特許第6337470号(P6337470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337470
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】核酸の検出方法および核酸検出キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20180528BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180528BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   !C12N15/00 A
   !C12N15/00 F
   !C12M1/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-528148(P2013-528148)
(86)(22)【出願日】2013年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2013066799
(87)【国際公開番号】WO2013191197
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-138336(P2012-138336)
(32)【優先日】2012年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 史夫
(72)【発明者】
【氏名】上田 洋二
(72)【発明者】
【氏名】有家 隆文
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−531205(JP,A)
【文献】 特表2003−520570(JP,A)
【文献】 特開2004−329096(JP,A)
【文献】 特開2010−029174(JP,A)
【文献】 特表2003−514227(JP,A)
【文献】 特表2002−535998(JP,A)
【文献】 特表2002−515737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00− 3/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕捉プローブと標的核酸をハイブリダイズさせて二重鎖核酸を形成する工程と、
形成された二重鎖核酸を、標識体および濃度100mM以上の二価の金属カチオンを含む溶液と接触させて、該二重鎖核酸に該標識体を導入する工程と、
前記二重核酸に導入されなかった標識体を洗浄除去する工程と、
前記二重鎖核酸に導入された前記標識体を検出する工程とを含み、前記標識体が、核酸の後染め法に用いられる標識体である、標的核酸の検出方法。
【請求項2】
前記捕捉プローブが支持体に固定化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二価の金属カチオンがマグネシウムイオン、亜鉛イオン、マンガンイオンおよびカルシウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標識体が蛍光体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記標的核酸への前記標識体の導入が、アビジン−ビオチン相互作用を利用して行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記標的核酸がビオチン化されており、前記標識体の導入は、標識アビジン又は標識ストレプトアビジンと前記標的核酸上のビオチンとを相互作用させることにより行われる請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記標的核酸への標識体の導入が、前記ハイブリダイズした二重鎖核酸と抗原抗体反応する標識された抗体又はその抗原結合性断片を、前記二重鎖核酸と抗原抗体反応させることにより行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記捕捉プローブと、前記標的核酸とをハイブリダイズさせる工程においては、前記捕捉プローブは支持体に固定されていない遊離の状態にあり、前記捕捉プローブと前記標的核酸とがハイブリダイズした二重鎖核酸を支持体に固定化する、請求項1、3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記二重鎖核酸の前記支持体への固定化は、該二重鎖核酸と抗原抗体反応する、支持体上に固定化された抗体又はその抗原結合性断片と前記二重鎖核酸とを抗原抗体反応させることにより行われる請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕捉プローブと核酸のハイブリダイゼーションを利用した核酸の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種生物の遺伝情報解析の研究が始められており、ヒト遺伝子をはじめとして、多数の遺伝子とその塩基配列、また遺伝子配列にコードされる蛋白質およびこれら蛋白質から二次的に作られる糖鎖に関する情報が急速に明らかにされつつある。配列の明らかにされた遺伝子、蛋白質、糖鎖などの生体高分子の機能については、様々な方法で調べることができる。主なものとしては、核酸についてはノーザンブロッティング、あるいはサザンブロッティングのような、各種の核酸/核酸間の相補性を利用して各種遺伝子とその生体機能発現との関係を調べることができる。蛋白質については、ウエスタンブロッティングに代表されるような、タンパク質−タンパク質間の反応を利用しタンパク質の機能および発現について調べることができる。
【0003】
特に、遺伝子診断や病原菌の特定、あるいは一塩基多型の検出等、調べたい核酸(標的核酸)を検出する目的では、核酸からなる捕捉プローブが用いられる。近年、多数の捕捉プローブを支持体に固定したDNAチップやDNAマイクロアレイを用いて、複数種の標的核酸の同時検出に使用されている。具体的には、支持体に固定化された捕捉プローブと標的核酸とを接触させ、捕捉プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションの有無による相補性を調べることにより標的核酸の配列を調べることができる。標的核酸のハイブリダイゼーションは、例えば、標的核酸に標識体を導入し、捕捉プローブとの接触後に、その標識体のシグナルを検出する方法が一般的に用いられている。
【0004】
標的核酸への標識体の導入方法として、捕捉プローブとハイブリダイズさせる前に導入する方法と、ハイブリダイゼーション後に導入する方法がある。この中で、後者は後染め法と言われ、ハイブリダイズした標的核酸と標識体を接触させて標識体を導入する方法で、ハイブリダイゼーション後に標識体を結合させるため、比較的大きなサイズの標識体を用いることができ、また、検出シグナル増幅のため標識化工程を繰り返し行うことができる(特許文献1、2)。そして、後染め法の標識化工程では、500〜1000mM程度の高濃度のナトリウムイオンなどの一価の金属カチオンを含有する標識液を使用することが知られている。
【0005】
一方で、二価の金属カチオンは各種核酸分解酵素を活性化する物質であることが知られているため、ハイブリダイゼーションを利用する核酸の検出方法の際に積極的に使用することは忌避されており、後染め法の標識化工程においても二価の金属カチオンを使用する技術思想は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−188837号公報
【特許文献2】特開2003−52383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
後染め法による標的核酸の標識化では、標的核酸に導入されなかった標識体を洗浄・除去する必要があるが、本発明者が従来の後染め法による支持体に固定化した捕捉プローブにハイブリダイズした標的核酸の標識化について検証した結果、標的核酸への標識体を導入の際または標的核酸に導入されなかった標識体を洗浄・除去する際に捕捉プローブにハイブリダイズした標的核酸が剥がれ落ち、その結果、検出シグナルが低減するという問題点が見いだされた。
【0008】
また、本発明者の検討の結果、従来の標識液に含まれる500〜1000mM程度の高濃度ナトリウムイオンによってある程度の標的核酸の剥がれ落ちを抑制することができることが見いだされたが、試薬量の削減や検出感度の向上の観点からナトリウムイオンよりも低濃度で同等以上の標的核酸の剥がれ落ちを抑制できるような物質を見いだすことが課題となった。
【0009】
すなわち本発明の目的は、ナトリウムイオンの他に後染め法での標識化工程において捕捉プローブにハイブリダイズした標的核酸の、支持体からの脱離を抑制するような物質を見いだし、ナトリウムイオンよりも低濃度でかつ同等以上の感度で標的核酸を検出することが可能な核酸の検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意研究の結果、捕捉プローブにハイブリダイズした標的核酸の標識化工程において、核酸のハイブリダイゼーション工程において忌避されていた二価の金属カチオンを含む溶液を用いることによって、標的核酸に導入されなかった標識体の洗浄・除去の際の標的核酸の脱離を抑制することができ、その結果、ナトリウムイオンを用いる場合と比較して、検出シグナルを同等以上にすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(13)で構成される。
【0012】
(1)捕捉プローブと標的核酸をハイブリダイズさせて二重鎖核酸を形成する工程と、
形成された二重鎖核酸を、標識体および濃度100mM以上の二価の金属カチオンを含む溶液と接触させて、該二重鎖核酸に該標識体を導入する工程と、
前記二重核酸に導入されなかった標識体を洗浄除去する工程と、
前記二重鎖核酸に導入された前記標識体を検出する工程とを含み、前記標識体が、核酸の後染め法に用いられる標識体である、標的核酸の検出方法。
(2)前記捕捉プローブが支持体に固定化されている、(1)に記載の方法。
(3)前記二価の金属カチオンがマグネシウムイオン、亜鉛イオン、マンガンイオンおよびカルシウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種類である、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記標識体が蛍光体である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)前記標的核酸への前記標識体の導入が、アビジン−ビオチン相互作用を利用して行われる、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)前記標的核酸がビオチン化されており、前記標識体の導入は、標識アビジン又は標識ストレプトアビジンと前記標的核酸上のビオチンとを相互作用させることにより行われる(5)記載の方法。
(7)前記標的核酸への標識体の導入が、前記ハイブリダイズした二重鎖核酸と抗原抗体反応する標識された抗体又はその抗原結合性断片を、前記二重鎖核酸と抗原抗体反応させることにより行われる(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(8)前記捕捉プローブと、前記標的核酸とをハイブリダイズさせる工程においては、前記捕捉プローブは支持体に固定されていない遊離の状態にあり、前記捕捉プローブと前記標的核酸とがハイブリダイズした二重鎖核酸を支持体に固定化する、(1)、(3)〜(6)のいずれか1項に記載の方法。
(9)前記二重鎖核酸の前記支持体への固定化は、該二重鎖核酸と抗原抗体反応する、支持体上に固定化された抗体又はその抗原結合性断片と前記二重鎖核酸とを抗原抗体反応させることにより行われる(8)記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、捕捉プローブにハイブリダイズした標的核酸を高感度かつ再現性良く検出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の検出方法に供せられる標的核酸としては、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの標的核酸を含む検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、ぬぐい液、各種組織液等の体液や、各種組織、パラフィン包埋検体(FFPE)およびその切片、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、被検物質となる標的核酸は、血液や細胞から常法により抽出した核酸であってもよく、検体から抽出したDNAやRNAなどを用いることができる。DNAとしては、標識化DNA,ウイルスDNA,細菌、カビ等のDNA、RNAを逆転写したcDNA,それらの一部である断片などを用いることができるがこれらに限定されるものではない。RNAとしては、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、small RNAやそれらの一部である断片などを用いることができるがこれらに限定されるものではない。また、化学的に合成したDNA、あるいはRNA等も標的核酸として用いることができる。
【0015】
支持体はスライドガラスや樹脂基板、メンブレン、ビーズなどを用いることができる。支持体の材質は、特に限定されないが、ガラス、セラミック、シリコンなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンゴム等のポリマーなどを挙げることができる。
【0016】
捕捉プローブとは、被験試料に含まれる標的核酸と直接的に、選択的に結合し得る物質を意味する。本発明の標的核酸を検出する方法においては、具体的にはDNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(Ethylene‐Bridged Nucleic Acid)などの核酸誘導体を用いることができる。ここで誘導体とは、核酸の場合、蛍光体などによる標識化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体などの化学修飾誘導体を意味する。
【0017】
特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイゼーションして結合するので、本発明でいう捕捉プローブに該当する。本発明に用いる捕捉プローブは、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。捕捉プローブとして、特に好ましいものは、核酸である。この核酸の中でも、オリゴ核酸と呼ばれる、長さが200塩基までの核酸は、合成機で容易に人工的に合成が可能である。
【0018】
支持体に捕捉プローブを固定化する方法としては、支持体上面部で捕捉プローブを合成する方法と、あらかじめ合成しておいた捕捉プローブを支持体上面部へ滴下し固定する方法が知られている。支持体上面部で捕捉プローブを合成する方法としては、Ronaldらの方法(米国特許第5705610号明細書)、Michelらの方法(米国特許第6142266号明細書)、Francescoらの方法(米国特許第7037659号明細書)がある。これらの方法では捕捉プローブ合成反応時に有機溶媒を用いるため、担体は有機溶媒に耐性のある材質であることが望ましく、例えば、特表平10−503841号公報に記載の方法を用いて作製した凹凸構造を有したガラス支持体を用いることができる。特にFrancescoらの方法においては支持体の裏面から光を照射し、捕捉プローブの合成を制御するため、支持体は透光性を有する材質であることが好ましい。捕捉プローブを支持体上面部へ滴下し固定する方法としては、廣田らの方法(特許第3922454号明細書)やガラスキャピラリーを用いることができる。ガラスキャピラリーの一例としては、自作したガラスキャピラリーやマイクロピペット(株式会社マイクロサポート製、MP−005)などの市販製品を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0019】
本発明は、捕捉プローブと標的核酸をハイブリダイズさせることによる核酸の検出方法において、捕捉プローブにハイブリダイズした核酸を、標識体および二価の金属カチオンを含む溶液と接触させることによって、該ハイブリダイズした核酸に標識体を導入することを特徴とする。以下、ハイブリダイゼーション工程と標識体の導入工程について説明する。
【0020】
捕捉プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションは、それ自体周知の方法により行うことができる。捕捉プローブと標的核酸のハイブリダイゼーション時のストリンジェンシーは、温度、塩濃度、プローブの鎖長、プローブのヌクレオチド配列のGC含量及びハイブリダイゼーション緩衝液中のカオトロピック剤の濃度の関数であることが知られており、例えば、Sambrook,J.et al.(1998) Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2nd ed.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに記載された条件などを用いることができる。ストリンジェントな温度条件は、約30℃以上であり、通常、10℃〜70℃程度である。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))の濃度、及びキャリアDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。当業者は、所望する標的核酸の検出のために用意した捕捉プローブとしての機能を得るための条件を適宜決定すればよい。
【0021】
捕捉プローブと標的核酸のハイブリダイゼーションは、捕捉プローブを支持体に固定化した状態で行っても良いし、また、ハイブリダイゼーション後に支持体に固定化しても良い。ハイブリダイゼーション後の捕捉プローブの固定化方法として、例えば、標的核酸と形成した二重鎖に特異的に結合する(抗原抗体反応する)、固相化した抗体又はその抗原結合性断片(Fab断片やF(ab')2断片等を用いて行うことができる(下記実施例参照)。
【0022】
捕捉プローブとハイブリダイズした標的核酸への標識体の導入方法は、それ自体周知の方法により行うことができ、例えば、標的核酸に標識体と二価の金属カチオンを含む溶液を接触させた上で化学反応や酵素反応や核酸ハイブリダイゼーションなどで標識体を導入する方法や、標的核酸に反応性官能基を化学反応や酵素反応や核酸ハイブリダイゼーションなどで導入し、その官能基に標識体と二価の金属カチオンを含む溶液を接触させた上で標識体の官能基と反応させて導入する方法が挙げられる。例えば、標的核酸に酵素反応でアミノ基を有する核酸を導入し、そのアミノ基と反応するスクシンイミド基を有する標識体と反応させることで、標識体を導入することが可能となる。また、同様の手法でビオチンを、標的核酸を含む二重鎖核酸に導入し、標識したアビジン又はストレプトアビジンと接触させることにより、アビジン−ビオチン反応を介して標識体の導入が可能となる。また、標的核酸とプローブ核酸のハイブリダイゼーションにより形成した二重鎖部分に挿入するインターカレーター型の標識体を接触させることにより、標識体を導入することが可能である。さらには、二重鎖と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片(Fab断片やF(ab')2断片等を用いて行うことができる(下記実施例参照)。
【0023】
本発明において使用できる標識体としては、有機蛍光色素、りん光色素、量子ドット、蛍光タンパクなどの蛍光体や放射性同位体、電子の授受が可能な酸化還元種、また、アルカリフォスファターゼやホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素が結合したものを用いることができる。また、これら標識体の中で、検出の感度面や簡便性から蛍光体が好ましく用いることができる。
【0024】
有機蛍光色素としては、シアニン(シアニン2)、アミノメチルクマリン、フルオロセイン、インドカルボシアニン(シアニン3)、シアニン3.5、テトラメチルローダミン、ローダミンレッド、テキサスレッド、インドカルボシアニン(シアニン5)、シアニン5.5、シアニン7、オイスター、BODIPY系色素などが挙げられる。また、インターカレーター型の蛍光色素のとしては、エチジウムブロマイドやアクリジンオレンジなどが挙げられ、蛍光性タンパク質としては、フィコエリスリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)などの公知の蛍光体が挙げられる。
【0025】
また、蛍光体として発光性を有する半導体微粒子を用いてもよい。このような半導体微粒子としては、例えばセレン化カドミウム(CdSe)、硫化カドミウム(CdS)、テルル化カドミウム(CdTe)、インジウムガリウムリン(InGaP)、カルコパイライト系微粒子、シリコン(Si)、などが挙げられる。蛍光シグナルの検出は、蛍光顕微鏡や蛍光スキャナーなどにより行うことができる。
【0026】
後述の通り、二重鎖核酸への標識体導入後は、二重鎖核酸に導入されなかった標識体を洗浄・除去する必要があり、標識体の洗浄・除去の際に標識体が導入された二重鎖核酸からの標的核酸の脱離を抑制することが検出感度の向上の観点で重要であるが、本発明では、標識体と二価の金属カチオンを含む溶液を用いて標識体を導入することにより、標識体の洗浄・除去による標的核酸の脱離を顕著に抑制することが可能となる。
【0027】
二価の金属カチオンとは、溶液中で2個の電子を放出して二価の陽イオンになり得る元素・錯体を意味し、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンやマンガンイオン、コバルトイオン、亜鉛イオンなどの遷移金属からなる単原子イオン、また、チオシアノ鉄(III)イオン、テトラアンミン亜鉛(II)イオン、ヘキサアンミンニッケル(II)イオンなどの錯体イオンが挙げられる。中でも水への溶解性や環境負荷を考慮すると、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、マンガンイオンおよびカルシウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種類以上が好ましく、二重鎖核酸への結合安定性を考慮するとマグネシウムイオン、マンガンイオンが特に好ましい。
【0028】
前記溶液中の二価の金属カチオン濃度は100mM以上である。また、試薬量削減ならびに溶液中での金属カチオンの析出によるノイズ増加の観点から、500mM未満とすることが好ましい。
【0029】
次に、二重鎖核酸に導入されなかった標識体を洗浄除去する。この洗浄除去工程自体はそれ自体周知の方法により行うことができる。例えば、界面活性剤(好ましくはTween(商品名)シリーズ等の非イオン性界面活性剤)を含む緩衝液(例えばSSC等のクエン酸緩衝液)を洗浄液として用い、ハイブリダイゼーションの温度よりも通常3℃〜10℃程度低温で、1分間〜10分間洗浄を行うことができる。
【0030】
次に、二重鎖核酸に導入された標識体を検出する。検出工程自体は周知の方法により行うことができ、二重鎖核酸に導入された標識体のシグナルを検出することにより可能となる。検出されたシグナルは、周辺ノイズと比較される。具体的には、捕捉プローブが固定されている位置から得られたシグナル値と、それ以外の位置から得られたシグナル値を比較し、前者の数値が上回っている場合に標的核酸が検出されたとする。シグナル値の測定は、各標識について周知の方法により行うことができ、そのための装置も種々市販されているので、市販の測定装置を用いて容易に行うことができる。例えば、標識が蛍光標識である場合には、市販のDNAチップスキャナ等を用いて容易に行うことができる。なお、シグナル値を測定することにより、標的核酸の定量も可能になる場合があるが、標的核酸の定量は、必然的に標的核酸の検出を伴うので、標的核酸を定量する場合も、本発明の検出方法に包含される。
【0031】
次に、本発明の核酸の検出キットの好適な実施形態について説明する。本発明の核酸の検出キットは、少なくとも捕捉プローブおよび二価の金属カチオンを含む試薬を備えている。二価の金属カチオンを含む前記試薬は、好ましくは、該二価の金属カチオンと標識体とを含む試薬である。また、捕捉プローブは支持体に固定化されていても良い。本発明の検出キットに含まれる捕捉プローブを固定化した支持体とは、前記捕捉プローブを前記支持体に固定化したものである。また、本発明のキットに含まれる二価の金属カチオンを含む試薬は乾燥状態であっても溶液状態であってもよく、乾燥状態である場合はそれを溶解する溶媒が含まれうる。その他、本発明の検出キットに含まれうる試薬としては、前記標識体を含む試薬、pH調整用試薬、界面活性化剤、標識体の支持体への吸着防止のためのタンパク質や核酸を含む試薬などが挙げられ、これらは乾燥状態であっても溶液状態であってもよく、それぞれ独立した試薬であっても、適宜混合された試薬であってもよく、乾燥状態である場合はそれらを溶解する溶媒が含まれうる。
【0032】
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例により技術的範囲が限定されるものではない。
【0033】
実施例1
(1) DNAチップの作製
捕捉プローブは5’末端にアミノ基修飾したオリゴDNAをオペロン社にて委託合成した。表1に捕捉プローブの塩基配列を示す。この捕捉プローブを東レ株式会社製の“3D−Gene”基板(256柱基板)に固定して、評価用DNAチップとして用いた。
【0034】
(2) 標的核酸の調製
標的核酸として、捕捉プローブと相補的な配列を有し、5’末端にビオチンを導入した30塩基のオリゴDNA(表1)をオペロン社にて委託合成した。表1に標的核酸の塩基配列を示す。当該オリゴDNAを200fmol/lとなるまで1×ハイブリダイゼーション溶液(後述)で希釈して検体DNAとした。
【0035】
【表1】
【0036】
(3) ハイブリダイゼーション
検体DNA5μlに1×ハイブリダイゼーション溶液(1重量% BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC、1重量% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、50ng/mlサケ精子DNAの溶液、5重量% デキストラン硫酸ナトリウム、30% フォルムアミド)を35μl加え、ハイブリダイゼーション溶液とした。全量をDNAチップに注入し、32℃で加温したインキュベータにセットした。ハイブリダイゼーションは、“3D−gene”の標準プロトコールに従い、250rpmで旋回撹拌をしながら、32℃で2時間行った。ハイブリダイゼーション後、DNAチップを30℃に加温した洗浄液(0.5×SSC、0.1重量% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。
【0037】
検体DNA標識化の際に添加する二価の金属カチオンとして、マグネシウムイオンを添加した。1M 塩化マグネシウム六水和物を検体DNA標識化のための蛍光体含有緩衝液(50ng/μl SAPE(ストレプトアビジンフィコエリスリン、プロザイム社)、100mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム塩)、0.05重量% Tween20(商品名)、2mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン))に添加して、マグネシウムイオンの終濃度がそれぞれ10、20、50、100、200、300、500mM(マグネシウムイオンの終濃度がそれぞれ10、20、50mMの場合を比較例Aとする)となるように調整し、標識液とした。なお、MES由来のナトリウムイオン濃度は74mMであった。これら標識液をDNAチップ上に滴下し、35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6×SSPE緩衝液、0.01重量% Tween20(商品名))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。標識済みのDNAチップは、DNAチップスキャナー(東レ株式会社製)を用いて蛍光シグナルを検出した。スキャナーの設定は、レーザー出力100%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を70%にした。
【0038】
比較例1
検体DNA標識化の際に二価の金属カチオンを添加せず、検体DNA標識化のための蛍光体含有緩衝液(50ng/μl SAPE(ストレプトアビジンフィコエリスリン、プロザイム社)、100mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム塩)、0.05重量% Tween20(商品名)、2mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン))をそのまま標識液とした。なお、MES由来のナトリウムイオン濃度は74mMであった。この標識液をDNAチップ上に滴下し、35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6×SSPE、0.01重量% Tween20(商品名))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥し、実施例1と同様の条件で蛍光シグナルを検出した。
【0039】
参考例1
所定量の塩化ナトリウムを蛍光体含有緩衝液(50ng/μl SAPE(ストレプトアビジンフィコエリスリン、プロザイム社)、100mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム塩)、0.05重量% Tween20(商品名)、2mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン))に添加した溶液を用意した。この際、ナトリウムイオンの終濃度が500または1000mMとなるように調整し、標識液とした。これら標識液をDNAチップ上に滴下し、35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6×SSPE、0.01重量% Tween20(商品名))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥し、実施例1と同様の条件で蛍光シグナルを検出した。
【0040】
実施例1、比較例1および参考例1の結果を表2に示す。実施例1と比較例1の結果から、検体DNAの標識化試薬にマグネシウムイオンを添加することにより検出シグナルが上昇した。また、実施例1と参考例1の結果から、検体DNAの標識化試薬にマグネシウムイオンを添加した場合はナトリウムイオンを添加した場合よりも低濃度で同等以上の検出シグナルが観察され、特に、マグネシウムイオンの濃度が50mM以上で大幅に検出シグナルが改善することが分かった。なお、捕捉プローブが固定化されていないスポットの検出シグナル(ノイズ)は230〜270であった。
【0041】
【表2】

【0042】
参考例2
(1) 二重鎖DNAの融解温度(Tm)測定
検体DNAの標識化の際に二価の金属カチオンを添加することによって検出シグナルが改善するメカニズムとして、単にハイブリダイゼーション時の塩濃度の上昇によって捕捉プローブと検体DNAのハイブリダイゼーションで形成される二重鎖DNAの安定性が増す、すなわち、単にTmが上昇することによるものである可能性が予想された。そこで、カチオン添加条件下での二重鎖DNAの二重鎖安定性を評価するため、様々なカチオン濃度下での二重鎖DNAのTmの測定を行った。
【0043】
Tm測定溶液は100mMのMES500μlに1M塩化マグネシウム六水和物水溶液を添加してマグネシウムイオンの終濃度がそれぞれ0、10、20、50、100、200、300、500mMとなるように調整したもの、100mMのMESそのもの、100mMのMES500μlに5Mの塩化ナトリウムを添加し、ナトリウムイオンの終濃度が500、1000mMとなるように調整したものを準備した。それぞれのTm測定溶液に、表3に記載の1mMのオリゴ1とオリゴ2(オリゴ1とオリゴ2の配列は相補的である。)の合成DNAを終濃度が2μMになるように添加して二重鎖DNAを形成させた。測定溶液中の二重鎖DNAのTm測定は、Tm解析システム(株式会社島津製作所製、TMSPC−8)および紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−1650PC)により行い、8連マイクロマルチセル(光路長10mm)を用いて測定(測定温度範囲は20〜95℃、昇温速度は1.0℃/min。)して得られたデータを解析ソフト(株式会社島津製作所製、Lab Solution)を用いて積分法にて決定した。
【0044】
【表3】
【0045】
様々なカチオン濃度下でのTm測定の結果を表4に示す。この結果からマグネシウムイオンを添加していない場合と比較して、マグネシウムイオンを添加することによりTmが上昇していたが、マグネシウムイオンの濃度が10mM以上で殆どTmが変化しておらず、また、ナトリウムイオンを500mM、1000mMを添加した際にも、マグネシウムイオンを10mM以上添加した際と同等のTmであることも分かった。すなわち、二価の金属カチオンを添加することによって二重鎖DNAのTm値はある程度上昇するものの、Tm値の上昇が検出シグナルの改善に寄与するものではないことが明らかになった。
【0046】
【表4】
【0047】
実施例2
検体DNA標識化の際に添加する二価の金属カチオンとして、カルシウムイオン、マンガンイオンまたは亜鉛イオンを添加した。1M 塩化カルシウム二水和物、1M 塩化マンガン水溶液、1M 塩化亜鉛水溶液を蛍光体含有緩衝液(50ng/μl SAPE(ストレプトアビジンフィコエリスリン、プロザイム社)、100mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム塩)、0.05重量% Tween20(商品名)、2mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン))に添加して、カルシウムイオン、マンガンイオンの終濃度がそれぞれ100もしくは500mMとなるように調整したものを標識液とした。これら標識液をDNAチップ上に滴下し、35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6×SSPE、0.01重量% Tween20(商品名))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥し、実施例1と同様の条件で蛍光シグナルを検出した。
【0048】
検出結果を表5に示す。実施例1でのマグネシウムイオンと同様に、カルシウムイオンまたはマンガンイオンを添加した場合でも、二価の金属カチオンを添加しない場合(比較例1)と比較して検出シグナルが改善した。また、参考例1で示したナトリウムイオンの濃度が500または1000mMの場合と比較しても顕著なシグナル改善が示された。なお、捕捉プローブが固定化されていないスポットの検出シグナル(ノイズ)は230〜270であった。
【0049】
【表5】
【0050】
実施例3
本実施例では二価金属カチオンを添加することによる検出シグナルのばらつきの検証を行った。検体DNA標識化の際に添加する二価の金属カチオンとして、マグネシウムイオンを添加した。1M 塩化マグネシウム六水和物を検体DNA標識化のための蛍光体含有緩衝液(50ng/μl SAPE(ストレプトアビジンフィコエリスリン、プロザイム社)、100mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム塩)、0.05重量% Tween20(商品名)、2mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン))に添加して、マグネシウムイオンの終濃度が100mMとなるように調整し、標識液とした。なお、MES由来のナトリウムイオン濃度は74mMであった。これら標識液をDNAチップ上に滴下し、35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6×SSPE緩衝液、0.01重量% Tween20(商品名))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。標識済みのDNAチップは、DNAチップスキャナー(東レ株式会社製)を用いて蛍光シグナルを検出した。スキャナーの設定は、レーザー出力100%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を70%にした。DNAチップ内の検出シグナルのばらつきの指標CV値を表6に示す。なお、CV値は、(4つのスポットの標準偏差)/(4つスポットのシグナル平均値)×100で算出した。
【0051】
比較例3
比較例1と同様の方法で検体DNAのハイブリダイゼーションおよび標識化を行った。DNAチップ内の検出シグナルのばらつきの指標CV値を表6に示す。CV値の算出は実施例3と同様の方法で行った。
【0052】
参考例3
所定量の塩化ナトリウムを蛍光体含有緩衝液(50ng/μl SAPE(ストレプトアビジンフィコエリスリン、プロザイム社)、100mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム塩)、0.05重量% Tween20(商品名)、2mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン))に添加した溶液を用意した。この際、ナトリウムイオンの終濃度が1000mMとなるように調整し、標識液とした。これら標識液をDNAチップ上に滴下し、35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6×SSPE、0.01重量% Tween20(商品名))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥し、実施例1と同様の条件で蛍光シグナルを検出した。DNAチップ内の検出シグナルのばらつきの指標CV値を表6に示す。CV値の算出は実施例3と同様の方法で行った。
【0053】
表6からマグネシウム100mM添加した場合、マグネシウムを添加しなかった場合やナトリウム1000mM添加と比較して、CV値が顕著に改善していることが示された。すなわちスポット間のバラツキが改善していることが示された。
【0054】
【表6】
【0055】
実施例4、比較例4
本実施例では、支持体に固定していない捕捉プローブに標的核酸がハイブリダイズした、DNA・RNA二重鎖を標識する検出試薬1に塩化マグネシウムを添加することで検出感度が向上するか検証を行った。DNA・RNA二重鎖を形成させることでHPV(ヒトパピローマウイルス)を検出するハイブリッドキャプチャー2(商品名、キアゲン社)を用いて本発明の効果を検証した。ハイブリッドキャプチャー2(商品名)は、HPVのDNAに、相補RNAをハイブリダイズさせた後、DNA・RNA二重鎖を認識する抗体を用いて、基材上にキャプチャー(捕捉)する。さらに標識ずみDNA・RNA二重鎖を認識する抗体を結合させることで標識し、検出する原理である。標識反応時に塩化マグネシウム溶液を添加することで、検出感度が向上するか検証した。ハイブリッドキャプチャー2(商品名)の反応は、添付マニュアルに従って実施した。
【0056】
(1) 検体の調製
検体DNAとして、ヒトパピローマウイルスのゲノムDNAがクローニングされた組み替えプラスミドpHPV16をヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入し用いた。pHPV16は全長16,600塩基対であった。pHPV16が1amol含まれるように調整した検体溶液、及び0.01amol含まれるように調整した検体溶液に、検体抽出試薬25μlを添加した。ボルテックスミキサーで撹拌した後、65℃に設定したウォーターバスで45分間反応させた。
【0057】
(2) ハイブリダイゼーション
マニュアルに従って調整したプローブ液25μlに、検体75μlを添加し、ロータリーシェーカー(1100rpm)で 約3 分間振とう攪拌させた。次に65℃のハイブリオーブン内で60分間反応させた。
【0058】
(3) ハイブリッドキャプチャー(商品名)
ハイブリダイゼーション反応溶液100μlを、キャプチャープレートのウェルに移し、ロータリーシェーカー(1,100rpm)を用いて25℃で60分間振とうし、反応させた。反応後、上清を取り除いた。
【0059】
検出反応
検出試薬1(アルカリフォスファターゼ標識抗DNA・RNA複合体マウスモノクローナル抗体)75μlを分注し、25℃で30分間反応させた。このとき、検出試薬1に塩化マグネシウムが終濃度100mMになるように添加したもの(Mg有り)と添加しなかったもの(Mgなし)を用意し、それぞれ反応に用いた。反応後、洗浄液で洗浄し、検出試薬2(disodium 2-chloro-5-(4-methoxyspiro{1,2-dioxethane-3,2'-(5'-chloro)tricycle[3.3.11]decan}-4-yl)-1-phenyl phosphatase溶液)を添加し、25℃で15分間反応させた。反応後、発光量はルミノメーターを用いて測定した。検出結果を表7に示した。
【0060】
その結果、マグネシウムを添加した場合、添加しなかった場合に比べて、発光シグナルが向上することが分かった。なお、同時に測定した陰性コントロールの発光シグナルは3730であった。以上のように、ハイブリッドキャプチャー2(商品名)の検出反応において、マグネシウムを添加することが、感度向上に有効であることが示された。
【0061】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、遺伝子診断や病原菌の特定、あるいは一塩基多型の検出等の核酸の検出に利用することができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]