特許第6337324号(P6337324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337324
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】管内走行装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/10 20060101AFI20180528BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20180528BHJP
   B62D 57/02 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B61B13/10
   F16H1/28
   B62D57/02 J
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-106963(P2014-106963)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-221635(P2015-221635A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】馬 書根
(72)【発明者】
【氏名】加古川 篤
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−034299(JP,A)
【文献】 特開平05−270455(JP,A)
【文献】 実開昭51−014961(JP,U)
【文献】 特開2001−354167(JP,A)
【文献】 特開2008−089516(JP,A)
【文献】 特開平06−072359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/10
B62D 41/00−67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の周方向の異なる位置に複数配置され、配管内を走行するクローラ式走行体と、前記車体に対して前記クローラ走行体を前記配管の径方向に拡縮可能に支持する伸縮機構と、を備える管内走行装置であって、
前記クローラ式走行体は、
駆動手段と、
走行体フレームに回転自在に支持される第1アームと、前記第1アームに回転自在に支持される駆動プーリーと、前記駆動プーリーから当該クローラ式走行体の走行方向に所定間隔離して、前記第1アームに回転自在に支持される駆動側アイドラプーリーと、当該クローラ式走行体が前記配管内を走行する通常走行時において、前記駆動手段による駆動力を前記駆動プーリーに伝達し、当該クローラ式走行体が前記配管内の障害物に接触して通常走行が不能となる障害物接触時において、前記駆動手段による駆動力を前記第1アームに伝達する差動機構と、を有する駆動アーム部と、
前記第1アームから前記走行方向に離間して、前記走行体フレームに回転自在に支持される第2アームと、前記駆動プーリーと前記駆動側アイドラプーリーに対応するように前記走行方向に所定間隔離して前記第2アームに回転自在に支持される一対の従動側アイドラプーリーと、を有する従動アーム部と、
前記駆動プーリー、前記駆動側アイドラプーリー、及び、前記一対の従動側アイドラプーリーに無端状に巻き掛けられるクローラと、
前記障害物接触時において、前記駆動手段からの駆動力によって前記差動機構を介して前記第1アームが回転する際に、前記第1アームの回転に同期させて前記第2アームを回転させることにより前記クローラの巻き掛け形状を略平行四辺形状に変化させる回転伝達機構と、を備えることを特徴とする管内走行装置。
【請求項2】
前記差動機構として、平歯車機構を用いることを特徴とする請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項3】
前記第1アーム及び/又は第2アームが所定角度以上回転することを規制するための回転規制手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内走行装置。
【請求項4】
前記第1アーム又は前記第2アームの回転角度を検出する角度検出手段と、
前記角度検出手段により取得した前記第1アーム又は前記第2アームの回転角度情報を用いて、前記クローラ式走行体の走行速度を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の管内走行装置。
【請求項5】
前記第1アーム及び前記第2アームが所定角度回転した際に前記クローラの表面に接触し、当該クローラが駆動することにより回転するガイドローラが前記車体に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の管内走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ式走行体を用いて配管内を走行する管内走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフラ設備の耐用年数超過が問題視され始めており、中でも流体の輸送に使用される配管設備の老朽化が深刻化している。未然に漏洩事故を防ぐためには定期的な配管検査が必要になるが、人間は小さな配管内に入ることができないため、埋設された配管を掘り起こしたり、配管そのものを分解する必要がある。しかし、人手によるこれらの作業は時間や労力が掛かり、危険も伴う。そのため、近年は、カメラや肉厚測定センサを配管走行装置に搭載した配管検査ロボットの開発が行われており、特に移動速度の速い自走式の配管走行装置を用いたものが多く提案されている。
【0003】
このような配管検査ロボット等に用いられる配管走行装置の中でも信頼の高いものとして、これまでに独立した3つのクローラ式走行体が車体の周方向に支持機構を介して放射状に取り付けられた配管走行装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このような配管走行装置では、それぞれのクローラ式走行体の速度を調整することにより前進後退だけなく、その場で上下左右への方向転換を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−072359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の配管走行装置では、クローラ式走行体は、バネ等を用いた支持機構によって受動的に配管内の壁面に押し付けられているため、配管接合部のフランジや異径管、配管内の障害物等によって、配管の内径が縮径した場合に、バネを縮めるための余計な力が必要となる。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、配管内の状況に応じて受動的にクローラの形状を変化させることにより、配管内の障害物等に適応することができ、且つ、小型化及び低コスト化を図ることができる配管走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の管内走行装置は、車体の周方向の異なる位置に複数配置され、配管内を走行するクローラ式走行体と、前記車体に対して前記クローラ走行体を前記配管の径方向に拡縮可能に支持する伸縮機構と、を備える管内走行装置であって、前記クローラ式走行体は、駆動手段と、走行体フレームに回転自在に支持される第1アームと、前記第1アームに回転自在に支持される駆動プーリーと、前記駆動プーリーから当該クローラ式走行体の走行方向に所定間隔離して、前記第1アームに回転自在に支持される駆動側アイドラプーリーと、当該クローラ式走行体が前記配管内を走行する通常走行時において、前記駆動手段による駆動力を前記駆動プーリーに伝達し、当該クローラ式走行体が前記配管内の障害物に接触して通常走行が不能となる障害物接触時において、前記駆動手段による駆動力を前記第1アームに伝達する差動機構と、を有する駆動アーム部と、前記第1アームから前記走行方向に離間して、前記走行体フレームに回転自在に支持される第2アームと、前記駆動プーリーと前記駆動側アイドラプーリーに対応するように前記走行方向に所定間隔離して前記第2アームに回転自在に支持される一対の従動側アイドラプーリーと、を有する従動アーム部と、前記駆動プーリー、前記駆動側アイドラプーリー、及び、前記一対の従動側アイドラプーリーに無端状に巻き掛けられるクローラと、前記障害物接触時において、前記駆動手段からの駆動力によって前記差動機構を介して前記第1アームが回転する際に、前記第1アームの回転に同期させて前記第2アームを回転させることにより前記クローラの巻き掛け形状を略平行四辺形状に変化させる回転伝達機構と、を備えることを特徴としている。尚、配管内の障害物とは、配管内に存在するゴミ等の堆積物だけでなく、配管接合部のフランジや異径管、配管内に形成される段差等の配管の内径を変化させる構造を含むものである。また、配管とは、通常の内壁面が曲線状又は多角形状に閉じられて形成されている管状ものだけではなく、内壁面の一部が開口している形状のものや、高さ方向又は幅方向等の走行方向に対して略直交する方向に狭隘な領域を有する場所等も含むものである。
【0008】
請求項2に記載の管内走行装置は、前記差動機構として、平歯車機構を用いることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の管内走行装置は、前記第1アーム及び/又は第2アームが所定角度以上回転することを規制するための回転規制手段を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の管内走行装置は、前記第1アーム又は前記第2アームの回転角度を検出する角度検出手段と、前記角度検出手段により取得した前記第1アーム又は前記第2アームの回転角度情報を用いて、前記クローラ式走行体の走行速度を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の管内走行装置は、前記第1アーム及び前記第2アームが所定角度回転した際に前記クローラの表面に接触し、当該クローラが駆動することにより回転するガイドローラが前記車体に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の管内走行装置によれば、車体の周方向の異なる位置に複数配置され、それぞれ車体に対して伸縮機構を介して配管の径方向に拡縮可能に支持されるクローラ式走行体では、駆動手段による駆動力が、差動機構によって、通常走行時にはクローラが巻き掛けられている駆動プーリーに伝達され、配管内の障害物に接触して通常走行が不能となる障害物接触時には走行体フレームに回転自在に支持される第1アームに伝達され、第1アームが回転する。そして、回転伝達機構によって、この第1アームの回転に同期させて第2アームを回転させることによりクローラの巻き掛け形状を略平行四辺形状に変化させることができる。これにより、クローラ式走行体の走行方向の前部又は後部に角度をつけることができ、配管内の段差等の障害物に適応させることができる。また、クローラの巻き掛け形状は、略平行四辺形状に変化するので、平行四辺形の性質により、クローラの巻き掛け形状が変化してもクローラの周長は常に一定になるため、クローラの張力を維持するための機構を別途設ける必要がない。また、駆動手段の駆動方向を変えるだけで、前後対称の動作が可能となり、後退時にも前進時と同様の機能を持たせることができる。また、本発明に係る管内走行装置では、クローラの巻き掛け形状が略平行四辺形状に変化することにより、クローラ式走行体自体の高さが変化するため、駆動手段からの駆動力を伸縮機構を縮める方向へ利用することができるので、非常に効率的である。
【0013】
また、本発明に係る管内走行装置では、1つのクローラ式走行体の走行及びクローラの巻き掛け形状の形状変化は、差動機構を用いることにより、1つの駆動手段で実現することができるので、装置全体の小型化及び低コスト化が可能である。また、本発明に係る管内走行装置では、クローラ式走行体は、1つの駆動手段と差動機構を用いた劣駆動の構造となっているので、クローラ式走行体に加わる外力を第1アーム及び第2アームの回転によって逃がすことで衝撃を吸収することでき、又、それぞれのクローラ式走行体の走行速度が正確でない場合の内力バランスの調整を受動的に行うことができる。これにより、曲配管内を走行するような場合でも、それぞれのクローラ式走行体の内力バランスが受動的に調整されることによって、状況に応じてクローラと配管の内壁面との接触点を変えながら、走行することができる。また、直進走行を行う場合、それぞれのクローラ式走行体に同じ入力値を与えていても、それぞれの駆動手段には個体差があるため、走行するにつれて管内走行装置の姿勢が崩れてしまう虞があるが、本発明に係る管内走行装置では、内力バランス調整効果はそれぞれの速度誤差を互いに吸収し合うので、正確な速度制御を必要としない直進走行が可能となる。
【0014】
請求項2に記載の管内走行装置によれば、差動機構として、平歯車機構を用いているので、より効率的に装置全体の小型化を図ることができる。
【0015】
請求項3に記載の管内走行装置によれば、第1アーム及び/又は第2アームが所定角度以上回転することを規制するための回転規制手段を備えているので、障害物接触時に第1アーム及び第2アームが回転し続けることにより、クローラ式走行体が走行方向の逆方向に進むことを防止することができる。また、第1アーム及び第2アームが所定角度まで回転した際に、まだクローラ式走行体に抵抗が掛かり続けている場合には、クローラの巻き掛け形状が略平行四辺形状を維持したまま走行することができる。
【0016】
請求項4に記載の管内走行装置によれば、角度検出手段により取得した第1アーム又は第2アームの回転角度情報によりそれぞれのクローラ式走行体の走行速度に差が生じていることを容易に把握することできる。また、この角度検出手段により取得した角度情報を用いることにより、管内走行装置に生じる内力を計測するための力センサ等を設けることなく、クローラ式走行体の走行速度の制御を簡易に行うことができるので、コストを軽減することができる。
【0017】
請求項5に記載の管内走行装置によれば、第1アーム及び第2アームが所定角度回転した際にクローラの表面に接触し、クローラが駆動することにより回転するガイドローラが車体に設けられているので、第1アーム及び第2アームが回転して、クローラの巻き掛け形状が略平行四辺形状に変化した場合でも、クローラが車体に接触して駆動が妨げられてしまうことを防止し、滑らかな駆動を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る管内走行装置の一例を示す概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る管内走行装置の一例を示す概略正面図である。
図3】クローラ式走行体の一例を示す概略側面図である。
図4】クローラ式走行体の一例を示す概略平面図である。
図5】クローラが略平行四辺形状に変化した際のクローラ式走行体の一例を示す概略側面図である。
図6図3のA−A線断面図である。
図7図4のB−B線断面図であって、(a)は通常走行時における状態を示しており、(b)は障害物接触時における状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る管内走行装置1について、図面を参照しつつ説明する。管内走行装置1は、例えば、配管5内の点検等を行うためのカメラや肉厚測定センサ等を搭載して、配管5内を走行するために利用できるものであって、図1及び図2に示すように、中心部に配置される車体2と、車体2の周方向の異なる位置に配置される3個のクローラ式走行体3と、車体2に対してクローラ式走行体3を配管5の径方向に拡縮可能にそれぞれ支持する3個のパンタグラフ機構(伸縮機構)4とを備えている。尚、管内走行装置1は、上記の用途に限定されるものではなく、配管5内を走行して行われる他の作業等にも利用できるものである。また、管内走行装置1は、図2に示すような内壁面が曲線状(略円状)に閉じられて形成されている配管5内だけでなく、高さ方向や幅方向等の走行方向に対して略直交する方向が狭隘な領域内を走行する際にも好適に用いることができるものである。
【0020】
車体2は、管内走行装置1の走行方向に対して長尺な円筒状の棒部材21の両端が、前後にそれぞれ設けられる略三角形状の板状部材22の中央部に連結されており、板状部材22の三角形の頂点側には、棒部材21と平行にそれぞれ走行方向に長尺に形成された円筒状のシャフト23が連結されている。また、車体2には、走行方向に転動するガイドローラ24が、それぞれの板状部材22の頂点側から外側に若干張り出すように設けられている。
【0021】
3個のクローラ式走行体3は、車体2の周方向に互いに120度間隔でパンタグラフ機構4を介して放射状に取り付けられており、配管5内での走行安定性を確保できる構造になっている。それぞれのクローラ式走行体3は、図3及び図4に示すように、一対の走行体フレーム6と、一方側の走行体フレーム6の側面に配置されるモータ(駆動手段)7と、走行方向の前方側(図3中の左側)に設けられる駆動アーム部8と、走行方向の後方側に設けられる従動アーム部9と、無端ベルト状のクローラ10と、モータ7と反対側の走行体フレーム6の側面に配置される回転伝達機構11とを備えている。
【0022】
一対の走行体フレーム6は、それぞれ走行方向に長尺に形成された板状の部材であって、クローラ10の幅方向の寸法よりも離間して、互いに対向するように配置されおり、連結部材12によって連結されている。モータ7は、クローラ式走行体3を駆動するための駆動力を発生させるためのものであって、一方側の走行体フレーム6の側面に取り付けられている。それぞれのモータ7には、当該モータ7の回転を検出するためのエンコーダ71が設けられており、エンコーダ71から得られる回転情報に基づいて駆動速度を求めることができるようになっている。これらのそれぞれのモータ7は、外部に設けられる不図示のコントローラ(制御手段)から送られる制御信号によって制御できるように構成されており、それぞれのモータ7の駆動方向及び駆動速度を制御することで、前進後退だけでなく、上下左右への方向転換を行うことができるようになっている。尚、コントローラからモータ7へと送られる制御信号は、不図示のケーブルを介して有線で送られるように構成されていても、無線により送られるように構成されていても良い。
【0023】
駆動アーム部8は、図6及び図7に示すように、一対の走行体フレーム6の間に位置するように走行方向の前方側に配置されており、一対の走行体フレーム6に回転自在に支持される一対の前部アーム(第1アーム)81と、前部アーム81の前方側に回転自在に支持される駆動プーリー82と、駆動プーリー82から所定間隔離して前部アーム81の後方側に回転自在に支持される駆動側アイドラプーリー83と、平歯車機構を用いた差動機構84とを有している。
【0024】
一対の前部アーム81は、走行方向前後の両端側が曲線(略半円状)に形成されている板状の部材であって、一対の走行体フレーム6の間に納まり、且つ、クローラ10の幅方向の寸法よりも離間して、互いに対向するように配置されている。この前部アーム81は、中央部に挿通される第1アーム回転軸13及びベアリングを介して走行体フレーム6に回転自在に支持されている。第1アーム回転軸13は、モータ7側に位置する一端側が、モータ7からの駆動力を伝達する傘歯車機構14に連結されている。従って、第1アーム回転軸13は、モータ7の回転に伴って、直交する2軸の傘歯車を有する傘歯車機構14を介して回転するようになっている。また、第1アーム回転軸13は、差動機構84の駆動側平歯車85に固定されており、第1アーム回転軸13の回転に伴って駆動側平歯車85が回転するように構成されている。
【0025】
また、駆動側平歯車85は、従動側平歯車86と噛み合っており、駆動側平歯車85の回転に伴って従動側平歯車86が回転するようになっている。この従動側平歯車86は、駆動プーリー82に固定されており、従動側平歯車86の回転に伴って駆動プーリー82が回転するようになっている。
【0026】
駆動プーリー82は、一対の前部アーム81に駆動側支持軸15を介して回転自在に支持されている。駆動側支持軸15は、両端がそれぞれ一対の前部アーム81に連結されている。また、駆動側支持軸15を中心として駆動プーリー82が回転するように、駆動側支持軸15と駆動プーリー82の間にはベアリングが設けられている。
【0027】
駆動側アイドラプーリー83は、第1アーム回転軸13に対して駆動プーリー82と対称となる位置に配置されており、一対の前部アーム81に支持軸16を介して回転自在に支持されている。つまり、第1アーム回転軸13から駆動プーリー82の回転中心までの距離と第1アーム回転軸13から駆動側アイドラプーリー83の回転中心までの距離が等しくなるように構成されている。また、駆動側アイドラプーリー83には、駆動プーリー82と同様の径及び歯数を有するプーリーが用いられる。また、支持軸16は、両端がそれぞれ一対の前部アーム81に連結されており、支持軸16を中心として駆動側アイドラプーリー83が回転するように、支持軸16と駆動側アイドラプーリー83の間にはベアリングが設けられている。
【0028】
従動アーム部9は、図6及び図7に示すように、一対の走行体フレーム6の間に位置するように走行方向の後方側に配置されており、一対の走行体フレーム6に回転自在に支持される一対の後部アーム(第2アーム)91と、一対の後部アーム91に回転自在に支持される一対の従動側アイドラプーリー92、93とを有している。
【0029】
一対の後部アーム91は、前部アーム81と同形状のものであって、走行方向前後の両端側が曲線(略半円状)に形成されている板状の部材であり、一対の走行体フレーム6の間に納まり、且つ、クローラ10の幅方向の寸法よりも離間して、互いに対向するように配置されている。この後部アーム91は、中央部に挿通される第2アーム回転軸17及びベアリングを介して走行体フレーム6に対して回転自在に支持されている。第2アーム回転軸17は、一対の後部アーム91に連結されており、第2アーム回転軸17の回転に伴って、一対の後部アーム91が回転するように構成されている。また、第2アーム回転軸17は、モータ7側に位置する一端側が、マイタ歯車機構18に連結されており、このマイタ機構18には、ポテンショメータ(角度検出手段)19が取り付けられている。従って、第2アーム回転軸17の回転に伴って回転する後部アーム91の回転角度を直交する2軸の歯数が等しい傘歯車を有するマイタ機構18を介してポテンショメータ19により検出することができる。
【0030】
一対の従動側アイドラプーリー92,93は、それぞれ第2アーム回転軸17に対して対称となる位置に配置されており、一対の後部アーム91にそれぞれ支持軸30,31を介して回転自在に支持されている。つまり、第2アーム回転軸17から従動側アイドラプーリー92の回転中心までの距離と第2アーム回転軸17から従動側アイドラプーリー93の回転中心までの距離が等しくなるように構成されている。また、この第2アーム回転軸17から従動側アイドラプーリー92の回転中心までの距離と第2アーム回転軸17から従動側アイドラプーリー93の回転中心までの距離は、第1アーム回転軸13から駆動プーリー82の回転中心までの距離と第1アーム回転軸13から駆動側アイドラプーリー83の回転中心までの距離とも等しくなるように設計されている。つまり、後部アーム91に回転自在に支持される従動側アイドラプーリー92、93は、前部アーム81に回転自在に支持される駆動プーリー82、駆動側アイドラプーリー83に対応するように配置されている。このような従動側アイドラプーリー92、93には、駆動プーリー82、駆動側アイドラプーリー83と同様の径及び歯数を有するプーリーが用いられる。また、支持軸30、31は、それぞれ両端が一対の後部アーム91に連結されており、支持軸30、31を中心として従動側アイドラプーリー92、93がそれぞれ回転するように、支持軸30と従動側アイドラプーリー92の間及び支持軸31と従動側アイドラプーリー93の間にはそれぞれベアリングが設けられている。また、駆動プーリー82、駆動側アイドラプーリー83、及び一対の従動側アイドラプーリー92、93には、無端状のクローラ10が巻き掛けられている。
【0031】
クローラ10は、詳しくは図示しないが、駆動プーリー82の回転に伴って、クローラ10の内側に形成されている歯が駆動プーリー82の歯と噛み合って、図7(a)に示すように、駆動プーリー82の回転方向へと駆動するものである。このようにクローラ10が駆動することによって、クローラ10の表面が順次配管5の内壁面と接触し、クローラ式走行体3の長手方向に作用する摩擦力によりクローラ式走行体3は配管5内を走行することができる。このクローラ10の材質としては、配管5の内壁面に当接した際に滑り難いものであることが好ましく、例えば、シリコンゴムやナイロンゴム等のゴム等を用いることができる。また、配管5内を走行する際の滑りを防止するために、クローラ10の表面に凹凸形状等の滑り止め防止手段を設けるようにしても良い。尚、このクローラ10の材質は、特に限定されるものではなく、従来公知のクローラに使用されているものを用途等に応じて適宜採用するようにしても良い。
【0032】
回転伝達機構11は、前部アーム81の第1アーム回転軸13回りの回転に同期させて、後部アーム91を第2アーム回転軸回りに回転させるためのものであって、モータ7が配置されている走行体フレーム6とは反対側の走行体フレーム6の側面に配置されている。この回転伝達機構11は、前部アーム81の回転に伴って回転軸32と共に回転する駆動プーリー33と、第2アーム回転軸17のマイタ歯車18が連結されている一端側とは逆側に位置する他端側に固定される従動プーリー34と、駆動プーリー33と従動プーリー34に巻き掛けられ、駆動プーリー33の回転力を従動プーリー34へ伝達する無端状のタイミングベルト35とを備えている。また、この回転伝達機構11には、タイミングベルト35の張力を調節するためのテンショナー36が走行体フレーム6の略中央部に設けられている。
【0033】
回転軸32は、一端側が前部アーム81に固定されており、他端側が駆動プーリー33に固定されている。また、この回転軸32は、走行体フレーム6にベアリングを介して回転自在に設けられている。従って、前部アーム81が回転すると、それに伴って回転軸32及び駆動プーリー33が回転する。この駆動プーリー33の回転は、タイミングベルト35を介して従動プーリーへ34と伝達され、他端側が従動プーリー34に固定されている第2アーム回転軸17が回転し、それに伴って後部アーム91が回転することになる。また、従動プーリー34には、駆動プーリー33と同様の径及び歯数を有するプーリーが用いられており、前部アーム81の回転角度と後部アーム91の回転角度は等しくなるように構成されている。従って、クローラ10の巻き掛け形状は、図5及び図7(a)に示すように、前部アーム81が回転することにより、略平行四辺形状に変化する。
【0034】
また、前部アーム81及び後部アーム91には、図4及び図5に示すように、所定角度以上回転することを規制するための回転規制手段として、ストッパーピン37が前部アーム81及び後部アーム91から外側へ突出するように設けられており、前部アーム81及び後部アーム91が所定角度回転した際に、走行体フレーム6に当接することにより、機械的にそれ以上回転できないように構成されている。尚、前部アーム81及び後部アーム91は同期して回転するので、ストッパーピン37は、必ずしも前部アーム81及び後部アーム91の両方に設けられている必要はなく、前部アーム81又は後部アーム91のいずれか一方に設けるようにしても良い。また、このストッパーピン37を設ける位置を変更することにより、前部アーム81及び後部アーム91が回転できる角度を適宜調整することが可能である。
【0035】
このように構成されるそれぞれのクローラ式走行体3は、配管5の径方向に拡縮可能にパンタグラフ機構4を介して車体2に支持されている。パンタグラフ機構4は、図3図5に示すように、一端側が車体2のシャフト23に対してスライド自在に設けられているスライド部材43に対して回動可能に取り付けられ、他端側が一対の走行体フレーム6に両端が連結されているシャフト38に回動可能に取り付けられているリンク41と、リンク41よりも短く形成され、一端側がシャフト23の中央付近に固定されている固定部材39に回動可能に取り付けられ、他端側がリンク41の中途部に回動可能に取り付けられているリンク42との組み合わせが、車体2の走行方向の中央部に対して対称に設けられた構成になっている。
【0036】
また、車体2の前後にそれぞれ設けられる板状部材22とスライド部材43の間のシャフト38には、スライド部材43をシャフト38の中央部の方向へ付勢する付勢力を有するバネ40がそれぞれ設けられている。これにより、パンタグラフ機構4には、常に外側へ膨らもうとする力が作用し、クローラ式走行体3のクローラ10を配管5内壁面に押し付けることができる。また、直径の小さな配管5でクローラ10の巻き掛け形状が、略平行四辺形状に変化した場合、クローラ10が車体2に当接し、クローラ式走行体3の走行を妨げないように、図5に示すように、クローラ10の表面がガイドローラ24に接触することにより、クローラ10の滑らかな駆動を促すことができるように構成されている。尚、伸縮機構は、このような構成のパンタグラフ機構4に限定されるものではなく、車体2に対してクローラ式走行体3を、配管5の径方向に拡縮可能に支持できる機構であれば良く、同様の機能を有する従来公知の他の伸縮機構を用いても良い。また、クローラ式走行体3の数は、配管5内を走行する場合には、上下左右に安定して走行できるように少なくとも3個設けられていることが好ましいが、これに限定されるものではなく、狭隘な領域内を安定して走行できるものであれば良く、少なくとも2個以上設けられていれば良い。また、管内走行装置1の走行方向に対して略直交する方向が狭隘な領域を有する場所等を走行する場合には、狭隘な方向に対して拡縮可能にクローラ式走行体3がパンタグラフ機構4によって車体2に支持されていれば良い。
【0037】
以下、本実施形態に係る管内走行装置1の走行動作の一例について、図面を参照しつつ説明する。まず、配管5内に管内走行装置1が挿入されると、パンタグラフ機構4により各クローラ式走行体3は、図2に示すように、配管5の内壁面へと押し付けられた状態になる。この状態で、管内走行装置1を前進走行(通常走行)させる場合には、3個のクローラ式走行体3をそれぞれ同じ速度で走行するように、コントローラ(不図示)から各モータ7に対して制御信号を送る。
【0038】
各クローラ式走行体3では、モータ7に制御信号が送られ、モータ7が駆動すると、モータ7の駆動力が傘歯車機構14を介して第1アーム回転軸13へ伝達され、第1アーム回転軸13が回転する。そして、第1アーム回転軸13の回転に伴って、第1アーム回転軸13に固定されている差動機構84の駆動側平歯車85が回転し、駆動側平歯車85と噛み合っている従動側平歯車86が回転する。また、この従動側平歯車86は、駆動プーリー82に固定されており、従動側平歯車86の回転に伴って駆動プーリー82が回転する。これにより、駆動プーリー82に巻き掛けられているクローラ10が駆動プーリー82の回転に伴って、図7(a)に示すように、駆動プーリー82の回転方向へと駆動し、クローラ10の表面が順次配管5の内壁面と接触し、クローラ式走行体3の長手方向に作用する摩擦力によりクローラ式走行体3は配管5内を通常走行することができる。
【0039】
一方、クローラ式走行体3が、図5に示すように、配管5内の段差51等の障害物に接触して、一時的に通常走行が不能となる障害物接触時においては、図7(b)に示すように、差動機構84を構成する駆動側平歯車85及び従動側平歯車86からなる平歯車機構の回転が止まり、第1アーム回転軸13を中心に前部アーム81自体が回転し始める。この時、図5に示すように、クローラ式走行体3自体の高さが変化するため、モータ7からの駆動力をパンタグラフ機構4を縮める方向へ利用することができる。
【0040】
そして、前部アーム81が回転すると、回転伝達機構11によって、前部アーム81の回転に同期させて後部アーム91を回転させることによりクローラ10の巻き掛け形状を図5及び図7(b)に示すように、略平行四辺形状に変化させることができる。また、前部アーム81及び後部アーム91が所定角度まで回転すると、ストッパーピン37が走行体フレーム6に当接し回転が規制される。この状態で、更にクローラ式走行体3に抵抗が一定以上掛かり続けている場合には、クローラ10の巻き掛け形状が、略平行四辺形状に維持されたまま、差動機構84を介して駆動力がモータ7の駆動力が駆動プーリー82へと伝達され、クローラ10が再び駆動して走行することができる。
【0041】
このように本実施形態に係る管内走行装置1では、配管5内の状況に応じて、クローラ10の巻き掛け形状を略平行四辺形状に受動的に変化させることができるので、クローラ式走行体3の走行方向の前部又は後部に角度をつけることができ、配管5内の段差等の障害物に適応させることができる。また、クローラ式走行体3が障害物等に接触したり、各クローラ式走行体3の速度に差が生じることにより、前部アーム81及び後部アーム82が回転したことは、ポテンショメータ19によって容易に把握することができるので、この角度情報を用いることにより、クローラ式走行体3の走行速度の制御を簡易に行うことができる。また、管内走行装置1では、それぞれのクローラ式走行体3は、1つのモータ7と平歯車機構を用いた差動機構84を有する劣駆動の構造となっているので、クローラ式走行体3に加わる外力を前部アーム81及び後部アーム91の回転によって逃がすことで衝撃を吸収することでき、又、それぞれのクローラ式走行体3の走行速度が正確でない場合の内力バランスの調整を受動的に行うことができる。また、本実施形態では、内壁面が略円状に閉じられて形成されている配管5内を管内走行装置1が走行する際を例に説明しているが、管内走行装置1は、このような配管5内だけでなく、障害物があり、高さ方向や幅方向等の走行方向に対して略直交する方向が狭隘な領域内においても、高い走破性を得ることができる。
【0042】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 管内走行装置
2 車体
3 クローラ式走行体
4 パンタグラフ機構(伸縮機構)
5 配管
6 走行体フレーム
7 モータ(駆動手段)
8 駆動アーム部
81 前部アーム(第1アーム)
82 駆動プーリー
83 駆動側アイドラプーリー
84 差動機構
9 従動アーム部
91 後部アーム(第2アーム)
92,93 従動側アイドラプーリー
10 クローラ
11 回転伝達機構
19 ポテンショメータ(角度検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7