(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0017】
(1)本実施の形態によるリモートI/Oシステムの構成
図1は、ガスタービン発電プラント用のリモートI/Oシステム1の概略構成を示す。このリモートI/Oシステム1は、通信プロトコルとしてイーサキャット(登録商標)プロトコルが適用された通信システムであり、制御室内に設置された冗長化された2つの制御装置(以下、これらを第1及び第2の制御装置と呼ぶ)2A,2Bを備えて構成される。
【0018】
第1及び第2の制御装置2A,2Bは、ガスタービン発電プラント全体を制御する制御装置であり、それぞれメインCPU(Central Processing Unit)10A,10Bと、第1のマスタCPU11A,11Bと、第2のマスタCPU12A,12Bとを備える。
【0019】
メインCPU10A,10Bは、第1又は第2の制御装置2A,2B全体の動作制御を司るプロセッサであり、内部バス13A,13Bを介して接続された第1のマスタCPU11A,11B及び第2のマスタCPU12A,12Bにより収集されたリモートサイトの各種センサのセンサ出力と、図示しないメモリに格納された各種プログラムとに基づいて、リモートサイトに設置されたガスタービン(図示せず)を制御するための各種制御処理を実行する。
【0020】
第1のマスタCPU11A,11B及び第2のマスタCPU12A,12Bは、接続されたA系又はB系のネットワーク3A,3Bにおいてマスタとして機能するプロセッサである。第1のマスタCPU11A,11Bには、リング型のネットワークトポロジを有するA系のネットワーク3Aが接続され、第2のマスタCPU12A,12Bには、リング型のネットワークトポロジを有するB系のネットワーク3Bが接続される。
【0021】
A系のネットワーク3Aは、それぞれ制御室内に配置された第1及び第2のスイッチングハブ20A,21A並びに第1及び第4のメディアコンバータ22A,25Aと、リモートサイトに配置された第2及び第3のメディアコンバータ23A,24A並びにAI(Analog Input)スレーブ26A、AO(Analog Output)スレーブ27A、DI(Digital Input)スレーブ28A及びDO(Digital Output)スレーブ29Aとを備えて構成される。
【0022】
そして第1のスイッチングハブ20A及び第1の制御装置2Aの第1のマスタCPU11A間と、第1のスイッチングハブ20A及び第2の制御装置2Bの第1のマスタCPU11B間と、第2のスイッチングハブ21A及び第1の制御装置2Aの第1のマスタCPU11A間と、第2のスイッチングハブ21A及び第2の制御装置2Bの第1のマスタCPU11B間とは、それぞれ100BASE-TXケーブル等のイーサネット(登録商標)カテゴリ5以上のケーブルを介して接続されている。
【0023】
同様に、第1のスイッチングハブ20A及び第1のメディアコンバータ22A間と、第2のメディアコンバータ23A及びAIスレーブ26A間と、AIスレーブ26A及びAOスレーブ27A間と、AOスレーブ27A及びDIスレーブ28A間と、DIスレーブ28A及びDOスレーブ29A間と、DOスレーブ29A及び第3のメディアコンバータ24A間と、第4のメディアコンバータ25A及び第2のスイッチングハブ21A間も、イーサネット(登録商標)カテゴリ5以上のケーブルを介して接続されている。
【0024】
これに対して第1のメディアコンバータ22A及び第2のメディアコンバータ23A間と、第3のメディアコンバータ24A及び第4のメディアコンバータ25A間とは、それぞれ100BASE-FXケーブル等の光ケーブル32を介して接続されており、これによりリモートサイトが制御室から離反した場所に存在する場合においても、制御室及びリモートサイト間における通信時の信号の減衰を低く抑え得るようになされている。
【0025】
B系のネットワーク3Bも、A系のネットワーク3Aと同様に、それぞれ制御室内に配置された第1及び第2のスイッチングハブ20B,21B並びに第1及び第4のメディアコンバータ22B,25Bと、リモートサイトに配置された第2及び第3のメディアコンバータ23B,24B並びにAIスレーブ26B、AOスレーブ27B、DIスレーブ28B及びDOスレーブ29Bとを備えて構成される。
【0026】
そして第1のスイッチングハブ20B及び第1の制御装置2Aの第2のマスタCPU12A間と、第1のスイッチングハブ20B及び第2の制御装置2Bの第2のマスタCPU12B間と、第2のスイッチングハブ21B及び第1の制御装置2Aの第2のマスタCPU12A間と、第2のスイッチングハブ21B及び第2の制御装置2Bの第2のマスタCPU12B間とが、それぞれイーサネット(登録商標)カテゴリ5以上のケーブルを介して接続され、他のスレーブ間がA系のネットワーク3Aと同様に相互に接続されている。
【0027】
第1のスイッチングハブ20A,20B及び第2のスイッチングハブ21A,21Bは、イーサキャット(登録商標)スレーブコントローラが搭載されたスイッチ装置である。また第1〜第4のメディアコンバータ22A〜25A,22B〜25Bは、いずれもイーサキャット(登録商標)スレーブコントローラが搭載された光伝送装置である。
【0028】
AIスレーブ26A,26B、AOスレーブ27A,27B、DIスレーブ28A,28B及びDOスレーブ29A,29Bは、それぞれイーサキャット(登録商標)スレーブコントローラが搭載されたI/Oスレーブである。なお、以下においては、適宜、AIスレーブ26A、AOスレーブ27A、DIスレーブ28A及びDOスレーブ29AをまとめてI/Oスレーブ30Aと呼び、AIスレーブ26B、AOスレーブ27B、DIスレーブ28B及びDOスレーブ29BをまとめてI/Oスレーブ30Bと呼ぶ。
【0029】
AIスレーブ26A,26Bは、リモートサイト側に配置された各アナログセンサにそれぞれ対応させてA系及びB系のネットワーク3A,3B上にそれぞれ1又は複数設けられる。AIスレーブ26A,26Bは、アナログ/ディジタル変換器(図示せず)を備えて構成され、対応する信号分配器31を介して与えられる対応するアナログセンサのセンサ出力をディジタル変換し、かくして得られたディジタル化されたセンサ出力(以下、これをセンサ情報と呼ぶ)を、後述のように第1又は第2の制御装置2A,2Bの第1又は第2のマスタCPU11A,11B,12A,12Bから送信される定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域に格納する機能を有する。なお、ここで言う「定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域」とは、
図2(C)について後述する自スレーブ用のイーサキャットデータグラム(EtherCAT Datagram)を指す。以下においても同様である。
【0030】
またAOスレーブ27A,27Bは、リモートサイト側に配置されたアクチュエータ等の制御対象のアナログ機器にそれぞれ対応させてA系及びB系のネットワーク3A,3B上にそれぞれ1又は複数設けられる。AOスレーブ27A,27Bは、ディジタル/アナログ変換器を備えて構成され、後述のように定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域に格納されている制御情報を読み出してアナログ変換し、かくして得られたアナログ制御情報を対応する信号分配器31に送出する機能を有する。この場合、信号分配器31は、A系及びB系のネットワーク3A,3Bの対応するAOスレーブ27A,27Bからそれぞれ与えられるアナログ制御情報の平均値を算出して、算出結果を対応する制御対象のアナログ機器に送信する。ただし、信号分配器31がA系及びB系のネットワーク3A,3Bの対応するAOスレーブ27A,27Bからそれぞれ与えられるアナログ制御情報のうちの値が大きい又は小さい方や、予め定められた一方のネットワーク3A,3BのAOスレーブ27A,27Bから与えられるアナログ制御情報のみを対応する制御対象のアナログ機器に送信するようにしても良い。
【0031】
DIスレーブ28A,28Bは、リモートサイト側に配置された各ディジタルセンサにそれぞれ対応させてA系及びB系のネットワーク3A,3B上にそれぞれ1又は複数設けられる。DIスレーブ28A,28Bは、対応する信号分配器31を介して与えられる対応するディジタルセンサのセンサ出力(センサ情報)を定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域に格納する機能を有する。
【0032】
DOスレーブ29A,29Bは、リモートサイト側に配置された制御対象のディジタル機器にそれぞれ対応させてA系及びB系のネットワーク3A,3B上にそれぞれ1又は複数設けられる。DOスレーブ29A,29Bは、後述のように定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域に格納されている制御情報を読み出して対応する信号分配器31に送出する機能を有する。この場合、信号分配器31は、A系及びB系のネットワーク3A,3Bの対応するDOスレーブ29A,29Bからそれぞれ与えられる制御情報の平均値を算出して、算出結果を対応する制御対象のディジタル機器に送信する。ただし、信号分配器31がA系及びB系のネットワーク3A,3Bの対応するDOスレーブ29A,29Bからそれぞれ与えられる制御情報のうちの値が大きい方又は小さい方や、予め定められた一方のネットワーク3A,3BのDOスレーブ29A,29Bから与えられる制御情報のみを対応する制御対象のディジタル機器に送信するようにしても良い。
【0033】
かかる構成を有するリモートI/Oシステム1において、A系のネットワーク3Aにおける第1の制御装置2Aの第1のマスタCPU11Aと、第2の制御装置2Bの第1のマスタCPU11Bとの間の主従関係や、B系のネットワーク3Bにおける第1の制御装置2Aの第2のマスタCPU12Aと、第2の制御装置2Bの第2のマスタCPU12Bとの間の主従関係は、主従切替え器4により制御される。主従切替え器4は、通常時、第1の制御装置2Aの第1及び第2のマスタCPU11A,12Aをそれぞれ主系に設定し、第2の制御装置2Bの第1及び第2のマスタCPU11B,12Bをそれぞれ従系に設定する。
【0034】
主系に設定された第1の制御装置2Aの第1のマスタCPU11Aは、通常時、A系のネットワーク3A上に存在するすべてのI/Oスレーブ30Aを通信対象とする、イーサキャット(登録商標)規格で規定された定周期フレームを一定周期(例えば4〔ms〕周期)でA系のネットワーク3Aの第1のスイッチングハブ20Aに送信する。また第1のスイッチングハブ20Aは、第1の制御装置2Aから送信される定周期フレームを第2の制御装置2Bの第1のマスタCPU11B及びA系のネットワーク3Aの第1のメディアコンバータ22Aに転送する。
【0035】
第1のメディアコンバータ22Aは、第1のスイッチングハブ20Aから転送される定周期フレームを光信号に変換し、この光信号を光ケーブル32を介して第2のメディアコンバータ23Aに送信する。また第2のメディアコンバータ23Aは、第1のメディアコンバータ22Aから送信される光信号を電気信号に変換し、かくして得られた定周期フレームをAIスレーブ26Aに転送する。
【0036】
AIスレーブ26Aは、定周期フレームを受信すると、その定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域に、前回の定周期フレームを転送し終えてから今回の定周期フレームを受信するまでの間に取得したセンサ情報を格納する。そしてAIスレーブ26Aは、かかるセンサ情報を格納した定周期フレームを次段のスレーブ(
図1ではAOスレーブ27A)に転送する。
【0037】
またAOスレーブ27Aは、定周期フレームを受信すると、その定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域に格納されている制御情報を読み出し、読み出した制御情報をアナログ変換して対応する信号分配器31に送出すると共に、その定周期フレームを次段のスレーブ(
図1ではDIスレーブ28A)に転送する。
【0038】
DIスレーブ28Aは、定周期フレームを受信すると、その定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域に、前回の定周期フレームを転送し終えてから今回の定周期フレームを受信するまでの間に取得したセンサ情報を格納する。そしてDIスレーブ28Aは、かかるセンサ情報を格納した定周期フレームを次段のスレーブ(
図1ではDOスレーブ29A)に転送する。
【0039】
またDOスレーブ29Aは、定周期フレームを受信すると、受信した定周期フレーム内の自己に割り当てられた領域に格納されている制御情報を読み出し、読み出した制御情報を対応する信号分配器31に送出すると共に、その定周期フレームを次段のスレーブ(
図1では第3のメディアコンバータ24A)に転送する。
【0040】
第3のメディアコンバータ24Aは、受信した定周期フレームを光信号に変換し、この光信号を光ケーブル32を介して制御室内の第4のメディアコンバータ25Aに送信する。また第4のメディアコンバータ25Aは、第3のメディアコンバータ24Aから送信される光信号を電気信号に変換し、かくして得られた定周期フレームを第2のスイッチングハブ21Aに転送する。
【0041】
第2のスイッチングハブ21Aは、第4のメディアコンバータ25Aから転送される定周期フレームを、第1の制御装置2Aの第1のマスタCPU11A及び第2の制御装置2Bの第1のマスタCPU11Bに送出する。そして定周期フレームを受信した第1の制御装置2Aの第1のマスタCPU11Aは、AIスレーブ26AやDIスレーブ28Aがその定周期フレームに格納したセンサ情報を読み出し、読み出したセンサ情報をメインCPU10Aに引き渡す。
【0042】
一方、このとき第1の制御装置2Aの第2のマスタCPU12Aも、第1のマスタCPU11Aと同様に、B系のネットワーク3B上に存在するすべてのI/Oスレーブ30Bを通信対象とする、イーサキャット(登録商標)規格で規定された定周期フレームを定期的に(第1のマスタCPU11AがA系のネットワーク3Aに定周期フレームを送信する周期と同じ周期で)B系のネットワーク3Bの第1のスイッチングハブ20Bに送信する。またB系のネットワーク3Bの第1のスイッチングハブ20Bは、かかる定周期フレームを第2の制御装置2Bの第2のマスタCPU12B及びB系のネットワーク3Bの第1のメディアコンバータ22Bに転送する。
【0043】
この結果、この定周期フレームが上述したA系のネットワーク3Aと同様にB系のネットワーク3B上で順次転送されてB系の第2のスイッチングハブ21Bを介して第1の制御装置2Aの第2のマスタCPU12Aに戻る。かくして、この定周期フレームを受信した第1の制御装置2Aの第2のマスタCPU12Aは、B系のネットワーク3B上のAIスレーブ26BやDIスレーブ28Bがその定周期フレームに格納したセンサ情報を読み出し、読み出したセンサ情報をメインCPU10Aに引き渡す。
【0044】
メインCPU10Aは、第1のマスタCPU11Aから与えられたセンサ情報と、第2のマスタCPU11Aから与えられたセンサ情報とに基づいてリモートサイトの各制御対象をそれぞれ所定状態に制御するためのコマンドやパラメータなどの制御情報を生成し、生成した制御情報を第1及び第2のマスタCPU11A,12Aに引き渡す。かくして第1及び第2のマスタCPU11A,12Aは、それぞれこれらの制御情報を対応する領域にそれぞれ格納した定周期フレームを生成し、生成した定周期フレームを次の送信タイミングでA系又はB系のネットワーク3A,3Bの第1のスイッチングハブ20A,20Bに送信する。
【0045】
このようにして第1又は第2の制御装置2A,2Bは、リモートサイトに配置された各アナログセンサ又は各ディジタルセンサのセンサ出力に基づいて、リモートサイトの各制御対象を所定状態にそれぞれ制御する。
【0046】
他方、このとき従系に設定された第2の制御装置2Bでは、A系のネットワーク3Aの第2のスイッチングハブ21Aから第1のマスタCPU11Bに送信される定周期フレームと、B系のネットワーク3Bの第2のスイッチングハブ21Bから第2のマスタCPU12Bに送信される定周期フレームとに基づいて上述の第1の制御装置2Aと同様の処理が実行される。
【0047】
ただし、第2の制御装置2Bの第1のマスタCPU11B及び第2のマスタCPU12Bは、かかる処理により生成した上述の制御情報が格納された定周期フレームを第1のスイッチングハブ20A,20Bに送信することなく破棄する。従って、リモートI/Oシステム1では、通常時、主系に設定された第1の制御装置2Aの第1及び第2のマスタCPU11A,12Aからそれぞれ出力される定周期フレームのみがA系又はB系のネットワーク3A,3B上で伝送される。
【0048】
一方、主従切替え器4は、主系に設定されている第1の制御装置2Aの第1又は第2のマスタCPU11A,12Aに障害が発生した場合、その障害が発生した第1又は第2のマスタCPU11A,12Aが接続されているA系又はB系のネットワーク3A,3Bのマスタを第2の制御装置2Bの第1又は第2のマスタCPU11B,12Bとするよう第1及び第2の制御装置2A,2Bの主従の設定を切り替える。
【0049】
そして主系に切り替えられた第2の制御装置2Bの第1又は第2のマスタCPU11B,12Bは、この後、上述のように生成した定周期フレームをA系又はB系の第1のスイッチングハブ20A,20Bに送信し、これに対して従系に切り替えられた第1の制御装置2Aの第1又は第2のマスタCPU11A,12Aは、この後、生成した定周期フレームを第1のスイッチングハブ20A,20Bに送信することなく破棄する。この結果、第1の制御装置2Aの第1又は第2のマスタCPU11A,12Aと、第2の制御装置2Bの対応する第1又は第2のマスタCPU11B,12Bとの主従関係が切り替えられた場合には、主系に切り替えられた第2の制御装置2Bの第1又は第2のマスタCPU11B,12Bから出力される定周期フレームのみが対応するA系又はB系のネットワーク3A,3B上で伝送されることになる。
【0050】
以上の構成に加えて本実施の形態によるリモートI/Oシステム1の場合、制御室には、第1及び第2の制御装置2A,2Bに加えて高速用制御装置2Cが設置されている。この高速用制御装置2Cは、高速な周期での制御が求められる制御対象を制御する制御装置であり、内部バス13Cを介して接続されたメインCPU10Cと、第1及び第2のマスタCPU11C,12Cとを備えて構成される。
【0051】
メインCPU10Cは、高速用制御装置2C全体の動作制御を司るプロセッサであり、第1及び第2のマスタCPU11C,12Cにより収集されたリモートサイト側の対応するセンサのセンサ出力と、図示しないメモリに格納された各種プログラムとに基づいて、リモートサイトに設置されたガスタービン(図示せず)を制御するための制御処理を実行する。
【0052】
なお、以下の説明においては、「高速な周期での制御が求められる制御対象」は、特定のDIスレーブ28A,28Bから送信されるディジタルセンサのセンサ出力に基づいて制御されるべき、いずれかのDOスレーブ29A,29Bと接続されたディジタル機器であるものとする。従って、高速用制御装置2Cにおいて、第1及び第2のマスタCPU11C,12Cは、それぞれA系又はB系のネットワーク3A,3Bの特定のDIスレーブ28A,28Bからのみセンサ情報を収集し、メインCPU10Cは、これら第1及び第2のマスタCPU11C,12Cが収集したセンサ情報にのみ基づいて高速な周期での制御が求められる制御対象のみを制御するものとする。
【0053】
第1のマスタCPU11C及び第2のマスタCPU12Cは、接続されたA系又はB系のネットワーク3A,3Bにおいてマスタとして機能するプロセッサである。第1のマスタCPU11Cは、イーサネット(登録商標)カテゴリ5以上のケーブルを介してA系のネットワーク3Aの第1及び第2のスイッチングハブ20A,21Aとそれぞれ接続され、第2のマスタCPU12Cは、同じくイーサネット(登録商標)カテゴリ5以上のケーブルを介してB系のネットワーク3Bの第1及び第2のスイッチングハブ20B,21Bとそれぞれ接続されている。
【0054】
そして第1及び第2のマスタCPU11C,12Cは、それぞれ特定のDIスレーブ28A,28B及び特定のDOスレーブ29A,29Bのみを通信対象とした定周期フレームを、第1又は第2の制御装置2A,2BがA系及びB系のネットワーク3A,3Bに送信する定周期フレームの送信周期(4〔ms〕)よりも速い周期(例えば1〔ms〕)でA系及びB系のネットワーク3A,3Bに送信する。
【0055】
このため本リモートI/Oシステム1では、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.1Qで標準化された仮想LAN(VLAN:Virtual Local Area Network)機能を利用して、第1又は第2の制御装置2A,2B及び各スレーブ間の通信と、高速用制御装置2C並びに特定のDIスレーブ28A,28B及び特定のDOスレーブ29A,29B間の通信とが相互に影響を与えないように、A系及びB系のネットワーク3A,3Bの第1のスイッチングハブ20A,20B及び第2のスイッチングハブ21A,21Bにおいて所定の処理を実行する。
【0056】
具体的に、本リモートI/Oシステム1では、かかる第1のスイッチングハブ20A,20B及び第2のスイッチングハブ21A,21Bとして、IEEE802.1Qで標準化された仮想LANに対応したマネージドスイッチが使用される。そして第1のスイッチングハブ20A,20B及び第2のスイッチングハブ21A,21Bの各ポートのうち、第1及び第2の制御装置2A,2Bのいずれかと接続された各ポートはそれぞれ第1の仮想LAN(VLAN#1)ポートに設定され、高速用制御装置2Cと接続されたポートは第2の仮想LAN(VLAN#2)ポートに設定される。また第1のスイッチングハブ20A,20Bの第1のメディアコンバータ22A,22Bと接続されるポートと、第2のスイッチングハブ21A,21Bの第4のメディアコンバータ25A,25Bと接続されるポートとは、タグ仮想LANポートに設定される。
【0057】
そして第1のスイッチングハブ20A,20Bは、第1又は第2の制御装置2A,2Bから第1の仮想LANポートに送信される定周期フレームに対して第1の仮想LANに対応したタグ制御情報を付加する一方、高速用制御装置2Cから第2の仮想LANポートに送信される定周期フレームに対して第2の仮想LANに対応したタグ制御情報を付加して第1のメディアコンバータ22A,22Bに出力する(ポート仮想LANからタグ仮想LANへの変換処理)。この場合、各スレーブ(第1〜第4のメディアコンバータ22A〜25A,22B〜25Bと、各I/Oスレーブ30A,30B)は、定周期フレームに付加されたタグ制御情報を無視して必要な処理を実行する。
【0058】
なお第1のスイッチングハブ20A,20Bは、バッファメモリ(図示せず)を備えており、第1又は第2の制御装置2A,2Bから第1のスイッチングハブ20A,20Bへの定周期フレームの送信タイミングと、高速用制御装置2Cから第1のスイッチングハブ20A,20Bへの定周期フレームの送信タイミングとが重なった場合には、後から受信した定周期フレームをバッファメモリに格納(バッファリング)しながら、先に受信した定周期フレームに対する処理を実行し、当該先に受信した定周期フレームに対する処理が完了した後に、後から受信した定周期フレームに対する処理を実行する。
【0059】
また第2のスイッチングハブ21A,21Bは、第4のメディアコンバータ25A,25Bから定周期フレームが転送されてくると、当該定周期フレーム内のタグ制御情報を参照して、当該タグ制御情報が第1の仮想LANに対応するものである場合には、その定周期フレームからタグ制御情報を削除した上で当該定周期フレームを第1の仮想LANポートを介して第1及び第2の制御装置2A,2Bに転送する一方、参照したタグ制御情報が第2の仮想LANに対応するものである場合には、その定周期フレームからタグ制御情報を削除した上で当該定周期フレームを第2の仮想LANポートを介して高速用制御装置2Cに転送する(タグ仮想LANからポート仮想LANへの変換処理)。
【0060】
以上により、A系及びB系のネットワーク3A,3Bにおいて、ブロードキャストドメインが第1及び第2の制御装置2A,2Bと、高速用制御装置2Cとで分割され、第1及び第2の制御装置2A,2Bでは通常の二重化と同様の定周期フレームのみが受信され、高速用制御装置2Cでは自己が送出した定周期フレームのみが受信されることとなる。
【0061】
なお本実施の形態の場合、A系及びB系のネットワーク3A,3Bの初期化や、障害発生時のA系及びB系のネットワーク3A,3Bのバススキャンは、主系に設定された第1又は第2の制御装置2A,2Bのみが実行し、高速用制御装置2Cは実行しない。
【0062】
ここで、第1又は第2の制御装置2A,2Bの第1のマスタCPU11A,11Bや第2のマスタCPU12A,12Bから出力される定周期フレームのフレームフォーマットを
図2(A)〜(E)に示し、第1のスイッチングハブ20A,20Bによりタグ制御情報が付加された定周期フレームのフレームフォーマットを
図2(F)及び(G)に示す。
【0063】
図2(A)に示すように、定周期フレームは、14バイトのイーサネット(登録商標)ヘッダフィールド(Ethernet(登録商標) Header)と、最大1500バイトのイーサネット(登録商標)データフィールド(Ethernet(登録商標) Data)と、4バイトのFCS(Frame Check Sequence)フィールド(FCS)とから構成される。そしてイーサネット(登録商標)ヘッダフィールドには、その定周期フレームのあて先や送信元のアドレスが格納され、FCSフィールドには、CRC(Cyclic Redundancy Check)コード等の定周期フレームの誤り検査用の情報が格納される。
【0064】
またイーサネット(登録商標)データフィールドは、
図2(B)に示すように、11ビットのデータ長フィールド(Length)と、1ビットのリザーブフィールド(Reserve)と、4ビットのタイプフィールド(Ty)と、44〜1498バイトのイーサキャット(登録商標)データグラムフィールド(1…n EtherCAT Datagrams)とから構成される。そしてイーサキャットデータグラムフィールドには、
図2(C)に示すように、その定周期フレームの送信対象となる各スレーブにそれぞれ対応付けられた1又は複数のイーサキャット用のフレーム(以下、これをイーサキャットデータグラムと呼ぶ)が格納され、データ長フィールドには、イーサキャットデータグラムフィールドに格納されているすべてのイーサキャットデータグラムの合計データ長が格納される。またリザーブフィールドには通常「0」に設定されたフラグが格納され、タイプフィールドには、イーサキャットデータグラムフィールドに格納されたデータのタイプを表すコード(イーサキャットの場合は「0x1」)が格納される。
【0065】
各イーサキャットデータグラムフィールドは、
図2(D)に示すように、10バイトのデータグラムヘッダフィールド(Datagram Header)と、最大1486バイトのデータフィールド(Data)と、2バイトのWKC(Working Counter)フィールドとから構成される。そして、データフィールドには、マスタ(第1又は第2の制御装置2A,2Bの第1のマスタCPU11A,11Bや第2のマスタCPU12A,12B)が対応するスレーブに送信するデータ(本実施の形態においては上述の制御情報)、又は、そのスレーブがマスタに送信すべきデータ(本実施の形態においては上述のセンサ情報)が格納される。またWKCフィールドには、イーサキャットデータグラムによって正常に処理された処理数に応じたカウント値が格納される。
【0066】
さらにデータグラムヘッダフィールドは、
図2(E)に示すように、8ビットのコマンドフィールド(Cmd)と、8ビットのインデックスフィールド(Idx)と、32ビットのアドレスフィールド(Address)と、11ビットのデータタイプフィールド(Len)と、3ビットのリザーブフィールド(R)と、1ビットの循環有無ビットフィールド(C)と、1ビットの継続有無ビットフィールド(M)と、16ビットのイーサキャット割込みリクエストレジスタフィールド(IRQ)とから構成される。
【0067】
そしてコマンドフィールドには、マスタが対応するスレーブに発行したイーサキャットコマンドのコマンドタイプを表すコードが格納され、インデックスフィールドには、マスタからスレーブに送信すべきデータ又はスレーブからマスタに送信すべき情報が複数の定周期フレームに分割して格納される場合におけるそのデータの順番を表すインデックス番号が格納される。またアドレスフィールドには、対応するスレーブのアドレスが格納され、データタイプフィールドには、そのデータグラムヘッダに続くデータグラムのデータタイプが格納される。
【0068】
さらに循環有無ビットフィールドには、その定周期フレームが既に対応するスレーブを循環しているか否かを表すフラグが格納される。そして、このフラグは、その定周期フレームが対応するスレーブを循環していない場合には「0」に設定され、その定周期フレームが対応するスレーブを既に循環している場合には、当該スレーブにより「1」に更新される。
【0069】
また継続有無ビットフィールドには、そのデータグラムがその定周期フレームのイーサキャットデータグラムフィールド(
図2(B))に格納された最後のデータグラムであるか否かを表すフラグが格納される。このフラグは、そのイーサキャットデータグラムがその定周期フレームのイーサキャットデータグラムフィールドに格納された最後のイーサキャットデータグラムである場合には「0」に設定され、最後のイーサキャットデータグラムでない場合には「1」に設定される。さらにイーサキャット割込みリクエストレジスタフィールドは、割込みリクエストを格納するレジスタとして利用される。
【0070】
一方、第1のスイッチングハブ20A,20Bは、第1又は第2の制御装置2A,2Bの第1のマスタCPU11A,11Bや第2のマスタCPU12A,12Bから与えられる
図2(A)に示すフレームフォーマットの定周期フレームに対して、
図2(F)に示すように、イーサネット(登録商標)ヘッダフィールド(Ethernet(登録商標) Header)及びイーサネット(登録商標)データフィールド(Ethernet(登録商標) Data)間に2バイトのタグ制御情報(TCI:Tag Control Information)を付加する。
【0071】
このタグ制御情報は、
図2(G)に示すように、3ビットのPCP(Priority Code Point)フィールド(PCP)と、1ビットのCFI(Canonical Format Indicator)フィールド(CFI)と、12ビットの仮想LAN IDフィールド(VID)とから構成される。
【0072】
そしてPCPフィールドには、IEEE802.1Qで定義された優先度(0〜7)が格納され、CFIフィールドにはMAC(Media Access Control)アドレスが正規フォーマットであるか否かを表すフラグが格納される。なおイーサキャット(登録商標)の場合、このフラグは常に「0」に設定される。また仮想LAN IDフィールドには、その定周期フレームが属する仮想LAN(第1又は第2の仮想LAN)のIDが格納される。
【0073】
従って、本実施の形態の場合、A系及びB系のネットワーク3A,3Bの第1のスイッチングハブ20A,20Bは、第1又は第2の制御装置2A,2Bから第1の仮想LANポートに与えられた定周期フレームについては、かかる仮想LAN IDフィールドに第1の仮想LANに対応するIDが格納されたタグ制御情報を付加し、高速用制御装置2Cから第2の仮想LANポートに与えられた定周期フレームについては、かかる仮想LAN IDフィールドに第2の仮想LANに対応するIDが格納されたタグ制御情報を付加する。
【0074】
またA系及びB系のネットワーク3A,3Bの第2のスイッチングハブ21A,21Bは、第4のメディアコンバータ25A,25Bから与えられた定周期フレームに付加されているタグ制御情報のうちの仮想LAN IDフィールドに格納されている仮想LAN IDを参照して、当該仮想LAN IDが第1の仮想LANに対応するものである場合にはその定周期フレームを第1の仮想LANポートを介して第1及び第2の制御装置2A,2Bに転送し、当該仮想LAN IDが第2の仮想LANに対応するものである場合にはその定周期フレームを第2の仮想LANポートを介して高速用制御装置2Cに転送する。
【0075】
(2)高速用制御装置の具体的な処理内容
次に、かかる高速用制御装置2Cの具体的な処理内容について説明する。
【0076】
本リモートI/Oシステム1では、第1及び第2の制御装置2A,2Bと、高速用制御装置2Cとは、共通のENI(EtherCAT Network Information)ファイルと、マスタ二重化用の初期ファイルとを使用する。ここで、ENIファイルとは、ネットワーク3A,3B上に存在するスレーブ数や各スレーブのアドレス、スレーブ間の接続関係などのネットワーク3A,3Bの構成に関する情報(ネットワーク情報)が記載されたファイルである。
【0077】
ただし、高速用制御装置2Cが使用するENIファイルでは、定周期フレームの送信対象とすべきスレーブの定義の中から当該高速用制御装置2Cの通信対象とすべきDIスレーブ28A,28BやDOスレーブ29A,29B以外の他のスレーブの定義がすべて消去される。なお、高速用制御装置2Cの通信対象とすべきDIスレーブ28A,28BやDOスレーブ29A,29Bとは、高速な周期での制御が求められる各制御対象をそれぞれ制御するために必要なセンサ情報を出力する各ディジタルセンサとそれぞれ接続された各DIスレーブ28A,28Bと、これらの制御対象と信号分配器31を介してそれぞれ接続された各DOスレーブ29A,29Bとを指す。
【0078】
そして高速用制御装置2Cの第1及び第2のマスタCPU11C,12Cは、このENIファイルに基づいて、定周期フレームの送信対象とすべきDIスレーブ28A,28BやDOスレーブ29A,29Bのイーサキャットデータグラムのみが格納された(つまりそのDIスレーブ28A,28BやDOスレーブ29A,29Bのみを送信対象とする)定周期フレームを生成する。
【0079】
例えば、
図3に示すように、ネットワーク3A,3B上に複数のDIスレーブ28A,28B及びDOスレーブ29A,29Bが存在する場合、第1及び第2の制御装置2A,2Bは、
図4(A)に示すように、各DIスレーブ28A,28B及び各DOスレーブ29A,29Bにそれぞれ対応したイーサキャットデータグラムEDがすべて格納された定周期フレームCFを生成するのに対して、高速用制御装置2Cは、
図4(B)に示すように、自己が保持するENIファイルにおいて定義されたDIスレーブ28A,28B及びDOスレーブ29A,29Bにそれぞれ対応したイーサキャットデータグラムEDのみが格納された定周期フレームCFを1〔ms〕周期で生成する。そして第1及び第2のマスタCPU11C,12Cは、生成した定周期フレームCFを自己に接続されたA系又はB系のネットワーク3A,3Bの第1のスイッチングハブ20A,20Bにそれぞれ送信する。
【0080】
この定周期フレームは、第1のスイッチングハブ20A,20Bにおいて第2の仮想LANに対応するタグ制御情報が付加された後、A系及びB系のネットワーク3A,3B上で転送される。この際、その定周期フレーム内に対応するイーサキャットデータグラムが格納されたDIスレーブ28A,28B及びDOスレーブ29A,29Bのみにおいて当該イーサキャットデータグラムに対するセンサ情報の書き込みや制御情報の読み出しが行われ、他のスレーブでは定周期フレームは何らの処理も行われることなくそのまま次段のスレーブに転送される。そして、この定周期フレームは、やがて第2のスイッチングハブ21A,21Bに与えられ、当該第2のスイッチングハブ21A,21Bにおいてタグ制御情報が削除された後に高速用制御装置2C内の元の第1又は第2のマスタCPU11C,12Cに転送される。
【0081】
高速用制御装置2Cの第1及び第2のマスタCPU11C,12Cは、定周期フレームを受信すると、DIスレーブ28Aがその定周期フレームに格納したセンサ情報を読み出し、読み出したセンサ情報をメインCPU10Cに引き渡す。
【0082】
またメインCPU10Cは、第1のマスタCPU11Cから与えられたセンサ情報と、第2のマスタCPU11Cから与えられたセンサ情報とに基づいて、高速用制御装置2Cに割り当てられた各制御対象をそれぞれ所定状態に制御するためのコマンドやパラメータなどの制御情報を生成し、生成した制御情報を第1及び第2のマスタCPU11C,12Cに引き渡す。
【0083】
かくして第1及び第2のマスタCPU11C,12Cは、それぞれこれらの制御情報を、これらの制御対象とそれぞれ接続されたDOスレーブ29A,29Bに対応するイーサキャットデータグラムにそれぞれ格納した定周期フレームを生成し、生成した定周期フレームを次の送信タイミングでA系又はB系のネットワーク3A,3Bの第1のスイッチングハブ20A,20Bに送信する。
【0084】
このようにして高速用制御装置2Cは、リモートサイトに配置された特定のディジタルセンサのセンサ出力に基づいて、リモートサイトに設置された高速な周期での制御が求められる制御対象を所定状態にそれぞれ制御する。
【0085】
(3)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のリモートI/Oシステム1では、高速用制御装置2Cが第1及び第2の制御装置2A,2Bによる定周期フレームの送信周期よりも速い周期で定周期フレームをA系及びB系のネットワーク3A,3Bに送信するため、高速な周期での制御が求められる制御対象を制御するために必要な通信周期で特定のDIスレーブ28A,28B及びDOスレーブ29A,29Bと通信を行うことができる。
【0086】
この場合において、本リモートI/Oシステム1では、高速な周期での制御が求められる制御対象を制御するために通信が必要なDIスレーブ28A,28BやDOスレーブ29A,29Bを配置するネットワーク3A,3Bと、他のスレーブが存在するネットワーク3A,3Bとを分けておらず、従って、ネットワークトポロジの複雑化によるシステムの設置コストが増大したり、構成機器が増えることはない。
【0087】
よって本リモートI/Oシステム1によれば、システムの設置コストの増大や、ネットワーク構成の増大化及び煩雑化を回避しながら、スレーブごとにそのスレーブについて要求される通信周期に応じた適切な通信周期で通信を行うことができる。
【0088】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、本発明を
図1のように構成されたガスタービン発電プラント用のリモートI/Oシステム1に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成の通信システムに広く適用することができる。
【0089】
また上述の実施の形態においては、高速用制御装置2Cが特定のDIスレーブ28A,28Bからセンサ情報を収集し、収集したセンサ情報に基づいて生成した制御情報をDOスレーブ29A,29Bに送信することにより高速な周期での制御が求められる制御対象を制御するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、高速用制御装置2Cが単にセンサ情報をモニタリングするための用途で特定のDIスレーブ28A,28Bからセンサ情報を収集するようにしても良い。
【0090】
さらに上述の実施の形態においては、主系に設定された第1又は第2の制御装置2A、2Bがネットワーク3A,3B上に設置されたすべてのI/Oスレーブ30A,30Bを通信対象とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、主系に設定された第1又は第2の制御装置2A、2Bが、高速用制御装置2Cの通信対象以外のI/Oスレーブ30A,30Bのみを通信対象とするようにしても良い。このようにすることによって、第1又は第2の制御装置2A、2Bの負荷(制御負荷や通信負荷)を第1又は第2の制御装置2A、2Bと、高速用制御装置2Cとに分散させることができ、スレーブ数が増大化した場合においても通信周期や処理遅延時間などのシステム全体としての性能が悪化するのを有効に防止することができる。
【0091】
さらに上述の実施の形態においては、定周期フレームをネットワーク3A,3Bに送信するマスタ装置が第1又は第2の制御装置2A,2Bと、高速用制御装置2Cとの2つだけである場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ネットワーク3A,3B上のスレーブのうちの一部又は全部を通信対象とする定周期フレームをそれぞれ異なる周期で第1のスイッチングハブ20A,20Bに送信するマスタ装置を3つ以上設けるようにしても良い。要は、スレーブごとにそのスレーブについて要求される通信周期に応じた適切な通信周期で通信を行い得るようにするのであれば、ネットワーク3A,3Bに定周期フレームを送信するマスタ装置の数は2つに限定されない。この場合において、各マスタ装置が通信対象とすべきスレーブ装置を、マスタ装置間で重複しない(同じスレーブ装置を複数のマスタ装置が通信対象としない)ように各マスタ装置にそれぞれ振り分けることによって、負荷(制御負荷や通信負荷)を各マスタ装置に分散させることができ、これによりスレーブ数が増大化した場合においても通信周期や処理遅延時間などのシステム全体としての性能が悪化するのを有効に防止することができる。
【0092】
さらに上述の実施の形態においては、仮想LANごとのタグ制御情報を第1のスイッチングハブ20A,20Bにおいて付加するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばマスタ装置(第1又は第2の制御装置2A,2Bや高速用制御装置2C)において予め自己に対応付けられた識別情報やタグ制御情報を定周期フレームに格納又は付加しておき、第2のスイッチングハブ21A,21Bにおいて、この識別情報やタグ制御情報に基づいて定周期フレームをその送信元のマスタ装置に振り分けるようにしても良い。
【0093】
さらに上述の実施の形態においては、本発明を通信プロトコルとしてイーサキャットプロトコルが適用された通信システムに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は、マスタ−スレーブ方式の通信プロトコルが適用されたこの他種々の通信システムに広く適用することができる。