特許第6337385号(P6337385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6337385
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28G 1/16 20060101AFI20180528BHJP
   F23J 3/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   F28G1/16 Z
   F23J3/00 101D
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-135714(P2017-135714)
(22)【出願日】2017年7月11日
【審査請求日】2018年2月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】南端 豊
(72)【発明者】
【氏名】中村 武志
(72)【発明者】
【氏名】松下 崇
(72)【発明者】
【氏名】高山 和保
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−90129(JP,U)
【文献】 特開2008−286491(JP,A)
【文献】 特開平11−63887(JP,A)
【文献】 特開2000−171195(JP,A)
【文献】 特開2014−52162(JP,A)
【文献】 米国特許第5194217(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 1/16
F28G 9/00
F23J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管の一端が接続された円形状の上部管板と、
前記上部管板とともにガス導入室を形成する上部ケーシングと、
前記複数の伝熱管の他端が接続された下部管板と、
前記下部管板とともにガス排出室を形成する下部ケーシングと、
前記上部管板及び前記下部管板とともに熱交換室を形成する内筒と、
前記上部管板の上方に前記上部管板の周方向に間隔をあけて配置され、前記上部管板に向けてガスを噴射する複数のブラスタであって、
前記上部管板の径方向又は前記径方向に対して傾斜した方向である一の方向に向けてガスを噴射する複数の第一のブラスタと、
前記上部管板の径方向に対して傾斜した方向であり、前記一の方向とは異なる他の方向に向けてガスを噴射する複数の第二のブラスタと、を有する複数のブラスタと、
前記複数の第一のブラスタ及び前記複数の第二のブラスタを駆動する制御装置と、を備え、
前記第一のブラスタと前記第二のブラスタとは、前記上部管板の周方向で交互に配置されており、
前記制御装置は、前記第一のブラスタと前記第二のブラスタとを交互に駆動する駆動部を有する熱交換器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第一のブラスタ及び前記第二のブラスタを前記上部管板の周方向に沿って一つずつ駆動する請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
複数の伝熱管の一端が接続された円形状の上部管板と、
前記上部管板とともにガス導入室を形成する上部ケーシングと、
前記複数の伝熱管の他端が接続された下部管板と、
前記下部管板とともにガス排出室を形成する下部ケーシングと、
前記上部管板及び前記下部管板とともに熱交換室を形成する内筒と、
前記上部管板の上方に前記上部管板の周方向に間隔をあけて配置され、前記上部管板に向けてガスを噴射する複数のブラスタであって、
前記上部管板の径方向又は前記径方向に対して傾斜した方向である一の方向に向けてガスを噴射する複数の第一のブラスタと、
前記上部管板の径方向に対して傾斜した方向であり、前記一の方向とは異なる他の方向に向けてガスを噴射する複数の第二のブラスタと、を有する複数のブラスタと、
前記複数の第一のブラスタ及び前記複数の第二のブラスタを駆動する制御装置と、を備え、
前記第一のブラスタと前記第二のブラスタとは、前記上部管板の中心点に対して点対称、又は前記上部管板の中心点を含む直線に対して線対称に配置されており、
前記制御装置は、前記第一のブラスタと前記第二のブラスタとを交互に駆動する駆動部を有する熱交換器。
【請求項4】
前記第一のブラスタに前記ガスを供給する第一の蓄圧タンクと、
前記第二のブラスタに前記ガスを供給する第二の蓄圧タンクと、をさらに有し、
前記第一の蓄圧タンクは、少なくとも二つの前記第一のブラスタに前記ガスを供給し、前記第二の蓄圧タンクは、少なくとも二つの前記第二のブラスタに前記ガスを供給する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第一のブラスタ及び前記第二のブラスタの噴出口は、水平方向に長軸が沿う略楕円形、又は水平方向に長辺が沿う略長方形である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記上部管板の上面の熱分布を測定可能なサーモグラフィを有し、
前記制御装置は、前記サーモグラフィによって撮影された画像を分析する分析部を有し、
前記駆動部は、前記分析部によって前記上部管板の貫通孔の閉塞が進行していると判断された場合に前記第一のブラスタ及び前記第二のブラスタを駆動する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
国内の下水汚泥の発生量は年々増加しており、その多くが焼却処理されている。汚泥を焼却する汚泥焼却設備においては、汚泥ケーキを焼却する燃焼炉の排ガスが高温となることから、熱効率を高めるために熱回収が行われている。例えば、焼却炉の排ガスと燃焼炉の燃焼用空気(流動空気)とを空気予熱器によって熱交換することによって燃焼用空気の予熱を行い、省エネルギー化を図っている。
【0003】
空気予熱器としては、例えばシェルアンドチューブ式と呼ばれる多管式熱交換器が採用されている。多管式熱交換器は、内筒(シェル)の内部に内筒と平行に配置された複数の伝熱管を有している。
上記した熱交換器では、伝熱管に高温の排ガスを通過させ、管板間に燃焼用空気を通過させることによって熱交換を実施している。
【0004】
特許文献1には、伝熱管の清掃のため、鋼製のショット球を伝熱管内に通すとともに、熱交換器の上部管板に灰が堆積するのを防止するため、気体噴射ノズルから気体を噴射して、灰を吹き飛ばす技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−171195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の熱交換器では、複数の気体噴射ノズルから気体を噴射して灰を吹き飛ばす際、熱交換器内の圧力を不用意に上昇させ、燃焼炉の運転を不安定とする恐れがある。
【0007】
この発明は、熱交換器内の圧力を不用意に上昇させることなく、管板の灰の堆積を防止することができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様によれば、熱交換器は、複数の伝熱管の一端が接続された円形状の上部管板と、前記上部管板とともにガス導入室を形成する上部ケーシングと、前記複数の伝熱管の他端が接続された下部管板と、前記下部管板とともにガス排出室を形成する下部ケーシングと、前記上部管板及び前記下部管板とともに熱交換室を形成する内筒と、前記上部管板の上方に前記上部管板の周方向に間隔をあけて配置され、前記上部管板に向けてガスを噴射する複数のブラスタであって、前記上部管板の径方向又は前記径方向に対して傾斜した方向である一の方向に向けてガスを噴射する複数の第一のブラスタと、前記上部管板の径方向に対して傾斜した方向であり、前記一の方向とは異なる他の方向に向けてガスを噴射する複数の第二のブラスタと、を有する複数のブラスタと、前記複数の第一のブラスタ及び前記複数の第二のブラスタを駆動する制御装置と、を備え、前記第一のブラスタと前記第二のブラスタとは、前記上部管板の周方向で交互に配置されており、前記制御装置は、前記第一のブラスタと前記第二のブラスタとを交互に駆動する駆動部を有する。
【0009】
このような構成によれば、複数のブラスタを同時ではなく、交互に動作させることによって、熱交換器内の圧力を不用意に上昇させることなく、上部管板の灰の堆積を防止することができる。
また、一の方向に向けてガスを噴射する第一のブラスタと他の方向に向けてガスを噴射する第二のブラスタの二種のブラスタを交互に配置していることによって、上部管板上のより多くの範囲にガスを吹き付けることができる。
【0010】
上記熱交換器において、前記制御装置は、前記第一のブラスタ及び前記第二のブラスタを前記上部管板の周方向に沿って一つずつ駆動してよい。
【0011】
このような構成によれば、ブラスタを一つずつ駆動することによって、熱交換器内の圧力の上昇を確実に防ぐことができる。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、熱交換器は、複数の伝熱管の一端が接続された円形状の上部管板と、前記上部管板とともにガス導入室を形成する上部ケーシングと、前記複数の伝熱管の他端が接続された下部管板と、前記下部管板とともにガス排出室を形成する下部ケーシングと、前記上部管板及び前記下部管板とともに熱交換室を形成する内筒と、前記上部管板の上方に前記上部管板の周方向に間隔をあけて配置され、前記上部管板に向けてガスを噴射する複数のブラスタであって、前記上部管板の径方向又は前記径方向に対して傾斜した方向である一の方向に向けてガスを噴射する複数の第一のブラスタと、前記上部管板の径方向に対して傾斜した方向であり、前記一の方向とは異なる他の方向に向けてガスを噴射する複数の第二のブラスタと、を有する複数のブラスタと、前記複数の第一のブラスタ及び前記複数の第二のブラスタを駆動する制御装置と、を備え、前記第一のブラスタと前記第二のブラスタとは、前記上部管板の中心点に対して点対称、又は前記上部管板の中心点を含む直線に対して線対称に配置されており、前記制御装置は、前記第一のブラスタと前記第二のブラスタとを交互に駆動する駆動部を有する。
【0013】
上記熱交換器において、前記第一のブラスタに前記ガスを供給する第一の蓄圧タンクと、前記第二のブラスタに前記ガスを供給する第二の蓄圧タンクと、をさらに有し、前記第一の蓄圧タンクは、少なくとも二つの前記第一のブラスタに前記ガスを供給し、前記第二の蓄圧タンクは、少なくとも二つの前記第二のブラスタに前記ガスを供給してよい。
【0014】
このような構成によれば、交互に配置される第一のブラスタと第二のブラスタにガスを供給する蓄圧タンクが異なるため、第一のブラスタを駆動した後に、間をおかずに第2のブラスタを駆動することができる。
また、一つの蓄圧タンクを二つのブラスタで共用するため、低コスト化、省スペース化が可能となる。
【0015】
上記熱交換器において、前記第一のブラスタ及び前記第二のブラスタの噴出口は、水平方向に長軸が沿う略楕円形、又は水平方向に長辺が沿う略長方形であってよい。
【0016】
このような構成によれば、噴出口から噴射されるガスを水平方向に広げることができる。
【0017】
上記熱交換器において、前記上部管板の上面の熱分布を測定可能なサーモグラフィを有し、前記制御装置は、前記サーモグラフィによって撮影された画像を分析する分析部を有し、前記駆動部は、前記分析部によって前記上部管板の貫通孔の閉塞が進行していると判断された場合に前記第一のブラスタ及び前記第二のブラスタを駆動してよい。
【0018】
このような構成によれば、サーモグラフィを用いて上部管板の状況を監視することによって、管板の貫通孔の閉塞が進行してブラスタによって吹き飛ばせる許容範囲を超えることを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のブラスタを同時ではなく、交互に動作させることによって、熱交換器内の圧力を不用意に上昇させることなく、上部管板の灰の堆積を防止することができる。
また、一の方向に向けてガスを噴射する第一のブラスタと他の方向に向けてガスを噴射する第二のブラスタの二種のブラスタを交互に配置していることによって、上部管板上のより多くの範囲にガスを吹き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の熱交換器を備える下水処理場のブロック図である。
図2】本発明の実施形態の熱交換器の側方から見た断面図である。
図3】本発明の実施形態の熱交換器の上方から見た断面図である。
図4】本発明の実施形態のブラスタを側方から見た図である。
図5】本発明の実施形態のブラスタを上方から見た図である。
図6図5のVI矢視図であり、ブラスタの噴出口の形態を説明する図である。
図7】本発明の実施形態のブラスタの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態の熱交換器について図面を参照して詳細に説明する。
まず、本実施形態の熱交換器1を備える下水処理場50について説明する。下水処理場50は、排水処理部51と、排水から分離された汚泥を処理する汚泥処理部52と、を備えている。排水処理部51は、下水汚泥や工場排水などの窒素、リン若しくは有機性物質を含んだ有機性排水を処理する。
【0022】
排水処理部51は、排水Wが導入される前処理設備53と、前処理設備53にて処理された排水Wから汚泥Pを分離する最初沈澱池54と、最初沈澱池54にて汚泥Pが分離された排水Wに対して高度処理を施す高度処理設備55と、高度処理が施された排水Wから更に汚泥Pを分離する最終沈澱池56と、を有している。
排水処理部51では、高度処理設備55の前段の最初沈澱池54及び高度処理設備55の後段の最終沈澱池56での固形分離により汚泥Pが発生する。排水Wは、上記各設備を経て、河川に放流される。
【0023】
前処理設備53は、導入される排水Wに含まれる夾雑物を取り除くなどする設備である。前処理設備53としては、大径の汚泥を破砕する破砕手段や、夾雑物を除去可能なスクリーン等の分離手段が挙げられる。
【0024】
最初沈澱池54は、排水Wに含まれる細かい汚泥Pを底に沈めることによって分離する汚泥分離設備である。最初沈澱池54の底部には、第一汚泥ライン57が接続されている。最初沈澱池54にて分離された汚泥Pは、第一汚泥ライン57に導入される。
【0025】
高度処理設備55は、メタン発酵のような嫌気性処理を行う嫌気槽と、曝気を行う好気槽と、沈殿槽とが組み合わされた構成を有し、主に硝化菌と脱窒菌の作用により液中の窒素やリンを分解除去する設備である。高度処理設備55によって排水Wからリンが除去されることによって、汚泥Pのリン含有率は高くなる。即ち、汚泥処理部52にて処理される汚泥Pは、リンを高含有率で含む汚泥である。
【0026】
最終沈澱池56においては、高度処理設備55にて処理に使用された生物も含めた汚泥Pが底に溜まる。最終沈澱池56の底部には、第二汚泥ライン58が接続されている。最終沈澱池56にて分離された汚泥Pは、第二汚泥ライン58に導入される。
【0027】
汚泥処理部52は、第一汚泥ライン57と第二汚泥ライン58の下流側に設けられている汚泥貯留槽59と、汚泥貯留槽59の下流側に設けられている汚泥脱水機60と、汚泥脱水機60の下流側に設けられている汚泥乾燥機61と、汚泥乾燥機61から排出される乾燥汚泥を焼却処理する汚泥焼却設備62と、を有している。
【0028】
汚泥脱水機60は、汚泥貯留槽59から送られてくる汚泥Pを脱水する装置である。 汚泥脱水機60としては、遠心分離機やスクリュープレス式の脱水機を採用することができる。
汚泥乾燥機61は、汚泥脱水機60にて脱水が施された脱水汚泥を乾燥する装置である。汚泥乾燥機61としては、ディスク式乾燥機を採用することができる。
【0029】
汚泥焼却設備62は、汚泥P(乾燥汚泥)を焼却して排ガスEGを排出する焼却炉63と、焼却炉63に供給される燃焼用空気Aを加熱(予熱)する熱交換器1と、排ガスEGが導入される排ガスダクト64と、燃焼用空気Aを焼却炉63に供給する空気ダクト65とを有している。
熱交換器1は、高温流体である排ガスEGと、排ガスEGよりも低温の低温流体である燃焼用空気Aとの間で熱交換を行う。
【0030】
排ガスダクト64は、焼却炉63から排出される排ガスEGを熱交換器1に供給するように焼却炉63と熱交換器1とを接続する第一排ガスダクト64Aと、熱交換により温度が低下した排ガスEGを煙突66などの後段機器に送る第二排ガスダクト64Bと、を有している。
空気ダクト65は、燃焼用空気Aを熱交換器1に導入する第一空気ダクト65Aと、熱交換により温度が上昇した燃焼用空気Aを焼却炉63に供給するように焼却炉63と熱交換器1とを接続する第二空気ダクト65Bと、を有している。
【0031】
焼却炉63に供給されるべき燃焼用空気Aが熱交換器1によって暖められるため、焼却炉63は下水汚泥のような燃えにくい焼却対象物の焼却が容易となる。即ち、本実施形態の熱交換器1は、汚泥焼却用の焼却炉63に供給される燃焼用空気Aを予熱するための空気予熱器として好ましく機能する。
【0032】
図2に示すように、熱交換器1は、シェルアンドチューブ式と呼ばれる多管式熱交換器である。熱交換器1は、内筒10の内部に複数の伝熱管11を収容して、伝熱管11の内側と外側とに異なる温度の流体を流すことで熱交換を行う。
熱交換器1は、複数の伝熱管11の一端が接続された円形状の上部管板8と、上部管板8とともにガス導入室6aを形成する上部ケーシング6と、複数の伝熱管11の他端が接続された下部管板9と、下部管板9とともにガス排出室7aを形成する下部ケーシング7と、上部管板8及び下部管板9とともに熱交換室10aを形成する内筒10と、を備えている。
【0033】
ガス導入室6aには、第一排ガスダクト64Aが接続されており、焼却炉63(図1参照)から排出される排ガスEGが導入される。ガス導入室6aは、円形状の上部管板8と上部ケーシング6とによって形成されている。上部管板8には、複数の伝熱管11の一端が接続されている。
上部管板8には、伝熱管11を挿通させるための複数の貫通孔12が形成されている。伝熱管11は、貫通孔12に挿通されることによって所定の位置に位置決めされる。
【0034】
排ガスEGがガス導入室6aから伝熱管11に流入する過程で、上部管板8には灰が堆積する。熱交換器1は、上部管板8に向けてガス(例えば、空気。ただし、空気以外のガスでもよい。)を噴射して上部管板8上の灰を吹き飛ばす8つのブラスタ2(気体噴射ノズル。図2には2つのみ示す。)と、ブラスタ2にガスを供給する4つの蓄圧タンク3(図2には2つのみ示す。)と、制御装置5と、を備えている。
【0035】
ガス排出室7aには、第二排ガスダクト64Bが接続されており、熱交換を終えた排ガスEGが導入される。ガス排出室7aは、円形状の下部管板9と下部ケーシング7とによって形成されている。下部管板9には、複数の伝熱管11の他端が接続されている。
熱交換室10aは、筒状の内筒10によって形成されている。複数の伝熱管11は、内筒10の内部に配置されている。
【0036】
複数の伝熱管11は、熱交換室10a内を上下に延びてガス導入室6aとガス排出室7aとを接続する。
排ガスEGは、焼却炉63から第一排ガスダクト64Aを通ってガス導入室6aに導入される。排ガスEGは、ガス導入室6aから複数の伝熱管11内を通ってガス排出室7aに流れる。排ガスEGは、ガス排出室7aから第二排ガスダクト64Bを通って後段機器に送られ、最終的に大気に放出される。
【0037】
第一空気ダクト65Aは、内筒10の上部に設けられた空気入口13に接続されている。第二空気ダクト65Bは、内筒10の下部に設けられた空気出口14に接続されている。
第一空気ダクト65Aを流れてきた燃焼用空気Aは、空気入口13から熱交換室10aに流入し、熱交換室10aを流れた後、空気出口14及び第二空気ダクト65Bを通って焼却炉63に供給される。伝熱管11内を流れる排ガスEGと熱交換室10aを流れる燃焼用空気Aとが伝熱管11の壁面を介して熱交換される。
熱交換室10aには、熱交換室10aの空気の流れが伝熱管11にできるだけ等しく当たるように、バッフルプレート17が設けられている。
【0038】
各々のブラスタ2は、上部ケーシング6に固定されている。各々の蓄圧タンク3は、下部ケーシング7の外側に固定されている。ブラスタ2及び蓄圧タンク3の固定箇所はこれに限ることはないが、蓄圧タンク3の位置はブラスタ2に近い方が、配管による圧損が少なくなるため好ましい。例えば各々の蓄圧タンクを上部ケーシング6の外側に固定しても良い。
ブラスタ2と蓄圧タンク3とは、ガス供給ライン4によって接続されている。ガス供給ライン4には、ガス供給ライン4を流れるガスを制御する弁15が設けられている。各々の蓄圧タンク3は、2本のブラスタ2と接続されている。即ち、一つの蓄圧タンク3が2本のブラスタ2にガスを供給する。
【0039】
図3に示すように、伝熱管11は、等しい相互間隔で、かつ、千鳥状(千鳥配列)となるように配置されている。千鳥状とは、伝熱管11が隣り合う伝熱管11と間隔を置いて列状に配列され、かつ、一つの列を形成する伝熱管11が、この列の隣の列を形成する伝熱管11の間に位置するように配列されることである。
【0040】
本実施形態の熱交換器1は、8つのブラスタ2を有している。8つのブラスタ2は、周方向に等間隔に配置されている。
図4に示すように、各々のブラスタ2は、上部ケーシング6を貫通する本体部23と、本体部23の先端に接続されて上部ケーシング6の内部(ガス導入室6a)に配置されている先端部24と、を有している。図3に示すように、ブラスタ2の本体部23は、上部管板8の径方向に沿うように延在している。
先端部24は、噴出口25を有している。8つのブラスタ2は、各々の噴出口25が、上方から見て、円形をなすように配置されている。
【0041】
本体部23は、上部ケーシング6に固定されている。本体部23の基端は上部ケーシング6の外側にあり、本体部23の先端は上部ケーシング6の内側にある。
先端部24は、本体部23との接続部から先端に向かうに従って低くなるように傾斜している。即ち、先端部24は、導入されたガスが上部管板8に向けて噴射されるように傾斜している。噴出口25は、先端部24の先端に設けられている。ブラスタ2は、噴出口25が、上部管板8の上方であって、上部管板8の外周部近傍に位置するように配置されている。
【0042】
本実施形態の熱交換器1は、上部管板8の中央部に向けてガスを噴射する4つの第一のブラスタ21と、上部管板8の外周部に向けてガスを噴射する4つの第二のブラスタ22とを、有している。第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とは、先端部24の径方向(上部管板8の径方向)に対する角度が異なる。
第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とは、上部管板8の周方向Cで交互に配置されている。即ち、第一のブラスタ21の周方向Cに隣接するブラスタ2は、第二のブラスタ22である。
【0043】
本実施形態の熱交換器1は、4つの蓄圧タンク3を有している。詳細には、熱交換器1は、第一のブラスタ21にガスを供給する2つの第一の蓄圧タンク31と、第二のブラスタ22にガスを供給する2つの第二の蓄圧タンク32と、を有している。
【0044】
第一の蓄圧タンク31は、2つの第一のブラスタ21にガスを供給する。第一の蓄圧タンク31は、2本のガス供給ライン4を有しており、各々のガス供給ライン4は、第一のブラスタ21に接続されている。各々のガス供給ライン4には、ガス供給ライン4を流れるガスを流したり止めたりする弁15が設けられている。
【0045】
第二の蓄圧タンク32は、2つの第二のブラスタ22にガスを供給する。第二の蓄圧タンク32は、2本のガス供給ライン4を有しており、各々のガス供給ライン4は、第二のブラスタ22に接続されている。各々のガス供給ライン4には、ガス供給ライン4を流れるガスを流したり止めたりする弁15が設けられている。
【0046】
制御装置5は、蓄圧タンク3とブラスタ2とを接続するガス供給ライン4に設けられている弁15と電気的に接続されている。制御装置5は、8つのブラスタ2に対応する8つの弁15を制御する駆動部5aを有している。制御装置5の駆動部5aが弁15を開閉する制御を行うことによって、ブラスタ2を駆動してガスが噴射される。駆動部5aは、8つのブラスタ2を、上部管板8の周方向に沿って一つずつ駆動するように設定されている。
【0047】
次に、第一のブラスタ21及び第二のブラスタ22の詳細形状について説明する。
第一のブラスタ21の先端部24(図4参照)は、上部管板8の径方向に向けてガスを噴射するように指向されている。換言すれば、第一のブラスタ21は、第一のブラスタ21の先端部24の中心軸が上方から見て上部管板8の径方向に沿うように形成されている。
【0048】
図5に示すように、第二のブラスタ22の先端部24は、上部管板8の径方向Rに対して傾斜した方向に向けてガスを噴射するように指向されている。第二のブラスタ22は、第二のブラスタ22の先端部24の中心軸Aが上方から見て、上部管板8の径方向Rに対して傾斜した方向に沿うように形成されている。4つの第二のブラスタ22は、先端部24が、上部管板8の周方向Cの一方側に傾斜している。具体的には、第二のブラスタ22の先端部24の中心軸Aは、上方から見て上部管板8の径方向Rに対して45°傾斜している。
【0049】
図6に示すように、第二のブラスタ22の噴出口25は、先端部24の軸線方向から見て、水平方向Hに長軸が沿う略楕円形の形状である。本体部23及び先端部24の断面形状が円形であるのに対し、噴出口25は上下方向の幅が狭く、水平方向の幅が広い形状である。噴出口25の形状は、略楕円形に限ることはなく、例えば、長辺が水平方向Hに沿う略長方形としてもよい。
また、第一のブラスタ21の噴出口25も同様の形状を有している。
【0050】
図2に示すように、熱交換器1は、上部管板8の熱分布を測定可能なサーモグラフィ(例えば赤外線カメラ)18を備えている。サーモグラフィ18は、上部管板8から放射される赤外線を分析し、上部管板8の熱分布を測定する。サーモグラフィ18は、上部管板8の熱分布を表した画像を作成する機能を有している。サーモグラフィ18は、上部ケーシング6に形成されている観測窓19を介して上部管板8を撮影する。
【0051】
サーモグラフィ18は、制御装置5と電気的に接続されている。制御装置5は、サーモグラフィ18によって撮影された画像を分析する分析部5bを有している。分析部5bは、熱分布を表した画像に基づいて、上部管板8の貫通孔12の灰による閉塞が進行しているか否かを判定する。制御装置5の駆動部5aは、分析部5bによって上部管板8の貫通孔12の閉塞が進行していると判定された場合に第一のブラスタ21及び第二のブラスタ22を駆動する。
【0052】
分析部5bは、通常時の上部管板8の熱分布を表した画像と、閉塞時(又は、閉塞が進行している時)の上部管板8の熱分布を表した画像と、を記憶している。分析部5bは、これらの画像に基づいて、上部管板8の貫通孔12の閉塞が進行しているか否かを判定する。
【0053】
次に、本実施形態の熱交換器1のブラスタ2の制御方法について説明する。
熱交換器1のブラスタ2の制御方法は、熱交換器1の上部管板8を監視する監視工程と、上部管板8の状況に応じてブラスタ2を駆動する駆動工程と、を有している。
監視工程では、制御装置5の分析部5bは、上部管板8の貫通孔12の閉塞が進行しているか否かを判定する。分析部5bが上部管板8の貫通孔12の閉塞が進行していると判定した場合、制御装置5の駆動部5aは、駆動工程を実行する。
【0054】
駆動工程では、制御装置5の駆動部5aは、ブラスタ2を一つずつ動作させる。制御装置5の駆動部5aは、図3において12時の位置に配置された第一のブラスタ21aを駆動するために弁15aを開閉した後、上部管板8の周方向(例えば時計回り)に沿ってブラスタ2を一つずつ駆動するように、弁15を開閉する。
第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とが周方向で交互に配置されているため、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とは、交互に駆動される。具体的には、一のブラスタ2に対応する弁15を開け、ガスを上部管板8に噴射した後、弁15を閉じ、次いで、一のブラスタ2に隣接する二のブラスタ2に対応する弁15を開けた後、弁15を閉じるという制御を繰り返し行う。
【0055】
8つのブラスタ2を1つずつ順次開閉する動作を1サイクルとし、サーモグラフィ18によって得られた画像に基づいて、制御装置5が複数のサイクルを実行するか否かを判定する構成としてもよい。
図7に示すように、第一のブラスタ21の先端部24が上部管板8の径方向を向き、第二のブラスタ22の先端部24が径方向に対して傾斜する方向を向いていることによって、第一のブラスタ21から噴射されるガスの範囲R1と、第二のブラスタ22から噴射されるガスの範囲R2との重なりが小さくなる。また、第二のブラスタ22から噴射されるガスが、上部管板8の外周部に噴射されるようになる。
【0056】
上記実施形態によれば、複数のブラスタ2を同時ではなく、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とを交互に動作させることによって、熱交換器1内の圧力を不用意に上昇させることなく、上部管板8の灰の堆積を防止することができる。これにより、焼却炉63の運転を安定して行うことができる。
また、上部管板8の径方向に向けてガスを噴射する第一のブラスタ21と、径方向に対して傾斜した方向に向けてガスを噴射する第二のブラスタ22の二種のブラスタ2を交互に配置していることによって、上部管板8上のより多くの範囲にガスを吹き付けることができる。
【0057】
また、ブラスタ2を一つずつ駆動することによって、熱交換器1内の圧力の上昇を確実に防ぐことができる。
また、第一のブラスタ21にガスを供給する蓄圧タンク3と、第二のブラスタ22にガスを供給する蓄圧タンク3とが異なるため、第一のブラスタ21を駆動した後に、間をおかずに第二のブラスタ22を駆動することができる。即ち、一つの蓄圧タンク3を用いて隣り合うブラスタ2を順次駆動する場合は、蓄圧タンク3をチャージする時間を必要とするため、第一のブラスタ21を駆動した際に第二のブラスタ22を直ちには駆動できないことが考えられるが、そのような事態を防止することができる。
また、一つの蓄圧タンク3を二つのブラスタ2で共用するため、低コスト化、省スペース化が可能となる。
【0058】
また、噴出口25が水平方向に長い形状を有していることによって、噴出口25から噴射されるガスを水平方向に広げることができる。これにより、より広い範囲にガスを吹き付けることができる。
【0059】
また、サーモグラフィ18を用いて上部管板8の状況を監視することによって、上部管板8の貫通孔12の閉塞がやや進行した場合、即ち閉塞の初期の状態において直ちにブラスタ2を駆動して灰を吹き飛ばし、上部管板8の貫通孔12の閉塞の進行を防止することができ、結果として伝熱管内部の閉塞の進行も防止するので、根本的に伝熱管の閉塞を予防することができる。特に、汚泥Pにリンが高含有で含まれている場合においては、灰の蓄積が急に進行する場合があるため、サーモグラフィ18による監視によって、灰による貫通孔12の閉塞を確実に防止することができる。
【0060】
なお、上記実施形態の熱交換器1では、第一のブラスタ21が径方向に向けてガスを噴射し、第二のブラスタ22が径方向に対して傾斜した方向にガスを噴射する構成としているが、これに限ることはない。例えば、第一のブラスタ21が径方向に対して傾斜する一の方向に向けてガスを噴射し、第二のブラスタ22が径方向に対して傾斜した方向であり、一の方向とは異なる他の方向に向けてガスを噴射する構成としてもよい。即ち、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22との径方向に対する傾斜角度が異なっていればよい。
【0061】
また、上記実施形態の熱交換器1では、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とが、上部管板8の周方向に交互に配置されているが、これに限ることはない。例えば、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とが、上部管板8の中心点に対して点対称に配置されている構成としてもよい。また、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とが、上部管板8の中心点を含む直線に対して線対称に配置されている構成としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ブラスタ2の数を8つとしたがこれに限ることはなく、上部管板8の大きさなどに応じて適宜変更することができる。
また、上記実施形態では、ブラスタ2を一つずつ駆動する構成としたが、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とを交互に駆動すればよく、例えば、二つの第一のブラスタ21と、二つの第二のブラスタ22とを交互に駆動する構成としてもよい。
また、上記実施形態では、第二のブラスタ22の先端部24を本体部23に対して傾斜させることで、径方向に対して傾斜した方向にガスを噴射する構成としたが、第一のブラスタ21と同様の形状のブラスタ2を径方向に対して傾斜するように配置してもよい。
【0063】
(変形例)
上記実施形態では、蓄圧タンク3から供給されるガスの圧力は一定としたが、圧力を異なるものとしてもよい。例えば、第一の蓄圧タンク31から供給されるガスの圧力よりも、第二の蓄圧タンク32から供給されるガスの圧力を低くしてもよい。
例えば、上部管板8の中心に灰がより多く蓄積される場合は、第一のブラスタ21から噴射されるガスの圧力を高くすることで、上部管板8の中心部の灰を優先して吹き飛ばすことができる。
また、一つのサイクルのうち、後に噴射されるガス程、圧力を下げるようにするなど、タイミングによって圧力を変化させてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、熱交換器1を他の種類の焼却設備に適用することや、焼却設備以外の設備に適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 熱交換器
2 ブラスタ
3 蓄圧タンク
4 ガス供給ライン
5 制御装置
5a 駆動部
5b 分析部
6 上部ケーシング
6a ガス導入室
7 下部ケーシング
7a ガス排出室
8 上部管板
9 下部管板
10 内筒
10a 熱交換室
11 伝熱管
12 貫通孔
13 空気入口
14 空気出口
15 弁
17 バッフルプレート
18 サーモグラフィ(赤外線カメラ)
19 観測窓
21 第一のブラスタ
22 第二のブラスタ
23 本体部
24 先端部
25 噴出口
31 第一の蓄圧タンク
32 第二の蓄圧タンク
50 下水処理場
51 排水処理部
52 汚泥処理部
53 前処理設備
54 最初沈澱池
55 高度処理設備
56 最終沈澱池
59 汚泥貯留槽
60 汚泥脱水機
61 汚泥乾燥機
62 汚泥焼却設備
63 焼却炉
64 排ガスダクト
65 空気ダクト
66 煙突
A 燃焼用空気
EG 排ガス
P 汚泥
W 排水
【要約】
【課題】熱交換器内の圧力を不用意に上昇させることなく、上部管板の灰の堆積を防止する。
【解決手段】複数の伝熱管11の一端が接続された上部管板8と、ガス導入室を形成する上部ケーシング6と、上部管板8に向けてガスを噴射する複数のブラスタ2であって、上部管板8の径方向又は径方向に対して傾斜した方向である一の方向に向けてガスを噴射する複数の第一のブラスタ21と、上部管板8の径方向に対して傾斜した方向であり、一の方向とは異なる他の方向に向けてガスを噴射する複数の第二のブラスタ22と、を有する複数のブラスタ2と、複数のブラスタ2を駆動する制御装置5と、を備え、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とは、上部管板8の周方向Cで交互に配置されており、制御装置5は、第一のブラスタ21と第二のブラスタ22とを交互に駆動する駆動部5aを有する熱交換器1を提供する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7