(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の好適な実施の形態に係る端末通信システムを図面に基づき説明する。実施例1〜4では、本端末通信システムで実現される種々のサービスとそのサービスの提供の態様を説明する。実施例5では、本端末通信システムの仕様を説明する。実施例6では、通信処理の具体的な流れをタイムチャートに基づき説明する。実施例7では端末の基本構成を、ブロック図に基づき説明する。実施例8では変形例を説明する。
【0049】
実施例1 アプリケーション例1:バスサービスとしてのバスロケーション情報告知及び配信
図1には、本発明の好適な実施の形態である「バスサービスとしてのバスロケーション情報告知及び配信システム」のサービス例の説明図が示されている。
【0050】
図1に示されたサービスにおいては、バス10a、10bに、端末間情報通信基盤を組み込んで、その地域内情報を、バス停12から収集し、バス10の移動に伴い、他のバス停12に地域内情報を転送するのである。なお、ここで、地域内情報とは、特許請求の範囲における所定の情報の好適な一例に相当する。
【0051】
端末について
なお、この端末間情報通信基盤を備えた装置類を「端末」と呼ぶ。
【0052】
本特許では、種々の形態・能力・機能の端末間情報通信基盤を用いており、スマートフォンに組み込むこともあるし、バス停や、ゴミ集積所等に設ける場合もある。また、機能的にも人感センサを備える場合もあるし、また、監視カメラを備える場合もある。これらの端末間情報通信基盤(またはそれを備えた装置類)を、総称して、「端末」と呼ぶ。
【0053】
さて例えば、上記バス停12が、屋根付きバス待合所であって、人感センサによる乗降者数の確認手段を備えている場合は、各バス停におけるバスを待っている人の人数が、上記地域内情報の好適な一例となろう。
【0054】
このような地域内情報(例:各バス停におけるバスを待っている人の人数)は、例えばバス停12と、そのバス停12に停車したバス10bとの間の、「バス待合所とバス間の通信」(
図1参照)によって、バス停12からバス10bに送られる。
【0055】
さらに、すれ違うバス10a同士の間でも、バス間通信14によって、地域内情報のやりとりが行われる。
【0056】
なお、このバス10は、特許請求の範囲の移動端末の好適な一例に相当する。
【0057】
なお、本アプリケーション例における地域内情報(例:各バス停におけるバスを待っている人の人数)は、バスの運行管理者16が把握していることが望ましい。そのため、本実施例では、バスと運行管理者通信18(
図1参照)によって、地域内情報を運行管理者が把握できるように構成している。運行管理者16は、一般にはバスの運行事務所に位置することが多く、バスがこの運行事務所を通過する際に、地域内情報を運行事務所(すなわち、運行管理者16)に送信するのである。
【0058】
このような構成・動作によって、その地域内で、地域内情報を拡散させることが可能である。
【0059】
また、
図1に示すように、本実施例では、中継端末20が設置されており、外部との情報のやりとりが可能に構成されている。
【0060】
以下、本実施例の各手段の構成と、その動作を説明する。
【0061】
1−1 バス停
本実施例では、バス停12には、
人感センサと、
人感センサの信号を受け取り、そのバス停12において待っている人の人数を検出する手段と、
上記検出した人数及びその他の地域内情報を記憶する記憶手段と、
「バス待合所とバス間通信」を行う通信手段(無線モジュール)と、
地域内情報(上記検出した人数を含む)を管理する管理手段であって、通信手段を制御して地域内情報を送受信させる管理手段と、
が、一般的には備えられている。管理手段は、一般的な意味でコンピュータであり、CPUやメモリから構成される。上記通信手段(無線モジュール)も所定のインターフェースを通じてCPUに接続される。
【0062】
そして、管理手段は、一般に、バス10がそのバス停12に停車した場合に、上記メモリ手段に記憶されている人数を、前記バス10に対して送信する。
【0063】
一方、バス10が他の地域内情報であって、バス停の上記記憶手段に記憶されていない地域情報を記憶している場合は、管理手段は、その地域内情報をバス10から受信する。これによって、バス停12(の管理手段)は、他のバス停における待ち人数や、ルート中のバスの運行状況、混雑の程度、交通事故の情報、等をバス10から受け取り、記憶手段に格納することができる。
【0064】
これらの具体的な手段については、後に詳述する(
図11等)。
【0065】
このようなバス停12に、バス10bが停車した場合、バス亭12の上記送信手段は、上記メモリ手段から、人数を取り出して、前記バス10bに送信する。バス10bは、これを受信して、内部に受信した地域内情報(例えば、上記「人数」)を記憶する。
【0066】
これらの具体的な通信のやりとりの様子は後に詳述する(
図6、
図9等)。
【0067】
1−2 バス
本実施例では、バス10は、
「バス間通信」及び「バス待合所とバス間通信」を行う通信手段(無線モジュール)と、
地域内情報を記憶する記憶手段と、
地域内情報を管理する管理手段であって、通信手段を制御して地域内情報を送受信させる管理手段と、
が、一般的には備えられている。
【0068】
このバスは、通信可能な相手先が近傍に近づいた場合、上記管理手段が、通信手段を制御して、
・自分が記憶していない地域内情報を、その相手先が記憶しているかどうか(A)。
・相手が記憶していない地域内情報を、自分が記憶しているかどうか(B)。
を確認する。ここで、「近傍」とは、要するに通信が可能となる範囲を意味する。
【0069】
そして、上記Aの場合において、「相手先が記憶している」場合は、相手から、その地域内情報を通信手段を介して受け取って、上記記憶手段に格納する。
【0070】
また、上記Bの場合において、「自分が記憶している」場合は、自分の記憶する地域内情報を、通信手段を介して相手に送信する。これを受けて、相手方は、これを受信して、相手方の記憶手段内に、受け取った地域内情報を格納していく。
【0071】
具体的な通信のタイミングは、後の
図6、
図10等で詳細に説明する。
【0072】
なお、このAとBとは、別々に説明したが、両方が実行されることもある。両方が実行される場合は、お互いに地域内情報の送受信を双方向に行うことになる。もちろん、お互いにすでに同様の内容の地域内情報を記憶している場合(差が無い場合)は、新たに地域内情報のやり取りは行われない。
【0073】
したがって、例えば、バス10がバス停12に近づき、バス停の近傍に入った場合は、そのバス停12の地域内情報(そのバス停12において待っている人の人数)が、バス10bに送られる。さらに、バス10がすでに有している、他のバス停12における地域内情報(他のバス停12において待っている人の人数)が、バス停12に送られることになる。
【0074】
1−3 運行管理者
本実施例で言う「運行管理者16」とは、便宜上、実際の操作者が操作をするシステム(装置)を意味する。特に、
バス間通信を行う通信手段(無線モジュール)と、
地域内情報を記憶する記憶手段と、
地域内情報を管理する管理手段であって、通信手段を制御して地域内情報を送受信させ る管理手段と、
を含むシステムであり、その機能は、バス10に備えられている上記システムと同様である。
【0075】
このようなシステムによって、地域内の地域内情報が運用管理者16に集まってくることになる。また、運行管理者16がバスの利用者等に拡散したいデータは、上記記憶手段に格納しておけば、バス10が運行管理者16の近傍に位置する場合に、そのバスに送信される。そのバス10は、地域内を運行するに従って、地域内情報を拡散するので、所望の情報を地域内に効率よく拡散することができる。
【0076】
この管理手段も、一般的な意味でのコンピュータであり、CPUやメモリから構成され、所定のプログラムが稼働することによって上記管理手段を構成する。具体的な構成の例を後の
図11等で詳細に説明する。
【0077】
1−4 中継端末
本実施例では、上述したバス10、バス停12、運行管理者16らは、その地域に属する端末と呼ばれる構成である。本実施の形態では、この地域をカバーする端末群をグループと呼ぶ。この結果、バス10、バス停12、運行管理者16らは、このグループを構成し、各バス10等は、そのグループに「属する」と称する。
【0078】
一方、中継端末20は、これらとは異なり、複数のグループに関わる装置である。言い換えれば、複数のグループ間の橋渡し、文字通り「中継」を行う装置である。そして、バス10と、この中継端末20とは、バスと中継端末間通信で通信を行い、地域内情報のやりとりを行う。
【0079】
この中継端末20は、バス10やバス停12等と比べて、比較的遠距離の通信を行えるという特徴を有する。バス10やバス停12においては、比較的小規模の端末であり、同一グループに属する端末同士が近づいた場合に通信を行うように設計・構成されている。近年、そのような近距離の通信は、広く利用されており、それらの技術・手段を用いれば、バス10やバス停12に備えられる機器を構成することは困難ではない。
【0080】
中継端末20の意義
しかし、このような近距離の通信能力のみ備えた端末であるバス10やバス停12だけでは、広範囲に地域(例えば、村など)が分散しているような状況下において、その複数の村を含む地方の地域内情報を、その複数の村を含む地域に拡散させることは困難であると考えられる。
【0081】
その理由は、地方においては、町や村が離間しているので、バス10やバス停12が接近する場合が非常に希であったり、又は全く近づかない場合も想定されるからである。このように、情報の担い手であるバス10が近づかない限り地域内情報の拡散が行えないので、ある程度の距離の通信が可能な中継端末20があることが望ましいのである。
【0082】
※本実施の形態は、基本的に、いわゆる「インフラレス」を前提としている点に留意されたい。そして、その地域内を移動するバス等の「もの」(又は「ひと」)によって、地域内情報をその地域で拡散させることを本実施の形態の目的としている点に留意されたい。
【0083】
したがって、
図1に示すように、中継端末20は例えば公共施設などに設置されることが好ましい。各市町村の境界付近には公共施設が位置することが多いからであるが、他の施設や他の交通施設等でも好適である。
【0084】
バス10やバス停12だけでも、「次のバスは何分後くらいにくる」「次のバスは市役所前を通過した」等の地域内情報を拡散させることは可能であると考えられる。しかし、その市町村を含んだ、バス網全体の地域内情報である「○○区間で渋滞発生」「○○区間は10分の遅れ、一方□□区間では交通事故発生、復旧は未定」等の全体的な地域内情報の拡散を行うことはできない場合が想定される。各村が離間しており、バス等がすれ違わないためである。
【0085】
このような状況下にも、上記中継端末20を介して離間した村の間での地域内情報をやりとりすることによって、バス網全体に及ぶような地域内情報の拡散をすることが可能となる。
【0086】
本実施例では、中継端末20は、
バスと中継端末間通信を行う通信手段(無線モジュール)と、
地域内情報を記憶する記憶手段と、
地域内情報を管理する管理手段であって、通信手段を制御して地域内情報を送受信させる管理手段と、
が、一般的には備えられている。そして、中継端末20の通信手段は、バス10等に比較して、より遠隔の通信が可能である。その結果、必ずしも「すれ違う」ことや「バス停に停車する」等の近傍に近づかなくても、多少遠距離でも通信が可能であるので、離間した村の間でも地域内情報を拡散させることが可能である。
【0087】
この中継端末20は、バス20等の通信可能な相手先がある程度の近傍に近づいた場合、上記管理手段が、通信手段を制御して、地域内情報の送受信を行う。その動作は、基本的に上記バスと同様である。すなわち、自分が記憶していない地域内情報を、相手が記憶している場合は、その地域内情報を受信する。一方、相手が記憶していない地域内情報を、自分が記憶している場合は、自分の地域内情報を相手に送信する。
【0088】
場合によっては、全く送受信が行われない場合もあるし、場合によっては双方向に地域内情報の送受信が行われる場合もある。
【0089】
具体的な通信の流れやタイミング等は、後に
図6、
図10等で詳細に説明する。ここでは、アプリケーション的・機能的な観点から、その動作の趣旨・意義を説明している。
【0090】
また、この管理手段も、一般的な意味でのコンピュータであり、CPUやメモリから構成され、所定のプログラムが稼働することによって上記管理手段を構成する。具体的な構成の例を後の
図11等で詳細に説明する。
【0091】
このように、本実施の形態は、原則として「インフラレス」を前提としており、特に、用いる端末を、基本的に2種類想定している点が本実施の形態の特徴的な事項である。
【0092】
その1種類目は、近距離の通信が行える手段を備えた上記バス10や、バス停12、運行管理者16等である。ところが、そのような端末だけであると、少々離間している村等を結ぶような地域に渡って地域内情報を拡散することは困難であるので、ある程度の距離の通信が行える手段を備えた中継端末20を、2種類目として設けたものである。
【0093】
例えば、複数路線を有するバス会社であって、海岸を通る海岸周遊路線と、山の上を通る山岳登山路線と、を有する会社では、両路線が離間しており、近傍に近づいた場合にのみ通信が行われる仕組みだけでは、互いに通信が行われない場合も生じる。しかし、そのバス会社にとっては、複数路線にまたがってデータの拡散を行いたい、例えば広告を複数路線にまたがって拡散させたいという場合が生じる。このような場合に複数のグループ(複数の地域)に属しうる上記中継端末20を用いて、複数の地域間(グループ間)で地域情報の拡散・やりとりを行うことが可能となる。
【0094】
1−5 実施例1の構成の留意点・用語について
(1)運行管理者16の構成の例
また、運行管理者16は、一般に、複数のバス路線の管理を行っていることが好ましい。そのため、運行管理者16に関しては、多くの場合、複数のグループ(複数のバス路線に属している(参加している))ように構成することが好適である。このように構成すれば、複数の路線の地域内情報(バスロケーション情報等)が取得可能である。
【0095】
なお、運行管理者16のようなグループ端末(バス10、バス停12等)は、全てのグループに関わるわけではないので、その点、中継端末20とは異なる。しかし、運行管理者16のようなグループ端末(バス10、バス停12等)は、1個又は2個以上のグループに「属する(参加する)」ことができる。グループに参加する手続や処理は後に詳述する。
【0096】
一方、中継端末20は、本来的に(最初から)全てのグループに関わる端末であり、全てのグループの信号、地域内方法を中継・拡散に関与する。
【0097】
(2)用語:「地域」、「グループ」について
地理的・地勢的な観点からの村、町、海岸周遊路線の沿線地域、山岳登山路線の沿線の団地地域等、を、「地域」と呼ぶ。
【0098】
一方、グループとは、その地域内情報の種類を表す。グループは、種々の観点からの種類であり、例えば地理的な情報と密接な関連性を有する場合がある。例えば、バスの運行状況という「種類」のグループが挙げられる。このグループは、主に、バス10、バス停12、運行管理者16等の集合によって、拡散されるものである。このバスの運行状況という地域内情報を取得したい端末(の所有者、管理者)は、そのバスの運行状況というグループに「参加」して、そのバスの運行状況という地域内情報を取得することができる。
【0099】
グループは、地理的な観点からの種類であることもあるし、その他の種類であることもある。例えば、後述するようにマンションの住民という種別からのグループもあるし、また、新製品情報という「商品」から見た種類のグループもある。
【0100】
例えば、新製品情報というグループに参加すれば、新製品情報という地域内情報を取得することが可能である。
【0101】
なお、中継端末20は、後述するように、そのシステムIDでカバーされる範囲内の全ての地域内情報を取り扱っているので、グループに参加するという概念は持っていない。システムIDについては後に詳述する。
【0102】
また、本実施の形態の端末間通信システムにおいては、後述するように、それぞれのグループにそれぞれ時間のスロットを割り当てて、グループ内における通信は、そのスロットで行わせるように構成している。このような具体的な通信のシステム構成については後述する。
【0103】
実施例2 アプリケーション例2:地域情報配信:平時配信コンテンツと、災害緊急情報の配信
図2には、本発明の好適な実施の形態の他の1例である「平時コンテンツと、災害緊急情報の配信」のサービス例の説明図が示されている。
【0104】
平時配信コンテンツと災害緊急情報
図2に示されたサービスにおいては、実施例1と同様に情報の拡散を行うが、災害が起きていない平時の際には、既存のWebからデータを取り込んで、それを「平時配信コンテンツ」と称して、その地域に拡散させている。具体的には、
図2に示すように、運行管理者16がインターネット23を介して、Webコンテンツ24を取得し、取得したWebコンテンツを平時配信コンテンツと呼び、地域内に拡散させている。拡散の仕組みは、上記実施例1と同様である。
【0105】
そして、災害が発生した場合には、この災害緊急情報を地域内情報の一種として拡散するのである。この災害緊急情報の発信は、運行管理者16が実行する。具体的には、運行管理者16のシステムの操作者が、災害緊急情報を入力することによって、その後実施例1と同様の処理によって、地域内情報(災害緊急情報)が、その地域内に拡散するのである。
【0106】
地域内情報を取り扱える装置の拡大
さらに、実施例2では、自動販売機26も、グループ内の端末の一つとして備えられており、近くをバス10が通過することによって、地域内情報が、この自動販売機26に提供される。本実施例2の自動販売機26は、上述したバス停12等とほぼ同様の構成を採用している。自動販売機26の場合は、その自動販売機26に商品を定期的に納入するトラックがくる場合がある。この場合、そのトラックも上記バス10と同様の機能を備えさせておくことが好ましい。そのように構成すれば、トラックがその自動販売機26を訪れるたびに、地域内情報をその自動販売機26に送信することが可能となる。
【0107】
さらに、実施例2では、利用者30が保有するスマートフォン32から地域内情報を読み取ることができるように構成している。このためには、例えばバス停12の上記通信手段が近辺にスマートフォン32が位置することを検知した場合、バス停の上記記憶手段内に記憶されている地域内情報をそのスマートフォンに送信するように構成することが好ましい。ここで、スマートフォン32は、特許請求の範囲の携帯端末の好適な一例に相当する。
【0108】
また、バスが近傍に位置した場合と同様に、スマートフォン32内に新しい地域情報(すなわち、そのバス停12の記憶手段に記憶されていない地域内情報)が存在した場合には、その新しい地域内情報を、そのスマートフォン32から受信することも好適である。このように構成することによって、そのスマートフォン32の保有者30は、拡散させたい地域内情報を本グループのシステムに載せることができ、その結果その地域に情報を拡散させることが可能となる。
図2では、このような利用者30a、30b、30cが描かれており、彼らが保有するスマートフォン32a、32b、32cが描かれている。
【0109】
利用者30aは、
図2に示すように中継端末20の近傍に位置する。この場合、実施例2の中継端末20も、上記バス停12と同様に、バス10に対して地域内情報を送信するのと同様にして、近傍のスマートフォン32aに対して地域内情報を送信するのである。この結果、スマートフォン32aの保有者である利用者30aはその地域の地域内情報を見ることが可能である。また、
図2に示すように、中継端末20は所定のビルや施設に設けられているが、そのビルや施設内にはディスプレイ20aが設けられている。そして、中継端末20はその内部の記憶手段に格納されている地域内情報をそのディスプレイに常に表示している。このような構成によって、そのビルや施設を訪れた人々は、ディスプレイ20aを介して、地域内情報を見ることができるのである。
【0110】
なお、同様のディスプレイは、バス10や、バス停12に設けておき、同様に地域内情報を表示させておくことが好ましい。そのように構成すれば、バスに乗車した人やバス停でバスを待つ人は、地域内情報をそのディスプレイを介して見ることができる。特に、地域内情報として、バスの運行状況がディスプレイに表示されれば、バスを待っている人々やバスに乗車している人にとって非常に有益な情報となる。
【0111】
また、利用者30bは、バス停12の近傍に位置しており、その保有するスマートフォン32bを介して、バス停12から地域内情報を受信することができることは上で述べた通りである。
【0112】
また、利用者30cは、
図2に示すように、自動販売機26の近傍に位置する。この場合、実施例2の自動販売機26は、上記バス停12と同様の仕組みで、バス10に対して地域内情報を送信するのと同様にして、近傍のスマートフォン32cに対して地域内情報を送信するのである。この結果、スマートフォン32cの保有者である利用者30cはその地域の地域内情報を見ることが可能である。
【0113】
地域内情報の種別、コミュニティ(グループ)への参加
地域内情報は、情報の種別等によって区別されていることが一般には好ましい。上記
図1や
図2の例では、主としてバスの運行情報を地域内情報の例として説明してきた。バスの利用者達は、このような地域内情報(バスの運行状況コミュニティ)の閲覧グループに参加して、バスの運行状況という地域内情報を見ることができるのである。このように地域内情報には種別が設けられており、映画・演劇情報を見たい人は、その映画・演劇のグループに参加すれば、映画・演劇の地域内情報を見ることが可能である。
【0114】
そのようなグループへの参加は、
図7等において後述する。
【0115】
なお、利用者30は、その保有するスマートフォンに、地域内情報を閲覧するためのプログラムをインストールして地域内情報にアクセスするが、このプログラムが、参加しているグループを認識し、参加しているグループに関する情報のみを取得して表示することが好適である。
【0116】
また、上述したバス停12では、バス10の運行状況を主とした地域内情報をディスプレイに表示することが好ましく、また近傍のスマートフォン32bに送信することが好ましい。バス10も同様である。すなわち、バス停12や、バス10は、バスの運行状況を閲覧するグループに参加しているのである。
【0117】
一方、中継端末20は、上述したように、全てのグループの地域内情報を取り扱う者であるが、必ずしも、中継端末20のディスプレイ20aで全てのグループの情報を表示することは現実的でないことも多い。実際には、中継端末20のディスプレイ20aでは、その中継端末20が設置されているその施設が映画館であれば映画の情報を表示することが好ましく、駅であれば電車の運行状況や駅ビル内の特売情報等をディスプレイ20aで表示することが好ましい。
【0118】
このように、そのグループ内の各端末の性質に応じてお好みの地域内情報を表示し、また見ることができるように構成することが好ましい。
【0119】
実施例3 アプリケーション例3:地域コミュニティ情報共有
図3には、本発明の好適な実施の形態のさらに他の1例である「地域コミュニティ情報共有」のサービス例の説明図が示されている。
【0120】
ここでいう地域コミュニティは、あるマンションに居住している居住者のグループであり、その居住者がその居住者コミュニティに参加することによって、そのマンションに関連する地域内情報を取得することが可能になるものである。このコミュニティに、本発明のシステムのグループを適用して、コミュニティ内の交流を図ることができる。
【0121】
本実施例3では、地域回覧板や、監視、見守りのような地域情報の拡散を行うことを説明する。
【0122】
図3に示されたサービスにおいては、まず、マンションに隣接する児童公園などの公園監視42が示されている。このゴミ置き場監視44のために、これまで述べてきたバス停12やバス10等と同様の装置がその公園に設置されている。上述したバス停12と同様に人感センサが備えられており、その公園内にいる人の人数等の情報が地域内情報として拡散されることになる。その他、人感センサに加えて、監視カメラを備えさせることも好適である。この結果、監視カメラで撮影した公園の画像データが地域内情報となり、拡散の対象となる。
【0123】
また、
図3に示されたサービスにおいては、マンションに隣接して設けられたゴミ置き場監視44が示されている。このゴミ置き場42のために、これまで述べてきたバス停12やバス10等と同様の装置がそのゴミ置き場に設置されている。上述したバス停12と同様に人感センサが備えられており、そのゴミ置き場にいる人の人数等の情報が地域内情報として拡散されることになる。その結果、ゴミ置き場で何か事件が起きる可能性を知ることができる。もちろん、上記公園監視42と同様に、人感センサに加えて、監視カメラを備えさせることも好適である。この結果、監視カメラで撮影したゴミ置き場の画像データが地域内情報となり、拡散の対象となる。また、ゴミ置き場の画像データが拡散される地域内情報の場合は、ゴミの回収が終了したか、それとも未収であるのかを知るために有用であり、ゴミ出しのタイミングを住民が知ることも可能となる。またさらに、ゴミの出し方の違反等を見つける際の有用な情報として利用することも考えられる。
【0124】
本実施例3では、そのマンションに中継端末20が設けられており、その中継端末20から本グループに属する各端末(公園監視42のための端末、ゴミ置き場監視44のための端末など)と直接地域内情報が送受信される。上述したように、中継端末20は、上記
図1のバス停12やバス10と異なり、必ずしも近傍でなくても、同じグループ内の相手方の端末がある程度離間している場合でも、地域内情報の送信・受信を行える端末である。よって、実施例3(
図3参照)においては、マンションに備えられている中継端末20を中心にして、公園監視42のための端末や、ゴミ置き場監視44のための端末との間で地域内情報の送受信を行い、拡散を行っている。
【0125】
また、
図3に示されているサービスにおいては、端末グループによる回覧板という情報の拡散の仕組みが採用されている。なお、
図3に示す端末のグループを、便宜上端末グループと呼ぶ。すなわち、端末グループとは、
図3に示されている端末群である。
【0126】
このような回覧板という情報拡散の仕組みは、
図3に示すように複数の端末40(40a、40b、40c)の間で、地域内情報の送受信を行い、地域内情報の拡散を行おうとするものである。この場合の端末40としては、上述したスマートフォン32を利用することも好適であるが、ノートパソコンやタブレット端末等を用いることも好適である。これらの端末40(40a、40b、40c)は、これまで述べたバス停12やバス10とほぼ同様の機能・手段を備えており、近くに他の端末が位置する場合、すれ違った場合等において地域内情報をやりとりするものである。この結果、中継端末20がカバーする範囲外でも、マンションの住民がすれ違うことによって、地域内情報のやりとりが実行されるのである。その結果、いわゆる回覧板の縦覧と同様の作用・効果を得ることができる。例えば、「来月15日に住民の会合があります」等の地域内情報を、マンションの住民に拡散させることができるのである。
【0127】
なお、実施例3(
図3参照)の端末グループによる回覧板のサービスでは、特にその地域内情報を誰に送信したかに関する情報も、地域内情報として取り扱っている。その結果、「来月15日に住民の会合があります」という地域内情報が、誰に渡っているか、まだ誰に渡っていないか、等の情報を知ることができ、回覧板としての機能を十分に発揮することが可能である。
【0128】
このようなことを実現するためには、回覧板の対象となる地域内情報に「回覧」属性が付与されている。そして、
図3の端末グループに属する端末40(40a、40b、40c)の管理手段は、上述したバス停12等の管理手段では説明していない機能を果たしている。
【0129】
すなわち、端末40の管理手段は、回覧属性を有する地域内情報をいずれかの端末40(40a、40b、40c)に送信する場合は、その送信した情報をも地域内情報として内部の記憶手段に格納するのである。その結果、その送信情報も、自動的に、地域内情報として拡散の対象となり、例えば中継端末20のディスプレイ20a等を(例えば町内会の会長さん等が)見ることによって、誰に「回覧」属性が付与された情報が送信されたのかを知ることが可能である。この送信情報とは、具体的には、表のような形式で、誰に受信されたか否かを表す表データとすることが好ましい一例であろう。このような回覧板としての種々の動作は、上述したように、端末40の管理手段が実行する。
【0130】
このように実施例3によれば、同じマンションに住む住民のグループにおいて、そのマンションに特有の情報を住民に迅速に拡散することができる。また、誰が見たのかを知ることができるので、回覧板としての有用な仕組みを構築することが可能である。
【0131】
実施例4 アプリケーション例4:地域内物流業務
図4には、本発明の好適な実施の形態のさらにまた別の1例である「地域内物流業務」のサービス例の説明図が示されている。
【0132】
本実施例4では、自動販売機26に、上述したバス停12と同様の装置・手段が備えられており、バス停12と同様の役割を果たす。また、トラック50に、上述したバス10と同様の装置・手段が備えられており、上述したバス10と同様の役割を果たさせている。
【0133】
本実施例4では、流通業者サービスにおいて、トラック50が、商品の入れ替え等を行うために自動販売機の近傍に立ち寄る。それによって、自動販売機26の装置が上述したバス停12と同様に動作し、地域内情報をトラック50との間で送信・受信を行う。
【0134】
本実施例4でも、地域内情報として種々のものを取り扱うことが可能である。ただし、本実施例4において特徴的な地域内情報(主として取り扱う地域内情報)は、自動販売機26の在庫情報(在庫管理のための情報)であり、この情報が自動販売機26からトラック50に送信される。一方、トラック50から自動販売機26に対しては、他の地域内情報、例えば商品の売れ行きランキング情報やその地方の地震情報等が、自動販売機26に送信される。この売れ行きランキング情報等は自動販売機26のディスプレイで表示することも好ましい。また地震情報などは、自動販売機26で購入を行う利用者30のスマートフォン32に送信することも好適である。
【0135】
グループの重畳について
本実施例4においては、主として、自動販売機26の在庫情報を管理する人々のグループを説明した。しかし、在庫情報の管理を行うグループと、情報を配信するグループと、の2種類のグループが、ほぼ同様の地域・システム上で同時に設定・稼働していることも、本実施例4において特徴的な形態であり、また好適な形態である。例えば、トラック50は、両方のグループの情報を拡散する役割を果たしている。
【0136】
例えば、流通業者としては在庫情報(という地域内情報)を利用して在庫管理を行うグループを構成する。一方、例えば、ジュースの消費者は、新製品ジュースのお知らせや新製品のキャンペーン情報(等の地域内情報)を閲覧するグループを構成する等の、2グループの構成が好適な一例として挙げられよう。
【0137】
上述した実施例1では、説明をしやすくするため、グループは地理的に分離している状態を説明した。すなわち、海岸周遊路線グループや、山岳登山路線グループなどの路線でグループに分けられている例を説明した。しかし、本発明においては、地理的に重なりが大きいグループが2個以上存在していても構わないし、また、全く同じ地域・同じシステム上で異なるグループ(例えば、商店側グループと、顧客側グループ)が同時に存在していても好適である。
【0138】
もちろん、完全に重なっていなくても、一部が地理的に重なっているようなグループが構築されていても問題ない。
【0139】
複数グループへの参加
本実施の形態は、地域内情報の拡散をその目的の一つとする。
【0140】
したがって、本実施の形態で説明・紹介するグループの典型的な一例としては、「情報を配信するグループ」が挙げられる。例えば、新製品の情報の配信や、ジュースの売れ筋ランキング情報配信や、種々の飲食店とのコラボレーション情報、ジュース会社がスポンサーになっているスポーツ選手の情報配信、等種々の情報配信のグループが考えられる。そして、自動販売機26は、これらの情報配信系の複数のグループに参加することが実際好ましい場合が多い。それは、自動販売機26で商品を購入する利用者30が保有するスマートフォン32に、上記のような情報を配信すれば、利用者30にとって利便性の高い自動販売機26であるとの認識が生まれ、売り上げの向上等が見込めるからである。
【0141】
このように、1個の端末が複数のグループに参加する(属する)ことも、本実施の形態では許容している。ただし、実際には、各グループ毎に対応するアプリケーションソフトをそのスマートフォン32にインストールして、各グループの情報が個別のソフトウェアによって個別に取り扱われることも多い。異なる種別の地域内情報が錯綜してしまうことを防止した方が好適であると考えられるためである。
【0142】
もちろん、同一種別であれば、バスの海岸周遊路線グループの運行状況と、バスの山岳登山路線グループの運行状況とを同一のアプリケーションソフトで取り扱うことなどは、許容しても良いと考えられる。
【0143】
なお、1個の端末が複数のグループに参加する(属する)ことは、長時間電源が投入されている必要があり、どちらかと言えば、公共的な場所の端末、例えばバス停12等の端末が多いと考えられる。このように、複数グループへの参加も、本実施の形態では許容している。利用者30個人が保有するスマートフォン32が複数のグループに参加する(属する)場合は、多くの場合、自分で情報を提供するよりも、提供される地域内情報をもっぱら閲覧するという使い方になることが多いと考えられる。
【0144】
※また、上述した実施例1〜4において、各端末間の通信は、種々の方式が採用できるが、例えばいわゆるサブGHz帯域の通信が好ましいし、また広く使用されている2.4GHz等の帯域を使用する通信も好適である。サブGHz帯域の場合は、例えば920MHz帯域等が好ましく、20mW程度でおおよそ300m程度の距離で通信が可能と考えられている。その他種々の周波数帯域、各種の無線方式が利用可能である。
【0145】
実施例5 本端末通信システムの仕様
上記実施例1〜4では、本システムが応用されるアプリケーションの説明を行ったが、それを実現するための技術的な仕様を説明する。
【0146】
(1)システムID、グループ、スロット
上述したように、本システムでは、グループに属する端末群から構成されている「端末間通信システム」である。この端末としては、バス10や、バス停12、スマートフォン32等の「グループ端末」と、複数のグループに関して通信を取り扱う中継端末20とがある。
【0147】
これらの端末からなる端末間通信システムは、グループID単位で、グループで使用するスロット番号を各端末に設定することで通信できるようになる。スロット番号は、スロット周期とスロット時間によって、各端末にアサインされる。これは、システムID単位に割り振られている。
【0148】
また、グループについては同一システムIDに対して複数設定可能としている。
図5には、例えばシステムID60aの関して、グループID62a、グループID62b、グループID62c、を設定する例が示されている。また、グループID62aに関しては、スロット番号64aが割り当てられている(
図5参照)。
【0149】
※なお、各端末は複数のシステムIDが登録できるが、一度に動作できるシステムIDは1個だけである。
【0150】
このシステムIDと、グループIDと、スロット番号との関係を示す概念図が
図5に示されている。このシステムIDについては、本実施例5の(2a)システムIDにおいて後述する。
【0151】
(1a)スロット時間とグループ
スロット時間のグループへの割り当てに関する説明図が
図6に示されている。
図6の例では、あるグループに対して4個のスロット番号が設定されている場合の例が示されている。なお、
図6では、システムID=1の場合の例を示す。そして、そのシステムIDに対して無線チャネルが固定されている(割り当てられている)。
【0152】
(2)システムIDに対する割り当て
このように、本実施の形態では、システムIDに対して使用できる無線チャネルが割り当てられている。
【0153】
図6に示すように、4個の端末がありそれぞれ別のグループに属する場合、4個のスロット(制御スロット)が各端末に(各グループに)割り当てられる。これが
図6に示されている状況である。この場合、所定のスロット周期(例えば5秒)に対して、中継端末の制御スロット、第1の端末の制御スロット(これを制御スロット1と呼ぶ)、第2の端末の制御スロット(これを制御スロット2と呼ぶ)、第3の端末の制御スロット(これを制御スロット3と呼ぶ)、第4の端末の制御スロット(これを制御スロット4と呼ぶ)が割り当てられている。ここでは、それぞれの時間間隔が1秒であり、中継端末の制御スロットとの時間間隔も1秒とすれば、全体のスロット周期が5秒となり、以下、このような時間を例として説明を行う。ただし、これらの時間間隔や全体のスロット周期の数値は一例であり、これに限られるものではない。
【0154】
すなわち、スロットとは、時間スロットの意味である。各制御スロットはスタートの時刻が定められており、その時刻はGPS等の他の手段で、各端末に対して合わせておくのである。例えば、10時00分00秒から中継端末の制御スロットが開始され、10時00分01秒から制御スロット1が開始される〜のように決めておけばよい。ただし、概ねmsecオーダーで(各端末間で)同期がとれていれば、各端末はその周辺の時刻で受信すればよいので、互いの通信は可能である。
【0155】
本発明のシステムは、ある地域内を移動する人やもの(例えばバス10)によって、地域内で地域内情報の拡散を行おうとするシステムである。したがって、リアルタイムに数μsec以内で情報を伝達するようなシステムではないので、端末間の同期のレベルも比較的「粗い」同期(概ねmsec程度)の精度で十分である。
【0156】
例えば、本システムは、回覧板や交通状況等を拡散の対象としており、音声通信等を念頭に置いているわけではない。したがって、数秒程度の伝達時間のずれ等を許容するような情報を地域内情報として拡散することを目的としているので、上記の程度同期がとれていれば十分なのである。
【0157】
実際には、端末の典型的な動作は、他の端末が送信しているものを受信することが主となる。その場合は、上記の時刻のタイミングで制御スロットの時間だけ受信動作を行えばよく、その他の時間はいわゆるスリープ動作をしており、電力消費を抑制することができる。上述のように各制御スロットが1秒間隔である場合、例えば制御スロットの時間は500msecであり、残りの500msecがデータ通信使用時間である(
図6参照)。受信した場合に制御スロットに何も信号がこなければ、それに続くデータ通信使用時間でもデータが送信されないのは明らかなので、データ通信使用時間は、上記の通りスリープ動作となることが好ましい。もし、制御スロットにおいて何らかの送信のアクションがあれば、引き続きデータの受信動作を端末は行う。
【0158】
位置によるグループ構成
さて、本実施の形態で提案するシステムは、主として時間スロットによるグループ構成を説明している。各グループに属する端末同士は、それぞれそのグループに割り当てられている時間スロットを用いて通信を行う。しかし、そのような時間スロットによるグループとは別に、同一システムIDにおいて、位置によるグループ構成も同時に運用することが可能である。
【0159】
この「位置によるグループ構成」を採用する場合は、必ず移動端末と固定端末との双方を含む形でグループが構成される。
【0160】
ここで、移動端末とは、トラック50などの移動するものに設置された端末を言い、固定端末とは、自動販売機26等に内蔵された端末を言う。
【0161】
例えば、
図4において、流通業者の所有するトラック50に設置された移動端末と、固定端末が内蔵された自動販売機26間の通信は、トラック50の移動端末側に自動販売機26の位置情報をシステムプロファイルとして初期設定しておくことにより、行うことができる。このような設定を行うことによって、例えばトラック50が自動販売機26に接近した場合に、自動的に情報のやり取りができるようになる。
【0162】
時間スロットによるグループ構成では、定期的に制御情報を送信することでお互いの端末を検知しているが、この「位置によるグループ構成」の場合は、移動端末の現在位置が固定端末の位置に近づいたというイベントによって、お互いの検知を行い、データ通信を実施できる(開始している)のである。
【0163】
このように、所定の「位置によるグループ」に属する端末は、「移動」か「固定」の属性に分類され、制御情報パケット内にその属性が付加されており、原則として、移動端末と固定端末間でのみ同一グループ内通信が実施される。
【0164】
移動端末は自らの位置を把握しており、同一グループに属している固定端末の設置している位置(エリア)に近接した場合に制御情報パケットを送信する。したがって、移動端末は、自己の位置を知る手段、例えばGPS機能を所有していることが前提となる。GPS機能は、一般にGPSセンサ等と呼ばれる手段で実現される。このGPSセンサ及びそれを用いて、自己位置を検知する手段は、特許請求の範囲における位置検出手段の好適な一例に相当する。また、移動端末は、自分が属するグループに属する固定端末の設置している位置(エリア)の情報を予め自分の内部の記憶手段に格納しており、適宜この位置(エリア)の情報と自己の位置とを比較することによって、自己が固定端末に近接しているか否かを知ることができる。
【0165】
また、この固定端末の位置(エリア)に関する情報は、グループ内の「地域内情報」と一種としてグループ内で拡散されることも望ましい。このように構成すれば、新しい固定端末がグループに参加した場合でも、その位置(エリア)がグループ内に自動的に拡散される。
【0166】
一方、固定端末は移動端末からの制御情報を受信した場合のみ、制御情報パケットを送信する。同一グループの移動端末からの制御情報パケットを受信できない場合は通信動作を行わない。このような手順により、移動端末は固定端末の存在を検知できる。その後のデータのやり取りは時間スロットによるグループに属する端末と同一の動作を行う。
【0167】
なお、「位置によるグループ構成」の場合でも、定期的に制御情報を送信することでお互いの端末を検知する手法を併用することも好ましい。
【0168】
(2a)システムID
システムID(
図5、
図6参照)とは、このシステムの一つ一つのIDであり、多くの場合無線の通信チャネルとほぼ対応し、各システム毎に、スロット周期の数値や、スロットの数等が定められる。異なるシステム(ID)は、また異なるスロット周期、異なるスロット数(プロファイル)として決定することができる。
【0169】
本実施の形態では、1個のシステムIDで複数のグループが稼働することができる。例えば、海岸周遊路線グループや、山岳登山路線グループ等である。
【0170】
上述したように、別のシステムID(例えば2)を、他のチャネルとして割り当てることができ、その場合、上述のように、システムID=2のチャネルのプロファイルをID=1とは全く異ならせることが可能である。
【0171】
例えば、上記の例(システムID=1)ではスロット周期5秒で、4個の制御スロットを準備したが、システムID=2のチャネルではスロット周期100秒で制御スロット99個(各制御スロットの時間間隔は1秒である)とすることも好適である。この場合、制御スロットの時間間隔はともに1秒としたが、もちろん他のシステムID(=他のチャネル)では、他の時間間隔(例えば4秒)とすることももちろん好適である。
【0172】
グループとは上述のように、海岸周遊路線グループや、山岳登山路線グループ、又は、マンションの地域コミュニケーションのグループ等であり、各グループには、所定のスロットが割り当てられる。例えば、海岸周遊路線グループは、制御スロット1、山岳登山路線グループは制御スロット2、マンションの地域コミュニケーションのグループは、制御スロット3のように割り当てられる。
【0173】
あるグループ(バスの海岸周遊路線グループ等)に属する端末は、そのグループIDを内部に保有しており、そのグループに割り当てられたスロットを用いて通信を行う。なお、同じグループに属する端末は、同一グループ端末と呼ぶ。
【0174】
(3)このように、同一グループ端末は制御情報パケットをスロットタイミングに合わせてブロードキャストで送受信する。つまり、各端末は、自分が属するグループが使用する制御スロット(及びそれに引き続くデータ通信使用時間:
図6参照)を用いて他の端末と通信を行うのである。ここで、端末とは、スマートフォン32等も、これまで述べたバス10等と同様に、端末の一種である。
なお、上述したように、位置によるグループ構成の場合は、移動端末が自己の位置が固定端末の位置(エリア)の近傍に位置した場合に、制御情報パケットをスロットタイミングに合わせてブロードキャストで送受信する。そして、固定端末はこれを受信した場合のみ、制御情報パケットを送信するのである。
【0175】
なお、
図6に示すように、スロット番号には、複数のグループIDがアサインされる場合もある。すると、そのスロット番号は、複数のグループが使用することになるが、その場合は、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)のアルゴリズムで衝突を回避することが好適である。これによってそのスロットを共用利用することができる。
【0176】
なお、通信自体は種々の方式を採用することが可能である。いわゆるIEEE802.11を採用することも好適であるし、その他種々の規格、900Mhz帯等を用いることも自由である。
【0177】
このように、本実施の形態では、システムとして、いわゆるTDM(Time Division Multiplexing)を行っている。すなわち、時間をスロットで分割し、各スロットをそれぞれのグループが使用することになる。そして、各スロットにおいて、同じグループに属する種々の端末がデータの送信を行おうとする。そして、もし衝突(例えば、他のグループに属する端末との衝突など)が生じれば、その際はCSMAで解決しようとするものである。
【0178】
また、
図6に示されている各スロットの制御スロット時間とデータ通信使用時間は、自由に設定可能である。例えば、スロットの時間が1secであり、その中で、制御スロットが500msec、データ通信使用時間が500msecでもよいし、制御スロットが300msecであり、データ通信使用時間700msecでもよい。
【0179】
また、
図6に示すように、中継端末20用に中継端末制御スロット(及びそれに引き続くデータ通信使用時間)がスロット周期中の最初のスロットとして設けられている。所定のグループに属する端末であって、中継端末20以外の端末は、自分が属するグループが使用するスロット部分について受信を行い、他のグループが使用するスロットのタイミングでは、通信手段はOFF動作して消費電力の低減を図っている。しかし、その中継端末以外の端末でも、
図6に示した最初の中継端末制御スロットの部分の時間帯において、通信手段がON動作して、そのデータの受信状態になる。これは、中継端末20は、上述したように、複数のグループに属するので、中継端末20以外の全ての端末は、この中継端末制御スロットにおいて、通信手段をON動作させてデータの受信動作を行っている。すなわち、中継端末20からは全てのグループのデータが送られてくる可能性があるので、この中継端末制御スロットは、中継端末20以外の全ての端末でも受信状態に置かれるのである。
【0180】
一方、中継端末20は、中継端末制御スロットだけでなく、自分が関与する複数のグループが割り当てられている制御スロット(
図6参照)においても通信手段をON動作させて、データの受信状態にある。これは、中継端末20は、他の端末と異なり、複数のグループに関与し、複数のグループの信号処理を行うためである。
【0181】
(4)端末バッファ管理方法
各端末においては、上述のように通信手段が備えられているが、そのバッファの制御は、以下のように実行する。
【0182】
(※ここで、バッファとは、その端末の記憶手段内に保持されているバッファであり、地域内情報がそのバッファに格納されている。特に、バッファのことを、端末バッファと呼ぶ場合もある)
まず、一番最初にデータを送信する端末は、データに送信時間を付加して送信する。一方、このデータを受信した端末は、データの転送時間を管理しており、送られてきた送信時間から、バッファがフルになるか否かを判断する。例えば、グループ内で同期転送可能な最大データ数が定められており、その数と転送可能時間の制限(データ通信使用時間等から制限される)から、バッファを管理することができる。そして、どちらかの制限に達した時点で、そのデータの転送を停止する。
【0183】
(5)グループ端末間通信
端末バッファで管理しているデータに差分データがあれば、そのグループに割り当てられたスロットにおけるデータ通信使用時間(
図6参照)に、差分データを端末間でブロードキャスト送信する。2台以上の端末が同じデータを持っていた場合は、端末IDの若い端末が差分データを送信することにする。
【0184】
また、そのスロットの制御スロット時間内(
図6参照)に制御情報を受信した端末すべてのデータに差分がなければ、データ通信は行われない。つまり、グループ端末間で保有するデータが全て同じなので、地域内情報の拡散が(通信可能な範囲内では)十分に行われている状況である。
【0185】
なお、グループ端末間通信とは、所定の同一グループに属する端末群が、地域内情報の拡散その他の目的で行う端末間の通信である。
【0186】
例えば、所定の端末(例えば中継端末20)の近傍に所定の他の端末(例えばバス10)がやってきた場合に、そのバス10が新しい地域内情報を保持している場合は、その新しい地域内情報が、中継端末20に送信される。その後(例えば10分後)、他のバス10が中継端末20の近傍にやってきた場合は、中継端末20からその他のバス10に地域内情報が送信される。このようにして、そのグループ内で、地域内情報の拡散が実行される。
【0187】
位置によるグループ構成の場合
本実施の形態では、基本的には、自己の近傍に他の端末が近づいたことを、無線通信が可能になったか否か、通信可能な範囲に入ったか否かで判断している。
【0188】
一方、先に述べた位置によるグループ構成の場合は、移動端末(例えばトラック50)が、自分の位置が固定端末(例えば自動販売機26)の位置に近づいた場合に、通信を開始する。換言すれば、自己の位置を以て「他の端末に近づいた」と判断しているのである。判断した後の動作は、同様の動作となる。
【0189】
差分データ
差分データとは、ある端末がその内部の端末バッファ(記憶手段内のバッファ)に記憶している地域内情報と、他の端末がその内部の端末バッファに記憶している地域内情報との差を言う。
【0190】
ある端末において、自己の端末が記憶しているが、他の端末が記憶していない地域内情報があれば、それが差分データであり、これを第1種差分データと呼ぶ。反対に、自己の端末が記憶していないが、他の端末が記憶している地域内域内情報がある場合も、これも差分データであり、便宜上、第2種差分データと呼ぶ。
【0191】
第1種と第2種の差分データは、いずれか一方のみ存在する場合もあれば、双方が存在する場合もある。双方が存在する場合は、地域内情報は送信及び受信の双方向の通信処理が行われる。もちろん、いずれの差分データも存在しない場合は、地域内情報の送信・受信は行われない。その詳細な動作を次節で説明する。
【0192】
(5a)端末内の情報管理と更新メカニズム
グループ端末内の情報管理およびその更新メカニズムの説明図が
図10に示されている。
図10に示すように、スロット時間内に、同一グループに属する端末は、制御スロット時間(
図6参照)に制御情報パケットを交換する。この制御情報パケットから、差分データの情報を確認することができる。
【0193】
差分データについては(差分データの存在が判明した場合は)、以下のルールに基づき、上述のようにブロードキャストで情報(その差分データ)を交換する。
【0194】
(i)更新スロット周期番号を比較し、他の端末が更新していないスロット周期番号を認識した場合、データ通信時間に該当データをブロードキャスト送信する。
【0195】
(ii)2台以上の端末が同じ差分データを認識した場合、つまり、その差分データを保有する端末が2台以上存在した場合は、端末IDを比較し、端末IDの若い方がブロードキャスト送信を行う。
【0196】
(iii)比較した結果同一であった場合は(差分データが存在しなかった場合は)、データの送受信は行われない。
【0197】
この様子が
図10の左部に模式的に示されている。この図は、端末内に格納されている地域内情報の蓄積の様子が模式的に示された図であり、「過去データ」がこれまでに蓄積された地域内情報である。その上の部分が、今回の周期のスロットでやりとりされる情報を示している。この
図10に示されるように、スロットでやりとりされる情報量には制限が設定されている。その制限は、端末内の情報蓄積時間と、管理データ数の制限等から設定されている。ここで、情報蓄積時間の設定は、情報の更新間隔を見積もって行われる。例えば、バスの位置管理情報(バスロケ情報と称する)の場合は、30秒〜1分が好適である。一方、広告の場合は1時間程度が好適である場合が多い。
【0198】
(6)グループ端末
中継端末20以外の端末をグループ端末と呼ぶことは上述したとおりである。このグループ端末は、参加しているシステムID、グループID、グループが属するスロット番号、スロット周期時間、スロット制御時間、スロットデータ時間をシステムプロファイルとして管理保存している。また中継端末20の情報も、このシステムプロファイルに組み込まれている。
【0199】
なお、端末のシステムプロファイルは、後述するグループ参加セッションで更新される。なお、端末はグループに「参加する」手続・処理を経て、そのグループに「属する」ことになるが、実際は「参加」と「属する」とは同様の意味で用いられる。
【0200】
また、グループに「参加」することによってグループのメンバーのリストに「登録」されるが、この「登録」も「参加」とほぼ同様の意味で用いられている。
【0201】
(7)中継端末20
端末の属性は、これまで述べてきたように、中継端末20とグループ端末(バス10等)に分けられ、上述のようにグループ端末は1個又はそれ以上のグループに参加しうる端末である。これに対して、中継端末20は、本来的に全部のグループの信号を扱うので、本来的にはグループに参加するという概念を持っていない。しかし、中継端末20は、全てのグループの信号を扱うので、複数の全部のグループに参加している、という言い方も場合によっては好適である。
【0202】
そして、中継端末20は全グループ情報をスヌーピングして蓄積しておき、広範囲に情報拡散するための役割を持つ。そのため、中継端末20はシステムID単位で設置されており、同じシステムIDを持つ全グループのデータを蓄積管理している。中継端末20は制御スロット時間(
図6参照)において、データスロット時間に配信するグループID情報をブロードキャスト送信する。
【0203】
配信するグループIDの選択方法は、前のスロット周期における制御情報パケットをスヌーピングすることによって、データ更新の必要のあるグループ端末の存在を確認して決定する。グループ端末は自分のグループIDが含まれていればデータスロット時間に中継端末20からのブロードキャストデータを受信する(この際、グループIDでフィルタリングを実行している)。
【0204】
中継端末20とグループ端末の位置づけ
なお、本発明の原理的な観点からすれば、グループ端末だけで地域内情報の拡散を行うことは可能であると思われる。しかし、実際の運用に当たっては種々の状況が考えられ、特に、複数のグループが離間してしまう場合や、バス10等が1日1回しかすれ違わない場合等も想定される。その場合は、地域内情報の効率的な拡散が実現できない可能性も否定できない。そこで、実際には、中継端末20のような構成が存在することが望ましいと考えられる。
【0205】
本実施の形態では、特に中継端末20が全てのグループの通信のを取り扱いをしている場合を説明する。なお、中継端末20は、1個のシステムIDの下にある全てのグループを取り扱うが、中継端末20自身は、1個のシステムIDの下に複数個あってもかまわない。
【0206】
実施例6 通信の具体的な流れ
(1)制御スロット時間のセッションによるグループ参加方法
図7には、制御スロット時間のセッションによるグループ参加動作を示すタイムチャートが示されており、この図において、上から下に向かって時間が経過する。
【0207】
まず、あるグループに所定の端末が参加する場合の動作を説明する。これは、例えば、海岸周遊路線グループのバス10(
図1)の台数が増えた場合や、利用者30が自己のスマートフォン32を新たに海岸周遊路線グループに参加させようとする場合、等である。
【0208】
ところで、各グループは新しく作成する際に、オーナーとなる端末が必要である。オーナー端末70aが、グループID等を定め、そのグループ(例えば海岸周遊路線グループ)を作成するのである。したがって、オーナー端末70aは、原則として固定である。
【0209】
図7の左側には、このオーナー端末70aが示されている。そして、そのグループに参加しようとする端末70bが
図7の右側に示されている。
【0210】
まず、参加しようとする端末70bの操作者は、その端末70bをグループ参加モードに切り替える。その際、その端末のディスプレイに、参加可能なグループの一覧が表示されることが好ましい。これは、グループ参加モードになると、その端末70bは、周囲を検索し、グループ参加要求を受け付けることができるオーナー端末70aを見つけ出す。このオーナー端末70aは、
図7では1個のみ示されているが、2個以上発見されるかもしれない。いずれにしても見つけられたオーナー端末70のグループIDが、端末70bのディスプレイに表示され、操作者はそこから参加したいグループを選択する。引き続き、自分側(参加者側)の情報を入力すると、その参加者側の端末70bは、グループ参加要求メッセージを送信する(
図7参照)。
【0211】
(※なお、本実施例(
図7)では、参加者側の端末70bがオーナー端末70aを探す構成としたが、オーナー端末70aが定期的に(周期的に)参加者を募るグループ参加告知メッセージを周囲に発信することも好適である。参加者側の端末70bは、このグループ参加告知メッセージを受信することによってグループ参加モードに移行するのである。)
さて、
図7に示すように、グループ参加要求メッセージをオーナー端末70aが受信すると、オーナー端末70aは、参加端末70bの認証を行う。そして、参加しようとする端末70bをそのグループのメンバー(のリスト)に加えて、グループID、スロット番号等の詳細情報を参加者側の端末70bに送信する。参加者側の端末70bは、このグループ参加応答メッセージを受信し、その中のグループID、スロット番号等の詳細な情報を受信し、内部に記憶させる。その後、これらの情報を用いてそのグループに参加して、拡散された地域内情報の受信等を実行するのである(
図6等)。
【0212】
なお、所定の端末があるグループに参加する場合は、
図7に示すような無線通信による参加も可能であるが、その他の手段で参加することも好適である。ICメモリで、必要な情報をやりとりすることも好適であり、オーナー端末70aと有線で接続してグループ参加に必要な情報をやりとりしても好適である。またさらに例えば、NFCで参加手続を実行することも好適である。
【0213】
(2)中継端末120とグループ端末80間通信
図8には、中継端末120とグループ端末間通信の動作を示すタイムチャートが示されており、この図において、上から下に向かって時間が経過する。
【0214】
図8の左側には中継端末120が描かれており、右側には、3個の異なるグループに属する端末80a、80b、80cと、が描かれている。例えば、端末80aは海岸周遊路線グループに属する端末であり、端末80bは、山岳路線グループに属する端末である。また、例えば、端末80cは、マンション住民グループに属する端末である。
【0215】
まず、
図8に示すように、中継端末120が、中継端末制御メッセージをブロードキャストで送信する(図の中継端末制御スロット)。つまり、配信を行うグループIDを通知するのである。グループ端末80a、80b、80cは、これを受信し、どのグループについて送信されるのかを知ることができる。ここで、配信するグループIDは、1回前のスロット周期における各制御スロット(
図6参照)で発信されたグループ情報を中継端末120がスヌーピングして決定する。
【0216】
つまり、1回前のスロット周期においては、情報を出して欲しい端末80が自分の制御スロットにおいて、情報を出して欲しい旨のメッセージを出しておく。これは、要するに、そのグループの端末がそこに存在するので、情報を出して欲しいというメッセージである。このメッセージを中継端末120がスヌーピングしており、上記の通り、その次のスロット周期で配信するグループIDを決定するのである。
【0217】
その後、データ通信時間(
図6の中継端末制御スロットに引き続くデータ通信使用時間)において、最新の更新スロットのグループ情報をブロードキャストする。このような流れによって、中継端末120とグループ端末80間の通信が行われる。このように、
図6の中継端末制御スロットに引き続くデータ通信使用時間は、その中で、グループ1に対する送信時間や、グループ2に対する送信時間等、複数の時間スロットが含まれる可能性がある。
【0218】
なお、このように、地域内情報が「ブロードキャスト」されるのは、受け取る端末が複数個ある可能性があるからであり、ユニキャストでは効率的な地域内情報の拡散が行えないと考えられるからである。
【0219】
また、このように、中継端末120は、そのシステムID下の全てのグループの情報を縦断的に保持するので、そのシステムIDに含まれる全てのグループの端末に対して地域内情報を提供することができるので、効率的に地域内情報の拡散を行うことが可能である。
【0220】
なお、当然ながら、中継端末120は、取得した地域内情報を、その取得したグループIDとともに記憶している。これは地域内情報の拡散を各グループ毎に行うためである。
【0221】
中継端末120は、各グループ毎にそのグループに対応した地域内情報の送信を行うし、また、グループ端末も、自己が属するグループの情報以外の情報は受け取らない(物理的に「受信」できても、内部に記憶・保持はしない)のである。
【0222】
本実施の形態で、このように各グループ毎に地域内情報の拡散を行うのは、セキュリティを確保するためである。しかし、緊急災害情報のように、グループにまたがって拡散を行うように構成することも場合によっては好ましい場合もある。
【0223】
(3)同一グループ端末間通信
図9には、同一のグループに属する端末A90a、端末B90b間の通信の動作を示すタイムチャートが示されており、この図において、上から下に向かって時間が経過する。
【0224】
図9の左側には一方の端末A90aが描かれており、右側には、他方の端末B90bが描かれている。
【0225】
まず、その同一のグループに割り当てられているスロット(制御スロット:
図6参照)において、端末A90aは、制御メッセージをブロードキャストする。この場合、グループIDと、差分データの情報がその中に含まれている。同様にその制御スロットにおいて、端末B90bも、制御メッセージをブロードキャストし、同様にグループIDと差分データの情報がその中に含まれている。
【0226】
このような通信の結果、
図10において説明したように、差分データの情報を確認することが可能である。そして、差分データの存在を確認できた場合は、
図10で説明したように、差分データの送信を一方が行い、他方が受信をすることになる。
【0227】
図9に示すように、端末A90aが差分データを記憶している場合は、その差分データを更新スロット周期番号のグループ情報ブロードキャストで送信する。その結果、他方の端末90bはその差分データを受信し、記憶する。
【0228】
また、他方の端末B90bが差分データを記憶している場合は、その差分データを更新スロット周期番号のグループ情報ブロードキャストで送信する。その結果、一方の端末A90aはその差分データを受信し、記憶する。
【0229】
なお、
図10で説明するように、差分データがいずれも存在せず、同一データであった場合は、データの送受信は行われない。
【0230】
中継端末とグループ端末における、グループへの参加という概念の取り扱いの相違
本実施の形態における中継端末20、120は、どのグループに「属する/属しない」「参加する/参加しない」という概念を有していない。つまり、中継端末20、120は、全てのグループの通信について処理を行っている。
【0231】
一方、グループ端末は、グループに参加するものであり、所定の手続で所望のグループに「参加し」、「属する」のである。参加するグループは、これまで述べたように、1個以上複数個のグループであってもよい。
【0232】
実施例7 基本ブロック構成図
図11には、本実施の形態で使用される端末の基本ブロック図が示されている。これはどの端末でもほぼ同様である。
【0233】
(1)ハードウェア
まず、端末は、その端末の基本的な動作を司るCPU250を有している。このCPU250には、図示されていないUSBインターフェースや、Ethernet(登録商標)インターフェース、ディスプレイアダプタ等が接続される場合があるが、それは各端末の機能・役割に依存する。
【0234】
CPU250には、無線モジュール258が接続しており、さらに無線モジュール258には、アンテナ260が接続されている。
【0235】
無線モジュール258は、特許請求の範囲の通信手段の好適な一例に相当する。
【0236】
また、CPU250と,無線モジュールを258を制御し、
図7〜
図10等で説明した動作を実行させるソフトウェア群(
図11参照、また下記(2)参照))が、特許請求の範囲の管理手段の好適な一例に相当する。
【0237】
また、CPU250には、メモリ252と、GPSセンサ256と、が接続されている。メモリ252は一般的なメモリであり、ソフトウェアが読み取られて実行されたり、また、必要なデータがこのメモリ252に格納される等の役割を果たす。GPSセンサ256は、一般的なGPSセンサであり、その端末の位置を求める手段である。また、GPSセンサ256から時刻を得ることもできる。本実施の形態では、端末は、この得られた時刻情報を用いてスロットの時刻等を判断する。しかし、他の手段を用いて時刻を得ることも好適である。
【0238】
GPSは一般に屋外であれば時刻を得ることができるが、室内・屋内ではGPS電波が得られず時刻を得られない場合もある。そこで、一部の屋外に位置する端末(例えばバス停12や、マンションの屋上の中継端末20等)に、GPSで得られた時刻を周囲の端末に提供する動作を行わせることも好適である。室内・屋内に位置する端末は、これらバス停12等を経由して時刻情報を得る。この場合、時刻情報も地域内情報の一種と考えて拡散の対象とすればよいので、時刻情報を他の端末に伝えることは容易である。
【0239】
(2)基本ソフトウェア
また、本実施の形態に係る端末通信システムを実現するための各種の基本ソフトウェアがハードディスクや半導体記憶装置等に格納されている。この基本ソフトウェアは、OS220を中心として、GPS/無線モジュール用のI/Fドライバ230や、外部通信用ドライバ232等から構成されている。GPS/無線モジュール用のI/Fドライバ230は。上述したGPSセンサ256や、無線モジュール258の制御を行う。
【0240】
また、基本ソフトウェアには、本端末通信システムを構成するためのグループ情報同期フレームワーク208が備えられており、ここにシステムを管理するための種々の情報、ソフトウェア、パラメータ等が含まれている。
【0241】
例えば、上述した地域内情報を管理するための情報蓄積管理DB210がこのグループ情報同期フレームワーク208に含まれる。また、上述したように、参加したグループには所定のスロットが割り当てられるが、そのようなスロットや各種のパラメータを格納するシステムプロファイル212等が、このグループ情報同期フレームワーク208に含まれる。なお、DBはデータベースの意味である。
【0242】
ここで述べたように基本ソフトウェアは、端末内のハードディスクや、各種フラッシュメモリ等に格納されている。また、脱着可能な種々のメモリカードに格納しておくことも好ましい。
【0243】
(3)アプリケーションソフトウェア
端末には、基本ソフトウェア以外にも、実際に地域内情報を取り扱うための各種アプリケーションソフトウェアが備えられており、上記基本ソフトウェアと同様に、ハードディスクや各種半導体記憶装置に記憶・格納されている。
【0244】
まず、実際の地域内情報を取り扱うソフトウェアとしては、グループ情報閲覧アプリ200が端末に備えられている。
【0245】
(※なお、本特許では、アプリとは、アプリケーションソフトウェアの意味である)
このグループ情報閲覧アプリ200が、参加しているグループにおいて配信されている情報・拡散された情報を、閲覧している。この情報は、情報蓄積管理DB210において特席管理されている地域内情報である。これによって、利用者は所望の情報を見ることが可能となる。
【0246】
なお、利用者の好適な一例は、例えばバス10の搭乗者である。バス10の搭乗者はバス10の端末のディスプレイを介して地域内情報を閲覧することができる。また、利用者の他の例は、スマートフォン32の利用者30である。スマートフォン32の利用者30は、自己のスマートフォン32(端末の一種)を介して、上記地域内情報を閲覧することができる。また、利用者の他の例は、バス停12でバス10を待っている人達である。この人達は、バス停12の端末のディスプレイで、地域内情報の一例であるバスの運行状況を閲覧することができる。
【0247】
また、端末には、グループ情報配信アプリ202が備えられており、グループ情報(地域内情報)を配信する。すなわち地域内情報をグループ内で拡散させる役割を果たす。この動作は、
図6、
図8、
図9等で説明した内容である。このグループ情報配信アプリ202は、他の端末から受信して情報蓄積管理DBに保存している地域内情報を、他の新しく近づいてきた他の端末に配信する(拡散する)動作を実行する。
【0248】
また、端末には、テスト用アプリ204が備えられており、各種テストが自動的・主導的に行うことができる。
【0249】
また、端末には、グループ参加登録アプリ206が備えられており、グループへの参加や脱退等の動作を行っている。グループに参加した場合(
図7)の各種システムのデータは上述したシステムプロファイル212に保存しておく。なお、グループから脱退する場合は、システムプロファイル212内のそのグループに関する種々の情報が抹消されることになる。
【0250】
なお、中継端末20、120の場合は、このグループ参加登録アプリ206は備えられていない。
【0251】
実施例8 応用例・変形例
これまで述べた実施例1〜7では、中継端末20、120は、グループ端末(バス10、バス停12等)より比較的遠距離の通信が行えると説明したが、その地方の環境・地形・町や村の構成によっては、特に通信能力(通信可能な距離)に差を設ける必要がない場合もある。その場合は、中継端末20、120もグループ端末と同等の通信能力で構成することが好ましい。
【0252】
また、上記実施例2では、災害緊急情報は、運行管理者16が取り扱うとしたが、他のグループ端末が発信を行うように構成してもよい。また、中継装置20、120が発信するように構成することも好ましい。