(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重金属の溶出量が、多孔質セラミックス焼成体を水に浸漬し、前記水に溶出した重金属の前記水中での濃度において、カドミウムが0.01mg/L以下、鉛が0.01mg/L以下、六価クロムが0.05mg/L以下、砒素が0.01mg/L以下、総水銀が0.0005mg/L以下、アルキル水銀が0.0005mg/L以下、及びセレンが0.01mg/L以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質セラミックス焼成体。
前記混合工程は、前記混合物の全体質量に対して、それぞれ前記フライアッシュを3〜35質量%、前記粘土類を10〜50質量%、前記発泡剤を20〜65質量%、および前記有機汚泥を1〜60質量%混合する請求項5に記載の多孔質セラミックス焼成体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(多孔質セラミックス焼成体)
本発明の一実施形態に係る多孔質セラミックス焼成体は、フライアッシュを含む混合物が焼成されたものである。
【0011】
多孔質セラミックス焼成体に形成されている気孔の大きさは、用途を勘案して決定でき、例えば、孔径1nm以上1000nm未満のナノメートルオーダーの気孔でもよいし、孔径1〜1000μmのマイクロメートルオーダーの気孔でもよいし、孔径1mm超2000mm以下のミリメートルオーダーの気孔でもよい。
気孔の孔径は、原料の種類や、焼成条件を組み合わせることにより調節できる。気孔の孔径とは、気孔の長径を指す。
ミリメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックス焼成体をその厚さ方向に沿ってカットし、スケールを用いて測定される値とする。ナノメートルオーダーの気孔の孔径及びマイクロメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックス焼成体をその厚さ方向に沿ってカットし、電子顕微鏡を用いて測定される値とする。
【0012】
多孔質セラミックス焼成体の気孔は、それぞれ独立したものであってもよいし、相互に連通した連通孔であってもよい。多孔質セラミックス焼成体は、断熱性、吸音性、保水性、透水性又は通気性の向上の観点から、連通孔を有することが好ましい。かかる連通孔は、多孔質セラミックス焼成体を貫通して形成されたものであることがより好ましい。
多孔質セラミックス焼成体には、ミリメートルオーダーの気孔、マイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔から選択される2種以上が混在し、これらが互いに連通していてもよい。係る形態は、素早く水を吸収でき(透過係数が高い)、保水性が高まり、適度に水を蒸散できるため、ヒートアイランド現象を抑制できて好ましい。
【0013】
多孔質セラミックス焼成体は、後述の式で求められる、飽和含水率が15〜80質量%であり、20〜70質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。上記下限値未満では、多孔質セラミックス焼成体の気孔率が不十分であり、十分な諸特性を発揮できない。上記上限値超では、気孔率が高くなりすぎて、多孔質セラミックス焼成体の強度が不十分になる。
なお、気孔率とは、単位体積当たりの気孔の体積の割合である。
ここで、飽和含水率とは、水の飽和状態における多孔質セラミックス焼成体の全体質量に対する水の含有量である。この飽和含水率は、例えば以下の式で求められる。
飽和和含水率(質量%)=[(飽和含水状態質量−絶乾状態質量)/絶乾状態質量]×100
ここで、飽和状態とは、気孔にほぼ水が充填された状態、具体的には多孔質セラミックス焼成体を水に浸漬する等を行って気孔の空気を水に置換する等の操作を行った状態である。飽和状態質量を測定する際は、気孔が平行になっている多孔質セラミックス焼成体については、多孔質セラミックス焼成体を水中に30〜120分程度浸漬し、水が流れ出さないよう水中から取り出し、その質量を測定してもよい。
絶乾状態とは、多孔質セラミックス焼成体を105〜115℃(例えば、100〜110℃)で恒量となるまで(例えば、24時間)乾燥した状態である。さらに詳細には、JIS A 1509−3に準拠して乾燥を行ってもよい。絶乾状態質量を測定する際は、例えば、JIS K0067−1992に示された乾燥減量法を用いて測定してもよい。
【0014】
[多孔質セラミックス焼成体の質量(g)]/[多孔質セラミックス焼成体の体積(cm
3)]で表される見掛け密度は、好ましくは0.6〜2g/cm
3、より好ましくは0.6〜1.5g/cm
3、さらに好ましくは0.6〜1.1g/cm
3、特に好ましくは0.65〜0.85g/cm
3である。上記範囲内であれば、多孔質セラミックス焼成体の強度をより高められると共に、用途に応じた諸特性を高められる。ここで、多孔質セラミックス焼成体の質量は、絶乾状態における値である。
【0015】
多孔質セラミックス焼成体の形状は、用途等を勘案して決定でき、例えば、平板状の板状物、角柱状若しくは円柱状等の柱状物、又は粒状物等が挙げられる。中でも、壁材、床材又は路盤材等の、建築材料として好適な板状物又は柱状物において、本実施形態の効果が顕著である。なお、目安として、板状物とは厚みに対して長さ及び幅が大きい、特に2倍以上の寸法を有する形状を指し、さらに好適には長辺が3cm以上のものを指す。柱状物とは長さが幅及び高さに対して大きい、特に2倍以上の寸法を有する形状を指す。粒状物は、前記の板状物を破砕したものやペレットを形成し焼成などして得られた長辺が3cm未満の柱状、針状、球状、板状又は不定形等のものが挙げられる。なお、長径が3cm以上であっても、形状が不定形のものは、粒状物とする。
多孔質セラミックス焼成体の大きさは、用途や施工方法等を勘案して決定でき、例えば、板状物である多孔質セラミックス焼成体であれば、長さ5〜200cm×幅5〜200cm×厚さ1〜10cmとされる。
また、例えば、柱状物である多孔質セラミックス焼成体であれば、長さ5〜200cm×幅1〜200cm×高さ1〜200cmとされる。
なお、粒状物は、ブロックの骨材、コンクリートの骨材又は土壌改良材等に好適である。
【0016】
多孔質セラミックス焼成体が板状物又は柱状物である場合、その曲げ強度は、3.0N/mm
2以上が好ましく、5N/mm
2以上がより好ましく、7N/mm
2以上がさらに好ましく、10N/mm
2以上が特に好ましい。曲げ強度が3.0N/mm
2以上であれば屋上材として十分な強度であり、5N/mm
2以上であればトラック等が通過する路面の路盤材として十分な強度である。
なお、曲げ強度は例えばJIS R5201に準拠した方法などで測定できる。
【0017】
多孔質セラミックス焼成体は、各成分、特に重金属の溶出量が土壌の汚染に係る環境基準(平成3年8月23日、環境庁告示第46号)を満たすことが好ましい。重金属の溶出量とは、水に浸す等の環境に晒した際に溶出する重金属の量である。具体的には、多孔質セラミックス焼成体を水(又は酸等の水溶液)に浸漬し、前記水に溶出した重金属の濃度を測定したものである。浸漬の条件は後述する各測定方法により決定することが好ましいが、例としては、概ね1〜30分間浸漬し、検出しにくい重金属によっては、煮沸した水に対して浸漬する。
さらに具体的な例としては、後述する表2及び表3に記載された各測定方法により測定するものである。前記環境基準を満たすとは、溶出量の検出値が、同表にそれぞれ記載された各基準値を満たすことである。本実施形態の多孔質セラミックス焼成体における上記環境基準を満たすことで、フライアッシュを有効活用できる。
前記環境基準に規定されている重金属は、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、水銀及びセレンである。さらに具体的には、カドミウムの溶出量(検出値)が0.01mg/L以下であること(例えばJIS K0102 55.4の測定方法による)、鉛の溶出量が0.01mg/L以下であること(例えばJIS K0102 54.4の測定方法による)、六価クロムの溶出量が0.05mg/L以下であること(例えばJIS K0102 65.201の測定方法による)、砒素の溶出量が0.01mg/L以下であること(例えばJIS K0102 61.4の測定方法による)、総水銀の溶出量が0.0005mg/L以下であること(例えば昭和46年環境庁告知第59号 付表1の測定方法による)、アルキル水銀の溶出量が0.0005mg/L以下であること(例えば昭和46年環境庁告知第59号 付表2の測定方法による)、及びセレンの溶出量が0.01mg/L以下であること(例えばJIS K0125 67.4の測定方法による)等の条件を満たすことである。
また、表2に示すもののほか、六価クロムの溶出量が0.05mg/L以下であること(例えばJIS K0102 65.2.1の測定方法による)、砒素の定量限界が0.005mg/L、PCBの定量限界が0.0005mg/L、ジクロロメタンの定量限界が0.002mg/Lといった条件を満たすようにしてもよい。表3に示すもののほか、セレンはJIS K0102 67.4、ふっ素はJIS K0102 34.1、ほう素はJIS K0102 47.3、硝酸性窒素はJIS K0102 43.2.3、亜硝酸性窒素はJIS K0102 43.1.1、アンモニア性窒素はJIS K0102 42.2、水素イオン濃度はJIS K0102 12.1の測定方法により計測してもよく、これらを上述の条件と併用してもよい。
これらの重金属の溶出量の条件は、後述する混合物の組成により達成できる。
【0018】
<フライアッシュ>
フライアッシュは、後述する粘土類、発泡剤、及び有機汚泥等と共に焼成されるものであり、多孔質セラミックス焼成体に取り込まれることで、多孔質セラミックス焼成体の強度を高められる。
フライアッシュは、火力発電所等で、石炭を燃焼させた際に生成する灰であって、燃料ガスと共に吹き上げられる程度の大きさの粒子である。一般に、フライアッシュは、吹き上げられた灰を電気集塵機等で回収することで得られる。
本実施形態におけるフライアッシュとしては、品質安定性の観点から、コンクリート用フライアッシュとしてJIS A6201に規定されているものが好ましく、JIS A6201に規定されたI種、II種、III種、又はIV種のいずれでもよい。
本実施形態の多孔質セラミックス焼成体は、フライアッシュを含む混合物が焼成されてなるもので、後述の製造方法において述べるが、焼成される前の混合物に対して、混合物の全体質量の3〜35質量%含有した上で焼成される。
【0019】
<任意成分>
本実施形態の多孔質セラミックス焼成体の原料には、フライアッシュ以外に、粘土類、発泡剤、有機汚泥、珪藻土、流動化剤、吸着剤、抗菌剤、消臭剤、顔料、クリンカアッシュ、瓦破砕物、又はガラス破砕物等を用いることができる。また、多孔質セラミックス焼成体の強度向上のため、融点が900℃以上の高融点ガラスの粒子、炭素繊維、バサルト繊維、又はロックウール等のフィラーを用いてもよい。
これらの原料を混合した混合物を焼成することで、容易に、本実施形態の多孔質セラミックス焼成体を得ることができる。
本実施形態における混合物としては、フライアッシュ、粘土類、発泡剤及び有機汚泥を含むものが好ましい。粘土類、発泡剤、及び有機汚泥を含む混合物を焼成した多孔質セラミックス焼成体は、優れた飽和含水率、吸水係数、断熱性、ヒートアイランド現象の抑制性、及び植物育成性能等を有しており、建材をはじめ様々な分野での利用が期待されている。さらに、混合物にフライアッシュが加えられることで、多孔質セラミックス焼成体の強度を著しく高められる。
粘土と発泡剤と有機汚泥との混合物が焼成されてなる多孔質セラミックス焼成体において、混合物にフライアッシュが加えられることで、多孔質セラミックス焼成体の曲げ強度を顕著に高められる。
また、従来、粘土類、発泡剤、及び有機汚泥を混合する混合工程では、大きな団粒が生じる等して、原料として用いている粘土類(粘土)、発泡剤、及び有機汚泥が均一に混ざらず、配合に長時間を要したり、得られる多孔質セラミックス焼成体の品質がばらついたりした。混合物にフライアッシュを加えることで、原料を円滑に混合でき(混合性が良好)、かつ品質の均一化も図れる。
【0020】
≪粘土類≫
本実施形態における粘土類(粘土)は、一般的に窯業原料として用いられる粘土状の性状を示す鉱物材料である。本実施形態において粘土類は、後述する珪藻土を除くものである。
粘土類は、セラミックス焼成体に用いられる公知のものを用いることができ、石英、長石、又は粘土系等の鉱物組成で構成され、構成鉱物はカオリナイトを主とし、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイト、又はパイロフィライトを含むものが好ましい。
中でも、焼成時のクラックの伸展を抑え、多孔質セラミックス焼成体の破壊を防ぐ観点から粒子径が500μm以上の石英の粗粒を含むものがより好ましい。前記石英の粗粒は、粒子径が5mm以下であることが好ましい。このような粘土類としては、例えば、蛙目粘土等が挙げられる。粘土類は、組成(上記の各種の鉱物を含むもの)、構成する粒子径又は含水率等の物理的性質が異なる各種のものを、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合できる。
【0021】
焼成前の混合物中の粘土類の含有量は、多孔質セラミックス焼成体に求める強度や成形性等を勘案して決定でき、混合物の全体質量に対して5〜60質量%であってもよい。混合物中の粘土類の含有量が上記範囲内であれば混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス焼成体の強度を十分なものにできる。混合物の成形性及び多孔質セラミックス焼成体の強度をより良好にする利点のため、前記含有量が10〜40質量%であってもよりよい。後述するように、気孔率と重金属の溶出を防ぐ点を重視する場合は、10〜50質量%であってもよく、20〜45質量%であるとさらによい。
【0022】
≪発泡剤≫
本実施形態における発泡剤は、焼成時に発泡するものであり、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ケイ素、炭酸マグネシウム、又はスラグ等の公知のセラミックス用の発泡剤を用いることができる。これらの発泡剤の中でもスラグが好ましい。
スラグは、特に限定されず、例えば、金属精錬時に発生する高炉スラグ、都市ゴミの溶融時に発生する都市ゴミ溶融スラグ、下水汚泥の溶融時に発生する下水汚泥溶融スラグ、又はダクタイル鋳鉄等の鋳鉄時に発生する鋳鉄スラグ等のガラス質スラグ等が挙げられ、中でも、組成が安定しているため安定した発泡状態が得られると共に、他のスラグに比べ1.5〜2倍程度の発泡率である鋳鉄スラグがより好ましい。鋳鉄スラグを用いることで、例えば、多孔質セラミックス焼成体の長さ方向又は幅方向の長さよりも、多孔質セラミックス焼成体の厚さ方向の長さが短い形状のミリメートルオーダーの気孔を形成し、透水係数(水を通す速度)を高めたり、保水性を高めたりできる。
混合物中の発泡剤の含有量は、混合物の質量全体に対して20〜65質量%であってもよい。
【0023】
≪有機汚泥≫
有機汚泥は、主成分として有機物を含有する汚泥である。前記混合物に添加される有機汚泥は、任意のものを用いることができる。下水や工場等の排水処理に由来する活性汚泥を用いてもよい。活性汚泥は、活性汚泥法を用いた排水処理設備から、凝集・脱水工程を経て排出される。前記混合物にこのような有機汚泥を用いることで、マイクロメートルオーダーの気孔、さらにはナノメートルオーダーの気孔を形成できる。さらに、廃棄物の位置付けであった排水処理由来の活性汚泥を原料として再度利用することができる。
【0024】
有機汚泥の含水率は、例えば、有機汚泥の質量全体に対して5〜90質量%であってもよく、60〜90質量%が好ましく、65〜85質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、後述の混合工程で均質な混合物が得られると共に、成形工程においても良好な成形性を維持できるためである。前記含水率が65〜85質量%であると、均質性と成形性がさらに両立して得られる。
【0025】
有機汚泥に含まれる有機物の含有量は特に限定されないが、例えば、有機汚泥の固形分中の有機物の含有量(有機物含有量)として、有機汚泥の質量全体に対して70〜100質量%であってもよい。前記有機物含有量が多いほど、マイクロメートルオーダーの気孔の形成が容易となるためである。前記有機物の含有量は、有機汚泥の質量全体に対して80〜90質量%であってもよく、この範囲においてこれらの気孔がさらに好適に形成できる。なお、有機物含有量は、乾燥後の汚泥をJIS M8812−1993に準じ、炭化温度700℃で灰分(質量%)を測定し、下記(1)式により求まる値である。
【0026】
有機物含有量(質量%)=100(質量%)−灰分(質量%) ・・・(1)
【0027】
有機汚泥の平均粒子径は、多孔質セラミックス焼成体の用途に応じて決定でき、好ましくは1〜5μmであってもよい。さらに、より好ましくは前記平均粒子径は1〜3μmであってもよく、この範囲においてこれらの気孔がさらに好適に形成できる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)により測定される体積基準のメディアン径(体積50%径)である。
【0028】
混合物中の有機汚泥の含有量は、混合物の成形性等を勘案して決定することができる。前記含有量は混合物の質量全体に対して1〜60質量%であってもよい。上記範囲内であれば混合物は適度な流動性と可塑性とを備え、成形性が向上し、成形装置を閉塞することなく円滑に成形できる。前記含有量は5〜60質量%であってもよく、5〜30質量%であってもさらに良く、5〜20質量%であってもさらに良い。
【0029】
≪珪藻土≫
珪藻土としては、珪藻の遺骸からなる堆積物であり、マイクロメートルオーダーの気孔を有する多孔質の粒子を含むものが挙げられる。混合物に珪藻土を用いることで、珪藻土に由来する微細な気孔を多孔質セラミックス焼成体に形成できる。
【0030】
珪藻土は、特に限定されず、従来、耐火煉瓦、又は濾過材等に使用されていたものと同様のものを用いることができる。例えば、狭雑している粘土鉱物(モンモリロナイト等)や石英、又は長石等を分別精製する必要はなく、これらの含有率を認識した上で、混合物への配合量を調整することができる。また、コンロやレンガ等に用いられていたものを粉砕して用いてもよく、これらを応用することで廃棄物を削減できる。
珪藻土の含水率は特に限定されず、例えば、自然乾燥状態での含水率が珪藻土の質量全体に対して20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましく、35〜45質量%がさらに好ましい。
上記範囲内であれば、含水率を認識しながら、混合の際に狭雑物中の粗粒子分を除去して使用することで、成形性が良好な混合物を得られるためである。
なお、珪藻土の含水率は、例えば試料を乾燥し、乾燥前後での試料の質量から下記(2)式を用いて求める乾燥減量方式で求めることができる。さらに具体的には、赤外線水分計を用い、試料の乾燥を0〜200℃程度で5分以上、さらに好ましくは10〜30分間行って求めることが好ましい。本実施形態では、特に下記仕様の赤外線水分計を用い、試料を乾燥(200℃、12分)し、下記(2)式により求めた値を用いている。
【0031】
<仕様>
測定方式:乾燥減量法(加熱乾燥・質量測定方式)
最小表示:含水率;0.1質量%
測定範囲:含水率;0.0〜100質量%
乾燥温度:0〜200℃
測定精度:試料質量5g以上で、含水率±0.1質量%
熱源:赤外線ランプ;185W
【0032】
含水率(質量%)=[(m1−m2)/(m1−m0)]×100 ・・・(2)
m1:乾燥前の容器の質量と乾燥前の試料の質量との合計質量(g)
m2:乾燥後の容器の質量と乾燥後の試料の質量との合計質量(g)
m0:乾燥後の容器の質量(g)
【0033】
混合物中の珪藻土の含有量は、多孔質セラミックス焼成体に求める飽和含水率や強度等を勘案して決定でき、例えば、混合物の質量全体に対して1〜55質量%としてもよい。上記上限値以下であれば、混合物の成形性が良好であり、上記下限値以上であれば、所望の飽和含水率の多孔質セラミックス焼成体や、所望の強度の多孔質セラミックス焼成体が得られやすい。前記含有量は混合物の質量全体に対して1〜45質量%であってもよく、この範囲で多孔質セラミックス焼成体のより好適な飽和含水率や強度が得られる。
【0034】
≪流動化剤≫
流動化剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、マイティ2000WH(商品名、花王株式会社製)等のナフタリン系の流動化剤、メルメントF−10(商品名、昭和電工株式会社製)等のメラミン系の流動化剤、ダーレックススーパー100pH(商品名、グレースケミカルズ株式会社製)等のポリカルボン酸系の流動化剤等が挙げられる。
【0035】
≪抗菌剤≫
抗菌剤としては、従来公知の抗菌剤を用いることができ、銀、銅、又は亜鉛等が挙げられる。
【0036】
≪吸着剤≫
吸着剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、ゼオライト、又はアパタイト等の吸着剤が挙げられる。
【0037】
≪消臭剤≫
また、有機汚泥から悪臭が生じる場合には、消臭剤を配合するとよい。消臭成分としては、例えば、塩化アンモニウム、又は塩化亜鉛等が挙げられる。このような成分の消臭剤を用いた場合には硫化水素等の臭いの成分を中和し、有機汚泥からの臭気を無臭化することにより、有機汚泥から生じる悪臭を抑制することができる。
【0038】
≪フィラー≫
フィラーとしては、例えば、溶融温度が900℃以上の高融点ガラスの粒子、炭素繊維、バサルト繊維及びロックウール等が挙げられる。例えば、高融点ガラスをフィラーとして含む原料を焼成すると、高融点ガラスは、部分的に溶融し、フィラー同士で融着したり、粘土類等のバインダーとして機能したりして、多孔質セラミックス焼成体の強度のさらなる向上を図れる。又、炭素繊維、バサルト繊維又はロックウールは、多孔質セラミックス焼成体に取り込まれることで、多孔質セラミックス焼成体の強度のさらなる向上を図れる効果も生ずる。
【0039】
(製造方法)
本実施形態の多孔質セラミックス焼成体の製造方法は、フライアッシュを含む混合物を得る混合工程と、混合物を成形して成形体を得る成形工程と、成形体を焼成して多孔質セラミックス焼成体を得る焼成工程とを備える。
以下に、本実施形態の多孔質セラミックス焼成体の製造方法について、フライアッシュ、粘土類、発泡剤及び有機汚泥を原料に用いた場合を例にして説明する。
【0040】
<混合工程>
混合工程は、粘土類を含む原料を混合して混合物を得る工程である。本実施形態では、この工程においてフライアッシュと粘土類と発泡剤と有機汚泥とを含む材料を混合して、混合物を得る。
【0041】
混合物中の粘土類の含有量は、例えば、混合物の全体質量に対して10〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましい。上記下限値未満では、成形性が低下して板状物や柱状物を得られにくかったり、強度が低下したり、フライアッシュ由来の重金属が溶出しやすくなるおそれがある。上記上限値超では、気孔率が低下して飽和含水率が低下し、諸特性が低下するおそれがある。
【0042】
混合物中のフライアッシュの含有量は、多孔質セラミックス焼成体に求める強度やフライアッシュに含まれる重金属の量等を勘案して決定でき、例えば、混合物の全体質量に対して3〜35質量%が好ましく、6〜35質量%がより好ましく、9〜35質量%がさらに好ましい。上記下限値未満では、強度を十分に高められなかったり、混合性が低下するおそれがある。上記上限値超では、飽和含水率が低下して諸特性が低下したり、成形性が低下して板状物や柱状物を得られにくいおそれがある。加えて、上記上限値超では、成形体が乾燥しにくくなって生産性が低下したり、残留した多量の水分によって、焼成時に成形体が破損するおそれがある。
混合物中、フライアッシュ/粘土類で表される質量比は、0.1〜1.3が好ましく、0.2〜1.0がより好ましく、0.3〜0.6がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、強度のさらなる向上を図れ、上記上限値以下であれば、成形性のさらなる向上を図れる。
【0043】
混合物中の発泡剤の含有量は、例えば、混合物の全体質量に対して20〜65質量%が好ましく、30〜55質量%がより好ましい。上記下限値未満では、気孔率が低下して飽和含水率が低下し、諸特性が低下するおそれがあり、上記上限値超とすると、成形性が損なわれたり、気孔率が高まりすぎて、強度が低下するおそれがある。
混合物中、発泡剤/粘土類で表される質量比は、0.5〜3.5が好ましく、0.6〜3.0がより好ましい。上記下限値以上であれば、諸特性のさらなる向上を図れ、上記上限値以下であれば、成形性や強度のさらなる向上を図れる。
【0044】
混合物中の有機汚泥の含有量は、例えば、混合物の全体質量に対して1〜60質量%でもよく、5〜60質量%が好ましい。上記下限値未満では、ナノメートルオーダーの気孔やマイクロメートルオーダーの気孔が少なくなって、諸特性が低下するおそれがあり、上記上限値超では、成形性が損なわれたり、強度が低下するおそれがある。混合物の成形性を高めるには、8〜50質量%がより好ましい。有機汚泥を少なめにして混合物の強度をより高めるためには、5〜30質量%であってもよい。
混合物中、有機汚泥/粘土類で表される質量比は、0.1〜2.5が好ましく、0.2〜1.0がより好ましい。上記下限値以上であれば、諸特性のさらなる向上を図れ、上記上限値以下であれば、成形性や強度のさらなる向上を図れる。
【0045】
混合物の含水率は、特に限定されないが、混合物の全体質量に対して10〜35質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、混合物は適度な可塑性と流動性を有し、良好な成形性を維持できるためである。なお、混合物の含水率を調整するために、混合物に水を添加してもよい。
【0046】
なお、混合工程においては、必要に応じて、上記以外の任意成分が混合されてもよい。
例えば、混合物にフィラーを加える場合、混合物中のフィラーの含有量は、その種類等を勘案して決定される。混合物中のフィラーの含有量は、例えば、フィラー以外の原料の合計100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましい。上記下限値以上とすることで、フィラーを添加した効果を好適に得られ、上記上限値以下とすることで好適な成形性が得られる。前記含有量は0.01〜10質量部であってもよい。前記含有量がこの範囲であれば、多孔質セラミックスの強度と混合物の成形性がいずれもさらに好適に得られる。多孔質セラミックスの強度と混合物の成形性を両立させるためには、前記含有量は0.05〜5質量部であってもさらに良く、0.1〜2質量部であると特に良い。
【0047】
上述した混合物中における各原料の含有量は、混合物全体で100質量%となるように調整され、上記以外の任意成分を混合する場合には、それらの成分も含め全体で100質量部として調整される。
【0048】
混合工程における各原料の混合順序は、特に限定されず、例えば、フライアッシュ、粘土類、発泡剤、有機汚泥、又はその他の任意成分を予め混合装置に仕込み、混合する方法が挙げられる。
【0049】
混合工程としては、混練、撹拌又は振盪などの各種の混合の操作を任意に用いることができる。この混合工程に用いる混合装置は特に限定されず、公知の混合装置を用いることができる。
例えば、混合装置としては、ミックスマラー(東新工業株式会社製)等の混練機や、ニーダー(株式会社モリヤマ製)、又は混合機(日陶科学株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
混合工程における混合時間は、各原料の含有量や、混合物の流動性等を勘案して決定でき、混合物が可塑状態となるような混合時間を決定することが好ましい。混合時間は、例えば、15〜45分間とすることが好ましく、25〜35分間とすることがより好ましい。
【0051】
<成形工程>
成形工程は、混合工程で得られた混合物を任意の形状に成形する工程である。
成形方法は、公知の成形方法を用いることができ、混合物の性状や多孔質セラミックス焼成体の形状を勘案して決定できる。成形方法は、例えば、板状物又は柱状物の多孔質セラミックス焼成体を製造する場合、成形機を用いて混合物を押し出し切断する操作を行い、所望する形状の成形体を得る方法、混合物を所望する形状の型に充填し成形体を得る方法、あるいは混合物を延伸又は圧延した後、所望の寸法に切断する方法等が挙げられる。
成形機としては、真空土練成形機、平板プレス成形機、又は平板押出し成形機等が挙げられ、中でも、真空土練成形機が好ましい。真空土練成形機を用いて成形体中の空気を除去することで、多孔質セラミックス焼成体中の気孔率を制御できる。
【0052】
粒状物の多孔質セラミックス焼成体を製造する場合、例えば、一次スクリュー押出式成形機や円盤型ダイス水平押出式成形機等を用い、混合物をダイス孔から押し出しつつ切断して、円柱状又は角柱状の成形体を得る。この場合、成形体の大きさは、例えば、直径5〜20mmとされる。
【0053】
<焼成工程>
焼成工程は、成形工程で得られた成形体を乾燥し(乾燥操作)、乾燥した成形体を焼成し(焼成操作)、フライアッシュ、粘土類、発泡剤、又は有機汚泥等の任意成分を焼成して多孔質セラミックス焼成体を得る工程である。
【0054】
≪乾燥操作≫
乾燥操作は、成形体を任意の含水率に調整する工程である。
乾燥方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、成形体を自然乾燥してもよいし、50〜220℃の熱風乾燥炉で任意の時間処理することで乾燥してもよい。乾燥した成形体の含水率は、特に限定されないが、例えば、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましい。
なお、この乾燥操作は、短縮または省略してもよい。適宜に乾燥操作を短縮または省略することで、焼成体にクラック等を形成することができる。
【0055】
≪焼成操作≫
焼成操作は、乾燥した成形体を任意の温度で焼成する操作である。
焼成方法は、特に限定されず、密閉系、又はオープン系等、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーハースキルン等の連続式焼結炉、又はシャトルキルン等の回分式焼結炉を用い、任意の温度で焼成する方法が挙げられる。中でも、生産性の観点から、焼成操作には連続式焼結炉を用いることが好ましい。
【0056】
焼成温度(到達温度)は、原料の配合割合等を勘案して決定できる。原料にフライアッシュ、粘土類、又は発泡剤及び有機汚泥が含まれる場合、フライアッシュ、粘土類が焼成され、有機汚泥に含まれる有機物が熱分解により揮発して減量し、スラグ等の発泡剤が膨張する条件とされる。例えば、焼成温度は、900〜1250℃が好ましく、950〜1200℃がより好ましい。有機物の多くは、700℃前後より分解が始まり、950℃において有機汚泥特有の臭いは、臭気成分が熱分解され解消されると共に、有機汚泥中の有機物の大部分が揮発して減量する。また、発泡剤である鋳鉄スラグの多くは800〜850℃で結晶化により膨張する。そして、有機物の減量、又は鋳鉄スラグの膨張により、気孔が形成されるとともに、また、粘土類、又はフライアッシュの一部が溶融し、フライアッシュに含まれる重金属を封じ込める。
焼成温度が1250℃を超えると、多孔質セラミックス焼成体の組織全体のガラス化が進み、焼成中に成形体が粉砕したり、気孔が閉塞するおそれがある。
【0057】
焼成操作では、焼成温度に達するまでに、成形体からまず水分が蒸発し、その後、有機汚泥の有機物が熱分解を経て揮発する。この過程で、温度上昇(ヒートカーブ、又は温度勾配)を適性に調整することにより、急激な水分の蒸発又は急激な有機物の揮発を抑え、成形体の粉砕(爆砕)を防止できる。加えて、焼成温度に達した後の急激な冷却により、多孔質セラミックス焼成体に割れや粉砕等の破損が生じることがある。このような現象は、特に連続式焼結炉において顕著に現れる。このため、焼成工程には、温度勾配を設けることが好ましい。
【0058】
温度勾配は、焼成装置の規模等を勘案して決定できる。例えば、焼成部の有効長が15mの連続式焼結炉を用いて焼成する場合、連続式焼結炉の入口及び出口を常温(20℃±15℃)とし、連続式焼結炉の中央部における焼成温度を900〜1250℃とし、成形体の連続式焼結炉内の通過速度を3〜4mm/sec.とし、以下の温度勾配条件とすることが好ましい。
温度勾配は、例えば、連続式焼結炉を均等な距離の10のゾーンに区分し、連続式焼結炉の温度勾配を入口側より0.4〜0.6℃/sec.、0.1〜0.2℃/sec.、0.3〜0.4℃/sec.、0.4〜0.6℃/sec.、0.7〜1.0℃/sec.、0.004〜0.005℃/sec.、−0.4〜−0.2℃/sec.、−0.8〜−0.5℃/sec.、−0.4〜−0.3℃/sec.、−0.3〜−0.1℃/sec.とすることができる。
【0059】
焼成時間は、焼成温度や成形体の含水率等を勘案して決定でき、例えば、焼成部内での滞留時間が、好ましくは10分間〜72時間、連続式焼結炉の場合は、好ましくは10分間〜300分間、より好ましくは30分間〜120分間である。上記範囲内であれば、多孔質セラミックス焼成体の破損を防止しつつ、良好に焼成できる。
【0060】
焼成して得られた多孔質セラミックス焼成体は、そのままで、又は、任意の大きさや形状に切断され、あるいはくり抜かれ、あるいは接合され、あるいは表面が研削され、あるいは破砕されて、任意の用途に用いられる。
【0061】
以上説明したように、多孔質セラミックス焼成体は、諸特性を備えつつ、高い強度を備える。このため、本実施形態の多孔質セラミックス焼成体は、壁材、屋根材、床材、路盤材、若しくは骨材等の建築材料や室外機の冷却部材、植物育成基盤材、水浄化材、又は土壌改良材等として好適に使用することができる。また、例えば、本実施形態の多孔質セラミックス焼成体は、これらを製造する際の製造方法における材料として使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を示して本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は以下の記載によって限定されるものではない。
【0063】
(使用原料)
<フライアッシュ>
フライアッシュには、JIS A6201の「コンクリート用フライアッシュ」に規定のII種を用いた。
このフライアッシュについて、土壌汚染に係る環境基準(平成3年8月23日、環境庁告示第46号)に従って、各項目の溶出量の測定を行い、その結果を表2〜3に示す。
なお、表2〜3中、「基準値」とは、環境基準(平成3年8月23日、環境庁告示第46号)に定められた基準値である。
<有機汚泥>
有機汚泥には、染色工場(小松精練株式会社、美川工場)の活性汚泥法による排水処理設備から凝集・脱水工程を経て排出された活性汚泥を用いた。この活性汚泥の有機物含有量(対固形分)は、活性汚泥の質量全体に対して83質量%であった。含水率は活性汚泥の質量全体に対して85質量%であった。
<粘土類>
粘度類(粘土)には、蛙目粘土(岐阜県産)を用いた。
<発泡剤>
発泡剤には、ダグタイル鋳鉄スラグを用いた。このダグタイル鋳鉄スラグは、SiO
2、Al
2O
3、CaO、Fe
2O
3、FeO、MgO、MnO、K
2O、Na
2Oを主成分とするダクタイル鋳鉄スラグである。
【0064】
(測定方法)
<見掛け密度>
サンプルの外形寸法をノギスにより測定し体積を求めた。同サンプルを絶乾状態にし、電子天秤にて質量を測定(絶乾状態質量)し、下記(3)式により見掛け密度を算出した。なお、サンプル(N)数をN=10とし、その平均値を求めた。
見掛け密度(g/cm
3)=[絶乾状態質量(g)]/[体積(cm
3)] ・・・(3)
【0065】
<飽和含水率>
各例の多孔質セラミックス焼成体を水に60分間浸漬し、水中から取り出し、表面の水滴を除去する程度に布に接触させた後、直ちに質量を測定(飽和含水状態質量)し、下記(4)式により飽和含水率を求めた。飽和含水率の測定を試料数(N)=10について行い、平均値を求めた。なお、多孔質セラミックス焼成体が板状物の場合には、表面を上(切断面を側面)として水から試料を傾けずに取り出し、質量を測定した(試料から水が流れ出すことを防ぐため。)。
飽和和含水率(質量%)=[(飽和含水状態質量−絶乾状態質量)/絶乾状態質量]×100・・・(4)
【0066】
<曲げ強度>
万能材料試験機AGS−500D(株式会社島津製作所製)を用い、JIS R5201に準拠して、曲げ強度を測定した(三点曲げ強度試験法、スパン間隔5cm)。なお、サンプル(N)数をN=10とし、その平均値を求めた。単位をN/mm
2とした。
【0067】
<気孔の連通の有無の確認>
多孔質セラミックス焼成体中の気孔の連通の有無の確認は、得られた多孔質セラミックス焼成体を水に浸漬し、十分に吸水させた後に切断し、その断面を観察することで確認した。
多孔質セラミックス焼成体の内部に、満遍なく水分が分布・保水されている場合、気孔が連通されていると判断した(表中、「○」と記載)。多孔質セラミックス焼成体の内部に水分が行き渡っていない場合は、個々の気孔が独立しており、気孔が連通されていないか又は気孔の連通が不十分であると判断した(表中、「×」と記載)。
【0068】
(実施例1〜3、比較例1)
表1の混合物の組成に従い、各原料をミックスマラー(東新工業株式会社製)で混合して混合物を得た。円筒押出式成形機(株式会社アースエンジニアリング製)を用い、得られた混合物を円筒状に押出した。円筒状の混合物を長さ1mに切断し、展開、圧延した後、熱風乾燥(180℃、0.5時間)して、含水率1質量%以下の板状の成形体を得た。
次に、連続式焼結炉として、ローラーハースキルン(株式会社アースエンジニアリング製)を用いて、板状の成形体を焼成した。焼成工程での焼成時間は65分、最高温度は1050℃にて焼成し(焼成工程)、長さ1m×幅1m×厚さ4cmの板状の多孔質セラミックス焼成体を得た。得られた多孔質セラミックス焼成体について、見掛け密度、飽和含水率及び曲げ強度の測定、連通孔の有無の確認を行い、その結果を表1に示す。
実施例1で得られた多孔質セラミックス焼成体について、土壌汚染に係る環境基準(平成3年8月23日、環境庁告示第46号)に従って、各項目の溶出量の測定を行い、その結果を表2〜3に示す。なお、実施例1においては、原料のフライアッシュから検出された項目(六価クロム、砒素、ふっ素、ほう素、セレン)について、測定した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
表1に示すように、本実施形態を適用した実施例1〜3の曲げ強度は、5N/mm
2以上であった。実施例1〜3の曲げ強度は、フライアッシュを含まない混合物を焼成した比較例1の曲げ強度に比べ、それぞれ6.7倍、2.5倍及び1.8倍であった。
加えて、実施例1〜3は、いずれも気孔が連通しており、透水性、保水性等の諸特性を備えると考えられる。
表2〜3に示すように、実施例1は、重金属を含むフライアッシュが用いられているにもかかわらず、重金属の溶出量が土壌の汚染に係る環境基準(平成3年8月23日、環境庁告示第46号)を満たしていた。セレンは検出されてはいるが、0.002mg/Lであり、基準値0.01mg/L以下を大幅に下回っていた。
これらの結果から、本実施形態を適用することで、多孔質セラミックス焼成体の諸特性を維持しつつ、強度の向上を図れることが判った。
【0073】
(実施例4)
フライアッシュ20質量%と、有機汚泥20質量%と、粘土類20質量%と、ダグタイル鋳鉄スラグ40質量%とをミックスマラー(東新工業株式会社製)で混合して混合物を得た。
円盤型ダイス水平押出式成形機(株式会社アースエンジニアリング製)を用いて、混合物を直径1.5cmの中実円柱状に押出し、長さ1〜5cmに切断し円柱状の成形体を得た。円柱状の成形体を熱風乾燥(180℃、0.5時間)して、含水率1質量%以下とした。
次に、連続式焼結炉として、ローラーハースキルン(株式会社アースエンジニアリング製)を用いて円柱状の成形体を焼成した。焼成工程での焼成時間は65分、最高温度は1050℃にて焼成し、長径が1cm〜10cmの粒状の多孔質セラミックス焼成体を得た。次に、これらを粉砕し、篩により粒子径が5mm超10mm以下、1mm超5mm以下、1mm以下に分け、種々の大きさの粒状の多孔質セラミックス焼成体を得た。この中で、粒子径1mm超5mm以下の多孔質セラミックス焼成体について、かさ密度及び飽和含水率の測定、連通の有無の確認をおこなったところ、かさ密度0.50g/cm
3、飽和含水率43質量%、連通「有」であった。
これらの結果から、本実施形態を適用することで、粒状物でも多孔質セラミックス焼成体に必要な諸特性を備えることが判った。
なお、かさ密度は、「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載の三相分布・容積重(実容積法)に準じ三相分布の測定を行い、その測定中に測定される乾土重量(g)より求められる容積重(g/cm
3)をかさ密度とした。