(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である回転輪を備えた動力伝達装置が設けられた汚泥かき寄せ機を、沈殿池に設置した一例を示す平面図である。また、
図2は、
図1のA−A断面を模式的に示した図である。なお、
図1では、
図2に示す汚泥かき寄せ機3を省略している。
【0014】
図1に示す沈殿池は、所定方向(
図1では左から右方向)に延在した矩形状の池であり、延在方向の一端側(
図1では左側)から汚水や雨水といった下水を受け入れ、受け入れた下水に含まれる汚泥を池底部1dに沈殿させ、他端側(
図1では右側)から排水する。以下、
図1における左方向を上流方向と称し、
図1における右方向を下流方向と称することがある。また、
図1における上下方向を池幅方向と称することがある。
【0015】
図1に示すように、沈殿池1は、池幅方向両側に設けられた一対の側壁1aと、上流壁1bと、下流壁1cによって囲まれた、平面視で略長方形状をした池である。
【0016】
図2に示すように、この沈殿池1には、スカム除去装置10と、汚泥かき寄せ機3と、排水樋41と、汚泥ピット42が設けられている。排水樋41は沈殿池1の下流側に設けられており、汚泥ピット42は沈殿池1の上流側に設けられている。
【0017】
汚泥かき寄せ機3は、沈殿池1の池幅方向両端部それぞれに設けられ、沈殿池1内を走行する一対のチェーン8と、その一対のチェーン8の間に掛け渡された複数のフライト板9を備えている。チェーン8は、池底部1dに沿った軌道と水面Wに沿った軌道とがつながった周回軌道を形成した環状のものである。環状であるチェーン8には、全周にわたって、周方向に均等に間隔をあけてフライト板9が取り付けられている。なお、
図2では、チェーン8を上記周回軌道で示している。チェーン8についての詳しい説明は後述する。以下、チェーン8が周回軌道を時計回りに走行する方向(
図2において矢印で示す方向)を、周回方向と称することがある。
【0018】
水面Wに沿った軌道の上流端付近と下流端付近には、本発明にかかる回転輪の一例としてのスプロケット5,6が配置されている。また、池底部1dに沿った軌道の上流端付近と下流端付近には、シーブ車71,72が配置されている。これらのスプロケット5,6およびシーブ車71,72は、上記周回軌道よりも内側に配置され、チェーン8の一部が巻き掛けられている。また、これらのスプロケット5,6およびシーブ車71,72は、池幅方向両端側それぞれに設けられている。チェーン8の、スプロケット5,6に巻き掛けられた部分は、スプロケット5,6に係合している。なお、スプロケット6に代えて、シーブ車を配置してもよく、シーブ車71,72に代えて、スプロケットを配置してもよい。
【0019】
スプロケット5の中心部分には、駆動軸55が回転不能に固定されており、駆動軸55が不図示のモータによって回転することで、スプロケット5も回転する。すなわち、このスプロケット5は、不図示のモータの駆動力が伝達され、チェーン8を走行させる駆動輪である。
図2に示すスプロケット5は時計回りに回転駆動し、チェーン8も時計回りに走行する。一方、スプロケット6、シーブ車71,72は、チェーン8の走行に伴って回転する従動輪である。従動輪のスプロケット6と、従動輪のシーブ車71,72の中心部分には固定軸65,75,75が通されている。スプロケット6、シーブ車71,72はいずれも、その固定軸65,75,75に対して回動自在であり、各軸65,75,75は軸回りに回転不能に固定配置されている。スプロケット5,6の構造についての詳しい説明は後述する。
【0020】
駆動軸55が回転することでスプロケット5が回転し、チェーン8が走行する。チェーン8が走行すると、フライト板9が池底部1dに沿った軌道を下流側から上流側に向かって走行し、池底部1dに沈殿した汚泥は、フライト板9によって上流側の汚泥ピット42にかき寄せられる。すなわち、スプロケット5とチェーン8は、不図示のモータの駆動力をフライト板9に伝達するものである。本実施形態の動力伝達装置31は、スプロケット5とチェーン8とを備えたものであり、スプロケット6、シーブ車71,72も有している。なお、汚泥ピット42に掻き寄せられた汚泥は、図示しない汚泥ポンプによって沈殿池1の外部に排出される。
【0021】
また、駆動軸55を回転させる不図示のモータはトルクリミッタ機能を有している。例えば、池底部1dを走行しているチェーン8に取り付けられたフライト板9に異物が噛み込んでしまい、モータに過剰な負荷がかかると、トルクリミッタ機能が働き、モータは一旦停止する。そして、異物の噛み込みを解除するために、不図示のモータは少しの時間だけ逆転(
図2における反時計回りに回転)する。これによって、チェーン8は、周回方向とは反対方向に走行する。
【0022】
スカム除去装置10は、堰11と、トラフ12と、スカムピット16(
図1参照)を備えている。トラフ12は、池底部1dから所定の高さ位置に固定されたものである。このトラフ12は、沈殿池1を池幅方向に横切って、沈殿池1の外部に設けられたスカムピット16(
図1参照)まで延在している。
図2に示すトラフ12の、池幅方向に延在した上流側の壁121の上縁よりも高い所定の水位が、この沈殿池1の最低水位になる。堰11は、トラフ12に対して下端を回動中心にして回動自在に、接続部材13によってそのトラフ12に接続されている。堰11は、上端が水面Wよりも上に位置する堰止状態と、上段が水中に没した呑込状態との間で状態変化するものである。
図2に示す堰11は堰止状態である。この堰止状態にある堰11は、不図示の駆動機構によってその上端が押し下げられると下端を回動中心にして回動し、呑込状態になる。堰11は、堰止状態では沈殿池1内の水がトラフ12に流入するのを阻止するのに対して、呑込状態では沈殿池1内の水がトラフ12に流入する。
【0023】
沈殿池1の水面Wにはスカムが浮遊している。チェーン8が走行すると、フライト板9が水面Wに沿った軌道を上流側から下流側に向かって走行し、沈殿池1の水面Wに浮かんだスカムは、堰11に向けてフライト板9によって移送される。ここでも、スプロケット5とチェーン8によって、不図示のモータの駆動力がフライト板9に伝達される。スカムは、一定時間経過後、堰が呑込状態になると、沈殿池1内の水とともに堰11の上端を越えてトラフ12内に流入する。トラフ12の底は、沈殿池1の外部にあるスカムピット16に向けて下方へ傾斜しており、スカムが混入したスカム混入水は、トラフ12を通って
図1に示すスカムピット16に到達する。スカムピット16には、ポンプ161を備えている。このポンプ161は、スカムピット16に溜まったスカム混入水を汲み上げるものである。
【0024】
沈殿池1内の水は、トラフ12の下をくぐって排水樋41から図示しない排水路に流れ、沈殿池1の外部に排水される。
【0025】
続いて、チェーンの一例について説明する。
【0026】
図3(a)は、
図1に示すチェーンの一部を上方から見た図であり、同図(b)は、同図(a)に示すチェーンの一部を側方から見た図である。
図3では、図の左から右に向う方向が周回方向になり、チェーン8は、図の左から右に向かって走行する。また、
図3(a)では、図の上下方向が池幅方向になり、同図(b)では、紙面と直交する方向が池幅方向になる。
【0027】
チェーン8は、リンク部材80と連結ピン85とを有し、連結ピン85によってリンク部材80を周方向に連結してなるものである。リンク部材80は、例えば、合成樹脂製のものであり、連結ピン85は、例えば、合成樹脂製または金属製のものである。リンク部材80は、池幅方向に間隔をあけて対向する一対のリンク板81が、バレル部82によってつながったものである。バレル部82は、対向する一対のリンク板81における、周回方向上流側に設けられている。また、一対のリンク板81それぞれの周回方向下流側には、ボス部83が設けられている。リンク部材80は、一対のリンク板81とバレル部82とを池幅方向に貫通した第1挿通孔81aと、一対のリンク板81とボス部83とを池幅方向に貫通した第2挿通孔81bを有している。
【0028】
ボス部83は、一対のリンク板81それぞれにおける、池幅方向の外側に突出したものである。すなわち、ボス部83は、一対のリンク板81のうちの一方のリンク板81における、他方のリンク板81とは反対側に突出したものである。また、ボス部83は、バレル部82の径と略同じ径を有するものである。以下、一対のリンク板81における、ボス部83が突出する側を、リンク板81の外側と称することがある。なお、ここにいうリンク板81の外側とは、リンク板81自身の外側の側面811も含む。ボス部83は、一対のリンク板81における、一方側にのみ設けられたものであってもよく、バレル部82の径と異なる径を有するものであってもよい。また、ボス部83は、リンク板81と一体に構成されたものであってもよく、リンク板81から取り外すことができ、新しいボス部に交換することができるものであってもよい。
【0029】
連結ピン85は、池幅方向に延在した軸部851と、軸部851の一端側に設けられ、第1挿通孔81aおよび第2挿通孔81bの径より大きな頭部852を有している。連結ピン85は、リンク部材80の第1挿通孔81aと、このリンク部材80に連結する別のリンク部材80の第2挿通孔81bとに軸部851が通されている。連結ピン85は、頭部852が一方のボス部83に当接し、軸部851の他端側部分が他方のボス部83から外側に突出している。軸部851の、ボス部83から突出した部分には、係止リング853と抜け止め防止ピン854が配置されている。係止リング853は、軸部851の他端側の端部を係止するものである。抜け止め防止ピン854は、軸部851の径と略同じ径を有する馬蹄形のものであり、ボス部83と係止リング853との間に配置され、連結ピン85の延在方向の位置を規制している。また、抜け止め防止ピン854は、連結ピン85がリンク部材80に対して回転することを規制する回り止めピンとしても機能している。係止リング853および抜け止め防止ピン854と、頭部852は、チェーン8の周回方向にわたって互い違いに設けられている。なお、
図3では、右側のリンク部材80に対し、周回方向下流側に連結するリンク部材は省略し、リンク板81の第2挿通孔81bに連結ピン85の軸部851が通された状態を示している。また、左側のリンク部材80に対し、周回方向上流側に連結するリンク部材と連結ピンを省略している。
【0030】
リンク部材80は、一方のボス部83に代えて、連結ピン85の頭部852とリンク板81との間にスペーサを設けてもよく、一方のボス部83を省略して、連結ピン85の頭部852をリンク板81に直接当接させる構成にしてもよい。また、他方のボス部83に代えて、抜け止め防止ピン854とリンク板81との間にスペーサを設けてもよく、他方のボス部83を省略して、抜け止め防止ピン854を、リンク板81と係止リング853との間に配置する構成にしてもよい。また、連結ピン85は、軸部851の長さを長く形成することによって、係止リング853よりも外側に、所定長突出するものであってもよい。さらに、リンク部材80は、バレル部82を有しないものであってもよく、対向する一対のリンク板81は、バレル部82以外の部分や部材によってつながったものであってもよい。
【0031】
中央に示すリンク部材80には、ステー86が設けられている。このステー86には、不図示の取付部材を介して、
図2に示すフライト板9が取り付けられる。
図3(a)では、リンク部材80を明確に示すため、ステー86を簡略化して示している。
【0032】
続いて、本発明の回転輪の一例としてのスプロケットについて説明する。
【0033】
図4(a)は、
図1に示す、駆動軸を回転中心にして回転するスプロケットを池幅方向から見た図であり、同図(b)は、同図(a)に示すスプロケットのB−B断面図である。
図4(a)では、紙面と直交する方向が池幅方向になり、同図(b)では、図の左右方向が池幅方向になる。また、
図4に示すスプロケットは、池幅方向が厚み方向になる。なお、図
2に示すスプロケット6は、スプロケット5と同一構造である。
【0034】
図4(a)および同図(b)に示すように、スプロケット5は、ボス51と、このボス51の外周部分における、厚み方向中央部分から放射方向に延在した中央フランジ52と、中央フランジ52の外周部分における、厚み方向の両側に配置された一対の外側フランジ53を備えている。以下の説明では、中央フランジ52に対して、一対の外側フランジ53がそれぞれ配置されている両側あるいは一方側のみを外側と称することがある。
【0035】
ボス51は、一対のボス形成部材51a,51bを厚み方向に接合したものである。ボス51は、厚み方向に貫通するボス孔511を有している。なお、ボス孔511は、キー溝511aを有している。このボス孔511に、図
2に示す駆動軸55を通し、キー溝5
11aに図示しないキーを嵌め込むことによって駆動軸55にスプロケット5を固定する。一対のボス形成部材51a,51bを接合すると、一対のボス形成部材51a,51bの接合面における外周部分には、周方向に沿って延在する溝512が形成される。中央フランジ52は、中央部分に円形の開口を有する円盤状のものであり、内周側の端部がボス51の溝512に嵌め込まれている。これら、一対のボス形成部材51a,51bと中央フランジ52は、厚み方向に延在し間隔をあけて周方向に配置された、ボルトとナットからなる第1締結部材513によって固定されている。中央フランジ52は、その外周部分に、放射方向に突出した複数の第1歯521を有している。これら複数の第1歯521は、中央フランジ52の外周部分に、間隔をあけて周方向に配列されたものである。第1歯521は、周方向の両側それぞれに、第1歯521の歯たけを確定する第1立上がり部5211を有している。
【0036】
外側フランジ53は、中央フランジ52よりも厚みが薄い、ドーナツ円盤状であり、外周が、中央フランジ52の外周と略同じ大きさのものである。この外側フランジ53は、スペーサ54を介して、中央フランジ52の外周部分における外側それぞれに、第2締結部材532によって固定されている。このスペーサ54の厚み分、中央フランジ52の外周側部分と外側フランジ53の外周側部分は、厚み方向に間隔をあけて対向している。
【0037】
外側フランジ53は、その外周部分に、放射方向に突出した複数の第2歯531を有している。これら複数の第2歯531は、中央フランジ52の第1歯521と同様に、外側フランジ53の外周部分に、間隔をあけて周方向に配列されたものである。また、第2歯531は、周方向の両側それぞれに、第2歯531の歯たけを確定する第2立上がり部5311を有している。第2歯531は、池幅方向から見た形状が、第1歯521と略同一形状のものであり、
図4(b)に示すように、第2歯531は、歯たけの高さが第1歯521の歯たけの高さと略同じである。さらに、外側フランジ53は、第2歯531の周方向における位置を、第1歯521の周方向における位置と合わせた状態で、中央フランジ52に固定されている。これらのため、第1歯521と第2歯531が、厚み方向に揃った状態になり、
図4(a)では、第2歯531に第1歯521が隠れている。また、
図4(b)に示すように、1つの第1歯521と、この第1歯521の外側それぞれに第2歯531が設けられ、スプロケット5の厚み方向に、歯が間隔をあけて3列並んだ状態になっている。ここで、外側フランジ53は、中央フランジ52の外側における一方にのみ設けてもよく、この場合には、スプロケット5の厚み方向に、歯が間隔をあけて2列並ぶ状態になる。
【0038】
なお、スプロケット5は、ボス51と中央フランジ52を一体に構成してもよく、ボス51と、中央フランジ52と、外側フランジ53を一体に構成してもよい。また、中央フランジ52は、第1歯521の部分を取換え可能な構成にしてもよい。第1歯521の部分を取換え可能な構成にすることによって、第1歯521が摩耗してしまった場合に、第1歯521の部分のみを取換えることができ、第1歯521以外の部分を継続して使用することができる。スプロケット5は、全体が、例えば合成樹脂からなる同一の素材で構成されたものであってもよく、ボス51を金属製とし、中央フランジ52と外側フランジ53を合成樹脂製にする等、部材毎に素材を異ならせてもよい。
【0039】
続いて、本発明の回転輪と、チェーンとを備えた、動力伝達装置の一例について説明する。
【0040】
前述したように、動力伝達装置31は、
図1に示す、チェーン8と、本発明の一例としてのスプロケット5,6と、シーブ車71,71とを備えたものである。
【0041】
図5(a)は、
図1に示す、駆動軸を回転中心にして回転するスプロケットにチェーンの一部が巻き掛けられた部分を拡大して示す模式図であり、
図5(b)は、同図(a)を上方から見た模式図である。なお、同図(a)では、図面を簡略化するため、スプロケット5を仮想線で示している。また、同図(b)では、スプロケット5は、第1歯521と第2歯531のみを示すとともに、スプロケット5とチェーン8の係合状態を分かりやすくするため、フライト板を取り付けるステー86を簡略化して示している。なお、同図(a)では、紙面に直交する方向が、池幅方向になり、駆動軸が延在する軸方向にもなる。また、同図(b)では、上下方向が、池幅方向になり、駆動軸が延在する軸方向にもなる。さらに、同図(a)では、矢印で示す時計回りの方向が周回方向になり、同図(b)では、左側から右側に向かう方向が周回方向になる。
【0042】
図5(a)および同図(b)に示すように、チェーン8の、スプロケット5に巻き掛けられた部分のリンク部材80は、スプロケット5の、第1歯521と第2歯531との間に、リンク板81がそれぞれ入り込んでいる。
図5では不図示の駆動軸が回転すると、スプロケット5が回転し、
図5(b)に示す、左側の第1歯521と中央の第1歯521それぞれにおける、周回方向下流側の第1立上がり部5211がバレル部82に係合し、左側の第2歯531と中央の第2歯531それぞれにおける、周回方向下流側の第2立上がり部5311がボス部83に係合する。すなわち、本実施形態の動力伝達装置31では、チェーン8のバレル部82が、第1被係合部に相当し、チェーン8のボス部83が、第2被係合部に相当する。また、スプロケット5の第1歯が有する、周回方向下流側の第1立上がり部5211が、第1係合部に相当し、スプロケット5の第2歯が有する、周回方向下流側の第2立上がり部5311が、第2係合部に相当する。これらによって、スプロケット5の動力がチェーン8に伝達され、チェーン8が周回方向に走行する。また、チェーン8が走行することによって、ここでは不図示のフライト板にも動力が伝達され、チェーン8とともに周回方向を走行し、池底部1dに沈殿した汚泥や水面Wに浮遊したスカムがかき寄せられる。なお、
図5(b)に示す、右側の、第1歯521と第2歯531は、係合が解除され、リンク部材80と離れている。
【0043】
本実施形態の動力伝達装置31によれば、チェーン8にスプロケット5が係合する部位が複数(3箇所)になる。このため、チェーンにスプロケット等の回転輪が係合する部位が単数の場合に比べて、係合する部位の面積が増え、係合時に、チェーン8にスプロケット5が係合する部位にかかる力が分散されることで、チェーン8やスプロケット5の摩耗を低減することができる。なお、チェーン8の走行に伴って、
図1に示す、スプロケット6とシーブ車71,72も回転する。
【0044】
ここで、特に、チェーンの材質が樹脂である場合、チェーンが周方向に伸びやすい。このため、チェーンにおける、スプロケットが係合する複数の係合部位を周方向に異なった位置に設けると、上記複数の係合部位に同時に係合させるための調整が困難になる。この結果、上記複数の係合部位を周方向に片寄って押すことになりやすく、チェーンやスプロケットが摩耗してしまう。本実施形態によれば、バレル部82の径と2つのボス部83の径を略同じにし、バレル部82と二つのボス部83を、リンク板81の板厚方向に一列に並べている。また、
図5(b)で一点鎖線で示すように、第1歯521の第1立上がり部5211と、2つの第2歯531それぞれの第2立上がり部5311も、リンク板81の板厚方向に一列に並べている。これらのため、バレル部82と二つのボス部83を、第1歯521の第1立上がり部5211と、2つの第2歯531それぞれの第2立上がり部5311によって、片寄りなく押すことができ、チェーン8やスプロケット5の摩耗を抑えることができる。
【0045】
また、前述した、フライト板が異物を噛み込んだ場合には、駆動軸が反時計回りに回転することによって、スプロケット5も反時計回りに回転する。これによって、
図5(b)に仮想線で示すように、右側の第1歯521と中央の第1歯521における、周回方向上流側の第1立上がり部5211がバレル部82に係合し、右側の第2歯531と中央の第2歯531における、周回方向上流側の第2立上がり部5311がボス部83に係合する。すなわち、スプロケット5が反時計回りに回転する場合には、スプロケット5の第1歯が有する、周回方向上流側の第1立上がり部5211が、第1係合部に相当し、スプロケット5の第2歯が有する、周回方向上流側の第2立上がり部5311が、第2係合部に相当する。これらによって駆動軸の駆動力がスプロケット5からチェーン8に伝達され、チェーン8は周回方向とは反対側に走行する。
【0046】
ところで、地震が起こると、その地震の揺れによって沈殿池内の水面付近の水が大きく波打つスロッシングが生じる場合がある。このスロッシングが生じると水面軌道部分が大きく揺れ動き、その揺れの力がチェーン8の、スプロケット5に巻き掛けられた部分に伝わることでチェーン8がスプロケット5から脱輪してしまうことがある。本実施形態では、第2歯531の歯たけを、第1歯521の歯たけと同じ高さにしているが、第2歯の歯たけを第1歯521の歯たけよりも高くしてもよい。こうすることで、スロッシングが生じてチェーン8が上下方向に揺れ動いても、第2歯531の歯たけと第1歯521の歯たけが同じ高さであるスプロケットに比べ、歯たけの高い第2歯531によってリンク板81が外れにくくなる。このため、スプロケット5からチェーン8が脱輪することを抑えることができる。なお、全ての第2歯531の歯たけを第1歯521の歯たけより高くしなくてもよい。例えば、スプロケット5の周方向において、1つおき、或いは複数おき毎に、歯たけの高い第2歯531を設けてもよく、歯たけの高い第2歯531を、スプロケット5の周方向において、一方側と他方側とに互い違いに設けてもよい。さらに、池幅方向両端側それぞれに設けられたスプロケット5において、それぞれの他方のスプロケット側(池幅方向内側)における第2歯531の歯たけを、中央の第1歯521の歯たけよりも高くしてもよく、あるいは反対に、それぞれの他方のスプロケット側とは反対側(池幅方向外側)における第2歯531の歯たけを、中央の第1歯521の歯たけよりも高くしてもよい。なお、第1歯521の歯たけを、スロッシングによる脱輪を防ぐことができる十分な高さに形成し、第2歯531の歯たけを、第1歯521の歯たけよりも低くしてもよい。
【0047】
また、第2歯531は、第1歯521の外側における一方側と他方側の両側にそれぞれ設けなくてもよい。第1歯521の外側における一方側にのみ設けてもよく、例えば、第1歯521の外側において、周回方向に、一方側と他方側とに互い違いに設けてもよい。さらに、リンク部材80にボス部83が設けられていない場合には、
図3(a)に示す、連結ピン85の頭部852や、連結ピン85の軸部851における、リンク板81の外側に突出した部分(以下、突出部分という)に、第2歯531を当接させてもよく、ボス部83の代わりに配置されたスペーサ等に当接させてもよい。また、バレル部82をリンク板81の外側まで延在させ、この延在した部分(以下、延在部分という)に第2歯531を当接させてもよい。これらの場合には、第2歯531が当接する、頭部852、上記突出部分、スペーサ等、上記延在部分、それぞれが、第2被係合部に相当する。
【0048】
第1歯521は、バレル部82以外の部分や部材に係合するものであってもよい。例えば、バレル部82を省略した場合には、第1歯521は、連結ピン85の軸部851に係合するものであってもよい。この場合には、連結ピン85の軸部851が、第1被係合部に相当する。
【0049】
また、リンク板81の外側の側面811に、凹部または穴、溝等を設け、スプロケット5にこれら凹部等に係合する第2係合部を設けてもよい。これらの場合には、リンク部材80の外側の側面811に設けられた、凹部または穴、溝等が、第2被係合部に相当する。
【0050】
さらに、スプロケット5に駆動ピンを設け、リンク部材80に、この駆動ピンに係合するノッチ部を設けてもよい。ただしこのノッチ部は、リンク部材80における、駆動軸の中心側になる、リンク部材80の底面に設けるのではなく、リンク部材80の外側に設けることが好ましい。こうすることで、リンク板81を底面側から切り欠く必要がなくなり、リンク板81の底面にノッチを設ける場合に比べて、リンク部材80の強度の低下を抑えることができる。なお、チェーン8にノッチ部を設け、スプロケット5に駆動ピンを設けた場合であっても、チェーン8は、スプロケット5の第1歯521と係合しているため、スプロケット5の駆動ピンがノッチ部から外れてしまう、いわゆる歯とびが生じることもない。
【0051】
以上説明した、チェーン、回転輪、および動力伝達装置によれば、チェーンおよび回転輪の摩耗を低減することができる。
【0052】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、本実施形態では、チェーン8、スプロケット5,6、動力伝達装置31を、汚泥かき寄せ機3に用いているがこれに限られるものではなく、駆動軸等の動力を伝達する必要がある各種装置や機械等に適用することができる。
【0053】
これまでに説明したチェーンは、間隔をあけて対向する一対のリンク板を周方向に連結し、第1係合部と第2係合部を有する回転輪に巻き掛けられるチェーンにおいて、
前記一対のリンク板の間に設けられ、前記第1係合部が係合する第1被係合部と、
前記一対のリンク板のうちの少なくとも一方のリンク板における、他方のリンク板とは反対側に設けられ、前記第2係合部が係合する第2被係合部とを有し、
前記第1被係合部と前記第2被係合部は、前記リンク板の板厚方向に一列に並べて設けられたものであってもよい。
【0054】
ここで、このチェーンを構成する総ての一対のリンク板のうちの少なくとも一方のリンク板における前記反対側に前記被係合部が設けられている態様であってもよいし、一部の一対のリンク板のうちの少なくとも一方のリンク板における前記反対側に前記被係合部が設けられている態様であってもよい。また、一方のリンク板と他方のリンク板は、形状が同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、前記第2被係合部は、前記一方のリンク板における、前記反対側の側面に設けられた、凹部や穴、溝等であってもよい。
【0055】
前記チェーンによれば、前記回転輪の前記第1係合部が、前記一対のリンク板の間に設けられた前記第1被係合部に係合し、該回転輪の前記第2係合部が、少なくとも前記一方のリンク板における、前記他方のリンク板とは反対側に設けられた前記第2被係合部に係合する。これらのため、前記回転輪が係合する部位が、前記一対のリンク板の間と、少なくとも前記一方のリンク板における、前記他方のリンク板とは反対側との複数になり、該回転輪が係合する部位が単数の場合に比べて、該回転輪への係合時に該部位にかかる力が分散され、該回転輪やチェーン自身の摩耗を低減することができる。ここで、前記一対のリンク板それぞれに前記第2被係合部を設けた場合、前記第1被係合部と、2つの前記第2被係合部が、前記周方向に見てズレていると偏摩耗が生じやすいが、前記第1被係合部における、前記第1係合部が係合する第1係合箇所と、前記第2被係合部における、前記第2係合部が係合する第2係合箇所が、前記周方向に見て一致していれば、3点で前記周方向に同時に押すことができ、偏摩耗が生じにくい。
【0056】
また、前記チェーンにおいて、前記第2被係合部は、前記一方のリンク板から前記反対側に突出したものであってもよい。
【0057】
こうすることで、前記回転輪の前記第2係合部が、前記第2被係合部に係合しやすくなる。また、前記リンク板に、ノッチのような切欠きを設けてもよいが、過度の強度低下を招く切欠き(例えば、ノッチ)は不要になる。
【0058】
ここで、前記第2被係合部は、前記リンク板における、連結部材の挿入孔に設けられたボス部であってもよい。
【0059】
さらに、前記チェーンにおいて、前記一対のリンク板を該リンク板の厚み方向に貫通し、該一対のリンク板を周方向に連結する連結部材を備え、
前記連結部材は、少なくとも一端側が、前記一方のリンク板から前記反対側に突出したものであり、
前記第2被係合部は、前記連結部材の少なくとも前記一端側に設けられたものであってもよい。
【0060】
これまでに説明した回転輪は、第1被係合部と第2被係合部を有するチェーンが巻き掛けられる回転輪において、
厚み方向中央部分で放射方向に突出し、前記第1被係合部に係合する第1係合部と、
厚み方向一端側で放射方向に突出し、前記第2被係合部に係合する第2係合部とを有し、
前記第1係合部と前記第2係合部は、厚み方向に一列に並べて設けられるとともに、該第1係合部も該第2係合部も、周方向に複数設けられたものであってもよい。
【0061】
前記回転輪によれば、前記第1係合部が、前記チェーンの前記第1被係合部に係合し、前記第2係合部が、該チェーンの前記第2被係合部に係合する。これらのため、前記チェーンに係合する部位が複数になり、該チェーンに係合する部位が単数の場合に比べて、該チェーンとの係合時に該部位にかかる力が分散され、該チェーンや回転輪自身の摩耗を低減することができる。
【0062】
また、前記回転輪において、厚み方向中央部分で間隔をあけて周方向に配列された第1歯と、
厚み方向一端側で間隔をあけて周方向に配列された第2歯とを有し、
前記第1係合部は、前記第1歯の歯たけを確定する第1立上がり部であり、
前記第2係合部は、前記第2歯の歯たけを確定する第2立上がり部であってもよい。
【0063】
こうすることで、前記第1係合部と前記第2係合部の構造を単純にすることができる。また、前記第1係合部は、従来のスプロケットにおける、歯の歯たけを確定する立上がり部を用いることができる。
【0064】
ここで、前記第2歯は、歯たけが、前記第1歯の歯たけより高いものであってもよい。
【0065】
こうすることで、前記チェーンが前記厚み方向に揺れた場合(波打つように揺れた場合)であっても、前記第2係合部と、前記チェーンの前記第2被係合部との係合が外れ難くなる。例えば、前記回転輪を、汚泥かき寄せ機に設けた場合には、地震によって沈殿池内の水面付近の水が大きく波打つスロッシング対策として有効になる。
【0066】
これまでに説明した動力伝達装置は、間隔をあけて対向する一対のリンク板を周方向に連結したチェーンと、該チェーンが巻き掛けられた回転輪とを備えた動力伝達装置において、
前記チェーンは、
前記一対のリンク板の間に設けられた第1被係合部と、
前記一対のリンク板のうちの少なくとも一方のリンク板における、他方のリンク板とは反対側に設けられた第2被係合部とを有し、
前記第1被係合部と前記第2被係合部は、前記リンク板の板厚方向に一列に並べて設け
られたものであって、
前記回転輪は、
厚み方向中央部分で放射方向に突出し、前記第1被係合部に係合する第1係合部と、
厚み方向一端側で放射方向に突出し、前記第2被係合部に係合する第2係合部とを有し、
前記第1係合部と前記第2係合部は、厚み方向に一列に並べて設けられるとともに、該第1係合部も該第2係合部も、周方向に複数設けられたものであってもよい。
【0067】
前記動力伝達装置によれば、前記チェーンの第1被係合部に、前記回転輪の前記第1係合部が係合する。また、前記チェーンの第2被係合部に、前記回転輪の前記第2係合部が係合する。これらのため、前記チェーンに前記回転輪が係合する部位が複数になり、該チェーンに該回転輪が係合する部位が単数の場合に比べて、該チェーンと該回転輪との係合時に該部位にかかる力が分散され、該チェーンや該回転輪の摩耗を低減することができる。