【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年7月22日森永乳業株式会社が、小林小児科 小林正明院長に、勝又紀子、東中宏祐、池田智幸、林伸明、および木村達治が発明した検体採取具を、見本として譲渡した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年9月8日森永乳業株式会社が、小林小児科 小林正明院長に、勝又紀子、東中宏祐、池田智幸、林伸明、および木村達治が発明した検体採取具を、臨床試験に使用してもらうために譲渡した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年9月18日〜11月15日小林小児科 小林正明院長に、勝又紀子、東中宏祐、池田智幸、林伸明、および木村達治が発明した検体採取具を用いて、臨床試験を行うために患者から検体を採取した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年7月23日森永乳業株式会社が、東京医科大学病院 総合診療科 原田芳巳医師、および赤石雄医師に、勝又紀子、東中宏祐、池田智幸、林伸明、および木村達治が発明した検体採取具を見せた。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年8月13日森永乳業株式会社が、東京医科大学病院 微生物講座 松本哲哉教授、および東京医科大学病院 総合診療科 赤石雄医師に、勝又紀子、東中宏祐、池田智幸、林伸明、および木村達治が発明した検体採取具を見せた。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年10月11日森永乳業株式会社が、東京医科大学病院 総合診療科 平山陽示教授、および 赤石雄医師に、勝又紀子、東中宏祐、池田智幸、林伸明、および木村達治が発明した検体採取具を見せた。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1、2に記載されているような試験方法において、1患者(同一の検査対象)から複数の検体を採取する際に、複数本の綿棒を用い1患者から複数回検体を採取する方法では、採取場所が非常に小さい領域である場合や、検査対象が乳幼児である場合など、複数の検体をそれぞれ充分な量で採取するのが困難な場合がある。
【0008】
また、特に非特許文献2に記載されているような、複数の検体中の同一の検出目的物を複数の検出方法でそれぞれ検出して相関性を調べる試験方法にあっては、複数の検体間に含まれる検出目的物の量のばらつきが、相関性の試験結果に影響を及ぼしやすい。そこで、試験の信頼性を向上させるために、複数の検体間のばらつきを低減させることが望まれる。
しかしながら、複数本の綿棒を用い、1患者から複数回検体を採取する方法では、複数の検体に含まれる検出目的物(例えば原因菌)の量を均等にするのが難しい。
また、1患者から1本の綿棒で採取した検体を抽出液等の液に移行させて検体液を調製し、得られた検体液を均等に分割する方法もあるが、充分量の検体を採取することが必要であるうえ、検体液を均等に分割する工程が必要であり手間がかかる。
【0009】
特許文献1に記載されている検体採取具は、分割前は1本の綿棒状の形状であるが、検体採取後に2分割して得られる分割体では、軸の先端の半面しか検体採取部で覆われていない状態となる。したがって、1本の分割体における、検体採取部の表面積が小さくなり、検体の採取効率や、検体採取部に付着した検体を液等に移行させる際の移行効率が悪くなる。このため複数の検体をそれぞれ充分な量で採取するのが難しい。
さらに特許文献1に記載されている検体採取具は、検体採取時には分割されず、検体採取後に容易に分割できるように設計、加工する必要があるが、特許文献1にはそのための手法が具体的記載されておらず容易に実施できない。また設計によっては使い勝手が悪くなる。特に三分割以上とする場合は製造が困難である。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、同一の検査対象から、1回の採取で充分量の複数の検体を容易に得ることができるようにすることを目的とする。
また、同一の検査対象から、ばらつきが小さい複数の検体を容易に、かつ効率良く得ることができるようにして、複数の検体を複数の検出方法に供する試験方法の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の[1]〜[
10]である。
[1]軸部の先端に検体採取部を有する検体採取具であって、前記軸部が、複数の軸体を備え、前記検体採取部が、各軸体の先端を覆う複数個の検体保持部からなり、該複数個の検体保持部が剥離可能に接着一体化されていることを特徴とする検体採取具。
【0012】
[2]前記複数の軸体が分離可能に一体化されている、[1]に記載の検体採取具。
[3]前記検体保持部の数が3以上である、[1]または[2]に記載の検体採取具。
【0013】
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載の検体採取具を用いて検体を採取する採取工程と、採取工程の後、前記検体採取具の検体採取部を個々の検体保持部に分離する分離工程を有する、検体の採取方法。
[5]前記分離工程で分離した個々の検体保持部をそれぞれ液中に浸漬させて、前記検体を含む複数の検体液を得る工程をさらに有する、[4]に記載の検体の採取方法。
【0014】
[6][4]または[5]に記載の検体の採取方法により複数の検体を採取する工程と、該複数の検体をそれぞれ用いて、検体に含まれる検出目的物を検出する検出工程を有する、検出方法。
[7]前記検出工程において、複数の検出方法により前記検出目的物をそれぞれ検出する、[6]に記載の検出方法。
[8]前記複数の検出方法が免疫学的検査法、遺伝子検査法、生化学的検査法及び培養法からなる群から選択される1または複数である、[7]に記載の検出方法。
[9]検出目的物が微生物、ウイルス、蛋白質、遺伝子、または汚れ成分である[6]〜[8]のいずれか一項に記載の検出方法。
[10]複数の軸体を備える軸部の先端に検体採取部を有する検体採取具を製造する方法であって、
複数の軸体の先端をそれぞれ覆うように、複数個の検体保持部を作成する工程、および、前記複数個の検体保持部を剥離可能に接着一体化して検体採取部となす工程、を有する、検体採取具の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検体採取具によれば、1回の採取で充分量の複数の検体を容易に得ることができる。また同一の検査対象から、ばらつきが小さい複数の検体を容易に得ることができる。
本発明の検体の採取方法によれば、1回の採取で充分量の複数の検体を容易に得ることができる。また同一の検査対象から、ばらつきが小さい複数の検体を容易に得ることができる。
本発明の検出方法によれば、1回の採取で充分量の複数の検体を容易に得ることができるため、複数の検体を用いる試験方法を簡便に行うことができる。また同一の検査対象から、ばらつきが小さい複数の検体を容易に得ることができ、複数の検体を用いる試験方法の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
<検体採取具>
図1は本発明の検体採取具1の一実施形態を示した平面図である。検体採取具1は、棒状の軸部2の先端に検体採取部3が設けられている。
本実施形態において、検体採取部3は3個の検体保持部31からなり、該3個の検体保持部31は剥離可能に接着一体化されている。軸部2は3本の軸体21からなり、各軸体21の先端に検体保持部31がそれぞれ接着固定されている。また3本の軸体21の基端が接着部22によって分離可能に一体化されている。
図2は、検体採取部3を3個の検体保持部31に剥離し、かつ3本の軸体21をそれぞれ分離して得られる分離体41を示したものである。分離体41は軸体21の先端に検体保持部31が固定された綿棒状である。
【0018】
検体保持部31の形状、大きさ、材質は特に限定されないが、軸体21の全周にわたって形成されていると好ましく、いわゆる綿球、綿体と呼ばれるような形状であってもよい。目的の検体の採取および保持に適するように、採取場所に応じて適宜設計することが好ましい。
本実施形態において、検体保持部31は、略球面状の先端部31aと、略円柱状の胴部31bと、先端部31aから遠ざかるにしたがって漸次縮径している基端部31cとからなる。検体保持部31が略円柱状の胴部31bを有する形状であると、複数の検体保持部31を接着一体化する際に、隣接する検体保持部31どうしの接触面積を大きくでき、良好な接着強度が得られやすい点で好ましい。
検体採取具1の長さ方向における検体保持部31の長さは、例えば5〜40mmが好ましい。検体保持部31の最大直径は、例えば1.5〜4.0mmが好ましい。
本実施形態において、検体保持部31は、軸体21の先端に繊維を巻回して接着固定してなるものである。繊維としては 例えば綿(コットン)、レーヨン、シルク、ポリアミド(ナイロン)等が用いられる。
軸体21の先端に検体保持部31を接着固定するための接着剤、または検体保持部31どうしを剥離可能に接着するための接着剤としては、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、またはカルボキシメチルセルロースのいずれかを用いることが好ましい。
【0019】
軸体21の形状、大きさ、材質は、目的の検体を採取する操作を問題なく行うことができればよく、特に限定されない。
検体採取具1全体の長さ、すなわち検体保持部31の先端から軸体21の基端までの長さは、例えば50〜500mmが好ましい。軸体21の直径は、材質にもよるが、許容曲げ半径10〜60mmが得られるように設計することが好ましい。例えば1.0〜3.5mmが好ましい。
軸体21の材質は適度な可撓性と強度が得られるものが好ましい、例えばポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、または紙等が挙げられる。
接着部22を形成する接着剤は、軸体21どうしを分離可能に一体化できるものであればよく特に限定されない。例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0020】
軸部2を構成する複数本の軸体21は分離可能に一体化されていてもよく、一体化されていなくてもよい。検体採取具1で検体を採取する際に軸部2を把持しやすい点、および検体保持部31どうしが誤って剥離するのが防止されやすい点では軸体21どうしが分離可能に一体化されていることが好ましい。
複数本の軸体21を分離可能に一体化する方法は、本実施形態のように軸体21を接着剤(接着部22)で一体化する方法でもよく、例えば、紐、チューブ等の結束部材で結束する方法でもよい。
また複数本の軸体21を分離可能に一体化する位置は限定されない。特に、本実施形態のように軸体21の基端が一体化されていると軸部2を把持しやすい点で好ましい。
【0021】
本実施形態の検体採取具1は以下の方法で製造することができる。
まず、軸体21の先端を覆うように検体保持部31を設ける。具体的には、軸体21の先端に接着剤を塗布して繊維を巻回し、形状を整えて接着剤を乾燥させることにより、軸体21の先端に検体保持部31が接着固定された分離体41を得る。
次に、複数本の分離体41をチューブ等の結束部材で仮結束することにより、検体保持部31どうしが接触している状態とする。この状態で、検体保持部31どうしの接触部に接着剤を塗布し、乾燥させて、検体保持部31どうしを接着する。
この後、互いに接着した複数の検体保持部31全体に接着剤を塗布して乾燥させる。接着剤の量は、検体保持部31を構成する繊維全体に接着剤が含浸するのに過不足ない量が好ましい。こうして、複数の検体保持部31が剥離可能に接着一体化された検体採取部3を得る。検体保持部31どうしの接着強度は、接着剤の種類または塗布量で調整できる。
次に、仮結束を開放した後、複数の軸体21を分離可能に一体化する接着部22を形成するための接着剤を、全部の軸体21の基端部に塗布する。続いて、軸体21の基端部を互いに接触させた状態で該接着剤を固化させることにより、接着部22を形成する。こうして、
図1に示す検体採取具1が得られる。
接着部22における接着強度は、接着剤の種類または塗布量で調整することができる。
【0022】
なお、軸体21の先端に検体保持部31を形成する方法は、上記の方法に限らず、繊維が巻回された綿球を有するタイプの綿棒を製造する際に用いられる公知の手法を適宜用いることができる。
特に上記の方法は、検体保持部31を構成する繊維全体に接着剤が含浸して固められるため、個々の検体保持部31に付着、保持される検体量が均等になりやすい点で好ましい。また後述の検体液を得る場合には、検体保持部31に保持されている検体を液中に移行させやすい点でも好ましい。
【0023】
本実施形態において、個々の検体保持部31は軸体21の先端にそれぞれ接着固定されており、検体採取部3では該検体保持部31どうしが剥離可能に接着一体化されている。すなわち、検体採取時には検体採取部3が一体になっており、検体採取後に軸体21を持って検体保持部31どうしを引き剥がすことによって、検体保持部31に触れずに、検体採取部3を個々の検体保持部31に容易に分離することができる。そして、検体採取部3が分離されると、軸体21の先端が検体保持部31で被覆された綿棒状の分離体41が得られる。
したがって、特許文献1に記載されている検体採取具に比べて、分割前の検体保持部31の表面積を大きくしやすく、個々の分割体における検体保持部31の表面積も大きくできる。よって検体の採取効率、および検体採取部に付着した検体を液等に移行させる際の移行効率を向上できる。また分割するための複雑な構造を必要とせず製造が容易である。
【0024】
なお、検体採取部3を構成する検体保持部31の数および検体保持部の数は同数であり、2個以上であればよく、特に限定されない。個々の検体保持部31によって採取、保持される検体量にばらつきが生じにくい点で、2〜4個が好ましい。本発明によれば、特許文献1に記載されている従来法では実現が難しい3個以上でも容易に実現できる。
【0025】
[変形例]
検体保持部31は、上記実施形態のほかに、軸体21の先端の表面に接着剤層を設け、これにブラシ状に繊維を植毛した、植毛タイプのものでもよく、または軸体21の先端にスポンジ材からなる検体保持部31を被せて接着固定した、スポンジタイプのものでもよく、上記実施形態と同様の効果が得られる。
植毛タイプに用いられる繊維は、例えば綿(コットン)、レーヨン、シルク、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)等が用いられる。
スポンジタイプに用いられるスポンジ材の材質としては綿(コットン)、レーヨン、シルク、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリウレタン等が用いられる。
植毛タイプの綿棒を製造する際に用いられる公知の手法、またはスポンジタイプの綿棒を製造する際に用いられる公知の手法を適宜用いて製造することができる。
【0026】
<検体の採取方法>
以下、本実施形態の検体採取具1を用いて検体を採取する方法を説明する。
まず、検体採取具1を用いて検体を採取する(採取工程)。
採取工程は、検体の種類に応じて、一般的な綿棒を用いて採取する公知の方法と同じ方法で行うことができる。
検体の例としては、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、直腸拭い液、口腔内拭い液、中耳貯留液等が挙げられる。例えば、検体採取具1の軸部2の基端部を手で把持して検体採取部3を鼻腔に入れ、軸部2を周方向に回しながら検体保持部31に鼻腔拭い液を付着させて採取し、保持する。
検体は人または動物由来のものに限らず、食品の一部、食器や機材等の器物の表面を拭って採取される検体等であってもよい。
また検体は液体や粘液に限らず固形物であってもよい。
【0027】
次に、検体採取部3を個々の検体保持部31に分離する(分離工程)。
具体的には、1個の検体保持部31と1本の軸体21とが一体化されているため、軸体21を把持して検体保持部31どうしを引き剥がし、さらに軸体21どうしも分離させることにより、綿棒状の分離体41に容易に分離できる。
【0028】
分離された個々の検体保持部31に保持されている検体は、そのまま検出工程に用いてもよく、個々の検体保持部31をそれぞれ液中に浸漬させて検体を該液中に移行させ、検体含む検体液の形態としてもよい。検体の保存または輸送に適している点で検体液の形態とすることが好ましい。
検体保持部31を浸漬させる液は、保存液、抽出液、培養液等、検出方法に応じた液を用いることが好ましい。
検体保持部31を液中に浸漬させて検体液を得る方法は、例えば、綿棒状の分離体41の軸体21を把持して容器に収容された液中に検体保持部31を浸漬させ、検体を液中に移行させた後に、検体保持部31を引き上げる方法で行うことができる。または、容器に収容された液中に、検体保持部31のみ、または軸体21の一部または全部と一体化されている状態の検体保持部31を投入し、検体保持部31を引き上げない方法で行うこともできる。
【0029】
<検出方法>
検体採取具1を用いて採取された複数の検体(検体液の形態とした検体を含む)をそれぞれ用いて、検体中の検出目的物を検出する(検出工程)。
検出目的物は、一般的な綿棒を用いて検出される検出目的物と同じものを適用できる。例えば、検出目的物として、微生物(細菌、真菌、寄生虫等)、ウイルス、蛋白質、遺伝子、または汚れ成分が好適である。汚れ成分の具体例としては体液(血液、尿等)、糖、油、ATP(アデノシン三リン酸)、歯垢等が挙げられる。
検出目的物を検出する検出方法は、公知の方法を用いることができる。検体液を用いる検出方法でもよく、検体液の形態としない検体を用いる検出方法でもよい。
検体液を用いる検出方法としては、例えば、(イ)検出液中の検出目的物と特異的に反応する物質とで形成する複合体を呈色させることによって検出する検出方法、(ロ)検出液中の検出目的物を増幅させて得られた増幅産物を検出する検出方法、(ハ)検出液中の検出目的物質との生化学的な反応を利用してその反応生成物を検出する検出方法、(ニ)培養によって検出目的物(微生物やウイルス)を増殖させて直接増殖物を検出する検出方法等の複数の検出方法が挙げられる。
上記(イ)の検出方法としては、例えば、抗原抗体反応を利用した免疫学的検査法(イムノクロマトグラフ法、イムノフィルター法、沈降反応・免疫比濁法、ラテックス凝集法、標識抗体法等)を例示することができる。なお抗原抗体反応を利用したイムノクロマトグラフ法において、呈色させる方法としては、抗体を酵素で標識し、基質と反応させて発色させる酵素免疫法や、抗体に着色粒子として金コロイドを結合させる金コロイド法等、公知の手法を適宜用いることができる。
また、上記(ロ)の検出方法としては、遺伝子検査法(PCR法を用いた検出法等)を例示することができる。
上記(ハ)の検出方法としては例えば、酵素と発光物質との存在下における検出物質の性質を利用した生物発光法等の生化学的検査法を例示することができる。
さらに、上記(ニ)の検出方法としては培養法等を例示することができる。
検体液の形態としない検体を用いる検出方法としては、例えば、検体保持部31に保持された検体を固体培地に直接塗沫して培養する工程を有する平板培養法等の検出方法が挙げられる。
【0030】
検体採取具1を用いることにより、同一の検査対象から1回の採取で複数の検体が得られるため、検出工程では、複数の検体を用いる試験方法を実施することが好ましい。
複数の検体を用いる試験方法は、複数の検体中の同一の検出目的物を複数の検出方法でそれぞれ検出する試験方法でもよく、複数の検体を用いて同一の検出方法を複数回行う試験方法でもよく、これらを組み合わせた試験方法でもよい。
例えば、検体を培養せずに各種の検出方法に用いる迅速法と、検体を培養する工程を有する培養法をそれぞれ用いて同一の検出目的物を検出する試験方法;または、検出キットの開発品と既存品との相関性を調べる場合など、使用する試薬が互いに異なる複数の検出方法をそれぞれ用いて同一の検出目的物を検出する試験方法等が挙げられる。
特に、体外診断用医薬品の承認(または認証)のための臨床試験においては、2種以上の既承認体外診断用医薬品を対照として相関性を調べる試験方法が用いられ、例えば3検体以上が必要であるため、本発明を採用することが好適である。
【0031】
本発明によれば、検体採取具1を用いることにより、1患者(同一の検査対象)から、1回の採取で充分量の複数の検体を容易に得ることができる。したがって、特に採取場所が非常に小さい領域である場合や、検査対象が乳幼児である場合でも、複数の検体をそれぞれ充分な量で採取することができる。
【0032】
また後述の実施例に示されるように、検体採取具1を用いることにより、1回の採取で、検出目的物の含有量のばらつきが小さい複数の検体が得られるため、検体に採取に起因する誤差を低減させることができる。これにより、複数の検体を用いる試験方法の信頼性を向上させることができる。
特に、複数の検体中の同一の検出目的物を複数の検出方法でそれぞれ検出する試験方法にあっては、複数の検体間に含まれる検出目的物の量のばらつきを低減させることによる、信頼性向上の効果が大きい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(試験例1)
本例では、
図1、2に示す検体採取具1を用いて患者から採取した鼻腔拭い液(検体)について、抗原抗体反応を利用したイムノクロマトグラフ法によるインフルエンザウイルスおよびRSウイルス迅速検出用キット(デンカ生研株式会社製、製品名:クイックナビ−FLU+RSV)を用いてインフルエンザウイルス抗原A型陽性、インフルエンザウイルス抗原B型陽性、RSウイルス抗原陽性、陰性、または無効の判定を行った。該キットは、
図3に示すように、所定量の検体浮遊液51が収容された試験容器52と、試験容器52の開口部に取り付けられるスポイトキャップ53と、テストデバイス54とからなる。
【0034】
スポイトキャップ53は内部に濾材(図示略)が設けられており、検出時には、該濾材を介して検体液51’をテストデバイス54の試料滴下穴54aに滴下する。滴下された検体液51’は、試料滴下穴54aに露出しているサンプルパッドからテストデバイス54内に設けられたコンジュゲートパッド(図示せず)へ毛細管現象により移動する。コンジュゲートパッドにはラテックス標識抗体(抗インフルエンザウイルス抗原A型抗体結合ラテックス(赤)、抗インフルエンザウイルス抗原B型抗体結合ラテックス(青)、および抗RSウイルス抗体結合ラテックス(青))が塗布されており、検体液51’中のA型インフルエンザウイルス抗原、B型インフルエンザウイルス抗原、またはRSウイルス抗原と反応して免疫複合体が形成される。形成された免疫複合体はテストデバイス54内に設けられたメンブラン内を毛細管現象により移動し、判定部54bに至る。判定部54bのメンブランのAライン(図示略)には抗インフルエンザウイルスA型抗体が固定化されており、Bライン(図示略)の位置に抗インフルエンザウイルスB型抗体が固定化されており、Rライン(図示略)には抗RSウイルス抗体が固定化されている。免疫複合体はこれらの抗体に特異的に捕捉され、Aラインの位置で赤色、BラインまたはRラインの位置で青色を呈色する。さらに、判定部54bのCライン(図示略)には、前記ラテックスで標識されたすべての抗体と結合可能な抗マウスIgGモノクローナル抗体が固定化されており、該抗体結合ラテックスがAライン、BラインおよびRラインを通過してCラインに達すると、紫色を呈色するようになっている。
すなわち、判定部54bのCラインの位置に紫色のラインが出現するとテストデバイス54内で反応が正常に進んだことを意味し、このラインが出現しない場合、試験は無効である。インフルエンザウイルス抗原A型陽性の場合は判定部54bのAラインの位置に赤色のラインが出現し、インフルエンザウイルス抗原B型陽性の場合は判定部54bのBラインの位置に青色のラインが出現し、RSウイルス抗原陽性の場合は判定部54bのRラインの位置に青色のラインが出現する。Aライン、Bライン、およびRラインのいずれの位置にもラインが出現しない場合は陰性と判定する。
【0035】
本例で用いた検体採取具1は3本の分離体41に分離できるようになっており、検体保持部31の最大直径2.1mm、検体保持部31の長さ17mm、検体採取具1全体の長さ150mm、軸体21の直径1.5mmである。
検体保持部31は軸体21の先端に綿繊維が巻回され、該綿繊維全体に接着剤を含浸して固められている。
【0036】
図3に示すように、検体採取具1を用いて鼻腔拭い液(検体)を採取し、検体保持部31に検体(鼻腔拭い液)が付着した検体採取具1’を得た。符号31’は検体(鼻腔拭い液)が付着した検体保持部を示し、符号41は検体(鼻腔拭い液)を保持している分離体を示す。
検体採取具1’を3本の分離体41’に分離し、3つの検体保持部31’をそれぞれ試験容器52内の検体浮遊液51中に浸漬し、検体を液中に移行させて3対の検体液51’を得た。得られた3対の検体液51’を、3対のテストデバイス54の試料滴下穴54aにそれぞれ滴下した。3対のテストデバイス54は同じものである。
判定部54bに出現したラインを目視で判定し、RSウイルス抗原陽性と判定された4人の鼻腔拭い液(検体)(I)〜(IV)について、3対のテストデバイス(デバイス(i)、(ii)、(iii))に出現したRラインの色度と、Cラインの色度を色差計(製品名:色彩色差計、コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
色度は、国際照明委員会(CIE)で規定される色差式(CIE L*a*b*表色系)で表す。a*軸は緑〜赤を表し、△a*がマイナスは緑、プラスは赤を表す。b*軸は青〜黄を表し、△b*がマイナスは青、プラスは黄を表す。3対の検体液51’間で検出目的物の濃度に差があると、3対のテストデバイス(デバイス(i)、(ii)、(iii))に出現するラインの色度に差が生じる。測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示されるように、4人の鼻腔拭い液(検体)(I)〜(IV)のいずれにおいても、3対のデバイス(i)と(ii)と(iii)における△a*の絶対値、および△b*の絶対値がいずれも2以下であり、目視で色調の差が認められないレベルであった。すなわち、3対の検体液中の検出目的物の濃度がほぼ均一であることが認められた。3つの検体保持部31に付着した鼻腔拭い液(検体)は、同一の採取位置で同時に採取されたものであるため、鼻腔拭い液(検体)中の検出目的物の濃度は均一である。したがって、3つの検体保持部31から検体浮遊液51中に移行した検体量がほぼ均一であることが認められた。
また4人の鼻腔拭い液(検体)(I)〜(IV)は、年齢が1歳7か月〜3歳2か月の乳幼児から採取したものであり、鼻腔が小さく検体を多く採取することが困難な場合でも、このようにばらつきが小さい複数の検体を容易に採取できることが認められた。
【0039】
(実施例1)
試験例1と同じ検体採取具1を用いて患者(検査対象)から咽頭拭い液を採取し、検体保持部31に検体(咽頭拭い液)が付着した検体採取具1’を得る。得られた検体採取具1’を3本の分離体41’に分離する。
1本目の分離体41’の検体保持部31’に付着している検体を用いて、試験例1と同じイムノクロマトグラフ法によるA群溶血連鎖球菌の検出を行う。
2本目の分離体41’の検体保持部31’に付着している検体を用いて、公知の遺伝子検査法によるA群溶血連鎖球菌の検出を行う。
3本目の分離体41’の検体保持部31’に付着している検体を用いて、公知の培養法によるA群溶血連鎖球菌の検出を行う。