり、システムの動作はモード3に移行する。システム内では、
図20cに示す経路に電流が流れる。モード1,2の期間中にインダクタLbuckに蓄積された電磁気的エネルギーは、ダイオードDbuckを流れる電流によって出力キャパシタCout及び負荷RL側に流れる。電磁気的エネルギーの放出に伴い、インダクタLbuckに流れる電流i
L-buckは直線的に減少する(
図17中、i
L-buckのグラフ。)。共振インダクタLkgには負の電流が流れ始めるが、共振インダクタLkgと共振キャパシタCrとの共振現象により、この負の電流は正弦波状となる(
図17中、i
Lkgのグラフ。)。この時にダイオードDbuckを流れる電流i
D-buckは、i
Lkgの符号を
図16の向きにおいて正としていることに注意すればi
D-buck=i
Lkg+i
L-buckであるから、
図17中のi
D-buckのグラフ(モード3)のとおり変化する。また影モジュールに対応する中間キャパシタC3、及びダイオードD6に流れる電流は、一次コイル側の電流i
Lkgと同様に正弦波状に変化する(
図17中、i
Ciとi
D2のグラフ。極性の定義により、i
Ciは負である。)。
【0065】
電流i
Lkgは正弦波状に変化し、いずれは上昇してゼロとなる(モード4)。システム内では、
図20dに示す経路に電流が流れる。既に述べたとおり、共振キャパシタCrの容量が比較的大きい場合には、モード3末期における共振キャパシタCrの電圧の大きさは比較的小さくなるため、正の電流i
Lkgを流すには至らず、その後i
Lkgはゼロの一定値をとる(
図17中、i
Lkgのグラフ。)。これに伴い、i
Ciとi
D6もゼロの一定値をとるが(
図17中、i
Ciとi
D2のグラフ。)、スイッチQがオフのままであるためインダクタL
buckは電磁気的エネルギーを放出し続け、i
L-buck及びi
D-buckは直線的に減少し続ける(
図17中、i
L-buckとi
D-buckのグラフ。)。
【0066】
このとき、スイッチQをオンに切り替えると、矩形波状電圧V
SNが正となり、共振インダクタLkgには正の電流i
Lkgが流れ始める(モード1)。以後、モード1〜4の動作が繰り返される。
【0067】
以上のとおり、入力回路に矩形波状電圧が入力されたときには
図20a〜
図20dに示される経路で多段倍電圧整流回路に電流が流れ、影モジュールPV3に補償電流が供給される(モード3の期間中にキャパシタCout3が充電され、その充電電流が補償電流として影モジュールPV3に供給される。)。影モジュールPV3から、自己の出力電流と補償電流が放出されることにより、太陽電池モジュール鎖全体としての高い出力電流を維持することができる。
【0068】
このように、本発明の太陽電池用コンバータシステムは、どの太陽電池モジュールに影が掛かっているかに関わらず、影モジュールに補償電流を供給できる。
【0069】
その他の変形例
なお、
図16の例では入力回路の一例として直列共振回路を用いたが、
図9で示した入力回路を用いて
図21に示すとおり太陽電池用コンバータシステムを構成しても、影モジュールに補償電流を供給しつつコンバータを動作させることができることは明らかである。
図9〜
図12を用いて説明したとおり、
図9中、端子A−B間に矩形波状電圧を入力すればキャパシタCout1〜Cout4の電圧が均等化され、すなわち最も電圧の低いキャパシタ(影モジュールに並列接続されたキャパシタ)に優先的に充電電流が供給されるのであり、この充電電流が補償電流として影モジュールに供給される。なお、
図21の構成においては入力回路で共振が起こらないため、
図11a,
図11bに示したとおり太陽電池用コンバータシステムは2モードで動作する。太陽電池モジュールPV1に影が掛かっている場合、平滑キャパシタ(Cout1〜Cout4)を除いて、主には影モジュールPV1に対応する素子(C1、D1、D2)のみに電流が流れるのであり、この電流経路は
図22a,
図22bに示すとおりである。太陽電池モジュールPV1以外に影が掛かっているときも、太陽電池用コンバータシステムは同様の原理で動作可能である。
【0070】
なお、多段倍電圧整流回路に対して均等化のための電圧を入力回路から入力する位置は、
図9の態様に限らず任意である。一例として、多段倍電圧整流回路と入力回路との接続点を、
図9の構成から変更したときの回路図を
図23に示す。
【0071】
図9の構成を用いた上述の例と同様に、キャパシタCout1〜Cout4の容量が中間キャパシタC1〜C4の容量と比較して十分大きいとして、矩形波状電圧を入力した時に実現される、
図24aに示す電流経路(モード1)と
図24bに示す電流経路(モード2)とについてキルヒホッフの第2法則を適用すれば、以下の式(7),(8)が得られる(各素子の電圧等、記号は上記式(1)〜(4)と同様に用いる。)。
【数7】
(7)
【数8】
(8)
【0072】
上記式(7),(8)から上記式(3)が得られる。したがって、
図23の構成においても多段倍電圧整流回路の動作は
図12の等価回路を用いて説明できるのであり、すなわち入力回路から矩形波状電圧を入力することにより、キャパシタCout1〜Cout4の電圧が均等化される。
【0073】
図23の多段倍電圧整流回路と入力回路とを降圧型コンバータに接続して本発明の太陽電池用コンバータシステムを構成し、太陽電池モジュール鎖を接続した上で動作させたときに、各モードで流れる電流経路(太陽電池モジュールPV1に影が掛かっているとする。)を
図25a,
図25bに示す。
図25aがスイッチQのオン期間(モード1)に対応し、
図25bがスイッチQのオフ期間(モード2)に対応する。ダイオードDbuckに印加される矩形波状電圧が入力回路に入力されることで、多段倍電圧整流回路内には
図24a,
図24bで示した電流経路に電流が流れ得るが、ここでは平滑キャパシタ(Cout1〜Cout4)を除いて影モジュールPV1に対応する素子(C1、D1、D2)のみが動作状態にあり、その他の素子にはほとんど電流が流れない。影モジュールPV1に補償電流が供給され(モード1の期間中にキャパシタCout1が充電され、その充電電流が補償電流として影モジュールPV1に供給される。なお、モード1の期間中にはキャパシタCout2,Cout3も充電されるが、キャパシタCout2,Cout3はモード2の期間中に放電されるためサイクル全体での充放電はゼロであり、日照モジュールPV2,PV3の充放電もゼロである。)、影モジュールPV1から、自己の出力電流と補償電流が放出されることにより、太陽電池モジュール鎖全体としての高い出力電流を維持することができる。
図23の入力回路を直列共振型入力回路に変更しても、同様の原理で影モジュールに補償電流を供給することができるし(
図18a〜
図18dや
図20a〜
図20dと同様に、DCMであれば4モードでの動作となる。)、入力回路から多段倍電圧整流回路への入力位置をこれ以外の任意の位置にしても同様である。
【0074】
以上のとおり、本発明の太陽電池用コンバータシステムにおいて、入力回路の具体的構成、入力回路から多段倍電圧整流回路への入力位置は任意であり、また、どの太陽電池モジュールに影が掛かっているかに関わらず、当該影モジュールに補償電流を供給することが可能である。
【実施例2】
【0075】
図16等に示した第1の実施形態は、スイッチングノードで発生する矩形波状電圧(ダイオードDbuckに印加された電圧)を利用して多段倍電圧整流回路を駆動することで、コンバータと多段倍電圧整流回路を統合したものであった。しかしながら、本発明の太陽電池用コンバータシステムにおいて、入力回路に電圧を入力する素子としては、コンバータの動作中に矩形波状電圧が印加される任意の素子を用いてよい。一般的にコンバータ内のインダクタの電圧も矩形波状電圧であり、この矩形波状電圧を利用して多段倍電圧整流回路を駆動することも可能である。
【0076】
この場合、
図16中のインダクタLbuckをトランスの一次コイルで置き換え、更に当該トランスにおける励磁インダクタンスLmgと漏洩インダクタンスLkgを活用することで、
図16の構成に含まれていた2つの磁性素子を1つに集約し、磁性素子数を削減することができる。
【0077】
以降、このような構成の太陽電池用コンバータシステムを本発明の第2の実施形態として、その動作の説明を行う。本発明の第2の実施形態の回路構成例を
図26に示す。4直列の太陽電池モジュールPV1〜PV4に対する本発明の統合型太陽電池用コンバータシステムの実施形態を示したものであり、
図6aの降圧型コンバータと
図13の多段倍電圧整流回路を、入力回路を介して統合した回路構成に対応する。
図26中のトランス、共振キャパシタCr、及び共振キャパシタCrの電圧を安定化させるためのバイアス抵抗Rbiasにより入力回路が構成されている。またトランスの励磁インダクタンスが降圧型コンバータ内のインダクタとして用いられている(
図28中では、コンバータに接続された一次コイル、漏洩インダクタンスLkg、励磁インダクタンスLmgが別個に描かれているが、漏洩インダクタンスLkg、励磁インダクタンスLmgはトランスが有するインダクタンス成分であり、実際にコンバータシステム内に含まれる磁性素子はトランスのみである。)。
【0078】
トランスにおける励磁インダクタンスLmgが降圧型コンバータ内でインダクタとして機能する一方、漏洩インダクタンスLkgは共振型入力回路の共振インダクタとして機能する。統合に伴い、直列共振型多段倍電圧整流回路における共振コンデンサCrはトランスの二次コイル側に配置されており、その他の構成に関しては
図16に示した第1の実施形態とほぼ同様で、降圧型コンバータの入力端子、すなわちスイッチQは太陽電池モジュールPV1〜PV4に接続されている。一方、多段倍電圧整流回路はPV1〜PV4の各太陽電池モジュールに対して接続されており、太陽電池モジュールPV1〜PV4における部分影の発生状態に応じてモジュールに電流を供給することで部分影補償を行う。
【0079】
降圧型コンバータはPWM制御を用いて負荷電圧のレギュレーションを行う。
図16に示した第1の実施形態ではコンバータ部におけるインダクタLbuckに加えて入力回路におけるトランスを用いており、統合型コンバータとしては2つの磁性素子が必要であった。それに対して
図28に示した本発明の第2の実施形態の統合型太陽電池用コンバータシステムでは磁性素子数が1つ(トランス)のみであるため、
図16に示した第1の実施形態と比較して回路を小型化することが可能である。
【0080】
図28に示した第2の実施形態の動作原理を、4直列モジュールのうち太陽電池モジュールPV1に部分影が発生した状態を例に説明する。動作波形ならびに動作時における電流経路を
図29(DはスイッチQの時比率であり、Tsはスイッチングの周期である。)と
図30a〜
図30dにそれぞれ示す。
図29のグラフ中、i
Q,i
D-buck,i
Lは、それぞれスイッチQ,ダイオードDbuck,トランス一次コイルを流れる電流を表わし(各電流について
図28中の矢印方向に流れる電流を正とする。)、V
Lはトランス一次コイルに印加される矩形波状電圧(
図28中、i
Lkgの矢印方向に電流を流そうとする電圧を正とする。)を表わし、i
Crは共振キャパシタCrに流れる電流(
図28中の矢印方向に流れる電流を正とする。)を表わし、i
Ciは、影モジュールに対応する中間キャパシタ(モジュールPV1が影モジュールであれば中間キャパシタC1)に流れる電流を表わし(
図28中の矢印方向に流れる電流を正とする。)、i
Dは、ダイオードD1又はD2に流れる順方向電流を表わす。なお、
図30a〜
図30dの電流経路において、特に多段倍電圧整流回路内を流れる電流経路としては、回路内の電流の主な流れである、最低電圧キャパシタCout1に流れ込む電流に関係する電流経路のみを描いているが、キャパシタ間の電圧差が小さい場合等には、
図15a,
図15bに示されている、他のキャパシタに関係する経路にも電流が流れ得る(
図15aが
図30aに、
図15bが
図30cにそれぞれ対応)。
【0081】
スイッチQがオフからオンへと切り替えられ、矩形波状電圧V
Lが正(
図7に関連して既に述べたとおり、入力電圧V
String−出力電圧V
Loadに等しい。)に切り替わったとき、システムの動作はモード1に移行し、
図30aに示す経路に電流が流れる。励磁インダクタンスLmgの作用により、一次コイルには、太陽電池モジュール鎖からの電流により電磁気的エネルギーが蓄積され、i
Lmgは直線的に増加する。併せて、一次コイル内には、トランスの漏洩インダクタンスLkgの作用と共振キャパシタCrによる共振現象により、正弦波状となるi
Lkgが流れる(
図29中、i
Lのグラフ。同グラフ中「1」で表わされる期間がモード1に対応する。モード2〜4には、グラフ中「2」〜「4」で表わされる期間が対応する。)。共振キャパシタCrに流れる電流も正弦波状となる(
図29中、i
Crのグラフ。)。ダイオードDbuckには電流が流れず、スイッチQに流れる電流はi
Lに等しい(
図29中、i
D-buck,i
Qのグラフ。)。また影モジュールに対応する中間キャパシタC1、及びダイオードD1に流れる電流は、共振現象による電流i
Crと同様に正弦波状に変化する(
図29中、i
Ciとi
D1のグラフ。)。
【0082】
電流i
Crは正弦波状に変化し、いずれは下降してゼロとなる(モード2)。システム内では、
図30bに示す経路に電流が流れる。既に述べたとおり、共振キャパシタCrの容量が比較的大きい場合には、モード1末期における共振キャパシタCrの電圧の大きさは比較的小さくなるため、負の電流i
Crを流すには至らず、その後i
Crはゼロの一定値をとる(
図29中、i
Crのグラフ。)。これに伴い、i
Ciとi
D1もゼロの一定値をとるが(
図29中、i
Ciとi
D1のグラフ。)、スイッチQがオンのままであるため、励磁インダクタンスLmgにより一次コイルには電磁気的エネルギーが蓄積され続け、i
L及びi
Qは直線的に増加し続ける(
図29中、i
Lとi
Qのグラフ。)。
【0083】
スイッチQをオフに切り替えると、矩形波状電圧V
Lが、
図7に関連して既に述べたとおり(−1)×(出力電圧)=(−V
Load)になり、システムの動作はモード3に移行する。システム内では、
図30cに示す経路に電流が流れる。モード1,2の期間中にインダクタンスLmgの作用によって一次コイルに蓄積された電磁気的エネルギーは、ダイオードDbuckを流れる電流によって出力キャパシタCL及び負荷RL側に流れる。電磁気的エネルギーの放出に伴い、一次コイルに流れる電流i
Lmgは直線的に減少する。併せて、一次コイルには負の電流が流れ始めるが、トランスの漏洩インダクタンスLkgと共振キャパシタCrによる共振現象により、この負の電流i
Lkgは正弦波状となる(
図29中、i
Lのグラフ。)。共振キャパシタCrに流れる電流も正弦波状となる(
図29中、i
Crのグラフ。)。この時にダイオードDbuckを流れる電流i
D-buckは、i
Lに等しい(
図29中、i
L-buckのグラフ。)。また影モジュールに対応する中間キャパシタC1、及びダイオードD2に流れる電流は、共振現象による電流i
Crと同様に正弦波状に変化する(
図29中、i
Ciとi
D2のグラフ。極性の定義により、i
Ciは負である。)。
【0084】
電流i
Crは正弦波状に変化し、いずれは上昇してゼロとなる(モード4)。システム内では、
図30dに示す経路に電流が流れる。既に述べたとおり、共振キャパシタCrの容量が比較的大きい場合には、モード3末期における共振キャパシタCrの電圧の大きさは比較的小さくなるため、正の電流i
Crを流すには至らず、その後i
Crはゼロの一定値をとる(
図29中、i
Crのグラフ。)。これに伴い、i
Ciとi
D2もゼロの一定値をとるが(
図29中、i
Ciとi
D2のグラフ。)、スイッチQがオフのままであるためインダクタンスLmgの作用により一次コイルは電磁気的エネルギーを放出し続け、i
L及びi
D-buckは直線的に減少し続ける(
図29中、i
Lとi
D-buckのグラフ。)。
【0085】
このとき、スイッチQをオンに切り替えると、矩形波状電圧V
Lが正となり、一次コイル及び共振キャパシタCrには正の電流i
L,i
Crが流れ始める(モード1)。以後、モード1〜4の動作が繰り返される。
【0086】
以上説明した波形と同様、台形波電流に正弦波電流が重畳した波形となる。多段倍電圧整流回路内では平滑キャパシタ(Cout1〜Cout4)を除いて影モジュールPV1に対応する素子(C1、D1、D2)のみが動作状態にあり、その他の素子には電流は流れない。キルヒホッフの電流則より、影モジュールPV1にはダイオードD1の電流I
D1の、モード1〜4に亘る平均値に相当する電流が多段倍電圧整流回路から供給されることになる。なお、中間キャパシタC1のモード1〜モード4に亘る平均電流がゼロであることに鑑みれば、I
D1の上記平均値はダイオードD2の電流I
D2のモード1〜4に亘る平均値に等しい。
【0087】
以上のとおり、
図28に示す太陽電池用コンバータシステムにおいても、矩形波状電圧が印加される素子から入力回路に電圧が入力されたときには
図30a〜
図30dに示される経路で多段倍電圧整流回路に電流が流れ、影モジュールPV1に補償電流が供給される(モード1の期間中にキャパシタCout1が充電され、その充電電流が補償電流として影モジュールPV1に供給される。なお、モード1の期間中にはキャパシタCout2も充電されるが、キャパシタCout2はモード3の期間中に放電されるためサイクル全体での充放電はゼロであり、日照モジュールPV2の充放電もゼロである。)。影モジュールPV1から、自己の出力電流と補償電流が放出されることにより、太陽電池モジュール鎖全体としての高い出力電流を維持することができる。
【0088】
このように、入力回路への電圧入力を担うコンバータ内の素子を変更しても、当該素子に印加される矩形波状電圧を用いて多段倍電圧整流回路を動作させるという、本発明の太陽電池用コンバータシステムの動作原理は全く変わらない。以上の
図28〜
図30dでは、
図6aの降圧型コンバータと
図13の多段倍電圧整流回路を例に説明を行ったが、
図6b〜
図6f、あるいはその他のコンバータと、
図9,
図13等の入力回路、多段倍電圧整流回路を、トランスを共通部品として、あるいはトランスを用いずに統合することでも、第2の実施形態と類似の統合型コンバータを導出することができる。このような実施形態においても、入力回路の具体的構成、入力回路から多段倍電圧整流回路への入力位置は任意であるし、また、どの太陽電池モジュールに影が掛かっているかに関わらず、当該影モジュールに補償電流を供給することが可能である。