【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中、%はいずれも質量基準を意味する。
【0030】
〔実施例1〜7および比較例1〜10〕
表1に示す組成を有する実施例1の固形せっけんを次に示す方法により調製し、実施例2〜7および比較例1〜10についても実施例1と同様の方法で固形せっけんを調製した。
(製造例)
飽和脂肪酸を5L容の双腕式混練機((株)入江商会製、PNV−5型)に入れ約80℃に加熱し、28%水酸化ナトリウム水溶液と28%水酸化カリウム水溶液の混合液を添加して、85℃〜95℃で約5分間撹拌混合した。加熱しながら混合することにより乾燥させて水分量を調節し、おおよそ10%の水分の石けん素地を得た。こうして得られた石けん素地をプロピレングリコール(PG)と水に溶解し、さらに飽和脂肪酸を溶解して均一とした。溶解確認後に、オリーブ油、グリセリン、トコフェロール(天然ビタミンE)およびEDTA・2Na(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)を加えて溶解し、石けん膠を得た。
次に、石けん膠を円筒形の型枠(直径65mm)に流し込み、室温で30℃以下となるまで半日程度放冷して固化させた。固化後、型枠より取り出し、3cm間隔に切断して、7日間トレイの上で石けんを静置して、実施例1の枠練り固形石けんを得た。
得られた枠練り固形石けんの水分をケット法により測定した。また、得られた枠練り固形石けんを以下の方法で評価を行った。
【0031】
(水分測定法)
実施例および比較例の枠練り固形石けんは、PG等の多価アルコールが多量に配合されているので、赤外線水分計で揮発成分をすべて揮発させて、多価アルコールを減じたものを水分とした。
装置:赤外線水分計、FD−240(株式会社ケツト科学研究所)
方法:四分割法(JIS K 3304;1984)で切断した試料をなるべく細かく切り、試料皿に1g程度の試料を乗せ、試料をまんべんなく広げる。次いで、乾燥温度150℃で、揮発分の恒量点まで加熱を続け、恒量となったところで測定値を読みとる。以下の式にて、枠練り固形石けん中の水分量を求めた。
(式) W = T − M
W:水分
T:測定値
M:多価アルコール含量
例えば、実施例1では、T(測定値)が59%であり、M(多価アルコール含量)が33%(PG32%、グリセリン1%)であるから、水分(揮発分)は59%−33%=26%となる。
【0032】
(1)泡立ち
10名の女性(20代〜50代)をパネラーとし、固形石けんを手に取って泡立てた際の泡質について下記の基準に基づき評価した。
2点・・・非常に泡立ちが高いと感じた場合。
1点・・・やや高い泡立ちであると感じた場合。
0点・・・泡立ちが低いと感じた場合。
【0033】
全てのパネラーの合計点から以下のとおり判定した。
14〜20点・・・○(ただし、0点の評価をしたパネラーがいないことを条件とする。):豊かに泡立つ固形石けんである。
7〜13点・・・△:泡立ちが弱い固形石けんである。
0〜6点・・・×:泡立ちがほとんどない固形石けんである。
【0034】
(2)溶解性
10名の女性(20代〜50代)をパネラーとし、固形石けんを手に取って泡立てた際の溶けやすさについて下記の基準に基づき評価した。
2点・・・非常に溶けやすいと感じた場合。
1点・・・やや溶けやすいと感じた場合。
0点・・・溶けにくいと感じた場合。
【0035】
全てのパネラーの合計点から以下のとおり判定した。
14〜20点・・・○(ただし、0点の評価をしたパネラーがいないことを条件とする。):溶解性に優れた固形石けんである。
7〜13点・・・△:溶解性が低い固形石けんである。
0〜6点・・・×:溶解性が極めて低い固形石けんである。
【0036】
(3)溶け崩れ
固形石けん10個を25℃の水中に10分間浸漬させた後、2時間乾燥し、個々の固形石けんの表面状態を目視で観察して下記の基準で評価した。
合格品:表面は軟らかいが内部は硬い状態であり、ほぼ溶け崩れを生じていない。
不合格品:内部まで軟らかくなり、溶け崩れを生じている。
【0037】
合格品の個数から以下の通り判定した。
9〜10個・・・○:溶け崩れにくく良好な固形石けんである。
7〜8個・・・△:やや溶け崩れにくい固形石けんである。
0〜6個・・・×:溶け崩れやすい固形石けんである。
【0038】
(4)洗い上がりの感触
10名の女性(20代〜50代)をパネラーとし、固形せっけんを用いて身体を洗浄した後の洗い上がりの感触について下記の基準に基づき評価した。
2点:肌にすべすべ感があり、しっとりとした感触があると感じた場合。
1点:ややすべすべ感、またはしっとりとした感触があると感じた場合。
0点:すべすべ感やしっとり感が全くないと感じた場合。
【0039】
全てのパネラーの合計点から以下のとおり判定した。
14〜20点・・・○(ただし、0点の評価をしたパネラーがいないことを条件とする。):洗い上がりの感触が優れた固形石けんである。
7〜13点・・・△:洗い上がりの感触がやや良好な固形石けんである。
0〜6点・・・×:洗い上がりの感触がやや良好な不良な固形石けんである。
【0040】
(5)生産性
上記製造例に準じて、容器内で溶解させた石けん膠を型枠に流し込んだ際の流し込みやすさと固化しやすさについて観察して下記の基準で判定した。
合格品(○):容器への付着物がほとんどなく、60分以内で軟らかくなくしっかりと固化する。
不合格品(×):容器への付着が多く、60分後も軟らかくそのままでは形が変わったり、傷がつきやすくて製品化できない、または成分が均一に溶解せず不均一となる。
【0041】
【表1】
【0042】
なお、表のa欄およびd欄中において、C12は炭素数12の直鎖飽和脂肪酸、C14は炭素数14の直鎖飽和脂肪酸、C16は炭素数16の直鎖飽和脂肪酸、C18は炭素数18の直鎖飽和脂肪酸を表し、b欄中のDPGはジプロピレングリコール、BGはブチレングリコールを表す。
【0043】
表1に示す実施例1〜7の結果から、本発明の枠練り固形石けんはいずれも、使用時に豊かに泡立ち、また溶解性に優れ、溶け崩れにくく、洗い上がりの感触に優れ、生産性に優れていることが理解できる。
一方、比較例1〜10では十分な性能が得られていない。
具体的には、比較例1では、a成分の含有量が少なく、b+cの含有量が多く、a/cの質量比が小さいので、泡立ち、溶け崩れ、生産性の点で劣っている。
比較例2では、a成分の含有量が多く、b成分の含有量が少なく、b+cの含有量が少なく、a/cの質量比およびa/(b+c)の質量比が大きいので、洗い上がりの感触、溶解性の点で不十分であり、生産性の点で劣っている。
比較例3では、b成分の含有量が少なく、c成分の含有量が多く、a/cの質量比が小さいので、洗い上がりの感触、溶解性の点で不十分であり、生産性の点で劣っている。
【0044】
比較例4では、a成分の含有量が少なく、b成分の含有量が多く、b+cの含有量が多いので、溶解性、溶け崩れの点で不十分であり、泡立ちの点で劣っている。
比較例5では、b成分の含有量が多く、c成分の含有量が少なく、a/cの質量比が大きいので、溶解性の点で不十分であり、溶け崩れ、生産性の点で劣っている。
比較例6では、a成分の含有量が少なく、c成分の含有量が多く、b+cの含有量が多く、a/cの質量比が小さいので、泡立ち、溶け崩れ、生産性の点で劣っている。
【0045】
比較例7では、b成分の代わりにBG(ブチレングリコール)を含有し、b+cの含有量が少ないので、溶け崩れの点で不十分であり、泡立ち、溶解性、生産性の点で劣っている。
比較例8では、b成分の代わりにスクロースを含有し、b+cの含有量が少ないので、泡立ち、溶解性、溶け崩れ、生産性の点で劣っている。
比較例9では、脂肪酸組成が本発明のものと異なる脂肪酸塩を含有し、b成分の代わりにBGや糖類、エタノールを含有し、d成分を含有せず、b+cの含有量が少なく、a/cの質量比およびa/(b+c)の質量比が大きいので、泡立ち、洗い上がりの感触の点で不十分であり、溶け崩れ、生産性の点で劣っている。
比較例10では、脂肪酸組成が本発明のものと異なる脂肪酸塩を含有し、b成分の代わりにイソプレングリコールや糖類を含有し、d成分を含有せず、b+cの含有量が少ないので、泡立ち、洗い上がりの感触の点で不十分であり、溶け崩れの点で劣っている。