【実施例】
【0050】
以下、本発明について実施例を用いて、更に詳細に説明する。なお
、実施例5および実施例7は、それぞれ参考例1および参考例2とする。また、実施例および比較例中の物性は次のようにして測定した。
(1)全光線透過率
イオン照射後のポリエステルフィルムの全光線透過率(%)を、日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH2000(JIS K7361−1(1997年版))により測定した。87%以上を好適な範囲とした。
(2)ヘイズ上昇値
ポリエステルフィルムを160℃、10分間熱処理を行った。オリゴマーは両面に析出してヘイズの原因となっているが、イオンビームを照射していない面のオリゴマーをエタノールで拭き取って照射面だけのオリゴマーによるヘイズを測定した。日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH2000(JIS K7136(2000年版))により、ヘイズを測定した。また、熱処理を行ってない該フィルムも同様にヘイズを測定し、熱処理した該フィルムのヘイズの値から差し引いて、熱処理で発生したオリゴマーによるヘイズの上昇値として評価した。ヘイズの上昇値として0.5%以下を好適な範囲とした。
(3)オリゴマー析出量
ポリエステルフィルムを180℃×10分間熱処理後、11cm×10cmに切り抜き、内側がイオン照射層となるように4辺を端から各1cm折って角部を固定し、底面が9cm×8cmで上が開いた箱を形成した。底面の面積は72cm
2である。次いで、ここで作成したフィルムの箱の中に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mlを入れ、底面積が全てDMFに浸るようにし、室温で3分間放置した後、DMFを回収し、液体クロマトグラフィー(ShimadzuCLASS−VP)に供給し、DMF中のポリエステルオリゴマー量を求めた。DMF中のポリエステルオリゴマー量を接触させたフィルム面積で割り、オリゴマー量(mg/m
2)とした。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた。標準試料は、あらかじめ分取したポリエステルオリゴマーを正確に秤量し、同時に正確に秤量したDMFに溶解し得た。標準試料の濃度は0.001〜0.01mg/mlとした。液体クロマトグラフによるDMF中のポリエステルオリゴマー量の測定条件は下記のとおりである。
移動相A:メタノール
移動相B:純水
カラム:YMC−Pack OSD−A
カラム温度:40℃
検出波長:240nm
(株式会社日立ハイテクノロジーズ 分光光度計 型式 U−3310)
2mg/m
2以下を好適な範囲とした。
(4)オリゴマー析出状態の目視観察
ローダーにて巻きだしたフィルムを、160℃の雰囲気で長さ20mの加熱炉を速度4m/minで通過させ、5分間の加熱を行った。そして、加熱炉を出てフィルムが最初に接するロールを、1巻のフィルムの処理が終わった後、目視で観察した。そのロールにオリゴマーが付着して、目視で白色に見える場合を不合格(×)とし、確認できない場合を合格(○)とした。
(5)加熱による析出オリゴマーの平均大きさと個数
ポリエステルフィルムを100mm×100mmの大きさに切り取り、160℃に設定したオーブンの中で10分加熱した後、オーブンから取り出して冷却し、そのフィルム小片の表面を1000倍に設定した顕微鏡(Nikon Eclipse LV100)で観察した。100μm×100μmの面積の視野を5視野観察し、オリゴマー粒の縦横の大きさを記録した。横は顕微鏡の視野でオリゴマーの横方向の最大長さ、縦はオリゴマーの縦の最大長さとした。このようにして求めた縦横の大きさの平均値を直径とする円の面積としてオリゴマーの面積値を算出した。各オリゴマーについて算出した面積の平均値を平均面積とした。なお、上記距離の測定は、接眼レンズに目盛りをつけ、目盛りと視野とを比較しながら実施した。
【0051】
また、加熱後の粒子状物100μm×100μmの面積の視野を5視野観察し、そこで見えた1μm以上のオリゴマー粒子の個数を数えて5(視野数)で割ることで平均化した。9個/100μm□以下を好適な範囲とした。
【0052】
(実施例1)
連続巻き取り式蒸着機((株)アルバック製)の蒸着部に、有効長1mのリニア型アノードレイヤータイプのイオン源(米Veeco社、ALS1000L)を、フィルム走行面から50mmの距離に設置した。イオン源用電源は、米グラスマン・ハイボルテージ社SHタイプを用いた。フィルム冷却ドラムを蒸着機から電気的に絶縁し、電流計と直流電源を設置し、イオン源を動作させた状態で正のリターディング電圧を変化させながらイオン電流を測定した。リターディング電圧とイオン電流の関係から非特許文献1と同様にしてイオンのエネルギー分布からイオンの平均エネルギーEa(eV)を算出した。なお、リターディング電圧をかけない状態でのイオン電流I(A)も測定した。まずイオン源には酸素を80cc/min導入し、アノード電圧2.6kV、アノード電流1200mAで動作させた。この際のイオンの平均エネルギーEaは0.8keVであり、イオン電流は1000mAであることを確認した。実施例2以降においても同様にイオン源の動作条件でのイオンの平均エネルギーとイオン電流を事前に測定した。
【0053】
フィルム巻き出し部には、ポリエステルフィルムとして低フィッシュアイタイプのPETフィルム(東レ(株)製“ルミラー”(登録商標)R75、厚さ38μm、幅1000mm)をセットし、到達圧力3×10
−3Paまで真空引きした。
イオン源を上記条件で動作させて酸素イオンを照射した。この時のフィルム冷却ドラムの温度は−30℃、フィルムの速度は2m/sであった。照射エネルギー密度は、0.8keV×1000mA/(2m/s×1m)=400J/m
2であった。イオン源の横の真空槽の壁に取り付けたB−Aゲージ式圧力計で、真空度は2×10
−2Paであった。この様にイオン照射したポリエステルフィルムの全光線透過率とオリゴマー析出量、ヘイズ、異物の大きさ、数を表1に示した。いずれの特性も良好だった。
【0054】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、イオン源のアノード電圧を0.5kVに変更し、さらにイオン源のガス流量を調整しアノード電流を960mAとし、送り速度は1m/sとした。イオンの平均エネルギーEaは0.2keVであり、イオン電流は800mAであった。単位面積あたりの照射エネルギー密度は160J/m
2であり、特性は良好であるが、オリゴマー析出量はやや多めだった。
【0055】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、イオン源のアノード電圧を2.6kV、アノード電流720mA、送り速度4m/sとした。イオンの平均エネルギーは0.8keV、イオン電流は600mA、単位面積あたりの照射密度は120J/m
2であり、特性は良好であるが、オリゴマー析出量はやや多めだった。
【0056】
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、イオン源のアノード電圧を4.3kV、アノード電流2000mA、送り速度0.5m/sとした。イオンの平均エネルギーは1.3keV、イオン電流は1800mA、照射エネルギー密度は4680J/m
2であり、特性は良好であるが、全光線透過率はやや低めだった。
【0057】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で、イオン源のアノード電圧を4.3kV、アノード電流2000mA、送り速度0.4m/sとした。イオンの平均エネルギーは1.3keV、イオン電流は1800mA、単位面積あたりの照射密度は5850J/m
2であった。オリゴマー析出量、大きさ、数は抑制されていたが、透過率が低下した。
【0058】
(実施例6)
長さ1000m、幅1000mm、厚さ38μmの東レ(株)社製PETフィルム“ルミラー”R75の片面に、実施例1と同様の方法で、イオン源のアノード電圧を2.6kV、アノード電流1200mA、送り速度2m/sとして連続的に高速イオン照射を行った。イオンの平均エネルギーEaは0.8keVであり、イオン電流は1000mAであった。単位面積あたりの照射エネルギー密度は400J/m
2であった。このフィルムについて、全光線透過率を測定した。
【0059】
次に下記の方法で、離型膜を塗布した。
【0060】
付加反応型の硬化型シリコーン樹脂であるKS847H(信越化学工業(株))10重量部、硬化剤であるPL−50T(信越化学工業(株))0.05重量部、トルエン/MEK(50/50)混合溶媒100重量部を混合した離型層塗工液を作成した。
【0061】
前記フィルムの高速イオン照射を行ってない側の面に、1000mm幅の通常のグラビアロールで離型層塗工液を塗布し、150℃オーブンで12秒間脱溶剤及び硬化反応させ離型フィルムを得た。乾燥後の塗工層の厚さは、0.25μmであった。
【0062】
この離型フィルムについて、ロールに巻き取られた最終部分から切り取ったサンプルについて離型膜裏面のイオン照射面においてオリゴマー析出量を測定した。
【0063】
次いで、1000mの長さを加熱炉を通して、離型膜の裏面のイオン照射面について、ロールへのオリゴマーの付着状態を観察した。ロール表面の汚れはなく良好であった。
【0064】
(実施例7)
実施例1において、イオン源のアノード電圧を3.3kV、アノード電流360mA、送り速度4m/sとした。イオンの平均エネルギーは1.0keV、イオン電流は300mA、単位面積あたりの照射密度は75J/m
2であった。オリゴマー析出量、大きさ、数いずれも大きくなった。
【0065】
(比較例1)
高速イオン照射を行わない、実施例1で用いたPETフィルムで評価を行った。オリゴマー析出量、大きさ、数いずれも非常に大きくなった。
【0066】
(比較例2)
銅をターゲットとするマグネトロンカソードを1Paの酸素中で40kHzの高周波にて放電させて発生させたプラズマ中をフィルムを通過させて高速イオンビーム照射に代わる表面処理とした。カソードの形状は1.3m×100mmで、放電時の電圧、電流は320V、9.2Aとした。オリゴマー析出量、大きさ、数いずれも非常に大きくなった。
【0067】
(比較例3)
実施例6において、イオン照射を行わず離型膜を塗布し、同様の評価を行った。ロール表面はオリゴマーの汚れが付着して白っぽくなっていた。
【0068】
【表1】