(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不要フィルム部分の保持は、前記回転ロールの一方に設けられ前記不要フィルム部分に突き刺すピン部材と、前記回転ロールの他方に設けられ前記ピン部材の先端部が収納される空所部とで行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂フィルムの切断加工方法。
前記引張り力は、前記回転ロールの搬送方向下流側に設けたテンションロールの周速度を、前記回転ロールの周速度よりも速くして付加することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂フィルムの切断加工方法。
前記成形型部とピン部材との間に突き出して、前記樹脂フィルムの切断線部分に剪断力を付与する突起部を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の樹脂フィルムの切断加工方法。
前記樹脂フィルムが、少なくとも最内面の伸びが大きい内面フィルムと外面側の伸びが小さいフィルムがラミネートされた積層樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の樹脂フィルムの切断加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。
本発明の樹脂フィルムの切断加工方法は、パウチなどに用いられる樹脂フィルムに対し、回転ロールで切断線に沿って圧縮成形すると、自己発熱で溶融して薄肉状態となり、切断線を挟む樹脂フィルムと不要樹脂フィルム部分との間に加える引張り力で、引きちぎるようにして切断線から切断(フルカット)状態にできることを見出し、完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法は、一対の回転ロール間に樹脂フィルムを搬送し、樹脂フィルムを切断すべき切断線に沿って厚み方向に圧縮成形して
成形型部により薄肉化し自己発熱で溶融させ、切断線に隣接する不要樹脂フィルム部分を回転ロールに保持し、樹脂フィルムと不要樹脂フィルム部分との間に引張り力を加えて、切断線から不要樹脂フィルム部分を引きちぎって切断加工するようにしたものである。従来のスリッターやロータリーカッターなどの鋭利な刃を用いて行う切断加工(フルカット加工)とは、その原理において全く異なる。
【0012】
この樹脂フィルムの切断加工方法について、図面を参照して具体的に説明する。
本発明の樹脂フィルムの切断加工方法は、例えば
図1および2に示したパウチ1に適用され、パウチ1の外側に張り出す立体成形加工が施された流路2のノズル状の注出口3の外形を形成するための切断加工(フルカット加工)として施工される。
【0013】
このようなパウチ1は、まず、2枚の、例えば樹脂フィルム10,10の両縁部をヒートシールしてサイドシール部4を形成し、圧縮成形して自己発熱による溶融で注出口シール部7を形成し、上縁部が開口した矩形の袋状の素材パウチFが形成される。
【0014】
次いで、この素材パウチに、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法を適用して、注出口3の外形を切断加工(フルカット加工)して、注出口3をノズル状に形成し、さらに、流路2を外側に張り出すように形成する立体成形加工や流路2に注出口3を手で開封するための易開封溝3aを形成するハーフカット加工、パウチ1の注出口3の周囲を囲む注出口シール部7の接着加工の少なくとも1つの加工が同時(回転ロールの1回転中)に行われ、パウチ1が成形される。
そして、成形されたパウチ1の上縁部の開口から内容物を充填した後、上縁部の開口をヒートシールして上部シール部8を形成することで、密封状態とされる。
【0015】
このパウチ1に用いられる樹脂フィルムは、単層樹脂フィルムであっても良いが、例えば少なくとも最内面の伸びが大きい内面フィルム11と外面側の伸びが小さい外面フィルム12とがラミネートされた積層樹脂フィルム10を用いるのが好ましい。
【0016】
パウチ1の積層樹脂フィルム10は、内面フィルム11としてヒートシール性を有するフィルム、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどが用いられ、外面側の外面フィルム12として、例えば延伸フィルムが用いられ、ナイロンフィルムやPET(PolyEthylene Terephthlate)フィルムなどのポリアミドフィルムやポリエステルフィルムなどが用いられる。
【0017】
なお、内面フィルム11と外面フィルム12との間、あるいは外面フィルム12の外側に、さらに他の樹脂フィルム、あるいはアルミ箔などの金属箔が積層されたものであっても良いし、外面フィルム12の外側面にアルミなどの金属蒸着層が形成されていても良い。
【0018】
また、パウチ1の積層樹脂フィルム10では、通常、内面フィルム11の厚さが60〜200μm程度とされ、外面フィルム12の厚さが10〜20μm程度とされてラミネートされ、内面フィルム11の方が外面フィルム12より3〜20倍程度厚くなっている。また、積層樹脂フィルム10の総厚みが、他の層を含む場合は、それも含めて70〜300μm程度となっている。
【0019】
なお、内面フィルムの伸びが大きいことを示す指標としては様々あるが、例えば、弾性率やヤング率が外面フィルムより小さいこと、あるいは、降伏伸度や破壊伸度が外面フィルムより大きいことなどが挙げられる。
【0020】
このような積層樹脂フィルム10,10を用いた素材パウチFにおける本発明の樹脂フィルムの切断加工方法は、
図3および
図4に示すように、ロール式成形加工装置20の上下一対の回転ロール21,22を用いる。そして、回転ロール21,22間に、素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10を搬送し、切断すべき切断線C(
図2参照)に沿って回転ロール21,22の加工金型23に設けた先端部が円弧面、或いは平坦面の成形型部41で厚み方向に、素材パウチFの切断時の上回転ロール21の成形型部41と、下回転ロール22との間隙を略ゼロに調整した状態(
図4(c)参照)で圧縮成形する。この圧縮成形とともに、切断線Cの外側(上流側)に隣接する不要樹脂フィルム部分Dに、下回転ロール22の加工金型24に設けたピン部材42を突き刺し、上回転ロール21の加工金型23の空所部43にピン部材42の先端を収納した状態とする。
【0021】
そして、圧縮成形された素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10の切断線C部分は、成形型部41により自己発熱による溶融と圧縮によって極めて薄肉となる。この状態で、積層樹脂フィルム10,10を上下回転ロール21,22の下流側のテンションロール44,44に搬送し、このテンションロール44,44の周速度を、上下回転ロール21,22の周速度よりも速くすることで、積層樹脂フィルム10,10に引張り力Pを加える。例えば上下回転ロール21,22の周速度ωに対してテンションロール44,44の周速度ω’を1.5倍(=1.5ω)として、積層樹脂フィルム10,10に引張り力Pを付加する。
【0022】
従って、回転ロール21,22が、成形型部41で積層樹脂フィルム10,10を圧縮成形した状態からわずかに回転すると、テンションロール44,44による急激な引張り力Pが積層樹脂フィルム10,10に加わる。この結果、切断線C部分上流側に隣接する不要樹脂フィルム部分Dが、ピン部材42で下回転ロール22に保持され、切断線C部分が溶融状態で薄肉となっていることから、切断線C部分から下流側の積層樹脂フィルム10,10が引きちぎられるようにして切断される。そして、切断された不要樹脂フィルム部分D,Dは、スクレーパ48で下回転ロール22の加工金型24のピン部材42からはぎ取られて回収される。
【0023】
この切断加工での加工金型23の成形型部41は、
図3(b)に示すように、例えば、幅dが0.05mm程度で、前述したように素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10の切断時の上回転ロール21の成形型部41と、下回転ロール22との間隙が略ゼロとされる。また、不要樹脂フィルム部分Dに突き刺して下回転ロール22に保持する加工金型24のピン部材42は、例えば、高さhが1.5mm程度で幅が0.8mm程度、対応する加工金型23の空所部43の深さは、2.1mm程度、幅が1.5mm程度とされる。尚、これらの数値は、一例に過ぎず、樹脂フィルムの仕様によって適宜変更すればよい。
【0024】
なお、ロール式成形加工装置20のフレームや回転軸受機構、駆動機構などの構成は、従来から周知の構成であり、具体的な説明は省略する。
【0025】
また、本発明では、不要樹脂フィルム部分Dを引きちぎるために、下回転ロール22に不要フィルム部分Dを保持して引張り力Pを加えるピン部材42と、上回転ロール21に対応する空所部43とが設けてあり、従来の樹脂フィルムの切断に際し、切断片の飛散を防止するための機構(特許文献2,3参照)と類似するが、飛散防止のための機構では、鋭利な刃で切断された後の切断片に力を加えることなく単に突き刺して搬送し、回収するものであり、その機能において全く異なるものである。
【0026】
このように、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法により、素材パウチの状態の積層樹脂フィルム10,10に切断加工を圧縮成形で施すことで、工具の摩耗を防止して耐久性を向上させることができる。また、同時に、不要樹脂フィルム部分Dの飛散を防止して確実に排除し得る成形加工が可能となる。
【0027】
さらに、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法は、
図4(c)に示すように、素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10の切断線C部分に剪断力を加えて成形加工を行うため、突起部45を、上回転ロール21側に突き出るように、下回転ロール22側の加工金型24に設ける。そして、この突起部45を、前述した上回転ロール21側の成形型部41と、下回転ロール22側のピン部材42との間に位置させ、切断線Cに沿って圧縮成形とは逆方向から積層樹脂フィルム10,10に剪断力を加える。一方、上回転ロール21側の加工金型23には、突起部45に対応する溝底部(天井部)にラバー47を取り付けた凹溝46を設け、剪断力を加えた際の積層樹脂フィルム10,10の滑りを押える。
【0028】
これにより、上回転ロール21の成形型部41で下回転ロール22側に圧縮成形される積層樹脂フィルム10,10は、突起部45によって上回転ロール21側に剪断力を加えられるとともに、凹溝46との間で滑りが押えられ、積層樹脂フィルム10,10の切断線C部分に沿って加わる剪断力で、素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10は一層容易に切断される。
【0029】
また、積層樹脂フィルム10,10を用いた素材パウチFの切断を行う加工金型は、
図4(b)に示すように、ノズル状の注出口3の外形に沿った切断線Cが形成された成形型部41を有する加工金型23を上回転ロール21に取り付ける。また、上回転ロール21の加工金型23に空所部43、下回転ロール22の加工金型24に注出口3の両側の2箇所の不要樹脂フィルム部分D,Dを保持するピン部材42をそれぞれ設ける。
そして、積層樹脂フィルム10,10同士を適宜ヒートシールして形成された素材パウチFを、上下の回転ロール21,22間に搬送し、先端部が円弧面、或いは平坦面の成形型部41で厚み方向に圧縮成形すると同時に、切断線Cの外側の2箇所の不要樹脂フィルム部分D,Dにピン部材42を突き刺し、下回転ロール22に保持してテンションロール44,44に送る。
【0030】
この際、
図3、4に示すように、圧縮成形された積層樹脂フィルム(素材パウチF)10,10の切断線C部分は、自己発熱による溶融が生じて薄肉となり、テンションロール44,44により急激な引張り力Pが積層樹脂フィルム10,10(素材パウチF)に加わり、ピン部材42で保持された不要樹脂フィルム部分D,Dを残して切断線C部分から引きちぎられて、下流側の積層樹脂フィルム(素材パウチF)10,10が切断される。切断された不要樹脂フィルム部分D,Dは、スクレーパ48で下回転ロール22のピン部材42からはぎ取られて回収される。
【0031】
尚、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法においては、前述した上回転ロール21の加工金型23に設けた成形型部41、下回転ロール22の加工金型24に設けたピン部材42、突起部45は、上下回転ロール21,22のいずれか一方の回転ロールの加工金型を選択して設ければ良く、例えば同一回転ロールに設けても良い。この場合、ピン部材42の先端部が収納される空所部43は、ピン部材42が設けられた加工金型に対向する回転ロールの加工金型に設けられる。
しかしながら、効果的に樹脂フィルムと不要樹脂フィルム部分との間に引張り力を加え、不要樹脂フィルム部分を引きちぎって切断する点からは、前述した
図3、
図4に示した成形部材41とピン部材42、突起部45を、対向する加工金型23、24(上下回転ロール21,22)にそれぞれ設けるのが好ましい。
【0032】
さらに、不要樹脂フィルム部分Dを保持するためのピン部材42および対応する空所部43は、切断線Cの形状に応じて2箇所に限らず、1箇所あるいは多くの箇所に設けても良く、不要樹脂フィルム部分Dを保持して積層樹脂フィルム10,10から引きちぎることができるように設ければよい。
【0033】
本発明によれば、先端部が円弧面或いは平坦面の成形型部41で厚み方向に圧縮成形することによって、不要フィルム部分Dを切断して素材パウチFに、ノズル状の注出口3の外形を形成することができる。このため、鋭利な刃のような摩耗が殆どなく、耐久性に優れ、また、素材パウチFの積層樹脂フィルム10の切断端面は鋭利な刃で切断した場合と異なり、引きちぎるようにして形成されることから、切断端面が鋭利とならずに滑らかで手に優しい状態となる。
【0034】
また、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法は、素材パウチFのサイドシール部4のように、既にヒートシールされている部分に対しても適用することができる。
さらに、切断対象としての樹脂フィルムは、前述した素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10に限らず、1枚の単層樹脂フィルム、積層樹脂フィルム、これらの樹脂フィルムとアルミ箔とを積層した積層フィルム、また、これらを重ね合せた状態、或いはヒートシールした状態等に広く適用することができる。
【0035】
そして、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法は、素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10を圧縮成形して、外面に張り出す立体成形加工を同時に行うことができ、例えばパウチ1に注出口3を形成する際に立体的な流路2を形成するために行われる。
【0036】
この立体成形加工は、
図5に示すように、冷間で立体成形したい部位14をロール式成形加工装置20の回転ロール21の加工金型23の立体成形加工部25によって厚み方向に圧縮成形すると、圧縮した部位が圧縮力を解放した後に、伸びの小さい外面フィルム12側に張り出す現象が生じ、張出し部位14となることを立体成形の原理とするものである。
【0037】
この圧縮成形による伸びの小さい外面フィルム12側への張り出し現象は、パウチ1のように、素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10の内面フィルム11,11同士を対向させてサイドシール部4、注出口シール部7を形成した状態(少なくとも立体成形する部位は貼り合わせていない状態)の素材パウチFを用いて厚み方向に圧縮成形した場合であっても、それぞれの積層樹脂フィルム10,10が伸びの小さい外面フィルム12,12側に張り出す現象が起こる。この場合、両側、或いは片側から厚み方向に圧縮成形する場合のいずれであっても、厚み方向に総厚みの30%程度(1/3程度)圧縮成形することで、それぞれの伸びの小さい外面フィルム12,12側に張り出すように立体成形してパウチ1の注出口3に流路2(張出し部位14)を形成することができる。
【0038】
この積層樹脂フィルム10,10を総厚みの30%程度(1/3程度)圧縮した際に出現する張出し現象は、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、厚み方向に圧縮すると、変形するのは、専ら伸びの大きい内面フィルム11であって、圧縮された面から押し出されるように大きく伸び、伸びの小さい外面フィルム12はラミネートされていることから内面フィルム11の伸びに応じて伸ばされるが、圧縮力を取り除いた後、内外面フィルム11,12の厚みが復元する際の挙動において、内面フィルム11の復元が大きく、外面フィルム12の復元はわずかであり、外面フィルム12に剪断変形的な伸びの影響が残るなどの内外面フィルム11,12の間で何らかの違いがあるためと考えられる。
【0039】
また、この積層樹脂フィルム10,10の立体成形加工では、冷間で厚み方向に総厚みの30%程度(1/3程度)圧縮することで、外面フィルム12,12側に張り出すようにできることから、前述したロール式成形加工装置20の回転ロール21,22で加工が行われるが、少なくとも回転ロール21,22の一方の加工金型23の切断加工用の成形型部41に加えて、
図7に示すように、立体成形加工部25を設けることにより張出し部位14を立体成形することができる。
【0040】
特に、素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10を、一対の回転ロール21,22によるロール式成形加工装置20で立体成形する場合には、回転ロール21,22による加工が点接触または線接触でなされることから、パンチとアンビル(受け台)を面接触させて加工する往復式プレス成形加工装置に比べ、接触面積を非常に小さく、必要な成形力(押圧力)を容易に加えることができる。また、装置自体を小型化し、フレームなどの構造を簡素化することができ、省エネルギー化を図ることができる。さらに、プレスのような間欠的な往復運動がなく一対の回転ロール21,22の回転によって加工するので、素材パウチFの積層樹脂フィルム10,10を搬送しながら連続的に成形することができ、装置の振動を抑制することもできる。
【0041】
この積層樹脂フィルム10,10の立体成形加工では、冷間での厚み方向への圧縮成形割合が総厚みの30%程度(1/3程度)となるように、立体成形加工部25の下回転ロール22に対する加工代を調整して、2枚の積層樹脂フィルム10,10のそれぞれの外面フィルム12,12に張出し部14,14を張り出させる。
なお、立体成形における圧縮成形割合は総厚みの50%程度(1/2程度)までとする。圧縮成形割合が総厚みの50%程度(1/2程度)を越えると、立体成形した積層樹脂フィルム10,10にクラックが生じたり破断したりするおそれが出てくる。さらに、圧縮成形割合を大きくして総厚みの2/3以上とすると、後述する積層樹脂フィルム10,10の内面フィルム11,11同士の自己発熱による溶融接着が生じる。
【0042】
ロール式成形加工(ロータリー加工)においては、樹脂フィルムの加工位置が逐次回転方向に移動するため、回転方向(図中の矢印方向)の上流側に樹脂フィルムを押し出す作用が累積する。前述した立体成形の原理から推定すると、圧縮成形部から積層樹脂フィルム10,10を押し出そうとする力が大きいほど立体成形の張り出し量も大きくなると考えられ、この点でもロール式成形加工(ロータリー加工)による製造が好適である。
ただし、回転方向の上流側に積層樹脂フィルム10,10を押し出す作用の累積が大きくなりすぎると、積層樹脂フィルム10,10に皺やクラックが生じることがあるので、回転方向に沿って加工と解放とが繰り返されるように、立体成形加工部25を適宜の長さに区切って配置することが望ましい。
【0043】
また、この積層樹脂フィルム10,10の立体成形加工では、立体成形加工部25の先端部の摩擦力が立体成形の張り出し量に影響し、円弧面、或いは平坦面の先端部の摩擦力を増加させることにより張り出し量が大きくなるため、立体成形加工部25の先端部にブラスト加工等を施して粗面化することが好ましい。
【0044】
このような立体成形加工と、前述した切断加工とを同時に行うことで、パウチ1に流路2の外形の切断と流路2の立体成形とを上下回転ロール21,22の一回転中に加工することができる。
これにより、従来の表裏別々に流路2の立体成形を施し、これを重ねてヒートシールする必要がなく、素材パウチの状態とした後、流路2の立体成形と外形の切断を同時に行うことができる。
また、表裏別々の積層樹脂フィルム10,10を重ねて貼り合わせる必要がないので、表裏の立体成形された流路2の位置ずれがなく、簡単に必要な流路断面積を確保することができる。
【0045】
さらに、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法(フルカット加工)は、単層樹脂フィルム、あるいは積層樹脂フィルム10,10同士を圧縮成形して、自己発熱による溶融現象で樹脂フィルム同士を接着する接着加工を同時に行うことができ、例えばパウチ1の成形工程で注出口3の周囲を囲む注出口シール部7の加工に適用される。
すなわち、樹脂フィルム同士を圧縮成形することで、自己発熱による溶融が接触界面で生じる現象を利用しており、ヒートシールによることなく、冷間(常温)で圧縮成形することで、単層樹脂フィルム、あるいは積層樹脂フィルム10,10同士を接着する。
【0046】
この圧縮成形により自己発熱による溶融が生じる現象は、
図6に示すように、上下回転ロール21,22の周速度にもよるが、積層樹脂フィルム10,10を総厚みの2/3(約70%)以上厚み方向に圧縮した際に出現する。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、切断加工の場合と同様に、回転する上下回転ロール21,22によって、積層樹脂フィルム10,10を厚み方向に圧縮成形すると、圧着部位には線接触状態で高圧が作用し、接触界面での摩擦熱や材料自体の内部流動による内部発生熱などで自己発熱が生じ、これらによって生じる内面フィルム11,11の溶融で、圧着されている積層樹脂フィルム10,10同士が接着され、適宜冷却されることによると考えられる。
この積層樹脂フィルム10,10の切断加工と同時に、注出口シール部7の接着を行う場合には、
図7に示すように、接着部位15(
図1(b)参照)の押込み量を総厚みの2/3以上とし、切断加工する部位は、上回転ロール21の成形金型23の成形型部41と、下回転ロール22との間隙を略ゼロに調整することでそれぞれの加工が行われる。
【0047】
このように、樹脂フィルムに対して圧縮成形することで、樹脂フィルムの外側表面までは溶融させずに接着することが可能となり、樹脂フィルムの自己発熱による溶融によって接着部位15に損傷を与えることなく、樹脂フィルム同士を容易、かつ確実に接着することができる。
【0048】
このような樹脂フィルムの接着加工を、積層樹脂フィルム10を用いて例示するが、
図6(b)に示すように、ロール式成形加工装置20の上下一対の回転ロール21,22を用い、これら回転ロール21,22間に、積層樹脂フィルム10,10同士(内面フィルム11,11同士)を対向させて重ねて搬送し、接着したい接着部位15を冷間で上方の回転ロール21の加工金型23の接着加工部26で厚み方向に圧縮成形する。この結果、圧縮した接着部位15に自己発熱による溶融が生じ、この積層樹脂フィルム10,10の内面フィルム11,11の接触界面に生じる溶融によって、圧着されている積層樹脂フィルム10,10同士が接着部位15で接着される。
すなわち、積層樹脂フィルム10,10同士を圧縮成形することで、自己発熱による溶融が接触界面で生じる現象を利用しており、ヒートシールによることなく、冷間(常温)で圧縮成形することで、積層樹脂フィルム10,10同士を高速で接着することができる。
【0049】
さらに、前述した接着加工では、樹脂フィルムをヒートシールバー等によって融点以上に加熱してヒートシールする必要はなく、圧縮成形によって生じる自己発熱による溶融を利用するが、樹脂フィルムを予め予熱したり、上下回転ロール21,22を予熱することで、樹脂フィルムの自己発熱による溶融を促すことができ、一層確実に接着することができる。そして、その予熱は、積層樹脂フィルムでは内面フィルム、単層樹脂フィルムではそのフィルムの軟化点以下であれば良い。
【0050】
また、樹脂フィルムの接着加工は、ロール式成形加工装置20の一対の回転ロール21,22の1回転中に、加工金型23の成形型部41での切断加工、立体成形加工部25および接着加工部26でそれぞれの加工が行われるが、切断線Cと注出口シール部7の形状(
図2、
図3(b)参照)によっては、接着加工に先立って切断加工が行われる部位が生じる。このような部位には、
図7に示すように、上回転ロール21の加工金型23の接着加工部26のロール回転方向下流側に下方に突出するせき部49を設け(
図4(b)、
図7参照)、接着加工部26から立体成形加工部25への樹脂の流動を防止し、接着加工、フルカット加工をより確実に行う点で好ましい。
【0051】
このように、樹脂フィルムの切断加工と他の加工を、ロール式成形加工装置20の一対の上下回転ロール21,22に、樹脂フィルムを搬送して1回転中に加工金型23,24で同時に行うことで、パウチ1を製造する際の各加工に伴うずれを防止して、高精度に各加工を行うことが可能となる。
そして、この場合、回転ロールの表面に装着する加工金型23は、
図7に示すように、前述した切断加工を行う成形型部41、立体成形加工部25および接着加工部26を備えて構成されており、加工金型23の各加工部41,25及び26が各加工部位の形状に応じて所望の形状を有し、上回転ロール21および/または下回転ロール22に着脱することで、異なる形状の各加工に容易に対応できる。
また、このような加工金型は、回転ロール21,22の少なくとも一方の表面に固定される。
【0052】
なお、前述した加工金型23,24に設ける各加工のための立体成形加工部25、接着加工部26、フルカット加工部の成形型部41は、1つの加工金型に複数の加工部を組み合わせて設ける場合のほか、各加工部を別々の加工金型に設けてそれぞれを回転ロールに装着するようにしても良い。
このように樹脂フィルムの切断加工と、接着等の他の加工を同時に行うことで、パウチ1を製造する際の各加工に伴うずれを防止して、高精度に各加工を行うことが可能となる。
また、図示しないが、前述した樹脂フィルムの切断加工と同時に行われる他の加工としては、パウチ1の流路2の注出口3を、手で容易に開封するための易開封溝3a(
図2参照)を形成するハーフカット加工も挙げられる。
【0053】
なお、
図8は、上下回転ロール21,22の少なくとも一方の表面に固定される加工金型の他の形態を示し、下回転ロール22の表面に、切断加工用の成形型部41と、例えば二つの立体成形加工部25を設けた加工金型24を装着したものであり、図示しないが、ピン部材42、突起部45を設けた加工金型23が上回転ロール21に装着される。
【0054】
〔実験例〕
内面ポリエチレンフィルム(150μm)、外面延伸ナイロンフィルム(15μm)、(総厚み:165μm)、幅:105mm、長さ:200mmの積層樹脂フィルムを作成した。
この積層樹脂フィルムの内面同士を対向させ、ヒートシールしてサイドシール部4を形成し、圧縮成形して自己発熱による溶融で注出口シール部7を形成した素材パウチを、ロール式成形加工装置の上方の回転ロールと下方の回転ロールの間に搬送した。上回転ロールの表面に、下回転ロールとの間隙を略ゼロとした成形型部を備えた加工金型を装着し、下回転ロールにピン部材を備えた加工金型を装着し、冷間で厚み方向に圧縮成形して切断加工を行った。
尚、この時の上方及び下方の各回転ロールの直径は、130mm、回転数は200rpm(周速度ω:81.7m/分)、テンションロールの直径は30mm、回転数は300rpm(周速度ω’は、122.5m・分)とした。
その結果、素材パウチの積層樹脂フィルムは、成形型部の切断線Cに沿って引きちぎるようにして切断することができ、また、同時に不要フィルム部分がピン部材によって下回転ロールの回転方向に飛散することなく搬送され、スクレーパで下回転ロールからかき取って確実に排除、回収された。