特許第6337342号(P6337342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337342
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】サスペンションメンバ取付け構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20180528BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B62D21/00 B
   B62D25/20 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-20378(P2015-20378)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-141339(P2016-141339A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 和幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 智文
【審査官】 常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−091619(JP,A)
【文献】 特開2008−155706(JP,A)
【文献】 特開2008−012971(JP,A)
【文献】 特開平07−257425(JP,A)
【文献】 特開2011−162159(JP,A)
【文献】 特開2012−011900(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0286543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディのサイドメンバの下側に筒状ナットがブラケットによって縦向きに取付けられており、前記筒状ナットに対してサスペンションメンバを取付けるボルトが下方から螺合される構成のサスペンションメンバ取付け構造であって、
前記筒状ナットは、筒状部と、その筒状部の下端に設けられたフランジ部とを備え、
前記筒状ナットの筒状部が前記ブラケットを上下に貫通し、前記フランジ部の外周縁が前記ブラケットの下面に溶接されており、
前記ブラケットは、前記サイドメンバの一方の側面を覆う第1側板部と、その第1側板部と反対側から前記サイドメンバの他方の側面を覆う第2側板部と、前記第1側板部と第2側板部との下端部をつなぎ、空間を介した状態で前記サイドメンバを下方から覆うとともに、前記筒状ナットのフランジ部が溶接される底板部とを備えているサスペンションメンバ取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたサスペンションメンバ取付け構造であって、
前記筒状ナットのフランジ部は円板状に形成されており、そのフランジ部の外径寸法が前記サイドメンバの幅寸法にほぼ等しく設定されているサスペンションメンバ取付け構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載されたサスペンションメンバ取付け構造であって、
前記筒状ナットのフランジ部は、筒状部の側壁よりも肉厚に形成されているサスペンションメンバ取付け構造。
【請求項4】
請求項1に記載されたサスペンションメンバ取付け構造であって、
前記サイドメンバの下面と前記ブラケットの底板部間の空間内で、前記筒状ナットの筒状部の軸方向途中位置が前記サイドメンバに固定された補強部材によって支持されており、
前記補強部材の一部が前記ブラケットの底板部に固定されているサスペンションメンバ取付け構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載されたサスペンションメンバ取付け構造であって、
前記筒状ナットは、車両前後方向に複数個設けられており、最後部に位置する前記筒状ナットのフランジ部の外径寸法が最大に設定されているサスペンションメンバ取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディのサイドメンバの下側に筒状ナットがブラケットによって縦向きに取付けられており、前記筒状ナットに対してサスペンションメンバを取付けるボルトが下方から螺合される構成のサスペンションメンバ取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したサスペンションメンバ取付け構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のサスペンションメンバ取付け構造では、図9に示すように、車両ボディのサイドメンバ100の底板部101に筒状ナット120が縦に通される貫通孔101kが形成されている。そして、筒状ナット120がサイドメンバ100(底板部101)の貫通孔101kに通された状態で、その筒状ナット120の側壁部が貫通孔101kの周縁に溶接されている。さらに、サイドメンバ100の底板部101の下側には、サイドメンバ100の貫通孔101kから下方に突出した筒状ナット120の下端を支持するブラケット110が固定されている。ブラケット110は、断面略U字形に成形されており、そのブラケット110の底板部114にサスペンションメンバ130のボルト132が通されるボルト孔114hが形成されている。そして、筒状ナット120の下端がブラケット110(底板部114)のボルト孔114hの周縁に上方から当接した状態で溶接されている。上記構成により、筒状ナット120に対して下方からボルト132を螺合させることで、サスペンションメンバ130を車両ボディのサイドメンバ100に取付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−12971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したサスペンションメンバ取付け構造では、筒状ナット120の下端がブラケット110(底板部114)のボルト孔114hの周縁に上方から当接した状態で溶接されている。このため、例えば、ブラケット110の内側に雨水等が入り込むと、筒状ナット120を伝って滴下する水が筒状ナット120の下端とブラケット110の底板部114間の隙間からボルト孔114hに浸入し易くなる。これにより、筒状ナット120とボルト132との螺合部分が水に濡れ、腐食が発生する。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、筒状ナットとボルトとの螺合部分に水が浸入し難くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、車両ボディのサイドメンバの下側に筒状ナットがブラケットによって縦向きに取付けられており、前記筒状ナットに対してサスペンションメンバを取付けるボルトが下方から螺合される構成のサスペンションメンバ取付け構造であって、前記筒状ナットは、筒状部と、その筒状部の下端に設けられたフランジ部とを備え、前記筒状ナットの筒状部が前記ブラケットを上下に貫通し、前記フランジ部の外周縁が前記ブラケットの下面に溶接されており、前記ブラケットは、前記サイドメンバの一方の側面を覆う第1側板部と、その第1側板部と反対側から前記サイドメンバの他方の側面を覆う第2側板部と、前記第1側板部と第2側板部との下端部をつなぎ、空間を介した状態で前記サイドメンバを下方から覆うとともに、前記筒状ナットのフランジ部が溶接される底板部とを備えている
【0007】
本発明によると、筒状ナットの筒状部がブラケットを上下に貫通した状態で、フランジ部の外周縁が前記ブラケットの下面に溶接されている。このため、例えば、雨水等がサイドメンバを伝ってブラケット内に浸入しても、筒状ナットの筒状部を伝って流下する水は、その筒状部の下端からフランジ部の外周縁まで導かれて滴下するようになる。即ち、筒状ナットのフランジ部が傘として働くため、筒状ナットとボルトとの螺合部分に水が浸入し難くなる。
また、ブラケットを分割して形成することで、必要な強度に合わせてブラケットの各部分の板厚を調整することが可能になる。これにより、ブラケットの軽量化を図れる。
【0008】
請求項2の発明によると、筒状ナットのフランジ部は円板状に形成されており、そのフランジ部の外径寸法がサイドメンバの幅寸法にほぼ等しく設定されている。即ち、筒状ナットのフランジ部の外周縁をブラケットの下面に溶接可能な状態で、前記フランジ部の外径寸法を最大にできる。このため、筒状ナットのフランジ部とブラケット間の溶接距離を大きくでき、筒状ナットの支持強度を高くできる。
【0009】
請求項3の発明によると、筒状ナットのフランジ部は、筒状部の側壁よりも肉厚に形成されている。このため、筒状ナットの支持強度を大きくできる。
【0011】
請求項4の発明によると、サイドメンバの下面とブラケットの底板部間の空間内で、筒状ナットの筒状部の軸方向途中位置が前記サイドメンバに固定された補強部材によって支持されており、前記補強部材の一部が前記ブラケットの底板部に固定されている。即ち、サイドメンバに固定された補強部材の一部がブラケットの底板部に固定されているため、補強部材により前記ブラケットを内側から補強できる。
【0012】
請求項5の発明によると、筒状ナットは、車両前後方向に複数個設けられており、最後部に位置する前記筒状ナットのフランジ部の外径寸法が最大に設定されている。このため、車両走行時に最も大きな荷重が加わる最後部の筒状ナットの支持強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、筒状ナットとボルトとの螺合部分に水が浸入し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係るサスペンションメンバ取付け構造の概略を表す模式平面図である。
図2】サスペンションメンバ取付け構造の概略を表す模式側面図である。
図3】サスペンションメンバ取付け構造を表す縦断面図(図1図2のIII-III矢視縦断面図)である。
図4】サスペンションメンバを外した状態の車両ボディ(サイドメンバ等)を表す模式斜視図である。
図5図4のV矢視拡大図である。
図6図5のVI-VI矢視縦断面図である。
図7図5の内部側面を表す拡大斜視図である。
図8図7のVIII-VIII矢視縦断面図である。
図9】従来のサスペンションメンバ取付け構造を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、図1から図8に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のサスペンションメンバ取付け構造について説明する。ここで、図中の前後左右、及び上下は、前記車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0016】
<車両ボディの前部概要について>
車両ボディの前部には、図1に示すように、車幅方向両側で車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ10が設けられている。サイドメンバ10は、車両ボディの骨格部材であり、図4に示すように、エンジンルームEの車幅方向両側で露出しており、エンジンルームEの後方の車室位置では車両フロアを下方から支えている。左右のサイドメンバ10の先端下側には、図2図4に示すように、下方に延びる縦フレーム12が設けられており、左右の縦フレーム12間に先端横フレーム15が水平に渡されている。さらに、左右のサイドメンバ10の先端位置には、クラッシュボックス(図示省略)等を介してバンパリインフォース16が取付けられている。
【0017】
左右のサイドメンバ10の下側には、図1図2に示すように、サスペンションメンバ20(二点鎖線参照)がエンジンルームEの後部位置で水平に渡された状態で取付けられている。サスペンションメンバ20は、フロントサスペンション(図示省略)及びエンジンマウント等(図示省略)を支持する枠状の部材である。サスペンションメンバ20の前部の左右両端位置には、上方に突出する第1脚部21と第2脚部22とが前後に並んだ状態で設けられている。また、サスペンションメンバ20の後部の左右両端位置には、図1に示すように、後側脚部24が設けられている。そして、サスペンションメンバ20の第1脚部21と第2脚部22とがそれぞれ第1取付け機構31と第2取付け機構32とにより左右のサイドメンバ10の下面に取付けられている。また、サスペンションメンバ20の後側脚部24が第3取付け機構33と第4取付け機構34とにより左右のサイドメンバ10の下面に取付けられている。
【0018】
さらに、サスペンションメンバ20の前部と左右のサイドメンバ10の先端下側をつなぐ先端横フレーム15との間には、図1に示すように、車両前後方向に延びる左右一対の補強フレーム26が渡されている。また、サスペンションメンバ20の後方には、左右のサイドメンバ10をつなぐフロアクロスメンバ17が車幅方向に延びるように設けられている。
【0019】
<サスペンションメンバ20の取付け構造について>
サスペンションメンバ20は、上記したように、左右一対の第1取付け機構31、第2取付け機構32、第3取付け機構33、及び第4取付け機構34により左右のサイドメンバ10の下面に取付けられる。ここで、第1取付け機構31、第2取付け機構32、第3取付け機構33、及び第4取付け機構34は類似する構成であるため、代表してサスペンションメンバ20の後側脚部24をサイドメンバ10の下面に取付ける第3取付け機構33、及び第4取付け機構34の構成について説明する。また、本実施形態では、第3取付け機構33に対して後方に位置する第4取付け機構34の強度向上を図っているため、前記第4取付け機構34を中心にして説明を行なう。なお、図3図5図8は、車両右側の第3取付け機構33、及び第4取付け機構34を表している。
【0020】
<第4取付け機構34(第3取付け機構33)について>
第4取付け機構34(第3取付け機構33)は、図3に示すように、ボルト43と、サスペンションメンバ20側に設けられたボルト挿通部40と、サイドメンバ10側に設けられたボルト固定部50とから構成されている。ボルト挿通部40は、図3に示すように、サスペンションメンバ20の後側脚部24に対して前記ボルト43を上下方向に通すための円筒形のスリーブ45を備えている。ここで、サスペンションメンバ20の後側脚部24は、上側プレート241と下側プレート242とが上下方向から合わせられることで中空閉断面状に形成されている。そして、上側プレート241にボルト挿通孔241hが形成されており、下側プレート242にスリーブ挿通孔242hが前記ボルト挿通孔241hと同軸に形成されている。スリーブ45は、下側プレート242のスリーブ挿通孔242hに下方から挿入され、そのスリーブ45の上端面が上側プレート241のボルト挿通孔241hの周縁に当接する位置に位置決めされている。そして、この状態で、スリーブ45の外周面が下側プレート242のスリーブ挿通孔242hの周縁にアーク溶接等により固定されている。
【0021】
<第4取付け機構34(第3取付け機構33)のボルト固定部50について>
第4取付け機構34のボルト固定部50は、図3に示すように、サイドメンバ10側に設けられており、前記ボルト43が螺合により固定される部分である。ボルト固定部50は、図3図6等に示すように、前記ボルト43が螺合される筒状ナット52と、その筒状ナット52をサイドメンバ10の下側に縦向きに取付けるブラケット54と、前記筒状ナット52の上部を支えるとともに、前記ブラケット54を補強する補強部材58とから構成されている。ここで、第3取付け機構33では、図7図8等に示すように、ボルト固定部50のブラケット54、及び補強部材58が第4取付け機構34と共用されており、筒状ナット62の構成のみが第4取付け機構34の筒状ナット52と異なっている。
【0022】
<ボルト固定部50の筒状ナット52(筒状ナット62)について>
第4取付け機構34の筒状ナット52は、図3図6に示すように、筒状部521と、その筒状部521の下端に同軸に設けられた円板状のフランジ部522とを備えている。筒状ナット52の筒状部521には、図6に示すように、その筒状部521の内周面にボルト43が螺合可能な雌ネジ52wが形成されている。さらに、筒状部521の上部には、その筒状部521の雌ネジ52w孔を塞ぐ厚肉の頭部521hが設けられている。筒状部521の頭部521hは、図6に示すように、サイドメンバ10の底部10bの幅方向中央に形成された貫通孔10hに挿通されている。なお、サイドメンバ10の底部10bには、図8に示すように、第3取付け機構33の筒状ナット62の筒状部621が通される貫通孔10hも対応する位置に形成されている。
【0023】
ここで、第4取付け機構34における筒状ナット52のフランジ部522の外径寸法は、図5図6に示すように、サイドメンバ10の幅寸法にほぼ等しく設定されており、第3取付け機構33における筒状ナット62のフランジ部622の外径寸法よりも十分大きな値に設定されている。また、前記筒状ナット52,62のフランジ部522,622の厚み寸法は、筒状部521,621の側壁の肉厚寸法よりも大きな値に設定されている。
【0024】
<ボルト固定部50のブラケット54について>
ボルト固定部50を構成するブラケット54は、図5等に示すように、第3取付け機構33の筒状ナット62と第4取付け機構34の筒状ナット52とを共にサイドメンバ10の下側に縦向きに取付けられるように構成されている。ブラケット54は、図5図6に示すように、サイドメンバ10の車幅方向内側(左側)の側面下部を覆う第1側板部541と、その第1側板部541と反対側からサイドメンバ10の車幅方向外側(右側)の側面下部を覆う第2側板部542と、前記第1側板部541と第2側板部542との下端部をつなぎ、空間Sを介した状態で前記サイドメンバ10を下方から覆う底板部544とから上方が開放されたケース状に構成されている。
【0025】
ブラケット54の第1側板部541は、図5図6に示すように、平板状に形成されており、サイドメンバ10の左側壁10fにスポット溶接等により固定されている。ブラケット54の第2側板部542は、図6に示すように、縦板部542tと横板部542bとにより断面略L字形に形成されており、その縦板部542tがサイドメンバ10の右側壁10rにスポット溶接等により固定されている。ここで、第2側板部542は、横板部542bがサイドメンバ10の底部10bから所定寸法だけ離れた位置で並行になるように、縦板部542tがサイドメンバ10の右側壁10rに固定されている。また、第2側板部542の横板部542bには、図6図8に示すように、筒状ナット52,62の筒状部521,621がそれぞれ通される貫通孔542hが形成されている。
【0026】
ブラケット54の底板部544は、図6に示すように、縦板部544tと横板部544yとにより断面略L字形に形成されており、その縦板部542tが第1側板部541の下側面541bにスポット溶接等により固定されている。また、底板部544の横板部544yが第2側板部542の横板部542bに対して下方から重ねられた状態で、その横板部542bにスポット溶接等により固定されている。底板部544の横板部544yには、第2側板部542の横板部542bの貫通孔542hと重なる位置に、図6図8に示すように、筒状ナット52,62の筒状部521,621がそれぞれ通される貫通孔544hが形成されている。ここで、ブラケット54の底板部544の肉厚寸法は、第1側板部541と第2側板部542の肉厚寸法よりも大きな寸法に設定されている。
【0027】
<ボルト固定部50の補強部材58について>
ボルト固定部50を構成する補強部材58は、図6図8に示すように、第3取付け機構33の筒状ナット62の高さ方向中央部と第4取付け機構34の筒状ナット52の上部とを支えるとともに、前記ブラケット54を内側から補強する部材である。補強部材58は、図6に示すように、サイドメンバ10の底部10bを幅方向外側から挟んだ状態でそのサイドメンバ10の下部に固定される断面扁平U字形のU字板部581を備えている。U字板部581には、図6図8に示すように、サイドメンバ10の底部10bに形成された前後の貫通孔10hに対応する位置に貫通孔581hが形成されている。
【0028】
そして、前記U字板部581の各貫通孔581hの周縁には、筒状ナット52,62の筒状部521,621が通される貫通孔585hを備える角形フランジ585がそれぞれアーク溶接等により固定されている。即ち、筒状ナット52,62の筒状部521,621が各貫通孔585hに通されることで、筒状ナット52,62の筒状部521,621が前記U字板部581の角形フランジ585により半径方向外側から支えられる。また、前記U字板部581の後端には、図7図8に示すように、後方が低くなるように傾斜した傾斜板部582がそのU字板部581に対して下方に折り曲げられた状態で設けられている。そして、図8に示すように、傾斜板部582の後端縁583がほぼ水平な状態まで上方に折り曲げされた状態でブラケット54の底板部544の上面にスポット溶接等により固定されている。
【0029】
<ボルト固定部50の筒状ナット52,62の固定について>
筒状ナット52,62は、図6図8に示すように、それぞれの筒状部521,621が下方からブラケット54(底板部544、第2側板部542)の貫通孔544h,542hと、補強部材58(角形フランジ585)の貫通孔585h等と、サイドメンバ10の底部10bの貫通孔10hとに通される。そして、筒状ナット52,62は、下端に形成されたフランジ部522,622がブラケット54の底板部544の下面に当接する位置に位置決めされる。この状態で、図6等に示すように、筒状ナット52,62のフランジ部522,622の周縁が全周に亘ってブラケット54の底板部544の下面にアーク溶接等により固定される。これにより、筒状ナット52,62は、サイドメンバ10の下側で縦向きに取付けられる。
【0030】
上記構成により、図3に示すように、サイドメンバ10側の第3取付け機構33、第4取付け機構34の筒状ナット52,62に対してサスペンションメンバ20(後側脚部24)のボルト挿通部40に通されたボルト43を螺合させることで、サスペンションメンバ20をサイドメンバ10の下面に取付けることができる。ここで、前述のように、筒状ナット52,62のフランジ部522,622の周縁が全周に亘ってブラケット54の底板部544の下面にアーク溶接等により固定される。このため、例えば、図3に示すように、雨水等がサイドメンバ10を伝ってブラケット54内に浸入しても、筒状ナット52,62の筒状部521,621を伝って流下する水は、その筒状部521,621の下端からフランジ部522,622の外周縁まで導かれて滴下する。したがって、筒状ナット52,62とボルト43との螺合部分に水が浸入し難くなる。また、第4取付け機構34の筒状ナット52のフランジ部522は、図7に示すように、第3取付け機構33の筒状ナット62のフランジ部622よりも径寸法が大きいため、アーク溶接等の溶接距離が大きくなる。このため、第3取付け機構33の筒状ナット62に対して第4取付け機構34の筒状ナット52の取付け強度が大きくなる。
【0031】
<本実施形態に係るサスペンションメンバの取付け構造の長所について>
本実施形態に係るサスペンションメンバの取付け構造によると、筒状ナット52,62の筒状部521,621がブラケット54(底板部544等)を上下に貫通した状態で、フランジ部522,622の外周縁が前記ブラケット(底板部544)の下面に溶接されている。このため、例えば、図3に示すように、雨水等がサイドメンバ10を伝ってブラケット54内に浸入しても、筒状ナット52,62の筒状部521,621を伝って流下する水は、その筒状部521,621の下端からフランジ部522,622の外周縁まで導かれて滴下するようになる。即ち、筒状ナット52,62のフランジ部522,622が傘として働くため、筒状ナット52,62とボルト43との螺合部分に水が浸入し難くなる。
【0032】
また、第4取付け機構34の筒状ナット52のフランジ部522は円板状に形成されて、そのフランジ部522の外径寸法がサイドメンバ10の幅寸法にほぼ等しく設定されている。即ち、筒状ナット52のフランジ部522の外周縁をブラケット54の下面に溶接可能な状態で、前記フランジ部522の外径寸法を最大にできる。このため、筒状ナット52のフランジ部522とブラケット54間の溶接距離を大きくでき、筒状ナット52の支持強度が高くなる。また、筒状ナット52,62のフランジ部522,622は、筒状部521,621の側壁よりも肉厚に形成されている。このため、筒状ナット52,62の支持強度を大きくできる。
【0033】
また、ブラケット54は、サイドメンバ10の一方の側面を覆う第1側板部541と、その第1側板部541と反対側からサイドメンバ10の他方の側面を覆う第2側板部542と、第1側板部541と第2側板部542との下端部をつなぎ、空間Sを介した状態でサイドメンバ10を下方から覆うとともに、筒状ナット52,62のフランジ部522,622が溶接される底板部544とを備えている。このように、ブラケット54を分割して形成することで、必要な強度に合わせてブラケット54の各部分に板厚を調整することが可能になる。これにより、ブラケット54の軽量化を図れる。また、図8に示すように、サイドメンバ10に固定された補強部材58の一部がブラケット54の底板部544に固定されているため、補強部材58によりブラケット54を内側から補強でき、ブラケット54の上下方向の潰れ強度が向上する。さらに、筒状ナット52,62は、最後部(第4取付け機構34)の筒状ナット52のフランジ部522の外径寸法が最大に設定されている。このため、車両走行時に最も大きな荷重が加わる最後部(第4取付け機構34)の筒状ナット52の支持強度を向上させることができる。
【0034】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、第4取付け機構34における筒状ナット52のフランジ部522を円板状に形成し、外径寸法をサイドメンバ10の幅寸法にほぼ等しく設定する例を示した。しかし、例えば、第4取付け機構34における筒状ナット52のフランジ部522を角板状に形成し、その一辺の長さ寸法をサイドメンバ10の幅寸法にほぼ等しく設定することも可能である。また、本実施形態では、第3取付け機構33における筒状ナット62のフランジ部622の径寸法を第4取付け機構34における筒状ナット52のフランジ部522の径寸法よりも小さく設定する例を示した。しかし、第3取付け機構33における筒状ナット62のフランジ部622の径寸法を第4取付け機構34における筒状ナット52のフランジ部522の径寸法と等しくすることも可能である。また、本実施形態では、ブラケット54を第1側板部541と第2側板部542と底板部544とから構成する例を示した。しかし、第1側板部541と第2側板部542とをまとめ、ブラケットを側板部と底板部とから構成することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
10・・・・サイドメンバ
20・・・・サスペンションメンバ
43・・・・ボルト
52・・・・筒状ナット
521・・・筒状部
522・・・フランジ部
62・・・・筒状ナット
621・・・筒状部
622・・・フランジ部
54・・・・ブラケット
541・・・第1側板部
542・・・第2側板部
544・・・底板部
58・・・・補強部材
S・・・・・空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9