(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレームの下端側に設けられ、前記テール部上端面が前記フレームに接触している状態のときに前記フレームと前記テール部上端面とを接続する第2の接続部材を備えた
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の自動搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態.
以下、図面を適宜参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通している。さらに、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
【0011】
[全体構成説明]
図1Aは、本実施の形態に係る自動搬送装置100の設置例の説明図である。
図1Bは、本実施の形態に係る自動搬送装置100で搬送する搬送物Cの一例を示す斜視図である。
【0012】
図1A(a)及び
図1A(b)では自動搬送装置100が船舶200上に設置されている様子を示している。なお、
図1A(a)は船舶200等を側方から見た図であり、
図1A(b)は船舶200等を斜め上方から見た図である。
図1A(b)では、自動搬送装置100及び搬送物Cは船舶200内に配置されているので、説明の便宜上、薄い色で示している。なお、ここでいう搬送物Cとは、船舶200に設置された低温タンク150の外壁に取り付けられる防熱パネルのことである。防熱パネル1つあたりの重量は例えば17kg程度である。
船舶200上にはLNG等の低温ガスを貯留する低温タンク150が設置されている。本実施の形態では、低温タンク150が自立角型方式タンクであるものを示しているがそれに限定されるものではない。
搬送物Cである防熱パネルは、船舶200の上部デッキ160まで運搬された後、自動搬送装置100を使って、船舶200内に降ろされていく。防熱パネルは、低温タンク150の外壁面の下から順次、敷き詰められていく。船舶200内は複数階からなる階層構造となっており、まず、防熱パネルを最下層階へ搬出し、作業者が防熱パネルを低温タンク150の外壁面の最下部側に敷き詰める。このように、最下層階へ搬送した防熱パネルを下から順に敷き詰め、敷き詰め終わると、自動搬送装置100を使って防熱パネルを最下層階の1つ上の階へ搬送し、同様の要領で防熱パネルを敷き詰めていく。このような作業を繰り返すことで、防熱パネルを低温タンク150の外壁面全体に敷き詰める。低温タンク150の容量によって異なるが、例えば、低温タンク150には、防熱パネルが数千枚〜数万枚程度敷き詰められる。
【0013】
図2Aは、本実施の形態に係る自動搬送装置100の概要構成例図である。
図2Bは、
図2Aに示すA−A断面図である。
図2Cは、
図2Aに示すB−B端面図である。
【0014】
なお、
図2A(a)は自動搬送装置100の全体を示し、
図2A(b)は環状部材2、搬送バケット3、モーター4及びプーリー5Iを示している。
また、
図2A(a)では、搬入階B0から地下五階B5まである場合を一例として示している。
【0015】
自動搬送装置100は、フレーム1と、環状部材2と、搬送バケット3と、モーター4と、テール部5と、回転機構6とを備えている。また、自動搬送装置100は、緩衝装置8と、制御装置9と、第1の検出センサ10Aと、第2の検出センサ10Bと、第3の検出センサ10Cと、複数の操作表示盤11とを備えている。
【0016】
フレーム1は、長手方向に分割自在に構成された長尺状の部材である。つまり、フレーム1は複数の分割フレーム1A〜1Cが連結されて構成されている。フレーム1はモーター4及びテール部5等の駆動部材が取り付けられる構造体である。フレーム1は全長が例えば、20m〜40m程度である。また、フレーム1は、水平断面視したときに環状部材2の周囲を覆うように配置されており、環状部材2と作業者等との接触を防止している。本実施の形態では、3つの分割フレームからフレーム1が構成されているが、3つに限定されるものではなく、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0017】
環状部材2は、フレーム1に収容されている。環状部材2は、一方がフレーム1の上端側1aから下端側1bに向かう第1の方向Z1に移動しているときに、他方がフレーム1の下端側1bから上端側1aに向かう第2の方向Z2に移動する。ここで、環状部材2の一方及び環状部材2の他方は対向している。環状部材2は例えば金属製のチェーンで構成されている。なお、環状部材2は、ゴム等の弾性体で構成してもよい。環状部材2はフレーム1に2つ配置されているが、それに限定されるものではなく、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。環状部材2の上部はモーター4側に設けられており、モーター4の動力を受けて回転する。また、環状部材2の下部はテール部5側に設けられているため、環状部材2は一定の張力を維持できるようになっている。
【0018】
搬送バケット3は、環状部材2に取り付けられている。搬送バケット3は搬送物Cを載置する可動式の台である。搬送バケット3は上から下へ搬送物Cを搬送すること、及び空間の制約が大きい場所で使用しても、周囲のものとの干渉を回避すること、を考慮した構成となっている。搬送バケット3は上から下へ移動するときには搬送物Cを載置できる構成であるが、下から上へ移動するときには水平方向から垂直方向へ回動し、コンパクト性が高い構成となっている。
【0019】
テール部5は、フレーム1の下端側1bに設けられ、環状部材2のテンションを調整する。回転機構6は、フレーム1の下端側1bに設けられ、テール部5を水平方向に回転自在に支持する。テール部5は、回転機構6の作用により、フレーム1に対して回転可能に設けられている。これにより、自動搬送装置100を船舶200に搬入するために、クレーンCrで自動搬送装置100を降ろしている際に、テール部5が船舶内の構造物と干渉しそうになっても、テール部5をフレーム1に対して回転することにより、干渉を回避することができる。つまり、空間上の制約によって設置作業の利便性が損なわれることを抑制することができる。
【0020】
緩衝装置8は、上昇してきた搬送バケット3が環状部材2の上死点で回動するときに発生する衝撃を緩和する機能を有する。緩衝装置8は、フレーム1の上端側1aに配置されている。緩衝装置8は搬送バケット3と接触する緩衝部材8Aを含む。緩衝部材8Aは搬送バケット3と接触するときに停止していてもよいが、接触するときに下降しており下方向の速度を有していることで、より衝突による衝撃を緩和することができる。
制御装置9はモーター4の制御等といった制御全般を統括する機能を有する。なお、モーター4は、例えば、サーボモーターを採用することができる。各操作表示盤11は、制御装置9に電気的に接続されており、各階の搬送物Cを搬出する作業者によって操作される。制御装置9は例えば自動搬送装置100の最上部(搬入階B0)に設置され、各操作表示盤11は、制御装置9の下(下層階)に設置されている。制御装置9は、第1の検出センサ10Aの検出結果に基づき緩衝装置8を駆動する。
第1の検出センサ10Aは、搬送バケット3が予め定められた位置まで上昇したか否かを検出するセンサである。なお、第1の検出センサ10Aのセンシング方式は特に限定されるものではなく、例えば、搬送バケット3との接触式でもよいし、磁気センサ方式でもよい。
第2の検出センサ10Bは、搬送バケット3に搬送物Cが載置された状態で搬送バケット3が予め定められた位置まで下降したか否かを検出するセンサである。なお、第2の検出センサ10Bのセンシング方式は特に限定されるものではないが、例えば、接触式のリミットスイッチを採用することができる。例えば、第2の検出センサ10Bは、搬送バケット3上に搬送物Cが載置されていない場合には接触しないが、搬送バケット3の上に搬送物Cが載置されていると接触するように構成することができる。
第3の検出センサ10Cは、自動搬送装置100が自動運転モードに入る前に基準となる搬送バケット(第3の検出センサ10Cに検出される直前の位置にある任意の搬送バケット3)を検出するのに用いるセンサである。第3の検出センサ10Cの配置位置は、各搬送バケット3の位置座標を算出するのに用いる機械原点座標に対応する。つまり、第3の検出センサ10Cは、搬送バケット3の搬入を行う位置に対応する機械原点座標に搬送バケットがきているか否かを検出するセンサである。なお、第3の検出センサ10Cのセンシング方式は特に限定されるものではなく、例えば、搬送バケット3との接触式でもよいし、磁気センサ方式でもよい。
制御装置9は、第2の検出センサ10Bの検出結果に基づきモーター4を停止し、搬送バケット3が環状部材2の下死点へ移動したときに搬送バケット3上の搬送物Cが落下してしまうことを防止することができる。
【0021】
なお、制御装置9は、第1の検出センサ10Aの検出のタイミング(搬送バケット3が反転するタイミング)と、モーター4の回転速度(環状部材2の速度)とに基づいて、緩衝部材8Aを下降させる。例えば、モーター4の回転速度が速ければ速いほど、第1の検出センサ10Aによる検出時から緩衝部材8Aの下降開始までのディレイ時間は小さくなる。このディレイ時間は、搬送バケット3と緩衝部材8Aとが接触するときに、緩衝部材8Aが既に下降しており、緩衝部材8Aが下方向の速度を有するように設定するとよい。制御装置9は、このようにモーター4の回転速度(環状部材2の速度)に応じたディレイ時間が定められたタイミングテーブルを備えている。
【0022】
また、第1の検出センサ10Aは、フレーム1の上部まで上昇して反転する直前の搬送バケット3を検出できる位置に配置されている。これにより、より確実に搬送バケット3の反転時に発生する衝撃を緩和することができる。具体的には、本実施の形態において、第1の検出センサ10Aは、フレーム1の上死点の位置に配置されている。例えば、第1の検出センサ10Aを搬送バケット3が反転する直前よりも前の位置(フレーム1の上死点の位置よりも下)に配置してしまうと、搬送バケット3が検出された直後に、モーター4が停止した場合に緩衝装置8が機能しなくなる可能性がある。ここで、モーター4が停止するとは、他の搬送バケット3が搬送物Cの搬出階に到着したということである。つまり、第1の検出センサ10Aを搬送バケット3が反転する直前よりも前の位置に配置してしまうと、搬送バケット3の検出のタイミングが早すぎ、モーター4が停止してしまっているのに、緩衝装置8の緩衝部材8Aが下降してしまい、緩衝装置8で衝撃を緩和できなくなってしまう可能性があるということである。
【0023】
[フレーム1の連結構造等について]
図2Dは、吊り下げた分割フレーム1Bを固定済の分割フレーム1C上に下していくときの様子を示している。
図2Eは、上下に隣接する分割フレーム同士を連結する様子の説明図である。
図2D及び
図2Eと、先述した
図2A〜
図2Cとを参照してフレーム1の連結構造等について説明する。
【0024】
図2Dは分割フレーム1B及び分割フレーム1Cの側方側から見た図である。
図2Eは分割フレーム1B及び分割フレーム1Cを正面側から見た図である。
図2E(a)はクレーンCrで分割フレーム1Cを降ろしていくときの様子を示している。
図2E(b)は降ろした分割フレーム1Cを中間架台61に固定するとともに、分割フレーム1Bを分割フレーム1C上に降ろしていくときの様子を示している。
図2E(c)は降ろした分割フレーム1Bを分割フレーム1Cに連結した状態を示している。
【0025】
ここでは、分割フレーム1B及び分割フレーム1Cの組について説明し、分割フレーム1A及び分割フレーム1Bの組の説明については省略するが、構成は共通している。なお、分割フレーム1C及び分割フレーム1Bの組が、本発明の第1のフレーム及び第2のフレームの組に対応する。また、分割フレーム1B及び分割フレーム1Aの組が、本発明の第1のフレーム及び第2のフレームの組に対応する。
【0026】
分割フレーム1Cは、第1の柱状部51Aと第1の柱状部51Aに平行に設けられた第2の柱状部51Bとを含む。この分割フレーム1Cは、第1の柱状部51Aと第2の柱状部51Bとを接続する第1の接続部53Aを含む。
【0027】
分割フレーム1Bも分割フレーム1Cと共通する構成を備えている。分割フレーム1Bは、第1の柱状部51Aの上側に配置された第3の柱状部52Aと、第2の柱状部51Bの上側に配置され、第3の柱状部52Aに平行に設けられた第4の柱状部52Bとを含む。また、分割フレーム1Bは、下端が分割フレーム1Cの上端に固定される。また、分割フレーム1Bは、第1の柱状部51Aと第2の柱状部51Bとを接続する第2の接続部53Bを含む。
【0028】
環状部材2は、第1の柱状部51A及び第3の柱状部52Aと、第2の柱状部51B及び第4の柱状部52Bとの間に配置されている。言い換えると、第1の柱状部51A及び第2の柱状部51Bは、環状部材2の周囲に配置されており、環状部材2が周囲の構造体と干渉してしまうことを防いでいる。第3の柱状部52A及び第4の柱状部52Bも同様である。第1の接続部53Aは第1の柱状部51Aと第2の柱状部51Bとを接続し、フレーム1の強度を確保する機能を有している。第2の接続部53Bは第3の柱状部52Aと第4の柱状部52Bとを接続し、フレーム1の強度を確保する機能を有している。なお、
図2Bに示すように、第1の柱状部51Aと第2の柱状部51Bと第1の接続部53Aとによって、環状部材2が配置される凹状の空間51Cが形成されている。分割フレーム1Bについても同様に空間51Cが形成されている。
【0029】
第1の接続部53C及び第2の接続部53Bは、環状部材2の内側に配置されている。分割フレーム1Aも同様である。つまり、環状部材2は、フレーム1の接続部の周囲で回転している。
【0030】
分割フレーム1Cは、第1の柱状部51Aの上端に固定され、第1の柱状部51Aの上端から第3の柱状部52Aの下端へ延びる第1のガイド部54Aを含む。また、分割フレーム1Cは、第2の柱状部51Bの上端に固定され、第2の柱状部51Bの上端から第4の柱状部52Bの下端へ延びる第2のガイド部54Bを含む。第1のガイド部54A及び第2のガイド部54Bを備えていることで、分割フレーム同士の連結作業を行いやすくなり、また、連結部分の強度を向上させることができる。更に、第1のガイド部54A及び第2のガイド部54Bには、分割フレーム1Cを搬送するときに用いるワイヤーWiが挿入される穴が形成されている。これにより、分割フレーム同士の連結作業が更に行いやすくなる。なお、このワイヤーWiが挿入される穴は、必ずしも第1のガイド部54A及び第2のガイド部54Bに形成されていなくてもよく、その他の部分でもよい。
【0031】
フレーム1は、分割フレーム1Cの上端面51a及び分割フレーム1Bの下端面52bに設けられ、分割フレーム1C及び分割フレーム1Bの位置決めをする位置決め部56を含む。また、フレーム1は、分割フレーム1Cの上端面51a及び分割フレーム1Bの下端面52bを接続する第1の接続部材1Dを含む。位置決め部56は、例えば、上端面51aに形成された穴と、下端面52bに形成され、当該穴に挿入される凸部とで構成することができる。位置決め部56を備えていることで、分割フレーム同士の連結作業を行いやすくなる。また、第1の接続部材1Dを備えていることで、分割フレーム1Cと分割フレーム1Bとを固定することができる。なお、第1の接続部材1Dは例えばボルト及びナットで構成することができ、また、設ける本数は6つに限定されるものではない。
【0032】
図2D及び
図2Eに示すように、各分割フレーム1A〜1Cを順次、降ろしていく。そして、各分割フレーム1A〜1C同士を連結する作業と、各分割フレーム1A〜1Cを各階に配置された中間架台61へ連結する作業とを実施することで、フレーム1を船舶200内に固定する。
ここで、仮に、フレーム1全体(各分割フレームを連結した状態のもの)をクレーンCrで吊り下げて船舶200内に搬入するとする。このときの揚程は、各分割フレーム1A〜1CをクレーンCrで吊り下げて船舶200内に搬入するときの各揚程よりも大きくなる。つまり、フレーム1全体を船舶200内に搬入することは、船舶200といった空間の制約が大きい場所においては、設置作業の妨げになりやすい。
一方、各分割フレーム1A〜1CをクレーンCrで吊り下げて船舶200内に搬入するときの各揚程は、フレーム1全体を吊り下げて搬入するときの揚程よりは小さい。したがって、自動搬送装置100では、クレーンCrの揚程によって設置場所が制限されにくくなっており、たとえ空間の制約が大きい場所であっても、フレーム1の設置作業の利便性が損なわれることを回避できる。
なお、自動搬送装置100では、各分割フレーム1A〜1Cを船舶200に搬入した後に、各分割フレーム1A〜1C同士を連結する作業が必要になるが、この作業は、特に、空間の制約は受けない。また、各分割フレーム1A〜1CをクレーンCrで吊り下げて船舶200内に搬入するときの各揚程は、分割フレーム1C、分割フレーム1B及び分割フレーム1Aの順番に大きくなる。分割フレーム1Cが船舶200の一番深い位置にあるからである。
【0033】
また、自動搬送装置100は、フレーム1を分割して保管することができ、保管時の省スペース性にも優れている。
【0034】
[テール部5及び回転機構6について]
図3Aは、フレーム1とテール部5とを連結する部分の説明図である。
図3Bは、フレーム1に対してテール部5が回転することを示す説明図である。
【0035】
図3Aは、フレーム1及びテール部5を正面側から見た状態における、フレーム1及びテール部5の垂直断面図である。
図3A(a)は、フレーム1に対してテール部5が回転自在な状態である。
図3A(b)は、フレーム1とテール部5とが固定されており、テール部5が回転できない状態である。
【0036】
図3B(a)は、フレーム1及びテール部5を正面側から見た状態を示している。
図3B(a)では、搬送バケット3が下死点に到達している状態を示している。
図3B(b)は、自動搬送装置100の下端側から見た図であり、テール部5をフレーム1に対して回転させる前の状態を示している。
図3B(c)は、自動搬送装置100の下端側から見た図であり、テール部5をフレーム1に対して90度回転させた後の状態を示している。
図3B(b)及び
図3B(c)では船舶200内の各階に形成された搬入用穴Hоを通す様子を示している。クレーンCrで吊り下げられた分割フレーム1C及びテール部5を搬入用穴Hоに通すといにおいて、
図3B(b)の状態では、テール部5が搬入用穴Hоの開口縁と干渉してしまい、降ろすことができない。このため、自動搬送装置100では、
図3B(b)の状態から
図3B(c)へ変形可能となっており、テール部5が搬入用穴Hоの開口縁と干渉してしまうことを回避できるようになっている。
【0037】
回転機構6は、フレーム1の下端側1bに固定された筒状部6Aと、筒状部6Aに挿入された回転自在の軸部6Bと、軸部6Bの上端に接続され、筒状部の上に配置される頭部6Cと、軸部6Bの下端に接続された軸支持部6Dとを含む。筒状部6Aは軸部6Bが挿入できるように上下方向に延びる開口部が形成されている。この筒状部6Aの開口部の径よりも頭部6Cの径は大きい。
【0038】
テール部5は、テール部上端面5Aを含む。このテール部上端面5Aは、軸部6Bの下端側が挿入された開口部が形成されている。また、テール部上端面5Aは、軸支持部6Dの上側に配置されており、軸支持部6Dに支持される。
【0039】
頭部6Cには、テール部上端面5Aがフレーム1に接触している状態において、筒状部6Aとの間に第1の隙間W1が形成される。また、テール部上端面5Aには、頭部6Cが筒状部6Aに接触している状態において、フレーム1との間に第2の隙間W2が形成される。
【0040】
自動搬送装置100は、フレーム1の下端側1bに設けられ、テール部上端面5Aがフレーム1に接触している状態のときにフレーム1とテール部上端面5Aとを接続する第2の接続部材7A〜7Dを備えている。
【0041】
このように、第1の隙間W1が形成されているときには、フレーム1側(上側)にテール部5が引き上げられている。そして、テール部5が引き上げられた状態では、テール部上端面5Aとフレーム1の下端側1bの下端面とが接触しているため、フレーム1及びテール部5に第2の接続部材7A〜7Dを挿入することができ、フレーム1とテール部5とを固定することができる。なお、第2の接続部材7A〜7Dは、例えば、ボルト及びナット等で構成することができるが、それに限定されるものではない。
【0042】
第2の接続部材7A〜7Dを外すと、フレーム1からテール部5が脱落する。この脱落をするときには、第1の隙間W1が無くなっており、その代わりに、第2の隙間W2が形成される。第1の隙間W1と第2の隙間W2の大きさは同じである。軸部6Bは第1の隙間W1又は第2の隙間が形成されるように、長手方向の長さ寸法が設定されている。なお、テール部5のテール部上端面5Aが軸支持部6Dによって支持されているので落下してしまうことはない。第2の隙間W2が形成されているときには、テール部5が軸部6B回りを回転自在となる。このため、自動搬送装置100は、
図3B(b)に示す状態から
図3B(c)に示す状態へ変形可能となっている。
【0043】
なお、第1の隙間W1及び第2の隙間W2は、例えば、1mm程度確保するとよい。
【0044】
回転機構6は、筒状部6Aの内周面の上側から筒状部6Aの上端面にかけて設けられたブッシュ6Eを備えている。つまり、ブッシュ6Eは、軸部6B及び頭部6Cと筒状部6Aとの間に介在するように設けられている。これにより、軸部6B、頭部6C及び筒状部6Aの摩耗を抑制することができ、また、筒状部6Aと軸部6Bとの間に隙間が形成されることを抑制することができる。
【0045】
テール部5は、テール部上端面5Aが形成された上面部5AAと、上面部5AAの短辺に直交するように配置された第1の側面部5B及び第2の側面部5Cとを備えている。また、テール部5は、第1の側面部5B及び第2の側面部5Cにそれぞれ設けられた軸受け部5Fと、一端が一方の軸受け部5Fに接続され、他端が他方の軸受け部5Fに接続された軸部5Gとを備えている。更に、テール部5は、軸部5Gに固定されたプーリー支持部5Hと、プーリー支持部5Hに回転自在に設けられたプーリー5Iとを備えている。プーリー5Iは、環状部材2に所定の大きさのテンションをかけた状態で回転し、第1の方向Z1から送り込まれる環状部材2を第2の方向Z2に送り出す。環状部材2が2つ設けられているので、プーリー支持部5H及びプーリー5Iも対応するように2つずつ設けられている。軸受け部5Fは、上下方向の位置を調整することができるように構成されている。これにより、プーリー5Iの上下方向の位置を調整することができ、環状部材2のテンションを調整することができる。特に、自動搬送装置100を使用していると環状部材2が延びてしまい、環状部材2のテンションが低下する場合がある。しかし、自動搬送装置100では、軸受け部5Fを上下方向に位置調整することでプーリー5Iの上下位置を調整することができ、環状部材2が延びてしまっても、環状部材2のテンションを維持する、又は低下したテンションをかけ直すことができる。
【0046】
[搬送バケット3について]
図4Aは、環状部材2に連結している状態の搬送バケット3の説明図である。
図4Bは、搬送バケット3を上側から見たときの詳細説明図である。
図4Cは、搬送バケット3を側方側から見たときの詳細説明図である。
【0047】
図4A(a)では、第1の方向Z1に移動する搬送バケット3、環状部材2の下死点で回動した搬送バケット3、及び第2の方向Z2に移動する搬送バケット3を示している。
図4A(b)は、搬送バケット3等の要部拡大図である。
図4A(c)は、
図4A(b)に示す搬送バケット3が回動する様子を示した要部拡大図である。
図4B(a)は、連結部32B2の回転軸部32を板支持部本体3B1に取り付ける様子を示す分解図である。
図4B(b)は、連結部3B2のピン34をバケット接続部33及び回転軸部32に取り付ける様子を示す分解図である。
図4C(a)は、連結部32B2の回転軸部32を板支持部本体3B1に取り付け、回転軸部32を回転させる様子を示している。
図4C(b)は、連結部3B2のピン34をバケット接続部33及び回転軸部32に挿入した状態を示している。
【0048】
搬送バケット3は、搬送物Cを載置可能な載置板3Aと、環状部材2に固定され、載置板3Aが上下方向に回動自在に取り付けられている板支持部3Bとを含む。搬送バケット3は、第2の方向Z2に移動している状態において載置板3Aが第2の方向Z2に平行となり、第1の方向Z1に移動している状態において載置板3Aが第1の方向Z1と交差するように構成されている。
【0049】
板支持部3Bは、環状部材2に固定され、第1の方向Z1に移動している状態において載置板3Aを支持する板支持部本体3B1を含む。また、板支持部3Bは、載置板3Aが板支持部本体3B1に対して回動自在となるように、板支持部本体3B1に取り付けられた連結部3B2を含む。このため、搬送バケット3は、第1の方向Z1に移動している状態において載置板3Aが第1の方向Z1と交差して搬送物Cを載置することができ、一方で、第2の方向Z2に移動している状態において載置板3Aが第2の方向Z2に平行となりコンパクトになる。
【0050】
板支持部3Bは、弾性部材3B3を含む。この弾性部材3B3は、板支持部本体3B1のうち載置板3Aを支持する位置に設けられている。また、弾性部材3B3は、第1の方向Z1に移動している状態において載置板3Aと板支持部本体3B1との間に介在するように設けられている。このため、搬送バケット3が第2の方向Z2から第1の方向Z1へ移動する際に、載置板3Aが回動して板支持部3Bに接触するときの衝撃を緩和することができ、搬送バケット3が破損等することを抑制することができる。
【0051】
板支持部3Bの詳細構成について説明する。
板支持部3Bは、板支持部本体3B1と、連結部3B2と、弾性部材3B3とを備えている。
板支持部本体3B1は、連結部3B2が挿入される穴31tが形成され、環状部材2に固定された環状部材固定部31と、環状部材固定部31に接続され弾性部材3B3が設置された設置部35とを備えている。環状部材固定部31は、2つの環状部材2にそれぞれ1つずつ設けられている。設置部35は一方及び他方の環状部材固定部31に接続されている。
【0052】
連結部3B2は、回転軸部32と、バケット接続部33と、ピン34とを備えている。
回転軸部32は、回転軸32Aと、挟み込み部32Bとを備えている。回転軸32Aは、環状部材固定部31の穴31tに挿入される。回転軸32Aを備えているため、載置板3Aが回動する。挟み込み部32Bは、バケット接続部33を挟み込むように構成されている。つまり、挟み込み部32Bは、バケット接続部33及び載置板3Aの水平方向の動きを規制するように構成されている。挟み込み部32Bには、ピン34が挿入される穴32Btが形成されている。
バケット接続部33は載置板3Aに固定されている。バケット接続部33は載置板3Aに一方の端部及び他方の端部にそれぞれ1つずつ設けられている。バケット接続部33にはピン34が挿入される穴33tが形成されている。
ピン34は、挟み込み部32Bの穴32Bt及びバケット接続部33の穴33tに挿入され、挟み込み部32Bとバケット接続部33とを固定する機能を有する。ピン34には挟み込み部32B及びバケット接続部33から抜けないように、抜け止め構造を備えていてもよい。
【0053】
次に、載置板3Aと板支持部3Bとの連結方法について説明する。
図4B(a)に示すように、回転軸部32の回転軸32Aをバケット接続部33及び環状部材固定部31に挿入し、その後、
図4B(b)及び
図4C(a)に示すように、回転軸部32を回転させて倒す。このとき、バケット接続部33は挟み込み部32Bによって挟み込まれている。そして、バケット接続部33が挟み込み部32Bによって挟み込まれた状態で、ピン34を挟み込み部32B及びバケット接続部33に挿入する。このようにして、載置板3Aと板支持部3Bとを連結する。本実施の形態において、搬送バケット3は、工具を用いなくても、載置板3Aと板支持部3Bとの連結をすることができるようになっており、組立における利便性が向上している。
【0054】
[制御装置9について]
図5Aは、制御装置9の機能ブロック図である。
図5Bは、緩衝装置8の構成及び動作の説明図である。
図5Cは、各搬送バケット3に割り当てられたID等の説明図である。
図5Dは、各搬送バケット3の現在位置座標の算出方法等の説明図である。
図5Eは、搬出階に到着した特定の搬送バケット3とは異なる搬送バケット3が搬出可能となる場合の一例を示している。
図2A等も参照しながら、制御装置9の構成及び動作について説明する。
【0055】
図5B(a)は、緩衝装置8の緩衝部材8Aが引き上げられて、回動した搬送バケット3を受け止めている様子を示している。
図5B(b)は、緩衝装置8の緩衝部材8Aが引き下げられて、環状部材2とともに下降する搬送バケット3との干渉を回避する様子を示している。
【0056】
制御装置9は、第1の検出センサ10Aの検出結果に基づいて緩衝部材8Aを上下に回動する緩衝装置制御部9Aと、第2の検出センサ10Bの検出結果に基づいて搬送バケット3上の搬送物Cが予め定められた位置まで下降したことを検出すると、モーター4を停止するモーター制御部9Bとを含む。
また、制御装置9は、搬送バケット3上の搬送物Cを搬出する階を設定する搬出階設定部9Cと、第3の検出センサ10Cの検出結果に基づいて複数の搬送バケット3の位置データを取得する位置データ取得部9Dとを含む。
また、制御装置9は、各階の各搬送バケット3の各位置データに基づいて搬送バケット3上の搬送物Cが搬出可能か否かを判定する搬出判定部9Eを含む。
更に、制御装置9は、環状部材2に取り付けられた搬送バケット3の取付間隔の値を更新するバケットピッチ更新部9Fを含む。
【0057】
緩衝装置8は、載置板3Aの移動方向が第2の方向Z2から第1の方向Z1へ切り替わるときに、載置板3Aに接触し、載置板3Aが回動して載置板3Aが板支持部3Bに衝突する衝撃を緩和する緩衝部材8Aを含む。
また、緩衝装置8は、緩衝部材8Aの端部が回転自在に取り付けられた緩衝装置本体8Bと、例えばエアシリンダー等で構成することができる緩衝部材駆動部8Cとを含む。緩衝装置8は、緩衝部材駆動部8Cの作用によって緩衝部材8Aを引き上げたり、引き下げたりすることができる。
【0058】
図5B(a)に示すように、第2の方向Z2に移動して上死点に近づいてきた搬送バケット3は、載置板3Aが上下方向に平行となりコンパクトになっているが、上死点に至ると、載置板3Aが回動する(反転する)。第1の検出センサ10Aは環状部材2の上死点に配置されているので、この載置板3Aが反転するタイミングで、搬送バケット3を検出している。このとき、緩衝部材8Aが載置板3Aを待ち受けているので、載置板3Aが回動して板支持部3Bに接触するときの衝撃を緩和することができ、搬送バケット3が破損等することを抑制することができる。なお、
図5B(b)に示すように、緩衝部材8Aが引き下げられることで、搬送バケット3は、緩衝部材8Aとの接触がなくなり、環状部材2とともに第1の方向Z1に移動することができる。
【0059】
制御装置9は、第2の検出センサ10Bの検出結果に基づいて搬送バケット3上の搬送物Cが予め定められた位置まで下降したことを検出すると、モーター4を停止する。搬送バケット3上に搬送物Cが載置された状態で、搬送バケット3が下死点まで下降してしまうと、載置板3Aが回動して搬送物Cが落下してしまう。こういった事態を回避するために、自動搬送装置100では、第2の検出センサ10Bを用い、搬送物Cが載置された搬送バケット3が予め定められた位置まで下降してきたかどうかを検出している。なお、この予め定められた位置としては、例えば、下死点の上側等の位置、環状部材2が第1の方向Z1に移動する側であってテール部5の設けられている位置、及びフレーム1の下端の位置等を採用することができる。
【0060】
制御装置9は、搬出階設定部9Cによって搬送バケット3上の搬送物Cを搬出する階が設定されており、また、位置データ取得部9Dの出力に基づいて複数の搬送バケット3の位置データを取得している。そして、位置データ取得部9Dは、各階の搬送バケット3の位置データに関する演算及び判定を行う。位置データ取得部9Dは所定の搬送バケット3が予め設定された階に到着したと判定すると、モーター制御部9Bはモーター4を停止する。このときの動作について
図2Aも参照しながら説明する。
搬送物Cには送り先となる階が予め設定される。つまり、搬入階B0の作業者は、搬送物Cを搬送バケット3に載置するときに、送り先の階を設定する。この設定を行う構成が搬出階設定部9Cである。搬出階設定部9Cは例えば制御装置9に設けられた入力ボタン等で構成することができる。
また、制御装置9は、各搬送バケット3の位置を取得する機能を備えている。なお、位置を取得する方法は、例えば、次の通りである。制御装置9には各階の基準座標が予め設定され、記憶されている。
図2Aに示すように、船舶200の階層には、搬入階B0(上部デッキ160の階)、地下一階B1、地下二階B2、地下三階B3、地下四階B4及び地下五階B5がある。そして、各基準座標としては、搬入階B0がY0、地下一階B1がY1、地下二階B2がY2、地下三階B3がY3、地下四階B4がY4、地下五階B5がY5として予め制御装置9に記憶されている。
【0061】
[機械原点座標P_ORG及び各基準座標Y1〜Y5について]
ここで、各階の基準座標Y1〜Y5の算出方法について説明するが、その前に各種のパラメータについて説明する。
図5Cに示すように、第3の検出センサ10Cの配置位置が機械原点座標P_ORGに対応する。また、第3の検出センサ10Cから上部デッキまでの高さ方向の距離が距離P_DECKに対応する。また、上部デッキから各階までの高さ方向の距離が、それぞれ距離P_B1〜距離P_B5に対応する。また、上部デッキにおいて搬送物Cを搬送バケット3に載せるときの、上部デッキから搬送バケット3までの距離が距離P_INに対応する。また、各階において搬送バケット3から搬送物Cを搬出するときの、各階から搬送バケット3までの距離が距離P_OUTに対応する。本実施の形態では、距離P_OUTは各階で共通である。これらのパラメータに基づいて基準座標Y1〜Y5を算出することができる。
【0062】
基準座標Y1〜Y5については次の通りである。
基準座標Y1=距離P_DECK−距離P_OUT+距離P_B1
基準座標Y2=距離P_DECK−距離P_OUT+距離P_B2
基準座標Y3=距離P_DECK−距離P_OUT+距離P_B3
基準座標Y4=距離P_DECK−距離P_OUT+距離P_B4
基準座標Y5=距離P_DECK−距離P_OUT+距離P_B5
【0063】
[各搬送バケット3の位置座標POS_BK_kについて]
次に、各搬送バケット3が機械原点座標P_ORGからどれだけ離れているかを示す、各搬送バケット3の位置座標POS_BK_0について説明する。
図5Dに示すように、環状部材2を駆動するモーター4のスプロケットのピッチ円直径の半分が半径rに対応する。なお、
図5Dでは、モーター4のスプロケットの図示は省略している。また、環状部材2を駆動するモーター4のスプロケットの回転角度(rad)が回転角度θに対応する。また、環状部材2に取り付けられた搬送バケット3の間隔が取付間隔BK_PITに対応する。更に、回転角度θに対応する環状部材2の長さが長さlに対応する。つまり、長さlは、モーター4のスプロケットを中心とする円の弧の長さに対応している。
【0064】
また、
図5C及び
図5Dに示すように、各搬送バケット3にはIDが割り振られている。ある時点において第3の検出センサ10Cを通過した搬送バケット3が基準となるバケットとなる。このため、この搬送バケット3には、IDとして0が割り振られる。そして、その他の搬送バケット3も反時計回り(環状部材2の回転方向と逆方向)に順番にIDが割り振られる。ここでの説明では、搬送バケット3の総数が12であるため、IDは0〜11である。
図5Dでは、搬送バケット3を割り振られたIDごとに示している。
図5Dでは、例えば、IDが0の搬送バケット3はBK_0であり、IDが11の搬送バケット3はBK_11として示している。
【0065】
環状部材2の全長Lは、取付間隔BK_PIT×nで算出することができる。ここで、nは、環状部材2に取り付けられている総数である。なお、取付間隔BK_PITの初期値は、作業者が予め設定してもよい。あるいは、制御装置9が基準となる搬送バケット3が1周するまでの回転角度θを算出し、この回転角度θ×半径r/総数nを算出することで、取付間隔BK_PITを算出してもよい。
また、機械原点座標P_ORGからの位置座標POS_BK_0は、次の式(1)から算出することができる。なお、ここでは、各搬送バケット3にIDが既に割り振られており、モーター4の回転にあわせて各搬送バケット3の基準座標Y1〜Y5が逐次算出されている場合を説明しているが、後で述べる自動運転モードに遷移する前においては、原点復帰動作を行い、各搬送バケット3のIDを振り直す。この原点復帰動作は、低速で環状部材2を正転させ、第3の検出センサ10Cに搬送バケット3が最初に検出された時点でモーター4の回転角度θをリセットする。ここで、回転角度θをリセットするとは0とすることに対応する。そして、原点復帰動作を行って、最初に検出された搬送バケット3のIDは0となる。つまり、原点復帰動作を行うと、各搬送バケット3にIDが再度割り振られることになる。
【0066】
POS_BK_0=mod(r×θ,L)・・・式(1)
【0067】
ここで、式(1)において、mod(a,b)は、aをbで除算した後の剰余を求める関数である。
【0068】
また、式(1)において、回転角度θの値は、次のように算出することができる。
長さl=半径r×回転角度θの関係にある。
また、環状部材2の速度V=長さl/時間tの関係にある。
このため、回転角度θ=(速度V/半径r)×時間tと表すことができる。
これは、回転角度の微小変化量Δθ=(速度V/半径r)×時間の微小変化量Δtと表すこともできる。
ところで、半径rは予め定められた値であり、時間の微小変化量Δtも例えば1ms程度であり、予め定められた値である。また、速度Vは制御装置9が作業者等からの指示を受けて値が定められる。このため、制御装置9は、Δθの値を取得することができる。
したがって、制御装置9は、環状部材2が回転している時間分だけ、Δθを積算することで、θを取得することができる。
【0069】
次に、その他の搬送バケット3の、機械原点座標P_ORGからの位置座標POS_BK_kは、次の式(2)から算出することができる。なお、「POS_BK_k」のうちの「k」は搬送バケット3のIDに対応しており、「k」が「0」であれば、ある時点において第3の検出センサ10Cを通過した直後の基準となる搬送バケット3を指す。
【0070】
POS_BK_k=POS_BK_0−k×BK_PIT(k=1〜11)・・・式(2)
【0071】
なお、POS_BK_k<0の関係を満たす場合には、次の式(3)のように、環状部材2の全長Lを加えて正の値に変換する。
【0072】
POS_BK_k=POS_BK_0−k×BK_PIT+L・・・式(3)
【0073】
次に、各搬送バケット3が搬出階に到着したか否かの判断方法について説明する。
制御装置9は、上記で説明したような搬送バケット3の位置座標POS_BK_kを逐次算出している(k=0〜11)。
また、搬送物Cが載置された搬送バケット3には、搬送物Cの搬出階の値として、DEST_BK_kが設定されている(k=0〜11)。本実施の形態では、地下5階まである態様であるため、DEST_BK_kには、0〜5までの整数値が設定される。例えば、IDが3の搬送バケット3の搬出階がB4階であれば、DEST_BK_3=4となり、搬出階の到着判断では、基準座標Y4の値を用いることになる。なお、DEST_BK_kの値が0である場合とは、搬出階が指定されていないことを示している。
そして、制御装置9は、位置座標POS_BK_kと、搬出階の基準座標とを比較することで、搬出階の到着判断を行う。IDが3の搬送バケット3の搬出階がB4階である例でいえば、制御装置9は、位置座標POS_BK_3と、基準座標Y4とを比較して、搬送バケット3がB4階に到着したか否かを判断する。
【0074】
ここでは、モーター4がサーボモーターであるものとして説明する。モーター4には、各搬送バケット3の位置座標を検出するのに用いるエンコーダーが搭載されている。つまり、制御装置9の位置データ取得部9Dは、エンコーダーの検出データに基づいて、各搬送バケット3の位置座標POS_BK_kを取得する。なお、先述した時間の微小変化量Δtは、例えばモーター4のエンコーダーの所定のパルス数に対応している。例えば、地下四階B4に搬送物Cを搬送する場合には、搬入階B0の作業者が、搬出階設定部9Cで地下四階B4を設定する。そして、制御装置9は、搬出階設定部9Cで設定された地下四階B4の基準座標Y4とエンコーダーから得られる搬送バケット3の位置座標POS_BK_kとの差分を算出し、モーター制御部9Bは、該差分が小さくなり、搬送バケット3が地下四階B4に至るとモーター4を停止する。
【0075】
自動搬送装置100は、搬送物Cを搬出する各階に配置された操作表示盤11を備えている。各階の各操作表示盤11は、搬出階設定部9Cによって搬送物Cの搬出階に設定されている場合において、搬送バケット3が到着すると、当該到着を報知する報知部11Aと、搬送バケットから搬送物Cを搬出し終えたことを入力する入力部11Bとを含む。モーター制御部9Bは、入力部11Bの入力がされるとモーター4を駆動する。
例えば、上述のように、送り先の階として地下四階B4が設定された搬送バケット3が、地下四階B4に到着したとする。すると、地下四階B4の操作表示盤11の報知部11Aは、搬送バケット3の到着を報知し、地下四階B4の作業者に搬送バケット3の到着を報知する。なお、報知の手段としては、ボタンを点滅させる、音声で出力する等の手段を採用することができる。そして、作業者が、搬送バケット3から搬送物Cを搬出し、入力部11Bを入力すると、再び、モーター4が動き始める。なお、入力部11Bは、例えば、ボタン等で構成することができる。
【0076】
以上の説明では、モーター4が停止したときに、搬送バケット3から搬送物Cを搬出する作業が1つの階で行われる態様について説明してきた。つまり、地下四階B4で搬送物Cを搬出している間は、他の階の報知部11Aで報知はされず、且つ、入力部11Bの操作もできないということである。
このようになっている理由は、地下四階B4で停止している搬送バケット3の上に位置する搬送バケット3が、基準座標がY3の位置で停止しているとは限らないためである。つまり、搬送バケット3が地下三階B3のかなり高い位置で止まっており、搬出作業を行うことが困難なことも想定されるということである。
このため、地下四階B4以外の階の作業者は、搬送バケット3に搬送物Cが載置されていても、報知がなされないので搬出作業は行わない。なお、報知がされなくても、作業者が搬送バケット3から搬送物Cを搬出してしまう可能性もある。そこで、作業者には、報知がされない場合には、搬送物Cの搬出作業の安全性が確保されているかわからないので、搬送物Cを搬出しないように伝えておくとよい。
【0077】
次に、モーター4が停止したときに複数の階で搬送物Cを搬出することができる態様について
図5A及び
図5Eを参照しながら説明する。
【0078】
制御装置9は、各階の各搬送バケット3の各位置データに基づいて搬送バケット3上の搬送物Cが搬出可能か否かを判定する搬出判定部9Eを含む。報知部11Aのうち、搬出階設定部9Cによって搬送物Cの搬出階に設定されている階以外であって搬出判定部9Eが搬出可能であると判定された階のものは、搬送バケット3が到着すると、当該到着を報知する。
ここでは、搬送物Cの送り先が地下四階B4となっている搬送バケット3が先行し、その次に搬送物Cの送り先が地下B3階となっている搬送バケット3が続いている場合について説明する。具体的には、
図5Eに示すように、搬送物Cの送り先が地下四階B4となっている搬送バケット3のIDはk−1であり、DEST_BK_k−1の値は、地下四階B4が送り先なので、4である。また、この搬送バケット3に続く搬送バケット3のIDはkであり、DEST_BK_kの値は、地下三階B3が送り先なので、3である。
制御装置9は、位置座標POS_BK_k−1と基準座標Y4との差分に基づいて、搬送物Cの送り先が地下四階B4となっている搬送バケット3が地下四階B4に到着したか否かを判断する。そして、制御装置9が到着したと判断した場合には、制御装置9はモーター4を停止する。
ここで、位置データ取得部9Dは、地下三階B3の搬送バケット3の位置座標POS_BK_3も取得している。また、制御装置9には、地下三階の基準座標Y3が予め記憶されている。搬出判定部9Eは、この位置座標POS_BK_3と基準座標Y3との差分(地下三階B3の搬送バケット3の高さ)を算出する。この差分が予め定められた値A_OUTより小さい場合には、搬出判定部9Eは、地下三階B3の搬送物Cも搬出可能であると判定し、地下三階の操作表示盤11の報知部11Aが搬出可能であることを報知する。搬送物Cの高さ位置は基準座標Y3にはないものの、搬出が困難等となるほど、基準座標Y3から外れていないためである。地下四階B4だけでなく地下三階B3でも搬出作業が並列的に行えるので、搬送効率を向上させることができる。
一方、この差分が予め定められた値A_OUT以上であれば、制御装置9は地下三階B3の搬送物Cを搬出できないと判定し、地下三階の操作表示盤11の報知部11Aは報知をしない。搬送物Cの位置が高く、搬出が困難等となることが想定されるためである。
なお、この予め定められた値A_OUTとしては、例えば、300mm〜500mm程度の値を採用することができる。
【0079】
モーター制御部9Bは、搬出階設定部9Cによって搬送物Cの搬出階に設定されている階(ここでは、地下四階B4)の操作表示盤11の入力部11Bの入力、及び、搬出判定部9Eによって搬送物Cが搬出可能である判定された階(ここでは、地下三階B3)の操作表示盤11の入力部11Bの入力がされると、モーター4を駆動する。上述の例でいえば、地下四階B4の作業者が搬出を終えて、入力部11Bを入力したときに、地下三階B3の作業者が搬出を終えていない状況も想定されることからこの構成を採用している。これにより、先行する送り先である地下四階B4の作業者、及び、続く送り先である地下三階B3の作業者の両方が、搬出作業をし終えてから、モーター4を動かすことができ、作業者の安全性を確保することができる。
【0080】
自動搬送装置100の環状部材2は使用をしていると、徐々に伸びてくるため、それに伴って、取付間隔BK_PITも増大していく。この取付間隔BK_PITは、各搬送バケット3の位置座標を算出するのに用いるため、取付間隔BK_PITが変化すると、各搬送バケット3の位置座標の算出誤差が増大してしまう。そこで、自動搬送装置100には、取付間隔BK_PITの値を補正する機能を有している。すなわち、制御装置9は、取付間隔BK_PITの値を更新するバケットピッチ更新部9Fを備えている。
【0081】
バケットピッチ更新部9Fは、搬送バケット3の取付間隔BK_PITと第3の検出センサ10Cの検出結果とに基づいて、取付間隔BK_PITの更新値を算出する。これについて、以下に詳しく説明する。
【0082】
バケットピッチ更新部9Fは、基準となる搬送バケット3が環状部材2を1周するまでの回転角度θを算出する。つまり、この回転角度θは搬送バケット3の一周分に対応する角度である。なお、基準となる搬送バケット3が環状部材2を1周したか否かは、第3の検出センサ10Cの検出結果と搬送バケット3のIDとに基づいて判断することができる(後述する
図7BのステップT3−2、T3−3に対応)。そして、バケットピッチ更新部9Fは、算出した回転角度θ×半径r/総数nを算出することで、取付間隔BK_PITを算出する。なお、回転角度θ×半径rは環状部材の全長Lに対応する量であり、搬送バケット3の総数nで割ることで、取付間隔BK_PITが算出される。
【0083】
ここで、時間t1のときに算出した取付間隔BK_PIT(t1)よりも、時間t1よりも後の時間t2のときに算出した取付間隔BK_PIT(t2)の方が大きくなっているとする。なお、制御装置9には、取付間隔BK_PIT(t1)が設定されているとする。この場合には、制御装置9は、取付間隔BK_PIT(t2)を新たに取付間隔として設定する(後述の
図7BのステップT3−5に対応)。なお、バケットピッチ更新部9Fは、後述するフラグをON、OFFする機能及びフラグがONしているか否かを判定する機能を有している(後述する
図7BのステップT3−4、T3−6、T3−7に対応)。そして、バケットピッチ更新部9Fは、このフラグがONしているときに、ここで述べた取付間隔に関する演算をして、新たな取付間隔を設定する(後述する
図7BのステップT3−7に対応)。
【0084】
[搬送物Cの搬送方法について]
図6Aは、本実施の形態に係る自動搬送装置100を用いて指定階に搬送物Cを搬送する方法の説明図である。
【0085】
図6Aでは、搬出判定部9Eが設けられていない場合の方法を示している。
図6Aでは、搬送物CにB3又はB4の文字を付しているが、これは、この搬送物Cを搬出する指定階を示している。また、ステップS1の丸及びバツの記号は、搬送物Cを搬出可能であるか否かを示しており、丸であれば搬出可能であり、バツであれば搬出できないことを示している。
また、
図6Aでは、地下七階B7まである場合を例に示している。
更に、
図6Aに示す方法では、モーター4を駆動する度に1つの搬送物Cを搬出している。
【0086】
(ステップS1)
図6AのステップS1において、搬送物Cが指定階である地下四階B4に到着している。このため、地下四階B4の操作表示盤11の報知部11Aが作業者に報知し、搬送物Cの搬出を促す。なお、地下三階B3については、たとえ、搬送バケット3の高さ位置が低く、搬出することができる場合であっても、地下三階B3の報知部11Aが作業者に報知をすることがない。
図6Aでは、搬出判定部9Eが設けられていないためである。
【0087】
(ステップS2)
ステップS2では、ステップS1の状態からモーター4が駆動し、搬出する指定階が地下三階B3の搬送バケット3が規定位置(基準座標Y3に対応する位置)までくるとモーター4が停止する。そして、地下三階B3の操作表示盤11の報知部11Aが作業者に報知をし、作業者が搬送物Cを搬出して入力部11Bを入力すると、再び、モーター4が駆動する。
【0088】
(ステップS3)
ステップS3では、指定階が地下四階である搬送物Cが下方に移動してくる。
【0089】
(ステップS4)
ステップS4では、指定階が地下四階である搬送物Cが地下四階B4に到着している。このため、地下四階B4の操作表示盤11の報知部11Aが作業者に報知し、搬送物Cの搬出を促す。なお、ステップS1と同様に、地下三階B3の報知部11Aが作業者に報知をすることはない。
【0090】
(ステップS5)
ステップS5では、ステップS2と同様の動作である。つまり、ステップS4の状態からモーター4が駆動し、搬出する指定階が地下三階B3の搬送バケット3が規定位置(基準座標Y3に対応する位置)までくるとモーター4が停止する。そして、地下三階B3の操作表示盤11の報知部11Aが作業者に報知をし、作業者が搬送物Cを搬出して入力部11Bを入力すると、再び、モーター4が駆動する。
以上の動作を繰り返すことで、地下三階B3及び地下四階B4に順次、搬送物Cを送る。
【0091】
図6Bは、本実施の形態に係る自動搬送装置100を用いて、指定階及び当該指定階とは異なる搬出可能階に搬送物Cを搬送する方法の説明図である。
【0092】
図6Bでは、搬出判定部9Eが設けられている場合の方法を示している。
図6Bでも、搬送物CにB3又はB4の文字を付しているが、これは、この搬送物Cを搬出する指定階を示している。
図6Bに示す方法では、モーター4を駆動する度に複数(ここでは2つ)の搬送物Cを搬出している。
【0093】
(ステップS11)
図6BのステップS11において、搬送物Cが指定階である地下四階B4に到着している。この搬送物Cは地下四階B4の規定位置(基準座標Y4に対応する位置)にきており、作業者は確実に搬送物Cを搬出することができる。
これに加え、搬送物Cが指定階である地下三階B3にも到着している。ただし、地下四階B4の搬送物Cが、地下三階B3の搬送物Cよりも先に規定位置にきているため、地下四階B4の規定位置を基準としてモーター4が停止している。このため、地下三階B3の搬送物Cについては、規定位置(基準座標Y3に対応する位置)よりも高さが高い。
搬出判定部9Eは、搬送バケット3の現在の位置座標と基準座標Y3との差分(地下三階B3の搬送バケット3の高さ)を算出し、搬送物Cを搬出することができるかどうかを判定する。ステップS11では、搬出判定部9Eが搬出可能と判定している。
したがって、地下四階B4及び地下三階B3の操作表示盤11の報知部11Aが、作業者に報知し、搬送物Cの搬出を促す。地下四階B4及び地下三階B3の両作業者が、搬送物Cを搬送し終え、入力部11Bを入力するとモーター4が再び駆動する。
【0094】
(ステップS12)
ステップS12では、搬出する指定階が地下四階B4の搬送バケット3が規定位置にくるまでモーター4が駆動する。
【0095】
(ステップS13)
ステップS13では、ステップS11と同様の動作である。搬送物Cが指定階である地下四階B4に到着し、また、搬送物Cが指定階である地下三階B3に到着している。したがって、地下四階B4及び地下三階B3の操作表示盤11の報知部11Aが、作業者に報知し、搬送物Cの搬出を促す。
【0096】
(ステップS14)
ステップS14では、ステップS12と同様の動作である。ステップS14では、搬出する指定階が地下四階B4の搬送バケット3が規定位置にくるまでモーター4が駆動する。
【0097】
(ステップS15)
ステップS15ではステップS11及びステップS13と同様の動作である。
【0098】
このように、
図6Bに示す搬送物Cの搬出方法では、
図6Aに示す搬送物Cの搬出方法よりも、効率的となっている。
図6Bに示す搬出方法では、1度に複数の搬送物Cを搬出することができるので、
図6Aに示す搬出方法に対して1.5倍程度、作業効率を向上させることができる。
【0099】
図6Bに示す搬送物Cの搬出方法は、次のステップを含んでいる。
搬送物Cを搬送する方法は、搬送物Cの搬入階で搬送バケット3に搬送物Cを載置し、搬入階よりも下の階に当該載置した搬送物Cを送る搬入ステップを備えている。
また、搬送物Cの送り先に設定された第1の階(
図6Bの例では、地下四階B4)に搬送バケット3が到着するとモーター4を停止させるモーター停止ステップを備えている。
また、第1の階とは異なる第2の階(
図6Bの例では、地下三階B3)の搬送バケット3の高さ位置に基づいて、第2の階の搬送バケット3から搬送物Cを搬出することができるか否かを判定する判定ステップを備えている。
また、第1の階の作業者に搬送バケット3が到着したことを報知し、判定ステップで搬送物Cを搬出することができると判定された場合には、第2の階の作業者に搬送バケット3が到着したことを報知する報知ステップを備えている。
更に、第1の階の搬送バケット3から搬送物Cを搬出し、判定ステップで搬送物Cを搬出することができると判定された場合には、第1の階の搬送バケット3から搬送物Cを搬出し終えると、モーター4を駆動させるモーター駆動ステップを備えている。
【0100】
[自動運転モードについて]
図7Aは、本実施の形態に係る自動搬送装置100の自動運転モードの制御フローチャートである。
自動搬送装置100は、自動運転モードを実行可能である。なお、自動運転モードを開始する前には、予め原点復帰動作を行い、第3の検出センサ10Cに搬送バケット3が最初に検出された時点でモーター4の回転角度θをリセットしておく。
自動運転モードでは、モーター4をΔθだけ回転させるように指示するステップT1と、各搬送バケット3のお位置座標を更新するステップT2と、環状部材2の伸び量に応じて取付間隔BK_PITの値を更新するステップT3とを含む。また、自動運転モードは、搬入階B0に到着した搬送バケット3に搬入階を設定する処理を行うステップT4と、搬出階に到着した搬送バケット3から搬送バケット3を搬出する処理を行うステップT5とを含む。
【0101】
ステップT1において、制御装置9は、回転角度θを回転角度θ+Δθへ更新する。なお、回転角度の微小変化量Δθは、先述したように、(速度V/半径r)×時間の微小変化量Δtに対応している。したがって、回転角度が更新されると、モーター制御部9Bは、予め定められている速度Vと、Δθに対応するΔtと、に基づいて運転し、環状部材2を回転させる。
ステップT2において、制御装置9は、各搬送バケット3の位置座標を更新する。つまり、ステップT1を経ているステップT2では、各搬送バケット3の位置が変化しているので、再度、全ての搬送バケット3の位置座標を取得することとしている。
ステップT3は後述の
図7Bで詳しく説明する。
ステップT4は後述の
図7Cで詳しく説明する。
ステップT5は後述の
図7Dで詳しく説明する。
【0102】
[搬送バケットピッチ量の更新処理制御について]
図7Bは、
図7Aに示す自動運転モードに含まれる搬送バケットピッチ量の更新処理制御のフローチャートである。搬送バケットピッチ量の更新処理制御は、ステップT3−1〜ステップT3−9を含む。
まず、制御装置9のバケットピッチ更新部9Fは、第3の検出センサ10Cによって搬送バケット3が検出されたかどうかを判定する(ステップT3−2)。そして、検出された場合には、搬送バケット3のIDが0であるか否かを判定する(ステップT3−3)。搬送バケット3のIDが0である場合というのは、第3の検出センサ10Cによって検出された搬送バケット3が基準となるバケットであるということである。ところで、ステップT3−3において、搬送バケット3のIDが0であるかどうかは、搬送バケット3の位置座標POS_BK_0の値を用いて判定している。具体的には、制御装置9は、第3の検出センサ10Cが搬送バケット3を検出した時点で(ステップT3−2でYes)、IDが0の搬送バケット3の位置座標POS_BK_0が0であるか否かを判定している(ステップT3−3)。なお、各IDの搬送バケット3の位置座標POS_BK_k(k=0〜11)は、先述した式(1)に基づいて、制御周期ごとに算出されている。この制御周期は自動運転モードの周期に対応しており、各IDの搬送バケット3の位置座標POS_BK_kはステップT1でモーター4をΔθだけ回転させるごとに算出されている。
【0103】
ここで、このステップT3−3の判定に関し、位置座標POS_BK_0の値が、0(=機械原点座標P_ORG)であれば、搬送バケット3のIDを0と判定し、ステップT3−3からステップT3−4へ進む。
このとき、位置座標POS_BK_0の値は、機械原点座標P_ORGから微小誤差が生じ、0からずれている場合がある。このため、制御装置9のバケットピッチ更新部9Fは、ステップT3−3において、以下の式(4)の条件を満たしているか否かを判定する。
【0104】
|POS_BK_0|<ε 又は |POS_BK_0|>L−ε・・・式(4)
【0105】
εは設定値であり、例えばBK_PIT/2程度に設定するとよい。ステップT3−3において上記式(4)を満たしている場合には、制御装置9のバケットピッチ更新部9Fは、搬送バケット3のIDを0と判定し(ステップT3−3でYes)、ステップT3−4へ移行する。
【0106】
次に、制御装置9のバケットピッチ更新部9Fは、環状部材2の伸び量を算出するフラグがONしているか否かを判定する(ステップT3−4)。なお、環状部材2の伸び量を算出するフラグのことを以下では、単にフラグと称する。フラグがOFFであれば、制御装置9は、そのときのモーター4の回転角度θをモーター回転角θsとして設定する(ステップT3−5)。続いて、制御装置9は、フラグをONとする(ステップT3−6)。
また、フラグがONであれば、制御装置9のバケットピッチ更新部9Fは、そのときのモーター4の回転角度θと、ステップT3−5において予め設定しておいたモーター回転角θsとの差分値(θ−θs)に基づいて、これまで取付間隔BK_PITとして設定されていた値を更新する(ステップT3−7)。具体的には、制御装置9のバケットピッチ更新部9Fは、現時点におけるモーター4の回転角度θから、ステップT3−7で設定しておいたモーター回転角θsを引いた値(θ−θs)に、半径rを掛け(環状部材2の全長Lに対応)、総数nで割ることで、取付間隔BK_PITの更新値を算出することができる。
なお、現時点におけるモーター4の回転角度θとは、ステップT3−7で設定しておいたモーター回転角θsに、環状部材2の1周分に対応する角度が重畳した値である。つまり、ステップT3−5でモーター回転角θsを設定してから、本ステップT3−7へ移行してくるまでには、環状部材2(各搬送バケット3)が1周している。これは、ステップT3−5に移るときにステップT3−2及びステップT3−3において、基準となるIDが0のバケットの判定がされており、その後、ステップT3−7に移るときに再びステップT3−2及びステップT3−3において、基準となるIDが0のバケットの判定がされているからである。
このように、バケットピッチ更新部9Fは、第3の検出センサ10Cの検出結果に基づいて基準となるID0の搬送バケット3の1周分に対応するモーター回転角度(θ−θs)を取得し、モーター回転角度(θ−θs)×半径r/総数nをして取付間隔BK_PITの更新値を算出する。
続いて、制御装置9は、フラグをOFFとする(ステップT3−8)。
【0107】
なお、制御装置9のバケットピッチ更新部9Fが、取付間隔BK_PITの値を更新すると、位置データ取得部9Dは、更新した取付間隔BK_PITの値に基づいて各搬送バケット3の位置データを取得する。これにより、環状部材2が伸びてしまうことで、各搬送バケット3の位置データの検出精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0108】
また、制御装置9で取付間隔BK_PITの値を更新したときに取付間隔BK_PITの初期値との差異が規定値(例えば、5mm等)を超えた場合には、自動搬送装置100がその旨を音声や表示等により報知するように構成されているとよい。これにより、作業者は、環状部材2のテンションが低下していれば、軸受け部5Fの位置を調整し、環状部材2にテンションをかけ直すことができる。また、制御装置9は、初期値に取付間隔BK_PITの更新値を代入する。つまり、制御装置9は、取付間隔BK_PITの更新だけでなく、取付間隔BK_PITの初期値の更新も行う。
【0109】
[搬入処理制御について]
図7Cは、
図7Aに示す自動運転モードに含まれる搬入処理制御のフローチャートである。搬入処理制御は、ステップT4−1〜ステップT4−8を含む。
搬入処理制御は、各搬送バケット3に搬送物Cを載置するとともに、搬出階を設定する処理である。
【0110】
制御装置9は、搬入処理制御で用いる搬送バケットID値BK_IDを0とする(ステップT4−2)。なお、以下の説明では、搬送バケットID値のことを単にBK_IDとも称する。BK_IDは、全ての搬送バケット3(全てのID)に対して、搬出階が設定できるように、IDとは別に設けられた数値である。本実施の形態ではIDが0〜11まであるので、BK_IDも0〜11の値を取り得る。ここでは、BK_IDを0とし、そして、徐々にBK_IDを大きくしていき、全てのIDの搬送バケット3の搬出階を設定する。
【0111】
ステップT4−2から移行した直後では、BK_IDが0であるため、制御装置9は、IDが0の搬送バケット3が搬入階B0に到着したか否かを判定する(ステップT4−3)。なお、後段のステップにおいて、BK_IDは増大していくため、それに応じて、制御装置9が、ステップT4−2で判定するIDも変わっていく。
IDが0の搬送バケットが搬入階B0に到着したと判定した場合には、制御装置9は、作業者によって、搬送物Cの搬出階が入力部11Bによって入力されるのを待つ(ステップT4−4)。ここで、IDが0の搬送バケット3の搬出階が地下四階B4と入力されたものとする。すると、制御装置9は、DEST_BK_0を4に設定する(ステップT4−5)。
【0112】
制御装置9は、IDが0の搬送バケット3の搬出階の設定を終えると、BK_IDに1を加える。すなわち、現時点での搬送バケットID値に1を加える(ステップT4−6)。そして、制御装置9は、BK_IDが搬送バケット3の総数nと等しいか否かを判定する(ステップT4−7)。ここでの説明では、BK_IDが1であり、総数nよりも小さいので、ステップT4−3に戻ることになる。
ステップT4−3からステップT4−7までのループは全ての搬送バケット3に対して搬出階の設定がなされるまで繰り返されることになる。
【0113】
[搬出処理制御について]
図7Dは、
図7Aに示す自動運転モードに含まれる搬出処理制御のフローチャートである。搬出処理制御は、ステップT5−1〜ステップT5−22を含む。
図7Dに示すように、搬出処理制御は、機能的に、処理Aと、処理Bと、処理Cとに分けることができる。処理Aは、搬送バケット3が指定された搬出階へ到着しているか否かを判定等の処理をする。処理Bは、搬送バケット3が搬出判定部9Eによって搬出可能であると判定された場合に報知部11Aで報知し、また、該判定がされた搬送バケット3の数をカウントする等の処理をする。処理Cは、搬出可能な全ての搬送バケット3から搬送物Cが搬出されるまで待機する等の処理をする。
【0114】
(処理A)
制御装置9は、BK_IDを0とする(ステップT5−2)。このステップは、先述したステップT4−2と同様である。ステップT5−2から移行した直後では、BK_IDが0である。制御装置9は、該当IDが0の搬送バケット3が設定された搬出階に到着したか否かを判定する(ステップT5−3)。ここでは、一例として、ステップT5−3における該当IDも0であるとして説明する。また、一例として、設定された搬出階が地下四階B4であるものとして説明する。
仮に、ステップT5−3における該当IDが0ではなく、その他の値であると、制御装置9は、BK_IDに1を加え(ステップT5−20)、BK_IDが搬送バケット3の総数nと等しいか否かを判定する(ステップT5−21)。つまり、処理Aでは、搬出階へ到着している搬送バケット3が分かるまでループをし(ステップT5−21でNo)、仮に、搬出階へ到着している搬送バケット3が一つもなければ搬出処理制御を終了する(T5−21でYes)。
【0115】
(処理B)
IDが0の搬送バケット3が地下四階B4(=設定された搬出階)に到着したと判定した場合(ステップT5−3でYes)は、モーター4が停止していることを意味している。制御装置9は、搬出処理制御で用いる搬送可能バケット数BK_Nを0とする(ステップT5−4)。なお、以下の説明では、搬送可能バケット数BK_Nを単にBK_Nとも称する。BK_Nは、搬送バケット3が設定された階に到着し、モーター4が停止した状態において、搬出可能な搬送バケット3の総数を正確に把握するために用いる数値である。本実施の形態では搬出階が地下一階B1〜地下五階B5の計5階であるため、BK_Nは1〜5の値を取り得る。
制御装置9は、ステップT5−1と同様にして、BK_IDを0とする(ステップT5−5)。BK_IDを0とすることで、処理Bのループにおいて、漏れなく搬出可能な搬送バケット3を把握することができる。
IDが0の搬送バケット3が地下四階B4に到着しているため、搬出判定部9Eは、IDが0の搬送バケット3が搬出可能であると判定する(ステップT5−6)。本ステップT5−6は、IDが0以外の搬送バケット3に対しては、先述した予め定められた値A_OUTに基づく判定をして、搬出可能であるか否かを判定することになる。
地下四階B4の報知部11Aは報知を開始する(ステップT5−7)。制御装置9は、現時点では0であるBK_Nに1を加える(ステップT5−8)。制御装置9は、現時点では0であるBK_IDに1を加える(ステップT5−9)。制御装置9は、BK_IDが搬送バケット3の総数nと等しいか否かを判定する(ステップT5−10)。
以上のように、処理Bでは、全てのIDの搬送バケット3に対して、搬出可能であるか否かを判定し、もし搬出可能であると判定した場合には、逐次、BK_Nの数値を増大させる。これにより、搬出可能な搬送バケット3の総数を正確に把握することができる。
【0116】
(処理C)
制御装置9は、ステップT5−1と同様にして、BK_IDを0とする(ステップT5−11)。制御装置9は、IDが0の搬送バケット3が搬出可能であるかを判定する。IDが0の搬送バケット3は処理BのステップT5−6で説明したように搬出可能であるため、ステップT5−13に移行する。制御装置9は、作業者が搬送物Cを搬出し終え、入力部11Bが入力され、送り指令がONとなっているか否かを判定する(ステップT5−13)。
制御装置9は、IDが0の搬送バケットの搬出階指定をリセットする(ステップT5−14)。すなわち、制御装置9は、DEST_BK_0を0とする。そして、制御装置9は、処理Bで算出したBK_Nから1を減算する(ステップT5−15)。更に、制御装置9は、ステップT5−7で開始した報知を終了する(ステップT5−16)。
制御装置9は、現時点では0であるBK_IDに1を加える(ステップT5−17)。制御装置9は、BK_IDが搬送バケット3の総数nと等しいか否かを判定する(ステップT5−18)。更に、制御装置9は、BK_Nが0と等しいか否かを判定する(ステップT5−19)。
例えば、処理Cに移行時において、既に、全ての搬出可能な搬送バケット3に対して送り指令がONとなっている場合には、ステップT5−12からステップT5−18のループを繰り返すうちに、BK_Nは0となる。したがって、この場合には、ステップT5−19においては、必然的に、ステップT22に移行する。
しかし、処理Cに移行時において、搬出可能な搬送バケット3の少なくとも一つに対して送り指令がONとされていない場合も想定される(ステップT5−13でNo)。この場合において、ステップT22に移行して、搬出処理制御が終了してしまうと、送り指令がONとされていないものが残っているのに搬送バケット3が動き出してしまうことになる。このようなことがないように、ステップT5−13において、送り指令がONとなっていなければ、ステップT5−13で「No」となり、ステップT5−15を経ないこととしている。これにより、ステップT5−12からステップT5−18のループを繰り返しても、BK_Nの値は0にはならないようにし、ステップT5−19からステップT5−11に戻り、意図せずに、搬出処理制御が終了してしまうことを回避している。
【0117】
[船舶200以外の設置例]
図8は、
図1Aとは異なる設置例の説明図である。
本実施の形態では、自動搬送装置100が船舶200に設置される用途について説明するが、これに限定されるものではない。船舶200以外の空間の制約が大きい場所において任意の搬送物を運ぶ際に自動搬送装置100を用いても、本実施の形態に係る自動搬送装置100と同様の効果を得ることができる。
【0118】
例えば、
図8に示すように、地面を掘削して地下に構造物を建造するときにも用いることができる。地下では空間が狭隘であるが、自動搬送装置100は、分割自在に構成された長尺状のフレーム1等を備えているので、自動搬送装置100の設置作業の利便性が損なわれることを抑制することができる。
【0119】
その他に、例えば、ビル等の建築物を建造するときにおいて、地上から上の階へ搬送物を搬送する際にエレベーターを用いず、自動搬送装置100を用いてもよい。また、複数階を有する倉庫や工場等に自動搬送装置100を設置し、搬送物を運搬することも有効である。なお、本実施の形態では、搬送バケット3が搬送物を上から下へ搬送する態様であったが、例えばモーター4の回転方向を逆とすることで、搬送物を下から上へ搬送することができる。
【0120】
なお、自動搬送装置100は、必ずしも、船舶200や地下の構造物等のように狭隘な空間に設置する必要はなく、自動搬送装置100を用いることで、効率的に搬送物を搬送することができる。
【0121】
本実施の形態では、自動搬送装置100のフレーム1が3分割の例を示したがそれに限定されるものではなく、2分割でもよいし、4分割以上であってもよい。すなわち、自動搬送装置100は、フレーム1の分割数を、自動搬送装置100を設置する構造体の大きさ等、用途に応じて変更することができ、汎用性が向上している。