(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水とガスとの混合流体を汲み上げ、汲み上げた混合流体を所定気圧下で気液平衡状態の水とガスとに分離させ、分離した水の量と水質を測定するとともに、分離したガスの分析測定を行い、これらの測定データを記録する地中の気液混合流体観測装置に用いるガス精製・排出ユニットであって、
夫々の内部が気密性を保持するとともに、ガス移送バルブ機構で連結された第1及び第2の乾燥容器と、
気密性を保持しながら、前記混合流体から分離したガスを拡散させて、前記第1の乾燥容器内部に導入するガス導入バルブ機構と、
スターリングエンジンを用いた冷却機構を備え、前記第1の乾燥容器内部に導入された前記ガスに含まれる水蒸気を露点以下の温度に下げて該ガスから分離させるガス冷却部と、
気密性を保持しながら、前記第1の乾燥容器内部の水蒸気が分離された前記ガスを拡散させて、ガス分析測定手段が備えられた前記第2の乾燥容器内部に移送する前記ガス移送バルブ機構と、
高温空気を生成する高温空気生成部と、
前記高温空気生成部が生成した高温空気を前記第1の乾燥容器内部、外部に通流させて前記第1の乾燥容器内部の液化又は固化した水蒸気を排出する水蒸気排出バルブ機構と、
前記第2の乾燥容器内部を真空にする真空化ポンプバルブ機構と、
前記ガス導入バルブ機構、前記ガス移送バルブ機構、前記水蒸気排出バルブ機構、前記真空化ポンプバルブ機構の作動を制御するポンプバルブ制御手段とを備えたことを特徴とする地中の気液混合流体観測装置用ガス精製・排出ユニット。
前記ポンプバルブ制御手段は、前記水蒸気排出バルブ機構が水蒸気を排出している間に、前記真空化ポンプバルブ機構、前記第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構を作動させることを特徴とする請求項2に記載の地中の気液混合流体観測装置用ガス精製・排出ユニット。
【背景技術】
【0002】
従来から、地殻変動特に地震予知に関する研究は各方面において盛んに行われているが、地震予知の難しさは未だ克服されていないのが実情である。
【0003】
ところで、これらの研究成果の一つとして、観測井から採取した各種のガス及びイオン(水素ガス,ヘリウムガス,一酸化炭素,二酸化炭素,水素イオン及び炭酸水素イオンなど)の観測値が震源の浅い地震に対して応答した場合、それらの発生量が地震性破壊に伴う破壊表面積および破壊に伴う間隙率の増加に関係あることが分っている。また、近年、温泉水等の化学組成及びガス組成の変動も地震との関連が明らかにされてきた。
【0004】
本件出願人は、この研究成果に基づいて、地震予知等のために、地下水及び地下ガスの継続的な監視を行うことを可能にする装置として、次の特許文献1に記載の地中の気液混合流体の観測装置を提案している。
【0005】
図3は特許文献1に記載の地中の気液混合流体観測装置の全体構成例を示す概略図である。
特許文献1に記載の地中の気液混合流体観測装置は、水とガスとの混合流体を汲み上げる揚水手段(採取管P1及びチュービングポンプCP)と、汲み上げられた水とガスとを分離する気液分離手段と、気液分離手段により分離された水の量と水質を測定する水量及び水質測定手段(流量計FM及び水質測定機WM)と、気液分離手段により分離されたガスの分析測定手段(質量分析計QMS)と、水量及び水質測定手段と分析測定手段による測定データを記録する記録手段(記録装置RC1、RC2、RC3)とを備えている。
気液分離手段は、揚水手段の吐出側に接続されていて赤外線透過材料よりなる分離筒本体Bと、分離筒本体Bに接続されていて分離した水を水量及び水質測定手段に輸送するための水輸送管P2と、分離筒本体Bに接続されていて分離したガスを分析測定手段に輸送するためのガス輸送管P3と、ガス輸送管P3に設けられた電磁弁EVと、所定位置で分離筒本体Bを横切るように赤外光を射出する赤外光射出装置Eと、赤外光射出装置Eから射出された赤外光を受光する赤外光受光装置Rとを有するガス水分離筒CYとを含み、分離筒本体B内の水位が所定位置よりも上がり、赤外光が遮断されたときに電磁弁EVを閉弁し、所定位置よりも水位が下がり赤外光の遮断が解除されたときに電磁弁を開弁させるように構成されている。
図3中、Hは掘削孔内に打ち込まれたスリット管、PDMは差圧計、CTはコールドトラップ、PMは差圧計である。
【0006】
そして、特許文献1に記載の地中の気液混合流体観測装置では、装置の作動開始により、採取管P1を介してチュービングポンプCPにより汲み上げられたスリット管H内の水とガスの混合流体は、ガス水分離筒CY内部でガスと水とに分離しながら、水位が上昇する。ガス水分離筒CY内部の水位が所定水位に達すると、赤外光射出装置Eから赤外光受光装置Rへ達していた赤外光が遮断されて、電磁弁EVが閉弁する。そして、水は水輸送管P2により流量計FMを経て水質測定機WMへ、ガスはガス水分離筒CY上部と電磁弁EVに至るまでのガス輸送管P3内に溜まって行く。ガス水分離筒CY上部のガス圧が上昇し、その差圧が差圧計PDMで計測され、予め設定されている所定圧に達すると、差圧計PDMから信号が出力され、その出力信号に基づいて電磁弁EVが開弁する。ガス水分離筒CY上部に貯留されていたガスは、ガス輸送管P3によりコールドトラップCTを経て質量分析計QMSへ送られ、周知の方法で組成が分析されて、その結果は記録装置RC3に記録される。また、流量計FMで計測された水量は記録装置RC1に、水質測定機WMにより計測された値は周知の方法で記録装置RC2にそれぞれ記録される。
また、電磁弁EVが開弁すると、ガス水分離筒CY上部のガス圧が徐々に減少し、ガス水分離筒CY内部の水位が徐々に上昇する。ガス水分離筒CY内部の水位が所定水位に達すると、赤外光射出装置Eから赤外光受光装置Rへ達していた赤外光が遮断されて、電磁弁EVが閉弁する。
このようにして作動の一サイクルが終了し、再び上記の作動が開始されて、このサイクルが繰り返される。
【0007】
このため、特許文献1に記載の装置によれば、長期に亘る地下ガス成分及び地下水の水質の監視が可能となり、得られた記録データから、研究成果を参照しながら、地震等の地殻変動を予知したり、温泉の変化等を適確に把握したりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例の説明に先立ち、本発明を想到するに至った経緯及び本発明の作用効果について説明する。
本件出願人は、特許文献1に記載の地中の気液混合流体観測装置を製作し、現場での試験作動を繰り返した。その結果、揚水手段で混合流体を汲み上げ、汲み上げられた混合流体を気液分離手段で水とガスとに分離させた後の構成に関し、次のような改善すべき課題があることが判明した。
【0018】
特許文献1に記載の装置では、気液分離手段により混合流体から分離されたガスが、ガス輸送管P3によりコールドトラップCTを経由して質量分析計QMSに送り込まれる構成となっている。
【0019】
混合流体から分離したガスには水蒸気が含まれており、そのままガスを分析測定すると、水蒸気がノイズ成分となってガスの分析精度が悪くなる。高精度なガスの分析を行うためには、質量分析計に送り込む前に混合流体から分離したガスから水蒸気を除去する必要がある。
コールドトラップは、内部を通過するガスに含まれる水蒸気を、冷却し凍結等することによって、ガスから分離させる装置である。コールドトラップとしては、例えば、液体窒素等の冷却媒体を用いたものや、ペルティエ素子を用いて電子冷却するものが知られている。
【0020】
ところで、コールドトラップは、ガスから分離させた氷等の物質を内部に溜め込む構成となっているため、所定時間経過後には、内部に溜め込んだ氷をヒータで加熱して除去する等、コールドトラップを再生するためのメンテナンス処理が必要となる。
一般に、コールドトラップを再生するためのメンテナンス処理は、コールドトラップをガスの配管から取り外して行われる。
【0021】
しかし、メンテナンスの際に、コールドトラップをガスの配管から取り外したのでは、作業が煩雑化する上、メンテナンス作業が終了したコールドトラップをガスの配管に取り付け終えるまでに多くの期間を要する。
しかも、液体窒素等の冷却媒体を用いたコールドトラップでは、ガスに含まれる水蒸気を冷却・凍結してガスから分離させる処理を長期間行うことができない。
このため、液体窒素等の冷却媒体を用いたコールドトラップを特許文献1に記載の装置に用いた場合、装置の継続的な無人運転を行うことができない。
また、コールドトラップの冷却媒体として液体窒素を用いるとコスト高となる上、取り扱いが不便で使用上の安全性に支障を来たし易い。しかも、コールドトラップの再生処理において、氷を除去するまでに長時間を要する。
【0022】
また、ペルティエ素子を用いて電子冷却するコールドトラップでは、ペルティエ素子自体の放熱量が大きく冷却のための電力効率が悪い。本件出願人がペルティエ素子を用いたコールドトラップを地中の気液混合流体観測装置に設けて作動試験をしたところ、排熱処理が難しく、吸熱部で十分な低温が供給できず、ガスに含まれる水蒸気を凍結するための処理に困難を来たした。
また、コールドトラップの再生処理においてペルティエ素子が高温に晒されることで、素子自体が破損や焼損し、或いは早期に劣化して素子の寿命が短くなるおそれがある。
【0023】
また、観測装置の配管内部に水蒸気が残存していると、配管内部に錆が生じて装置の寿命が短くなる。装置の寿命を延ばすためには、配管内部に残存する水蒸気を排出することが必要となる。
加えて、ガスの分析精度をより一層高精度なものにするには、観測装置の配管全域における水蒸気以外の不純物も除去することが望ましい。
【0024】
地中の気液混合流体観測装置を用いた観測は、長期間継続的に行うことが求められる。このため、観測装置を継続的に無人運転させ続けることができ、しかも、上述したようなメンテナンス作業を行う際も、極力人手をかけずに簡単に切り替えることができるようにすることが望まれる。
【0025】
本件出願人は、上記課題を解消すべく、試行錯誤を重ねた結果、本発明の地中の気液混合流体観測装置用ガス精製・排出ユニットを想到するに至った。
本発明の地中の気液混合流体観測装置用精製・排出ユニットは、水とガスとの混合流体を汲み上げ、汲み上げた混合流体を所定気圧下で気液平衡状態の水とガスとに分離させ、分離した水の量と水質を測定するとともに、分離したガスの分析測定を行い、これらの測定データを記録する地中の気液混合流体観測装置に用いるガス精製・排出ユニットであって、夫々の内部が気密性を保持するとともに、
ガス移送バルブ機構で連結された第1及び第2の乾燥容器と、気密性を保持しながら、前記混合流体から分離したガスを拡散させて、前記第1の乾燥容器内部に導入するガス導入バルブ機構と、スターリングエンジンを用いた冷却機構を備え、前記第1の乾燥容器内部に導入された前記ガスに含まれる水蒸気を露点以下の温度に下げて該ガスから分離させるガス冷却部と、気密性を保持しながら、前記第1の乾燥容器内部の水蒸気が分離された前記ガスを拡散させて、ガス分析測定手段が備えられた前記第2の乾燥容器内部に移送する
前記ガス移送バルブ機構と、高温空気を生成する高温空気生成部と、前記高温空気生成部が生成した高温空気を
前記第1の乾燥容器内部、外部に通流させて前記第1の乾燥容器内部の液化又は固化した水蒸気を排出する水蒸気排出バルブ機構と、前記第2の乾燥容器内部を真空にする真空化ポンプバルブ機構と、前記ガス導入バルブ機構、前記ガス移送バルブ機構、前記水蒸気排出バルブ機構、前記真空化ポンプバルブ機構の作動を制御するポンプバルブ制御手段とを備える。
【0026】
スターリングエンジンは、密閉された容器内の気体を外部から加熱・冷却し、膨張・収縮させることによって、仕事のエネルギーを得る外燃機関である。スターリグエンジンを用いた冷却機構は、スターリングエンジンにおけるエンジン本体を他のエネルギー源を用いて駆動することで、冷却側を冷却器として用いたものである。
しかるに、本発明のガス精製・排出ユニットのように、スターリングエンジンを用いた冷却機構を備え、第1の乾燥容器内部に導入されたガスに含まれる水蒸気を露点以下の温度に下げて該ガスから分離させるガス冷却部を備えれば、液体窒素やペルティエ素子を用いたコールドトラップを設けずに済む。その結果、液体窒素を用いたコールドトラップを設けた場合と比べて、加熱して氷を除去するまでに時間や消費電力が少なくて済む。しかも、液体窒素と比べてコストが抑えられ、取り扱いやすく作業上の安全性も確保できる。また、ペルティエ素子を用いて電子冷却するコールドトラップを設けた場合のような素子自体が破損や焼損することがない。さらに、スターリングエンジンを用いた冷却機構を備えたガス冷却部によれば、液体窒素等を用いたコールドトラップとは異なり、作動のON・OFFを繰り返すことによって、ガスに含まれる水蒸気の分離を長期間継続して行うことができるため、観測装置の継続的な無人運転を行うことができる。しかも、スターリングエンジンを用いた冷却機構は、小型で、十分に低温を供給できる。
【0027】
また、本発明のガス精製・排出ユニットのように、上記のガス冷却部とともに、夫々の内部が気密性を保持するとともに、
ガス移送バルブ機構で連結された第1及び第2の乾燥容器と、気密性を保持しながら、混合流体から分離したガスを拡散させて、第1の乾燥容器内部に導入するガス導入バルブ機構と、気密性を保持しながら、第1の乾燥容器内部の水蒸気が分離されたガスを拡散させて、ガス分析測定手段が備えられた第2の乾燥容器内部に移送するガス移送バルブ機構と、高温空気を生成する高温空気生成部と、高温空気生成部が生成した高温空気を
第1の乾燥容器内部、外部に通流させて第1の乾燥容器内部の液化又は固化した水蒸気を排出する水蒸気排出バルブ機構と、ガス導入バルブ機構、ガス移送バルブ機構、水蒸気排出バルブ機構の作動を制御するポンプバルブ制御手段を備えれば、混合流体から分離したガスの第1の乾燥容器内部への導入からガス分析測定手段が備えられた第2の乾燥容器2内部への移送までのガスの配管内にポンプを設けることなく、バルブ機構に備わるバルブの開閉制御のみで、混合流体から分離したガスの第1の乾燥容器内部への導入〜第1の乾燥容器内部の水蒸気が分離されたガスのガス分析測定手段が備えられた第2の乾燥容器内部への移送と、液化又は固化した第1の乾燥容器内部の水蒸気の排出を行うことができる。このため、ポンプ等から入り込む空気を起因とした、ガス分析測定手段で測定したときのガスに含まれるバックグラウンドノイズ成分がなく、高精度にガスを分析できる。また、配管内部に残存する水蒸気が排出されることにより、装置の寿命を延ばすことができる。しかも、第1の乾燥容器を再生するためのメンテナンス作業の際に、ガス冷却部を取り外さずに済み、メンテナンス作業も極力無人化状態で運転できるようになる。
【0028】
また、本発明のガス精製・排出ユニットのように、第2の乾燥容器内部を真空にする真空化ポンプバルブ機構を備えれば、第2の乾燥容器内部を真空にすることで、第1の乾燥容器から水蒸気を除去されて送られてくるガスに対し、バックグラウンドノイズ成分を混在させることなくガス分析測定手段で測定させることができ、より高精度にガスの分析ができるようになる。
【0029】
また、本発明のガス精製・排出ユニットにおいては、さらに、気密性を保持しながら、前記混合流体から分離し拡散したガスのうち前記第1の乾燥容器内部に導入されずに前記ガス導入バルブ機構が備えられている配管内部に残存する余剰ガスを排出する余剰ガス排出ポンプバルブ機構と、気密性を保持しながら、前記第1の乾燥容器内部から拡散して移送されたガスのうち前記第2の乾燥容器内部に導入されずに前記ガス移送バルブ機構が備えられている配管内部に残存するガスを排出する第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構と、気密性を保持しながら、前記ガス導入バルブ機構と前記ガス移送バルブ機構との間の配管内部及び前記第1の乾燥容器内部に残存するガスを排出する第2の残存ガス排出ポンプバルブ機構を備え、前記ポンプバルブ制御手段が、さらに、前記余剰ガス排出ポンプバルブ機構、前記第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構、前記第2の残存ガス排出ポンプバルブ機構の作動を制御するのが好ましい。
このようにすれば、ガスの分析精度をより一層高精度なものにするための、観測装置の配管全域における水蒸気以外の不純物の除去も、観測装置の継続的な無人運転により自動的に行うことができる。
【0030】
また、本発明のガス精製・排出ユニットにおいては、前記ポンプバルブ制御手段は、前記水蒸気排出バルブ機構が水蒸気を排出している間に、前記真空化ポンプバルブ機構、前記第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構を作動させるようにしてもよい。
【0031】
また、本発明のガス精製・排出ユニットにおいては、さらに、排気用のガスを一時的に貯留するための第3の乾燥容器を有し、前記真空化ポンプバルブ機構が、前記第2の乾燥容器内部に貯留されたガスの一部を前記第3の乾燥容器内部に一時的に導く一時的貯留バルブ機構と、前記第3の乾燥容器内部に一時的に貯留されたガスを排出する第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構とからなる、ガス分割排出ポンプバルブ機構と、前記第2の乾燥容器内部に貯留されたガスを排出する第2の貯留ガス排出ポンプバルブ機構を有し、前記ポンプバルブ制御手段が、さらに、前記一時的貯留バルブ機構と、前記第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構の作動を時分割で切り換え、且つ、前記第2の乾燥容器内部に貯留されたガスが所定量以下に到達するまで、該作動の時分割切り換えを繰り返すように制御するとともに、前記第2の乾燥容器内部に貯留されたガスが所定量以下に到達したときに前記第2の貯留ガス排出ポンプバルブ機構を作動させるように制御するのが好ましい。
【0032】
真空化ポンプバルブ機構に備わる第2の乾燥容器内部を真空化するためのポンプは、ターボ分子ポンプで構成される。
ターボ分子ポンプは、高速回転するタービン翼と静止した固定翼とを多段に組み合わせて構成され、タービン翼を高速回転させて気体分子を弾き飛ばすことによりガスを排気することで、容器を真空化することを可能にしたポンプである。しかるに、ターボ分子ポンプは、効率的に排気しないとターボ分子ポンプの下流が高密度になって熱変形が生じ、また、圧力が急激に変化すると破損するおそれがある。このため、一般にターボ分子ポンプを用いる場合には、排気を補助するための補助ポンプとしてロータリーポンプが用いられる。
しかし、ターボ分子ポンプは、動作圧力に制限があり、第2の乾燥容器内部に貯留するガスの濃度が高い場合等、ガスの抵抗が大きいと負荷が大きくなりすぎタービン翼が高速で作動しない。
【0033】
しかるに、本発明のように、さらに、排気用のガスを一時的に貯留するための第3の乾燥容器を有し、真空化ポンプバルブ機構が、第2の乾燥容器内部に貯留されたガスの一部を第3の乾燥容器内部に導く一時貯留バルブ機構と、第3の乾燥容器内部に一時的に貯留されたガスを排出する第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構とからなる、ガス分割排出ポンプバルブ機構を有し、ポンプバルブ制御手段が、さらに、一時貯留バルブ機構と、第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構の作動を時分割で切り換え、且つ、第2の乾燥容器内部に貯留されたガスが所定量以下に到達するまで、該作動の時分割切り換えを繰り返すように制御するとともに、第2の乾燥容器内部に貯留されたガスが所定量以下に到達したときに第2の貯留ガス排出ポンプバルブ機構を作動させるように制御するようにすれば、第2の乾燥容器内部の貯留されたガスを少しずつ排出することができ、その少しずつのガスの排出を繰り返すことによって、急激な圧力の変化を抑えながら第2の乾燥容器内部のガスの濃度を低減することができ、ガスの濃度が十分に低減化された後に、第2の乾燥容器内部をターボ分子ポンプの作動により真空化させることができ、ターボ分子ポンプを損傷させずに済む。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものではない。
【0034】
実施形態
図1は本発明の一実施形態にかかる地中の気液混合流体観測装置用ガス精製・排出ユニットの構成を示す説明図、
図2は
図1のガス精製・排出ユニットの要部の配管構成を示す説明図である。
本実施形態のガス精製・排出ユニットは、第1乾燥容器1と、第2乾燥容器2と、ガス導入バルブ機構3と、ガス冷却部4と、ガス移送バルブ機構5と、高温空気生成部6と、水蒸気排出バルブ機構7と、真空化ポンプバルブ機構8と、ポンプバルブ制御手段9とを備えている。なお、
図1中、L1はガス導入ライン、L2はガス冷却ライン、L3はガス測定ライン、L4は排気ライン、L5はガス加熱ライン、V00〜V12は電磁バルブ、TMPはターボ分子ポンプ、RP1、RP2はロータリーポンプ、PG1、PG2は圧力計、QMSは四重極質量分析計、13は排気用のガスを一時的に貯留するための第3の乾燥容器、14は高温空気を貯留する容器、15は気液分離筒である。
【0035】
第1の乾燥容器1、第2の乾燥容器2は、夫々、内部が気密性を保持するように構成されている。また、第1の乾燥容器1と第2の乾燥容器2は、電磁バルブV09、V06を介して連結されている。
ガス導入バルブ機構3は、電磁バルブV12、V00、V02を有してなり、これらの電磁バルブの開閉により、気密性を保持しながら、気液分離筒15内部で混合流体から分離したガスを拡散させて、第1の乾燥容器1内部に導入するように構成されている。
ガス冷却部4は、スターリングエンジンを用いた冷却機構を備え、第1の乾燥容器1内部に導入されたガスに含まれる水蒸気を、露点以下の温度に下げることによって液化又は固化して、ガスから分離させるように構成されている。
ガス移送バルブ機構5は、電磁バルブV09、V06を有してなり、これらの電磁バルブの開閉により、気密性を保持しながら、第1の乾燥容器1内部の水蒸気が分離されたガスを拡散させて、ガス分析測定手段である四重極質量分析計QMSが備えられた第2の乾燥容器2内部に移送するように構成されている。
高温空気生成部6は、例えば電気ヒータ等の加熱手段を用いて、容器14内部に導入された空気を加熱することで高温の空気を生成するように構成されている。
水蒸気排出バルブ機構7は、電磁バルブV10、V08、V07、V11を有してなり、これらの電磁バルブの開弁により、高温空気生成部6が生成した高温空気を対流させ、さらにはロータリーポンプRP2が牽引してガス冷却ラインL2に導き、第1の乾燥容器1内部の液化又は固化した水蒸気を蒸発させて排出するように構成されている。
真空化ポンプバルブ機構8は、電磁バルブV03、V04、V05、V06と、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を有してなり、これらの電磁バルブの開閉及びポンプの作動により、第2の乾燥容器2内部を真空にするように構成されている。
ポンプバルブ制御手段9は、ガス導入バルブ機構3、ガス移送バルブ機構5、水蒸気排出バルブ機構7、真空化ポンプバルブ機構8の作動を制御するソフトウェアを備えた演算処理装置で構成されている。なお、便宜上、ポンプバルブ制御手段9は図示を省略してある。
【0036】
また、本実施形態のガス分離・生成ユニットは、さらに、余剰ガス排出ポンプバルブ機構10と、第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構11と、第2の残存ガス排出ポンプバルブ機構12を備えており、ポンプバルブ制御手段9は、これらのガス排出ポンプバルブ機構10〜12の作動も制御するように構成されている。
余剰ガス排出ポンプバルブ機構10は、電磁バルブV01、V04と、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を有してなり、これらの電磁バルブの開弁及びポンプの作動により、気密性を保持しながら、混合流体から分離し拡散したガスのうち第1の乾燥容器1内部に導入されずにガス導入バルブ機構3が備えられている配管内部に残存する余剰ガスを排出するように構成されている。
第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構11は、電磁バルブV05、V04と、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を有してなり、これらの電磁バルブの開弁及びポンプの作動により、気密性を保持しながら、第1の乾燥容器1内部から拡散して移送されたガスのうち第2の乾燥容器2内部に導入されずにガス移送バルブ機構5が備えられている配管内部に残存するガスを排出するように構成されている。
第2の残存ガス排出ポンプバルブ機構12は、電磁バルブV09、V05、V04と、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を有してなり、これらの電磁バルブの開弁及びポンプの作動により、気密性を保持しながら、ガス導入バルブ機構3とガス移送バルブ機構5との間の配管内部及び第1の乾燥容器1内部に残存するガスを排出するように構成されている。
【0037】
また、
図1のガス分離・生成ユニットでは、真空化ポンプバルブ機構8は、一時的貯留バルブ機構と第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構とからなる、ガス分割排出ポンプバルブ機構と、第2の貯留ガス排出ポンプバルブ機構を有している。なお、便宜上、それらの機構の符号表示は省略する。
一時的貯留バルブ機構は、電磁バルブV05を有してなり、電磁バルブV05の開閉により、第2の乾燥容器2内部に貯留されたガスの一部を第3の乾燥容器13内部に一時的に導くように構成されている。
第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構は、電磁バルブV04と、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を有してなり、電磁バルブV04の開閉及びポンプの作動により、第3の乾燥容器13内部に一時的に貯留されたガスを排出するように構成されている。
第2の貯留ガス排出ポンプバルブ機構は、電磁バルブV03と、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を有してなり、第2の乾燥容器2内部に貯留されたガスを排出するように構成されている。
そして、ポンプバルブ制御手段9は、さらに、一時的貯留バルブ機構と、第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構の作動を時分割で切り換え、且つ、第2の乾燥容器2内部に貯留されたガスが所定量以下に到達するまで、該作動の時分割切り換えを繰り返すように制御するとともに、第2の乾燥容器2内部に貯留されたガスが所定量以下に到達したときに第2の貯留ガス排出ポンプバルブ機構を作動させるように制御するように構成されている。
【0038】
さらに、電磁バルブ12は、気液分離筒15内部で分離したガスを、ガス導入ラインL1の配管内に導入する時に開弁するとともに、気液分離筒15内部に導入された水が、所定の水位を超えた場合に自動的に閉鎖して、ガス導入ラインL1の配管内への水の浸入を防ぐように、ポンプバルブ制御手段9により制御されている。
また、電磁バルブV11は、気液分離筒15内部で分離したガスをガス導入ラインL1の配管内に導入するときに閉弁するように、ポンプバルブ制御手段9により制御されている。
また、気液分離筒15は、例えば、
図2に示すように、耐水電磁バルブの開弁により内部に地下水を導入して、所定気圧下で気液平衡状態の水とガスとに分離させ、水位センサ(第1及び第2の赤外線センサ)が計測した水位に基づき、水を外部に排出するとともに、電磁バルブV12の開閉作動を介してガス導入ラインL1にガスを導入するように構成されている。なお、気液分離筒15は、
図2の構成に限定されるものではなく、地下水を汲み上げて所定気圧下で気液平衡状態の水とガスとに分離してガス導入することができれば、どのような構成であってもよい。
【0039】
このように構成された本実施形態のガス精製・排出ユニットでは、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV12、V00が開弁すると、気液分離筒15に溜まっていたガスが、脱水準備領域(ガス導入ラインL1における電磁バルブV00と電磁バルブV02の間の配管部分)に取り込まれる。脱水準備領域に取り込まれたガスが所定の圧力に到達したことを圧力計PG1が計測したとき、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV00が閉弁し、電磁バルブV02が開弁する。電磁バルブV02が開弁すると、脱水準備領域のガスが拡散してガス冷却ラインL2に移動し、気密性を保持しながら、第1の乾燥容器1内部に導入される。その後、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV02はすぐに閉弁する。次いで、ガス冷却部4のスターリングエンジンを用いた冷却機構の作動がONとなり、第1の乾燥容器1内部に導入されたガスは、ガス冷却部4により冷却され、ガスに含まれる水蒸気が、露点以下の温度に下げられて液化又は固化し、ガスから分離して第1の乾燥容器1の内壁に付着する。また、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV02の閉弁後に電磁バルブV01が開弁する。そして、ガス冷却ラインL2に導入されずに脱水準備領域に残存する余剰ガスは、電磁バルブV01を通り、排気ラインL4の第3の乾燥容器13に一時的に貯留される。また、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV04が開弁し、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1が作動し、第3の乾燥容器13の余剰ガスは排出される。
排気ラインL4を経由した余剰ガスの排出が終了したとき、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV01、V04が閉弁する。
【0040】
ガス冷却ラインL2でのガスの冷却が終了後、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV09が開弁する。すると、第1の乾燥容器1内部の、冷却されて水蒸気が分離されたガスは、拡散して電磁バルブV09を通り、ガス測定ラインL3における電磁バルブV06と電磁バルブV09の間に移送される。この間、圧力計PG2が移送されたガスの圧力を計測する。その後、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV09が閉弁し、ガス冷却部4のスターリングエンジンを用いた冷却機構の作動がOFFとなる。
その後、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV06が開弁し、ガスが拡散して電磁バルブV06を通り、第2の乾燥容器2内部に貯留され、四重極質量分析計QMSを介して組成が分析され、分析結果が図示しない記録装置に記録される。
【0041】
ガスの分析測定が終了後、ガス測定ラインL3内のガスを排出する。詳しくは、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV06が閉弁するとともに、電磁バルブV03、V04、V05が開弁する。これにより、第2の乾燥容器2内部に貯留されていたガスは、電磁バルブV03、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を経て排出される。また、ガス測定ラインL3におけるバルブV06とバルブV09の間に残存するガスは、電磁バルブV05、第3の乾燥容器13、電磁バルブV04、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRPを経て排出される。
【0042】
なお、第2の乾燥容器2の容量が大きい場合は、ガスの分析測定が終了後、ポンプバルブ制御手段9の制御により、一旦、電磁バルブV05が開弁して第2の乾燥容器2に貯留されているガスの一部を第3の乾燥容器13内部に移す。第3の乾燥容器13内部への一部のガスの移送直後に、ポンプバルブ制御手段9の制御により、電磁バルブV05が閉弁、電磁バルブV04が開弁し、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を経て第3の乾燥容器13内部に貯留されているガスを排出する。第3の乾燥容器13内部に貯留されているガスの排出直後に、ポンプバルブ制御手段9の制御により、電磁バルブV04が閉弁する。このポンプバルブ制御手段9による、電磁バルブV05の開弁から電磁バルブV04の閉弁までの電磁バルブV05、V04の開閉の時分割切り替え制御は、瞬時に行われ、第2の乾燥容器2内部に貯留されているガスは、少量ずつ分割して排出される。また、ポンプバルブ制御手段9の電磁バルブV05、V04の開閉の時分割切り替え制御による、第2の乾燥容器2内部に貯留されているガスの分割排出処理は、第2の乾燥容器2内部に貯留されているガスの量が所定量に減ったことを圧力計PG2が計測するまで繰り返される。
そして、第2の乾燥容器2内部に貯留されているガスの量が所定量となったことを圧力計PG2が計測したとき、ポンプバルブ制御手段9の制御により、電磁バルブV06が閉弁するとともに、電磁バルブV03が開弁する。これにより、第2の乾燥容器2内部に貯留されていたガスは、電磁バルブV06から第2の乾燥容器2までの配管内に残存するガスと共に、電磁バルブV03、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を経て排出される。また、このとき、ポンプバルブ制御手段9の制御により、電磁バルブV05、V04が開弁し、ガス測定ラインL3における電磁バルブV06と電磁バルブV09の間に残存するガスは、電磁バルブV05、第3の乾燥容器13、電磁バルブV04、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を経て排出される。
【0043】
次いで、ガス冷却ラインL2に残存しているガスを排出する。詳しくは、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブV09を開弁すると、ガス冷却ラインL2に残存するガスは、電磁バルブV09、V05、第3の乾燥容器13、電磁バルブV04、ターボ分子ポンプTMP、ロータリーポンプRP1を経て排出される。
ガス冷却ラインL2に残存しているガスの排出が完了後、ポンプバルブ制御手段9の制御により全ての電磁バルブを閉鎖する。
これにより、ガスの分析測定のための作動の一サイクルが終了し、再び上記の作動が開始されて、このサイクルが繰り返される。
【0044】
次に、ガス冷却部4により冷却されることにより第1の乾燥容器1内部で液化又は固化した水蒸気を除去するメンテナンス工程を説明する。なお、本実施形態のガス精製・排出ユニットでは、メンテナンス工程は、ガスの分析測定のための作動のサイクルとは別個に稼動させることもできるように構成されている。その場合、メンテナンス工程は、例えば、1〜数ヶ月に一回の頻度で稼動させるようにする。また、メンテナンス工程を、ガスの分析測定のための作動のサイクルにおいて稼動させる場合は、ガスの分析測定が終了後に稼動させる。
【0045】
まず、ポンプバルブ制御手段9の制御により電磁バルブ10が開弁し、外気を容器14内部に取り込む。次いで、高温空気生成部6の電気ヒータの作動がONし、容器14内部に取り込んだ空気を加熱して高温の空気を生成する。次いで、電磁バルブV08、V07、V11が開弁する。すると、生成された高温の空気が熱対流さらにはロータリーポンプRP2の牽引によって電磁バルブV08を通り、ガス冷却ラインL2の第1の乾燥容器1内部に流れ込み、電磁バルブV07、V11を経由して外部へ排出される。このとき、高温空気は第1の乾燥容器1内部において液化又は固化していた水蒸気を気化する。これにより、第1の乾燥容器1内部の水蒸気が除去される。
【0046】
本実施形態のガス精製・排出ユニットによれば、スターリングエンジンを用いた冷却機構を備え、第1の乾燥容器1内部に導入されたガスに含まれる水蒸気を露点以下の温度に下げて該ガスから分離させるガス冷却部4を備えたので、液体窒素やペルティエ素子を用いたコールドトラップを設けずに済む。その結果、液体窒素を用いたコールドトラップを設けた場合と比べて、加熱して氷を除去するまでに時間や消費電力が少なくて済む。しかも、液体窒素と比べてコストが抑えられ、取り扱いやすく作業上の安全性も確保できる。また、ペルティエ素子を用いて電子冷却するコールドトラップを設けた場合のような素子自体が破損や焼損することがない。さらに、スターリングエンジンを用いた冷却機構を備えたガス冷却部によれば、液体窒素等を用いたコールドトラップとは異なり、作動のON・OFFを繰り返すことによって、ガスに含まれる水蒸気の分離を長期間継続して行うことができるため、観測装置の継続的な無人運転を行うことができる。しかも、スターリングエンジンを用いた冷却機構は、小型で、十分に低温を供給できる。
【0047】
また、本実施形態のガス精製・排出ユニットによれば、ガス冷却部4とともに、夫々の内部が気密性を保持するとともに、
ガス移送バルブ機構5(電磁バルブV09
、V06
)で連結された第1及び第2の乾燥容器1
、2と、気密性を保持しながら、混合流体から分離したガスを拡散させて、第1の乾燥容器1内部に導入するガス導入バルブ機構3と、気密性を保持しながら、第1の乾燥容器1内部の水蒸気が分離されたガスを拡散させて、ガス分析測定手段(四重極質量分析計QMS)が備えられた第2の乾燥容器2内部に移送するガス移送バルブ機構5と、高温空気を生成する高温空気生成部6と、高温空気生成部6が生成した高温空気を
第1の乾燥容器1内部、外部に通流させて第1の乾燥容器1内部の液化又は固化した水蒸気を排出する水蒸気排出バルブ機構7と、ガス導入バルブ機構3、ガス移送バルブ機構5、水蒸気排出バルブ機構7の作動を制御するポンプバルブ制御手段9を備えたので、混合流体から分離したガスの第1の乾燥容器1内部への導入からガス分析測定手段が備えられた第2の乾燥容器2内部への移送までのガスの配管内にポンプを設けることなく、バルブ機構に備わるバルブの開閉制御のみで、混合流体から分離したガスの第1の乾燥容器1内部への導入〜第1の乾燥容器1内部の水蒸気が分離されたガスのガス分析測定手段が備えられた第2の乾燥容器2内部への移送と、液化又は固化した第1の乾燥容器1内部の水蒸気の排出を行うことができる。このため、ポンプ等から入り込む空気を起因とした、ガス分析測定手段で測定したときのガスに含まれるバックグラウンドノイズ成分がなく、高精度にガスを分析できる。しかも、第1の乾燥容器1を再生するためのメンテナンス作業の際に、ガス冷却部4を取り外さずに済み、メンテナンス作業も極力無人化状態で運転できるようになる。
【0048】
また、本実施形態のガス精製・排出ユニットによれば、第2の乾燥容器2内部を真空にする真空化ポンプバルブ機構8を備えたので、第2の乾燥容器2内部を真空にすることで、第1の乾燥容器1から水蒸気を除去されて送られてくるガスに対し、バックグラウンドノイズ成分を混在させることなくガス分析測定手段で測定させることができ、より高精度にガスの分析ができるようになる。
【0049】
また、本実施形態のガス精製・排出ユニットによれば、さらに、気密性を保持しながら、混合流体から分離し拡散したガスのうち第1の乾燥容器1内部に導入されずにガス導入バルブ機構3が備えられている配管内部に残存する余剰ガスを排出する余剰ガス排出ポンプバルブ機構10と、気密性を保持しながら、第1の乾燥容器1内部から拡散して移送されたガスのうち第2の乾燥容器2内部に導入されずにガス移送バルブ機構5が備えられている配管内部に残存するガスを排出する第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構11と、気密性を保持しながら、ガス導入バルブ機構3とガス移送バルブ機構5との間の配管内部及び第1の乾燥容器1内部に残存するガスを排出する第2の残存ガス排出ポンプバルブ機構12を備え、ポンプバルブ制御手段9が、さらに、余剰ガス排出ポンプバルブ機構10、第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構11、第2の残存ガス排出ポンプバルブ機構12の作動を制御するようにしたので、ガスの分析精度をより一層高精度なものにするための、観測装置の配管全域における水蒸気以外の不純物の除去も、観測装置の継続的な無人運転により自動的に行うことができる。
【0050】
また、本実施形態のガス精製・排出ユニットによれば、ポンプバルブ制御手段9が、水蒸気排出バルブ機構7が水蒸気を排出している間に、真空化ポンプバルブ機構8、第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構11を作動させるようにしたので、ガス測定ラインのメンテナンス作業を時間的に効率よく行うことができる。
【0051】
また、本実施形態のガス精製・排出ユニットによれば、さらに、排気用のガスを一時的に貯留するための第3の乾燥容器13を有し、真空化ポンプバルブ機構8が、第2の乾燥容器2内部に貯留されたガスの一部を第3の乾燥容器13内部に導く一時貯留バルブ機構と、第3の乾燥容器13内部に一時的に貯留されたガスを排出する第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構とからなる、ガス分割排出ポンプバルブ機構を有し、ポンプバルブ制御手段9が、さらに、一時貯留バルブ機構と、第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構の作動を時分割で切り換え、且つ、第2の乾燥容器2内部に貯留されたガスが所定量以下に到達するまで、該作動の時分割切り換えを繰り返すように制御するとともに、第2の乾燥容器2内部に貯留されたガスが所定量以下に到達したときに第2の貯留ガス排出ポンプバルブ機構を作動させるように制御するようにしたので、第2の乾燥容器2内部の貯留されたガスを少しずつ排出することができ、その少しずつのガスの排出を繰り返すことによって、急激な圧力の変化を抑えながら第2の乾燥容器2内部のガスの濃度を低減することができ、ガスの濃度が十分に低減化された後に、第2の乾燥容器2内部をターボ分子ポンプTMPの作動により真空化させることができ、ターボ分子ポンプTMPを損傷させずに済む。
【0052】
なお、本実施形態のガス精製・排出ユニットにおけるポンプバルブ制御手段9による、ガス導入バルブ機構3、ガス移送バルブ機構5、水蒸気排出バルブ機構7、真空化ポンプバルブ機構8(さらには、分割排出ポンプバルブ機構(一時的貯留バルブ機構、第1の貯留ガス排出ポンプバルブ機構)、第2の貯留ガス排出ポンプバルブ機構)、余剰ガス排出ポンプバルブ機構10、第1の残存ガス排出ポンプバルブ機構11、第2の残存ガス排出ポンプバルブ機構12の作動制御は、上述した制御に限られるものではなく、装置を継続的に無人運転させることができ、また、分析対象のガスに含まれるバックグラウンドノイズ成分の少ない高精度な分析ができ、しかも装置の寿命を延ばすことができれば、どのような制御であってもよい。