(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材フィルム上に、シリコーン樹脂を主成分とする吸着層を積層してなる自己貼着性フィルムにおいて、前記吸着層が、1分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び分子中にシラノール基を有する反応性レジンとを含有するシリコーン組成物を白金触媒の存在下で、付加反応により硬化してなるシリコーン樹脂を塗布、硬化して得られるものであり、前記1分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が20,000〜600,000であり、かつ前記ジオルガノポリシロキサンの数平均分子量/1分子中に含まれるアルケニル基の数の比が5,000〜160,000であるとともに、前記シリコーン組成物中の前記反応性レジンの含有量が1〜15重量%であり、前記反応性レジンの重量平均分子量が7,000〜12,000であることを特徴とする自己貼着性フィルム。
前記ジオルガノポリシロキサンが、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサン、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の自己貼着性フィルム。
前記基材フィルムと前記吸着層との間に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を主成分としてなるアンカー層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自己貼着性フィルム。
【背景技術】
【0002】
平滑面を有する被着体に貼ったり剥がしたりするリワークが可能な、基材フィルム上にシリコーン樹脂からなる吸着層を設けた自己貼着性フィルムは、それ自体のみならず、前記自己貼着性フィルムに、耐スクラッチ性、紫外線遮断性、電磁波遮断性、導電性、消臭性、脱臭性、抗菌性、親水性、防曇性、撥水性、熱伝導性、インク受容性等の機能を更に付与することにより産業上広い分野で使用される。
【0003】
情報産業やエレクトロニクス技術の進展に伴い、テレビやパソコンだけではなく、コピー機、ファクシミリ、時計、電話等にも、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示装置が広く使用されるようになった。
【0004】
これらの表示装置における表示画面には、その表面を衝撃による破損や擦傷から保護する為の保護フィルムや、反射防止、帯電防止、防汚、防眩等の機能を付与する為の機能性フィルムを貼付することが行われる。このような各種のフィルムには、アクリル系粘着剤などの粘着剤からなる粘着剤層が形成されるが、通常に使用される粘着剤からなる粘着剤層は、剥がした時に粘着剤層の表面に被着体の形状が残って平坦な状態に復元しないか又は復元に時間を要するため、再度貼付した時に十分な保持力を発揮することが難しい。
【0005】
これに対し、透明基材フィルムの表面にシリコーンゴム層を設けてなるシリコーンゴム粘着シートは、シリコーンゴム層が優れたクッション性を有しているため、保護シートとして、単独又は各種の機能性フィルムと組み合わせて使用される。このシリコーンゴム粘着シートのシリコーンゴム層は、通常、ポリシロキサン、触媒、架橋剤の他に、基材フィルムとの間の密着性を向上させるために、接着改良剤等の添加剤が配合されたシリコーンゴムによって形成されている。(特許文献1)。
【0006】
しかし、そのような添加剤を配合することで、シリコーンゴム層の密着性が上昇するため、実用的には、シリコーンゴム層と貼合するセパレータに、高価なフッ素系の剥離処理をしたセパレータを使用する必要があった。また貼り付け時に、遊離のシリコーン成分が被着体に移行し、被着体を汚染してしまう場合があった。
【0007】
これに対し、金属等の被着体上に貼って、250℃以上の高温に曝された場合でも、糊残りを起こさず、きれいに剥離することが可能な、基材上に粘着剤用シリコーン組成物を含む粘着層が設けられた粘着テープが提案されている。前記粘着剤用シリコーン組成物は、アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、R
3SiO
0.5単位およびSiO
2単位を有するポリオルガノシロキサン(Rは互いに異なっていてよい、炭素数1〜10の1価炭化水素基)と、SiH基を含有するポリオルガノシロキサン、制御剤、白金触媒等を含むものである。(特許文献2)。
【0008】
上記の従来技術においては、基材フィルム上にシリコーン組成物からなる粘着層を設けた粘着フィルムまたはテープを、金属等の被着体に貼り付け、長時間放置後に再剥離した場合に、前記被着体へのシリコーン成分移行や被着体上に粘着層の一部が残る糊残りを少なくすることはある程度可能ではあった。しかしながら、上記の粘着フィルムまたはテープでは、初期の粘着力が高くなりすぎて、リワーク性が著しく劣る場合があるだけではなく、被着体としてガラス板に長時間貼り付けた場合には、経時的に粘着層中の未反応のシリコーン成分由来のSiH基がガラス表面のSiOH基と反応して粘着層がガラス面に強固に固着して、粘着層がガラス面に残ってしまうという、いわゆるシリコーン固着現象の発生という問題が発生することが判明した。また、今までに上記のような課題を提起し、前記課題に対して有効な解決策を提示するものはみられなかった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の自己貼着性フィルムを、その構成要素に基づいて、さらに詳しく説明する。
【0018】
(基材フィルム)
本発明で使用する基材フィルムは、各種のプラスチックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等よりなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。シリコーンゴムの熱架橋時の取り扱い性、コストの面からポリエステルフィルムやポリカーボネートフィルムが好ましい。透明性の点では、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常5〜400μm、特に20〜250μmの範囲であるのが好ましい。
【0019】
基材フィルムは、その表面をコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、火炎処理したり、必要に応じてアンカー層等を設けてもよい。アンカー層等を積層する方法としては、製膜時に積層するいわゆるインライン法、または製膜したフィルムに積層するいわゆるオフライン法のいずれでもよい。
【0020】
(シリコーン樹脂)
本発明の吸着層に用いるシリコーン樹脂の性状としては、透明性が高く、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体の表面に対しても、吸着層の面が被着体表面に沿うことが求められる。さらに剥離の際には、小さい剥離力で、容易に剥離できることが求められる。また、少なくとも厚み5μm以上で、目付け加工の方法を用いることなく、塗布及び加熱処理だけで吸着層を設けるためには、シリコーン組成物の硬化反応に際して、150℃以下の低温短時間で深部まで架橋する必要がある。そのためには、白金触媒等のもと、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れかつ低粘度で液状タイプである、1分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、架橋剤としてSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応により熱架橋する付加型液状シリコーン樹脂の使用が好ましい。前記の1分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンとして、ビニル基を有するジオルガノポリシロキサンが特に好ましい。
【0021】
このような性状のシリコーン組成物として、分子鎖両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンと、分子鎖両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンと、分子鎖末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンと、分子鎖末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンとから選ばれる少なくとも1種を架橋させてなるものを用いると良い。
【0022】
これらのビニル基を有するジオルガノポリシロキサンの1形態としては、分子鎖両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとは下記一般式(化1)で表せられる化合物である。
【0024】
(式中Rは下記の有機基、nは整数を表す。)
【0025】
分子鎖両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは、下記一般式(化2)で表せられる化合物である。分子鎖末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは、下記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0027】
(式中Rは下記の有機基、mは整数を表す。)
【0028】
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種または、異種の非置換または置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で、好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0029】
1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量としては、20,000〜600,000の範囲のものが好ましい。前記ジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)が20,000未満であると、硬化性が低下したり、被着体への粘着力が低下してしまう。また、前記重量平均分子量(Mw)が600,000を超えてしまうと、組成物の粘度が高くなりすぎて製造時の撹拌が困難になる。
【0030】
また前記1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを硬化させて得られるシリコーン組成物の架橋密度は、ジオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)/1分子中に含有されるアルケニル基の数の比で表され、その範囲は5,000〜160,000であることが好ましい。ジオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)/1分子中に含有されるアルケニル基の数の比が5,000未満であると、架橋密度が高くなりすぎて、適度な粘着力、タック力が得られなくなる。逆にジオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)/1分子中に含有されるアルケニル基の数の比が160,000を超えると、硬化不足となり、ポリシロキサンの網目構造が形成されにくくなるとともに、オルガノハイドロジェンシロキサン−ジオルガノシロキサンコポリマー由来のSiH基が過剰となり、シリコーン固着を生じ易くなる。
【0031】
本発明のシリコーン組成物においては、上記の成分に加え、分子中にシラノール基を有する反応性レジンを用いる。前記反応性レジンは、具体的には、分子末端に水酸基を有する、(OH)−((R1)
2(SiO))p−Hで表されるオルガノポリシロキサンレジン(式中pは500から10,000の整数を表す。)、または分子側鎖に水酸基を有する、H−(R1(OH)SiO)q−Hで表されるオルガノポリシロキサンレジン(式中qは500から10,000の整数を表す。)であり、その分子構造としては、直鎖状、分岐鎖状、分岐状環状が例示される。中でも直鎖状であることが特に好ましい。直鎖状または分岐鎖状の場合、分子鎖末端基としてはトリメチルシロキシ基、ジメチルハイドロジェンシロキシ基が例示される。
【0032】
また前記反応性レジンの1形態としては、(R1)
2(OH)SiO
0.5単位、(R1)
3SiO
0.5単位及びSiO
2単位からなり、1分子中に1以上のシラノール基(OH基)を有するオルガノポリシロキサンレジン、いわゆるMQレジンも挙げられる。本発明のシリコーン組成物を硬化させてなる吸着層については、低シリコン移行性の見地から、前記MQレジンに含まれる全ての官能基、すなわち、官能基OHおよび官能基(R1)
3の総和のうち、0.5〜10モル%がシラノール基(OH基)であることが好ましく、1〜5モル%がシラノール基(OH基)であることが特に好ましい。
【0033】
前記MQレジンを構成するSiO
2単位に対する(R1)
2(OH)SiO
0.5単位および(R1)
3SiO
0.5単位のモル比の和は0.5〜1.2であることが好ましく、0.6〜0.9の範囲内であることが特に好ましい。(R1)
2(OH)SiO
0.5単位およびR1)
3SiO
0.5単位のSiO
2単位に対するモル比の和が0.5未満では得られる感圧接着剤の粘着力が低下する場合があり、前記モル比が1.2を超えると得られる吸着層の密着力(保持力)が低下する傾向がある。
【0034】
R1は、独立に炭素原子数1〜10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基、およびこれらの一価の炭化水素基の一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、などが挙げられる。工業的には、メチル基が好ましく、前記反応性レジンに含まれる全ての官能基、すなわち、前記のシラノール基(OH基)および前記の官能基R1の総和のうち、90〜99.5モル%がメチル基であることが好ましく、95〜99モル%がメチル基であることが特に好ましい。
【0035】
本発明のシリコーン組成物において、前記反応性レジンの使用量としては、1分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有するシリコーン組成物に対して1〜15重量%の範囲であることが必要である。前記反応性レジンの配合量が1重量%未満では、シリコーン組成物を硬化させてなる吸着層が被着体に十分に接着しない場合があり、また前記反応性レジンの配合量が15重量%を超えると、貼合後に反応性レジンの一部が被着体に固着することがあり、本発明の目的が損なわれるからである。
【0036】
本発明のシリコーン組成物の架橋反応に用いる架橋剤としては、前述のようにオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものが好ましく用いられ、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。その結合位置は特に限定されないが、具体的には、分子鎖末端および/または分子鎖側鎖が挙げられる。また、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量は組成物全体の0.1〜2.0重量%であることが好ましく、0.5〜1.8重量%であることがより好ましい。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンが含有するケイ素原子に結合した有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等のアルケニル基を除く置換もしくは非置換の一価炭化水素基が例示され、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましく、その分子構造としては、直鎖状、分岐鎖状、分岐状環状が例示される。直鎖状であることが特に好ましい。直鎖状または分岐鎖状の場合、分子鎖末端基としてはトリメチルシロキシ基、ジメチルハイドロジェンシロキシ基が例示される。
【0037】
架橋剤の使用量としては、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基モル数1モルに対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン成分中のSiH基のモル数が、0.3〜50.0モルの範囲内となる量であり、より好ましくは、1.0〜20.0モルの範囲内となる量である。架橋剤の使用量が0.3モル未満の量では架橋が不十分となり、これに伴い、粘着力の上昇、保持力の低下、又はシリコーン固着の増加をきたす場合がある。一方、架橋剤の使用量が50.0モルを超えると架橋密度が高くなり十分な粘着力及びタックが得られないことがある。
【0038】
架橋反応に用いる付加反応用触媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とケトン類との錯体、白金とアルケニルシロキサンとの錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末の白金系触媒、またはロジウム系触媒が例示される。中でも塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体を用いることが好ましく、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。かかる付加反応触媒の添加量は触媒量であればよく、通常、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン成分の合計量に対し、付加反応触媒が含有する金属量で1〜1,000ppmであり、好ましくは5〜500ppmの範囲とすることが好ましい。
【0039】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。なかでも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。但し、無溶剤型であっても、所望の膜厚を得るために粘度調節として、必要に応じてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、またはこれらの混合溶剤などが使用される。
【0040】
本発明のシリコーン組成物には上記の成分以外に、常温下でのゲル化、硬化を抑制して保存安定性を向上させ、加熱硬化性とするために、付加反応抑制剤を含有しても良い。付加反応抑制剤として、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示され、具体的には、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキニルアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン、ベンゾトリアゾール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、メチルビニルシクロシロキサン等が例示される。この付加反応抑制剤の配合量は、通常、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン成分100重量部当り0.001〜5重量部の範囲内であるが、本成分の種類、付加反応触媒の性能と含有量、前記アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基量、架橋剤成分中のケイ素原子結合水素原子量に応じて適宜選定するとよい。付加反応抑制剤の配合量が、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン成分100重量部に対して5重量部を超えると、得られたシリコーン成物の硬化速度が著しく遅くなる。
【0041】
前述のごとく、吸着層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体への貼着時に被着体の表面の凹凸に追従して密着力を確保することが求められる。そして、例えば前記表示画面の保護フィルムやウインドウ用保護フィルムとして粘着フィルムを使用する場合、吸着層の膜厚は、被着体に対する吸着層の密着面方向の剪断力を確保するために少なくとも5μm以上、通常は5〜200μmが必要となる。より好ましくは、5〜100μmであることが好ましい。但し、シール材やクッション材として使用する場合には、場合により数100μmの膜厚が要求される場合がある。5μm未満であると被着体に対する機能性フィルムの密着面方向の剪断力が確保できず、特に長期貼り付け時には、自己貼着性フィルムが被着体から剥がれ易い。
【0042】
(アンカー層)
本発明においては、基材フィルムと吸着層との接着力の向上、および被着体への自己貼着性フィルムの貼着後、前記自己貼着性フィルムを再剥離する際に、前記吸着層と基材フィルム間で剥離することなく、被着体からスムーズに剥離できることを目的として、前記基材フィルムと吸着層との間にアンカー層を設けてもよい。
【0043】
アンカー層の材料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。中でもアクリル系樹脂が好ましく、特にアクリルポリオール樹脂が、帯電防止性や被膜特性の観点から好ましい。
【0044】
また、アンカー層には、その他配合材料として帯電防止剤を添加し帯電防止機能を付与することができる。ノニオン系としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を挙げることができる。またエチレンオキサイドを骨格に持つアクリレート化合物なども使用することができる。導電性高分子としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの誘導体を使用することができる。金属酸化物としてアンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物などを使用することができる。
【0045】
アンカー層の厚みは0.1〜5.0μmの範囲が好ましく、0.15〜3.0μmの範囲がより好ましい。アンカー層の厚みが、0.1μm未満であると、アンカー層の接着効果が乏しくなり、熱架橋された吸着層が基材フィルムより離脱し易くなる。さらに帯電防止性能が安定しない。一方アンカー層の厚みが5.0μmを超えるとアンカー層の柔軟性が無くなり硬い層となり、基材フィルムへの密着性が悪くなる。
【0046】
アンカー層塗工液、吸着層塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等公知の方法が適宜使用される。
【0047】
吸着層の表面の汚れや異物付着を防いだり、自己貼着性フィルムのハンドリングを向上させるために樹脂フィルム製のセパレータを吸着層面に張り合わせることができる。
【0048】
被着体は、平滑な表示画面等のガラス基板やウインドウガラスの他、樹脂、金属、金属酸化物等が挙げられる。表面の凹凸が大きいとシリコーンゴム層が凹凸に追重することが難しくなり、密着することができなくなる。
【0049】
本発明の自己貼着性フィルムは、被着体としてガラス材料、特に表示装置のガラス基板に対して使用する場合に有用である。本発明の吸着層においては、遊離のシリコーン成分、未反応のオルガノハイドロジェンポリシロキサン由来のSiH基が殆んど残存しないので、ガラス表面のSiOH基と反応して吸着層がガラス面に強固に固着することはない。従って、被着体として表示装置のガラス基板に長時間貼り付けた場合であっても、吸着層内の未反応のシリコーン成分がガラス表面に移行せず、経時的に吸着層がガラス面に固着することなく、軽い剥離力で再剥離が可能となる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各実施例中の「部」は特に断ることのない限り重量部を示したものである。表1中の各ジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、Waters社製GPC測定機(型番:Waters410)を用いて測定して算出した、ポリスチレン換算値である。
【0051】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
プラズマ処理された厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記アンカー層塗工液をグラビアコーターで塗工、乾燥して、厚み0.2μmのアンカー層を形成した。
【0052】
(アンカー層塗工液)
アクリルポリオール樹脂 20部
(東レファインケミカル製、コータックスLH455、固形分:50%)
ポリチオフェン 27部
(信越ポリマー製、セプルジーダOC−SC100、固形分:3%)
MEK 40部
トルエン 13部
【0053】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
前記のアンカー層の上に、表1の成分を、表中の塗布厚みの吸着層を設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて本発明の自己貼着性フィルムを作製した。
【0054】
【表1】
【0055】
各実施例、比較例の評価結果を表1に、各評価方法を下記に示す。
【0056】
(評価方法)
(ジオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)/1分子中に含有されるアルケニル基の数の比)の算出方法
表1中の各ジオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)は、Waters社製GPC測定機(型番:Waters410)を用いて測定して算出した、ポリスチレン換算値である。また、1分子中のアルケニル基の数は、まず各ジオルガノポリシロキサンの
1H−NMRスペクトル測定結果から、アルケニル基中の水素と側鎖のアルキル基中の水素のモル比を算出し、次いで前記各ジオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)と、前記のアルケニル基中の水素と側鎖のアルキル基中の水素のモル比の算出結果を用いて1分子中のアルケニル基の数を算出した。
【0057】
(シリコーン移行性)
評価手順
1)エタノールをしみこませた紙ウエス等でアクリル板表面を洗浄する。
2)洗浄したアクリル板に自己貼着性フィルムを貼り合せ、常温で72時間静置する。
3)貼り合せた自己貼着性フィルムを剥がし、アクリル板表面の水接触角を測定する。
評価基準
未処理品(アクリル板)からの接触角の上昇値によって判定した。
○:上昇値が+5°未満である。
△:上昇値が+5°以上、+15°未満である。
×:上昇値が+15°以上である。
【0058】
(シリコーン固着)
評価手順
1)ソーダ石灰ガラスに自己貼着性フィルムを貼り合せ、50℃、湿度85%にて96時間静置した。
2)上記の貼り合わせた積層体を常温にて2時間静置後、自己貼着性フィルムを剥がし、表面のガラス面へのシリコーン固着を目視にて確認した。
評価基準
◎:シリコーン固着全く無し
○:シリコーン固着殆ど無し
×:シリコーン固着有り
【0059】
(リワーク性)
上記作成した自己貼着性フィルムを25mm幅にカットし、前記自己貼着性フィルムの吸着層を厚み2mmのアクリル板に2Kgのローラーを1往復させる方式で圧着し、圧着後室温で約24時間放置した。次に、引っ張り試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで剥離し、自己貼着性フィルムのアクリル板剥離力(mN/25mm)を測定した。
リワーク性の評価基準
◎:アクリル板剥離力が15mN/25mm以上、150mN/25mm未満
○:アクリル板剥離力が150mN/25mm以上、400mN/25mm未満
×:アクリル板剥離力が15mN/25mm未満、400mN/25mm以上