特許第6337366号(P6337366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6337366米糠麹の製造方法およびこれを用いた米糠麹糖化物、米糠麹穀物粉糖化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337366
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】米糠麹の製造方法およびこれを用いた米糠麹糖化物、米糠麹穀物粉糖化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/104 20160101AFI20180528BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20180528BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20180528BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20180528BHJP
   C12R 1/66 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   A23L7/104
   A23L33/135
   C12N1/14 101
   C12P19/02
   C12N1/14 101
   C12R1:66
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-253640(P2013-253640)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-112019(P2015-112019A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】396009458
【氏名又は名称】三和油脂株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513309513
【氏名又は名称】サンブラン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593022021
【氏名又は名称】山形県
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 漣
(72)【発明者】
【氏名】鬼島 直子
(72)【発明者】
【氏名】勝見 直行
(72)【発明者】
【氏名】小関 卓也
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−303936(JP,A)
【文献】 特開2004−267178(JP,A)
【文献】 特開2002−027929(JP,A)
【文献】 特開平04−281756(JP,A)
【文献】 特開平08−196286(JP,A)
【文献】 特開平03−019686(JP,A)
【文献】 特開昭52−041298(JP,A)
【文献】 特開2003−180275(JP,A)
【文献】 特開2007−097496(JP,A)
【文献】 特開平06−133745(JP,A)
【文献】 特開2007−125002(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0120119(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
C12P 1/00−41/00
C12N 1/00−3/00
C12R 1/66−1/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)圧搾に供する米糠の温度を100℃〜130℃として圧搾により脱脂処理して得られた脱脂米糠粉末を、水分調整して、堆積状態においても脱脂米糠に酸素が接触できる形状に成形した後、乾燥して保形し、(2)得られた脱脂米糠成形物に対して、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii) 、およびクエン酸生産能およびフェルラ酸生産能を保持したその変異株から成る群から選択される少なくとも1種の麹菌を水分とともに添加し、培養を行うことを特徴とする米糠麹の製造方法。
【請求項2】
脱脂処理して得られた前記脱脂米糠粉末は油分含有量12%以下のものとされていることを特徴とする請求項1に記載の米糠麹の製造方法。
【請求項3】
脱脂米糠成形物はフレーク状、粒状とされたものであり、水分含量が3〜10%程度のものである請求項1または2に記載の米糠麹の製造方法。
【請求項4】
麹菌の培養は、脱脂米糠成形物の水分含有量を32〜42%に調整して行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の米糠麹の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の米糠麹の製造方法により調製された米糠麹に対し、加水加熱して糊化させた穀物粉を、乾燥重量換算で1:0.1〜1:10の割合で加え、50℃〜60℃の温度条件下で糖化処理することを特徴とする米糠麹穀物粉糖化物の製造方法。
【請求項6】
穀物粉として米粉を使用するものである請求項5に記載の米糠麹穀物粉糖化物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の米糠麹の製造方法により調製された米糠麹に対し、水を、1:2〜1:4の割合で加え、50℃〜60℃の温度条件下で糖化処理することを特徴とする米糠麹糖化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠麹の製造方法およびこれを用いた米糠麹糖化物、米糠麹穀物粉糖化物の製造方法に関するものである。詳しく述べると本発明は、機能性有効成分を多く含み、また香り、風味等が良好で食品材料として有用である米糠麹およびこれを用いた米糠麹穀物粉糖化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玄米の胚芽や表皮からなる米糠は、米全体の約1割を占めており、我が国における水田から生産される豊富な資源である。また、米糠は栄養価が高く、繊維質を多く含み、ビタミン、鉄分などのミネラルも豊富に含むものである。また、米糠には、γ―オリザノールが多く含まれ、その結合物であるフェルラ酸は抗酸化作用による細胞の老化防止、抗腫瘍活性、アルツハイマー型認知症の予防に有効であることが知られている。しかしながら、米糠は、酸化安定性、細菌繁殖、食味等の点において問題があり、米糠油として油分抽出して一部利用されている他は、肥料原料、畜産用飼料原料や糠漬けの糠床材料などとして主に利用されており、食料としてはあまり有効に活用されていないのが現状である。
【0003】
特許文献1には、米糠の粉末に、水分を加え粒子状に加工する第一の工程と、該粒子状になった米糠を蒸気をあて蒸す第二の工程と、該蒸した米糠に、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)を種麹として摂取し、むろにおいて培養する第三の工程と、培養された麹と培養中に産出された酵素を含む玄米麹を乾燥する第4の工程とからなる米糠を基質とした麹培養方法が開示され、これにより得られた培養した麹菌と該麹菌から産生された酵素からなる玄米麹を、健康補助食品として利用することが提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような方法により製造された米糠麹は、麹菌の育成、当該麹菌による酵素生産性が十分なものとはいえず、また、例えば、このような米糠麹を用いて米粉糖化液を製造した場合、その糖度やクエン酸含有量、また遊離フェルラ酸等の有効成分の含有量が低く、香りや風味としても、食用として適したものとはなっていないものであった。
【0005】
ところで、米糠油の製造は、通常、米糠を乾式エクストルージョンまたはクッキング、あるいは湿式エクストルージョンまたは水蒸気処理に供することによって、米糠に含まれるリパーゼを失活させ、そして、米糠をノルマルヘキサンによって処理することで米油を抽出することで行われている(溶剤抽出法)。得られた米油原油は、通常、0.5%程度の微粉末と5〜8%の蝋を含む。原油を脱ガム、脱酸、脱蝋、脱色、ウインター処理し、次いで脱臭している。米油原油を抽出した残留分はいわゆる脱脂糠である。脱脂糠は、米糠に含まれている上記したようなビタミン、ミネラル、繊維質成分や、多様な生理活性物質を未だ多く含んでいる。
【0006】
しかし、米糠から米油原油をノルマルヘキサンを使用して抽出すると、大豆油や菜種油の場合と比べて溶剤のロスが多く、大気中に比較的に多量の溶剤が放出されるために、環境的に悪影響がある。そして、ノルマルヘキサンを使用して米油原油を抽出すると、抽出後の脱脂糠は、ノルマルヘキサンを含有するおそれがあることから、人用の食品としては使用できなかった。
【0007】
また、エキスペラーによって米糠を圧搾し、残留した脱脂糠を粉砕し、微粉末を得ることも知られている。しかし、この場合には、米糠が摩擦熱により200℃以上の高温にさらされるために、タンパク質およびでんぷんが熱変性する。このため、例えば脱脂糠粉末と小麦粉を混合してミックス粉とし、ミックス粉を使用してスポンジケーキを造ると、製品が離水してしまい、所定の形状を保持できず、このため食品原料としては利用困難であった。
【0008】
このような観点から、我々は、特許文献2に開示されるように、米糠の低温圧搾機によって得られた蝋分1%以下、油分12%以下の脱脂糠を粉砕することによって、半脱脂糠粉末を得ることを特徴とする、脱脂糠粉末の製造方法を提唱した。これによって得られる脱脂糠粉末は、ノルマルヘキサン等の有機溶剤分を含有しておらず、また、食品製造用粉体として使用した場合に離水を生じにくく、食品の形状保持性が良好となるものであった。しかしながら、その香り、風味等に関しては未だ十分なものとは言えず改良の余地の残るものであった。
【0009】
なお、米糠からフェルラ酸を抽出する技術としては、特許文献3には、米糠をエタノール抽出処理し、エタノールを除去後に得られる残渣を酵素により加水分解して遊離フェルラ酸を得る技術が、また特許文献4には、米糠を水等の溶媒に所定時間浸漬した後、固液分離により米糠浸出液を回収し、この米糠浸出液をイオン交換樹脂と接触させて米糠吸着物質を吸着させ、当該米糠吸着物質をアルカリ溶液と接触させて米糠吸着物質を加水分解する技術が開示されている。しかしながら、これらの方法はいずれも多段の工程を必要とし、処理が煩雑なものとなるうえその効率も十分なものとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−267178号公報
【特許文献2】特開2003−180275号公報
【特許文献3】特開2006−166834号公報
【特許文献4】特開2011−140443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明は、上記したようにビタミン、ミネラル、繊維質成分や、多様な生理活性物質を豊富に含む米糠の食品材料としての有効利用を図るために、これらの有効成分を多く含み、また香り、風味等が良好で食品材料として有用である米糠麹の製造方法およびこれを用いた米糠麹糖化物、米糠麹穀物粉糖化物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、(1)低温圧搾により脱脂処理して得られた脱脂米糠粉末を、水分調整して所定形状に成形した後、乾燥して保形し、(2)得られた脱脂米糠成形物に対して、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、およびその自然変異株、人工的突然変異株、及び遺伝子操作による変異株から成る群から選択される少なくとも1種の麹菌を水分とともに添加し、培養を行うことを特徴とする米糠麹の製造方法である。
【0013】
上記米糠麹の製造方法において、低温圧搾による脱脂処理は、100℃〜130℃の温度条件下において行われ、脱脂米糠粉末は油分含有量12%以下のものとされていることが望ましい。
【0014】
上記米糠麹の製造方法において、脱脂米糠成形物はフレーク状、粒状とされたものであり、水分含量が3〜10%程度、より好ましくは4〜6%のものであることが望ましい。
【0015】
上記米糠麹の製造方法において、麹菌の培養は、脱脂米糠成形物の水分含有量を32〜42%に調整して行うことが望ましい。
【0016】
上記課題を解決する本発明は、また、上記したようにして調製された米糠麹に、加水加熱して糊化させた穀物粉を、乾燥重量換算で1:0.1〜1:10の割合で加え、50℃〜60℃の温度条件下で糖化処理することを特徴とする米糠麹穀物粉糖化物の製造方法である。
【0017】
上記米糠麹穀物粉糖化物の製造方法において、穀物粉として米粉を用いることが望ましい。
【0018】
上記課題を解決する本発明は、また、上記したようにして調製された米糠麹に対し水を、1:2〜1:4の割合で加え、50℃〜60℃の温度条件下で糖化処理することを特徴とする米糠麹糖化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の米糠麹の製造方法によれば、脱脂ないし半脱脂米糠を原料として、香り、風味が改善され、またフェルラ酸やクエン酸等の有用成分を多く含む米糠麹を製造することが可能となる。また、このようにして得られた米糠麹を糖化処理することで得られる米糠麹糖化物あるいはこのようにして得られた米糠麹に米粉を加えて糖化処理することで得られる米糠麹穀物粉糖化物は、フェルラ酸やクエン酸等の有用成分を多く含む上、十分な糖度を有したものとなり、さらに食品材料として有用なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施形態に基づき、より詳細に説明する。
【0021】
(脱脂米糠粉末)
本発明の米糠麹の製造方法においては、原料として、低温圧搾により脱脂処理して得られた脱脂米糠粉末を使用する。
【0022】
原料として脱脂していない米糠を使用することは、米糠に含まれる油分が麹菌の増殖作用を阻害する一因となるゆえ、好ましくない。さらに、米糠の脱脂処理に、一般的に行われるようなノルマルへキサン等の有機溶剤を使用すると、その後の食品用原料としては不適となる。そこで、本発明においては、低温圧搾により脱脂処理して得られた脱脂米糠粉末を使用するものである。
【0023】
ここで低温圧搾とは、米糠を加圧し100℃以下の温度の米油原油を絞り出すことである。
【0024】
原料となる米糠は、代表的には、例えば、水分:13〜15%、油分:18〜20%、固形 分:65〜70%、蝋分:0.9〜1.6%、リン脂質:0.3〜0.5%、その他、リパーゼなどの酵素等を含有している。
【0025】
このような米糠を低温圧搾するには、特に限定されるわけではないが、前述した特許文献2において開示されるようにして行うことが可能である。
【0026】
すなわち、まず、米糠から、例えば、シフターなどによって、不要な異物(例えば石、砕けた米)を除去し、次いで、米糠を一定量ごと乾燥機に送り、送風機から熱風を送風して気流乾燥する。この気流乾燥によって、比較的に短時間で殺菌および乾燥を行う。乾燥後の米糠の好ましい水分量は5〜10%、より好ましくは5〜6%である。次いで、ラインを通して米糠を空気輸送し、サイクロンを通してケトルへと投入する。ケトルにおいては、米糠を加熱焙煎し、これによってリパーゼを失活させて米糠の酸価の上昇を止める。一般に、玄米を精米すると、米糠中のリパーゼが直ちに活性化され、米糠中のトリグリセリドを加水分解し、遊離脂肪酸、ジグリセリド、モノグリセリドを生み出す。遊離脂肪酸の量が増大すると、遊離脂肪酸の酸化によって米糠に石鹸様の匂いが発生し、食用に適さなくなる。このため、乾燥後に米糠を焙煎することで、リパーゼを失活させることが望ましい。ただし、焙煎時の温度が高くなると、米糠中のタンパク質およびデンプンが変性し、脱脂糠粉末の形状保持性が低下する傾向がある。従って、脱脂糠粉末の形状 保持性を良好とするという観点からは、焙煎時の温度を130℃以下とすることが好ましい。また、リパーゼを失活させるという観点からは、焙煎時の温度を100℃以上とすることが好ましい。また、好ましくは、焙煎段階での米糠の水分量を2〜8%とする。
【0027】
次いで、米糠を低温圧搾機に投入し、低温圧搾、すなわち、前記したように、米糠を加圧し100℃以下の温度の米油原油を絞り出す。また、脱脂糠粉末の形状保持性を向上させるという観点から、低温圧搾後のケーキの温度を130℃以下とすることが好ましい。
【0028】
ここで、低温圧搾に供する米糠の温度は、前述したように、100℃以上、130℃以下とすることが、リパーゼを失活させる上で好ましい。特に好ましくは、100℃以上、115℃、更に好ましくは105℃以上、110℃以下に加熱された米糠を低温圧搾機に投入し、低温圧搾を行う。
【0029】
特に好ましくは、低温圧搾機が、100℃以上、115℃以下、更に好ましくは105℃以上、110℃以下に加熱された米糠を受け入れて圧搾し、蝋分の多くを米油原油中に絞り出す。
【0030】
一方、低温圧搾機においては、脱脂糠の蝋分が1%以下となり、油分が12%以下となるような圧力を加えることで脱脂米糠が得られる。なお、蝋分とは、室温で固形の脂肪族エステルのことであり、典型的には、炭素数16以上の飽和脂肪酸と炭素数24以上の脂肪族アルコールとのエステルである。
【0031】
好適な実施形態においては、低温圧搾直後の脱脂糠の蝋分の含有量は、0.8%以下である。なお、蝋分とは、室温で固形の脂肪族エステルのことであり、典型的には、炭素数16以上の飽和脂肪酸と炭素数24以上の脂肪族アルコールとのエステルである。
【0032】
また、好適な実施形態においては、低温圧搾直後の脱脂糠の油分の含有量を10%以下とすることができ、これによって脱脂糠粉末を貯蔵したときの酸価の上昇を一層効果的に抑制できる。この観点からは、脱脂糠の油分の含有量を6%以下とすることが更に好ましい。
【0033】
低温圧搾直後の脱脂米糠は、形状が一定していないので、必要に応じて、解砕機等を使用して解砕し、粒度を一定し、さらに、例えば、ハンマーミル、ピンミル、ローラーミル、石臼、ディスクミル等を用いて粉砕、分級処理を行うことができる。
【0034】
なお、このような、低温圧搾により脱脂処理して得られた脱脂米糠粉末としては、例えば、ハイブレフ(商品名、サンブラン株式会社製)として、商業的にも入手可能である。
【0035】
(脱脂米糠の成形加工)
本発明においては、後述するような特定の糸状菌(麹菌)を脱脂米糠に繁殖させ麹を得るに先立ち、上記のようにして調製した脱脂米糠粉末を、水分調整して所定形状に成形した後、乾燥して保形し、脱脂米糠成形物とする。脱脂米糠成形物の水分含有量は特に限定されるものではないが、例えば、3〜10%程度、より好ましくは4〜6%程度のものとすることができる。
【0036】
これは、麹菌の繁殖には十分な酸素が必要であり、粉末状の脱脂米糠であると、堆積状態において十分な酸素が行渡らず、麹とした場合の品質が低下することを防止するためである。
【0037】
脱脂米糠成形物の形状としては、上記したように堆積状態においても脱脂米糠に十分な酸素が接触できるものとできる限り、特に限定されるわけではなく、例えば、粒状、麺状、フレーク状等の固形状とすることができる。その大きさとしても特に限定されるわけではないが、例えば、成形物の外寸のうち、少なくとも最も短尺となる部位が、3〜5mm程度のものとすることができる。
【0038】
具体的には例えば、脱脂米糠粉末を、水分調整、例えば、加水して水分含有量を30〜40%程度とし、押出し製麺機で製麺した後、裁断してフレーク状とし、スチーム加熱器にて、95〜120℃、代表的には約100℃の温度にて加熱することによって、固形状に成形した脱脂米糠成形物とすることができる。
【0039】
なお、このような成形加工方法としては、上記に例示したものに限られることなく、各種の成形機、造粒機を使用することができる。
【0040】
なお、脱脂米糠粉末を上記したように成形加工する上で、例えば、酒米吟上粕や米粉を添加して、保形性を向上させることも可能である。しかしながら、前記した脱脂米糠粉末を原料とした場合、これらのつなぎ成分を添加せずとも、水分含有量が3〜10%程度の十分な保形性を有した脱脂米糠成形物とすることができ、麹とするために、例えば、水分含有量を30〜40%、代表的には約35%程度となるように加水しても、成形物は崩壊することがないため、これらのものを混合する必要性は特にはない。
【0041】
(麹の製造)
本発明においては、上記のようにして調製した脱脂米糠成形物に対して、特定種の麹菌を播種し、培養して麹を製造する。
【0042】
本発明においては、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・シロウサミ(Aspergillus shirousamii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)並びに、これら糸状菌の自然変異株、人工的突然変異株、及び遺伝子操作による変異株から成る群から選択される少なくとも1種の麹菌を使用する。これらのうち、特に、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・シロウサミ(Aspergillus shirousamii)、さらに望ましくは、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)を使用する。
【0043】
アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)およびアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)は、泡盛の製造等に用いられる黒麹菌として知られており、また、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・シロウサミ(Aspergillus shirousamii)は、前記アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)より分離された白色変異菌であり、焼酎の製造に用いられる白麹菌として知られている。
【0044】
本発明者らが行った研究によれば、麹菌として最も一般的なものであるアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)を麹種として用いた場合と比べ、米糠麹とした場合、上記したような菌種を用いた米糠麹が、糖化において優れており、またクエン酸生産性が高く香気の改善効果があり、特にアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)を用いた場合、各種の酵素活性が概して高く、殊に、糖化酵素であるグルコアミラーゼ活性が非常に高く、またデンプン液化酵素であるαーアミラーゼ活性も十分なものであり、液化、糖化において最も優れているものであった。加えて、キシラナーゼ活性やエステル分解酵素、特に、フェルラ酸抽出に係るフェルラ酸エステラーゼ活性も顕著に高く、米糠からの大量の遊離フェルラ酸の抽出が見られた。これゆえ、香り、風味が改善され、またフェルラミ酸やクエン酸等の有用成分を多く含む食品用原料として極めて有望な米糠麹を製造することができるとの知見を得、これらの特定の麹菌を用いることとしたものである。
【0045】
麹の製造条件としては、前記した特定種の麹菌が、上記のようにして調製した脱脂米糠成形物において良好に増殖可能なものであれば、特に限定されるものではないが、脱脂米糠成形物の水分含有量を32〜42%、代表的には約38%程度となるように加水し、加熱殺菌を行い、これに、前記した特定種の麹菌を種麹として播種し、30〜38℃、代表的には約35℃の温度、95%以上の湿度条件下で、所定時間、例えば42〜50時間程度培養することが望ましい。
【0046】
このようにして得られる米糠麹は、そのまま、例えば、パン、クッキー、ケーキ等の粉末焼成食品用の原料粉末、めん類、パスタ、シリアルバーなどの粉末成形食品の原料粉末、チョコレートなどの菓子類、カレールーの増量剤、シリアル食品用粉末、ふりかけ、ヨーグルトやプリン等のトッピング材料として、また、含有される遊離フェルラ酸、クエン酸等の有用成分を活かして栄養添加剤等として、有効利用可能であるが、より香り、風味等が良好で、食品用材料として有用なものとする上で、下記に記載するように、糖化処理を行うことも可能である。この糖化処理としては、本発明に係る米糠麹のみを用い米糠麹糖化物を製造することや、本発明に係る米糠麹に穀物原料を加え、米糠麹穀物粉糖化物を製造することなどが挙げられる。また、穀物粉としては、米粉が代表的なものであるが、米粉以外にも、例えば、酒米吟上糠、アルファー化米粉、米でんぷん等を1種または複数種組み合わせて用い、本発明に係る米糠麹に配合し、同様にして糖化物を得ることが可能である。また、米以外の穀物の粉を用いることも可能である。
【0047】
(米糠麹穀物粉糖化物の製造)
米糠麹穀物粉糖化物の製造する場合は、上記したようにして調製された米糠麹に、加水加熱して糊化させた米粉等の穀物粉を、乾燥重量換算で1:0.1〜1:10、好ましくは1:1〜1:5、より好ましくは1:2〜1:4、最も好ましくは1:3〜1:4の割合で加え、50℃〜60℃の温度条件下、代表的には、例えば、約56℃程度の温度で、必要に応じて時々攪拌しながら、所定時間、例えば、5〜8時間程度、処理することにより、米糠麹のグルコアミラーゼなどの糖化酵素、α−アミラーゼ等のデンプン液化酵素により、糖化、液化を行う。
【0048】
なお、米粉を糊化させる場合の条件としては、特に限定されないが、例えば、米粉に対し、3〜5倍量、代表的には、4倍量の水を加え、80〜90℃程度の温度で20〜30分程度加熱処理すれば良い。
【0049】
その後、必要に応じて、高温、例えば95℃まで加熱することで、酵素を失活させ、水分調整を行い、さらに、滅菌処理、特に限定されるわけではないが、例えば、85℃で15分間処理し、冷却後、低温、例えば、4℃程度の温度にて保存することが可能である。
【0050】
(米糠麹糖化物の製造)
また、米糠麹糖化物の製造する場合は、上記したようにして調製された米糠麹に対し水を、例えば、1:2〜1:4の割合、より好ましくは、約1:2の割合で加え、50℃〜60℃の温度条件下、代表的には、例えば、約56℃程度の温度で、必要に応じて時々攪拌しながら、所定時間、例えば、5〜8時間程度、処理することにより、米糠麹のグルコアミラーゼなどの糖化酵素、α−アミラーゼ等のデンプン液化酵素により、糖化、液化を行う。
【0051】
その後、必要に応じて、高温、例えば95℃まで加熱することで、酵素を失活させ、水分調整を行い、さらに、滅菌処理、特に限定されるわけではないが、例えば、85℃で15分間処理し、冷却後、低温、例えば、4℃程度の温度にて保存することが可能である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づき、より具体的に説明する。
【0053】
実験例1 (脱脂米糠の成形加工試験)
脱脂米糠として、「ハイブレフ」(油分含有量 11%、サンブラン株式会社製)を用意し、加水して含有水分量を36%程度に調整した後、押出し製麺機(「さくら」(商品名)、アベ技研製)で、製麺した後、固形状(長さ約10〜15mm、幅約5mm×3mm)に裁断し、これを蒸気にて加熱することで、固形状の脱脂米糠の成形品を製造した。
【0054】
また、前記脱脂米糠に、酒米吟上糠(白糠)や米粉を所定量配合したものについても、上記と同様にして、フレーク状の成形品を製造した。
【0055】
使用した原料の配合割合、スチーム加熱および乾燥条件、および得られた成形品の水分含有量は表1に示すとおりである。なお、水分含有量の測定は、常圧加熱乾燥法(135℃、3時間)にて行った。
【0056】
【表1】
【0057】
この結果、つなぎ素材として酒米吟上糠(白糠)や米粉を配合しなくとも、脱脂米糠のみでフレーク状に成形することが可能であることがわかった。
【0058】
さらに、得られた脱脂米糠100%のフレーク状の成形品に、水分が38%程度になるように水分を加えても、成形品の形状は崩壊せず、製麹用材料として十分に使用可能であることがわかった。
【0059】
実験例2 (麹菌種による麹特性の比較:糖化、液化)
原料として脱脂米糠「ハイブレフ」を100%し、実験例1におけると同様にしてフレーク状の成形品を得た。得られた脱脂米糠のフレーク状の成形品を加水し、水分を38%に調整した後、表2に示す麹菌を、種麹として散布し、温度35℃、湿度90%以上の恒温室(ドゥコンディショナー、株式会社マルゼン製)内に静置して、44時間培養を行った。
【0060】
なお、使用した麹菌は、焼酎用麹(Aspergillus kawachi)、白麹雪こまち(Aspergillus oryzae白色変異株)、白麹すずらん((Aspergillus oryzae白色変異株)および味醂用麹(Aspergillus oryzae)であった。
【0061】
得られた麹の水分含有量の測定を、常圧加熱乾燥法(135℃、3時間)にて行った。
【0062】
また、得られた麹の特性を調べるため、上記で調製した麹に同量の水を加えて、時々攪拌しながら56℃で1時間糖化させ、その後No.2の濾紙で正確に1時間濾過を行った液を糖化液とした。この糖化液の液量、pH、糖度、グルコース含量を測定した。なお、pH測定には、マルチ水質計MN−60R、東亜ディーケーケー(株)製を、糖度測定には、デジタル糖度計IPR−201、iuchi製を用い、グルコース含量は、HPLC(日本分光(株)製)を用いてグアニジン・ポストカラム蛍光誘導体化により測定した。
【0063】
得られた結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
いずれの麹菌を使用した場合においても、脱脂米糠のフレーク状の成形品の表面には麹菌が良好に生育したが、本発明に係る焼酎用麹、すなわちアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)を用いて得られた米糠麹は、他の麹菌による米糠麹と比較して、液化、糖化とも最も良好であり、食味の改善に係るグルコース含量も比較的良好な値となった。
【0066】
実験例3 (麹菌種による麹特性の比較:酵素活性)
実験例2と同様の手法により、各種の麹菌を用いて米糠麹を調製した。
また、参考のために、原料として米粉を100%使用し、実験例1におけると同様にしてフレーク状の成形品を調製し、これに実験例2と同様の手法により、各種の麹菌を用いて米粉麹を別途調製した。
【0067】
得られた各米糠麹、米粉白糠麹に関して、αーアミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、フェルラ酸エステラーゼの各酵素活性の測定を行った。
【0068】
なお酵素活性の測定は、次の条件により行った。
麹10gを0.5%塩化ナトリウム含有0.01M酢酸緩衝液(pH5.0)溶液100mlに加え、3時間抽出後濾過して得られた濾液を0.01M酢酸緩衝液(pH5.0)に対して一晩透析し、粗酵素液として、セロビオヒドロラーゼ以外の糖質関連酵素はジニトロサリチル酸を用いた比色法により、セロビオヒドロラーゼはp-ニトロフェニルセロビオシドを基質に比色法により、エステラーゼはアルファ-ナフチル酪酸を基質に比色法により、フェルラ酸エステラーゼはメチルフェルラ酸を基質に、分解産物のフェルラ酸をODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。得られた結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3に示す結果から明らかなように、米糠麹は総じて、対照となる米粉麹よりも、αーアミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、キシラナーゼ、フェルラ酸エステラーゼ活性において高い活性を示した。そして、本発明に係る焼酎用麹、すなわちアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)を用いて得られた米糠麹は、他の麹菌による米糠麹と比較して、αーアミラーゼ、グルコアミラーゼ活性が良好であり、また、キシラナーゼ、フェルラ酸エステラーゼ活性が顕著に高いものであり、総合的に見て酵素活性が最も高いものであった。このことから、本発明に係る米糠麹は、液化、糖化が良好であり、遊離フェルラ酸産生能に優れるものであることが裏付けられた。
【0071】
実験例4 (麹菌種による麹特性の比較:有機酸、フェルラ酸含有量)
実験例2と同様の手法により、各種の麹菌を用いて米糠麹を調製し、同様の手法によりさらに糖化液を調製した。得られた米麹の糖化液を−80℃にて冷凍保存しておいたものを、流水にて解凍した。解凍後3000rpm×10分間遠心分離し、上澄みから1mlとり(質量測定)、10mlにメスアップし、0.45μmのメンブランフィルターでロ化したものを測定試料とした。
【0072】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、ブロモチモールブルー(BTB)溶液を用いたポストカラム誘導体化可視吸光法により、有機酸含量の測定を行った。標準物質として、フィチン酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、蟻酸、酢酸、n−酪酸を使用した。クエン酸、乳酸、酢酸以外の物質は、測定試料中に含有されているかは不明であったが、得られた保持時間と標準物質の保持時間が同じに検出されたものはその物質として換算した。得られた結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
表4に示す結果から明らかなように、本発明に係る焼酎用麹菌、すなわちアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)を用いて得られた米糠麹は、他の麹菌による米糠麹と比較して、クエン酸、酢酸含有量が高く、特にクエン酸含量は、他の40〜60倍程度と圧倒的に高い値となり、味の改善に係るとともに、有用性の高いクエン酸の高い産生能力を有することが認められた。
【0075】
フェルラ酸は、実験例3に示すように、ODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、320nmで検出し、標準フェルラ酸の検量線により定量した。得られた結果を表4に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
表5に示す結果から明らかなように、本発明に係る焼酎用麹菌、すなわちアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)を用いて得られた米糠麹は、他の麹菌による米糠麹と比較して、フェルラ酸含有量が15倍から40倍程度と圧倒的に高く、生理活性物質のフェルラ酸の高い産生能力を有することが認められた。
【0078】
実験例5 (原料種による麹特性の比較)
原料として、脱脂米糠「ハイブレフ」、酒米吟上糠(白糠)、米粉を用意し、これらを表4に示す割合で使用し、実験例1におけると同様にしてフレーク状の成形品を得た。得られた各フレーク状の成形品を加水し、水分を38%に調整した後、焼酎用麹(Aspergillus kawachi)を、種麹として散布し、実験例1と同様の条件にて培養して、麹を作成し、原料種の相違による麹の特性(一般成分、酵素活性)を調べた。得られた一般成分の結果を表6に示す。なお、液化%、糖度、pH、グルコース含有量については実験例1に示すものと同様の手法により、またクエン酸含有量については、実験例4に示すものと同様の手法によりそれぞれ測定した。
【0079】
【表6】
【0080】
表6に示される結果から、原料として脱脂米糠のみを用いた場合には、米粉のみを用いた場合や、これらを配合した場合と比較して、原料中に含まれるデンプン質の量が少ないことに起因するためか、液化、糖度が低い値となる反面、pH値は米麹の至適範囲であるpH5.7〜6.0程度の範囲内にあり、クエン酸含量が非常に高まることが認められた。
【0081】
実験例3に示す同様の方法により、酵素活性を調べた。得られた結果を表7に示す。
【0082】
【表7】
【0083】
表7に示す結果から明らかなように、脱脂米糠100%麹は総じて、米粉麹、白糠麹よりも、αーアミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、エステラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ活性において高い活性を示した。とりわけ、αーアミラーゼ、キシラナーゼ、フェルラ酸エステラーゼ活性は最も高いものであった。このことから、本発明に係る米糠麹は、液化、糖化が良好であり、遊離フェルラ酸産生能に優れるものであることが裏付けられた。
【0084】
なお、フェルラ酸エステラーゼ活性は、表7のデータを見ても明らかなように、白糠や米粉の混合量を増やしていくにつれ低下していくことが確認され、これらの酵素を生産するためには、米糠100%で麹を調製することが望ましいと考えられた。
【0085】
実験例6 (米粉糖化液の調製)
原料として脱脂米糠「ハイブレフ」を100%使用し、実験例1におけると同様にしてフレーク状の成形品を得た。得られた脱脂米糠のフレーク状の成形品を加水し、水分を38%に調整した後、焼酎用麹(Aspergillus kawachi)または白麹すずらん(Aspergillus oryzae白色変異株)を、種麹として散布し、実験例1と同様の条件にて培養を行い、米糠麹を調製した。
【0086】
一方、うるち米粉(「はえぬき」米粉)を用意し、この米粉に3倍量の水を加え、市販の炊飯器で加水加熱調理して、糊化させた。
【0087】
上記で得られた米糠麹に対し、この加水加熱して糊化させた米粉を、乾燥重量換算で1:3の割合で混合した。この混合物中の成分割合は表8に示す通りである。
【0088】
【表8】
【0089】
得られた混合物を、57℃のウォーターバスに浸漬し、品温を56℃に保ち、7時間保持して、糖化処理を行った。なお、保持時間中、一時間に1度以上攪拌し、十分な攪拌状態とした。
【0090】
その後、得られた糖化物を95℃まで加熱し、3分間保持した後、水分調整を行って水分含有量を約75%とした。その後、市販のナイロンポリエチレン袋に糖化物を充填し、開口部をシールした後、85℃で15分間熱処理を行って殺菌し、冷却した。得られた糖化物は使用するまで4℃にて保存した。
【0091】
得られた米糠麹米粉糖化物の糖度、pH、グルコース含有量につき測定した結果を表9に示す。なお、糖度、pH、グルコース含有量は実験例1に示すものと同様の手法により、クエン酸含有量は実験例4に示すものと同様の方法により、フェルラ酸含有量は実験例3に示すものと同様の方法により、それぞれ測定した。
【0092】
【表9】
【0093】
表9に示すように、本発明に係る焼酎用麹、すなわちアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)を用いて得られた米糠麹を使用して米糠麹米粉糖化物を調製すると、その糖化は十分に進行し、食味の良好な糖化液となること、また、クエン酸およびフェルラ酸の含有量が非常に高まることが確認できた。